特許第6900758号(P6900758)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友ゴム工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6900758-タイヤ 図000004
  • 特許6900758-タイヤ 図000005
  • 特許6900758-タイヤ 図000006
  • 特許6900758-タイヤ 図000007
  • 特許6900758-タイヤ 図000008
  • 特許6900758-タイヤ 図000009
  • 特許6900758-タイヤ 図000010
  • 特許6900758-タイヤ 図000011
  • 特許6900758-タイヤ 図000012
  • 特許6900758-タイヤ 図000013
  • 特許6900758-タイヤ 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6900758
(24)【登録日】2021年6月21日
(45)【発行日】2021年7月7日
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20210628BHJP
   B60C 11/12 20060101ALI20210628BHJP
   B60C 5/00 20060101ALI20210628BHJP
【FI】
   B60C11/03 100B
   B60C11/12 D
   B60C5/00 H
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-80632(P2017-80632)
(22)【出願日】2017年4月14日
(65)【公開番号】特開2018-177032(P2018-177032A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2020年2月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】中道 哲平
【審査官】 増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−023196(JP,A)
【文献】 特開2000−142032(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/065319(WO,A1)
【文献】 特開2006−347346(JP,A)
【文献】 特開2017−105363(JP,A)
【文献】 特開2016−193688(JP,A)
【文献】 特開2016−150601(JP,A)
【文献】 特開2016−199118(JP,A)
【文献】 特開2012−201335(JP,A)
【文献】 特開2003−170709(JP,A)
【文献】 特開2010−111358(JP,A)
【文献】 特開昭61−291204(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/03
B60C 5/00
B60C 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、車両への装着の向きが指定され、かつ、車両装着時の車両外側に位置する外側トレッド端と、車両装着時に車両内側に位置する内側トレッド端とを有し、かつ、タイヤ周方向に延びる1本のクラウン主溝及びその両側にそれぞれ1本ずつ配されたショルダー主溝が設けられることで4つの陸部に区分されており、
前記陸部は、前記クラウン主溝の両側に位置する2つのクラウン陸部を含み、
前記各クラウン陸部には、前記クラウン主溝から延びかつ前記クラウン陸部内で途切れる複数の第1クラウンラグ溝と、前記ショルダー主溝から延びかつ前記クラウン陸部内で途切れる複数の第2クラウンラグ溝とが設けられ、
前記第1クラウンラグ溝及び前記第2クラウンラグ溝は、少なくとも前記クラウン陸部のタイヤ軸方向の中心位置まで延びており、
前記内側トレッド端側の前記クラウン陸部において、前記第1クラウンラグ溝及び前記第2クラウンラグ溝は、それぞれ、前記中心位置を超えて延びており、
前記外側トレッド端側の前記クラウン陸部において、前記第2クラウンラグ溝は、前記第1クラウンラグ溝よりも大きいタイヤ軸方向の長さを有するタイヤ。
【請求項2】
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、車両への装着の向きが指定され、かつ、車両装着時の車両外側に位置する外側トレッド端と、車両装着時に車両内側に位置する内側トレッド端とを有し、かつ、タイヤ周方向に延びる1本のクラウン主溝及びその両側にそれぞれ1本ずつ配されたショルダー主溝が設けられることで4つの陸部に区分されており、
前記陸部は、前記クラウン主溝の両側に位置する2つのクラウン陸部を含み、
前記各クラウン陸部には、前記クラウン主溝から延びかつ前記クラウン陸部内で途切れる複数の第1クラウンラグ溝と、前記ショルダー主溝から延びかつ前記クラウン陸部内で途切れる複数の第2クラウンラグ溝とが設けられ、
前記第1クラウンラグ溝及び前記第2クラウンラグ溝は、少なくとも前記クラウン陸部のタイヤ軸方向の中心位置まで延びており、
前記内側トレッド端側の前記クラウン陸部において、前記第1クラウンラグ溝及び前記第2クラウンラグ溝は、それぞれ、前記中心位置を超えて延びており、
前記外側トレッド端側の前記クラウン陸部には、前記クラウン主溝から前記外側トレッド端側に延びかつ前記クラウン陸部内で途切れる複数のセミオープンサイプが設けられているタイヤ。
