特許第6900370号(P6900370)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6900370
(24)【登録日】2021年6月18日
(45)【発行日】2021年7月7日
(54)【発明の名称】両面セルを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/068 20120101AFI20210628BHJP
   H01L 31/18 20060101ALI20210628BHJP
【FI】
   H01L31/06 300
   H01L31/04 440
【請求項の数】24
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2018-521088(P2018-521088)
(86)(22)【出願日】2016年10月25日
(65)【公表番号】特表2018-531521(P2018-531521A)
(43)【公表日】2018年10月25日
(86)【国際出願番号】IL2016051148
(87)【国際公開番号】WO2017072758
(87)【国際公開日】20170504
【審査請求日】2019年9月18日
(31)【優先権主張番号】62/246,082
(32)【優先日】2015年10月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518135630
【氏名又は名称】ソルアラウンド リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】エイセンバーグ,ナフタリ パウル
(72)【発明者】
【氏名】クレイニン,レヴ
【審査官】 佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2013/0344647(US,A1)
【文献】 独国特許出願公開第102013218351(DE,A1)
【文献】 国際公開第2014/101990(WO,A1)
【文献】 特表2013−511838(JP,A)
【文献】 特開2015−106624(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/04−31/078、31/18−31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両面光起電力セルを製造する方法であって、
a)半導体基板の第1の表面に、n-ドーパント含有層を形成するステップと、
b)ホウ素のスパッタリング、および/またはホウ素のイオン注入により、前記半導体基板の第2の表面に、ホウ素含有層を形成するステップと、
c)前記半導体基板への前記n-ドーパントの拡散および前記ホウ素の拡散を実施するステップであって、これにより、前記第1の表面が前記n-ドーパントでドープされ、n-ドープ層が形成され、前記第2の表面が前記ホウ素でドープされる、ステップと、
d)構造化により、前記第1の表面の前記n-ドープ層を除去するステップと、
e)前記第2の表面に、不動態化および/または抗反射コーティングを形成するステップと、
f)その後、前記第1の表面をn-ドーパントでドーピングするステップと、
を有し、
前記n-ドーパント含有層を形成するステップ(ステップ(a))は、前記ホウ素含有層を形成するステップ(ステップ(b))の前に、同時に、および/または後に、実施される、方法。
【請求項2】
前記ホウ素含有層の厚さは、1から35nmの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ホウ素のスパッタリングは、窒化ホウ素ターゲットを用いて行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ホウ素のイオン注入は、1014から1016注入イオン/cm2の範囲の投与量である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ホウ素含有層におけるホウ素量のばらつきは、±5%以下である、請求項1乃至4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
さらに、前記ホウ素含有層を形成するステップの後に、
前記ホウ素含有層の上部に、キャップ層を形成するステップ
を有する、請求項1乃至5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
前記キャップ層を形成するステップは、酸化ケイ素、窒化ケイ素、および酸窒化ケイ素からなる群から選定された物質を成膜することにより実施される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記キャップ層を形成するステップは、高周波スパッタリング法により実施される、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記キャップ層の厚さは、5から30nmの範囲である、請求項6乃至8のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
前記n-ドーパントと前記ホウ素の同時の拡散は、950℃から1050℃の範囲の温度に暴露することにより実施される、請求項1乃至9のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
前記ホウ素含有層および前記拡散の条件は、前記第2の表面におけるホウ素の表面濃度が3×1020原子/cm3未満となるように選定される、請求項1乃至10のいずれか一つに記載の方法。
【請求項12】
前記ホウ素含有層および前記拡散の条件は、前記第2の表面がホウ素でドーピングされ、厚さが0.3から1.5μmの範囲のp+層が形成されるように選定される、請求項1乃至11のいずれか一つに記載の方法。
【請求項13】
前記ホウ素含有層および前記拡散の条件は、前記第2の表面がホウ素でドーピングされ、シート抵抗が30から150Ω/sqの範囲のp+層が形成されるように選定される、請求項1乃至12のいずれか一つに記載の方法。
【請求項14】
さらに、
構造化により前記第1の表面における前記n-ドープ層を除去するステップ(ステップ(d))の後、前記キャップ層を除去するステッ
を有する、請求項6乃至9のいずれか一つに記載の方法。
【請求項15】
前記その後、前記第1の表面をn-ドーパントでドーピングするステップでは、シート抵抗が70から150Ω/sqの範囲のn+層が形成される、請求項1乃至14のいずれか一つに記載の方法。
【請求項16】
さらに、前記第1の表面に、不動態化および/または抗反射コーティングを形成するステップを有する、請求項1乃至15のいずれか一つに記載の方法。
【請求項17】
さらに、
前記第1の表面および前記第2の表面の各々に、電気的コンタクトを形成するステップ
を有する、請求項1乃至16のいずれか一つに記載の方法。
【請求項18】
前記ホウ素含有層は、前記第2の表面のある領域において、より大きな厚さを有し、
当該方法は、
前記第2の表面の前記領域に、電気的コンタクトを選択的に形成するステップ
を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記半導体基板は、p型半導体である、請求項1乃至18のいずれか一つに記載の方法。
【請求項20】
前記半導体基板は、シリコンを有する、請求項1乃至19のいずれか一つに記載の方法。
【請求項21】
さらに、
前記第2の表面に、SiB層を形成するステップ
を有する、請求項1乃至20のいずれか一つに記載の方法。
【請求項22】
さらに、前記第2の表面の端部にある領域を形成するステップを有し、前記領域は、0.1から0.5mmの範囲の幅を有し、実質的にホウ素を含まず、
前記ある領域を形成するステップは、
ステップ(a)がステップ(b)の前に実施される場合、ステップ(b)の間、前記領域をマスクすることにより実施され、
またはステップ(b)の後であって、必要な場合、ステップ(c)の前に、前記領域をエッチングすることにより実施される、請求項1乃至21のいずれか一つに記載の方法。
【請求項23】
前記領域を前記エッチングすることは、反応性イオンエッチング法により実施される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記n-ドーパントは、リンを有する、請求項1乃至23のいずれか一つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ある実施形態において、両面セルの製造に関し、これに限られるものではないが、特に、微調整可能なホウ素ドープおよび抑制されたエッジシャントを有する、シリコン基板にセル構造を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光起電力セル(PV)による太陽光の電気への変換には、将来の再生可能エネルギーの大きなソース源が提供され、これにより、化石燃料のようなエネルギーの非再生可能ソース源の使用が抑制されるため、大きな期待がある。しかしながら、環境フレンドリーな再生可能エネルギーソース源に対する世界規模の需要を満たすためには、PVエネルギー生成の経済性の改善が必要である。単位太陽電池面積当たりのエネルギー生成の限られた能力では、商業用電源としての光起電力セルの使用が停滞する。通常の単面セルを両面セルに置換することにより、単位面積当たりのPVエネルギー生成量の大きな上昇が可能となる(15−40%)。
【0003】
しかしながら、PVエネルギー生成密度のさらなる向上に関して、強い要望がある。これは、両面セルの前後における太陽光の電気変換の効率の増大により、達成できる。実際には、光起電力セルは、製造が安価である必要がある。
【0004】
光起電力セルは、通常、p型またはn型のシリコン基板を有し、その片側に、n-ドーパント(例えばリン)がドープされると、n+層が形成され、反対の側にp-ドーパント(例えばアルミニウムまたはホウ素)がドープされると、p+層が形成される。これにより、n+-p-p+構造(p型基板を使用した場合)またはn+-n-p+構造(n型基板を使用した場合)が形成される。
【0005】
次に、各側に、電気的コンタクトが設置される。光透過の妨害を回避するため、電気的コンタクトは、表面積の小さな割合のみを被覆する必要がある。電気的コンタクトは、通常、グリッドパターンに設置され、表面積の被覆が最小限に抑制される。単面光起電力セルは、通常、セルの片面のみに、そのようなグリッドパターンを有する。一方、両面光起電力セルは、そのようなパターンを両面に有し、従って、任意の方向からの光を収集できる。
【0006】
ドーパント源を設置する異なる方法が知られている。リン成膜用にPOCl3を用い、ホウ素成膜用にBCl3またはBBr3を使用する気相プロセスが、広く使用されている。ガス拡散の結果、単一の領域における2つのドーパント種のクロスドーピングのような、不適切な領域のドーピングが容易に生じ得る。保護層の成膜および/またはある領域からのドーパント除去のためのエッチングを含む、追加のステップが導入される(Buckら,「フロントホウ素エミッタを有し、効率が17%を超える、産業用のスクリーン印刷されたn-型シリコン太陽電池」,Proceedings,21st European Photovolatic Solar Energy Conference,2006,p.1264-1267)。これは、セルの製造を複雑化させる。
【0007】
ドーパント含有膜を成膜するため、化学気相成膜(CVD)法を用いた、Geminus(トレードマーク)両面セルライン(Schmid Group)が調製されている。
【0008】
今日まで、p型シリコン系両面セルの産業製造における最良の結果は、スピンオン技術を用いて、ドーパント源を成膜することであると認識されている(米国特許第8,586,862号および8,796,060号)。
【0009】
Kreininら、「n+-p-p+構造を有する産業的に製造された両面Si太陽電池」,Proceedings,28th European Photovolatic Solar Energy Conference,2013,p.1835-1838には、高効率の両面太陽電池を得るため、抵抗率の背面再結合(これは、背面p+層によるn+-p-p+構造において促進される)、ならびに少数キャリアの高いバルク寿命を達成することが望ましいことが記載されている。また、p-ドーパントとしてホウ素を使用するp型シリコン系両面セルが記載されており、これは、55〜95cm/秒の有効背面再結合を有し、平均背面対前面短絡電流比は、0.75である。
【0010】
ホウ素は、良く知られたp-ドーパントであり、シリコンに十分に溶解するという利点を有し、これにより(n+-p-p+構造における)高いp+-pバリアが得られ、これは、背面再結合を有効に抑制する(Kreininら,Proceedings,28th European Photovolatic Solar Energy Conference 2013,p.1835-1838)。しかしながら、ホウ素拡散は、バルク寿命の相応の劣化に関連し、これにより、光起電力セルの効率が低下する。この障害のため、p-ドーパントとしてのアルミニウムの幅広い使用が推奨されるが、アルミニウムは、背面再結合の抑制に関し、ホウ素よりも効率が劣る傾向にある。
【0011】
