(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記チャネルコンタクト領域は、前記凸領域に近い側に配置された第1コンタクト領域と、前記第1コンタクト領域上に配置され、前記第1コンタクト領域よりも低濃度な第2コンタクト領域との二段構造を有しており、
前記第2コンタクト領域が、前記コンタクトトレンチの底部を形成している、請求項9を引用する請求項10に記載の半導体装置。
表面および裏面を有する半導体層であって、第1導電型のチャネル領域、前記チャネル領域の表面部に配置された第2導電型のエミッタ領域、および前記チャネル領域の裏面側に配置された第2導電型のドリフト領域を有し、かつ前記半導体層の表面から前記エミッタ領域および前記チャネル領域を通って前記ドリフト領域に達するゲートトレンチを有する半導体層を準備する工程と、
前記ゲートトレンチに埋め込みゲート電極を埋め込む工程と、
前記チャネル領域の底部に選択的に第2導電型の不純物を注入することによって、前記ゲートトレンチの側面から離れた位置において、前記ドリフト領域から前記チャネル領域側に選択的に突出する凸領域を形成する工程と、
前記半導体層上に、前記エミッタ領域に電気的に接続されたエミッタ電極および前記埋め込みゲート電極に電気的に接続されたゲート電極とを含む電極膜を形成する工程と、
前記半導体層の1つの辺に沿うように、前記エミッタ電極の一部からなるエミッタパッドおよび前記ゲート電極の一部からなるゲートパッドを形成する工程と、
前記半導体層における前記ドリフト領域の裏面側に第1導電型のコレクタ領域を形成する工程とを含み、
前記凸領域を形成する工程は、前記チャネル領域が前記凸領域の周囲に回り込む側部を有し、下面側が開放された凹形状に形成されるように、前記チャネル領域の側部と前記ゲートトレンチの側面との間に、前記ドリフト領域の一部からなる半導体領域が配置されるように、かつ前記凸領域の先端が、前記ドリフト領域の前記半導体領域よりも前記半導体層の表面側に配置されるように、前記凸領域を形成する工程を含む、半導体装置の製造方法。
前記半導体層の表面を選択的に覆うマスクを介して前記半導体層をエッチングすることによって、前記半導体層の表面から前記エミッタ領域を通って前記チャネル領域に達するコンタクトトレンチを形成する工程と、
前記マスクを介して前記半導体層に第1導電型の不純物を注入することによって、前記コンタクトトレンチの底部に、前記チャネル領域よりも高濃度なチャネルコンタクト領域を形成する工程とを含み、
前記凸領域を形成する工程は、前記マスクを介して、前記チャネルコンタクト領域を形成するときのエネルギよりも高いエネルギで前記第2導電型の不純物を注入する工程を含む、請求項15に記載の半導体装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る半導体装置1の模式的な斜視図である。また、
図2は半導体装置1の模式的な平面図である。
半導体装置1は、トレンチゲート型IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)としての基本形態を有している。
【0012】
半導体装置1は、n
−型の半導体層2を含む。半導体層2は、この実施形態では、FZ(Floating Zone)法によって製造されたn
−型のシリコン(Si)単結晶の半導体ウエハを用いて形成されたシリコン単結晶基板である。半導体層2のn
−型の不純物濃度は、たとえば、4×10
13cm
−3〜1×10
15cm
−3であってもよい。
半導体層2の上には、エミッタ電極3およびゲート電極4を含む電極膜5が形成されている。半導体層2の裏面には、ほぼ全面に、コレクタ電極6が形成されている。コレクタ電極6は、半導体層2の裏面に形成されたp
+型コレクタ領域7に接続されている。半導体層2は、たとえば、平面視矩形に形成されており、それに応じて半導体装置1は平面視において矩形形状を有している。
【0013】