【請求項3】
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、車両への装着の向きが指定され、かつ、車両装着時の車両外側に位置する外側トレッド端と、車両装着時に車両内側に位置する内側トレッド端とを有し、かつ、タイヤ周方向に延びる1本のクラウン主溝及びその両側にそれぞれ1本ずつ配されたショルダー主溝が設けられることで4つの陸部に区分されており、
前記陸部は、前記クラウン主溝の両側に位置する2つのクラウン陸部を含み、
前記各クラウン陸部には、前記クラウン主溝から延びかつ前記クラウン陸部内で途切れる複数の第1クラウンラグ溝と、前記ショルダー主溝から延びかつ前記クラウン陸部内で途切れる複数の第2クラウンラグ溝とが設けられ、
前記第1クラウンラグ溝及び前記第2クラウンラグ溝は、少なくとも前記クラウン陸部のタイヤ軸方向の中心位置まで延びており、
前記内側トレッド端側の前記クラウン陸部において、前記第1クラウンラグ溝及び前記第2クラウンラグ溝は、それぞれ、前記中心位置を超えて延びており、
前記内側トレッド端側の前記クラウン陸部には、陸部を完全に横切る複数のフルオープンサイプが設けられているタイヤ。
【請求項4】
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、車両への装着の向きが指定され、かつ、車両装着時の車両外側に位置する外側トレッド端と、車両装着時に車両内側に位置する内側トレッド端と、タイヤ周方向に延びる1本のクラウン主溝及びその両側にそれぞれ1本ずつ配されたショルダー主溝が設けられることで4つの陸部に区分されており、
前記陸部は、前記クラウン主溝の両側に位置する2つのクラウン陸部と、前記2つのクラウン陸部の前記外側トレッド端側及び前記内側トレッド端側にそれぞれ1つずつ配された外側ショルダー陸部及び内側ショルダー陸部とを含み、
前記各クラウン陸部には、前記クラウン主溝から延びかつ前記クラウン陸部内で途切れる複数の第1クラウンラグ溝と、前記ショルダー主溝から延びかつ前記クラウン陸部内で途切れる複数の第2クラウンラグ溝とが設けられ、
前記第1クラウンラグ溝及び前記第2クラウンラグ溝は、少なくとも前記クラウン陸部のタイヤ軸方向の中心位置まで延びており、
前記内側ショルダー陸部には、前記内側トレッド端と前記ショルダー主溝とを連通する複数の内側ショルダー横溝が設けられており、
前記外側ショルダー陸部又は前記内側ショルダー陸部には、タイヤ周方向に延びるショルダー縦サイプが設けられているタイヤ。
【請求項5】
前記外側ショルダー陸部には、前記外側トレッド端からタイヤ赤道側に延びかつ前記外側ショルダー陸部内で途切れる複数の外側ショルダー横溝が設けられている請求項4記載のタイヤ。
【請求項6】
前記クラウン陸部の少なくとも一方には、タイヤ周方向に延びるクラウン縦サイプが設けられている請求項1乃至5のいずれかに記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライ路面での操縦安定性を維持しつつ、雪上性能を向上させたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
車両への装着の向きが指定されたトレッド部に、2つのショルダー陸部と2つのクラウン陸部とが区分された所謂4本陸部のタイヤが種々提案されている(例えば、下記特許文献1参照。)。上記タイヤの各陸部は、幅が大きく高い剛性を有する傾向がある。従って、上記4本陸部のタイヤは、ドライ路面で優れた操縦安定性が期待されている。
【0003】
一方、4本陸部のタイヤにあっても、雪路での走行時に最低限の雪上性能を確保する必要がある。一般に、雪上性能を高めるために、各クラウン陸部に横溝を設けることが考えられる。しかしながら、クラウン陸部を完全に横切る横溝が設けられた場合、クラウン陸部の剛性が低下し、4本陸部のタイヤの長所であるドライ路面での操縦安定性が低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−150601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、ドライ路面での操縦安定性を維持しつつ、雪上性能を向上させた4本陸部のタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トレッド部を有するタイヤであって、前記トレッド部は、タイヤ周方向に延びる1本のクラウン主溝及びその両側にそれぞれ1本ずつ配されたショルダー主溝が設けられることで4つの陸部に区分されており、前記陸部は、前記クラウン主溝の両側に位置する2つのクラウン陸部を含み、前記各クラウン陸部には、前記クラウン主溝から延びかつ前記クラウン陸部内で途切れる複数の第1クラウンラグ溝と、前記ショルダー主溝から延びかつ前記クラウン陸部内で途切れる複数の第2クラウンラグ溝とが設けられ、前記第1クラウンラグ溝及び前記第2クラウンラグ溝は、少なくとも前記クラウン陸部のタイヤ軸方向の中心位置まで延びている。
【0007】
本発明のタイヤにおいて、前記トレッド部は、車両への装着の向きが指定され、かつ、車両装着時の車両外側に位置する外側トレッド端と、車両装着時に車両内側に位置する内側トレッド端とを有し、前記内側トレッド端側の前記クラウン陸部において、前記第1クラウンラグ溝及び前記第2クラウンラグ溝は、それぞれ、前記中心位置を超えて延びているのが望ましい。
【0008】
