(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
工具を支持する可動体と、前記可動体を送り駆動するための送り駆動部と、前記工具による切削加工を行うために前記送り駆動部による送り駆動を制御する数値制御部と、前記可動体の加速度を検出する加速度センサと、を備える工作機械に設けられる情報処理装置であって、
前記数値制御部の制御状態を監視する状態監視部と、
前記加速度センサの出力に基づき、前記可動体の加速度が予め設定された閾値を超えたときに、前記数値制御部に前記送り駆動部の駆動を停止する停止指令を出力する停止指令部と、
前記制御状態に応じて前記閾値の設定を変更する閾値設定部と、を備え、
前記閾値設定部は、切削制御状態では前記閾値として第1閾値を設定し、非切削制御状態での送り制御時には前記閾値として前記第1閾値よりも低い第2閾値を設定し、
前記停止指令部は、前記加速度センサの出力に基づき、切削送り中に生じる異常振動が一定時間以上検出されたときに、前記数値制御部に前記送り駆動部の駆動を停止する停止指令を出力する、情報処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。本実施形態の工作機械は、ミーリング加工とターニング加工ができるターニングセンタベースの複合加工機として構成されている。
【0013】
図1は、実施形態に係る工作機械の概略構成を表す斜視図である。
なお、図示のように、工作機械1を正面からみて上下方向,前後方向,左右方向を、それぞれX軸方向,Y軸方向,Z軸方向とする。
工作機械1は、加工装置2および制御装置4を備える。加工装置2を覆うように装置筐体が設けられ、その前面に操作盤が設けられるが、これらの図示については省略する。
【0014】
加工装置2は、ベッド10上に第1主軸台12、第2主軸台14、工具主軸16および刃物台18などを搭載して構成される。第1主軸台12は第1主軸20を有し、その先端に図示略の第1チャックが取り付けられている。第2主軸台14は第2主軸24を有し、その先端に図示略の第2チャックが取り付けられている。第2主軸24は、必要に応じて図示しない心押し台と付け替えることができる。
【0015】
第1主軸20と第2主軸24は、Z軸方向に同軸状に対向するように配設される。第1主軸台12および第2主軸台14には、それぞれスピンドルモータが内蔵されている。第1主軸20および第2主軸24は、その軸線を中心に回転駆動される。第2主軸台14がZ軸方向に移動可能であり、第1主軸20と第2主軸24との間隔を適宜調整できる。
【0016】
工具主軸16は、Y軸方向に延びる回転軸を有し、主軸頭28を回転可能に支持する。主軸頭28には工具保持部30が設けられる。工具保持部30には、ミーリング加工を行うための工具Tが着脱可能である。工具主軸16は、サドル32によってY軸方向に移動可能に支持される。サドル32は、可動コラム34によってX軸方向に移動可能(昇降可能)である。可動コラム34には、サドル32の移動をガイドするためのガイドレール36が設けられている。可動コラム34は、ベッド10上のガイドレール38に沿ってZ軸方向に移動可能に支持されている。
【0017】
工具主軸16、サドル32および可動コラム34の移動は、図示略の送り機構とそれを駆動するサーボモータにより実現される。この送り機構は、例えばボールねじを用いたねじ送り機構である。サーボモータは「送り駆動部」として機能する。主軸頭28は、工具主軸16とともにX,Y,Z軸方向に移動可能であり、Y軸と平行な軸B1を中心に工具主軸16に対して回転可能である。主軸頭28および工具主軸16は「可動体」として機能する。主軸頭28には、X軸方向およびY軸方向の加速度を検出する加速度センサ40が内蔵されている。加速度センサ40は、工具Tや主軸頭28の衝突を検出するために用いられるが、その詳細については後述する。
【0018】
刃物台18は、タレットベース42およびタレット44を備える。タレットベース42は、Z軸方向に延びる回転軸を有し、タレット44を回転可能に支持する。タレットベース42には、タレット44を回転駆動するためのスピンドルモータが設けられている。タレット44には、その周縁部に沿って複数のクランプ・アンクランプ機構(図示略)が設けられている。これらのクランプ・アンクランプ機構により、異なる種類の複数の工具(図示せず)が着脱可能とされている。
【0019】
