特許第6900311号(P6900311)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6900311ワイヤレスシステムにおける適応型ビーム配置のための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6900311
(24)【登録日】2021年6月18日
(45)【発行日】2021年7月7日
(54)【発明の名称】ワイヤレスシステムにおける適応型ビーム配置のための方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/06 20060101AFI20210628BHJP
   H04W 16/28 20090101ALI20210628BHJP
   H04W 24/02 20090101ALI20210628BHJP
   H04W 24/08 20090101ALI20210628BHJP
【FI】
   H04B7/06 950
   H04W16/28
   H04W24/02
   H04W24/08
【請求項の数】15
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-501380(P2017-501380)
(86)(22)【出願日】2015年7月15日
(65)【公表番号】特表2017-528031(P2017-528031A)
(43)【公表日】2017年9月21日
(86)【国際出願番号】US2015040565
(87)【国際公開番号】WO2016011151
(87)【国際公開日】20160121
【審査請求日】2018年7月17日
(31)【優先権主張番号】62/025,638
(32)【優先日】2014年7月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516381806
【氏名又は名称】ブルー ダニューブ システムズ, インク.
【氏名又は名称原語表記】BLUE DANUBE SYSTEMS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100142239
【弁理士】
【氏名又は名称】福富 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】チェンビル−パラット, ラメシュ
(72)【発明者】
【氏名】ポティクニー, デヴィット エム.
(72)【発明者】
【氏名】フェン, イーピン
(72)【発明者】
【氏名】ピント, マーク アール.
(72)【発明者】
【氏名】バヌ, ミハイ
【審査官】 原田 聖子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−533391(JP,A)
【文献】 特開2003−283418(JP,A)
【文献】 特開2009−100452(JP,A)
【文献】 特開2008−270940(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/06
H04W 16/28
H04W 24/02
H04W 24/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のモバイル通信デバイスからの通信需要が時間の関数として変化するエリアに情報を提供するワイヤレス通信システムのためのフェーズドアレイアンテナを操作するための方法であって、複数の期間ごとに、
(1)方向の範囲にわたってプローブビームを走査するとともに、走査された前記プローブビームを使用して該プローブビームによってカバーされる前記エリアにおけるスペクトル効率をプローブビーム方向の関数として決定するステップと、
(2)前記スペクトル効率を前記プローブビーム方向の関数として使用して、前記期間における該プローブビーム方向の関数として総モバイル通信需要密度を測定するステップと、
(3)前記プローブビーム方向の関数としての総モバイル通信需要密度の測定値を使用して、前記期間における前記総モバイル通信需要密度が他の方向と比較して高くなるビーム方向を特定するステップと、
(4)前記フェーズドアレイアンテナを用いて、前記期間における総モバイル通信需要密度が他のビーム方向と比べて高い方向に向けられる通信ビームを電子的に生成するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記プローブビームが狭ビームである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プローブビームが走査される前記方向の範囲が方位角および仰角の両方において変化する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記通信ビームが狭ビームである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記通信ビームが、前記総モバイル通信需要密度のクラスタの形状に一致するように選択された形状を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記生成された通信ビームが送信ビームである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記生成された通信ビームが受信ビームである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記フェーズドアレイアンテナを用いて、かつ前記複数の期間ごとに、複数の通信ビームを電子的に生成するステップをさらに含み、
前記複数の通信ビームの各々は、前記期間における総モバイル通信需要密度が他のビーム方向と比べて高い複数の異なる方向に向けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記フェーズドアレイアンテナを用いて、かつ前記複数の期間ごとに、複数の通信ビームを電子的に生成するステップをさらに含み、
前記複数の通信ビームの各々は、総モバイル通信需要密度のクラスタが存在する複数の異なる方向に向けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記複数の通信ビームのビームの形状が、クラスタの形状と一致するように選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
複数のモバイル通信デバイスからの通信需要が時間の関数として変化するエリアに情報を提供するワイヤレス通信システムのためのフェーズドアレイアンテナを操作するための方法であって、
プローブビームの方向の関数としての総モバイル通信需要密度を示す履歴情報を含むデータベースを格納するステップであってここで、前記履歴情報プローブビーム方向の関数として予め測定されたスペクトル効率から導かれたものであり複数の異なる過去の期間における総モバイル通信需要密度を示すものであるステップと、
複数の期間ごとに
(1)前記データベースに含まれ、前記期間に対応する前記過去の期間における前記プローブビーム方向の関数としての総モバイル通信需要密度を示す前記履歴情報を参照するステップと、
