(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記凹部は前記厚み方向から視て格子状をなし、交差する格子点が前記厚み方向から視て前記インジケータと重複する位置またはその近傍に設けられ、当該位置の前記吸水性が前記他の領域の吸水性よりも抑えられた
請求項3に記載された吸収性物品。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本件を実施するための形態を説明する。下記の実施形態はあくまでも例示に過ぎず、この実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、適宜組み合わせることもできる。
【0010】
実施形態で述べる吸収性物品は、着用者に装着され、着用者から排泄される尿や経血といった液体の水分を吸収し保持する衛生用品である。この吸収性物品には、テープ型やパンツ型の紙おむつ(いわゆる「使い捨ておむつ」)といった吸収体を備えた吸収性物品のほか、尿パッド,生理用ナプキン,パンティーライナーといった吸収体のみを備えた吸収性物品なども含まれる。以下の実施形態では、吸収性物品としてパンツ型の紙おむつを例示する。
【0011】
本実施形態では、紙おむつについて、着用者の腹部に対向して配置される前身頃と背部に対向して配置される後身頃とを結ぶ方向を長手方向とする。これらの前身頃と後身頃との間(長手方向の中央)には、着用者の股下に配置(股間に対向して配置)される股下部が位置する。また、紙おむつが着用者に装着された状態(以下「装着状態」と略称する)において、着用者の肌に向かう側(内側)を肌面側とし、肌面側の反対側(外側)を非肌面側とする。さらに、肌面側と非肌面側とを結ぶ方向を厚み方向とし、長手方向と厚み方向の何れにも直交する方向を幅方向とする。そのほか、厚み方向から視ることを平面視とする。
【0012】
紙おむつにおける各構成の向きについては、たとえば長手方向に沿うと表現する場合に、長手方向と平行なことだけでなく、ほぼ長手方向と平行なことも含むものとする。具体的には、長手方向に対する傾斜角度が45°未満で延在することを長手方向に沿うものとする。同様に、幅方向や厚み方向といった各方向に沿うと表現する場合についても、各方向に対する傾斜角度が45°未満で延在することを意味する。
【0013】
[I.一実施形態]
[1.構成]
[1−1.基本構成]
まず、
図1および
図2を参照して、紙おむつ1の基本的な構成を説明する。
ここでは、幅方向の中心線Cを基準として対称に紙おむつ1が形成されている。この紙おむつ1は、長手方向に沿って前身頃1A、股下部1Bおよび後身頃1Cの三つの領域に大別される。
【0014】
〈シート類〉
はじめに、紙おむつ1のシート類について述べる。
図1に示すように、紙おむつ1には、前身頃1A、股下部1Bおよび後身頃1Cに亘って長手方向に延びる吸収体10(太破線で示す)が内蔵されている。
ここでは、前身頃1Aおよび後身頃1Cよりも股下部1Bのほうが幅方向寸法の小さい砂時計形状の吸収体10を例示する。ただし、吸収体10の平面視形状は、上記したような砂時計形状に限らず、平面視で矩形(すなわち幅方向寸法が一定)であってもよいし、それぞれ円形の前身頃1Aおよび後身頃1Cを結ぶダンベル形状であってもよい。
【0015】
吸収体10は、着用者から排泄される尿や経血といった液体の水分(以下「排泄水分」という)を吸収して保持する吸水性をもつマット状(あるいはパッド状)の部材である。
この吸収体10では、粉砕あるいは解繊されたパルプ(いわゆる「フラッフパルプ」)に高吸水性樹脂(いわゆる「SAP〈Superabsorbent polymer〉」,「高吸水性高分子」あるいは「高吸水性ポリマー」とも称される)が混合されたコアがラップシートで被包(ラップ)されている。
【0016】
上記した吸収体10に対して肌面側および非肌面側には、
図2に示すように、以下に述べる種々のシート11,12,13,14が設けられている。
吸収体10に対して、肌面側にはセンターシート11が積層され、非肌面側にはバックシート12が積層されている。これらのシート11,12の幅方向側方にはサイドシート13が配置されている。
【0017】
このサイドシート13は、センターシート11の幅方向側部において肌面側に積層されるとともに、バックシート12の幅方向側部において非肌面側に積層される。