また、ホウ素の拡散に関連した劣化を抑制するため、(n+-p-p+構造において)n型シリコンが使用されている(Buckら,Proceedings,21st European Photovoltanic Solar Energy Conference 2006,p.1264-1267)。n型シリコンは、通常、産業的プロセス処理により導入される欠陥に対して、p型シリコンよりも高耐性であるが、より高価である。
【0012】
両面セル製造の別の問題は、異なる種類のドーパント(例えばホウ素アクセプタとリンドナー)の使用の結果、ウェハのある領域、特に端部にクロスドーピングが生じ、この結果、シャントが生じ得ることである。エッジシャントを避けるための技術には、レーザ端部絶縁、および端部エッチングが含まれ、これらはいずれも、n+層とp+層の間の接触を回避することを意図するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開第2011/061693号
【特許文献2】国際公開第2011/061694号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
米国特許第8,586,862号および第8,796,060号には、シャントを抑制するため、スピンオン法を用いて、例えば前側を洗浄溶液(例えばアルコールおよび水)で洗浄することにより、前側(すなわちnドープ側)および基板の端部から、pドーパントを有する膜を除去する中間ステップが記載されている。このステップでは、基板の端部に隣接する0.1から1mmの幅の領域の膜も除去され、光起電力セルの得られるp+層は、基板の端部に隣接する領域を被覆しない。
【0015】
追加の背景技術には、Eisenbergら、「Energy Procedia 2016,92:16-23」、国際公開WO2011/061693号、およびWO2011/061694号、露国特許第2139601号、米国特許出願公開第20110114152号、米国特許出願公開第20080026550号、米国特許第6,825,104号、米国特許第6,552,414号、米国特許第6,277,667号、米国特許第6,180,869号、米国特許第5,871,591号、米国特許第4,989,059号、独国特許第102007036921号、よび欧州特許第1738402号が含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明のある実施形態では、両面光起電力セルを製造する方法が提供される。当該方法は、
a)半導体基板の第1の表面に、n-ドーパント含有層を形成するステップと、
b)ホウ素のスパッタリング、および/またはホウ素のイオン注入により、前記半導体基板の第2の表面に、ホウ素含有層を形成するステップと、
c)前記半導体基板への前記n-ドーパントの拡散および前記ホウ素の拡散を実施するステップであって、これにより、前記第1の表面が前記n-ドーパントでドープされ、前記第2の表面が前記ホウ素でドープされる、ステップと、
を有する。
【0017】
本発明のある実施形態では、前述の方法で調製された両面光起電力セルが提供される。
【0018】
本発明のある実施形態では、半導体基板を有する両面光起電力セルであって、
前記基板は、第1の表面にn+層を有し、第2の表面にp+層を有し、前記n+層は、n-ドーパントを有し、前記p+層は、ホウ素を有し、
前記p+層のシート抵抗の測定により定められる、前記p+層におけるホウ素濃度のばらつきは、5%以下である、両面光起電力セルが提供される。
【0019】
本発明のある実施形態では、前述の両面光起電力セルを複数有する光起電力モジュールであって、前記複数の両面光起電力セルは、互いに相互接続される、光起電力モジュールが提供される。
【0020】
本発明のある実施形態では、前述の光起電力モジュールを有する電力プラントが提供される。
【0021】
本発明のある実施形態では、前述の両面光起電力セルを有する電気装置が提供される。
【0022】
本発明のある実施形態では、前記ホウ素含有層の厚さは、1から35nmの範囲である。
【0023】
本発明のある実施形態では、前記ホウ素のスパッタリングは、窒化ホウ素ターゲットを用いて行われる。
【0024】
本発明のある実施形態では、前記ホウ素のイオン注入は、1014から1016注入イオン/cm2の範囲の投与量である。
【0025】
本発明のある実施形態では、前記ホウ素含有層におけるホウ素量のばらつきは、±5%以下である。
【0026】
本発明のある実施形態では、当該方法は、さらに、前記拡散を実施するステップの前に、
前記ホウ素含有層の上部に、キャップ層を形成するステップ
を有する。
【0027】
本発明のある実施形態では、前記キャップ層を形成するステップは、酸化ケイ素、窒化ケイ素、および酸窒化ケイ素からなる群から選定された物質を成膜することにより実施される。
【0028】
本発明のある実施形態では、前記キャップ層を形成するステップは、高周波スパッタリング法により実施される。
【0029】
本発明のある実施形態では、前記キャップ層の厚さは、5から30nmの範囲である。
【0030】
本発明のある実施形態では、当該方法は、さらに、
d)構造化により、前記第1の表面における前記n-ドープ層を除去するステップと、
e)前記第2の表面に、不動態化および/または抗反射コーティングを形成するステップと、
f)その後、前記第1の表面をn-ドーパントでドーピングするステップと、
を有する。
【0031】
本発明のある実施形態では、当該方法は、さらに、
d)構造化により前記第1の表面における前記n-ドープ層を除去し、その後、前記キャップ層を除去するステップと、
e)前記第2の表面に、不動態化および/または抗反射コーティングを形成するステップと、
f)その後、前記第1の表面をn-ドーパントでドーピングするステップと、
を有する。
【0032】
本発明のある実施形態では、前記その後、前記第1の表面をn-ドーパントでドーピングするステップでは、シート抵抗が70〜150Ωの範囲のn+層が形成される。
【0033】
本発明のある実施形態では、当該方法は、さらに、
前記第1の表面および前記第2の表面の各々に、電気的コンタクトを形成するステップ
を有する。
【0034】
本発明のある実施形態では、前記ホウ素含有層は、前記第2の表面のある領域において、より大きな厚さを有し、
当該方法は、
前記第2の表面の前記領域に、電気的コンタクトを選択的に形成するステップ
を有する。
【0035】
本発明のある実施形態では、前記半導体基板は、p型半導体である。
【0036】
本発明のある実施形態では、前記半導体基板は、シリコンを有する。
【0037】
本発明のある実施形態では、当該方法は、さらに、
前記第2の表面に、SiB層を形成するステップ
を有する。
【0038】
本発明のある実施形態では、当該方法は、さらに、前記ステップ(a)の後であって、前記ステップ(b)の前に、
前記第2の表面をエッチングするステップ
を有する。
【0039】
本発明のある実施形態では、当該方法は、さらに、
ステップ(b)の間、ある領域をマスクすることにより、前記第2の表面の端部に前記領域を形成するステップを有し、
前記領域は、0.1〜0.5mmの範囲の幅を有し、実質的にホウ素を含まない。
【0040】
本発明のある実施形態では、当該方法は、さらに、ステップ(b)の後であって、必要な場合ステップ(c)の前に、ある領域をエッチングすることにより、前記第2の表面の端部に前記領域を形成するステップを有し、
前記領域は、0.1〜0.5mmの範囲の幅を有し、実質的にホウ素を含まない。
【0041】
本発明のある実施形態では、前記領域を前記エッチングするステップは、反応性イオンエッチング法により実施される。
【0042】
本発明のある実施形態では、前記n-ドーパントの前記拡散、および前記ホウ素の前記拡散は、同時に実行される。
【0043】
本発明のある実施形態では、前記n-ドーパントと前記ホウ素の同時拡散は、950℃から1050℃の範囲の温度での暴露により行われる。
【0044】
本発明のある実施形態では、前記ホウ素含有層および前記拡散の条件は、前記第2の表面におけるホウ素の表面濃度が3×1020原子/cm3未満となるように選定される。
【0045】
本発明のある実施形態では、前記ホウ素含有層および前記拡散の条件は、前記第2の表面におけるホウ素のドーピングにより、厚さが0.3から1.5μmの範囲のp+層が形成されるように選定される。
【0046】
本発明のある実施形態では、前記ホウ素含有層および前記拡散の条件は、
前記第2の表面がホウ素でドーピングされ、シート抵抗が30から150Ωの範囲のp+層が形成されるように選定される。
【0047】
本発明のある実施形態では、前記n-ドーパントは、リンを有する。
【0048】
本発明のある実施形態では、前記第1の表面は、構造化されている。
【0049】
本発明のある実施形態では、当該両面光起電力セルは、さらに、前記第2の表面に、不動態化および/または抗反射コーティングを有する。
【0050】
本発明のある実施形態では、当該セルにおいて、前記n+層は、シート抵抗が70から150Ωの範囲である。
【0051】
本発明のある実施形態では、当該両面光起電力セルは、さらに、前記第1の表面および前記第2の表面の各々に、電気的コンタクトを有し、
前記p+層におけるホウ素の濃度は、前記第2の表面における前記電気的コンタクトの下側の領域よりも高い。
【0052】
本発明のある実施形態では、当該両面光起電力セルは、さらに、前記第2の表面に、SiB層を有する。
【0053】
本発明のある実施形態では、前記第2の表面におけるホウ素の表面濃度は、1020原子/cm2未満である。
【0054】
本発明のある実施形態では、当該両面光起電力セルの前記第2の表面は、1014から1016ホウ素原子/cm2を有する。
【0055】
本発明のある実施形態では、前記p+層は、シート抵抗が30から150Ωの範囲である。
【0056】
本発明のある実施形態では、前記p+層は、前記基板の端部に隣接する領域を被覆せず、
前記領域は、0.1〜0.5mmの範囲の幅を有する。
【0057】
本発明のある実施形態では、当該光起電力セルの有効背面再結合は、50cm/秒未満である。
【0058】
本発明のある実施形態では、当該両面光起電力セルにおいて、前側効率は、少なくとも19%である。
【0059】
本発明のある実施形態では、当該両面光起電力セルの前側短絡電流に対する裏側短絡電流の比は、少なくとも0.8である。
【0060】
特に他で規定されない限り、本願に使用の全ての技術的および/または科学的用語は、本発明に関する当業者に普通に理解されるものと同じ意味を有する。本願に記載の方法および材料と同様のまたは等価なものは、本発明の実施または評価に使用することができるが、以下には、一例としての方法および/または材料が示されている。矛盾する場合、定義を含む特許明細書が支配的となる。また、材料、方法、および例は、単なる一例であって、必須の限定と解してはならない。
【0061】
本発明の実施例の方法の実施には、選択されたタスクを手動で、自動で、またはこれらの組み合わせで、実施することまたは完了することが含まれる。また、本発明の方法の実施例の実際の機器および設備において、いくつかの選択されたタスクは、オペレーティングシステムを用いて、ハードウェア、ソフトウェア、またはこれらの組み合わせにより実行されても良い。
【0062】
例えば、本発明の異実施例により選択されたタスクを実行するハードウェアは、チップまたは回路として、実施され得る。ソフトウェアとして、本発明の実施例による選択されたタスクは、任意の好適なオペレーティングシステムを用いたコンピュータで実行される複数のソフトウェア指令として、実施され得る。本発明のある実施形態では、本発明の方法のある実施例により、1または2以上のタスクは、複数の指令を実行するコンピュータプラットフォームのような、データプロセッサにより実行される。必要な場合、データプロセッサは、指令および/またはデータを保管する揮発メモリ、および/または非揮発性ストレージ、例えば、指令および/またはデータを保管する磁気ハードディスク、および/またはリムーバル媒体を有する。必要な場合、ネットワーク接続が同様に提供されても良い。ディスプレイ、および/またはキーボードもしくはマウスのようなユーザ入力装置が、必要な場合、同様に提供されても良い。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1】本発明の実施例による、放電パワー1、2、4kWのスパッタリング法により、四角シリコン基板に成膜された、基板表面の中心からの距離の関数としての、窒化ホウ素層の厚さの均一性(厚さは、平均厚さで規格化されている)を示すグラフである。
図2】本発明の一実施形態による、酸素流速が10または20cm3/分(放電パワー4kW)のスパッタリング法により成膜され、10nmのSiN層によるキャッピングおよび後続の熱拡散の際に、p+層の調製に使用された、ホウ素含有層(BOxNy)の厚さの関数としての、ホウ素ドープp+層のシート抵抗を示したグラフである。
図3】ホウ素源のスピンオンによりドープされ、その後熱拡散された、それぞれのシリコン基板の表面からの距離の関数としての、ホウ素濃度(原子/cm3単位)を示すグラフである(二次イオン質量分析により同定)。
図4】本発明の一実施形態による、ホウ素の高周波(radio frequency)スパッタリング法を用いてドープされ、その後熱拡散された、一例としてのシリコン基板の表面からの距離の関数としての、ホウ素濃度(原子/cm3単位)を示すグラフである(二次イオン質量分析により同定)。