タレットベース42は、サドル46に支持されている。サドル46は、ベッド10上のガイドレール48に沿ってZ軸方向に移動可能に支持されている。サドル46は、ベッド10に対して傾斜する傾斜面50を有し、その傾斜面50に沿ってタレットベース42をX,Y軸方向に移動可能に支持する。刃物台18およびサドル46の移動は、それぞれ図示略の送り機構とそれを駆動するサーボモータにより実現される。この送り機構は、例えばボールねじを用いたねじ送り機構である。サーボモータは「第2の送り駆動部」として機能する。
【0020】
このような構成により、タレット44は、X,Y,Z軸方向に移動可能である。また、タレット44は、Z軸と平行な軸B2を中心に回転可能であり、それにより加工に用いる工具を切り替えることができる。すなわち、タレット44は、第1主軸20および第2主軸24の一方又は双方に支持されたワークに対して直交3軸方向に相対的に移動し、工具によりワークを切削加工または旋削加工することができる。
【0021】
なお、ベッド10上には第1主軸台12と隣接して工具マガジン52が設けられている。工具マガジン52には、複数種の工具が格納されている。サドル46をZ軸方向に移動させることにより、タレット44と工具マガジン52との間で工具交換を行うことができる。すなわち、工作機械1には、いわゆるATC(Automatic Tool Changer)が設けられているが、その説明については省略する。
【0022】
図2は、可動体の衝突検出に関わる機能部の電気的構成を模式的に示す図である。
上述のように、主軸頭28には加速度センサ40が内蔵されている。加速度センサ40は、2軸(X軸とY軸)の方向について加速度を検出するセンサである。主軸頭28の加速度は、その2軸の加速度の合成ベクトルに基づき算出される。なお、本実施形態においてZ軸方向の加速度は考慮されていない。加速度センサ40にて検出された加速度(より詳細には、加速度を表す電流値)は、振動診断増幅器60に入力される。
【0023】
振動診断増幅器60は、機械や設備の振動を監視する機器であり、本実施形態では可動体の加速度が衝突を示す値となったときに、制御装置4に向けてその旨を示す衝突検出信号を出力する。振動診断増幅器60は、衝突の有無を判定するための閾値を記憶しており、加速度センサ40から取得した加速度がその閾値を超えたときに衝突検出信号を出力する。この閾値は、外部から設定変更することができる。
【0024】
制御装置4は、NC(Numerical controller)70とPLC(Programmable Logic Controller)72を含む。PLC72は、NC70や各種センサから受信したデータや信号に基づき、予め定められた制御ロジックにしたがった処理を実行する。上述した衝突監視に関し、PLC72は、振動診断増幅器60から衝突検出信号を受け取ると、NC70に対して停止指令を出力する。また、NC70から送られる情報、つまり工作機械1の制御状態に応じて、振動診断増幅器60へ閾値の設定変更をさせる指示を出力する。この閾値変更方法の詳細については後述する。
【0025】
NC70は、手動又は自動で生成された加工プログラム(NCプログラム)にしたがってモータ等のアクチュエータを制御する。ワークWにミーリング加工を施す際、NC70は、サーボアンプ76を介してサーボモータを駆動し、主軸頭28を送り駆動する。また、スピンドルモータを駆動して工具保持部30を回転させる。上述した衝突監視に関し、NC70は、PLC72から停止指令を受け取ると、工作機械1の全体の駆動を停止させる。具体的には、工具主軸16、サドル32および可動コラム34の送り駆動を停止させ、続いて工具保持部30の回転を停止させる。
【0026】
ワークWにターニング加工を施す際には、NC70は、スピンドルモータを駆動して第1主軸20および第2主軸24の一方又は双方を回転させる。続いて、サーボモータを駆動してタレット44を送り駆動し、ワークを加工する。
【0027】
図3は、制御装置4の機能ブロック図である。
制御装置4の各構成要素は、CPU(Central Processing Unit)および各種コンピュータプロセッサなどの演算器、メモリやストレージといった記憶装置、それらを連結する有線または無線の通信線を含むハードウェアと、記憶装置に格納され、演算器に処理命令を供給するソフトウェアによって実現される。コンピュータプログラムは、デバイスドライバ、オペレーティングシステム、それらの上位層に位置する各種アプリケーションプログラム、また、これらのプログラムに共通機能を提供するライブラリによって構成されてもよい。以下に説明する各ブロックは、ハードウェア単位の構成ではなく、機能単位のブロックを示している。