バックシート12の非肌面側には、カバーシート14が積層される。ここでは、バックシート12の幅方向側部において、サイドシート13を介してカバーシート14が重ねられる。
【0018】
センターシート11は、排泄水分を透過させて吸収体10に吸収させるため、透水性をもつ。ここでは、装着状態での蒸れを抑えるため、通気性を併せもつセンターシート11が用いられる。このようなセンターシート11としては、いわゆるエアスルー不織布を用いることができる。
また、センターシート11は、紙おむつ1において最も肌面側に配置される(このことから「トップシート」とも称される)。このセンターシート11は、吸収体10よりも幅方向寸法が大きく、肌面側から吸収体10を被覆する。
【0019】
バックシート12は、吸収体10からの液漏れを防ぐため、非透水性をもつ。ここでは、装着状態での蒸れを抑えるため、透湿性を併せもつバックシート12が用いられる。このようなバックシート12としては、透湿性ポリエチレン(PE〈Poly-Ethylene〉)フィルムを用いることができる。ただし、ポリプロピレン(PP〈Poly-Propylene〉)フィルムをバックシート12に用いてもよい。
【0020】
サイドシート13は、幅方向側方への液漏れを防ぐため、非透水性をもつ。このサイドシート13としては、スパンボンド不織布を用いることができる。
また、サイドシート13の一部は、紙おむつ1において最も肌面側に配置される(このことからセンターシート11と同様に「トップシート」とも称される)。このように着用者に対して接触しうるサイドシート13としては、SMS(Spunbound Meltblown Spunbound)不織布やSMMS(Spunbound Meltblown Meltblown Spunbound)不織布のようにメルトブローン層を含ませることにより、柔軟性を高めたスパンボンド不織布を用いることが好ましい。あるいは、スパンボンド不織布をなす繊維の繊度や目付量が抑えられることにより、柔軟性を向上させたスパンボンド不織布を用いることが好ましい。
【0021】
なお、「繊度」とは、繊維の繊維径(太さ)や断面積に対応するパラメータであり、所定の長さあたりの重量で表される。たとえば、一本の繊維について9000mあたりのグラム数[デニール]が「繊度」として用いられる。
また、「目付量」とは、シートの厚みあるいは積層度合いに対応するパラメータであり、単位面積あたりの重量で表される。たとえば、一平米あたりのグラム数が「目付量」として用いられる。
【0022】
カバーシート14は、上記した吸収体10およびシート11,12,13を非肌面側から被覆する。ここでは、カバーシート14として、肌面側から非肌面側に向けて第一カバーシート141,第二カバーシート142,第三カバーシート143の三つがこの順に積層されている。
第一カバーシート141は、バックシート12を介して吸収体10を非肌面側から被覆する(このことから「パッドカバーシート」とも称される)。
【0023】
第二カバーシート142および第三カバーシート143は、前身頃1Aおよび後身頃1C(
図1参照)で第一カバーシート141よりも幅方向寸法が大きく設定され、装着状態で着用者の臀部や腰,腹などのまわりに配置される。第三カバーシート143は、紙おむつ1において最も非肌面側に配置される(このことから、第三カバーシート143は「アウターカバーシート」とも称され、第二カバーシート142は「インナーカバーシート」とも称される)。
【0024】
これらのカバーシート141,142,143としては、スパンボンド不織布を用いることができる。更に言えば、第一カバーシート141としては、紙おむつ1の内部で柔軟に変形させてフィット性を確保するため、サイドシート13と同様に、柔軟性の高いスパンボンド不織布を用いることが好ましい。また、第三カバーシート143としては、触感(手触り)を確保するため、サイドシート13と同様に、柔軟性の高いスパンボンド不織布を用いることが好ましい。
【0025】
図1に示すように、前身頃1Aにおけるカバーシート14と後身頃1Cにおけるカバーシート14とは、それぞれの幅方向端縁部14aどうしが互いに貼り付けられる(いわゆる「サイドシール」)。このようにして、前身頃1Aおよび後身頃1Cの各カバーシート14が連設され、パンツ型の紙おむつ1が形成される。
そのほか、上述したバックシート12およびカバーシート14には、シート12,14に対して肌面側のものが透視可能な程度の半透明性材料が用いられている。
【0026】