図5】本発明の一実施形態による、ホウ素の高周波スパッタリング法を用いてドープされ,その後熱拡散された、一例としてのシリコン基板の表面からの距離の関数としての、シート抵抗が単位□当たり34、74、または390Ω(Ω/sq)のホウ素ドープP+層におけるホウ素濃度(原子/cm3単位)を示すグラフである(電気化学的容量-電圧プロファイル(ECV)、または二次イオン質量分析(SIMS)により同定)。
【発明を実施するための形態】
【0064】
以下、添付図面を参照して、単なる一例として、本発明の一実施形態について説明する。以下、図面を参照するが、示された個々の事項は、一例であって、本発明の実施形態の例を示すためのものである。この点、図面を参照する記載により、当業者には本発明の実施例がどのように実施されるかが明らかである。
【0065】
本発明は、ある実施形態では、両面セルの製造に関し、これに限られるものではないが、特に、微調整可能なホウ素ドーピングおよび抑制されたエッジシャントを有する、シリコン基板にセル構造を形成する方法に関する。
【0066】
本発明の少なくとも一つの実施形態を詳しく説明する前に、本発明は、以下の記載および/または示された実施例に記載の方法および/または部材の配置および構成の細部の適用に、必ずしも限定されないことを理解する必要がある。本発明は、他の実施形態も可能であり、または各種方法で実施または実現可能である。
【0067】
本願発明者らは、スピンオン技術のような、ドーピング源を成膜する限られた制御可能なプロセスでは、特にホウ素ドープP+層のようなドープ層がオーバードープされる傾向にあり、その結果、再結合ロスが増加することを認識した。本願発明者らは、さらに、オーバードープによるそのような再結合ロスの増加は、両面セルにおける背面対前面短絡電流比を、Kreininら(Proceedings 28th European Photovolatic Solar Energy Cnference 2013,p.1835-1838)により報告されている約0.75の平均値、ならびに約20-20.5%の前面効率に限定する上で、大きな役割を果たすことを認識した。オーバードープに関するバルク再結合ロスは、全体の再結合ロスを支配し、これにより、表面不動態化のような、表面再結合ロスを低減する技術が比較的非効率になる。
【0068】
ホウ素p+層の成膜の代替方法の研究では、本願発明者らは、スパッタされたホウ素含有層、および/またはホウ素イオン注入と、その後の熱処理を用いた光起電力セルのp-ドーピングでは、比較的低い、制御可能かつ均一な濃度でホウ素ドーピングの形成が可能であり、これにより、高ホウ素濃度に関する悪影響、ならびに可変ドーパント濃度(例えば規制電流の生成)に関する非効率を抑制できること明見出した。一方、p-ドーパントとしてホウ素を用いる利点は保持されたままである(例えば、広く使用されている合金アルミニウムと比較して、シリコン中のホウ素の高溶解度など)。(オーバードープにより助長される)バルク再結合ロスの抑制により、この方法は、表面における全体の再結合ロスに大きな役割を果たし、これにより、表面不動態化のような技術で、全体の再結合ロスが抑制され、光起電力セルの効率が高まるという大きな効率を得ることができる。また、本願発明者らによって明らかとなったドーピング法は、クロスドーピングおよびエッジシャントを最小限に抑制でき、複雑な手順または高いコストを必要とせず、さらに、ホウ素の深さプロファイルの微調整、および表面不動態化による再結合ロスの抑制ができる(これは、表面再結合を抑制し、低ドーパント濃度でより重要な因子となる)。
【0069】
本願発明者らは、さらに、前述のホウ素含有層の上に成膜されたキャップ層(例えば酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、および/または他の不活性物質で形成される)により、ドーピングの制御性がよりいっそう高まることを見出した。
【0070】
いかなる特定の理論に拘束されるものでもないが、キャップ層は、酸素、水分、および/または他の環境成分との反応を抑制することにより、ホウ素含有層(化学的に不安定であり得る)の安定性を高めると考えられる。さらに、キャップ層は、ホウ素の外方拡散、ならびにウェハの表面および端部近傍にわたるリンの好ましくない相互拡散を抑制し、および/または反対側のエッチング/構造化の間、p+層をエッチングから保護するものと考えられる。
【0071】
従って、本発明の実施形態は、両面光起電力セルを製造する新たな方法に関し、これは、セルを形成する半導体基板の表面に、ホウ素含有層を形成するため、スパッタリング法および/またはイオン注入法を利用する。本発明のある実施形態は、さらに、ホウ素含有層の上部にキャップ層を形成することに関する。
【0072】
本発明の実施形態は、さらに、本願の方法により製造された、両面光起電力セルに関する。両面光起電力セルは、第1の表面のn+層、第2の表面のホウ素含有p+層に特徴があり、p+層におけるホウ素濃度のばらつきが低い程度に抑えられている(例えば、実例として5%以下)。
【0073】
方法について:
本発明のある実施形態では、両面光起電力セルを製造する方法が提供される。当該方法は、
a)半導体基板の第1の表面に、n-ドーパント含有層を形成するステップと、
b)ホウ素含有物質のスパッタリングおよび/またはホウ素イオン注入により、前記半導体基板の第2の表面に、ホウ素含有層を形成するステップと、
c)前記半導体基板に、前記ホウ素および前記n-ドーパントの拡散を行い、これにより、前記第1の表面が前記n-ドーパントでドープされ(例えばn+層が形成されるように)、前記第2の表面が前記ホウ素でドープされる(例えばp+層が形成されるように)、ステップと、
を有する。
【0074】
n-ドーパント含有層を形成するステップ(ステップ(a))は、必要な場合、ホウ素含有層を形成するステップ(ステップ(b))の前、後、および/またはこれと同時に、実施されても良い。
【0075】
「n-ドーパント含有層」および「ホウ素含有層」という用語は、基板の一部ではない層(例えば基板の表面に成膜された物質の層)、ならびに、ホウ素またはn-ドーパントを含む基板の層、例えばホウ素またはn-ドーパントのイオン注入により基板に形成された層、の両方の層を包含する。
【0076】
一方、「n-ドープ(された)層」は、(例えば、n-ドーパント含有層から基板への、n-ドーパントの拡散の際に)n-ドーパントでドープされた、半導体基板の一部を表す。「ホウ素ドープ(された)層」は、ホウ素でドープされた半導体基板の部分を表す。
【0077】
本願の任意の実施形態のある実施例では、n-ドーパント含有層は、リン含有層である。
【0078】
本願の任意の実施形態のある実施例では、n-ドーパント含有層は、そのような層を形成する、任意の好適な既知の技術により形成され、これには、これに限られるものではないが、スパッタリング法(例えばイオンビームスパッタリング法、高周波(RF)スパッタリング法)、気相成膜法、化学気相成膜法(CVD)、n-ドーパント含有溶液(例えばリンケイ酸塩溶液)の設置、または(例えばn-ドーパント含有ペーストの)スクリーン印刷法が含まれる。ある実施形態では、n-ドーパント含有層は、固体層である。
【0079】
SiPおよびP2O7Siは、イオンビームスパッタリング法によるリン含有層の成膜に好適なスパッタリングターゲットの非限定的な例である。
【0080】
POCl3は、気相成膜法による、リン含有層の成膜に好適な化合物の非限定的な例である。必要な場合、温度は、約850℃から約950℃の範囲である。
【0081】
スピンオンおよびスプレー法は、リンケイ酸塩溶液を設置する好適技術の非限定的な例である。
【0082】
本願の任意の実施形態のある実施例では、当該方法は、さらに、必要な場合、エッチング(例えば第1の表面の構造化)により、第1の表面におけるn-ドープ層(例えばn+層)を除去するステップ(「第1のn-ドープ層」または「第1のn+層」とも称される)と、その後、第1の表面をn-ドーパントでドーピングするステップと、を有し、これにより、第2のn-ドープ層(例えば第2のn+層)が形成される。ある実施形態では、n-ドーパント(存在する場合)は、基板(例えばn-ドープシリコン)のn-ドープ部分を除去(例えばエッチング)するプロセス(例えばエッチング)により、基板(例えばホウ素ドープシリコン)のホウ素ドープ部分よりも効率的に、第2の表面から除去され、例えば本願の任意の実施例では、際2の表面におけるn-ドーパントの成膜は、キャップ層によって妨げられない。
【0083】
ある実施形態では、第1の表面におけるn-ドープ層(例えばn+層)の除去ステップにより、他のところに存在する(例えばホウ素ドープ領域)、任意のn-ドープ層(例えばn-ドープ島)が同時に除去される。
【0084】
ある実施形態では、(例えばn-ドープ層の)エッチングは、アルカリ溶液(例えば水酸化ナトリウムを含む溶液)により実施される。
【0085】
第2のn-ドープ層は、必要な場合、n-ドーピング用の任意の好適な既知の技術(例えば本願に記載のn-ドーピング技術)で形成されても良く、これには、これに限られるものではないが、気相拡散、イオン注入、および/または(例えば本願の各実施例による)n-ドーパント含有層の使用が含まれる。
【0086】
第1のn-ドープ層および第2のn-ドープ層が形成される実施形態において、「n-ドープ層」および「n+層」と言う用語は、特に記載がない限り、第1のn-ドープ層を表す。
【0087】
本願に記載の任意の実施形態において、それぞれの実施形態により調製された第2のn+層、または第2のn+層を除くそれぞれの実施例により調製された第1のn+層は、シート抵抗が70から150Ωの範囲にある。
【0088】
本願および従来より使用されているシート抵抗における「Ω」は、「オーム/スクエア」および「オーム/□」と相互互換性があり、シート抵抗の許容単位は、バルク抵抗の単位からシート抵抗の単位を差別化するために使用される(ただし、オーム単位およびオーム/スクエア単位は、次元的に等しい)。
【0089】
本願に記載の実施形態の任意の実施例では、それぞれの実施例により調製される第2のn+層は、第1のn+層よりも大きなシート抵抗を有する。
【0090】
本願に記載の実施形態の任意の実施例では、それぞれの実施例により除去される第1のn+層は、シート抵抗が70Ω未満であり、必要な場合、40Ω未満であり、例えば、8から25Ωの範囲である。
【0091】
本願に記載の実施形態の任意の実施例では、当該方法は、さらに、第2の表面に、不動態化および/または抗反射コーティングを形成するステップを有する。あるそのような実施形態では、第2の表面に不動態化および/または抗反射コーティングを形成するステップは、それぞれの実施例による第1のn-ドープ層の有効な除去を形成するステップの前、これと同時、および/または後に、実施される。例えば、当該方法は、さらに、
d)(本願のそれぞれの実施例による)構造化により、第1の表面のn-ドープ層を除去するステップ
e)(本願のそれぞれの実施例による)第2の表面に不動態化および/または抗反射コーティングを形成するステップ、
f)(本願のそれぞれの実施例による)ステップ(d)に引き続き、第1の表面をn-ドーパントでドーピングするステップ
を有し、
不動態化および/または抗反射コーティングを形成するステップ(ステップ(e))は、例えばステップ(d)の前、ステップ(d)とステップ(f)の間、およびステップ(f)の後など、任意の段階で実施されても良い。
【0092】
ある実施形態では、本願に記載のそれぞれの実施例によるn-ドーパントで第1の表面をドーピングするステップは、第2の表面に不動態化および/または抗反射コーティングを形成するステップ(例えばステップ(e))の後に実施される。あるそのような実施形態では、不動態化および/または抗反射コーティングを形成するステップ(例えばステップ(e))は、本願のそれぞれの実施例による第1のn-ドープ層を除去するステップ(例えばステップ(d))の後に実施され、例えば、第1のn-ドープ層の除去を妨害しない。
【0093】
ここで、「不動態化および/または抗反射コーティング」は、1または2以上の誘電体コーティングであって、これらの各々が不動態化および/または抗反射効果を有するコーティングを表す。
【0094】
それぞれの任意の実施例による不動態化および/または抗反射コーティングを形成するステップは、必要な場合、それぞれの任意の実施例によるSiB層を形成するステップを有しても良い(必要な場合、このステップで構成されても良い)。
【0095】
それぞれの任意の実施例による不動態化コーティングの追加の例には、これに限られるものではないが、酸化アルミニウム(例えばAl2O3)および/または酸化ケイ素の層が含まれる。
【0096】
不動態化および/または抗反射コーティング(例えば酸化アルミニウム、酸化ケイ素、窒化ケイ素、および/または酸窒化ケイ素のコーティング)は、必要な場合、(例えばスパッタリング法、および/または化学気相成膜法を用いて)成膜され、および/または基板表面での反応により形成され、例えば、基板のシリコンの化学的および/または熱的酸化による、酸化ケイ素の形成、および/または(例えば本願に記載のような)シリコンへのホウ素の拡散によるSiBの形成により、形成される。不動態化および/または抗反射コーティングは、任意の好適な厚さを有しても良い(例えば、本願のそれぞれの実施例による)。
【0097】
「窒化ケイ素」および「SiN」という用語は、相互互換的に使用され、SiとNの各種化学量論(例えばSi3N4)を有する、実質的にケイ素および窒素で構成される一群の物質を表す。ただし、不純物として、ある量の追加原子(例えば水素)が存在しても良い。
【0098】