【0028】
制御装置4は、ユーザインタフェース処理部110、データ処理部112およびデータ格納部114を含む。ユーザインタフェース処理部110は、オペレータからの操作入力を受け付けるほか、画像表示や音声出力など、ユーザインタフェースに関する処理を担当する。データ処理部112は、ユーザインタフェース処理部110により取得されたデータおよびデータ格納部114に格納されているデータに基づいて各種処理を実行する。データ処理部112は、ユーザインタフェース処理部110およびデータ格納部114のインタフェースとしても機能する。データ格納部114は、各種プログラムと設定データを格納する。
【0029】
ユーザインタフェース処理部110は、入力部120および出力部122を含む。入力部120は、タッチパネルあるいはハンドル等のハードデバイスを介してオペレータからの入力を受け付ける。出力部122は、画像表示あるいは音声出力によりオペレータに各種情報を提供する。出力部122は、パネル(キーボードおよび機械操作パネル)を画面表示させてもよい。
【0030】
入力部120は、モード選択部130、主軸操作部132、ジョグ送り操作部134、パルス送り操作部136およびを含む。モード選択部130は、自動運転モードと手動運転モードとを切り替えるための操作入力などを受け付ける。例えば、メモリモード、MDIモード、ジョグモード、パルスモードなどの各種運転モードが設けられている。モード選択部130は、各運転モードを選択するための選択キーなどを含む。
【0031】
ここで、「メモリモード」は、データ格納部114に格納されている加工プログラムにしたがって加工装置2を作動させる自動運転モードである。「MDIモード」は、簡単なプログラム指令を手動で入力して加工装置2を作動させるモードである。「ジョグモード」は、ダイヤル操作により刃物台の送り速度を調整する手動運転モードである。「パルスモード」は、手動パルス発生器を操作することにより刃物台の送り速度を調整する手動運転モードである。
【0032】
主軸操作部132は、第1主軸20および第2主軸24を手動操作によって回転させるための操作入力を受け付ける。主軸操作部132は、例えば第1主軸20および第2主軸24のうち、回転させる対象を選択する選択キーや、正逆の所定方向に回転させる駆動キーなどを含む。主軸操作部132は、オペレータの操作に基づく制御指令を数値制御部140へ入力する。
【0033】
ジョグ送り操作部134は、ジョグモードにおいて工具主軸16および刃物台18を移動させるための操作入力を受け付ける。ジョグモードでは、ジョグ送りとジョグ早送りのいずれかの操作を選択可能である。「ジョグ送り」では、軸ごとに予めパラメータで設定された速度に対して0〜655.34%の範囲で送り速度を調整できる。一方、「ジョグ早送り」では、自動運転での早送り速度を100%として、1〜50%の範囲内で早送り速度を調整できる。
【0034】
ジョグ送り操作部134は、工具主軸16および刃物台18のうち移動させる対象を選択するための選択キーや、X軸+,X軸−,Y軸+,Y軸−,Z軸+,Z軸−の送り方向を選択するためのキーなどを含む。ジョグ送り操作部134は、また、ジョグ早送り操作を選択するための早送りスイッチを含む。ジョグモードにおいてこの早送りスイッチをオン/オフすることにより、ジョグ早送りとジョグ送りのいずれかを選択できる。ジョグ送り操作部134は、さらに、ジョグ送り調整用のダイヤル(「送りオーバーライドスイッチ」ともいう)や、ジョグ早送り調整用のダイヤル(「早送りオーバーライドスイッチ」ともいう)などを含む。ジョグ送り操作部134は、オペレータの操作に基づく制御指令を数値制御部140へ入力する。
【0035】
パルス送り操作部136は、パルスモードにおいて工具主軸16および刃物台18を移動させるための操作入力を受け付ける。パルス送り操作部136は、パルス信号を生成するパルスハンドルや、X,Y,Z軸方向のうち送り方向を選択するためのキーなどを含む。パルス送り操作部136は、オペレータの操作に基づく制御指令を数値制御部140へ入力する。
【0036】
データ処理部112は、数値制御部140および指令部142を含む。数値制御部140は、NC70の機能を含む。数値制御部140は、入力部120や指令部142から入力される指令に基づき、データ格納部114に格納されている加工プログラム(NCプログラム)にしたがって加工装置2を制御する。