電極膜5は、半導体層2の表面のほぼ全域にわたる矩形領域に形成されている。ゲート電極4は、半導体装置1の一角部に形成されたパッド電極部8と、半導体装置1の表面の外周部の全周にわたって形成された外周電極部9と、外周電極部9から半導体装置1の表面の内方領域に向かって延びた複数本(この実施形態では4本)のゲートフィンガー部10とを含む。半導体装置1の表面は、一対の短辺およびそれらを結合する一対の長辺を有する長方形形状を有しており、それに応じて、外周電極部9は長方形環状に形成されている。ゲートフィンガー部10は、外周電極部9の一対の長辺部分から各2本ずつ間隔を空けて互いに平行に延びるように形成されている。
【0014】
エミッタ電極3は、外周電極部9に囲まれた内方領域において、ゲート電極4から絶縁された状態で形成されている。エミッタ電極3は、ゲート電極4に囲まれた領域において半導体層2のほぼ全域を覆うように形成されていて、エミッタ電極3とゲート電極4との間には、それらを絶縁する分離領域11が形成されている。
エミッタ電極3およびゲート電極4ならびにそれらから露出する半導体層2の表面を覆うように表面保護膜(
図5の表面保護膜45)が形成されている。この表面保護膜には、
図1および
図2において二点鎖線で示すように、ゲートパッド開口12およびエミッタパッド開口13が形成されている。ゲートパッド開口12は、パッド電極部8の一部を露出させるように形成されている。エミッタパッド開口13は、エミッタ電極3の表面の一部を露出させるように形成されている。この実施形態では、複数(たとえば6個)のエミッタパッド開口13が、半導体装置1の矩形表面の一長辺に沿って配列されている。
【0015】
そして、半導体層2は、この実施形態では、ゲートフィンガー部10を境界として、それよりも内方のアクティブ領域14と外方の外周領域15とに区画されている。後述するように、アクティブ領域14は、主にIGBTの単位セルが形成される領域であり、外周領域15は、主にIGBTの耐圧構造が形成される領域である。
図3は、電極膜5を取り除いた状態で半導体層2の表面の構造を示す部分拡大平面図であり、
図2の領域IIIにおける構造が示されている。
【0016】
半導体層2には、ゲートトレンチ16が形成されている。この実施形態では、ゲートトレンチ16は、ストライプ状に複数本形成されている。各ゲートトレンチ16は、半導体層2の表面に沿う直線状に形成されていて、複数本のゲートトレンチ16は等間隔で互いに平行に形成されている。
隣接するゲートトレンチ16の間には、半導体層2、すなわちアクティブ領域14の活性部17が露出している。この活性部17は、n
+型エミッタ領域18とp
+型チャネルコンタクト領域19とを含む。
【0017】
n
+型エミッタ領域18は、ゲートトレンチ16に沿うストライプ状に形成されている。n
+型エミッタ領域18の幅方向(長手方向と交差する方向)中央部にはコンタクトトレンチ20が形成されており、このコンタクトトレンチ20の底部にp
+型チャネルコンタクト領域19が形成されている。なお、コンタクトトレンチ20およびp
+型チャネルコンタクト領域19は、n
+型エミッタ領域18の全長にわたって形成されている必要はない。たとえば、ゲートトレンチ16に沿う方向に各一定の長さを有する複数のコンタクトトレンチ20が形成されており、個々のコンタクトトレンチ20にp
+型チャネルコンタクト領域19が分散して形成されていてもよい。つまり、p
+型チャネルコンタクト領域19は、各一定の長さのn
+型エミッタ領域18の間に介在するように、ゲートトレンチ16の長手方向に沿って複数個等間隔に形成されていてもよい。
【0018】
図4は、
図3のIV-IV切断面における断面図である。
図4を参照して、半導体装置1のアクティブ領域14の断面構造を説明する。
図4に示すように、半導体層2は、その厚さ方向に沿って半導体装置1の表面側から順に配置されたn
+型エミッタ領域18、p型チャネル領域21、n
−型ドリフト領域22、n型半導体領域23およびp
+型コレクタ領域7を有している。
【0019】