〈ギャザー〉
つぎに、
図1および
図2を参照して、紙おむつ1のギャザー15について述べる。
ギャザー15は、ゴムやポリウレタン,伸縮フィルムといった伸縮性をもつ部材(伸縮性部材)によって伸縮性をもたせたシート複合体から構成される。ここでは、伸縮性部材として糸状のゴム部材(以下「糸ゴム」と略称する)20を例示する。
【0027】
この紙おむつ1には、糸ゴム20で形成されるギャザー15として、二種の糸ゴム21,22で伸縮性が付与された二種のギャザー16,17を例示する。一つは、サイドシート13の肌面側端縁部が第一糸ゴム21で皺寄せられた立体ギャザー16(「サイドギャザー」とも称される)である。もう一つは、第二カバーシート142および第三カバーシート143(
図2参照)が第二糸ゴム22(一箇所のみに符号を付す)で皺寄せられたタミーギャザー17である。
立体ギャザー16は、サイドシート13のシート部13a,13b(
図2参照)に対して第一糸ゴム21が伸張状態で一体化されたものである。また、タミーギャザー17では、第二カバーシート142および第三カバーシート143に対して第二糸ゴム22が伸張状態で一体化されたものである。
【0028】
立体ギャザー16は、排泄箇所の周縁で着用者に対する追従性を高めることにより、排泄物の幅方向側方への漏れを防ぐために設けられる。
詳細に言えば、
図2に示すように、立体ギャザー16では、サイドシート13の肌面側における幅方向内側の端縁部に位置するシート部13a,13bが折り曲げられて重ねられる。これらのシート部13a,13bによって、長手方向に延在する第一糸ゴム21が囲まれている。
【0029】
言い換えれば、サイドシート13は、第一糸ゴム21に対して幅方向内側に内壁シート部13aが配置され、第一糸ゴム21に対して幅方向外側に外壁シート部13bが配置されている。すなわち、サイドシート13の一部では、二枚のシート部13a,13bが重ね合わせられている。
このようにサイドシート13のシート部13a,13bが折り曲げられて重ねられた箇所に第一糸ゴム21が内蔵されることで、肌面側に立設されるとともに伸縮性をもつ立体ギャザー16が形成される。
なお、
図1および
図2には、二本の第一糸ゴム21が設けられた立体ギャザー16を例示する。ただし、立体ギャザー16における第一糸ゴム21の本数は、一本であってもよいし、三本以上であってもよい。
【0030】
タミーギャザー17は、着用者の臀部や下腹部に対する追従性を高めるために設けられる。詳細に言えば、タミーギャザー17では、平織物における縦糸または経糸のように、幅方向に延びる複数の第二糸ゴム22が、第二カバーシート142および第三カバーシート143(
図2参照)の間に介装されている。
このようにカバーシート142,143の間に第二糸ゴム22が内蔵されることで、臀部や下腹部まわりに沿う伸縮性をもつタミーギャザー17が形成される。
そのほか、上述したギャザー16,17に加えてまたは替えて、着用者の脚部の付け根に対する追従を高めるためのレッグギャザーを設けてもよい。
【0031】
〈インジケータ〉
さらに、紙おむつ1には、排尿(排泄)の有無を外部に示すインジケータ19(このことから「お知らせサイン」とも称される)が設けられている。
インジケータ19は、紙おむつ1の外部から視認可能(外観可能)に吸収体10に対して付設されている。また、インジケータ19は、濡れると変色する層状の部位である。ここでは、吸収体10とバックシート12との間にインジケータ19が介装されている。
【0032】
このインジケータ19は、水感応型の材料がバックシート12の肌面側に塗布されることで設けられる。たとえば、インジケータ19は、水分と感応する前(濡れる前)には黄色や橙色をなし、水分と感応した後(濡れた後)には青色や黄緑に色が変化する。
バックシート12およびカバーシート14が上述したような半透明性をもつことから、排泄水分によってインジケータ19が変色すると、変色したインジケータ19を紙おむつ1の外部から視認可能であり、外部から排泄の有無を認識することができる。
なお、
図1には、幅方向中央で長手方向に延びる二本のインジケータ19を例示する。ただし、インジケータ19の本数は、一本であってもよいし三本以上であってもよい。また、インジケータ19の延在方向は、長手方向に限られない。
【0033】
[1−2.詳細構成]
つぎに、
図1〜
図3を参照して、紙おむつ1の詳細な構成を述べる。
〈圧搾部〉