「酸窒化ケイ素」という用語は、SiNxOyを表し、xおよびyはそれぞれ、2までの正の数(例えば0.1から2の間)であり、xおよびyは、Si、NおよびOの価数要求に合致する。追加の原子(例えば水素)のある量が、不純物として存在しても良い。
【0099】
それぞれの任意の実施例による実施形態では、不動態化および/または抗反射コーティングは、不動態化および/または抗反射コーティングの境界が、(本発明のそれぞれの実施例による)その後形成される第2のn-ドープ層の所望の境界に対応するように形成される。不動態化および/または抗反射コーティングは、必要な場合、境界にわたるn-ドーピングを防止することにより、第2のn-ドープ層の境界を定め(すなわち、不動態化および/または抗反射コーティングで被覆される領域において)、例えば、n-ドープ層とホウ素ドープ層の分離(すなわちオーバーラップの低減)を容易にする。これにより、シャント抵抗を高めることができる。
【0100】
任意の実施例による実施形態では、不動態化および/または抗反射コーティングを形成するステップは、不動態化および/または抗反射コーティングが、基板の端部を被覆する
ように実行され(すなわち第1の表面と第2の表面の間の表面であり、これは、必要な場合、第1の表面および第2の表面と垂直である)、必要な場合、基板の全ての端部を被覆する。ある実施形態では、不動態化および/または抗反射コーティングは、(それぞれの実施例による)基板の端部における第2のn-ドープ層の形成を抑制する。
【0101】
任意の実施例による実施形態では、n-ドーパントの拡散とホウ素の拡散は、同時に実行される。ある実施形態では、n-ドーパントとホウ素の同時拡散は、加熱により実行され、必要な場合、950℃から1050℃の範囲での暴露により、実施される。
【0102】
任意の実施例による実施形態では、ホウ素含有層(例えば厚さ、ホウ素濃度、および層の組成)、および拡散の条件(例えば温度、および/または拡散時間)は、前記第2の表面におけるホウ素の濃度が、1021原子/cm3未満、必要な場合3×1020原子/cm3未満、必要な場合1020原子/cm3未満、必要な場合3×1019原子/cm3未満、および必要な場合1019原子/cm3未満となるように選択される。
【0103】
単位体積当たり(例えばcm3単位)の量(例えば原子)の単位における基板の表面の濃度は、基板の最大濃度を表す(例えば、約1μmの深さまでの任意の深さにおける最大濃度)。
【0104】
任意の実施例による実施形態では、ホウ素含有層(例えば、厚さ、ホウ素濃度、および層の組成)、および拡散の条件(例えば、温度および/または拡散時間)は、第2の表面へのホウ素のドーピングにより、p+層が形成され、それぞれの実施例によるシート抵抗が、例えば15から300Ωの範囲、30から300Ωの範囲、30から200Ωの範囲、および/または30から150Ωの範囲となるように選定される。
【0105】
条件(例えば熱処理の温度、および/または時間、および/またはドーパント含有層におけるドーパントの量)を調整し、それぞれの実施例による基板の表面に、所望の量(例えば濃度)のドーパント、および/またはシート抵抗(ドーパントの量に影響を受ける)を得ることは、当業者には容易である。
【0106】
任意の実施例による実施形態では、当該方法は、さらに、それぞれの実施例による、例えば、シリコン含有基板へのホウ素の拡散により、第2の表面にSiB層を形成するステップを有する。
【0107】
任意の実施例による実施形態では、n-ドーパント含有層は、ホウ素含有層の前に形成され、当該方法は、さらに、n-ドーパント含有層の形成(例えばステップ(a))の後であって、ホウ素含有層の形成(ステップ(b))の前に、第2の表面をエッチングするステップを有する。ある実施形態では、そのようなエッチングは、第2の表面に存在するn-ドーパント含有層を除去するように実施される。
【0108】
任意の実施例による実施形態では、ホウ素含有層は、n-ドーパント含有層の前に形成され、当該方法は、さらに、ホウ素含有層の形成(例えばステップ(b))後であって、n-ドーパント含有層の形成(例えばステップ(a))前に、第1の表面をエッチングするステップを有する。ある実施形態では、そのようなエッチングは、第1の表面に存在するホウ素含有層を除去するように実施される。あるそのような実施形態では、当該方法は、さらに、第2の表面のホウ素含有層の上に、(それぞれの実施例による)キャップ層を形成するステップを有し、例えば、キャップ層は、第1の表面のエッチングの間、第2の表面におけるホウ素含有層を保護するように選定される。
【0109】
任意の実施例による実施形態では、当該方法は、さらに、第2の表面の端部に(すなわち端部に隣接して)ある領域を形成するステップを有する。これは、実質的にホウ素を含まず、この領域は、0.1から0.5mmの範囲の幅を有する。
【0110】
ある実施形態では、ホウ素含有層は、第2の表面のいかなる端部にも到達しない。
【0111】
表面の端部における前述の領域は、必要な場合、ホウ素含有層を形成する際の領域のマスキングにより(スパッタリングまたはイオン注入の間のホウ素からの領域のマスキングにより)、および/またはホウ素含有層を形成するステップの後の、領域のエッチングにより(例えば領域からのホウ素含有層の除去により)、得られても良い。
【0112】
ある実施形態では、端部における領域のエッチングは、反応性イオンエッチングにより実行される。エッチングは、第2の表面の狭小な(例えば0.1から0.5mm幅の)領域のみをエッチングするように構成されたマスクを用いて実施されても良い。
【0113】
ある実施形態では、端部の領域のエッチングは、ホウ素の拡散(例えばステップ(c))を実施する前に実施され、例えば、エッチングの前に、表面の端部にホウ素含有層が、一時的に存在するという長期効果の影響が回避される。
【0114】
任意の実施例による実施形態では、当該方法は、さらに、表面不動態化処理(例えば、従来の好適な表面不動態化処理)を行うステップを有する。ある実施形態では、表面不動態化処理は、好適な処理剤(例えば溶液)に接触させることにより実施される。不動態化の実施に好適な処理剤の一例は、キンヒドロン(例えば3%溶液中)である。
【0115】
任意の実施例による実施形態では、当該方法は、さらに、第1の表面および第2の表面のそれぞれに、電気的コンタクトを形成するステップを有する。電気的コンタクトは、従来の方法により形成されても良い。
【0116】
両面光起電力セルの基板に光を到達させるため、両方の表面におけるコンタクトは、大部分の光が基板を通過するように構成されることが好ましく、これにより、光起電力セルは、セルのいずれかの側からの照射により、電気を生成できる。例えば、コンタクトは、必要な場合、グリッドパターンで構成されても良い。
【0117】
ある実施形態では、コンタクトは、第2の表面の残りの部分に比べてホウ素の濃度が高い第2の表面の領域に、(必要な場合、マスクを用いて)選択的に形成される。ある実施形態では、そのような領域は、そのような領域に、大きな厚さおよび/または濃度を有するホウ素含有層を用いて形成される(本発明のそれぞれの実施例による)。
【0118】
ホウ素含有層の形成:
本発明の実施例では、ホウ素含有層を形成するステップは、後に詳しく説明する、ホウ素のスパッタリング、および/またはホウ素のイオン注入により実施される。
【0119】
(本発明の実施例による)本願および従来技術を通じて、「スパッタリング」と言う用語は、エネルギー粒子(例えばイオン)のターゲットの衝突により、ターゲット材料(例えば固体材料)から粒子放出されるプロセスを表す。従来から知られているように、放出材料の少なくとも一部が、表面(例えば、ターゲットの近傍の基板の表面)に成膜され、層が形成される。
【0120】
(本発明の実施例による)本願および従来技術を通じて、「高周波スパッタリング」という用語は、スパッタリングターゲットが、必要な場合、イオン化ガスのような荷電プラズマ粒子にさらされ(必要な場合、強電場および/または磁場を用いて、プラズマ粒子をターゲットの通常の位置に誘導する)、交流電圧バイアス(例えば13.56MHzのような高周波での交流)により、プラズマ粒子が加速される、スパッタリング法を表す。
【0121】
(本発明の実施例による)本願および従来技術を通じて、「イオンビームスパッタリング法」という用語は、イオンビームがスパッタリングターゲットに向かって誘導され(これによりターゲットに衝突し)、イオンビーム内の加速イオンが(電子源により)中性化され、ターゲットが中性荷電粒子で衝突を受けるスパッタリング法を表す。
【0122】
本願において、「ホウ素のスパッタリング」、「ホウ素スパッタリング」などの用語は、スパッタリングによって放出された粒子がホウ素を有する、スパッタリング法を表す。
【0123】
(本発明の実施例による)本願および従来技術を通じて、「イオン注入」という用語は、イオン(例えばホウ素イオン)が電場によって加速され、固体材料(例えば、それぞれの実施例における基板)に衝突するプロセスを表す。イオン速度が十分に大きい場合、イオンは、被衝突材料に埋設され、例えば、被衝突固体材料の結晶構造が変化する。
【0124】
ホウ素のスパッタリングに関する本発明のある実施形態では、スパッタリング法により、ホウ素を含む固体層が第2の表面に成膜される。
【0125】
(例えばホウ素含有材料のスパッタリングにより)表面にホウ素をスパッタリングする従来のいかなる好適技術が使用されても良い。
【0126】
窒化ホウ素は、ホウ素のスパッタリング用の好適な(ホウ素含有)ターゲットの非限定的な例である。
【0127】
スパッタリング(例えばホウ素のスパッタリング)に使用されるイオンは、必要な場合、不活性(例えばN、Ar)であっても、および/または活性(例えばO)であっても良い。ある実施形態では、活性イオン(例えばO)は、ホウ素含有層に導入される(例えば、窒化ホウ素ターゲットから、ホウ素の酸窒化物が形成される)。
【0128】
ホウ素のスパッタリングに関する本発明のある実施形態では、ホウ素含有層の厚さは、1から35nm(必要な場合、2から35nm)の範囲である。ある実施形態では、成膜された層厚さは、1から20nm(必要な場合、2から20nm)の範囲である。そのようなある実施形態では、成膜された層の厚さは、1から10nmの範囲である(必要な場合、2から10nm)。
【0129】
本発明のそれぞれの実施例によるホウ素含有層の厚さは、必要な場合、例えば、好適な時間、基板をホウ素スパッタリングに暴露することにより、および/またはスパッタリングターゲットに、活性化粒子の好適な流束を衝突させることにより、制御される。
【0130】
ホウ素のスパッタリングに関する本発明の実施例のある実施形態では、ホウ素含有層の厚さは、(本発明のそれぞれの実施例による)ホウ素の拡散後のホウ素含有層が、(本発明のそれぞれの実施例による)p+層において、所望のホウ素濃度を提供するのに好適なホウ素の量(単位表面積あたり)を含むように選定される。
【0131】
(例えば、好適なスパッタリング用ターゲットの選定により、制御され得る)ホウ素含有層の所与の組成のため、(ホウ素含有層の)厚さは、所望のホウ素濃度が提供されるように選定される。
【0132】
ホウ素のスパッタリングに関する本発明のある実施形態では、ホウ素含有層の厚さは、ホウ素含有層が、(本発明のそれぞれの実施例による)p+層の所望のホウ素濃度に加えて、(本発明のそれぞれの実施例による)ホウ素の拡散の後に、SiB層(例えば不動態化層)を提供するのに好適な量(単位表面積当たり)のホウ素を含むように選定される。(p+層におけるホウ素に加えて)SiB層を提供することは、ホウ素含有層に追加のホウ素量を提供することにより、必要な場合、追加の厚さを有するホウ素含有層の成膜により実行される(必要な場合15nm以下、必要な場合5nm以下)。そのような実施形態では、成膜された層の厚さは、1.5から15nmの範囲である。
【0133】
「SiB」と言う用語は、ホウ素原子の濃度が、拡散温度(約1100℃以下)における、ホウ素原子の溶解度を超える、例えば約5×1020原子/cm3超の、ケイ素原子とホウ素原子の組み合わせを表す。「SiB」と言う用語は、Si対Bの化学量論が1:1であることを意味しない。
【0134】
SiBは、必要な場合、ホウ素原子の絶対濃度(例えば二次イオン質量分析(SIMS)により得られる)が、電気的に活性な(すなわち溶解した)ホウ素原子の濃度よりも十分に大きい物質として、表される(例えば電気学的容量電圧プロファイル(ECV)により定められる)。
【0135】
ホウ素イオン注入に関する本発明のある実施形態では、固体ホウ素含有層は、注入ホウ素を有する半導体基板(例えばシリコン)一部である(例えば、ホウ素含有層は、ホウ素イオンの注入を介して、基板の一部から形成される)。
【0136】
必要な場合、表面にホウ素を注入する任意の好適な既知の技術が使用されても良い。
【0137】
例えば、ホウ素イオンは、必要な場合、3から50keV(必要な場合5から50keV)の範囲のエネルギーを有しても良い。
【0138】
ホウ素イオン注入に関する本発明のある実施形態では、注入は、1014から1016原子/cm2の範囲である。
【0139】
本発明のある実施形態では、ホウ素含有層を形成するステップは、ホウ素含有層の厚さおよび/または層内のホウ素濃度が、第2の表面の選定領域よりも大きくなるように実施される。選定領域は、(必要な場合設置される)電気的コンタクトの下となるように意図される。
【0140】