(2)参照された前記履歴情報を使用して、前記期間に対応する前記過去の期間において総モバイル通信需要密度が他の方向と比較し高いものであったビーム方向を識別するステップと、
(3)前記フェーズドアレイアンテナを用いて、前記期間に対応する前記過去の期間において総モバイル通信需要密度他のビーム方向に対して高いものであった特定の方向に向けられ通信ビームを電子的に生成するステップと、
を含む、方法。
【請求項12】
サービスエリアにわたって分配された複数のモバイル通信デバイスに情報を提供するワイヤレス通信システムのためのフェーズドアレイアンテナを操作するための方法であって、
前記サービスエリアにわたってプローブビームとしての狭プローブビームを走査すること、
前記サービスエリアにわたって前記プローブビームを走査している間に、(1)走査された前記プローブビームを使用して前記複数のモバイル通信デバイスと通信し、かつ、(2)前記走査されたプローブビームの方向の関数として、前記複数のモバイル通信デバイスに関するSNIR(Signal-to-Noise-Interference Ratio)データを記録すること、
記録された前記SNIRデータを用いて、前記複数のモバイル通信デバイス間の通信需要密度が他のエリアと比べて高いエリアを特定すること、および、
前記特定されたエリアに、複数の狭い通信ビームを向けること、
を含む、方法。
【請求項13】
記録された前記SNIRデータから、前記走査されたプローブビームの複数の方向の各々についてスペクトル効率を計算することをさらに含み、
ここで、前記記録された前記SNIRデータを用い前記複数のモバイル通信デバイス間の通信需要密度が他のエリアと比べて高いエリアを特定するステップは複数の方向に関して算出されたスペクトル効率を使用して、前記複数のモバイル通信デバイスのうちの通信需要密度が他のエリアに対して高い領域を特定することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記プローブビームは、狭ビームである、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記プローブビームの走査は、方位角および仰角の両方において変化する方向の範囲にわたってプローブビームを走査することを含む、請求項12に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119(e)条の下で、2014年7月17日に出願された「Method for Adaptive Beam Placement in Wireless Systems」という名称の米国仮特許出願第62/025,638号明細書の利益を主張し、同特許の内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明の実施形態は、概して、従来のアンテナ放射パターンの代わりにまたはそれに加えて狭ビームを使用するワイヤレスシステムと、ワイヤレスシステムの容量を増大するためにこれらの狭ビームを使用する方法とに関する。
【背景技術】
【0003】
ラジオまたはテレビ放送などの多くのワイヤレスシステムは、全方向性アンテナ(すなわち、少なくとも1つの平面において360度放射するアンテナ)を使用する。ポイントツーポイントマイクロ波リンクなどの他のシステムは、指向性アンテナ(すなわち、円錐またはビーム内で大部分を放射するアンテナ)を使用する。商用のセルラシステムは、当初、全方向性タワーアンテナで導入された。後に、ワイヤレスオペレータは、タワー上での3方向性アンテナ(各々が方位角において120度および仰角において約15〜20度をカバーする)を使用したセクタ化されたアーキテクチャに移行した。
【0004】
現代のセルラネットワークは、仮想標準として1つのセルあたり3つのセクタを使用する。この解決法は、過去において音声通信がワイヤレストラフィックの大半を占めていた際、ワイヤレスオペレータにとって役立った。しかし、ビデオオンデマンドなど、大量のワイヤレスデータ消費量でアプリケーションを実行するスマートフォンおよび他のスマートモバイルデバイスの出現により、ワイヤレスネットワーク容量に対する要件は、セルラシステムの能力をはるかに超えるようになった。原理上、タワー、基地局およびアンテナの追加によるセル分割は、ネットワーク容量を増大するための自然な解決法であるが、この手法の高いコストおよび新しいセルタワーに対する公衆の反対により、厳しい実用的な制限が提示される。
【0005】
セルラネットワーク容量を増大するための別の自然な解決法は、使用される電磁波(EM)スペクトルを拡大することによるものである。EMスペクトルは希少なものであり、取得に費用がかかるため、この解決法も高いコストを伴う解決法である。それに加えて、この解決法は、セルラ使用に対してごくわずかな周波数帯域のみが利用可能であるため、制限された解決法である。
【0006】
セルラネットワーク容量を増大するための高度な信号処理方法は、多重入出力(MIMO)技法に基づく。これらの方法は、EM伝播の空間的多様性およびEMスペクトルの再利用を活用するため、基地局およびモバイルにおける複数のアンテナの使用に依存する。MIMOは、WiMAXおよびLTE(ロングタームエボリューション)などの4G(第4世代)ワイヤレスネットワークで広く採用されている。残念ながら、実際には、MIMOは、その性能が既存のセルラ環境に普及している低い信号対雑音および干渉比(SNIR)条件に非常に敏感であるため、大量の信号処理を必要とし、軽度の容量改善のみを提供する。
【0007】
セルタワーまたはスペクトルを追加することなく、セルラネットワーク容量を大量に増大するための新しい方法については、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第13/442,561号明細書で説明されている。この方法は、MIMOと同様に、ただし、信号処理なしで、セクタ内のすべての場所におけるSNIRを高め、スペクトル再利用の可能性をもたらす、狭くアジャイルな走査ビームに基づく。実際には、タワーでの狭ビームの生成は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,611,959号明細書で説明されている低価格のフェーズドアレイ技法によって可能である。しかし、米国特許出願第13/442,561号明細書の方法は、ビーム配置および走査と、基地局とモバイルとの間の通信時間のスケジューリングとの間の精密な調整を必要とする。この調整を実装するため、基地局ソフトウェアの大幅な修正が必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここでは、狭ビームを使用するが、基地局ソフトウェアの大幅な修正を必要とすることなく、セルラネットワーク容量を増大するためのさらなる他の方法を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一般に、一態様では、本発明は、複数のモバイル通信デバイスからの通信需要が時間の関数として変化するエリアにサービスするワイヤレス通信システムのためのフェーズドアレイアンテナを操作するための方法を特徴とする。方法は、複数の連続時間ごとに毎回、(1)ビーム方向の関数としてその時間に対する総モバイル通信需要密度を示す情報を得るステップと、(2)フェーズドアレイアンテナを用いて、その時間に対する総モバイル通信需要密度が他のビーム方向と比べて高い方向に向けられる通信ビームを電子的に生成するステップとを伴う。