ゲートトレンチ16は、半導体層2の表面から、断面をほぼ矩形形状に彫り込まれて形成されている。複数本のゲートトレンチ16は、半導体層2の主面に平行な方向に沿って、一定のピッチで平行に形成されている。複数本のゲートトレンチ16は、たとえば、互いに等しい幅を有している。各ゲートトレンチ16は、n
+型エミッタ領域18およびp型チャネル領域21を貫通して、n
−型ドリフト領域22の途中部に達する深さに形成されている。この実施形態では、ゲートトレンチ16は、その長手方向に交差する切断面がほぼ矩形に形成されている。
【0020】
ゲートトレンチ16の内壁面は、ゲート絶縁膜24によって覆われている。ゲート絶縁膜24は、たとえばSiO
2等の絶縁材料からなる。ゲート絶縁膜24は、ゲートトレンチ16の底面および側壁を覆うように形成されている。ゲートトレンチ16内には、ゲート絶縁膜24に接するように、ゲート導体としてのポリシリコンゲート25が埋め込まれている。ポリシリコンゲート25は、ゲートトレンチ16に埋め込まれている。
【0021】
ポリシリコンゲート25は、ゲート絶縁膜24を介して、n
+型エミッタ領域18の下方部、p型チャネル領域21およびn
−型ドリフト領域22に対向している。すなわち、ポリシリコンゲート25は、p型チャネル領域21に対しては、半導体層2の厚さ方向に関する全域にわたって、ゲート絶縁膜24を介して対向するように形成されている。
隣接するゲートトレンチ16の間の半導体層2は、トランジスタとして動作する活性部17を形成している。たとえば、ひとつのゲートトレンチ16内のポリシリコンゲート25と、その一方側に隣接する活性部17とが、単位セル26を形成していると見なすことができる。すなわち、単位セル26は、ゲートトレンチ16の形成ピッチで繰り返される繰り返し単位を構成している。つまり、複数の単位セル26が、各ゲートトレンチ16の長手方向および深さ方向に直交する方向(半導体層2の主面に平行な方向)に沿って等間隔に配列されている。
【0022】
活性部17の表面部には、ゲートトレンチ16の長手方向に沿ってコンタクトトレンチ20が形成されている。コンタクトトレンチ20は、半導体層2の表面から、断面をほぼ矩形形状に彫り込まれて形成されている。各コンタクトトレンチ20は、n
+型エミッタ領域18を貫通して、p型チャネル領域21の途中部に達する深さに形成されている。この実施形態では、コンタクトトレンチ20は、その長手方向に交差する切断面がほぼ矩形に形成されている。
【0023】
コンタクトトレンチ20の底部は、p
+型チャネルコンタクト領域19によって覆われている。p
+型チャネルコンタクト領域19は、p型チャネル領域21よりも高濃度に形成されたp型半導体領域である。p型チャネル領域21の不純物濃度は、たとえば5×10
15cm
−3〜5×10
17cm
−3程度であってもよい。
p
+型チャネルコンタクト領域19は、コンタクトトレンチ20の側方に広がるように形成されており、コンタクトトレンチ20の底面を覆う第1部分191と、コンタクトトレンチ20の側面の下方部を覆う第2部分192とを含む。
【0024】
また、p
+型チャネルコンタクト領域19は、半導体層2の裏面側に配置された第1コンタクト領域27と、第1コンタクト領域27上に配置され、第1コンタクト領域27よりも低濃度な第2コンタクト領域28との二段構造を有している。また、第1コンタクト領域27は、第2コンタクト領域28よりも厚く形成されていてもよい。この実施形態では、第2コンタクト領域28が、p
+型チャネルコンタクト領域19の第1部分191および第2部分192を構成している。
【0025】
半導体装置1では、p型チャネル領域21とn
−型ドリフト領域22との境界部にn
+型凸領域29が形成されている。n
+型凸領域29は、n
−型ドリフト領域22と連なって形成され、ゲートトレンチ16の側面から離れた位置において、n
−型ドリフト領域22からp型チャネル領域21側(半導体層2の表面側)に選択的に突出している。より具体的には、p
+型チャネルコンタクト領域19の直下において、隣接するゲートトレンチ16間のn
−型ドリフト領域22の幅方向中央部が、p