本発明のある実施形態では、ホウ素含有層を形成するステップは、ホウ素含有層におけるホウ素の量のばらつき(必要な場合、原子/単位面積の単位)が、±5%未満となるように実施される。ある実施形態では、ホウ素含有層におけるホウ素量のばらつきは、±4%以下である。ある実施形態では、ホウ素含有層におけるホウ素量のばらつきは、±3%以下である。ある実施形態では、ホウ素含有層におけるホウ素量のばらつきは、±2%以下である。ある実施形態では、ホウ素含有層におけるホウ素量のばらつきは、±1%以下である。
【0141】
ホウ素量のばらつきは、(例えば0.1mmから1mmの範囲の解像度で)好適な技術により定められても良い。必要な場合、ホウ素含有層の厚さを求め、厚さのばらつきが、ホウ素量のばらつきと等しいと仮定して、定められても良い。
【0142】
本発明のある実施形態では、ホウ素含有層を形成するステップは、ホウ素含有層の厚さのばらつきが、±5%以下となるように実行される。ある実施形態では、ホウ素含有層におけるホウ素量のばらつきは、±4%以下である。ある実施形態では、ホウ素含有層におけるホウ素量のばらつきは、±3%以下である。ある実施形態では、ホウ素含有層におけるホウ素量のばらつきは、±2%以下である。ある実施形態では、ホウ素含有層におけるホウ素量のばらつきは、±1%以下である。
【0143】
本願を通じて、ホウ素量(例えばホウ素濃度、または単位面積当たりのホウ素の量)および/またはホウ素含有層の厚さの「ばらつき」と言う用語は、同じ量のホウ素および/または厚さを有することを意図する領域全体のばらつきを表す。すなわち、本発明の実施形態による、ホウ素量の意図的な差を有する領域の存在(例えばホウ素のないギャップ、および/または高ホウ素濃度を有する電気的コンタクト下の領域)は、ホウ素量のばらつきが高いことを意味しない。
【0144】
第2の表面のバルク全体にホウ素含有層を形成することに加えて(前および/または後)、ホウ素含有層におけるホウ素量が高い選択領域は、必要な場合、そのような領域のみにおける、ホウ素含有層の選択的形成により形成されても良い(例えば、好適なマスクを用いたホウ素スパッタリング、および/またはホウ素イオン注入の実施により)。
【0145】
ホウ素量の高い選択料域(例えばそのような領域のみにおけるホウ素含有層の選択形成により形成される)が、ホウ素含有層におけるホウ素量のばらつきを定める際に、ホウ素含有層の一部と見なされないことは明らかである。
【0146】
キャップ層:
本発明のある実施形態では、当該方法は、さらに、(本発明の実施例による)ホウ素含有層の上に、キャップ層を形成するステップを有する。これは、必要な場合、ホウ素含有層の形成直後に実施される。ある実施形態では、キャップ層の厚さは、5から30nmの範囲である(必要な場合5から20nm)。
【0147】
「キャップ」および「キャッピング」という用語は、ホウ素含有層の上にある(「キャッピング」)層を意味し(すなわち、ホウ素含有層よりも基板から離れた位置)、それ以外の限定を含むものではない。
【0148】
本発明のある実施形態では、n-ドーパント含有層を形成するステップ(ステップ(a))は、ホウ素含有層の形成ステップ(ステップ(b))と、キャップ層の形成ステップの後に実行される。
【0149】
本発明のある実施形態では、n-ドーパント含有層を形成するステップは、ホウ素含有層を形成するステップ(ステップ(b))の後であって、キャップ層の形成ステップの前に、実施される。
【0150】
本発明のある実施形態では、n-ドーパント含有層を形成するステップ(ステップ(a))は、ホウ素含有層を形成するステップ(ステップ(b))と、キャップ層を形成するステップの両方の前に実行される。
【0151】
キャップ層は、それぞれの実施形態による、キャップ層を形成するのに好適な既知の技術により、形成されても良い。好適な技術の一例には、これに限られるものではないが、スパッタリング法(例えばイオンスパッタリング法、および/または高周波スパッタリング法)、物理気相成膜法、および化学気相成膜法が含まれる。
【0152】
本発明のある実施形態では、キャップ層は、不活性物質を有する。ある実施形態では、キャップ層を形成するステップは、不活性物質の層の成膜により実施され、必要な場合、スパッタリング法により実施される(例えばイオンビームスパッタリング法、および/または高周波スパッタリング法)。
【0153】
キャップ層の形成に好適な不活性物質の一例には、これに限られるものではないが、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、および酸化ケイ素が含まれる。
【0154】
本発明のある実施形態では、ホウ素含有層の上にキャップ層を形成するステップは、(例えば熱処理による)拡散ステップの前に実施される。ある実施形態では、ホウ素含有層の上にキャップ層を形成するステップは、リン含有(n-ドーパント含有)層の成膜の前に実行される。そのようなある実施形態では、キャップ層は、(例えば拡散が実行されるまで)ホウ素含有層を保護する。
【0155】
本発明のある実施形態では、キャップ層は、(本発明のそれぞれの実施例による)構造化によって、第2の表面から除去されるホウ素量を抑制するように選定され、例えば、第1の表面の構造化は、第2の表面のエッチングの小さな程度と関連する。そのようなある実施形態では、キャップ層は、構造化によって、第2の表面から除去されるホウ素量を、少なくとも10%だけ抑制するように(すなわち、同じ条件では、キャップ層がない対応するホウ素ドープ基板の構造化によって除去されるホウ素量に比べて)選定される。ある実施形態では、キャップ層は、構造化により第2の表面から除去されるホウ素量を、少なくとも20%だけ抑制するように選定される。ある実施形態では、キャップ層は、構造化により第2の表面から除去されるホウ素量を、少なくとも30%だけ抑制するように選定される。そのような実施形態では、キャップ層は、構造化により第2の表面から除去されるホウ素量を、少なくとも40%だけ抑制するように選定される。ある実施形態では、キャップ層は、構造化により第2の表面から除去されるホウ素量を、少なくとも50%だけ抑制するように選定される。ある実施形態では、キャップ層は、構造化により第2の表面から除去されるホウ素量を、少なくとも60%だけ抑制するように選定される。ある実施形態では、キャップ層は、構造化により第2の表面から除去されるホウ素量を、少なくとも70%だけ抑制するように選定される。ある実施形態では、キャップ層は、構造化により第2の表面から除去されるホウ素量を、少なくとも80%だけ抑制するように選定される。ある実施形態では、キャップ層は、構造化により第2の表面から除去されるホウ素量を、少なくとも90%だけ抑制するように選定される。ある実施形態では、キャップ層は、構造化により第2の表面から除去されるホウ素量を、少なくとも95%だけ抑制するように選定される。ある実施形態では、キャップ層は、構造化により第2の表面から除去されるホウ素量を、少なくとも98%だけ抑制するように選定される。ある実施形態では、キャップ層は、構造化により第2の表面から除去されるホウ素量を、少なくとも99%だけ抑制するように選定される。ある実施形態では、キャップ層は、構造化により第2の表面から除去されるホウ素量を、少なくとも99.5%だけ抑制するように選定される。ある実施形態では、キャップ層は、構造化により第2の表面から除去されるホウ素量を、少なくとも99.8%だけ抑制するように選定される。ある実施形態では、キャップ層は、構造化により第2の表面から除去されるホウ素量を、少なくとも99.9%だけ抑制するように選定される。
【0156】
本発明によるある実施形態では、キャップ層は、(それぞれの実施例による)構造化によって、第2の表面からホウ素が実質的に除去されることを抑制するように選定される。
【0157】
本発明によるある実施形態では、キャップ層は、第2の表面におけるホウ素の10%以下が、構造化によって除去されるように選定される。あるそのような実施形態では、キャップ層は、第2の表面におけるホウ素の5%以下が、構造化によって除去されるように選定される。あるそのような実施形態では、キャップ層は、第2の表面におけるホウ素の3%以下が、構造化によって除去されるように選定される。あるそのような実施形態では、キャップ層は、第2の表面におけるホウ素の2%以下が、構造化によって除去されるように選定される。あるそのような実施形態では、キャップ層は、第2の表面におけるホウ素の1%以下が、構造化によって除去されるように選定される。あるそのような実施形態では、キャップ層は、第2の表面におけるホウ素の0.5%以下が、構造化によって除去されるように選定される。あるそのような実施形態では、キャップ層は、第2の表面におけるホウ素の0.3%以下が、構造化によって除去されるように選定される。あるそのような実施形態では、キャップ層は、第2の表面におけるホウ素の0.2%以下が、構造化によって除去されるように選定される。あるそのような実施形態では、キャップ層は、第2の表面におけるホウ素の0.1%以下が、構造化によって除去されるように選定される。あるそのような実施形態では、キャップ層は、第2の表面におけるホウ素の0.05%以下が、構造化によって除去されるように選定される。あるそのような実施形態では、キャップ層は、第2の表面におけるホウ素の0.03%以下が、構造化によって除去されるように選定される。あるそのような実施形態では、キャップ層は、第2の表面におけるホウ素の0.02%以下が、構造化によって除去されるように選定される。あるそのような実施形態では、キャップ層は、第2の表面におけるホウ素の0.01%以下が、構造化によって除去されるように選定される。
【0158】
いかなる特定の理論に拘束されるものでもないが、ホウ素で過剰にドープされた(例えばオーバードープされた)基板表面は、構造化プロセスに比較的耐性を有する上、構造化の際に普通にホウ素が除去されても、過剰にホウ素ドープされた表面の特性に、あまり影響は生じないと考えられる。一方、比較的低ホウ素濃度の表面(それぞれの実施例では、例えば3×1020原子/cm3以下)は、構造化の際のホウ素の除去により、悪影響を受ける(例えば、キャップ層によって抑制されなかった場合)。
【0159】
(それぞれの実施例による)ある特性を有するキャップ層の選定に関する本発明のある実施形態では、選定は、必要な場合、示された特性が得られるような厚さ、例えば、少なくとも5nmの厚さ(必要な場合、それぞれの実施例において、最大30nm)を有するキャップ層の形成を行うことにより、実施される。これとは別に、またはこれに加えて、選定は、必要な場合、異なるキャップ層組成(例えば窒化ケイ素、酸化ケイ素、および/または酸窒化ケイ素)、および/または(それぞれの実施例による)キャップ層形成の異なる形態の結果を比較することにより行われても良い。
【0160】
本発明のある実施形態では、当該方法は、さらに、(それぞれの実施例による)構造化によるn-ドープ層の除去の後、それぞれの実施例による、キャップ層を除去するステップを有する。これは、必要な場合、それぞれの実施例による、不動態化および/または抗反射コーティングを形成する前に、実施される。そのような実施形態では、キャップ層は、構造化プロセスから、ホウ素ドープされた層を保護する。
【0161】
本発明のある実施形態では、キャップ層は、該キャップ層の下の(それぞれの実施例による)ホウ素含有層の酸化の度合いを(すなわち、同じ条件における、キャップ層のない対応するホウ素含有層の酸化の度合いと比べて)軽減するように選定される。あるそのような実施形態では、キャップ層は、ホウ素含有層の酸化の度合いを少なくとも10%軽減するように選定される。ある実施形態では、キャップ層は、ホウ素含有層の酸化の度合いを少なくとも20%軽減するように選定される。ある実施形態では、キャップ層は、ホウ素含有層の酸化の度合いを少なくとも30%軽減するように選定される。ある実施形態では、キャップ層は、ホウ素含有層の酸化の度合いを少なくとも40%軽減するように選定される。ある実施形態では、キャップ層は、ホウ素含有層の酸化の度合いを少なくとも50%軽減するように選定される。ある実施形態では、キャップ層は、ホウ素含有層の酸化の度合いを少なくとも60%軽減するように選定される。ある実施形態では、キャップ層は、ホウ素含有層の酸化の度合いを少なくとも70%軽減するように選定される。ある実施形態では、キャップ層は、ホウ素含有層の酸化の度合いを少なくとも80%軽減するように選定される。ある実施形態では、キャップ層は、ホウ素含有層の酸化の度合いを少なくとも90%軽減するように選定される。
【0162】
(例えば空気暴露の際の)酸化の度合いは、必要な場合、ホウ素含有層中の酸素原子の濃度(例えばホウ素原子に付着した酸素原子)として定められる。酸化の度合いは、必要な場合、ホウ素含有層および/またはキャップ層の形成の後の、所定の時間で定められる(例えば、キャップ層の形成から1時間または24時間)。
【0163】
いかなる特定の理論に拘束されるものでもないが、比較的低ホウ素濃度(それぞれの実施例では、例えば3×1020原子/cm3)の基板のドーピングに好適なホウ素含有層、特に、極めて薄いホウ素含有層(それぞれの実施例では、例えば、1から35nmの厚さ)は、周囲環境による反応(例えば酸化)に比較的影響を受けやすいと考えられる。また、キャップ層によるホウ素含有層の環境に対する保護は、ホウ素ドーピングの再現性を高めると考えられる。
【0164】