【0010】
他の実施形態は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を含む。ビーム方向の関数として総モバイル通信需要密度を示す情報を得るステップは、方向の範囲にわたってプローブビームを走査し、およびプローブビーム方向の関数として総モバイル通信需要を測定するステップを伴う。プローブビームは狭ビームであり、プローブビームが走査される方向の範囲は方位角および仰角の両方において変化する。あるいは、ビーム方向の関数として総モバイル通信需要密度を示す情報を得るステップは、(1)時間の関数としてモバイル通信デバイスの予想される地理的分布についての情報を提供するデータベースを参照するステップ、(2)複数のモバイル通信デバイスの地理的分布についての情報を得るステップ、(3)方向の範囲にわたってプローブビームを走査し、およびプローブビーム方向の関数として瞬間スペクトル効率を測定するステップ、または(4)ビーム方向の関数として瞬間スペクトル効率を示す格納された情報源を参照するステップを伴う。通信ビームは狭ビームであり、総モバイル通信需要密度のクラスタリングに関する詳細に基づいて選択された形状を有する。生成された通信ビームは、送信ビームおよび/または受信ビームである。
【0011】
また、他の実施形態は、以下の特徴のうちの1つまたは複数も含む。方法は、フェーズドアレイアンテナを用いて、複数の連続時間ごとに毎回、複数の通信ビームであって、各々が、その時間に対する総モバイル通信需要密度が他のビーム方向と比べて高い複数の異なる方向に向けられる、複数の通信ビームを電子的に生成するステップであって、最初に言及される通信ビームが、複数の通信ビームのうちのものである、ステップも伴う。あるいは、方法は、フェーズドアレイアンテナを用いて、かつ複数の連続時間ごとに毎回、複数の通信ビームであって、各々が、総モバイル通信需要密度がクラスタリングを呈する複数の異なる方向に向けられる、複数の通信ビームを電子的に生成するステップであって、最初に言及される通信ビームが、複数の通信ビームのうちのものである、ステップを伴う。複数の通信ビームのビームの形状は、クラスタの形状と一致するように選択される。ビーム方向の関数として総モバイル通信需要密度を示す情報を得るステップは、(1)方向の範囲にわたってプローブビームを走査し、およびプローブビーム方向の関数として総モバイル通信需要を測定するステップであって、プローブビームが狭ビームであり、およびプローブビームが走査される方向の範囲が方位角および仰角の両方において変化する、ステップ、(2)時間の関数としてモバイル通信デバイスの予想される地理的分布についての情報を提供するデータベースを参照するステップ、(3)複数のモバイル通信デバイスの地理的分布についての情報を得るステップ、(4)方向の範囲にわたってプローブビームを走査し、およびプローブビーム方向の関数として瞬間スペクトル効率を測定するステップ、または(5)ビーム方向の関数として瞬間スペクトル効率を示す格納された情報源を参照するステップを伴う。
【0012】
本発明の実施形態は、特定の時間にセルの平均容量を最大化するように、セルタワーで生成された狭ビームおよび他のビーム形状(以下、一般に「狭ビーム」と呼ぶ)を配置するための方法、および最大平均容量を維持するためになど、モバイルトラフィック(モバイル通信トラフィック)の変化に従ってビームの配置を変更するための方法を含む。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも方位角および/または仰角において狭ビームを誘導する手段を有する、セルタワー上で狭ビームを生成するビーム形成デバイス、セル内のモバイルトラフィックの密度を推定するための方法、および平均トラフィックを最大化するためになど、狭ビームを配置するための方法が提供される。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、ビームパターンを変更する手段を有する、セルタワー上でビームパターンを生成するビーム形成デバイス、セル内のモバイルトラフィックの密度を推定するための方法、および平均トラフィックを最大化するためになど、ビームパターンを配置するための方法が提供される。
【0015】
本発明の別の実施形態によれば、基地局から独立した制御信号を介して狭ビームを誘導する手段を有する、セルタワー上で狭ビームを生成するビーム形成デバイスが提供される。
【0016】
本発明の別の実施形態によれば、狭ビームを誘導する手段を有する、セルタワー上で狭ビームを生成するビーム形成デバイス、基地局から独立したセル内のモバイルトラフィックの密度を推定するための方法、および平均トラフィックを最大化するためになど、狭ビームを配置するための方法が提供される。
【0017】
本発明の別の実施形態によれば、狭ビームを誘導する手段を有する、セルタワー上で狭ビームを生成するビーム形成デバイス、基地局を使用せずにUEによって提供される情報からセル内のモバイルトラフィックの密度を推定するための方法、および平均トラフィックを最大化するためになど、狭ビームを配置するための方法が提供される。
【0018】
本発明の別の実施形態によれば、狭ビームを誘導する手段を有する、セルタワー上で狭ビームを生成するビーム形成デバイス、基地局とビーム形成デバイスとの間で伝達される信号からセル内のモバイルトラフィックの密度を推定するための方法、および平均トラフィックを最大化するためになど、狭ビームを配置するための方法が提供される。
【0019】
本発明の別の実施形態によれば、狭ビームを誘導する手段を有する、セルタワー上で狭ビームを生成するビーム形成デバイス、基地局を使用せずにUEによって提供される情報から、基地局とビーム形成デバイスとの間で伝達される信号からセル内のモバイルトラフィックの密度を推定するための方法、および平均トラフィックを最大化するためになど、狭ビームを配置するための方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】eNodeBと呼ばれる通信ソフトウェアを実行する基地局プロセッサ、基地局ラジオバンク、ユーザ機器またはUEと呼ばれる移動局を含む、典型的なセルラシステムの一部であるセルの概略図を描写する。
図2】典型的なセルラ基地局のラジオバンクの簡略化された概略図を描写する。
図3】典型的なセルラ基地局Tx/Rxモジュールの簡略化された概略図を描写する。
図4】UEがセクタにわたって均一に分布した典型的なセルラセクタの概略図を描写する。
図5】UEがセクタにわたって不均一に分布した典型的なセルラセクタの概略図を描写する。
図6】UEが不均一に分布した典型的なセルラセクタと、高密度のUEを有するエリアをカバーする狭いペンシル(3D)ビームでのセクタ照射との概略図を描写する。