本発明のタイヤにおいて、前記外側トレッド端側の前記クラウン陸部において、前記第2クラウンラグ溝は、前記第1クラウンラグ溝よりも大きいタイヤ軸方向の長さを有するのが望ましい。
【0009】
本発明のタイヤにおいて、前記外側トレッド端側の前記クラウン陸部には、前記クラウン主溝から前記外側トレッド端側に延びかつ前記クラウン陸部内で途切れる複数のセミオープンサイプが設けられているのが望ましい。
【0010】
本発明のタイヤにおいて、前記内側トレッド端側の前記クラウン陸部には、陸部を完全に横切る複数のフルオープンサイプ23が設けられているのが望ましい。
【0011】
本発明のタイヤにおいて、前記クラウン陸部の少なくとも一方には、タイヤ周方向に延びるクラウン縦サイプが設けられているのが望ましい。
【0012】
本発明のタイヤにおいて、前記トレッド部は、車両への装着の向きが指定され、かつ、車両装着時の車両外側に位置する外側トレッド端と、車両装着時に車両内側に位置する内側トレッド端と、前記2つのクラウン陸部の前記外側トレッド端側及び前記内側トレッド端側にそれぞれ1つずつ配された外側ショルダー陸部及び内側ショルダー陸部とを含み、前記内側ショルダー陸部には、前記内側トレッド端と前記ショルダー主溝とを連通する複数の内側ショルダー横溝が設けられているのが望ましい。
【0013】
本発明のタイヤにおいて、前記外側ショルダー陸部には、前記外側トレッド端からタイヤ赤道側に延びかつ前記外側ショルダー陸部内で途切れる複数の外側ショルダー横溝が設けられているのが望ましい。
【0014】
本発明のタイヤにおいて、前記外側ショルダー陸部又は前記内側ショルダー陸部には、タイヤ周方向に延びるショルダー縦サイプが設けられているのが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のタイヤのトレッド部は、タイヤ周方向に延びる1本のクラウン主溝及びその両側にそれぞれ1本ずつ配されたショルダー主溝が設けられることで4つの陸部に区分されている。前記陸部は、クラウン主溝の両側に位置する2つのクラウン陸部を含む。各クラウン陸部には、クラウン主溝から延びかつクラウン陸部内で途切れる複数の第1クラウンラグ溝と、ショルダー主溝から延びかつクラウン陸部内で途切れる複数の第2クラウンラグ溝とが設けられている。
【0016】
本発明の第1クラウンラグ溝及び第2クラウンラグ溝は、それぞれ、陸部内で途切れているため、クラウン陸部の剛性が過度に低下するのを抑制し、ひいてはドライ路面での操縦安定性を維持することができる。一方、本発明の第1クラウンラグ溝及び第2クラウンラグ溝は、少なくともクラウン陸部のタイヤ軸方向の中心位置まで延びているので、十分な雪上性能を発揮することができる。
【0017】
以上のように、本発明のタイヤは、ドライ路面での操縦安定性を維持しつつ、雪上性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態のタイヤのトレッド部の展開図である。
図2図1の内側トレッド端側のクラウン陸部及び外側トレッド端側のクラウン陸部の拡大図である。
図3図2の内側トレッド端側のクラウン陸部の拡大図である。
図4図2の外側トレッド端側のクラウン陸部の拡大図である。
図5】(a)は、図2のA−A線断面図であり、(b)は、図2のB−B線断面図が示されている。
図6】(a)は、図3のC−C線断面図であり、(b)は、図4のD−D線断面図である。
図7図1の内側ショルダー陸部の拡大図である。
図8】(a)は、図7のE−E線断面図である。(b)は、図7のF−F線断面図である。
図9図1の外側ショルダー陸部の拡大図である。
図10図9のG−G線断面図である。
図11】比較例のタイヤのトレッド部の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本発明の一実施形態を示すタイヤ1のトレッド部2の展開図である。本実施形態のタイヤ1は、例えば、乗用車用や重荷重用の空気入りタイヤ、及び、タイヤの内部に加圧された空気が充填されない非空気式タイヤ等の様々なタイヤに用いることができる。本実施形態のタイヤ1は、例えば、乗用車用の空気入りタイヤとして好適に使用される。
【0020】
図1に示されるように、本発明のタイヤ1は、車両への装着の向きが指定されたトレッド部2を有する。トレッド部2は、タイヤ1の車両装着時に車両外側に位置する外側トレッド端Toと、車両装着時に車両内側に位置する内側トレッド端Tiとを有する。車両への装着の向きは、例えば、サイドウォール部(図示省略)に、文字又は記号で表示される。
【0021】
各トレッド端To、Tiは、空気入りタイヤの場合、正規状態のタイヤ1に正規荷重が負荷されキャンバー角0°で平面に接地したときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置である。正規状態とは、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、前記正規状態で測定された値である。
【0022】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" である。
【0023】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0024】
「正規荷重」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。
【0025】