まず、長手方向および幅方向の双方に交差して圧搾された溝状の圧搾部40(凹部,圧搾溝)を説明する。具体的には、少なくとも吸収体10において、長手方向および幅方向の双方に交差する領域が圧搾されて形成された溝状の圧搾部40を述べる。
【0034】
この圧搾部40は、吸収体10とこの吸収体10の肌面側に積層されるセンターシート11とがプレス成形されて設けられる。具体的には、積層された吸収体10およびセンターシート11を所定の形状(パターン)の凸型で肌面側からプレス(圧縮)することで、吸収体10あるいはセンターシート11のプレス箇所における含有空気が圧搾され、圧搾部40が成形される。
【0035】
すなわち、圧搾部40は、厚み方向に凹設された凹部である。この圧搾部40は、長手方向および幅方向の双方に対して交差するように線状に延設された溝状の部位である。なお、圧搾部40は、吸収体10のうち幅方向の端縁(端部領域)を除いて延在している。
ここでの圧搾部40には、長手方向に対して、幅方向一方に傾斜して交差する複数の第一傾斜部41(
図1には一箇所だけ符号を付す)と、幅方向他方に傾斜して交差する複数の第二傾斜部42(
図1には一箇所だけ符号を付す)とが設けられている。すなわち、これらの傾斜部41,42は、平面視で格子形状(格子状,グリッドパターン)をなす。
【0036】
ところで、仮に圧搾部がインジケータに対して厚み方向に向かいあって配置された紙おむつでは、圧搾部とインジケータとの間(厚み方向中間)の吸収体に含有される水分によって、排泄がされていないにもかかわらず、インジケータの変色を招くおそれがある。
たとえば、吸収体は、その一部が圧縮されて圧搾部が成形されることから、圧搾部に対応する箇所の含有水分が圧搾されるおそれがある。吸収体を圧縮せずに圧搾部と同形状の部位を成形したとしても、この部位で折れ曲がりやすいことから、この折り曲げによって圧縮された箇所の含有水分が圧搾されうる。そして、上記した圧搾水分がインジケータを濡らして変色させるおそれがある。
【0037】
〈インジケータおよび圧搾部の相対配置〉
そこで、
図1に示すように、本実施形態の紙おむつ1では、インジケータ19と圧搾部40とが厚み方向に対向しないように、インジケータ19の位置と圧搾部40の位置とが平面視でずれて配置されている。
このようにインジケータ19および圧搾部40どうしが平面視で相対的にずれた配置は、
図1に示すような連続的に設けられたインジケータと
図3に示すような連続的に設けられた圧搾部とが平面視で重複する領域(以下「仮想重複領域」という)に対して、仮想重複領域においてインジケータ19または圧搾部40の少なくとも一部が重複しない配置を意味する。たとえば、仮想重複領域の一部でインジケータ19の位置と圧搾部40の位置とが重複する配置は、ここでいう「ずれた配置」に含まれる。
本実施形態では、インジケータ19の位置と圧搾部40の位置とが平面視で相異している。すなわち、インジケータ19と圧搾部40とが平面視で互いに重複しない位置に設けられている。
【0038】
そのうえ、平面視において、圧搾部40に対して間隔をあけてインジケータ19が配置されている。この「間隔」には、圧搾部40のプレス成形時におけるインジケータ19の変色を確実に抑える観点から、プレス成形によって圧搾部40の周辺に圧搾水分が幅方向に滲みうる寸法あるいは長手方向に滲みうる寸法よりも大きな寸法を設定することが好ましい。
ただし、「間隔」を大きく設定するほど圧搾部40の成形領域が狭められることから、圧搾部40の成形領域が確保される範囲内で「間隔」を設定することが好ましい。更に言えば、成形領域が狭められることで圧搾部40の効用が抑えられうることから、圧搾部40の効用の抑制が留められる範囲内で「間隔」の上限を規制することが好ましい。
【0039】
図1には、インジケータ19が平面視で連続的に設けられるのに対し、圧搾部40が平面視で断続的に設けられた配置を例示する。この配置では、二本のインジケータ19のそれぞれが長手方向に連続して延在するのに対して、二本のインジケータ19で幅方向に分断された三領域のそれぞれに圧搾部40が設けられている。言い換えれば、圧搾部40をなす傾斜部41,42のそれぞれは、二本のインジケータ19で幅方向に三つに分断された各領域で線状に延在している。このように、インジケータ19を避けるようにして圧搾部40が配置されている。
【0040】
なお、
