(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
建設機械の機体の周囲に設定した監視エリア内に存在する障害物を検出し、該障害物が検出された場合に、所定の対応処理を実行するように構成された障害物検出装置であって、
前記建設機械が位置する地面の周囲に存在する地面である周辺地面に対する前記機体の相対的な傾斜状態を示す傾斜情報を取得する傾斜情報取得部と、
前記傾斜情報に応じて前記監視エリアを変化させるように該監視エリアを設定するエリア設定部とを備えることを特徴とする建設機械の障害物検出装置。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態を
図1A〜
図5Cを参照して以下に説明する。
図1A及び
図1Bを参照して、本実施形態における建設機械は、例えば油圧ショベル1である。
【0024】
この油圧ショベル1は、クローラ式の走行体2と、走行体2上に搭載された旋回体3と、旋回体3に取り付けられた作業装置4とを備える公知の構造のものである。なお、
図1A及び
図1Bでは、油圧ショベル1の基本構造を概略的に示している。
【0025】
走行体2は、左右一対のクローラ2L,2Rを有し、それぞれのクローラ2L,2Rを各別の走行用油圧モータ(図示省略)により駆動することが可能である。
【0026】
旋回体3は、上下方向の旋回軸Cz周りの方向(ヨー方向)に走行体2に対して旋回し得るように、旋回装置7を介して該走行体2に取り付けられている。該旋回装置7は、図示を省略する旋回用油圧モータや旋回ギヤを有する公知の構造の装置であり、旋回用油圧モータの駆動力により旋回体3を旋回させるように動作する。旋回体3の前部には、作業者が搭乗する運転室5が備えられ、後部には、エンジン、油圧機器等が収容された機械室6が備えられている。なお、本実施形態では、旋回体3が油圧ショベル1(建設機械)の機体に相当するものである。
【0027】
作業装置4は、旋回体3の前部から延設されたブーム11と、ブーム11の先端部から延設されたアーム12と、アーム12の先端部に組付けられたアタッチメント13とを備える。ブーム11、アーム12及びアタッチメント13のそれぞれは、図示を省略する油圧シリンダにより、旋回体3、ブーム11及びアーム12のそれぞれに対してピッチ方向(旋回体3の左右方向の軸周り方向)に揺動可能である。
【0028】
なお、
図1では、基本的な構成の油圧ショベル1を例示したが、本発明を適用し得る油圧ショベルは、上記した構成のものに限られない。例えばブーム11は、旋回体3に対してピッチ方向に揺動し得るだけでなく、旋回体3に対してヨー方向に揺動したり、あるいは、旋回体3の左右方向に移動し得るようになっていてもよい。
【0029】
また、走行体2は、クローラ式のものに限らず、ホイール式のものであってもよい。また、油圧ショベル1は、油圧式のアクチュエータに限らず、電動式のアクチュエータを含んでいてもよい。
【0030】
本実施形態の油圧ショベル1には、
図2に示すように、旋回体3の傾斜角を検出するための傾斜センサ21と、走行体2に対する旋回体3の旋回角度を検出するための旋回角度センサ22と、旋回体3の周囲に存在する障害物を検出するための複数の障害物検知用センサ23と、種々の制御処理及び演算処理を実行する機能を有するコントローラ30とが搭載されている。
【0031】
傾斜センサ21は、2つの検出軸周りの傾斜角度を検出可能な公知のセンサにより構成され、水平面に対する旋回体3の傾斜角度を検出し得るように旋回体3に搭載されている。本実施形態では、傾斜センサ21は、
図1A及び
図1Bに示す如く、例えば旋回体3の前後方向の軸としてのX軸と、旋回体3の左右方向の軸としてのY軸とを2つの検出軸として、旋回体3のX軸周り方向の傾斜角度とY軸周り方向の傾斜角度とを検出し得るように旋回体3に搭載されている。
【0032】
なお、旋回体3の傾斜角度は、走行体2の傾斜角度に一致もしくはほぼ一致するので、傾斜センサ21は、水平面に対する走行体2の傾斜角度を検出し得るように走行体2のフレーム(クローラ2L,2Rの間のフレーム)に搭載されていてもよい。