【0037】
数値制御部140は、また、NC70による現在の制御状態を示す情報(制御情報)を指令部142へ逐次送信する。数値制御部140は、例えば、自動運転や手動運転で早送りが選択されて刃物台の移動を開始したときに「早送り中信号」を送信する。また、自動運転や手動運転で早送り以外の送りが選択されて刃物台の移動を開始したときに「通常送り中信号」を送信する。
【0038】
指令部142は、PLC72を含み「情報処理装置」として機能する。指令部142は、状態監視部150、停止指令部152および閾値設定部154を含む。状態監視部150は、数値制御部140から受信する制御情報に基づいてNC70の制御状態を監視する。振動診断増幅器60が衝突検出信号を出力すると、停止指令部152は、数値制御部140へ停止指令を出力する。数値制御部140は、これを受けて加工装置2の駆動部(送り駆動部や切削駆動部)の動作を停止させる。また、出力部122は、衝突発生を示すアラームを出力する。
【0039】
なお、加速度センサ40および振動診断増幅器60は、工作機械1における衝突を検出するための「検出部」として機能する。本実施形態では、振動診断増幅器60を加工装置2および制御装置4から独立させているが、制御装置4の一部として組み込んでもよい。
【0040】
閾値設定部154は、NC70による制御状態に応じて、衝突検出のための加速度の閾値を変更する。すなわち、振動診断増幅器60に対し、閾値の設定変更をさせる指示を出力する。以下、この閾値の設定方法について具体的に説明する。
【0041】
図4は、閾値の設定方法を概略的に表す図である。本図の横軸は、工具主軸の早送り駆動を開始してからの経過時間を示す。縦軸は上段が工具主軸の速度、下段が工具主軸の加速度をそれぞれ実線で示す。図中の二点鎖線が、早送り時における衝突判定のための閾値を示す。なお、参考までに、切削中の加速度(振動加速度の絶対値)を一点鎖線で例示する。図中の点線が、切削時における衝突判定のための閾値を示す。
【0042】
図示のとおり、工具主軸の早送りを開始してから設定速度(早送り時の速度として予め設定された値)に達するまでに所定の時定数をもつ。早送りの加速度(絶対値)は、サーボモータの駆動開始時と駆動停止時に大きくなる。衝突検出の閾値がこの加速度よりも小さいと、衝突を誤検出してしまう可能性がある。
【0043】
そこで、早送りの開始時と停止時における加速度としてとり得る値(最大加速度)よりも高い値を設定する。また、同じ早送りであっても、オペレータが操作を行う手動運転モードでの早送りは、自動運転モードでの早送りよりも低速となり、加速度も小さくなる。一方、切削送りは、工具とワークとの接触による振動を伴うため、検出される加速度が早送りよりも高くなる。このため、本実施形態では、運転状態に応じて閾値を以下のように設定する。
【0044】
図5は、運転状態と閾値との関係を表す図である。
図示のように、運転状態と閾値との関係は以下のとおりである。早送り中であるか否かは、早送り中信号「1」が入力されているか否かにより判定する。
・閾値G1:切削送り(自動運転モード)に設定する閾値
・閾値G2:早送り(自動運転モード)に設定する閾値
・閾値G3:ジョグ送り(手動運転モード)に設定する閾値
・閾値G4:ジョグ早送り(手動運転モード)に設定する閾値
・閾値G5:パルス送り(手動運転モード)に設定する閾値
・閾値G6:切削送りでも早送りでもない状態(自動運転モード)に設定する閾値
【0045】
ここで、G1>G2とする。G1,G2については固定値としてよい。例えば、閾値G1として「20G(Gal)」を設定し、閾値G2として「5G(Gal)」を設定するなどである。一方、閾値G3〜閾値G5については、手動による速度設定に応じて閾値が算出されるが、一般に閾値G2よりは低い値となる。閾値G6は、切削送りでも早送りでもない状態を設定するときの予備の閾値である(図示略)。閾値G6は、例えば初期設定においては閾値G1と同じ値とし、適宜設定変更できるものとしてもよい。本実施形態においては、切削制御状態が切削送り(自動運転モード)とジョグ送り(手動運転モード)であり、それ以外の早送り(自動運転モード)とジョグ早送り(自動運転モード)とパルス送り(手動運転モード)とが非切削制御状態になる。そのため、本実施形態では、閾値G1,閾値G3は「第1閾値」に対応し、閾値G2,閾値G4,閾値G5は「第2閾値」に対応する。また、閾値G2は「第3閾値」に対応し、閾値G4は「第4閾値」に対応する。ただし、これに限定されるものではない。例えば、閾値G1は「第1閾値」に対応し、閾値G2は「第2閾値」に対応しているだけでもよい。
