【実施例】
【0016】
最初に、本発明の暖房給湯装置1の全体構成について、
図1に基づいて説明する。
暖房給湯装置1は、燃焼部2の燃焼熱を利用して加熱した暖房熱媒を暖房給湯装置1の外部に設置された暖房端末31との間で循環させる暖房運転と、暖房熱媒の熱を利用して加熱した上水を給湯設定温度に調整して給湯する給湯運転を行うように構成されている。
【0017】
暖房給湯装置1は、燃焼手段である燃焼部2と、熱交換器10と、この熱交換器10と暖房端末31を接続する循環通路4と、循環通路4の熱交換器10より上流側に設けられた循環手段である循環ポンプ11等を備えている。燃焼部2は燃焼用送風機3を備え、この燃焼用送風機3により矢印ASで示す給気と矢印Fで示す燃料ガスを混合して供給される混合ガスを燃焼させる。発生する燃焼ガス量及び燃焼熱量は、燃焼用送風機3の回転数の制御により調整される。熱交換器10は、燃焼部2で発生した燃焼ガスと暖房熱媒との間で熱交換させて、暖房熱媒を予め設定されている暖房端末用設定温度に加熱する。熱交換により温度が下がった燃焼ガスは、矢印Eで示すように外部に排気される。
【0018】
また、暖房給湯装置1は、第1バイパス通路12(バイパス通路)と、この第1バイパス通路12に設けられた給湯用熱交換器20と、給水通路19と、給湯通路21等を備えている。第1バイパス通路12は、熱交換器10の下流側で循環通路4から分岐されて暖房端末31をバイパスし、循環ポンプ11の上流側で循環通路4に合流する。給水通路19は、矢印CWで示すように給湯用熱交換器20に上水を供給する。給湯通路21は、給湯用熱交換器20で加熱された湯水を矢印HWで示すように給湯栓等に給湯する。
【0019】
さらに、暖房給湯装置1は、暖房運転等を制御する制御部5を備えている。暖房給湯装置1の設定操作等を行うための操作端末6は、制御部5に通信可能に接続され、例えば暖房端末31が暖房を行う室内に配設されている。また、屋外に配設された外気温度センサ30が制御部5と通信可能に接続されている。
【0020】
次に、循環通路4について説明する。
循環通路4は、循環ポンプ11と熱交換器10の間に第1温度センサ13を備え、熱交換器10の下流側に第2温度センサ14を備えている。第1温度センサ13は、熱交換器10に流入する暖房熱媒の温度を検知する。第2温度センサ14は、熱交換器10で加熱された暖房熱媒の温度を検知する。
【0021】
循環通路4と第1バイパス通路12の分岐部には、分配手段である第1分配弁15が設けられている。第1分配弁15は、暖房運転と給湯運転と暖房給湯同時運転に対応可能なように、熱交換器10で加熱された暖房熱媒を循環通路4と第1バイパス通路12に分配し、その分配比は調整可能である。第1分配弁15により循環通路4に分配された暖房熱媒は、暖房端末31に供給され、第1バイパス通路12に分配された暖房熱媒は給湯用熱交換器20に供給される。
【0022】
熱交換器10と第1分配弁15の間には、循環通路4内の圧力を開放する圧力開放弁16が設けられている。循環ポンプ11の上流側には、暖房端末31から戻ってくる暖房熱媒の温度を検知する暖房戻り温度センサ17が設けられている。循環ポンプ11と暖房戻り温度センサ17の間には、矢印Rで示すように暖房熱媒を補充するための補充通路18が接続されている。
【0023】
次に、給湯用熱交換器20について説明する。
給湯用熱交換器20はプレート式熱交換器であり、積層された複数枚の熱交換プレート間に通路が形成されている。給湯用熱交換器20内では、暖房熱媒と給水通路19から供給される上水が互いに混ざり合うことなく対向するように熱交換プレート間の通路を一つ置きに流れる。これらの熱交換プレートには、表面積を拡大して熱交換効率を向上させるために凹凸が形成されている。
【0024】
次に、給水通路19と給湯通路21について説明する。
給水通路19は、第2分配弁23と、流量調整弁24と、給湯流量センサ25と、入水温度センサ26を備えている。給湯栓等の開栓により矢印CWで示すように給水通路19に上水が供給される。給水通路19から第2バイパス通路22(給湯バイパス通路)が分岐され、この分岐部に配設された第2分配弁23が給水通路19と第2バイパス通路22に上水を分配し、その分配比は調整可能である。従って、第2分配弁23は、第2バイパス通路22を流れる上水の流量を調整する流量調整手段である。流量調整弁24は、第2分配弁23に入水する上水の流量を調整する。給湯流量センサ25は、第2分配弁23に供給される上水の流量を検知する。入水温度センサ26は、第2分配弁23に入水する上水の温度を検知する。
【0025】