【0033】
旋回角度センサ22は、例えばロータリエンコーダ、ポテンショメータ、レゾルバ等により構成され、例えば前記旋回装置7に組み付けられている(
図1では図省略)。
【0034】
障害物検知用センサ23は、例えば公知の測距センサ、ステレオカメラ等により構成され、旋回体3の周囲に存在する物体(人等の移動物体、設置物等)を、該物体までの距離及び方位(あるいは、旋回体3に対する該物体の相対位置)を含めて検知し得るように、旋回体3の周縁部の複数個所(
図1Aに示す例では、例えば4か所)のそれぞれに取り付けられている。
【0035】
これらの障害物検知用センサ23により物体を検知可能な領域は、旋回体3の周囲のうち、後述する如く設定される監視エリアARを少なくとも包含する領域である。該監視エリアARは、そこに存在する物体を、後述する障害物検出部33が障害物(旋回体3との将来の接触の虞がある物体)として検出する領域である。
【0036】
該監視エリアARは、本実施形態では、旋回体3の周囲のうち、旋回体3に比較的近い領域であると共に、油圧ショベル1の運転者が視認できない、もしくは視認し難い、もしくは、見落としやすい領域であり、例えば、
図1Aおよび
図1Bに例示する如く、旋回体3の外周面から所定の距離内で、該旋回体3の左右の両側及び後側を囲むように設定された領域である。そして、旋回体3に取り付けられた複数の(図示例では4つの)障害物検知用センサ23は、監視エリアAR内の物体をいずれか一つ以上の障害物検知用センサ23により検知し得るように配置されている。
【0037】
補足すると、
図1A及び
図1Bに例示した監視エリアARは、本実施形態では、旋回体3の傾斜角度がほぼ一定に保たれるか、もしくは該傾斜角度の変化が比較的緩やかなものとなるような地面上で油圧ショベル1の動作を行う状況で、監視エリアARとして設定される基準エリアAR1であり、旋回体3に対してあらかじめ定められたサイズ及び形状を有する領域である。
【0038】
本実施形態で例示する基準エリアAR1は、例えば
図1Aに例示する如く、油圧ショベル1の上方から見て、旋回体3の左右方向(
図1AのY軸方向)の幅の中心線に対して左右対称形状の半長円状の領域であると共に、
図1Bに例示する如く、油圧ショベル1の高さ方向(旋回軸Czの方向)に一定の厚さを有する領域である。
【0039】
油圧ショベル1の動作環境における地面の凹凸やうねり、斜面の傾き変化等により、旋回体3の傾斜角度の変化が生じやすい地面上で油圧ショベル1の動作が行われる状況では、監視エリアARのサイズや形状は、後述するように、基準エリアAR1から適宜変更される。なお、基準エリアAR1は、
図1A及び
図1Bに例示した形状のものに限らず、旋回体3の外形状等に応じて、種々様々な形状を採用し得る。
【0040】
コントローラ30は、マイコン、メモリ、インターフェース回路等を含む一つ以上の電子回路ユニットにより構成される。このコントローラ30には、前記傾斜センサ21、旋回角度センサ22及び障害物検知用センサ23のそれぞれの検出データを含む種々のセンシングデータが入力される。
【0041】
そして、コントローラ30は、実装されたハードウェア構成及びプログラム(ソフトウェア構成)により実現される機能として、障害物検出装置としての機能を有する。より具体的には、コントローラ30は、その機能として、油圧ショベル1の周辺地面に対する旋回体3の相対的な傾斜状態を示す傾斜情報を取得する傾斜情報取得部31と、旋回体3の周囲に監視エリアARを可変的に設定するエリア設定部32と、該監視エリアAR内に存在する物体を障害物として検出する障害物検出部33と、該監視エリアAR内で障害物が検出された場合に、その検出に応じて所定の対応処理を実行する障害物対応処理部34とを有する。
【0042】
傾斜情報取得部31は、詳細は後述するが、油圧ショベル1の動作中に、該油圧ショベル1の周辺地面に対する旋回体3の相対的な傾斜角度を傾斜センサ21の検出データに基づいて推定し、その相対的な傾斜角度の推定値を上記傾斜情報として取得する。ここで、油圧ショベル1の周辺地面というのは、より詳しくは、油圧ショベル1が位置する地面の周囲に存在する地面である。