本発明のある実施形態では、キャップ層は、それぞれの実施例によるホウ素の拡散の際に、周囲環境に逸散するホウ素量を(すなわち、同じ条件下で、キャップ層がない場合の周囲環境から逸散するホウ素量に比べて)抑制するように選定される。あるそのような実施形態では、キャップ層は、周囲環境に逸散するホウ素量を、少なくとも10%抑制するように選定される。ある実施形態では、キャップ層は、周囲環境に逸散するホウ素量を、少なくとも20%抑制するように選定される。ある実施形態では、キャップ層は、周囲環境に逸散するホウ素量を、少なくとも30%抑制するように選定される。ある実施形態では、キャップ層は、周囲環境に逸散するホウ素量を、少なくとも40%抑制するように選定される。ある実施形態では、キャップ層は、周囲環境に逸散するホウ素量を、少なくとも50%抑制するように選定される。ある実施形態では、キャップ層は、周囲環境に逸散するホウ素量を、少なくとも60%抑制するように選定される。ある実施形態では、キャップ層は、周囲環境に逸散するホウ素量を、少なくとも70%抑制するように選定される。ある実施形態では、キャップ層は、周囲環境に逸散するホウ素量を、少なくとも80%抑制するように選定される。ある実施形態では、キャップ層は、周囲環境に逸散するホウ素量を、少なくとも90%抑制するように選定される。ある実施形態では、キャップ層は、周囲環境に逸散するホウ素量を、少なくとも95%抑制するように選定される。ある実施形態では、キャップ層は、周囲環境に逸散するホウ素量を、少なくとも98%抑制するように選定される。ある実施形態では、キャップ層は、周囲環境に逸散するホウ素量を、少なくとも99%抑制するように選定される。ある実施形態では、キャップ層は、周囲環境に逸散するホウ素量を、少なくとも99.5%抑制するように選定される。ある実施形態では、キャップ層は、周囲環境に逸散するホウ素量を、少なくとも99.8%抑制するように選定される。ある実施形態では、キャップ層は、周囲環境に逸散するホウ素量を、少なくとも99.9%抑制するように選定される。
【0165】
ある実施形態では、キャップ層は、(それぞれの実施例による)前記ホウ素の拡散の際に、(それぞれの実施例による)ホウ素含有層内の50%以下のホウ素が周囲環境に逸散するように選定される。あるそのような実施形態では、キャップ層は、前記ホウ素の拡散の際に、ホウ素含有層内の30%以下のホウ素が周囲環境に逸散するように選定される。ある実施形態では、キャップ層は、前記ホウ素の拡散の際に、ホウ素含有層内の20%以下のホウ素が周囲環境に逸散するように選定される。ある実施形態では、キャップ層は、前記ホウ素の拡散の際に、ホウ素含有層内の10%以下のホウ素が周囲環境に逸散するように選定される。ある実施形態では、キャップ層は、前記ホウ素の拡散の際に、ホウ素含有層内の5%以下のホウ素が周囲環境に逸散するように選定される。ある実施形態では、キャップ層は、前記ホウ素の拡散の際に、ホウ素含有層内の3%以下のホウ素が周囲環境に逸散するように選定される。ある実施形態では、キャップ層は、前記ホウ素の拡散の際に、ホウ素含有層内の2%以下のホウ素が周囲環境に逸散するように選定される。ある実施形態では、キャップ層は、前記ホウ素の拡散の際に、ホウ素含有層内の1%以下のホウ素が周囲環境に逸散するように選定される。ある実施形態では、キャップ層は、前記ホウ素の拡散の際に、ホウ素含有層内の0.5%以下のホウ素が周囲環境に逸散するように選定される。ある実施形態では、キャップ層は、前記ホウ素の拡散の際に、ホウ素含有層内の0.3%以下のホウ素が周囲環境に逸散するように選定される。ある実施形態では、キャップ層は、前記ホウ素の拡散の際に、ホウ素含有層内の0.2%以下のホウ素が周囲環境に逸散するように選定される。ある実施形態では、キャップ層は、前記ホウ素の拡散の際に、ホウ素含有層内の0.1%以下のホウ素が周囲環境に逸散するように選定される。ある実施形態では、キャップ層は、前記ホウ素の拡散の際に、ホウ素含有層内の0.05%以下のホウ素が周囲環境に逸散するように選定される。ある実施形態では、キャップ層は、前記ホウ素の拡散の際に、ホウ素含有層内の0.03%以下のホウ素が周囲環境に逸散するように選定される。ある実施形態では、キャップ層は、前記ホウ素の拡散の際に、ホウ素含有層内の0.01%以下のホウ素が周囲環境に逸散するように選定される。
【0166】
いかなる特定の理論に拘束されるものではないが、拡散中のホウ素含有層からのホウ素の逸散(例えば、それぞれの実施例による、加熱により実施される拡散)は、有害な不均質ホウ素ドーピングにつながり、例えば、基板の端部から逸散するホウ素の大きな度合いにより(特に、複数の基板がスタックにおいて拡散に曝された場合)、(基板表面の中心のホウ素ドーピングに対して)基板表面の端部に沿って抑制されたホウ素ドーピングにつながると考えられる。
【0167】
本発明のある実施形態では、キャップ層は、それぞれの実施例によるホウ素の拡散を実行する際に、基板の第1の表面に拡散するホウ素量を(すなわち、キャップ層が存在しない同じ条件下において、第1の表面に拡散するホウ素量に比べて)抑制するように選定される。あるそのような実施形態では、キャップ層は、第1の表面に拡散するホウ素量を、少なくとも10%だけ抑制するように選定される。ある実施形態では、キャップ層は、第1の表面に拡散するホウ素量を、少なくとも20%だけ抑制するように選定される。ある実施形態では、キャップ層は、第1の表面に拡散するホウ素量を、少なくとも30%だけ抑制するように選定される。ある実施形態では、キャップ層は、第1の表面に拡散するホウ素量を、少なくとも40%だけ抑制するように選定される。ある実施形態では、キャップ層は、第1の表面に拡散するホウ素量を、少なくとも50%だけ抑制するように選定される。ある実施形態では、キャップ層は、第1の表面に拡散するホウ素量を、少なくとも60%だけ抑制するように選定される。ある実施形態では、キャップ層は、第1の表面に拡散するホウ素量を、少なくとも70%だけ抑制するように選定される。ある実施形態では、キャップ層は、第1の表面に拡散するホウ素量を、少なくとも80%だけ抑制するように選定される。ある実施形態では、キャップ層は、第1の表面に拡散するホウ素量を、少なくとも90%だけ抑制するように選定される。ある実施形態では、キャップ層は、第1の表面に拡散するホウ素量を、少なくとも95%だけ抑制するように選定される。ある実施形態では、キャップ層は、第1の表面に拡散するホウ素量を、少なくとも98%だけ抑制するように選定される。ある実施形態では、キャップ層は、第1の表面に拡散するホウ素量を、少なくとも99%だけ抑制するように選定される。
【0168】
いかなる特定の理論に拘束されるものでもないが、拡散(例えば、それぞれの実施例による加熱による拡散)の間のホウ素含有層からのホウ素の逸散は、特に、第1のn-ドープ層の除去を含まない実施例において、気体状ホウ素の第1の表面(n-ドーパントによりドープされる)への拡散に、有害な結果をもたらすと考えられる。
【0169】
ホウ素の逸散、および/またはホウ素の拡散の際の第1の表面への拡散に関する本発明のある実施形態では、ホウ素の拡散は、例えば(それぞれの実施例による)950℃から1050℃の範囲における、加熱温度での暴露により実施される。
【0170】
本発明のある実施形態では、ホウ素含有層、および(基板の第2表面における)該ホウ素含有層上のキャップ層のそれぞれを形成するステップは、(基板の第1の表面における)n-ドーパント含有層を形成するステップの前に実施される。あるそのような実施形態では、(n-ドーパント含有層の前に形成される)キャップ層は、それぞれの実施例による、n-ドーパントおよびホウ素の拡散を実施する際に、基板の第2の表面に拡散するn-ドーパント(例えばリン)の量が(すなわち、キャップ層が存在しない場合の、同じ条件下で、第2の表面に拡散するn-ドーパントの量と比較して)抑制されるように選定される。あるそのような実施形態では、キャップ層は、第2の表面に拡散するn-ドーパントの量が少なくとも10%だけ抑制されるように選定される。ある実施形態では、キャップ層は、第2の表面に拡散するn-ドーパントの量が少なくとも20%だけ抑制されるように選定される。キャップ層は、第2の表面に拡散するn-ドーパントの量が少なくとも30%だけ抑制されるように選定される。キャップ層は、第2の表面に拡散するn-ドーパントの量が少なくとも40%だけ抑制されるように選定される。キャップ層は、第2の表面に拡散するn-ドーパントの量が少なくとも50%だけ抑制されるように選定される。キャップ層は、第2の表面に拡散するn-ドーパントの量が少なくとも60%だけ抑制されるように選定される。キャップ層は、第2の表面に拡散するn-ドーパントの量が少なくとも70%だけ抑制されるように選定される。キャップ層は、第2の表面に拡散するn-ドーパントの量が少なくとも80%だけ抑制されるように選定される。キャップ層は、第2の表面に拡散するn-ドーパントの量が少なくとも90%だけ抑制されるように選定される。キャップ層は、第2の表面に拡散するn-ドーパントの量が少なくとも95%だけ抑制されるように選定される。キャップ層は、第2の表面に拡散するn-ドーパントの量が少なくとも98%だけ抑制されるように選定される。キャップ層は、第2の表面に拡散するn-ドーパントの量が少なくとも99%だけ抑制されるように選定される。キャップ層は、第2の表面に拡散するn-ドーパントの量が少なくとも99.5%だけ抑制されるように選定される。キャップ層は、第2の表面に拡散するn-ドーパントの量が少なくとも99.8%だけ抑制されるように選定される。キャップ層は、第2の表面に拡散するn-ドーパントの量が少なくとも99.9%だけ抑制されるように選定される。
【0171】
いかなる特定の理論に拘束されるものではないが、n-ドーパント含有層の前に(第2の表面に)形成されるキャップ層は、n-ドーパントの不慮の接触、および/または第2の表面への拡散(ホウ素によりドープされる)に対するバリアとして機能すると考えられる。
【0172】
本発明のある実施形態では、キャップ層は、キャップ層の境界が、(それぞれの実施例による)n-ドープ層の所望の境界と対応するように選定される。キャップ層は、必要な場合、(それぞれの実施例による)n-ドープ層の境界を定めても良い。キャップ層は、必要な場合、境界にわたる(すなわちキャップ層で被覆された領域における)n-ドーピングを抑制することにより、n-ドープ層の境界を定めても良い。例えば、n-ドープ層とホウ素ドープ層の分離(すなわちオーバーラップの抑制)を容易にしても良く、これにより、シャント抵抗が高まる。
【0173】
本発明のある実施形態では、キャップ層を形成するステップは、キャップ層が基板の端部を被覆するように実施され(すなわち第1の表面と第2の表面の間の表面であり、必要な場合、第1の表面および第2の表面のそれぞれに対して垂直な表面)、必要な場合、基板の端部全体を被覆する。あるそのような実施形態では、キャップ層は、基板の端部における(それぞれの実施例による)n-ドープ層の形成を妨げる。
【0174】
特に記載がない限り、本願における動作が、多くの組み合わせ、または実行の順番で、実施され得ることは理解される。本願における動作は、限定的に解されるものではない。例えば、記載から明らかなように、特定の順番で記載されている2または3以上の動作が、異なる順番(例えば反対の順番)で、または実質的に同時に、実行されても良い。
【0175】
光起電力セル:
本発明の実施形態では、それぞれの実施形態の一つ、および任意の組み合わせにおいて、本願に記載の方法によって調製された、両面光起電力セルが提供される。
【0176】
本発明のある実施形態では、半導体基板(例えばシリコン)を有する、両面光起電力セルが提供される。基板は、第1の表面にn+層を有し、第2の表面にp+層を有し、n+層は、n-ドーパント(例えばリン)を有し、p+層は、ホウ素を有する。さらに、光起電力セルは、前記第1の表面および第2の表面のそれぞれに、両面セルに好適な電気的コンタクトを有することが好ましい(例えばコンタクトは、各表面の大きな部分を被覆しない)。ある実施形態では、セルは、本願に記載の方法で調製される。
【0177】
光起電力セルに関する本発明のある実施形態では、p+層内のホウ素濃度のばらつきは、±5%以下である。ある実施形態では、p+層内のホウ素濃度のばらつきは、±4%以下である。ある実施形態では、p+層内のホウ素濃度のばらつきは、±3%以下である。ある実施形態では、p+層内のホウ素濃度のばらつきは、±2%以下である。ある実施形態では、p+層内のホウ素濃度のばらつきは、±1%以下である。
【0178】
ホウ素濃度のばらつきは、任意の好適な技術により(例えば0.1mmから1mmの範囲の解像度で)定められても良い。必要な場合、p+層の所与の位置でのシート抵抗(例えば0.1から1mmの□)を定めることにより、求めても良い。この場合、シート抵抗のばらつき(±5%以下のような低い値)は、ホウ素濃度のばらつきと等しいと仮定される。
【0179】
本発明のある実施形態では、p+層のホウ素濃度は、1021原子/cm3未満であり、必要な場合3×1020原子/cm3未満であり、必要な場合1020原子/cm3未満であり、必要な場合3×1019原子/cm3未満であり、必要な場合1019原子/cm3未満である。
【0180】
本発明によるある実施形態では、p+層において、それぞれの実施例によるシート抵抗は、例えば、15から300Ωの範囲であり、30から300Ωの範囲であり、30から200Ωの範囲であり、および/または30から150Ωの範囲である。
【0181】
本発明のある実施形態では、第1の表面は、構造化される。
【0182】
本発明のある実施形態では、第2の表面は、構造化される。必要な場合、第1および第2の表面の両方が、構造化される。
【0183】