本実施形態のトレッド部2には、例えば、タイヤ周方向に連続して延びる1本のクラウン主溝3と2本のショルダー主溝4とを含む。本実施形態のクラウン主溝3は、例えば、タイヤ赤道C上に設けられている。ショルダー主溝4は、クラウン主溝3のタイヤ軸方向の両側に1本ずつ配されている。ショルダー主溝4は、例えば、タイヤ赤道Cと内側トレッド端Tiとの間に配された内側のショルダー主溝5と、タイヤ赤道Cと外側トレッド端Toとの間に配された外側のショルダー主溝6とを含む。望ましい態様では、各主溝3、4は、タイヤ周方向に直線状に延びている。
【0026】
ショルダー主溝4は、例えば、タイヤ赤道Cから溝中心線までの距離L1がトレッド幅TWの0.15〜0.25倍であるのが望ましい。トレッド幅TWは、前記正規状態での外側トレッド端Toから内側トレッド端Tiまでのタイヤ軸方向の距離である。
【0027】
クラウン主溝3及びショルダー主溝5、6は、例えば、トレッド幅TWの3.0%〜5.0%の溝幅Wa、Wb、Wcを有しているのが望ましい。クラウン主溝3及びショルダー主溝5、6は、乗用車用の空気入りタイヤの場合、例えば、5〜10mmの深さを有しているのが望ましい。これにより、ウェット性能と操縦安定性とがバランス良く高められる。
【0028】
トレッド部2は、上述のクラウン主溝3及びショルダー主溝5、6が設けられることで4つの陸部に区分されている。陸部は、クラウン主溝3の両側に位置する2つのクラウン陸部7を含む。クラウン陸部7は、クラウン主溝3の内側トレッド端Ti側のクラウン陸部11(以下、「内側のクラウン陸部」という場合がある。)と、クラウン主溝3の外側トレッド端To側のクラウン陸部12(以下、「外側のクラウン陸部」という場合がある。)とを含む。
【0029】
トレッド部2は、2つのクラウン陸部7の外側トレッド端To側に配された外側ショルダー陸部14と、2つのクラウン陸部7の内側トレッド端Ti側に配された内側ショルダー陸部13とを含む。
【0030】
望ましい態様では、外側ショルダー陸部14のタイヤ軸方向の幅W1と外側トレッド端To側のクラウン陸部12のタイヤ軸方向の幅W2との比W1/W2は、1.0〜2.0である。同様に、内側ショルダー陸部13のタイヤ軸方向の幅W3と内側トレッド端Ti側のクラウン陸部11のタイヤ軸方向の幅W4との比W3/W4は、1.0〜2.0である。これにより、各陸部の剛性バランスが適正となり、ドライ路面での操縦安定性が高められる。
【0031】
図2には、内側トレッド端Ti側のクラウン陸部11及び外側トレッド端To側のクラウン陸部12の拡大図が示されている。図2に示されるように、各クラウン陸部11、12には、複数の第1クラウンラグ溝15と複数の第2クラウンラグ溝16とが設けられている。第1クラウンラグ溝15は、クラウン主溝3から延びかつクラウン陸部7内で途切れている。第2クラウンラグ溝16は、ショルダー主溝4から延びかつクラウン陸部7内で途切れている。
【0032】
本発明の第1クラウンラグ溝15及び第2クラウンラグ溝16は、それぞれ、陸部内で途切れているため、クラウン陸部の剛性が過度に低下するのを抑制し、ひいてはドライ路面での操縦安定性を維持することができる。
【0033】
第1クラウンラグ溝15及び第2クラウンラグ溝16は、少なくともクラウン陸部7のタイヤ軸方向の中心位置7cまで延びている。これにより、各クラウンラグ溝15、16の長さが確保され、十分な雪上性能を発揮することができる。
【0034】
第1クラウンラグ溝15及び第2クラウンラグ溝16は、例えば、それぞれ、タイヤ軸方向に対して斜めに延びているのが望ましい。本実施形態の第1クラウンラグ溝15及び第2クラウンラグ溝16は、タイヤ軸方向に対して同じ向きに延びている。
【0035】
第1クラウンラグ溝15のタイヤ軸方向に対する角度θ1、及び、第2クラウンラグ溝16のタイヤ軸方向に対する角度θ2は、好ましくは10°以上、より好ましくは20°以上であり、好ましくは60°以下、より好ましくは45°以下、さらに好ましくは30°以下である。このような第1クラウンラグ溝15及び第2クラウンラグ溝16は、雪上走行時、タイヤ周方向及びタイヤ軸方向にバランス良く雪柱せん断力を提供することができる。
【0036】
第1クラウンラグ溝15の溝幅W5及び第2クラウンラグ溝16の溝幅W6は、例えば、トレッド幅TW(図1に示され、以下、同様である。)の2.2%〜6.7%であるのが望ましい。第1クラウンラグ溝15の深さd3及び第2クラウンラグ溝16の深さd4は、例えば、クラウン主溝3の深さd1の0.66〜0.83倍であるのが望ましい。
【0037】
図3には、内側トレッド端Ti側のクラウン陸部11の拡大図が示されている。図3に示されるように、内側のクラウン陸部11において、第1クラウンラグ溝15a及び第2クラウンラグ溝16aは、それぞれ、クラウン陸部11のタイヤ軸方向の中心位置11cを超えて延びているのが望ましい。これにより、比較的大きな接地圧が作用する内側のクラウン陸部11において、第1クラウンラグ溝15a及び第2クラウンラグ溝16aの長さが確保され、ひいては雪上性能がさらに高められる。
【0038】
ドライ路面での操縦安定性と雪上性能とをバランス良く高めるために、内側のクラウン陸部11において、第1クラウンラグ溝15aの長さL2及び第2クラウンラグ溝16aの長さL3は、例えば、内側のクラウン陸部11のタイヤ軸方向の幅W4の0.55〜0.92倍であるのが望ましい。
【0039】
図4には、外側トレッド端To側のクラウン陸部12の拡大図が示されている。図4に示されるように、外側のクラウン陸部12において、第1クラウンラグ溝15bは、例えば、外側のクラウン陸部12のタイヤ軸方向の幅W2の0.50〜0.60倍の長さL4を有している。
【0040】