【0043】
この場合、油圧ショベル1が位置する地面というのは、油圧ショベル1を旋回軸Czの方向で上方から見た場合に、該油圧ショベル1の直下に存在する地面である。より詳しくは、本実施形態では、油圧ショベル1を旋回軸Czの方向で上方から見た場合に、例えば、旋回体3の全体の直下に存在する地面領域(換言すれば、旋回体3の全体を旋回軸Czの方向で地面に投影してなる領域)を、油圧ショベル1の存在領域として、該存在領域内の地面を、油圧ショベル1が位置する地面とみなす。
【0044】
そして、該存在領域の外側の地面のうち、油圧ショベル1の存在領域寄りの地面(例えば、旋回軸Czもしくは旋回体3の外周面から所定の距離内の地面)を油圧ショベル1の周辺地面とみなす。
【0045】
以降の説明では、
図1Bに例示する如く、油圧ショベル1の存在領域内の地面(油圧ショベル1が位置する地面)に参照符号Gr0を付し、周辺地面に参照符号Graを付する。
【0046】
エリア設定部32は、詳細は後述するが、油圧ショベル1の動作中に、傾斜情報取得部31で取得した傾斜情報(油圧ショベル1の周辺地面Graに対する旋回体3の相対的な傾斜角度の推定値)に基づいて、監視エリアARを設定する。この場合、監視エリアARは、その内部に油圧ショベル1の周辺地面Graが含まれないように設定される。
【0047】
障害物検出部33は、油圧ショベル1の動作中に、障害物検知用センサ23の検出データから、旋回体3の周囲に存在する物体の位置(旋回体3に対する相対位置)を特定し、その特定した位置が、エリア設定部32で設定された監視エリアAR内の位置であるか否かを判断する。そして、障害物検出部33は、物体の位置が監視エリアAR内の位置である場合には、監視エリアAR内に障害物が存在することを示す障害物検知情報を障害物対応処理部34に出力する。なお、該障害物検知情報は、監視エリアAR内の障害物の位置を示す情報を含み得る。
【0048】
障害物対応処理部34は、油圧ショベル1の動作中に、障害物検出部33から上記障害物検知情報が与えられた場合に、それに応じた対応処理として、油圧ショベル1の旋回体3の旋回動作と、走行体2の走行動作とのうちの一方又は両方の動作を制限する制御処理を実行したり、あるいは、油圧ショベル1の運転者もしくは油圧ショベル1の周囲の者に対して警報を発生する処理を実行する。
【0049】
例えば、走行体2の後方側の位置に障害物が存在する場合には、障害物対応処理部34は、走行体2の後方への走行動作(走行用油圧モータの作動)を禁止し、もしくは強制的に停止させる。この場合、走行体2の後方への走行動作時には、例えば、障害物と油圧ショベル1との距離等に応じた減速度合いで走行体2の走行速度を減速させてもよい。
【0050】
また、例えば、旋回体3の側方の位置に障害物が存在する場合には、障害物対応処理部34は、旋回体3の旋回動作(旋回装置7の作動)を禁止し、もしくは強制的に停止させる。この場合、旋回体3の旋回動作時には、例えば、障害物と旋回体3との距離もしくは位置関係等に応じた減速度合いで旋回体3の旋回速度を減速させてもよい。
【0051】
さらに、障害物対応処理部34は、上記のように走行体2の走行動作あるいは旋回体3の旋回動作を制限することと併せて、油圧ショベル1の運転者もしくは油圧ショベル1の周囲の者に対して警報を発生する。該警報は、視覚的な警報及び聴覚的な警報のいずれであってもよい。
【0052】
なお、油圧ショベル1と障害物との位置関係等に応じて警報内容を変化させてもよい。また、油圧ショベル1と障害物との位置関係、油圧ショベル1の動作状況等に応じて、走行体2の走行動作の制限処理と、旋回体3の旋回動作の制限処理と、警報発生処理とのうちのいずれかを選択的に実行するようにしてもよい。
【0053】
次に、傾斜情報取得部31の処理と、エリア設定部32の処理とをさらに詳細に説明する。なお、以降の説明では、前記X軸及びY軸と、これらに直交する方向(前記旋回軸Czの方向)のZ軸とを座標軸とする座標系を旋回体座標系という。