図3に例示するように、圧搾部40′を避けるようにしてインジケータ19′(一箇所のみに符号を付す)を配置してもよい。つまり、圧搾部40′が平面視で連続的に設けられるのに対し、インジケータ19′が平面視で断続的に設けられてもよい。すなわち、圧搾部40′をなす傾斜部41′,42′のそれぞれが平面視で連続して延在するのに対して、吸収体10′において傾斜部41′,42′で長手方向に分断された複数の領域のそれぞれにインジケータ19′が線状に延在してもよい。
【0041】
〈吸収体〉
また、
図4に示すように、本実施形態の紙おむつ1では、吸収体10のうち所定領域R
Pの吸水性が調整されている。なお、
図4には、バックシート12の非肌面側に積層される三つのカバーシート141,142,143を一つのカバーシート14にまとめて示し、図中の左右方向に区分された各領域R
P,R
0を例示する。
ここでいう「所定領域R
P」とは、吸収体10のうちインジケータ19に対応する領域である。詳細に言えば、所定領域R
Pは、吸収体10のうちインジケータ19が積層される領域を少なくとも含む領域であり、インジケータ19の積層領域に加えてその周辺領域を含んでもよい。たとえば、吸収体10において、平面視でインジケータ19と重複する領域(インジケータ19と対向する領域)やこれに加えてその周辺の領域が所定領域R
Pとされる。
【0042】
さらに、所定領域R
Pは、吸収体10において含有水分の圧搾(あるいは滲み出し)が想定される箇所に設定される。
たとえば、所定領域R
Pは、インジケータ19の積層された吸収体10のうち折り曲げられうる箇所や圧縮されうる箇所に予め設定される。吸収体10が折り曲げらて圧縮されうる箇所の一例としては、紙おむつ1の梱包時や収納時などに折り畳まれる折り目に対応する吸収体10の領域が挙げられる。
【0043】
ここでは、吸収体10においてインジケータ19と平面視で重複する領域を所定領域R
Pとして例示する。
この吸収体10では、上記した所定領域R
Pの吸水性が他の領域R
Oの吸水性よりも抑えられている。ここでは、他の領域R
Oにはパルプ10aに加えて高吸水性樹脂10bを含ませるのに対し、所定領域R
Pには高吸水性樹脂10bを含ませずにパルプ10aのみを含ませることで、所定領域R
Pの吸水性が抑制される。
【0044】
そのうえ、他の領域R
Oにおいては、圧搾部40に対応する第一領域R
O1とこの第一領域R
O1以外の第二領域R
O2とで高吸水性樹脂10bの含有度合いが調節されている。
「第一領域R
O1」は、吸収体10のうち圧搾部40が成形される領域を少なくとも含む領域であり、この領域に加えてその周辺領域を含んでもよい。たとえば、吸収体10において平面視で圧搾部40と重複する領域やこれに加えてその周辺の領域が第一領域R
O1とされる。
【0045】
「第二領域R
O2」は、他の領域R
Oから第一領域R
O1を除いた領域である。つまり、インジケータ19および圧搾部40の双方に対応しない領域が第二領域R
O2である。たとえば、吸収体10において平面視でインジケータ19および圧搾部40の何れにも重複しない領域が第二領域R
O2とされる。
上記した二つの領域R
O1,R
O2では、第一領域R
O1のほうが第二領域R
O2よりも高吸水性樹脂10bの含有度合いが抑えられている。言い換えれば、高吸水性樹脂10bの含有度合いは、第一領域R
O1よりも第二領域R
O2のほうが高く設定されている。敷衍して言えば、第一領域R
O1の吸水性が第二領域R
O2の吸水性よりも抑えられている。
【0046】
[2.作用および効果]
上述したように紙おむつ1が構成されるため、下記のような作用および効果を得ることができる。
以下、圧搾部40に関する作用および効果を述べてから、インジケータ19および圧搾部40の相対配置に関する作用および効果を述べ、その後に、吸収体10に関する作用および効果を述べる。
【0047】
[2−1.圧搾部]
(1)圧搾部40の延在箇所において、吸収体10やこれに加えてセンターシート11、延いては紙おむつ1が折り曲がりやすくなり、着用者に対する紙おむつ1のフィット性を高めることができる。
また、吸収体10およびセンターシート11のうち溝状の圧搾部40が成形された部分を着用者の肌面に対して非接触とすることができる。そのため、装着状態における通気性を高め、紙おむつ1内部の蒸れを抑えることができる。さらに、着用者の肌面に対してセンターシート11の一部を圧搾部40によって非接触とすることで、肌触り(触感)を高めることもできる。
【0048】