外側のクラウン陸部12において、第2クラウンラグ溝16bは、第1クラウンラグ溝15bよりも大きいタイヤ軸方向の長さL5を有しているのが望ましい。第2クラウンラグ溝16bの長さL5は、第1クラウンラグ溝15bの好ましくは1.25倍以上、より好ましくは1.30倍以上であり、好ましくは1.45倍以下、より好ましくは1.40倍以下である。このようなクラウンラグ溝15b、16bの配置により、外側のクラウン陸部12は、内側のクラウン陸部11よりも高い剛性を有し、ひいてはドライ路面での操縦安定性を維持することができる。
【0041】
図2に示されるように、本実施形態では、内側のクラウン陸部11及び外側のクラウン陸部12の少なくとも一方、望ましい態様では両方に、継ぎサイプ17、クラウン縦サイプ18、クラウンスロット19が設けられている。本明細書において、サイプは、幅が2mm未満の切れ込みとして定義される。
【0042】
継ぎサイプ17は、例えば、第1クラウンラグ溝15とショルダー主溝4との間、又は、第2クラウンラグ溝16とクラウン主溝3との間をつないでいる。継ぎサイプ17は、例えば、クラウンラグ溝と同じ向きに傾斜しているのが望ましい。より望ましい態様では、継ぎサイプ17は、クラウンラグ溝の溝縁と滑らかに連続するように延びている。
【0043】
図5(a)には、継ぎサイプ17の態様を示す図として、クラウンラグ溝16と継ぎサイプ17とのA−A線断面図が示されている。図5(a)に示されるように、継ぎサイプ17は、例えば、クラウンラグ溝16の深さd4の0.30〜0.50倍の深さd5を有しているのが望ましい。このような継ぎサイプ17は、クラウンラグ溝15、16を適度に開口させるのに役立ち、ひいては雪上走行時の溝内の雪の詰まりを抑制することができる。
【0044】
図2に示されるように、クラウン縦サイプ18は、例えば、タイヤ周方向に延びている。本実施形態では、各クラウンラグ溝15、16をつなぐようにタイヤ周方向に沿って延びている。このようなクラウン縦サイプ18は、そのエッジによってウェット走行時や氷上走行時のタイヤ軸方向の摩擦力を高めることができる。
【0045】
本実施形態のクラウン縦サイプ18は、例えば、クラウン陸部7のタイヤ軸方向の中央部に設けられているのが望ましい。具体的には、クラウン主溝3からクラウン縦サイプ18までのタイヤ軸方向の距離L6は、例えば、クラウン陸部の幅の0.4〜0.6倍であるのが望ましい。
【0046】
クラウン陸部11、12の過度な剛性の低下を抑制しつつ、上述の効果を発揮させるために、クラウン縦サイプ18は、例えば、クラウン主溝3の深さd1の0.15〜0.45倍の深さd6を有しているのが望ましい。
【0047】
図5(b)には、クラウンスロット19のB−B線断面図が示されている。図5(b)に示されるように、クラウンスロット19は、例えば、陸部の踏面と側面とで構成されるコーナ部20の一部が凹んだ領域である。クラウンスロット19は、クラウン陸部7の偏摩耗を抑制するのに役立つ。
【0048】
上述の効果をさらに発揮させるために、クラウンスロット19は、例えば、1.0〜3.0mmのタイヤ軸方向の幅W7を有している。クラウンスロット19は、例えば、1.0〜2.5mmの深さd7を有している。
【0049】
図2に示されるように、クラウンスロット19は、例えば、クラウンラグ溝15、16と主溝との間の角度が鋭角となる部分21のクラウン陸部11、12のコーナ部20に設けられている。望ましい態様では、各クラウンラグ溝15、16が形成する前記部分21のコーナ部20の全てに、クラウンスロット19が設けられている。このようなクラウンスロット19は、陸部の偏摩耗をさらに抑制するとともに、雪上走行時、クラウンラグ溝及び主溝が一体となって大きな雪柱を形成するのを促すことができる。
【0050】
図3に示されるように、内側のクラウン陸部11には、複数のフルオープンサイプ23 が設けられている。フルオープンサイプ23は、クラウン陸部11を完全に横切っている。望ましい態様では、フルオープンサイプ23は、第1クラウンラグ溝15と第2クラウンラグ溝16との間に設けられている。これにより、フルオープンサイプ23とクラウンラグ溝15、16とがタイヤ周方向に交互に設けられている。
【0051】
フルオープンサイプ23は、例えば、タイヤ軸方向に対してクラウンラグ溝15、16と同じ向きに傾斜しているのが望ましい。本実施形態のフルオープンサイプ23は、例えば、クラウンラグ溝15、16に沿って延びている。このようなフルオープンサイプ23は、陸部の偏摩耗を抑制することができる。
【0052】
図6(a)には、フルオープンサイプ23のC−C線断面図が示されている。図6(b)に示されるように、フルオープンサイプ23は、例えば、クラウンラグ溝15、16の深さの0.60〜0.90倍の最大の深さd8を有しているのが望ましい。
【0053】
本実施形態のフルオープンサイプ23は、例えば、タイヤ軸方向の両側の端部23aの底面が部分的に隆起している。前記両側の端部の深さd9は、例えば、前記最大の深さd8の0.30〜0.50倍であるのが望ましい。このようなフルオープンサイプ23は、陸部の剛性を高めるのに役立つ。
【0054】
図4に示されるように、本実施形態の外側のクラウン陸部12には、複数のセミオープンサイプ24が設けられている。セミオープンサイプ24は、クラウン主溝3から外側トレッド端To側に延びかつクラウン陸部12内で途切れている。望ましい態様では、セミオープンサイプ24は、第1クラウンラグ溝15と第2クラウンラグ溝16との間に設けられている。これにより、セミオープンサイプ24とクラウンラグ溝15、16とがタイヤ周方向に交互に設けられている。