【0054】
本実施形態では、例えば、油圧ショベル1の動作環境の地面が、部分的な凹凸やうねり等を除いて、概ね平坦な面とみなし得る場合(動作環境の地面の多くの局所が、単一の平面上、又は該平面に近い位置に存在するとみなし得る場合)において、以下に説明する如く、傾斜情報取得部31の処理と、エリア設定部32の処理とが実行される。
【0055】
この場合、油圧ショベル1の動作開始前に、動作環境の地面の平均的(もしくは代表的)な傾斜角度を示すデータをコントローラ30に記憶保持させる初期設定処理が行われる。
【0056】
この初期設定処理では、コントローラ30は、油圧ショベル1が動作環境の地面のうちの平坦部に停車された状態で、運転者等が油圧ショベル1の運転室5等に配置された操作部(図示省略)の所定の操作を行うことに応じて、あるいは、外部のサーバ等から与えられる指令に応じて、旋回体3の現在の傾斜角度(前記X軸及びY軸の各軸周りの方向の傾斜角度)の検出値を示す検出データを傾斜センサ21から取得し、この検出データを動作環境の地面の平均的(もしくは代表的)な傾斜角度(以降、地面基準傾斜角度という)を示すデータとして記憶保持する。この場合、コントローラ30は、旋回体3の現在の旋回角度の検出値を示すデータも、地面基準傾斜角度の検出データと共に記憶保持する。
【0057】
なお、上記初期設定処理では、傾斜センサ21による地面基準傾斜角度の検出データの代わりに、油圧ショベル1の外部の任意の測定器で測定した地面基準傾斜角度の測定データをコントローラ30に記憶保持させるようにしてもよい。また、地面基準傾斜角度がゼロもしくはほぼゼロである場合(動作環境の地面が概ね水平面とみなし得る場合)には、初期設定処理において、旋回体3の旋回角度の検出値を示すデータをコントローラ30に記憶保持することを省略してもよい。
【0058】
本実施形態では、かかる初期設定処理の実行後に、油圧ショベル1の動作が行われ、その動作中に、傾斜情報取得部31の処理と、エリア設定部32の処理とが、所定の演算処理周期で逐次、次のように実行される。
【0059】
傾斜情報取得部31は、各演算処理周期で、傾斜センサ21の検出データにより示される旋回体3の現在の傾斜角度の検出値を取得すると共に、旋回体3の現在の旋回角度の検出値を取得する。さらに、傾斜情報取得部31は、旋回体3の現在の旋回角度の検出値と、前記初期設定処理でコントローラ30に記憶保持された旋回体3の旋回角度の値との差に応じて、前記地面基準傾斜角度を、旋回体3の現在の旋回角度に対応する旋回体座標系で見た傾斜角度に変換する。
【0060】
そして、傾斜情報取得部31は、旋回体3の現在の傾斜角度の検出値と、上記変換後の地面基準傾斜角度との差である相対傾斜角度(X軸周り方向の相対傾斜角度及びY軸周り方向の相対傾斜角度の組)を、油圧ショベル1の周辺地面Graに対する旋回体3の現在の相対的な傾斜角度の推定値として算出する。
【0061】
すなわち、傾斜情報取得部31は、油圧ショベル1の周辺地面の傾斜角度が上記変換後の地面基準傾斜角度に一致(もしくはほぼ一致)するとみなして、油圧ショベル1の周辺地面Graに対する旋回体3の傾斜状態を示す傾斜情報としての相対傾斜角度の推定値を算出する。
【0062】
ここで、本実施形態では、油圧ショベル1の動作環境の地面は、概ね平坦な面とみなし得るので、油圧ショベル1の周辺地面Graは、概ね、地面基準傾斜角度と同程度の傾斜角度の地面である可能性が高い。このため、油圧ショベル1の周辺地面Graの傾斜角度が地面基準傾斜角度に一致(もしくはほぼ一致)するとみなし得る。
【0063】
補足すると、地面基準傾斜角度がゼロもしくはほぼゼロである場合には、傾斜センサ21の検出データにより示される旋回体3の傾斜角度の検出値を、そのまま相対傾斜角度の推定値として取得してもよい。
【0064】
エリア設定部32は、本実施形態では、上記の如く傾斜情報取得部31により取得された相対傾斜角度(推定値)に応じて、監視エリアARを設定する。