さらに、長手方向および幅方向の双方に交差して延在する圧搾部40によって、たとえば毛細管現象によって排泄された液体を圧搾部40に沿って拡散させることができる。したがって、長手方向および幅方向の双方へ排泄された液体の拡散性を向上させることができ、吸収体10の吸水箇所を分散させることができる。よって、吸収体10の吸水性を確保することができる。
【0049】
(2)圧搾部40において互いに異なる方向に傾斜する傾斜部41,42によれば、圧搾部40が二方向に沿うことから、二方向に延びる折り目で紙おむつ1が折り曲がりやすくなり、着用者に対するフィット性を更に高めることができる。
また、傾斜部41,42によって圧搾部40が二方向に沿うことから、紙おむつ1内部で二方向に通気させることで装着状態における通気性を更に高め、紙おむつ1内部の蒸れを確実に抑えることができる。
【0050】
さらに、圧搾部40が二方向に沿うことから、排泄された液体の拡散性を更に向上させることができ、吸収体10の吸水性を高めることができる。すなわち、平面視で格子形状をなす傾斜部41,42によって、排泄された液体を効率よく拡散させ、吸収体10の吸水効率を向上させることができる。
【0051】
(3)そのほか、吸収体10のうち幅方向の端縁(端部領域)を除いて圧搾部40が設けられることから、排泄された液体が圧搾部40を伝って幅方向外側に拡散したとしても、その拡散先の吸収体10で排泄水分が吸収される。よって、排泄された液体の幅方向外側への漏れを確実に抑えることができる。
【0052】
[2−2.インジケータおよび圧搾部の相対配置]
つぎに、平面視におけるインジケータ19および圧搾部40の相対的な配置による作用および効果を述べる。
(1)インジケータ19の位置と圧搾部40の位置とが平面視でずれて配置されることから、吸収体10のうち圧搾部40に対応する箇所の含有水分が圧搾されて滲み出たとしても、この滲み出し箇所に対して外れた位置にインジケータ19が位置している。そのため、吸収体10の一部がプレスされる圧搾部40の成形時にプレス箇所の含有水分が圧搾されて滲み出たとしても、インジケータ19が変色するのを抑えることができる。したがって、紙おむつ1の着用者が排泄していないにもかかわらずインジケータ19が変色するのを抑え、着用者の排泄水分だけにインジケータ19を感応させることができる。よって、インジケータ19の機能を保全することができる。延いては、着用者による排泄の有無を外部から適切に認識させることができる。
【0053】
(2)具体的には、インジケータ19の位置と圧搾部40の位置とが平面視で相異していることから、吸収体10のうち平面視で圧搾部40と重複する領域の含有水分が厚み方向(非肌面側)に滲み出たとしても、インジケータ19の変色を防ぐことができる。よって、インジケータ19の機能を確実に保全することができる。
【0054】
(3)そのうえ、平面視において、圧搾部40に対して間隔をあけてインジケータ19が配置されることから、吸収体10のうち平面視で圧搾部40と重複する領域の含有水分が幅方向や長手方向に滲み出たとしても、インジケータ19の変色を防ぐことができる。この点からも、インジケータ19の機能を確実に保全することができる。
【0055】
(4)インジケータ19が平面視で連続的に設けられる場合には、インジケータ19の視認性を確実に確保することができる。
(5)反対に、圧搾部40が平面視で連続的に設けられる場合には、圧搾部40の効用を確実に確保することができる。
【0056】
[2−3.吸収体]
つぎに、吸収体10における所定領域R
Pの吸水性調整による作用および効果を述べる。
(1)吸収体10においては、インジケータ19と対応する所定領域R
Pの吸水性が他の領域R
Oの吸水性よりも抑えられることから、所定領域R
Pの含有水分によるインジケータ19の変色を抑えることができる。言い換えれば、着用者の排泄水分だけにインジケータ19を感応させることができる。よって、インジケータ19の機能を保全することができる。延いては、着用者による排泄の有無を外部から適切に認識させることができる。
【0057】
(2)さらに、吸収体10の他の領域R
Oにおいては、圧搾部40に対応する第一領域R
O1の吸水性が他の第二領域R
O2の吸水性よりも抑えられている。このことから、圧搾部40のプレス成形時や圧搾部40での折り曲げ時といった第一領域R
O1の圧縮によって含有水分が滲み出るのを抑えることができる。他の領域R