+型チャネルコンタクト領域19に対向する湾曲面30を有するドーム型に膨出するように形成されている。p
+型チャネルコンタクト領域19とn
+型凸領域29との間には、それらを分離するためのp型チャネル領域21の一部からなる分離領域33が形成されている。この分離領域33を介して、n
+型凸領域29は、p
+型チャネルコンタクト領域19と対向している。また、n
+型凸領域29は、p型チャネル領域21およびn
−型ドリフト領域22よりも高い不純物濃度を有していてもよい。たとえば、n
+型凸領域29の不純物濃度は、5×10
15cm
−3〜1×10
18cm
−3程度であってもよい。
【0026】
p型チャネル領域21は、その底部がn
+型凸領域29の侵入によってn型化しており、p型の部分に着目すれば、n
+型凸領域29の周囲に回り込む側部31を有し、下面側が開放された凹形状に形成されている。つまり、p型チャネル領域21は、n
+型凸領域29との境界部に凹面32を有している。p型チャネル領域21の側部31は、ゲートトレンチ16の側面に沿う部分であり、ポリシリコンゲート25に閾値以上の電圧が印加されたときに反転層(チャネル)が形成される。
【0027】
p型チャネル領域21の側部31の下方部は、ゲートトレンチ16の側面との間に隙間を隔てており、この隙間に、n
−型ドリフト領域22の一部がn
−型端部34として入り込んでいる。n
−型端部34は、n
+型凸領域29と同様に半導体層2の表面側に突出しているが、その突出量はn
+型凸領域29よりも小さくなっている。したがって、n
+型凸領域29の先端は、n
−型端部34の上端よりも半導体層2の表面側に配置されている。
【0028】
また、この実施形態では、n
−型ドリフト領域22は、ゲートトレンチ16の深さ方向途中において、n
−型ドリフト領域22を2つの領域に区画する境界35を有している。当該2つの領域は、境界35よりもゲートトレンチ16の底部側に配置された第1ドリフト領域36と、第1ドリフト領域36の反対側に配置された第2ドリフト領域37とを含む。より具体的には、半導体層2の不純物濃度を引き継ぐベース部分としての第1ドリフト領域36の表面部に、第1ドリフト領域36よりも高濃度な第2ドリフト領域37がウェル状に形成されている。たとえば、第1ドリフト領域36の不純物濃度は、前述したとおり、半導体層2の不純物濃度と同等の、たとえば、4×10
13cm
−3〜1×10
15cm
−3であってもよい。この上側の第2ドリフト領域37に連なってn
+型凸領域29が形成されており、第2ドリフト領域37は、n
−型端部34としてp型チャネル領域21に接している。
【0029】
n型半導体領域23は、たとえば、n型バッファ領域やn型フィールドストップ領域と呼んでもよい。これらの領域は、複数設けられていてもよい。たとえば、p
+型コレクタ領域7に接するようにn型フィールドストップ領域が形成され、その上にn型バッファ領域が形成されていてもよい。
半導体層2の表面を覆うように、層間絶縁膜38が形成されている。層間絶縁膜38は、たとえば、SiO
2等の絶縁材料からなる。層間絶縁膜38には、コンタクトトレンチ20に連なるコンタクトホール39が形成されている。コンタクトホール39は、コンタクトトレンチ20と同じ幅の下部40と、当該下部40の上端から上方へ向かって幅が広がる上部41(テーパ部)とを含む。
【0030】
層間絶縁膜38上には、エミッタ電極3が配置されている。エミッタ電極3は、バリア膜42と電極本体膜43とを積層した積層構造膜からなる。バリア膜42は、電極本体膜43の構成材料(たとえばアルミニウム銅(AlCu)合金)が、活性部17側へと拡散することを防止するバリア性を有するとともに、導電性を有する材料からなる。バリア膜42は、たとえば、TiN膜であってもよい。
【0031】
電極本体膜43は、バリア膜42に接し、このバリア膜42の上面を覆うように形成されている。電極本体膜43は、たとえばAlCu合金膜からなっていてもよい。
エミッタ電極3は、n
+型エミッタ領域18およびp
+型チャネルコンタクト領域19に電気的に接続されている。したがって、n