本発明のある実施形態では、光起電力セルは、さらに、第2の表面の少なくとも一部に、必要な場合、第2の表面全体に、(任意の実施例による)不動態化および/または抗反射コーティングを有する。ある実施形態では、不動態化および/または抗反射コーティングは、基板の端部の少なくとも一部、必要な場合全てを被複する。必要な場合、基板の端部と隣接する第1の表面の一部(例えば、最大0.5mmの幅、必要な場合、端部に隣接する0.1から0.5mmの幅を有する第1の表面の領域)が被覆される。
【0184】
本発明のある実施形態では、光起電力セルは、さらに、第1の表面の少なくとも一部に、必要な場合、第1の表面全体に、(本発明の実施例による)不動態化および/または抗反射コーティングを有する。ある実施形態では、不動態化および/または抗反射コーティングは、第1の表面および第2の表面のそれぞれの少なくとも一部を被覆し、必要な場合、第1の表面および第2の表面の全体を被覆する。第1の表面上の不動態化および/または抗反射コーティングは、第2の表面上の不動態化および/または抗反射コーティングと同じであっても、異なっていても良い。
【0185】
ある実施形態では、(本発明の実施例による)不動態化および/または抗反射コーティングの総厚さは、1から15nmの範囲であり、必要な場合2から15nmの範囲であり、必要な場合5から15nmの範囲である。
【0186】
それぞれの実施例による不動態化および/または抗反射コーティングの例には、これに限られるものではないが、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、TiO2、ZrO2、および/またはTa2O5を有するコーティングが含まれる。不動態化および/または抗反射コーティングに2以上の層が存在する場合、異なる層は、例えば、屈折率(例えば上部層は、下部層よりも低い屈折率を有する)および/または成分(例えば一つの層は、酸窒化ケイ素を有し、別の層は、窒化ケイ素を有する)が異なっていても良い。
【0187】
本発明のある実施形態では、光起電力セルのn+層(必要な場合、それぞれの実施例により調製された第2のn+層、またはそれぞれの実施例により調製された、第2のn+層を含まない第1のn+層)において、シート抵抗は、70から150Ωの範囲にある。
【0188】
本発明のある実施形態では、(それぞれの実施例による)p+層におけるホウ素濃度は、前記第2の表面の前記電気的コンタクトの下側の領域において、より大きい。ある実施形態では、前記電気的コンタクトの下側の領域におけるホウ素の濃度は、p+層の残りの領域におけるホウ素濃度よりも、少なくとも20%高い。ある実施形態では、前記電気的コンタクトの下側の領域におけるホウ素の濃度は、p+層の残りの領域におけるホウ素濃度よりも、少なくとも40%高い。ある実施形態では、前記電気的コンタクトの下側の領域におけるホウ素の濃度は、p+層の残りの領域におけるホウ素濃度よりも、少なくとも60%高い。ある実施形態では、前記電気的コンタクトの下側の領域におけるホウ素の濃度は、p+層の残りの領域におけるホウ素濃度よりも、少なくとも80%高い。ある実施形態では、前記電気的コンタクトの下側の領域におけるホウ素の濃度は、p+層の残りの領域におけるホウ素濃度よりも、少なくとも100%(2倍)高い。ある実施形態では、前記電気的コンタクトの下側の領域におけるホウ素の濃度は、p+層の残りの領域におけるホウ素濃度よりも、少なくとも200%(3倍)高い。ある実施形態では、前記電気的コンタクトの下側の領域におけるホウ素の濃度は、p+層の残りの領域におけるホウ素濃度よりも、少なくとも400%(5倍)高い。ある実施形態では、前記電気的コンタクトの下側の領域におけるホウ素の濃度は、p+層の残りの領域におけるホウ素濃度よりも、少なくとも900%(10倍)高い。
【0189】
本発明のある実施形態では、光起電力セルは、さらに、第2の表面にSiBを有し、必要な場合、それぞれの実施例により調製されたSiB層を有する。SiB層は、必要な場合、それぞれの実施例による不動態化コーティングであっても良い。
【0190】
本発明のある実施形態では、光起電力セルの第2の表面は、1014から1016のホウ素原子/cm2を有する。ある実施形態では、第2の表面は、3×1014から3×1015のホウ素原子/cm2を有する。
【0191】
本発明のある実施形態では、前記第2の表面におけるホウ素の最大濃度は、3×1020原子/cm3未満である。ある実施形態では、ホウ素の濃度は、1020原子/cm3未満である。ある実施形態では、ホウ素の濃度は、3×1019原子/cm3未満である。ある実施形態では、ホウ素の濃度は、1019原子/cm3未満である。
【0192】
本発明のある実施形態では、(それぞれの実施例による)p+層において、シート抵抗は、少なくとも15Ω/□である。ある実施形態では、p+層のシート抵抗は、15から300Ω/□の範囲である。ある実施形態では、p+層のシート抵抗は、15から200Ω/□の範囲である。ある実施形態では、p+層のシート抵抗は、15から150Ω/□の範囲である。
【0193】
本発明のある実施形態では、(それぞれの実施例による)p+層において、シート抵抗は、30Ω/□である。ある実施形態では、p+層のシート抵抗は、30から300Ω/□の範囲である。ある実施形態では、p+層のシート抵抗は、30から200Ω/□の範囲である。ある実施形態では、p+層のシート抵抗は、30から150Ω/□の範囲である。
【0194】
ある実施形態では、光起電力セルのp+層は、基板の端部と隣接する領域を被覆しない。この領域は、0.1から0.5mmの幅を有する。そのような領域は、必要な場合、それぞれの実施例による、第2の表面のマスキングおよび/またはエッチングにより、調製されても良い。
【0195】
本発明の実施形態(任意の態様)では、半導体基板は、シリコンを有し、必要な場合、実質的にドープされたシリコンで構成されたも良い(例えばp型またはn型のシリコン)。
【0196】
(本発明の任意の態様による)実施形態では、半導体基板は、必要な場合、n型半導体(例えばn-ドープシリコン)であっても良い。この場合、光起電力セルは、p+-n-n+構造となる。またはp型の半導体(例えばp-ドープシリコン)であっても良い。この場合、光起電力セルは、、n+-p-p+構造となる。
【0197】
本発明のある実施形態では、半導体基板は、p型半導体である。ある実施形態では、基板は、p-ドープシリコンである。
【0198】
本発明のある実施形態では、(それぞれの実施例による)光起電力セルの有効背面再結合は、150cm/秒未満である。ある実施形態では、有効背面再結合は、100cm/秒未満である。ある実施形態では、有効背面再結合は、60cm/秒未満である。ある実施形態では、有効背面再結合は、30cm/秒未満である。ある実施形態では、有効背面再結合は、20cm/秒未満である。ある実施形態では、有効背面再結合は、100cm/秒未満である。ある実施形態では、有効背面再結合は、5cm/秒未満である。
【0199】
(例えば背面の)有効表面再結合は、従来の好適な技術、例えば、(後側の)照射の際のスペクトル内部量子効率の測定により定められても良い。必要な場合、有効表面再結合は、Eisenbergらの「Energy Procedia 2016,92:16-23」に記載の方法で定められても良い。この文献は、本願の参照として取り入れられる(特に、表面再結合の測定に関する内容)。
【0200】
本発明のある実施形態では、(それぞれの実施例による)光起電力セルの前側効率は、少なくとも19%である。ある実施形態では、前側効率は、少なくとも19.5%である。ある実施形態では、前側効率は、少なくとも20%である。ある実施形態では、前側効率は、少なくとも20.5%である。ある実施形態では、前側効率は、少なくとも21%である。ある実施形態では、前側効率は、少なくとも21.5%である。ある実施形態では、前側効率は、少なくとも22%である。
【0201】
「前側効率」と言う用語は、セルの片側(前側)のみが照射に晒される条件下における、(本願に記載の)光起電力セルの効率を表す(例えば、他方の側は、黒色不透明表面に配置される)。照射に晒される「前側」は、高い効率により特徴付けられるいずれかの側として定められる。
【0202】
(例えば、任意の所与の側の照射に関する)セルの効率は、標準的な試験条件において、セルの最大パワー出力を求め、これを入力光照射輝度で除することにより、定められても良い。
【0203】
本発明のある実施形態では、(それぞれの実施例による)光起電力セルの開回路電圧は、少なくとも620mVである。ある実施形態では、開回路電圧は、少なくとも630mVである。ある実施形態では、開回路電圧は、少なくとも640mVである。ある実施形態では、開回路電圧は、少なくとも650mVである。ある実施形態では、開回路電圧は、少なくとも660mVである。
【0204】
光起電力セル特性に関する物理的パラメータは、従来から光起電力セルの評価に使用されている標準的な試験条件での測定により、定められる。標準的な試験条件は、1000W/m2の太陽放射照度、1.5のAM(空気質量)での太陽参照スペクトル、および25℃のセル温度を含む。
【0205】
本発明のある実施形態では、前側短絡電流に対する後側短絡電流の比は、少なくとも0.75である。ある実施形態では、前側短絡電流に対する後側短絡電流の比は、少なくとも0.8である。ある実施形態では、前側短絡電流に対する後側短絡電流の比は、少なくとも0.85である。ある実施形態では、前側短絡電流に対する後側短絡電流の比は、少なくとも0.9である。
【0206】
「前側短絡電流」と言う用語は、セルの前側のみが照射に晒される(例えば後側は、黒色不透明表面に配置される)条件下における、(本願に記載の)光起電力セルの短絡電流を表す。「後側短絡電流」と言う用語は、セルの後側のみが照射に晒される(例えば前側は、黒色不透明表面に配置される)条件下における、(本願に記載の)光起電力セルの短絡電流を表す。「前側」は、高効率が得られるいずれかの側として定められ、「後側」は、(本願に記載された)低効率が得られるいずれかの側として定められる。
【0207】
短絡電流(ISC)は、例えば、従来の標準的な技術を用いて、光起電力セルの短絡(すなわち電圧=0)の際に生じる電流を測定することにより定められる。
【0208】
後側は、(定義により)前側よりも効率が低く、前側短絡電流に対する後側短絡電流の比は、通常、1未満であり、必要な場合、0.95未満である。
【0209】
いかなる特定の理論に拘束されるものではないが、(例えば本願に記載の)前側短絡電流に対する後側短絡電流の比較的高い比は、優れた背面設計(例えば、p+-p-n+構造におけるp+層)に関するものと考えられる。この設計では、ドーパントの比較的均一な濃度、オーバードーピングの抑制および除去、ならびに/または抵抗率な後側再結合の特徴がある。さらに、比較的高い前側効率のような、本願に記載の他のパラメータの値も、優れた後側設計により、改善されていると考えられる。
【0210】
ある実施形態では、光起電力セルの比シャント抵抗は、少なくとも5000Ω・cm2であり(すなわちオームとcm2の積)、必要な場合少なくとも5500Ω・cm2であり、必要な場合少なくとも6000Ω・cm2であり、必要な場合少なくとも6500Ω・cm2であり、必要な場合少なくとも7000Ω・cm2である。比シャント抵抗は、光起電力セルの面積および形状に依存し、前述の比シャント抵抗は、面積が約230cm2で、実質的に正方形(すなわち約61cmの周を有する)の光起電力セルに対して、定められても良い。
【0211】
ある実施形態では、光起電力セルは、それぞれの実施例による比較的低ホウ素濃度(例えば1020原子/cm3以下)と組み合わされ、それぞれの実施例による比シャント抵抗を示す。
【0212】
いかなる特定の理論に拘束されるものではないが、シャント抵抗を高める従来の技術(例えばレーザ端部絶縁)は、(低い制御されたホウ素濃度を有するセルのような)高効率セルにおいては、あまり効果的ではない(有害ですらある)と考えられる。
【0213】
本発明の実施形態の別の態様では、示された任意の光起電力セルを有する、光起電力モジュールが提供される。光起電力セルは、相互に接続される。
【0214】
本願において、「光起電力モジュール」と言う用語は、直列および/または並列に相互接続された光起電力セルのアレイを有するモジュールを表す。セルの直列接続では、高電圧が形成される。セルの並列接続では、高電流が得られる。従って、当業者は、所望の電圧および電流を提供する態様で、セルを接続できる。
【0215】
モジュールは、必要な場合、さらに、光起電力セルに光が到達することを妨害せずに、光起電力セルを環境から保護するガラスのシート、および/またはモジュールを光源の方向に配向させる(例えば太陽の日中の動きを追跡する)ベースのような、追加の素子を組み合わせても良い。必要な場合、直流を交流に変換するため、インバータが存在しても良い。必要な場合、光起電力セルにより生じたエネルギーを保管するため、バッテリがあっても良い。
【0216】
本発明の別の態様では、本願に記載の光起電力モジュールを有する電力プラントが提供される。必要な場合、電力プラントは、太陽光に対する暴露が最大化されるように配置された、複数の光起電力モジュールを有する。
【0217】
本願に記載の両面光起電力セルを有する光起電力モジュールの最適な配置および配向が、単面光起電力セルのアレイの最適配置とは異なり得ることは明らかである。
【0218】
本発明の実施例の別の態様では、それぞれの実施例による光起電力セルを有する電気装置が提供される。電気装置は、両面光起電力セルの両側が、(例えば装置の表面で)光に晒されるように構成されても良い。ある実施形態では、光起電力セルは、電気装置の電源である。