給湯通路21には、合流部Cにおいて第2バイパス通路22が合流する。合流部Cと、給湯用熱交換器20との間には、出湯温度センサ27が設けられている。この出湯温度センサ27は、給湯用熱交換器20から出湯される湯水の温度を検知する。給湯通路21の下流側端部には、給湯温度センサ28が設けられている。この給湯温度センサ28は、給湯用熱交換器20で加熱された湯水と第2バイパス通路22を流れる上水とが混合されて給湯される湯水の給湯温度を検知する。給湯運転において、この給湯温度が給湯設定温度になるように第2分配弁23が制御される。
【0026】
次に、制御部5について説明する。
制御部5は、暖房給湯装置1内に設けられた第1温度センサ13等の検知信号や燃焼用送風機3等の回転数等を検知信号として受信可能に、且つ燃焼用送風機3の回転数や第1分配弁15の分配比等の設定値を設定可能に接続されている。そして、それらの検知信号及び設定値に基づいて燃焼用送風機3や循環ポンプ11、第1分配弁15等を制御することにより、暖房運転、給湯運転、暖房給湯同時運転の各運転を制御する。
【0027】
制御部5は、例えば暖房運転中に給湯運転の要求があるときには、検知信号及び設定値、暖房給湯装置1の加熱能力等に基づいて暖房給湯同時運転の可否判定を行う。暖房給湯同時運転可能と判定した場合は暖房給湯同時運転を行い、暖房給湯同時運転不可と判定した場合は暖房運転を休止して給湯運転を行う。
【0028】
次に、操作端末6について説明する。
操作端末6は、例えば温度や運転状況等を表示可能な表示部7と、暖房温度や給湯温度の設定操作や暖房運転の開始操作等を行うためのスイッチ部8と、図示を省略するが警報音等を出力する音声出力部を備えている。さらに操作端末6は、
図2に示すような暖房給湯装置1の設定等を変更するための複数(例えば#1〜#8の8個)の切換えスイッチを備えたDIPスイッチ9を備えている。図示を省略するが、DIPスイッチ9は操作端末6の回路基板に配設され、通常は誤操作防止のため、例えば蓋部材等で覆われている。DIPスイッチ9は制御部5の回路基板に配設されていてもよい。
【0029】
DIPスイッチ9の切換えスイッチは、主に暖房給湯装置1の施工時やメンテナンス時に操作する。操作手段として例えば
図2の初期状態でOFFになっている#2切換えスイッチSW2(以下、スイッチSW2と呼ぶ。)をONにすることにより、暖房給湯同時運転時に暖房端末用設定温度を所定温度(例えば15℃)上昇可能な設定に切換える。スイッチSW2は操作手段の1例であり、他の切換えスイッチを操作手段としてもよく、スイッチSW2の代わりに又はスイッチSW2と共に、操作端末6の操作によって暖房給湯同時運転時に暖房端末用設定温度を所定温度上昇可能な設定に切換えるように構成することもでき、その上昇可能な所定温度を変更可能に構成することもできる。
【0030】
次に、暖房端末31について説明する。
暖房端末31は、例えば暖房用送風機32と、暖房熱媒と空気の間で熱交換を行うための暖房用熱交換器33と、暖房端末31の送風運転等を制御する暖房端末制御部34を備え、導入した空気を暖房用熱交換器33で加熱して温風を送り出すことにより暖房を行う。暖房熱媒の熱を部屋の床に伝えるための伝熱管を有する床暖房端末や、暖房熱媒の熱で空気を自然対流させる温水ヒータ等を暖房端末31として接続することも可能である。
【0031】
暖房端末31の種類等によって要求される暖房熱媒の温度が異なる場合があるため、暖房給湯装置1に暖房端末31を接続する施工時等に、暖房端末31に応じて暖房端末用設定温度が設定される。暖房端末用設定温度は、通常は60℃〜80℃程度に設定される。
【0032】
次に、暖房運転について説明する。
暖房運転では、暖房端末用設定温度に加熱された暖房熱媒を暖房端末31に供給するために、暖房熱媒が循環通路4を流れるように第1分配弁15の分配比を調整する。暖房熱媒は、循環通路4を流れて暖房端末31において放熱した後、熱交換器10に戻る。
【0033】
次に、給湯運転について説明する。
給湯運転では、給湯設定温度の給湯が可能なように熱交換器10で給湯設定温度より高温に加熱された暖房熱媒を給湯用熱交換器20に供給するために、暖房熱媒が第1バイパス通路12を流れるように第1分配弁15の分配比を調整する。例えば、通常は給湯設定温度が42℃程度に設定され、暖房端末用設定温度がそれより高い60℃に設定されている場合、給湯運転時にも暖房熱媒を暖房端末用設定温度に加熱する。
【0034】