【0055】
セミオープンサイプ24は、例えば、タイヤ軸方向に対してクラウンラグ溝15、16と同じ向きに傾斜しているのが望ましい。本実施形態のセミオープンサイプ24は、例えば、クラウンラグ溝15、16に沿って延びている。このようなセミオープンサイプ24は、クラウンラグ溝15、16とともに、ウェット性能及び氷上性能を高めることができる。
【0056】
ドライ路面での操縦安定性と雪上性能とをバランス良く向上させるために、セミオープンサイプ24は、例えば、外側のクラウン陸部12の幅W2の0.70〜0.85倍のタイヤ軸方向の長さL7を有しているのが望ましい。
【0057】
図6(b)には、セミオープンサイプ24のD−D線断面図が示されている。図6(b)に示されるように、セミオープンサイプ24は、例えば、クラウンラグ溝15、16の深さの0.50〜0.70倍の最大の深さd10を有しているのが望ましい。
【0058】
本実施形態のセミオープンサイプ24は、例えば、クラウン主溝3側の端部24aの底面が部分的に隆起している。前記端部24aの深さd11は、例えば、前記最大の深さd10の0.30〜0.50倍であるのが望ましい。これにより、クラウン陸部12の剛性が維持され、ドライ路面での操縦安定性と雪上性能とがバランス良く向上する。
【0059】
図7には、内側ショルダー陸部13の拡大図が示されている。図7に示されるように、内側ショルダー陸部13には、複数の内側ショルダー横溝26と、複数の内側ショルダーサイプ27と、内側のショルダー縦サイプ28と、内側ショルダースロット29が設けられている。
【0060】
内側ショルダー横溝26は、内側トレッド端Tiとショルダー主溝4とを連通している。一般に、タイヤは、ネガティブキャンバーが付与されて車両に装着される場合が多い。このため、内側ショルダー陸部13には、大きな接地圧が作用する傾向がある。従って、内側トレッド端Tiとショルダー主溝4とを連通する内側ショルダー横溝26は、雪上走行時に固い雪柱を形成することができる。
【0061】
図1に示されるように、内側ショルダー横溝26のタイヤ軸方向の内端部は、第2クラウンラグ溝16のタイヤ軸方向の外端部とはタイヤ周方向に位置ずれしているのが望ましい。これにより、各溝の過度な開口が抑制され、ドライ路面での操縦安定性が高められる。
【0062】
図7に示されるように、内側ショルダー横溝26は、例えば、タイヤ軸方向に対して斜めに延びている。望ましい態様では、内側ショルダー横溝26は、クラウンラグ溝15、16と同じ向きに傾斜している。このような内側ショルダー横溝26は、クラウンラグ溝15、16と同じ方向に雪柱せん断力を提供することができる。
【0063】
内側ショルダー横溝26のタイヤ軸方向に対する角度θ3は、例えば、クラウンラグ溝15、16の前記角度θ1、θ2よりも小さいのが望ましい。具体的には、前記角度θ3は、好ましくは5°以上、より好ましくは10°以上であり、好ましくは45°以下、より好ましくは30°以下である。このような内側ショルダー横溝26は、本実施形態のクラウンラグ溝15、16では不足し易い雪上でのトラクションを補うことができる。
【0064】
上述の効果をさらに高めるために、望ましい態様では、内側ショルダー横溝26は、前記角度θ3がタイヤ赤道C側に向かって漸増するように滑らかに湾曲している。
【0065】
ドライ路面での操縦安定性と雪上性能とをバランス良く高めるために、内側ショルダー横溝26の溝幅W8は、例えば、トレッド幅TWの3.0%〜3.6%であるのが望ましい。
【0066】
図8(a)には、内側ショルダー横溝26のE−E線断面図が示されている。図8(a)に示されるように、内側ショルダー横溝26は、例えば、ショルダー主溝4の深さd2の0.73〜0.83倍の最大の深さd12を有しているのが望ましい。
【0067】
内側ショルダー横溝26は、例えば、タイヤ軸方向の内端部26aにおいて、底面が隆起しているのが望ましい。内側ショルダー横溝26の内端部26aの深さd13は、例えば、前記最大の深さd12の0.50〜0.70倍であるのが望ましい。このような内側ショルダー横溝26は、内側ショルダー陸部13の剛性を維持し、ひいてはドライ路面での操縦安定性を高めることができる。
【0068】
図7に示されるように、内側ショルダーサイプ27は、例えば、タイヤ周方向で隣り合う内側ショルダー横溝26の間に設けられている。本実施形態では、前記内側ショルダー横溝26の間に、複数の内側ショルダーサイプ27が設けられている。
【0069】
内側ショルダーサイプ27は、例えば、第1内側ショルダーサイプ31と第2内側ショルダーサイプ32とを含んでいる。第1内側ショルダーサイプ31は、例えば、ショルダー主溝4から内側トレッド端Ti側に延びかつ内側ショルダー陸部13内で途切れている。第2内側ショルダーサイプ32は、例えば、少なくとも内側トレッド端Tiからショルダー主溝4側に延び、第1内側ショルダーサイプ31の外端の手前で途切れている。第1内側ショルダーサイプ31及び第2内側ショルダーサイプ32は、例えば、内側ショルダー横溝26に沿って延びている。このような内側ショルダーサイプ27は、内側ショルダー陸部13の剛性を維持しつつ、ウェット性能及び氷上性能を高めることができる。
【0070】
上述の効果を高めるために、第1内側ショルダーサイプ31は、例えば、内側ショルダー陸部13の幅W3の0.70〜0.80倍のタイヤ軸方向の長さL12を有しているのが望ましい。
【0071】