+型エミッタ領域18およびp型チャネル領域21は同電位に制御されることになる。
【0032】
また、層間絶縁膜38には、
図4に図示しない位置において、コンタクトホールが形成されている。このコンタクトホールを介して、ポリシリコンゲート25とゲート電極4とが電気的に接続されている。より具体的には、
図2の平面図に示されているように、半導体層2の表面領域は、外周電極部9およびゲートフィンガー部10によって複数(この実施形態では3個)のセル形成領域44に区画されている。各セル形成領域44は、ほぼ長方形の領域である。この長方形の一対の短辺に平行に延びるように各ゲートトレンチ16が形成され、当該長方形の一対の長辺に沿って複数本のゲートトレンチ16が等間隔で配列されている。そして、各ゲートトレンチ16の両端が、外周電極部9またはゲートフィンガー部10にそれぞれ電気的に接続されている。
【0033】
エミッタ電極3を覆うように、表面保護膜45が形成されている。表面保護膜45は、たとえば、ポリイミドで構成することができ、たとえば、スピンコート法によって形成できる。
コレクタ電極6は、半導体層2の裏面から順に積層されたAlSi/Ti/Ni/Au積層構造を有していてもよい。
【0034】
図5は、半導体装置1の外周領域15の構造を説明するための模式的な断面図である。
図5を参照して、半導体装置1の外周領域15の断面構造を説明する。なお、
図5では、外周領域15の説明に必要な構成を主に示し、
図1〜
図4で説明済みの構成については一部省略している。
図5に示すように、半導体層2には、アクティブ領域14および外周領域15に加え、外周領域15を取り囲むスクライブ領域46が形成されている。表面保護膜45は、アクティブ領域14および外周領域15を覆う一方、スクライブ領域46を露出させるように形成されている。表面保護膜45には、
図1および
図2で示したように、エミッタ電極3一部をパッドとして露出させるエミッタパッド開口13が形成されている。
【0035】
外周領域15において半導体層2の表面部には、p型ウェル47およびp型FLR(Field Limiting Ring)48が形成されている。
p型FLR48は、p型ウェル47を取り囲むように複数形成されている。この実施形態では、p型FLR48は、p型ウェル47に近い側から遠ざかる順に4つのp型FLR48A〜48Dを含んでいる。互いに隣り合うp型FLR48の間隔W1〜W4(最も内側のp型FLR48についてはp型ウェル47との間隔)は、p型ウェル47に近い側から遠ざかる順に広くなっている。たとえば、間隔W1=15μm、間隔W2=17μm、間隔W3=19μmおよび間隔W4=23μm程度であってもよい。
【0036】
また、外周領域15において半導体層2の表面部にはさらに、n
+型チャネルストップ領域49が形成されている。n
+型チャネルストップ領域49は、外周領域15から半導体層2の端面50に至るように形成されていてもよい。
層間絶縁膜38は、p型FLR48を選択的に露出させるコンタクトホール51と、n
+型チャネルストップ領域49を選択的に露出させる外周除去領域52とを有している。
【0037】
層間絶縁膜38上の電極膜5は、前述のエミッタ電極3およびゲート電極4の他、フィールドプレート53およびEQR(EQui−potential Ring:等電位ポテンシャルリング)電極54を含む。
フィールドプレート53は、各p型FLR48A〜48Dに一つずつ形成されている。各フィールドプレート53は、層間絶縁膜38のコンタクトホール51内でp型FLR48A〜48Dに接続されている。最も外側でp型FLR48Dに接続されたフィールドプレート53は、層間絶縁膜38上において端面50側に引き出された引き出し部55を有している。引き出し部55の長さは、たとえば、50μm程度であってもよい。
【0038】
EQR電極54は、層間絶縁膜38の外周除去領域52内でn
+型チャネルストップ領域49に接続されている。また、EQR電極54の内周縁と最も外側のフィールドプレート53の外周縁との距離L(絶縁距離)は、たとえば、30μm〜60μmであってもよい。