【0046】
ジョグモードでは、ジョグ送りの場合は送りオーバーライドスイッチ、ジョグ早送りの場合は早送りオーバーライドスイッチをオペレータが操作することにより、送り速度を設定する。数値制御部140は、そのオペレータによるオーバーライドの設定に応じて工具主軸の送り速度を設定変更する。オーバーライドが高いほうが送り速度は大きく、その移動開始時の加速度も大きい。パルス送りでは、オペレータが倍率設定を行うことで送り速度を設定する。その設定倍率が大きいほうが送り速度は大きく、その移動開始時の加速度も大きい。数値制御部140は、そのオペレータによる倍率設定に応じて工具主軸の送り速度を設定変更する。このように両モードでは工具主軸の送り速度ひいては加速度がオペレータの設定により変化するが、その設定に基づいて最大加速度を算出できる。
【0047】
なお、自動運転モードにおいても、切削送りの場合に送りオーバーライドスイッチ、早送りの場合に早送りオーバーライドスイッチを操作することで、各送り速度を調整することはできる。この自動運転モードにおけるオーバーライドは、その値が高いほうが送り速度は大きくなる点でジョグモードと同様であるが、オーバーライドスイッチの目盛りに対する係数の設定がジョグモードとは異なる。すなわち、自動運転モードでは、オーバーライドスイッチの目盛り(%)がそのまま係数となる。一方、ジョグモードでは、オーバーライドスイッチの目盛り(%)と上記パラメータに基づいて係数が設定される。
【0048】
閾値設定部154は、各運転モードでの最大加速度に余裕値(マージン)を加算した値を閾値として設定する。この余裕値については、最大加速度の10%程度とするなど適宜設定できる。振動診断増幅器60は、運転モードが変わるごとに閾値の設定を変更する。すなわち、閾値設定部154は、状態監視部150が取得した制御状態に応じて閾値を設定する。
【0049】
図6は、衝突検出処理を表すフローチャートである。
振動診断増幅器60から衝突検出信号が出力されると(S10のY)、停止指令部152は、数値制御部140に対して停止指令を出力する(S12)。それにより、数値制御部140は、加工装置2の駆動部(送り駆動部や切削駆動部)の動作を停止させる。それにより、オペレータがしかるべき処置(復旧作業等)を行うことができる。
【0050】
図7は、閾値設定処理を表すフローチャートである。
状態監視部150は、数値制御部140から制御状態が通知されると、これを取得する(S20)。このとき、制御状態が自動運転モードであり(S22のY)、かつ切削送り中であれば(S24のY)、閾値設定部154は、振動診断増幅器60に閾値G1を設定する(S26)。一方、早送り中であれば(S24のN、S28のY)、閾値G2を設定する(S30)。切削送り中でも早送り中でもなければ(S24のN、S28のN)、閾値G6を設定する(S32)。
【0051】
一方、制御状態が手動運転モードであり(S22のN)、かつジョグモードであれば(S34のY)、S36へ移行する。このとき、ジョグ早送り中であれば(S36のY)、閾値設定部154は、振動診断増幅器60に閾値G4を設定する(S38)。ジョグ早送り中でないジョグ送り中であれば(S36のN)、閾値G3を設定する(S40)。パルスモードであれば(S34のY)、閾値G5を設定する(S42)。閾値G3〜G5については上述のように、オペレータの操作に基づいて演算する。
【0052】
以上、実施形態に基づいて工作機械1について説明した。
本実施形態では、加速度センサ40の検出に基づき可動体(主軸頭28,工具主軸16)の衝突を検出する。このため、送り駆動部の負荷トルクを基準に衝突を検出する場合のように、可動体の重量変化に伴って閾値を変更する必要がない。また、制御状態に応じて適切に閾値の設定変更を行うため、衝突検出の精度が高められる。
【0053】
具体的には、切削中は工具に伝わる振動により加速度が高くなるところ、閾値として相対的に高い第1閾値を設定する。このため、切削送り中に生じる振動による加速度を衝突による加速度と誤検出することを防止できる。逆に、非切削中は工具に伝わる振動がないため、閾値として相対的に低い第2閾値を設定する。このため、早送り中に発生した衝突を逃さずに検出できる。
【0054】