図7】UEが不均一に分布した典型的なセルラセクタと、高密度のUEを有するエリアをカバーする狭いウェッジ(2D)ビームでのセクタ照射との概略図を描写する。
図8】2D/3Dビーム形成能力を有し、eNodeBによってビーム配置が制御される、セルラシステムの概略図を描写する。
図9】2D/3Dビーム形成能力を有し、eNodeBによっておよびeNodeBから独立した追加の信号によってビーム配置が制御される、セルラシステムの概略図を描写する。
図10】2D/3Dビーム形成能力を有し、eNodeBによっておよび基地局から独立した外部のトラフィック密度検出器によってビーム配置が制御される、セルラシステムの概略図を描写する。
図11】2D/3Dビーム形成能力を有し、基地局から独立した外部のトラフィック密度検出器によってのみビーム配置が制御される、セルラシステムの概略図を描写する。
図12】2D/3Dビーム形成能力を有し、eNodeBによっておよびeNodeBから独立したビーム形成サブシステムの内部のトラフィック密度検出器によってビーム配置が制御される、セルラシステムの概略図を描写する。
図13】2D/3Dビーム形成能力を有し、eNodeBから独立したビーム形成サブシステムの内部のトラフィック密度検出器によってのみビーム配置が制御される、セルラシステムの概略図を描写する。
図14】2D/3Dビーム形成能力を有し、基地局から独立した外部のトラフィック密度検出器によっておよびeNodeBから独立したビーム形成サブシステムの内部のトラフィック密度検出器によってビーム配置が制御される、セルラシステムの概略図を描写する。
図15】2D/3Dビーム形成能力を有し、eNodeBによって、基地局から独立した外部のトラフィック密度検出器によって、およびeNodeBから独立したビーム形成サブシステムの内部のトラフィック密度検出器によってビーム配置が制御される、セルラシステムの概略図を描写する。
図16】システムの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
セルラシステムの基本的なアーキテクチャ
図1は、典型的なセルラネットワークの構成ブロックである、セルのコンポーネントを示す。ユーザ機器(UE)と呼ばれるワイヤレス端末400は、ワイヤレスリンク(図1では図示せず)を介して基地局に接続され、基地局は、eNodeBと呼ばれるプロセッサ100と、無線インタフェースバス300と、ラジオバンク200とを含む。UEは、携帯電話、タブレット、自動車電話などのモバイルデバイスであるか、またはコンピュータ、監視局、セキュリティデバイスなどの固定デバイスであり得る。基地局とUEとの間のワイヤレスリンクは、生成され、ラジオバンク200の基地局無線機によっておよびUEの内部の無線機によって管理される。プロセッサeNodeB 100は、バックホールと呼ばれる通信リンクを介してセルラネットワークの他のノードに接続される。
【0022】
一般に、図2でより詳細に示されるラジオバンク200は、M個の無線送信/受信モジュール(Tx/Rxモジュール)210(Mは整数)と、無線デジタルインタフェース230と、M個の内部バス220とを含む。プロセッサ100は、無線インタフェースバス300および内部バス220を介して、各Tx/Rxモジュール210へデジタル信号を送信し、各Tx/Rxモジュール210からデジタル信号を受信する。通常、Mは1〜4であるが、より多くの無線機を有するシステムも可能である。
【0023】
図3には、簡略化されたTx/Rxモジュール210が示される。このモジュールの主な機能は、デジタル信号を無線周波数(RF)信号に変換すること(その逆も行う)、ならびにアンテナにおよびアンテナからRF信号を結合することである。Tx/Rxモジュールの送信機部分は、デジタルからアナログへの変換器(DAC)および周波数アップ変換器を含み、Tx/Rxモジュールの受信機部分は、周波数ダウン変換器およびアナログからデジタルへの変換器(ADC)を含む。デジタルデュプレクサは、送信/受信経路を内部バス220に接続し、RFフロントエンドは、送信/受信経路をアンテナに接続する。RFフロントエンドは、受信機用低雑音増幅器、送信機用電力増幅器ならびにいくつかのRFフィルタおよびスイッチを含む。
【0024】
ピークおよび平均レートならびにスペクトル効率
図1のような典型的なワイヤレスセルを考慮すると、ある一定の期間にわたるセルワイヤレストラフィックは、その期間の間に基地局によってサービスされるすべてのUEとそれぞれの基地局との間で流れる情報の総量(例えば、ビットで測定される)である。ダウンストリームのセルトラフィック(すなわち、基地局からUEに流れるデータ)およびアップストリームのセルトラフィック(すなわち、UEから基地局に流れるデータ)がある。周波数分割二重(FDD)システムでは、アップストリームおよびダウンストリームのセルトラフィックは、継続的に同時に流れるが、時分割二重(TDD)システムでは、アップストリームおよびダウンストリームのトラフィックは、別個のバーストで連続して、時間的に重複することなく流れる。
【0025】
セルトラフィックを計算または測定する期間が短い場合、結果として生じるセルトラフィック値をそれぞれの期間で除したものは、瞬間セルトラフィックビットレート(例えば、ビット/秒で測定される)または単にその期間内の任意の時間における「セルレート」に非常に近い値である。一般に、アップストリームセルレートは、ダウンストリームセルレートと異なり、各々は、時間によって大幅に異なる。例えば、夜の時間帯では、それらは通常低く、場合によってはゼロになる可能性さえあるが、昼の混雑している時間帯では、それらは、はるかに高い値に達する。それに加えて、セルレートは、非常に急激に変化する場合がある。例えば、道路の交通渋滞によって多くの自動車が完全停止を強いられ、ドライバーおよび乗客が電話を使用しようとする際には、幹線道路をカバーする基地局は、データフローの突然の増加を経験するであろう。同様に、公共の場でのスポーツまたは音楽イベントの終了は、通常、そのエリアをカバーする基地局のセルレートの大きいピークを引き起こす。
【0026】
同様に、セクタ内のモバイルと通信するために基地局が使用するトラフィックビットレートとしてセクタレート(アップストリームおよびダウンストリーム)を定義する。瞬間セル/セクタレートは急速に大量に変化し得るため、ある一定の期間にわたって計算または測定される平均セル/セクタレートを考慮することも有益である。例えば、基地局が取り扱う瞬間セクタレートは、1時間の間に0.1ビット/Hz〜1ビット/Hzで大幅に異なり得るが、平均セルレートは、0.2ビット/Hzであり得、その時間の間のほとんどの時間は、瞬間セルレートが下限に近いことが想定される。一般に、基地局はセクタを同時に取り扱うため(セクタごとに別個の無線機)、瞬間および平均セルレートは、それぞれのセクタレートの合計である。従って、すべての議論および結論はセルレートにも有効であるため、セクタレートについて論じるのみで十分である。
【0027】