【0065】
ここで、上記相対傾斜角度が小さい場合(X軸周り方向の相対傾斜角度の大きさとY軸周り方向の相対傾斜角度の大きさとが両方とも小さい場合)には、油圧ショベル1の周辺地面に対する旋回体3の傾きが小さい状況であるので、監視エリアARとして、前記基準エリアAR1を設定しても、該監視エリアAR内に、油圧ショベル1の周辺地面Graが含まれるような状況にはならない。
【0066】
そこで、エリア設定部32は、X軸及びY軸の各軸周りの方向の相対傾斜角度のそれぞれの大きさ(絶対値)があらかじめ定められた所定の閾値以下である場合には、監視エリアARとして前記基準エリアAR1を設定する。例えば、
図1A及び
図1Bに示す如く、油圧ショベル1の存在領域の地面Gr0と、周辺地面Graとが面一(もしくはほぼ面一)の平坦面であるような場合には、監視エリアARとして前記基準エリアAR1が設定される。
【0067】
なお、上記閾値は、X軸周り方向の相対傾斜角度と、Y軸周り方向の相対傾斜角度とのそれぞれ毎に設定された閾値である。これらの閾値は、X軸周り方向の相対傾斜角度と、Y軸周り方向の相対傾斜角度とがそれぞれ該閾値以下であれば、周辺地面Graに相当する平面が基準エリアAR1から逸脱した状態となる(該平面が基準エリアAR1と重ならない)ように、シミュレーション等に基づき、あらかじめ設定された閾値である。
【0068】
補足すると、X軸及びY軸の各軸周りの方向の相対傾斜角度のそれぞれの大きさが所定の閾値以下となる状況は、本発明における第1状況を含む状況である。
【0069】
一方、X軸及びY軸の各軸周りの相対傾斜角度の一方又は両方の大きさが上記所定の閾値よりも大きい場合には、監視エリアARとして前記基準エリアAR1を設定すると、該監視エリアAR内に、油圧ショベル1の周辺地面Graが含まれる可能性がある。例えば
図3あるいは
図4は、このような状況を例示している。なお、このようにX軸及びY軸の各軸周りの相対傾斜角度の一方又は両方の大きさが所定の閾値よりも大きいものとなる状況は、本発明における第2状況に相当する。
【0070】
このような状況では、監視エリアARとして前記基準エリアAR1をそのまま設定すると、障害物検出部33により、周辺地面Graが障害物として検出されてしまう虞がある。
【0071】
そこで、本実施形態では、エリア設定部32は、X軸及びY軸の各軸周りの相対傾斜角度の一方又は両方の大きさが上記所定の閾値よりも大きい場合には、設定する監視エリアAR内に周辺地面Graが含まれないように該監視エリアARを設定する。この場合、エリア設定部32は、以下に説明する如く、Y軸周り方向の相対傾斜角度θy(推定値)に応じてX軸方向における監視エリアARのサイズを決定し、X軸周り方向の相対傾斜角度θx(推定値)に応じてY軸方向における監視エリアARのサイズを決定する。
【0072】
補足すると、
図3では、油圧ショベル1の存在領域の地面Gr0を、便宜上、平坦な斜面として記載しているが、実際の地面Gr0は平坦な斜面である必要はない。例えば走行体2の前部が地面の凸部に乗り上げることで、旋回体3が周辺地面Graに対して
図3に示す如く傾いていてもよい。
【0073】
また、
図3では、走行体2の前後方向と、旋回体3の前後方向(X軸方向)とを同方向として記載しているが、旋回体3は走行体2に対して、旋回軸Czの周りに任意の旋回角度で旋回した状態であってもよい。
【0074】
これらのことは、
図4、あるいは、後述の第2実施形態に係る
図6及び
図7についても同様である。
【0075】
本実施形態では、Y軸周り方向の相対傾斜角度θy(推定値)に応じてX軸方向における監視エリアARのサイズの決定処理は、次にように行われる。
図3を参照して、Y軸周り方向の相対傾斜角度θyが、図示の如く、旋回体3の後部を油圧ショベル1の周辺地面Graに近づける方向の角度である場合には、エリア設定部32は、油圧ショベル1をY軸方向で見た場合(旋回体座標系のZX座標平面に投影して見た場合)における旋回体3の後端から、周辺地面Graまでの最小距離Dx(X軸方向での最小距離Dx)を、Y軸周り方向の相対傾斜角度θy(推定値)を用いて算出する。