【0219】
本願に記載の光起電力セルおよび/または光起電力モジュールの一用途には、これに限られるものではないが、家庭用電源、温水ヒータ、ポケットコンピュータ、ノートブックコンピュータ、携帯用充電ドック、携帯電話、ページャ、PDA、デジタルカメラ、スモーク検出器、GPS装置、遊具、コンピュータ周辺装置、衛星、宇宙船、携帯用電気機器(例えば携帯用TV、携帯用光源)、およびコードレス電気機器(例えば、コードレス真空クリーナ、コードレスドリル、コードレス鋸)が含まれる。
【0220】
本発明の別の態様では、電磁放射線の検出器が提供される。この検出器は、本願に記載のいかなる光起電力セルを有しても良く、電磁放射線は、紫外線、可視光、および赤外線からなる群から選定される。検出器は、例えば、放射線の検出のために(例えば赤外検出器として)、および/または(例えば分光測定において)放射線の量を測定するために、使用されても良い。
【0221】
本願の出願から特許が期限切れとなる期間の間、多くの関連するドーピング技術(例えばスパッタリングおよびイオン注入技術)が開発されることが予想され、「ドーピング」、「スパッタリング」、および「イオン注入」という用語の範囲は、そのような新たな技術を全て包含することを意図する。
【0222】
本願に使用される「約」と言う用語は、±10%を表す。
【0223】
「有する」、「含む」と言う用語およびこの変化形は、「非限定的に含む」ことを意味する。
【0224】
「からなる」という用語は、「限定的に含む」ことを意味する。
【0225】
「実質的に〜からなる」と言う用語は、追加の成分、ステップ、および/または部品が、請求項に記載の組成、方法、または構造の基本的なおよび新しい特徴を実質的に変化することがない場合に限り、組成、方法、または構造が、追加の成分、ステップおよび/または部品を有し得ることを意味する。
【0226】
本願に使用される「一つの」という用語は、明確に記載がない限り、複数の参照を含む。例えば、「化合物」または「少なくとも一つの化合物」と言う用語は、その混合物を含む、複数の化合物を含有し得る。
【0227】
本願を通じて、ある範囲書式で本発明の各種実施例が記載されている。範囲書式の記載は、単なる便宜的かつ簡便なものであり、本発明の範囲を固定的に限定するものと解してはならないことを理解する必要がある。従って、範囲書式の記載は、全ての可能なサブ範囲、および範囲内の個々の数値を具体的に記載したものと解する必要がある。例えば、1から6のような範囲の記載は、範囲内の個々の数字、例えば1、2、3、4、5、6とともに、1から3、1から4、1から5,2から4、2から6、3から6など、具体的に記載されたサブ範囲を有すると解する必要がある。これは、範囲の広さに関わらず適用される。
【0228】
数値範囲が示されている場合、これは、示された範囲内の任意の記載の数値(分数または整数)を含むことを意味する。第1の示された数値と第2の示された数値の「間の範囲」、および第1の示された数値から第2の示された数値の「範囲」という用語は、相互互換的に使用され、これらは、第1の示された数値と第2の示された数値、およびこれらの間の全ての分数および整数を含むことを意味する。
【0229】
明確化のため、別の実施例の内容に記載されている本発明のある特徴が、単一の実施例に組み合わされて提供されても良いことは明らかである。逆に、簡素化のため、単一の実施例に記載されている本発明の各種特徴が、別のまたは任意の好適なサブ組み合わせに提供され、あるいは任意の他に記載の本発明の実施例に好適なものとして提供されても良い。各種実施例のある特徴は、その実施例がこれらの素子がなくては作動しない場合を除き、これらの実施例の必須な特徴であると解されるものではない。
【0230】
前述の本発明の各種実施例および態様、ならびに請求項に記載の事項は、以下の実施例における実験的なサポートに見出される。
【実施例】
【0231】
前述の記載とともに、以下の例を参照して、本発明の非限定的ないくつかの実施例について説明する。
【0232】
(例1)
スパッタされたホウ素含有固体拡散源を用いた、異なるシート抵抗を有するp+層の制御可能な形成
基板として、比抵抗が約5Ωcmのチョクラルスキーn型のシリコンウェハを用いた。窒化ホウ素(BN)ターゲットの高周波(RF)スパッタリング法により、ホウ素含有表面ソース源を、研磨されたシリコン基板の表面に成膜した。スパッタイオンとして、純アルゴンまたは酸素を含むアルゴンを使用した。スパッタガス中の酸素の濃度に応じて、1〜10nmの範囲の厚さを有する、BNまたはBOxNyが形成された。
【0233】
6”平方のウェハの対角線に沿って、ウェハ表面に成膜した層の厚さの均一性を評価した。サンプルは、1〜4kWの異なる放電パワーを用いて調製した。エリプソメトリーにより、成膜層の屈折率および厚さを測定した。
【0234】
図1に示すように、エリプソメトリーによる評価の結果、試験されたいかなる放電パワーにおいても、ホウ素含有層の厚さの変化は、約±4〜5%の範囲内にあった。
【0235】
前述のように調製されたホウ素含有層は、スパッタリング法による5乃至20nmの厚さのSiNおよび/またはSiOxキャップ層の形成により、拡散プロセスの前に保護された。スタックに配置されたウェハを用いて、温度1025℃での石英管における拡散を実施し、シリコン基板にホウ素ドープp+層を形成した。
【0236】
図2に示すように、10nmのSiNキャップ層の形成後の30分の拡散の結果、シリコン内にホウ素ドープp+層が得られた。これは、シリコン表面にスパッタされたホウ素含有層の所与の厚さにおいて、シート抵抗(Rsh)の極めて低い分散を示した(10または20cm3/分の酸素流速でのスパッタリングを含む)。
【0237】
この結果は、高い再現性を示唆するものである。Rsh値の分散は、キャップ層を有しないサンプルよりも小さく(データは示されていない)、これは、キャップ層が、分散を抑制し、再現性を高める役割を果たしていることを示唆する。
【0238】
さらに図2に示すように、広い比Rsh値(約20乃至100Ω)の範囲において、1〜5nmの範囲の固有ホウ素含有層の厚さが得られている。この得られたシート抵抗値の範囲は、太陽電池の設計に好適である。
【0239】
これらの結果は、ホウ素含有層の好適な厚さを選定することにより、太陽電池の技術的要求に応じて、ウェハ表面上が高い均一性を有した状態で、ホウ素含有層の好適なシート抵抗が得られることを示唆するものである。
【0240】
(例2)
抑制された有効表面再結合(Seff)を有するp+層の制御可能な形成
ホウ素の表面成膜固体ソース源を用いて、n型シリコンウェハに対称にドープし、両側にp+層を形成した。p+層の有効表面再結合におけるドーピング手順の効果の比較解析のため、2種類のシリコンサンプルを使用した。
【0241】
第1の群では、各ウェハの両側に、スピンオン技術を用いて、ホウケイ酸溶液をコーティングした。溶液の成膜されたコーティングの乾燥後に、ホウ素含有膜が形成された。
【0242】
第2の群では、各ウェハの両側に、高周波スパッタリングにより厚さ1乃至3nmのホウ素酸窒化物の膜をコーティングし、厚さ10nmのスパッタSiN層でキャップした。
【0243】
全てのウェハを、石英管炉にスタックし、窒素雰囲気下で1025℃の温度で30分間拡散処理した。次に、二次イオン質量分析法(SIMS)により、各深さでのホウ素濃度を評価した。
【0244】
図3に示すように、スピンオンドーピング源を用いて調製されたサンプルは、低い深さで、シリコン内のホウ素の溶解度(約5×1020原子/cm3)を超える表面ホウ素濃度を示した。これは、通常のホウ素によるシリコンへのオーバードーピングを示唆するものである。
【0245】
一方、図4に示すように、ホウ素スパッタリング(その後の熱処理)を用いて処理された代表的なウェハは、低い表面ホウ素濃度(1020原子/cm3以下)を示し、表面ホウ素濃度は、(例えば、一貫してホウ素の溶解度レベル未満に維持されることにより)十分に制御された。
【0246】
同様に、図5に示すように、ホウ素スパッタリング(その後の熱処理、および乾燥熱酸化)を用いて処理された追加のウェハは、異なる表面抵抗(34、74、および390Ω/□)を示し、異なるホウ素の濃度/深さプロファイルを示し、各々は、低表面ホウ素濃度(常時1020原子/cm3未満)、ならびに表面ホウ素濃度(熱酸化およびその後の拡散による、ウェハの表面でのサブ最大ホウ素濃度)の十分な制御で特徴付けられる。
【0247】
これらの結果は、例えば、コンタクト抵抗の最小化、表面再結合の抑制などにより、ホウ素濃度プロファイルが、所望のプロセスおよび設計要求が得られるように、制御できることを示すものである。
【0248】
標準的な手順によるRCA清浄化の後、ウェハは、表面不動態化のため、キンヒドロン溶液(3%のイソプロパノール中)内に浸漬され、準定常状態での光伝導測定法を用いて、有効表面再結合(Seff)が測定された。いかなる理論に拘束されるものでもないが、低ホウ素濃度を有する(本願に記載の)ウェハの特性は、(例えばキンヒドロンを用いた)表面不動態化による従来の方法に比べて、十分に低いSeffにすることができると考えられる。一方、オーバードープウェハ(例えばスピンオン技術を用いて調製される)は、追加の処理なしで、(SiBの存在により)比較的低いSeffを有し、従って、表面不動態化により、容易に改善することはできない。スピンオン技術により調製されたウェハは、従って、キンヒドロン溶液中に浸漬していない。
【0249】
表1に示すように、ホウ素スパッタリングを用いた制御可能なドーピングの結果、表面再結合ロスの相応の低減が得られた。
【0250】
表1:ホウ素スパッタリングおよびキンヒドロン中の浸漬による表面不動態化後のシリコンウェハの有効表面再結合
【表1】

(例3)
制御されたp+層の構成を有するp+-p-n+半導体構造
例2に示した手順により、各種厚さのスパッタされたホウ素含有層を用いて、p型シリコンウェハにドープした。ただし、ここでは、裏側のみホウ素でドープした点が異なる。前側は、(裏側のホウ素ドープと同時の)熱拡散によりリンドープし、n+層を形成した。これは、(例えば露国特許第2139601号に記載のような)エッチングにより、前側の構造化の際に除去された。(POCl3拡散を介した)リンの拡散により、p-n接合が形成され、第2のn+層が形成された。得られた(第2の)n+層のシート抵抗は、〜80Ω/□であった。
【0251】
p+-p-n+半導体構造の形成後に、両方の表面の不動態化、および抗反射SiNコーティングの成膜を行い、一つの太陽照射で予想開回路電圧(Voci)を評価し、Sinton装置を用いた準定常状態の光伝導減衰測定により評価した。表2には、いくつかの代表サンプルにおけるVoci値を示す。
【0252】
表2:ホウ素ドーピングのスパッタリングを用いて得られたp+-p-n+構造の予想開回路電圧(Voci
【表2】
表2に示すように、得られたp+-p-n+半導体構造は、高い性能を示し、Voci値は、少なくとも22%の効率を有する光起電力セルの製造に適する。
【0253】
(例4)
制御されたp+層の構成を有する光起電力セル
例3に示した方法により、2つの群のp型Siウェハを処理し、光起電力セルを形成した。2つの群は、以下の点が異なる:群1のウェハでは、(第2のn+相の形成のためのPOCl3気相拡散による)p-n接合の形成は、ホウ素ドープ側におけるSiN抗反射層の成膜の前に実施され、群2のウェハでは、ホウ素ドープ側におけるSiN抗反射層の成膜の後に、実施された。リンの拡散の後、n+側に、不動態化/抗反射コーティングの成膜および熱処理が実施され、標準条件下でのセル特性が評価された。表3および表4には、それぞれ、群2および群1における光起電力セルの特性パラメータが示されている。
【0254】
表3:後面抗反射層の成膜後に形成されたp-n接合を有する光起電力セルのパラメータ
【表3】
【0255】
表4:背面抗反射層の成膜の前に形成されたp-n接合を有する光起電力セルのパラメータ
【表4】
表3および4に示すように、背面抗反射層の成膜後に気相拡散を行い、n+層/p-n接合を形成する方法では(表3)、シャント抵抗の大きな上昇と関連して、相応の効率向上が得られた。
【0256】
一方、背面抗反射層の成膜前にリン拡散を行う場合(表4)、端部シャントを抑制するため、追加の対策が望ましい。
【0257】
いかなる特定の理論に拘束されるものでもないが、抗反射層によるホウ素ドープ領域の被覆は、ホウ素ドープ領域とその後形成される(第2の)n+層の間の接触に関するシャントを抑制すると考えられる。
【0258】
これらの結果は、本発明の方法により、高効率光起電力セルが調製できることを示すものである。例3に示した予測開回路電圧の点から、通常の最適化の際に、さらなる改善が期待できる。
【0259】
特定の実施例とともに、本発明について説明したが、当業者には、多くの代替、修正、変更が明らかである。従って、添付の特許請求の範囲に記載の思想および広い範囲内にある全てのそのような代替、修正、変更が包含されることが意図される。
【0260】
本願に参照された全ての文献、特許および特許出願は、各個々の文献、特許、または特許出願が参照により取り入れられることが個々に具体的に示唆されているのと同様に、本願の参照として取り入れられる。また、本願におけるいかなる参照の引用または示唆も、そのような参照が本発明に対する従来技術として利用できることを認めるものと解してはならない。セクション見出が使用されている範囲において、それらを必要な限定として解してはならない。
図1
図2
図3
図4
図5