図6は、半導体装置1の製造方法を説明するためのフロー図である。なお、
図6は、半導体装置1の製造工程のうち主要工程のみを示すものであり、半導体装置1の製造工程には、
図6で示されていない補助工程が含まれていてもよい。
【0039】
半導体装置1を製造するには、まず、FZ法により製造されたn
−型のシリコン単結晶の半導体ウエハを用いて形成された半導体層2が準備される。
次に、半導体層2に、p型不純物のイオン(たとえばボロン)が選択的に注入され(ステップS1)、注入後、半導体層2が熱処理(ドライブイン拡散)される(ステップS2)。これにより、半導体層2の外周領域15に、p型ウェル47およびp型FLR48が形成される。
【0040】
次に、半導体層2が選択的にエッチングされることによって、半導体層2にゲートトレンチ16が形成される(ステップS3)。
次に、たとえば熱酸化処理によって(ステップS4)、ゲートトレンチ16の内壁にゲート絶縁膜24(ゲート酸化膜)が形成される。
次に、たとえばCVD法によって、ポリシリコンゲート25の材料が、不純物を導入しながら堆積される(ステップS5)。ポリシリコンゲート25の材料の堆積は、ゲートトレンチ16を埋め戻し、さらに半導体層2の表面が隠れるまで続けられる。
【0041】
次に、たとえばエッチバックによって、ポリシリコンゲート25の材料の余分な部分が除去される(ステップS6)。つまり、ゲートトレンチ16外の材料が選択的に除去される。
次に、半導体層2に、n型不純物のイオン(たとえばリン)が選択的に注入され(ステップS7)、注入後、半導体層2が熱処理(ドライブイン拡散)される(ステップS8)。これにより、半導体層2に第2ドリフト領域37(n型ウェル)が形成される。第2ドリフト領域37の形成によって、半導体層2の第2ドリフト領域37よりも裏面側の領域が第1ドリフト領域36として分離される。
【0042】
次に、
図7Aに示すように、半導体層2に、p型チャネル領域21の形成のために、p型不純物のイオン(たとえばボロン)が選択的に注入される(ステップS9)。このイオン注入は、たとえば、半導体層2の主面の法線方向に対して角度(たとえば4°〜8°程度)つけ、エネルギを段階に下げて行われる。たとえば、第1段階として500keV〜700keVのエネルギで注入され、次に第2段階として200keV〜400keVのエネルギで注入される。次に、ゲートの閾値電圧を決めるべく、さらに低エネルギ(たとえば100keV〜150keV程度)で、p型不純物のイオンが注入される(ステップS10)。次に、半導体層2が熱処理(ドライブイン拡散)されることによって、半導体層2にp型チャネル領域21が形成される(ステップS11)。
【0043】
次に、
図7Bに示すように、半導体層2に、n型不純物のイオン(たとえばリン)が選択的に注入され(ステップS12)、注入後、半導体層2が熱処理(ドライブイン拡散)される(ステップS13)。これにより、半導体層2にn
+型エミッタ領域18が形成される。
次に、
図7Cに示すように、半導体層2上に、たとえば酸化シリコンからなるマスク56が形成され(ステップS14)、このマスク56を介して半導体層2が選択的にドライエッチングされる(ステップS15)。これにより、n
+型エミッタ領域18を貫通してp型チャネル領域21に達するコンタクトトレンチ20が形成される。
【0044】
次の工程は、p
+型チャネルコンタクト領域19およびn
+型凸領域29の形成工程である(ステップS16〜S18)。まず、
図7Dに示すように、マスク56を介して、半導体層2にp型不純物のイオン(たとえばボロン)が第1のエネルギで選択的に注入される。第1のエネルギは、たとえば、60keV〜80keVであってもよい。これにより、
図7Dの「×」の深さ位置にp型不純物のイオンが注入される。
【0045】
次に、
図7Eに示すように、マスク56を介して、半導体層2にp型不純物のイオン(たとえばボロン)が第2のエネルギで選択的に注入される。第2のエネルギは、第1のエネルギよりも低く、たとえば、10keV〜30keVであってもよい。つまり、