一方、高温給湯時には、暖房端末用設定温度より高い温度に暖房熱媒を加熱して給湯用熱交換器20に供給可能に構成されている。例えば、暖房端末用設定温度と給湯設定温度が共に60℃に設定され、暖房端末用設定温度の暖房熱媒では給湯設定温度の給湯が困難な場合には、その高温の給湯設定温度の給湯が可能な温度(例えば70℃)に暖房熱媒を加熱する。
【0035】
加熱された暖房熱媒は、給湯用熱交換器20で給水通路19から供給される上水と熱交換した後、熱交換器10に戻る。給湯用熱交換器20で給湯設定温度より高温に加熱された湯水は、給湯通路21で第2バイパス通路22の上水との混合により給湯設定温度に調整されて給湯栓等に供給される。
【0036】
次に、暖房給湯同時運転について説明する。
暖房給湯装置1は、制御部5により暖房給湯同時運転可能と判定された場合には、給湯運転を優先して給湯設定温度の給湯が可能なように第1分配弁15の分配比を調整する。そして、操作手段として例えばスイッチSW2による設定に基づいて、熱交換器10で暖房端末用設定温度又は暖房端末用設定温度を所定温度上昇させた温度に暖房熱媒を加熱する。加熱された暖房熱媒は、循環通路4及び第1バイパス通路12に分配され暖房端末31と給湯用熱交換器20に供給される。給湯用熱交換器20で加熱された上水は、給湯通路21で給湯設定温度に調整されて給湯栓等に供給される。暖房端末31は、暖房熱媒の熱を利用して暖房を行う。
【0037】
次に、本発明の暖房給湯装置1の作用、効果について
図3に基づいて説明する。
図3は、縦軸が暖房端末用設定温度、横軸が給湯設定温度であり、一定の給湯流量(例えば8L/min)、給水温度(例えば4℃)の条件下で暖房端末用設定温度及び給湯設定温度で決まる暖房給湯同時運転が可能な運転領域と不可能な運転領域を示す。操作手段として例えばスイッチSW2がOFFの状態、即ち暖房給湯同時運転時に暖房端末用設定温度を所定温度上昇させない設定の場合、例えば暖房端末用設定温度が60℃の場合に暖房給湯同時運転が可能な給湯設定温度の最高温度は38℃である。これら暖房端末用設定温度と暖房給湯同時運転が可能な給湯設定温度の最高温度との関係が曲線L1で表され、曲線L1より上側の運転領域Xは暖房給湯同時運転が可能な運転領域を示している。
【0038】
一方、操作手段として例えばスイッチSW2がONの状態、即ち暖房給湯同時運転時に暖房端末用設定温度を所定温度(例えば15℃)上昇可能な設定の場合には、暖房給湯同時運転時に暖房熱媒の温度が予め設定されている暖房端末用設定温度から所定温度上昇させることが可能である。制御部5は、暖房端末用設定温度等に基づいて、予め設定されている暖房端末用設定温度では暖房給湯同時運転ができないが、暖房熱媒の温度を所定温度の範囲内で上昇させると暖房給湯同時運転が可能な場合に、暖房端末用設定温度を所定温度の範囲内で上昇させる。そのため、暖房熱媒により暖房端末31及び給湯用熱交換器20に供給される熱量が増加する。例えば暖房端末用設定温度が60℃の場合に暖房熱媒は最高で75℃に加熱され、暖房給湯同時運転が可能な給湯設定温度の最高温度は52℃になる。これら暖房端末用設定温度と暖房給湯同時運転が可能な給湯設定温度の最高温度との関係が
図3の曲線L2で表され、この曲線L2より上側の運転領域X及び運転領域Yは暖房給湯同時運転が可能な運転領域を示している。
【0039】
従って、例えばスイッチSW2等の操作手段を操作して、暖房給湯同時運転時に暖房端末用設定温度を所定温度上昇可能な設定に切換えることにより、暖房給湯同時運転可能な運転領域を拡大することができ、暖房給湯装置1の能力を一層発揮することができる。尚、運転領域Zは、操作手段の操作にかかわらず暖房給湯同時運転ができない運転領域である。
【0040】
通常の給湯運転は暖房熱媒を暖房端末用設定温度に加熱して行うので、給湯用熱交換器で給湯設定温度より高温に加熱された湯水に給湯バイパス通路の上水を混合して給湯設定温度に調整し、給湯設定温度の給湯を行うことができる。また、暖房運転と同じ暖房熱媒の温度で給湯運転を行うので、制御部5が暖房給湯同時運転不可と判定した場合に暖房運転から給湯運転への移行、及び給湯運転から暖房運転への移行を迅速に行うことができる。その上、暖房運転及び給湯運転は、暖房熱媒を暖房端末用設定温度に加熱して行うので、暖房端末用設定温度より高温の暖房熱媒による火傷等の危険防止や暖房端末31の不具合の発生の防止に有利である。
【0041】
その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、上記実施形態に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態を包含するものである。