理論上、瞬間セクタレートは、ワイヤレス規格および使用されるEM帯域幅によって与えられる最大値ほどの高さに過ぎないものであり得る。ワイヤレスシステムの典型的な通信プロトコルは、基地局とUEとの間の通信で認められているデータレート(ダウンストリームおよびアップストリーム)の有限のセットを指定する。各UEに対して任意の時間において使用される実際のデータレートは、それぞれのワイヤレスリンクの質に依存し、基地局によって動的に設定される。例えば、リンクのSNIRがある特定の最小数値より小さい場合、基地局は、UEとのいかなるデータ転送も開始しない。リンクのSNIRが最小値より高いが次に高いレベルより低い場合、基地局は、指定される最小レートでのデータ交換を開始する。SNIRが高いほど、使用されるデータレートはそれぞれ高くなり、各レートは、最大レートまでSNIR帯域に対応する。最高レートのSNIR帯域は無限である、すなわち、SNIRのいかなる増加もより高いデータレートをもたらさない。最高のSNIRが使用される全EM帯域幅に利用可能であると想定すると、セクタ瞬間レートは最大値に達する。この時点で、基地局またはセルトラフィックは「ピーク容量」に達したと言われる。
【0028】
実際には、現在の基地局は、ネットワークトラフィック需要が高い場合でさえ、ごくまれにのみピーク容量に達する。事実上、典型的なセクタの平均レートは、最大レートより一桁以上小さい場合が多い。この主要な欠点の主な理由は、基地局と個々のUEとの間のほとんどのワイヤレスリンクの低質(低いSNIR)であり、それは、現在のワイヤレスシステムのワイヤレス信号の伝播制限がもたらす直接の結果である。第1に、信号は経路損失を受け、それは、距離と共に急激に増大する。第2に、信号は、建物、橋、木などの大地クラッタからの複数の反射に遭遇し、さらなる損失、拡散およびフェージングが生じる。第3に、隣接するセルまたは他のソースからの望まれない信号は、干渉および雑音を生じる。従って、その時間の大半は、基地局は、規格で認められているピークレートよりはるかに小さいデータレートでUEと通信することを強いられ、従って、小さい平均セクタレートをもたらす。
【0029】
EMスペクトルはワイヤレス通信において非常に貴重な資源であるため、どの程度効率的にスペクトルが使用されるかを計算することは大変興味深い。ピークスペクトル効率は、最大セクタレートをEM帯域幅で除したものである。平均スペクトル効率は、平均セクタレートをEM帯域幅で除したものである。ピークおよび平均スペクトル効率は、ビット/秒/ヘルツ(b/s/Hz)で測定される。ピークレートと比べて低い平均セクタレートを生じる低いSNIR状態は、ピークスペクトル効率と比べて低い平均スペクトル効率も生じさせる。
【0030】
平均スペクトル効率の増加
増加された平均レートは、同じEM帯域幅およびネットワークインフラストラクチャに対してより多くのトラフィックを有するため、セクタ平均スペクトル効率を増加する方法を適用することは、セルラシステムオペレータおよびユーザにとって最も重要であり、有益である。スペクトル効率を増加することなく、セクタ平均レートを増加する他のいかなる方法も、費用がかかる追加のEMスペクトルの取得またはコストがかかるインフラストラクチャ拡張(セルタワー、基地局および関連機器の追加など)を必要とする。
【0031】
スペクトル効率を増加するための従来の方法は、ワイヤレスシステムのある世代からより高度な世代への移行であった。このことは、より複雑な変調技法の使用が理論上システムのピークスペクトル効率を増加するという事実が動機となっている。しかし、ワイヤレスリンクSNIRにおける実用的な制限は、平均スペクトル効率のはるかに少ない改善をもたらしている。MIMO技法の導入でさえ、普及している同じ低いSNIR状態により、平均スペクトル効率を増加することはなかった(ただし、単に中程度の増加はあった)。それに加えて、MIMOは、大量の信号処理要件により、消費電力およびUE通話時間における大きいペナルティを課す。最後に、処理集約型ビーム形成技術の開発および展開の多くの試みは、平均スペクトル効率の改善において、MIMOよりもさらに成功率が低いものとなっている。従来のビーム形成技法は少数のアンテナを使用し、その名称にかかわらず、狭ビームの使用よりもむしろ干渉除去に主として依存することについて言及することが重要である。
【0032】
米国特許出願第13/442,561号明細書で説明されているアジャイルビームの方法は、平均スペクトル効率問題を解決するための新しい次元を導入する。狭いペンシルビームの使用は、開始時からかなり大きいSNIRをもたらす。3Dビームとしても知られているこれらのビームは、方位角および仰角の両方において狭い立体角にエネルギーを集中させ、UEが受信する信号レベルを増加し、複数の経路の多くを排除することによってフェージングおよび拡散を低減する。そのうえ、隣接するセクタにおける狭いペンシルビームの使用は、セクタ間干渉を最小化する。しかし、セクタ全体にわたってSNIRを均一に高めるためのペナルティは、各UEからの/各UEへのデータフローでのビーム配置および走査のリアルタイムでの正確な調整に対する厳しい条件である。これには、UE送信および受信時間スロットの適切なスケジューリングを保証する基地局のソフトウェア能力が必要とされる。このシステムは、図4に示されるようにセクタ500においてUE 400が均一に分布している際には、平均スペクトル効率を増加する。
【0033】
実際には、セクタ平均スペクトル効率を著しく増加するためにセクタ内のすべてのポイントにおいて高いSNIRを有する必要はない多くの例がある。例えば、図5に示されるように、UE 400の大部分がセクタ500の少数の小さいエリアに存在する場合、セクタ平均スペクトル効率を高めるには、それらのエリアのSNIRを増加するのみで十分である。同様に、UEがセクタの異なるエリアに全くまたはほとんど存在しない場合、そのエリアを低いSNIRでカバーしても、平均スペクトル効率に対する影響はほとんどない。例えば、UEがいくつかの小さいエリアに分類される図5では、EM放射501でセクタをカバーする(低いSNIRを至るところで提供する)ことにより、非常に低いセクタ平均スペクトル効率が生じる。しかし、図6のようにUEが存在するエリアに狭いペンシルビーム502を配置することにより、UEの大部分がより良いSNIRを経験するため、セクタスペクトル効率が明確に著しく改善される。ビームによってカバーされたエリアの外側の少数のUEは、個々の低い平均スペクトル効率での動作を継続するが、セクタ平均スペクトル効率へのそれらの寄与は小さい。UE 400が均一に分布している図4の事例で狭ビームを配置する際には、この効果はかなり低減される。セクタの至るところに配置された狭いペンシルビームは、多くのUEを高いSNIRエリアの外側に放置し、従って、セクタ平均スペクトル効率の増加は大きくはない。
【0034】
図7は、方位角において狭いが、仰角において広い、ウェッジビーム503でローカルSNIRを高める試みの事例を示す。2Dビームとしても知られているこれらのビームは、UEの大部分が小さいエリアに分類される際、セクタ平均スペクトル効率の上昇においてペンシル(3D)ビームほど効果的ではない。
【0035】