図8(b)には、第1内側ショルダーサイプ31及び第2内側ショルダーサイプ32のF−F線断面図が示されている。図8(b)に示されるように、第1内側ショルダーサイプ31は、例えば、タイヤ軸方向の内端部31aにおいて、底面が隆起しているのが望ましい。前記内端部31aの深さd15は、例えば、第1内側ショルダーサイプ31の最大の深さd14の0.40〜0.60倍であるのが望ましい。このような第1内側ショルダーサイプ31は、上述の内側ショルダー横溝26とともに、内側ショルダー陸部13の剛性を維持し、ひいてはドライ路面の操縦安定性を高めることができる。
【0072】
本実施形態の第2内側ショルダーサイプ32は、例えば、内側トレッド端Tiを跨いで設けられているのが望ましい。このような第2内側ショルダーサイプ32は、優れたワンダリング性能を発揮するのに役立つ。
【0073】
図7に示されるように、内側のショルダー縦サイプ28は、タイヤ周方向に延びている。本実施形態では、各内側ショルダー横溝26をつなぐようにタイヤ周方向に沿って延びている。このようなショルダー縦サイプ28は、ウェット性能や氷上性能を高めるのに役立つ。
【0074】
本実施形態の内側のショルダー縦サイプ28は、例えば、内側ショルダー陸部13のタイヤ軸方向の中心位置よりもタイヤ赤道C側に設けられているのが望ましい。望ましい態様では、ショルダー主溝4からショルダー縦サイプ28までのタイヤ軸方向の距離L8は、例えば、クラウン主溝3からクラウン縦サイプ18までの距離L6(図2に示す)よりも大きいのが望ましい。より具体的には、前記距離L8は、例えば、トレッド幅TWの3.5%〜15.0%であるのが望ましい。
【0075】
内側のショルダー縦サイプ28は、例えば、ショルダー主溝3の深さd2の0.15〜0.45倍の深さd16を有しているのが望ましい。このようなショルダー縦サイプ28は、内側ショルダー陸部13の剛性を維持しつつ、上述の効果を発揮することができる。
【0076】
内側ショルダースロット29は、例えば、クラウンスロット19と同様の断面形状を有している。内側ショルダースロット29は、雪上走行時にショルダー主溝4が形成する雪柱を大きくし、ひいては雪上性能を高めることができる。
【0077】
内側ショルダースロット29は、例えば、内側ショルダー横溝26と第1内側ショルダーサイプ31との間に設けられているのが望ましい。図1に示されるように、望ましい態様では、内側ショルダースロット29は、クラウンスロット19とタイヤ周方向で位置ずれしている。これにより、ショルダー主溝5、内側ショルダースロット29及びクラウンスロット19が協働して大きな雪柱を形成することができる。
【0078】
図7に示されるように、内側ショルダースロット29は、例えば、内側ショルダー横溝26よりも大きいタイヤ周方向のピッチP2を有しているのが望ましい。本実施形態の内側ショルダースロット29は、例えば、内側ショルダー横溝26のピッチP1の2倍のピッチP2で設けられている。このような内側ショルダースロット29は、ドライ路面での操縦安定性と雪上性能をバランス良く高めることができる。
【0079】
図9には、外側ショルダー陸部14の拡大図が示されている。図9に示されるように、本実施形態の外側ショルダー陸部14には、例えば、複数の外側ショルダー横溝34と、複数のショルダー継ぎサイプ33と、複数の外側ショルダーサイプ35と、外側のショルダー縦サイプ38と、外側ショルダースロット39とが設けられている。
【0080】
外側ショルダー横溝34は、外側トレッド端Toからタイヤ赤道C側に延びかつ外側ショルダー陸部14内で途切れている。このような外側ショルダー横溝34は、外側ショルダー陸部14の剛性を維持しつつ、ウェット性能及び雪上性能を高めることができる。
【0081】
外側ショルダー横溝34の内端からショルダー主溝4までのタイヤ軸方向の距離L9は、例えば、トレッド幅TWの3.0%〜3.6%であるのが望ましい。
【0082】
外側ショルダー横溝34は、例えば、タイヤ軸方向に対して斜めに延びている。望ましい態様では、外側ショルダー横溝34は、例えば、クラウンラグ溝15、16と同じ向きに傾斜している。これにより、外側ショルダー横溝34は、雪上走行時、クラウンラグ溝15、16と同じ方向に雪柱せん断力を発揮できる。
【0083】
外側ショルダー横溝34のタイヤ軸方向に対する角度θ4は、例えば、クラウンラグ溝15、16の前記角度θ1、θ2よりも小さいのが望ましい。具体的には、前記角度θ4は、好ましくは5°以上、より好ましくは10°以上であり、好ましくは45°以下、より好ましくは30°以下である。このような外側ショルダー横溝34は、雪上でのトラクションを高めることができる。
【0084】
上述の効果をさらに発揮するために、望ましい態様では、外側ショルダー横溝34は、前記角度θ4がタイヤ赤道C側に向かって漸増するように滑らかに湾曲している。
【0085】
ドライ路面での操縦安定性と雪上性能とをバランス良く高めるために、外側ショルダー横溝34の溝幅W8は、例えば、トレッド幅TWの3.0%〜3.6%であるのが望ましい。外側ショルダー横溝34の深さd17は、例えば、ショルダー主溝4の深さd2の0.73〜0.83倍であるのが望ましい。
【0086】
ショルダー継ぎサイプ33は、ショルダー主溝4と外側ショルダー横溝34との間をつないでいる。本実施形態のショルダー継ぎサイプ33は、例えば、外側ショルダー横溝34の溝縁と滑らかに連続するように延びている。このようなショルダー継ぎサイプ33は、外側ショルダー横溝34を適度に開口させ、雪上走行時における溝内の雪の詰まりを抑制することができる。
【0087】