図7Eに示す工程では、
図7Dで注入された「×」の深さ位置よりも浅い部位「△」にp型不純物のイオンが注入される。
【0046】
次に、
図7Fに示すように、マスク56を介して、半導体層2にn型不純物のイオン(たとえばリン)が第3のエネルギで選択的に注入される。第3のエネルギは、第1のエネルギよりも高く、たとえば、90keV〜110keVであってもよい。つまり、
図7Fに示す工程では、
図7Dで注入された「×」の深さ位置よりも深い部位「□」にn型不純物のイオンが注入される。
【0047】
次に、
図7Gに示すように、半導体層2が熱処理(ドライブイン拡散)される。これにより、半導体層2のコンタクトトレンチ20の直下に、ゲートトレンチ16の深さ方向に沿って並ぶようにp
+型チャネルコンタクト領域19(第1コンタクト領域27および第2コンタクト領域28)およびn
+型凸領域29が形成される。
次に、たとえばスパッタ法によって、半導体層2上にエミッタ電極3(電極膜5)が形成される(ステップS19)。
【0048】
次に、半導体層2の裏面にn型不純物のイオン(たとえばリン)が注入され(ステップS20およびS21)、さらに、p型不純物のイオン(たとえばボロン)が注入される(ステップS22)。
次に、半導体層2がレーザアニール処理されることによって、半導体層2の裏面側にn型半導体領域23およびp
+型コレクタ領域7が形成される(ステップS23)。
【0049】
その後、コレクタ電極6等が形成されることによって、前述の半導体装置1が得られる。
半導体装置1の使用時には、エミッタ電極3およびコレクタ電極6に対して、エミッタ電極3側が正となる電圧が印加される。この状態で、ゲート電極4とエミッタ電極3との間の電圧(ゲート−エミッタ電圧)より高くなってオン状態に移行すると、ゲートトレンチ16の側面におけるp型チャネル領域21(側部31)にn型のチャネルが形成されて、n
+型エミッタ領域18とn
−型ドリフト領域22との間が導通する。これにより、n
−型ドリフト領域22に電子が供給される。この電子が、p型チャネル領域21、n
−型ドリフト領域22およびp
+型コレクタ領域7からなるpnpトランジスタのベース電流として作用し、pnpトランジスタが導通する。n
+型エミッタ領域18から電子が供給され、p
+型コレクタ領域7から正孔が注入されるので、n
−型ドリフト領域22には過剰な電子と正孔が蓄積される。これにより、n
−型ドリフト領域22で伝導度変調が発生し、n
−型ドリフト領域22が高伝導度状態に移行する。こうして、半導体装置1(IGBT)の動作が実現される。
【0050】
そして、この実施形態に係る半導体装置1によれば、n
−型ドリフト領域22の頂部にn
+型凸領域29が形成されているため、p型チャネル領域21を挟んで対向するn
+型エミッタ領域18とn
−型ドリフト領域22との間の距離を短くすることができる。これにより、n
+型エミッタ領域18からn
−型ドリフト領域22へ電子を供給する際の直列抵抗成分を低減できるので、IGBTにおける伝導度変調を効率よく発生させることができる。その結果、オン電圧を低減することができる。しかも、n
+型凸領域29がn
−型ドリフト領域22よりも高濃度であるため、正孔の蓄積効果を向上でき、伝導度変調の効率を一層向上させることができる。
【0051】
また、n
+型凸領域29が、IGBTの動作の際にチャネルが形成されるゲートトレンチ16の側面を避けて形成され、p型チャネル領域21におけるチャネル長は、側部31によって十分な長さで確保されている。そのため、IGBTがオフ状態に移行するときにn
−型ドリフト領域22内の少数キャリアである正孔がn
+型エミッタ領域18に吸収されることを抑制することができる。その結果、ラッチアップの発生を抑制することができる。
【0052】
そして、この半導体装置1によれば、上記説明したラッチアップの抑制とオン電圧の低減とを、スイッチング損失の増大を伴わないで両立することができる。