一般に、多くのUEが少数の小さいエリアに位置する不均一なトラフィック状況の場合、UE分布と一致する不均一なSNIRセクタ分布は、均一なSNIR分布またはUE分布と一致しない不均一なSNIR分布より高い平均スペクトル効率を生じさせると結論付けられる。この観察は、SNIR分布の作成に使用されるビームが狭いという暗黙の想定の下で本発明の基礎である。そうでなければ、SNIR改善はわずかである。そのうえ、セクタ内のUE分布が時間と共に変化する場合、以前の最適条件にSNIR分布を維持すると、低い平均スペクトル効率が確実に生じる。しかし、新しいUE分布は依然として多くのUEが小さいエリアに分類された不均一なものであると想定して、新しいUE分布と一致するようにSNIR分布を更新することにより、高い平均スペクトル効率が維持される。この概念を利用するため、次に、狭ビームを生成するための方法およびUE分布と一致するSNIR分布を作成するように狭ビームを配置するための方法について説明する。
【0036】
従来のタワーアンテナによって生成された広ビーム
従来の基地局アンテナは、120度セクタ全体をカバーし、セクタの外側では最小(理想的にはゼロ)である、指向性放射パターンまたはビームを生成する。本明細書の目的のため、これらのビームは「広い」と呼ばれる。従来の120度セルラセクタの小さい部分(例えば、セクタの1/10またはそれより小さいエリア)のみをカバーするであろうアンテナ放射パターンは、通常の広ビームの代わりに使用される場合、「狭」ビームと呼ばれる。そのような狭ビームは、パラボラアンテナまたは二次元アンテナアレイで生成することができる。
【0037】
広ビームを生成する典型的な従来のセクタアンテナは、アンテナ要素の1つまたは少数の垂直柱で構築され、各要素は、120度セクタより広いビームで放射する。ケーブルおよび移相器のネットワークは、すべてのアンテナ要素からのビームの重ね合わせであるセクタアンテナの全体的な放射パターンが120度セクタ内にほぼ完全に含まれるように、単一の無線周波数(RF)入力からこれらのアンテナ要素に供給する。
【0038】
セルタワー上の高い場所などのアンテナの有利な地点から、セクタの地上エリアの方に放射を向けるには、仰角において比較的狭い角度であるが、方位角においてより広い角度に放射を集中させる必要がある。アンテナ要素の垂直柱が典型的なセクタアンテナで使用されるのはこのためである。結果として生じるセクタアンテナの開口は、方位角で大きく、仰角で小さい。アンテナ要素の広ビームは、狭い角度内でのみ仰角において建設的に干渉し、その狭い角度の外側の仰角において破壊的に干渉する。また、アンテナ要素の広ビームは、広い角度にわたる方位角において建設的に干渉し、広い角度の外側の方位角において破壊的に干渉する。
【0039】
実際には、こうして生成された広ビームは、地上レベルにおいて不均一なSNIRでセクタをカバーし、セクタ境界から離れたセクタの内側のある場所では最大であり、セクタ境界においてはるかに小さい。このことは、隣接するセクタおよびセル間の相互干渉を最小化するために必要である。前の項目での論考の通り、非常に多数の事例では、セクタアンテナからのSNIR分布はUE分布とは一致せず、それにより、小さいセクタスペクトル効率がもたらされる。事実上、よくある事例では、UE分布がセクタ境界にUEグループを含む際には、スペクトル効率はさらに低くなる。
【0040】
明確には、固定された広ビームでの従来のセクタアンテナの使用は、スペクトル効率にとって最適ではない。これは、大部分のセクタが実際に経験する低い平均スペクトル効率をさらに説明する。この状況の軽度の改善は、機械的/電気的な傾斜、回転およびファニング技術を使用することによって達成される。傾斜の事例では、アンテナは、仰角においてアンテナ放射パターンを傾斜することによってタワーから遠いまたはタワーに近い地上へのピークSNIR投影の位置を変更するための機械的または電気機械的手段を用いて設計される。RET(遠隔電気傾斜計)と呼ばれるこれらのアンテナのいくつかは、離れた場所から電気的に調整することができる。よくあるRET設計は、所望の効果を得るためになど、アンテナ要素へのRF供給ネットワークの電気特性を変更するメカニズムを作動させるために電気モータがアンテナ本体上に配置されたものである。同様の電気機械設計は、パニングおよびファニング効果と呼ばれるアンテナ本体全体の方位角における物理的回転(すなわち、方位角におけるビーム幅の変更)をもたらすことができる。
【0041】
送信および受信光線
アンテナ放射パターンを説明するための厳密な方法は、アンテナから伝播する平面波の発射角(AOD)を考慮することによるものである。一般に、送信されるいかなる三次元アンテナ放射パターンも、平面波の重ね合わせに分解することができ、各々は、様々なAOD上のアンテナ電磁(EM)力の一部分を伝える。これらの平面波は、「光線」とも呼ばれる。一般に、これらの光線の強度は、AODによって異なり、アンテナが焦点を合わせるように設計される立体角の外側では無視できるようになるか、またはゼロとなる。従来のセルラアンテナの場合、120度セクタ全体をカバーすることにより、無視できないエネルギーを有するすべての光線のAODは、タワー上のアンテナ位置からのセクタの視野と同じ大きさの立体角を形成する。いくつかのセルラアンテナは、より小さいエリア範囲に対する、標準の120度セクタより狭いビームを生成するように設計される。
【0042】
通常、アンテナは、相互電気システムとして構築される、すなわち、アンテナは、同一の送信および受信放射パターンを有する。従って、AODで送信された各平面波に対し、対応する同一の平面波は、それぞれのAODと等しい到来角(AOA)で受信することができる。送信および受信電磁エネルギー間のこの相互関係がここで論じられるすべての事例で有効であると想定すると、本明細書の残りの部分において、簡単にするためにAODおよび送信光線のみに言及するが、以下のすべての論考、議論および請求項は、AOAおよび受信光線も対象とする。
【0043】
ある特定のAODに沿ったアンテナ利得は、それぞれのAODにおける送信光線の電力と、考慮中のアンテナと同じ総EM電力である、すべての方向に等しく放射する(等方性放射)仮説上のアンテナからの任意の方向における仮説上の送信光線の電力との比率として定義される。通常、アンテナ利得は、電力比の常例に従って、デシベル(dB)で測定される。この利得が等方性放射体に対して計算されることを明確に示すため、アンテナ利得のdB単位は、デシベル等方性または「dBi」と呼ばれる。セクタアンテナに使用されるアンテナ要素は、3〜6dBiの最大利得を有する。12の要素を有する典型的な120度セクタアンテナは、15〜17dBiの最大利得を有する。96のアンテナ要素(例えば、12×8)を有する平面アレイは、約25dBiの最大利得を有する。マイクロ波ポイントツーポイントリンクにおいて使用されるパラボラアンテナは、30〜40dBiと同じ高さの最大利得を有する。
【0044】
ある方向におけるアンテナ利得の概念は、ビームおよびビームの方向の厳密な定義を可能にする。本明細書の目的のため、ビームは、特定の立体角の内側のアンテナ放射パターンであり、特定の立体角は、アンテナの中心に頂点を有し、3つの条件を満たす。これらの条件は、a)最大アンテナ利得を有する方向はこの立体角の内側にあること、b)この立体角内の他のすべての方向におけるアンテナ利得は最大利得より3dBを超えないで小さいこと、およびc)この立体角の外側のすべての方向におけるアンテナ利得は最大利得より3dBを超えて小さいことである。最大利得に対する方向は、ビーム方向を定義する。