また、同じ早送り中であっても自動運転モードであれば第3閾値、手動運転モードであれば第4閾値とし、第4閾値を第3閾値よりも低く設定するといったように、制御モードに応じた適切な閾値を設定する。さらに、ジョグモードとパルスモードのそれぞれについて閾値を設定するなど、手動運転モードの種別に応じて閾値を最適化する。このため、本実施形態によれば、工作機械1の運転中は可動体の衝突を適切に検出できる。
【0055】
[変形例]
上記実施形態では、加速度センサ40を主軸頭28に内蔵する構成を例示した。変形例においては、加速度センサ40を工具主軸16又は可動コラム34に内蔵してもよい。また、これらの可動体に加速度センサ40を内蔵させるのではなく、可動体の外面に取り付けてもよい。
【0056】
上記実施形態では、主軸頭28および工具主軸16を可動体として衝突検出の対象とする例を示した。変形例においては、刃物台18その他の可動体に加速度センサを設け、上記実施形態と同様に衝突検出を行ってもよい。
【0057】
上記実施形態では、複合加工機として主軸頭28が回転する構成を例示した。変形例においては、主軸頭が回転しない構成とし、その主軸頭に加速度センサを設けてもよい。また、上記実施形態では、工作機械1としてミーリング加工とターニング加工ができるターニングセンタベースの複合加工機を例示した。変形例においては、ミーリング加工と研削加工ができるマシニングセンタベースの複合加工機であってもよい。あるいは、ターニングセンサであってもよいし、マシニングセンタであってもよい。それらの工作機械の可動体に加速度センサを設け、上記実施形態のように衝突検出を行ってもよい。
【0058】
上記実施形態では、加速度センサ40として、X,Y軸の2軸の方向について加速度を検出するセンサを例示した。変形例においては、X,Z軸の2軸の方向について加速度を検出するセンサとしてもよい。その2軸の加速度の合成ベクトルに基づき主軸頭28(可動体)の加速度を算出してもよい。あるいは、X,Y,Z軸の3軸の方向について加速度を検出するセンサを採用してもよい。その3軸の加速度の合成ベクトルに基づき主軸頭28(可動体)の加速度を算出してもよい。
【0059】
上記実施形態では、
図4に示したように、早送り時の加速度について、加速時と減速時の絶対値を基準にそれよりも高い値を閾値とする例を示した。一方、実際に衝突に関わる加速度はマイナス、つまり減速度である。このため、加速度センサにより加速時と減速時とを区別して加速度を検出できる場合には、減速時の加速度(マイナスの加速度)のみを基準に閾値を設定してもよい。
【0060】
上記実施形態では、手動運転モードについて、オペレータの操作入力に基づいて閾値の設定を変更する例を示した。変形例においては、手動運転モードの種別ごとに閾値を固定値としてもよい。具体的には、ジョグ送りおよびジョグ早送りのそれぞれについて、とり得る最大加速度(オーバーライドの最大値に対応)に余裕値を加算して閾値G3,G4を設定してもよい。同様に、パルスモードでとり得る最大加速度(倍率設定の最大値に対応)に余裕値を加算して閾値G5を設定してもよい。
【0061】
上記実施形態では、工具保持部30のメンテナンスに関し、PLC72が可動体の衝突監視を行う構成を例示した。変形例においては、状態監視部が、振動監視、ベアリング監視、アンバランス監視などを実行してもよい。すなわち、PLC72は、異常振動が一定時間以上検出された場合にNC70へ停止指令を出力してもよい(振動監視)。また、振動の挙動に基づいて工具保持部30のベアリングの状態を診断してもよい(ベアリング監視)。さらに、工具保持部30を送り駆動せずに回転させた状態で監視し、異常振動が検出された場合にNC70へ停止指令を出力してもよい(アンバランス監視)。
【0062】
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。
【解決手段】工作機械は、工具を支持する可動体と、可動体を送り駆動するための送り駆動部と、工具による切削加工を行うために送り駆動部による送り駆動を制御する数値制御部と、可動体に設けられ、可動体の加速度を検出する加速度センサと、加速度センサの出力に基づき、可動体の加速度が予め設定された閾値を超えたときに、数値制御部に送り駆動部の駆動を停止する停止指令を出力する指令部と、を備える。指令部は、切削制御状態では閾値として第1閾値を設定し、非切削制御状態での送り制御時には閾値として第1閾値よりも低い第2閾値を設定する。