Oはインジケータ19から離隔しているものの、二つの領域R
O1,R
O2に吸水性の高低を設定することで、インジケータ19の機能保全に寄与することができる。
(3)そのほか、インジケータ19は、吸水性の吸収体10と非透水性のバックシート12との間に介装されることから、インジケータ19に対する非肌面からの被水も防がれる。よって、インジケータ19の機能を確実に保全することができる。
【0058】
[II.その他]
最後に、その他の変形例について述べる。
たとえば、圧搾部は、少なくとも吸収体に設けられていればよく、センターシートに設けられていなくてもよい。この場合には、センターシートが積層される前に吸収体の一部が肌面側から圧搾されて、圧搾部が成形される。
【0059】
あるいは、吸収体の非肌面側に圧搾部が成形されてもよい。この場合には、非肌面側から少なくとも吸収体が圧搾されて、圧搾部が成形される。たとえば、非肌面側からバックシートとともに吸収体をプレスして圧搾部が成形される。
【0060】
また、圧搾部の平面視形状としては、格子形状に限らず、さまざまな形状を採用することができる。具体例を挙げれば、第一傾斜部または第二傾斜部は、少なくとも一方が単数であってもよいし、少なくとも一方を省略してもよい。更に言えば、第一傾斜部または第二傾斜部は、直線状のほか、曲線状であってもよいし、三角波状や矩形波状であってもよい。このように他の平面視形状をなす圧搾部によっても、フィット性,通気性および吸水性を確保して、着用者の快適性を向上させることに寄与する。あるいは、圧搾部は、延在するものに限らず、点状に設けられてもよい。この場合であっても、フィット性などの向上に寄与しうる。
【0061】
インジケータおよび圧搾部の相対的な配置については、平面視において圧搾部とインジケータとの間隔が設定されずに隣接していてもよい。更に言えば、上述したように仮想重複領域の少なくとも一部でインジケータの位置と圧搾部の位置とがずれて配置されていればよい。
また、
図1に示すような連続的に設けられたインジケータと
図3に示すような断続的に設けられたインジケータとが混在していてもよい。たとえば、紙おむつの前身頃側には前者のインジケータが設けられるとともに後身頃側には後者のインジケータが設けられてもよい。あるいは、前者のインジケータに対して後者のインジケータが並んで設けられてもよい。同様に、連続的に設けられた圧搾部と断続的に設けられた圧搾部とが混在していてもよい。
【0062】
吸収体における所定領域については、高吸水性樹脂を含ませずに吸水性が抑えられるのに限らず、高吸水性樹脂の密度(含有度合い)を低減させることで吸水性が抑えられてもよい。すなわち、所定領域における高吸水性樹脂の密度を他の領域における高吸水性樹脂の密度よりも低くして、所定領域の吸水性を抑えてもよい。
このように高吸水性樹脂の含有度合いを調整することにより、所定領域における含有水分の圧搾を抑制することでインジケータの機能を保全しつつ、所定領域の吸水性を確保することができる。
【0063】
また、吸収体における所定領域については、厚み方向で非肌面側に向かうほど吸水性が抑えられていてもよい。具体的には、所定領域において、非肌面側(インジケータ側)に向かうほど、高吸水性樹脂の密度が抑制されていてもよい。この場合には、所定領域のうち少なくとも一部において、非肌面側のほうが肌面側よりも高吸水性樹脂の密度が低ければよい。
このように吸水性がインジケータに近接するほど抑えられることで、所定領域のうちインジケータに近い領域における含有水分の圧搾を抑えることができ、インジケータの機能保全と所定領域の吸水性の確保とを両立させることができる。
【0064】
そのほか、プレス成形された圧搾部に替えて、プレス成形されていない凹部が吸収体に設けられてもよい。たとえば、マット状の吸収体のうち上述した圧搾部に対応する領域を取り除いて凹部を成形することができる。また、上述した圧搾部に対応する形状をもつ雌型に吸収体を積層することで、プレス成形することなく凹部を成形することもできる。吸収体のうち凹部に対応する領域の目付量を抑えることによっても凹部を形成することもできる。
このようにプレス成形されていない凹部が吸収体に設けられる場合には、凹部の成形時に吸収体の圧搾が抑えられ、紙おむつの製造時におけるインジケータの変色が確実に抑えられる。なお、吸収体のうち凹部に対応する箇所で折り曲げられたとしても、凹部に対してインジケータが相対的にずれた配置により、インジケータの無用な変色が抑えられる。