【0045】
光線の伝播
従来のセルラアンテナによって生成された広ビームは、大きいAOD変動を有する光線を含む。セクタ内に障害物がなく、すべてのUEが見通し線(LOS)上に位置するまれな事例では、近いAODを有する光線グループのみが各UEに到達する。各UEに対する信号損失は、広い立体角における送信エネルギーの拡散が原因で大きいが、いずれかのUEに到達するすべての光線はほぼ同一の経路を有するため、複数経路フェージングはほとんどまたは全くない。しかし、さらによくある事例では、光線反射をもたらす自然のおよび人造のクラッタをセクタが含む際、ならびに/あるいは建物または天然障害物の後ろなど、UEのいくつかが見通し線上に位置しない(NLOS)際には、通常、いくつかの光線グループが各UEに到達する。各グループ内では、光線は同様の経路を有するが、異なるグループからの光線はむしろ異なる経路を有する。これにより、損失に加えて、強力な複数経路フェージングが生じる。損失およびフェージングは、セクタにおけるSNIRに対する有害作用である。
【0046】
狭ビームは、放射(アンテナ)要素の二次元アレイの使用を含むいくつかの方法によって生成することができる。狭ビームの光線は、自然に、小さいAOD変動のみを有する。結果的に、これらの光線は、LOSまたはNLOS状況で、およびクラッタの有無にかかわらずセクタにおいて、同様の経路を通じて伝播する。狭ビームにおける損失は、空間拡散がより少ないため、広ビームにおける損失より小さく、複数経路フェージングは、UEに到達する異なる経路がより少ないため、低減される。
【0047】
ビームポインティング
以前に定義されるように、ビームの方向は、アンテナ利得が最大であるアンテナ位置から考慮される方向である。均等な方法で述べられるように、ビームは、最大アンテナ利得を有する方向である方向を「向く」。
【0048】
ビームの方向は、単なる機械的手段によって、機械的手段と電気的手段とを混合することによって、または単なる電気的手段によって変更することができる。例えば、従来のセクタアンテナは、アンテナ広ビームがセクタ内の好都合な場所を向くように、アンテナ仰角または傾斜の調整を可能にする機械固定具でセルラタワー上に設置される。ビームを向けるためのこの単なる機械的方法は、非常にまれな調整に限定される。RETアンテナは、前に説明されるように、機械的手段と電気的手段とを混合することによって、仰角におけるビームポインティング調整の例を提供する。これらのアンテナのビーム方向調整は、ゆっくりではあるが、頻繁に実行することができる。
【0049】
RADARで使用されるものなどのフェーズドアレイは、単なる電気的手段によって、非常に急激に多くの方向に向けることができる狭い3Dビームを生成する。「ビームステアリング」としても知られているフェーズドアレイのビーム方向の移動は、アンテナ要素に印加される信号の位相を変更することによって達成される。一般に、フェーズドアレイは、独立して誘導することが可能な複数の独立した狭ビームを生成することができる。この理由から、フェーズドアレイは、SNIR値が高い小さいエリアを有する地上における不均一なSNIRパターンを作成できるため、ワイヤレス通信システムにおけるインフラストラクチャアンテナとしての使用に適している。これは、ワイヤレストラフィックパターンが不均一である際に平均スペクトル効率を増加するための効果的な方法であることが前に示されている。
【0050】
ビーム配置制御
図8は、典型的なセルラネットワークにおけるセルのコンポーネントを示し、図1からのラジオバンク200は、ビーム形成およびビームステアリング機能を追加したBFSラジオバンクと呼ばれるより複雑なラジオバンク600に置き換えられている。内部ビーム形成アクティブアンテナシステム610は、ビーム形成を提供し、内部ビーム配置制御620は、ビームステアリングを提供する。ビーム形成アクティブアンテナシステム610がフェーズドアレイの場合、ビーム配置制御620は、610によって送信または受信された信号に対する位相および振幅値を提供する。
【0051】
eNodeB 100は、制御ライン621上で送信された適切な制御信号を介して、ビームのポインティング方向および地上におけるそれぞれのビーム配置を制御する。これらの制御信号は、様々な既定のビーム位置に対応する単純なコードであり得る。この事例では、ビーム形成のためのすべての位相および振幅情報は、BFSラジオバンク600に既に存在している。制御信号の別の例は、ビームを生成するためにビーム形成アクティブアンテナシステム610が必要とする位相および振幅数値の全セットである。ビーム配置制御ブロック620は、内部制御ライン611を介してビーム形成アクティブアンテナシステム610を制御する。
【0052】
eNodeB 100、無線インタフェースバス300、BFSラジオバンク600および制御ライン621を含む図8の基地局は、BFSラジオバンクによって生成されたビームの方向を選択するために、図1の基地局で必要とは限らない追加の機能を必要とする(ブロック100、300および600)。前に論じられるように、これらのビームの配置は、ワイヤレストラフィックが不均一である際のセクタ平均スペクトル効率に対する重要な結果を導く。従って、可能な限り高い平均スペクトル効率を得るために、最適なビーム配置を見出すことが重要である。そのうえ、この最適なビーム配置は、トラフィックパターンと一致するように適応的に変更しなければならない。
【0053】
正常な動作として、eNodeBは、それがサービスするUE 400へのあらゆるリンクに対する詳細なSNIRおよびデータレート情報を有する。従って、eNodeBは、任意の時間における瞬間および平均スペクトル効率を計算することができる。そのうえ、eNodeBは、これらのパラメータの履歴を記録し、1日のうちの数時間にわたっておよびより長い期間にわたって(季節の変化を含む)それらの統計を分析することができる。そのような記録および分析は、自動的にまたは人間の介入と併せて行うことができる。それに加えて、これらの統計とUEの物理的な位置との相関を実行することができる。eNodeBは、UEによって報告されるGPS座標または三角測量技法など、UEの物理的な位置を見出すためのいくつかの手段を有する。そのような統計的計算の最終的な目標は、トラフィックパターンのマップを生成し、トラフィックパターンを同様のSNIRパターンと一致させるようになど、ビームを向けることである。
【0054】
トラフィックパターンマップを迅速かつ容易に得るための方法は、フェーズドアレイによって生成されるものなど、狭ビームを使用することによるものである。このビームがセクタ全体をゆっくりと走査する一方で、eNodeBは、各ビーム位置に対してこのビームによってカバーされるエリアのスペクトル効率を計算する。1回または数回のそのような走査の後、eNodeBは、ビームがスペクトル効率を増加する方向、すなわち、ワイヤレストラフィックがクラスタ化する方向(例えば、通信密度がピークまたは最大値を経験する方向)を決定する。次いで、eNodeBは、すべての利用可能なビームを可能な限りトラフィックが大きい多くの方向に向ける。トラフィックパターンマップを生成するため、1日のうちの異なる時間および1年のうちの異なる日に、同じ手順を行うことができる。これらのマップが利用可能となった後、さらなる計算なしでビーム配置をプログラムすることができる。しかし、平均スペクトル効率が悪化した場合、前と同じ手順でトラフィックマップを更新しなければならない。