上記の効果のうち、半導体装置1の構造によって、オン電圧を低減できるか否か、およびスイッチング損失の増大を抑制できるか否かを、下記のシミュレーションによって説明する。
<シミュレーションNo.1〜4>
まず、前述の半導体装置1において、n
+型凸領域29の不純物濃度が異なること以外は同一の条件で設定した構造に関してシミュレーションを行った。No.1〜4の合計4つのシミュレーションサンプルを検証した。各シミュレーションサンプルの条件は次の通りである。また、n
+型凸領域29の不純物濃度を含めた半導体層2の深さ方向の濃度プロファイルを
図8Aおよび
図8Bに示す。
図8Aおよび
図8Bは、それぞれ、
図4のA−A線およびB−B線に沿って測定したときのプロファイルである。また、
図8Aおよび
図8Bにおいて、X軸の原点が半導体層2の表面位置であり、X軸の正側がゲートトレンチ16の深さ方向である。
図8Bのプロファイルは、サンプルNo.1〜4共にほぼ同じである。
【0053】
サンプルNo.1:n
+型凸領域29の濃度=0(n
+型凸領域29無し)
サンプルNo.2:n
+型凸領域29の濃度=1.0×10
13cm
−3
サンプルNo.3:n
+型凸領域29の濃度=5.0×10
13cm
−3
サンプルNo.4:n
+型凸領域29の濃度=1.0×10
14cm
−3
そして、接合温度Tj=175℃、アクティブサイズ=10mm□、およびゲート−エミッタ間電圧V
ge=15Vの条件を設定し、サンプルNo.1〜4それぞれのV
ce−I
c特性を測定した。結果を
図9Aおよび
図9Bに示す。
図9Bは、
図9Aの破線XBで囲まれた領域の拡大図である。
【0054】
図9Aおよび
図9Bから明らかなように、n
+型凸領域29を有していないサンプルNo.1に比べて、n
+型凸領域29を有しているサンプルNo.2〜4の方がオン電圧を低減できていた。さらに、n
+型凸領域29の不純物濃度が大きいほど、オン電圧の低減量も大きいことも確認できた。
さらに、サンプルNo.1〜4それぞれ同一測定条件下のターンオン波形およびターンオフ波形を示すと
図10Aおよび
図10Bの通りとなる。得られた波形から、各シミュレーションサンプルのターンオン損失E
on、ターンオフ損失E
offおよびトータル損失E
total(E
on+E
off)を求めたところ、表1の結果が得られた。
【0056】
表1から、スイッチング損失に関して、他のサンプルに対して優位性を有するシミュレーションサンプルは存在しなかった。つまり、
図9Aおよび
図9Bの結果を考慮すると、サンプルNo.2〜4では、スイッチング損失の増大を伴わないで、オン電圧を低減できたことになる。この効果を図示したのが、
図11である。
図11を参照すると、Y軸で示されるスイッチング損失(E
total)がほぼ一定であるにも関わらず、サンプルNo.2〜4のオン電圧V
ceがサンプルNo.1に比べて低減できていることが分かる。
【0057】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
たとえば、半導体装置1の各半導体部分の導電型を反転した構成が採用されてもよい。たとえば、半導体装置1において、p型の部分がn型であり、n型の部分がp型であってもよい。
【0058】
また、前述の実施形態では、半導体層2の一例としてFZ法によって製造されたn
−型のシリコン単結晶の半導体ウエハを示したが、半導体層2は、その表面にエピタキシャル層が形成されたシリコンエピタキシャル基板であってもよい。
本発明の半導体装置は、たとえば、電気自動車(ハイブリッド車を含む)、電車、産業用ロボット等の動力源として利用される電動モータを駆動するための駆動回路を構成するインバータ回路に用いられるパワーモジュールに組み込むことができる。また、太陽電池、風力発電機その他の発電装置(とくに自家発電装置)が発生する電力を商用電源の電力と整合するように変換するインバータ回路に用いられるパワーモジュールにも組み込むことができる。
【0059】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。