図10には、外側ショルダー横溝34及びショルダー継ぎサイプ33のG−G線断面図が示されている。図10に示されるように、ショルダー継ぎサイプ33は、例えば、外側ショルダー横溝34の最大の深さd18の0.20〜0.40倍の深さd19を有している。このようなショルダー継ぎサイプ33は、外側ショルダー陸部14を適度に開口させるのに役立ち、ひいては雪上走行時の溝内の雪の詰まりを抑制することができる。
【0088】
図9に示されるように、外側ショルダーサイプ35は、例えば、タイヤ周方向で隣り合う外側ショルダー横溝34の間に設けられている。本実施形態では、前記外側ショルダー横溝34の間に、複数の外側ショルダーサイプ35が設けられている。各外側ショルダーサイプ35は、外側ショルダー横溝34に沿って延びている。
【0089】
外側ショルダーサイプ35は、例えば、第1外側ショルダーサイプ36と第2外側ショルダーサイプ37とを含んでいる。第1外側ショルダーサイプ36は、例えば、両端がショルダー陸部14内で途切れるクローズドサイプである。第2外側ショルダーサイプ37は、例えば、少なくとも外側トレッド端Toからショルダー主溝4側に延び、第1外側ショルダーサイプ36の外端の手前で途切れている。このような外側ショルダーサイプ35は、外側ショルダー陸部14の剛性を維持しつつ、ウェット性能及び氷上性能を高めることができる。
【0090】
ショルダー主溝5から第1外側ショルダーサイプ36の内端までのタイヤ軸方向の最大の距離L10は、例えば、トレッド幅TWの2.0%〜7.0%であるのが望ましい。
【0091】
外側のショルダー縦サイプ38は、タイヤ周方向に延びている。本実施形態の外側のショルダー縦サイプ38は、例えば、各外側ショルダー横溝34のタイヤ軸方向の内端部をつなぐようにタイヤ周方向に沿って延びている。このようなショルダー縦サイプ38は、ウェット性能及び氷上性能を高めるのに役立つ。
【0092】
本実施形態の外側のショルダー縦サイプ38は、例えば、外側ショルダー陸部14のタイヤ軸方向の中心位置よりもタイヤ赤道C側に設けられているのが望ましい。より具体的には、ショルダー主溝4からショルダー縦サイプ38までのタイヤ軸方向の距離L11は、例えば、トレッド幅TWの3.5%〜15.0%であるのが望ましい。
【0093】
外側のショルダー縦サイプ38は、例えば、ショルダー主溝4の深さd2の0.15〜0.45倍の深さd20を有しているのが望ましい。このようなショルダー縦サイプ38は、外側ショルダー陸部14の剛性を維持しつつ、上述の効果を発揮することができる。
【0094】
外側ショルダースロット39は、例えば、クラウンスロット19と同様の断面形状を有している。本実施形態の外側ショルダースロット39は、例えば、ショルダー継ぎサイプ33と連なっているのが望ましい。このような外側ショルダースロット39は、雪上走行時にショルダー主溝4が形成する雪柱を大きくし、ひいては雪上性能を高めることができる。
【0095】
図1に示されるように、外側ショルダースロット39は、例えば、クラウンスロット19とタイヤ周方向で位置ずれしている。さらに望ましい態様では、外側ショルダースロット39は、クラウン陸部11の溝及びサイプが連通していない端縁と向き合っているのが望ましい。これにより、外側ショルダースロット39とクラウン陸部11との間で固い雪柱を形成することができる。
【0096】
図9に示されるように、外側ショルダースロット39は、例えば、外側ショルダー横溝34よりも大きいタイヤ周方向のピッチP4を有しているのが望ましい。本実施形態の外側ショルダースロット39は、例えば、外側ショルダー横溝34のピッチP3の2倍のピッチP4で設けられている。このような外側ショルダースロット39は、ドライ路面での操縦安定性と雪上性能をバランス良く高めることができる。
【0097】
以上、本発明の一実施形態のタイヤが詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例】
【0098】
図1の基本パターンを有するサイズ185/65R15のタイヤが試作された。比較例として、図11に示されるように、各クラウン陸部に、陸部を完全に横切る横溝が設けられたタイヤが試作された。各テストタイヤのドライ路面での操縦安定性及び雪上性能がテストされた。各テストタイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
装着リム:15×6.0J
タイヤ内圧:前輪220kPa、後輪210kPa
テスト車両:排気量1300cc、前輪駆動車
タイヤ装着位置:全輪
【0099】
<ドライ路面での操縦安定性>
上記テスト車両でドライ路面を走行したときの操縦安定性が、運転者の官能により評価された。結果は、比較例を100とする評点であり、数値が大きい程、ドライ路面での操縦安定性が優れていることを示す。
【0100】
<雪上性能>
上記テスト車両で雪路を走行したときのトラクション性能、ブレーキ性能、及び、旋回性能に関する走行特性が運転者の官能により評価された。結果は、比較例を100とする評点であり、数値が大きい程、雪上性能が優れていることを示す。
テスト結果が表1に示される。
【0101】
【表1】
【0102】
テストの結果、実施例のタイヤは、ドライ路面での操縦安定性と雪上性能とがバランス良く向上していることが確認できた。
【符号の説明】
【0103】
2 トレッド部
3 クラウン主溝
4 ショルダー主溝
7 クラウン陸部
7c 中心位置
15 第1クラウンラグ溝
16 第2クラウンラグ溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11