【0055】
図8の基地局は、上記で説明される方法または同様のものによるビーム配置をすべて担当する。しかし、図9に示されるように、制御ライン621に加えて制御ライン622を有するビーム配置制御620を設計することが可能である。この事例では、基地局以外のシステムがビームの形成およびポインティングを行うことができる。
【0056】
外部のトラフィック密度検出器
上記で説明される、スペクトル効率モニタリングを伴うビーム走査の方法、およびトラフィックマップを生成するための統計的計算の方法は、セクタのトラフィック密度を検出するための方法の一般的クラスの例である。そのような方法をサポートするハードウェア、ファームウェア、ソフトウェアまたはそれらの任意の混合物は、「トラフィック密度検出器」と呼ばれる。図8の基地局は、ビームの正しい配置を決定するために、eNodeBベースのトラフィック密度検出器を暗黙のうちに含む。図9のシステムを適切に動作させるため、外部のトラフィック密度検出器700は、図10のように接続しなければならない。外部のトラフィック密度検出器の例は、UEで実行中のソフトウェアからリンクの質およびデータレート値を受信する独立サーバ(eNodeBの一部ではない)である。報告される情報は、瞬間値または一定の期間の平均であり得る。UEは、セルラシステムの通常のクライアントと同じように、標準チャネルを介してサーバと通信する。
【0057】
図10のように、ビームの配置がeNodeBおよび外部のトラフィック密度検出器の両方の制御下にある場合、eNodeBおよび外部のトラフィック密度検出器が互いに対抗してビームの誘導を試みる際には、不安定な動作ループを回避するように注意を払わなければならない。この潜在的な問題に対する解決法は、eNodeBおよび外部のトラフィック密度検出器に異なるビームの制御を割り当てることである。例えば、eNodeBは、1日のうちの様々な時間においてトラフィックが大きい、いくつかの既知の場所に少数のビームを配置するようにプログラムすることができ、外部のトラフィック密度検出器は、セクタの一部分で予測不可能な高いトラフィック密度が起こった際の追加のビーム配置に対して使用することができる。
【0058】
外部のトラフィック密度検出器が使用される場合、もはやeNodeBをビーム成形およびビームステアリング機能の制御に関与させる必要はない。図11は、無線インタフェースバス300のみを介してeNodeBがBFSラジオバンク600に接続されるシステムを示す。この事例では、外部のトラフィック密度検出器700は、システムのすべてのビーム制御機能を実行する。この構成は、実際には、eNodeBを変更することなく、単純に外部のトラフィック密度検出器を追加することによって、(高いスペクトル効率を得るために)図1の従来のシステムを改造してBFSラジオバンクを設置し、最適なビーム形成およびステアリング機能を導入するために重要である。
【0059】
内部のトラフィック密度検出器
図12は、BFSラジオバンク600の内側に存在する、内部のトラフィック密度検出器640と呼ばれる、トラフィック密度検出器を使用する可能性を示す。このブロックは、内部ライン623を介してビーム配置制御ブロック620を制御する。内部のトラフィック密度検出器は、ワイヤレストラフィックについての情報源を必要とする。BFSラジオバンクの内側で利用可能な唯一のそのような情報源は、無線インタフェースバス300である。事実上、この基地局に対するすべてのセルラトラフィックに関する完全な情報は、無線インタフェースバス300を通過する。信号分割器630は、この情報を得て、ライン641を介してそれを内部のトラフィック密度検出器640に送信するために必要である。また、分割器630は、ライン631を介してビーム形成アクティブアンテナシステム610にも接続される。
【0060】
トラフィックパターンを無線インタフェースバス信号から取り出すことは複雑な動作であり、前に説明されるように、eNodeBで実行することができる。従って、内部のトラフィック密度検出器の例は、トラフィックパターンを検出するためのeNodeBの最小機能のレプリカである。しかし、無線インタフェースバスを通じて流れる生の無線データの密度をモニタするなど、より簡単な方法が利用可能である。
【0061】
図13、14および15は、内部および外部のトラフィック密度検出器ならびにeNodeBの様々な組合せによってビーム配置制御が提供される様々なシステム構成を示す。以前に示される実施形態の対応するコンポーネントの説明は、これらの図にも適用される。以前の通り、様々なトラフィック密度検出器間の衝突を回避するため、制御の適切な計画が必要である。
【0062】
例示的なシステムの動作については、図16に示されている。セルラ通信が提供されている地理的領域に位置する複数ビームフェーズドアレイは、需要密度が集中するエリアを向く複数の誘導可能ビームを生成する。定期的または既定の時間に、システムは、アレイによって生成された複数の通信ビームの位置を更新するためのプロセスを開始する(ステップ800)。第1に、システムは、その需要密度についての最新の情報を得る(ステップ802)。そのことは、対応する時間スロットに対して測定された需要密度を示すデータ履歴を反映する格納された情報を参照することによって、または外部の情報源からもしくは内部で動作中に基地局によって収集されたデータから、その時間の需要密度の直接測定を得ることによって遂行することができる(上記で詳細に説明される異なる手法を参照)。
【0063】
その時間帯に対する需要密度の地理的または空間的分布を決定すると、システムは、最も需要の大きいエリアまたは需要が集中するエリアを識別し(ステップ804)、次いで、システムは、それらのエリアにサービスするために個々の通信ビームを向ける(ステップ806)。
【0064】
ある程度の時間が経つと、このプロセスは、その後の時間の需要密度の地理的または空間的分布の変化に基づいて、他のより適切なエリアにビームを誘導するために繰り返される。
【0065】
このプロセスは、一定の間隔でまたは既定の不規則な時間に実行することができる。需要密度が継続的に変化する環境においてシステムが動作している場合、一定の間隔でシステムを更新することが適切であり得る。その一方で、需要密度の著しい変化が通常は1日、1週間または1ヶ月のうちのある時間に起こることをデータ履歴が示す場合、システムは、それらの特定の時間に更新手順を実行するようにプログラムすることができる。
【0066】
他の実施形態は、以下の請求項の範囲内にある。例えば、前に示されるように、セルの平均容量を最大化するために使用される狭ビームは、全体的なモバイル通信密度の空間的分布内で起こるクラスタリングのタイプまたは形状に適合するように選択された異なる形状、サイズおよび/または極性を有することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16