【0076】
ここで、本実施形態では、油圧ショベル1をY軸方向で見た場合(旋回体座標系のZX座標平面に投影して見た場合)における周辺地面Graは、
図3に示す如く、油圧ショベル1の存在領域の地面Gr0の後端から、X軸方向に対して相対傾斜角度θyに一致する角度だけ傾いた方向に延在する直線であるとみなす。
【0077】
この場合、上記最小距離Dxは、次式(1)により算出することができる。
【0078】
Dx=h/tan(θy) ……(1)
【0079】
式(1)におけるhは、
図3に示す如く、走行体2の下端から旋回体3の下端までの高さ(固定値)であり、コントローラ30にあらかじめ記憶保持されている。なお、例えば、Y軸周り方向の相対傾斜角度θy(推定値)から、あらかじめ作成したデータテーブル等を用いて上記最小距離Dxを求めるようにしてもよい。
【0080】
エリア設定部32は、次に、旋回体3に対してあらかじめ任意に設定した基準点P0から旋回体3の後端までのX軸方向での距離rと上記最小距離Dxとを加え合わせた値(=r+Dx)と、基準点P0から基準エリアAR1の後端までの距離R1との大小関係に応じて、基準点P0から、実際に設定する監視エリアARの後端までの距離R2を、次式(2a)又は(2b)により決定する。
【0081】
なお、本実施形態では、基準点P0は、
図1Aに例示する如く、例えば、油圧ショベル1を上方から見た場合の旋回体3の左右方向の幅の中心線上(
図1AではX軸上)に設定されている。ただし、基準点P0は、任意に設計的に設定し得る。例えば、基準点P0は、旋回軸CzからX軸方向にずらした位置に設定されていてもよい。
【0082】
r+Dx>R1である場合、R2=R1 ……(2a)
r+Dx≦R1である場合、R2=r+Dx−bx ……(2b)
【0083】
ここで、rは、
図3に示す如く、基準点P0から旋回体3の後端までの距離(X軸方向での距離)、bxは、所定値(>0)のマージン定数である。r,bx,R1の値は、コントローラ30にあらかじめ記憶保持されている。
【0084】
r+Dx>R1となる場合は、油圧ショベル1をY軸方向で見た場合に、旋回体3の後端から周辺地面Graまでの最小距離Dxが、旋回体3の後端から基準エリアAR1の後端までの距離(=R1−r)よりも大きい状況である。この場合には、上記式(2a)によって、基準点P0から、実際に設定する監視エリアARの後端までの距離R2が基準エリアAR1における距離R1と同じ値に設定される。
【0085】
一方、r+Dx≦R1となる場合は、油圧ショベル1をY軸方向で見た場合に、旋回体3の後端から周辺地面Graまでの最小距離Dxが、旋回体3の後端から基準エリアAR1の後端までの距離(=R1−r)に一致するか、もしくは小さいものとなる状況である。
【0086】
この場合には、上記式(2b)によって、基準点P0から、実際に設定する監視エリアARの後端までの距離R2が、基準点P0から旋回体3の後端までの距離rと、旋回体3の後端から周辺地面Graまでの最小距離Dxよりも前記マージン定数bxの値だけ小さい値(=Dx−bx)とを加え合わせた値に設定される。換言すれば、旋回体3の後端から監視エリアARの後端までの距離(=R2−r)が、旋回体3の後端から周辺地面Graまでの最小距離Dxよりも若干短い距離(=Dx−bx)に設定される。
【0087】
また、Y軸周り方向の相対傾斜角度θyが、旋回体3の後部を周辺地面Graから遠ざける方向の角度である場合(旋回体3の前部を周辺地面Graに近づける方向の角度である場合)には、エリア設定部32は、監視エリアARに係る上記距離R2を基準エリアAR1における距離R1と同じ値に設定する。
【0088】
なお、基準点P0から監視エリアARの前端までの距離は、いずれの場合でも、基準エリアAR1と同じに設定される。
【0089】
次に、X軸周り方向の相対傾斜角度θx(推定値)に応じてY軸方向における監視エリアARのサイズの決定処理は、次にように行われる。
図4を参照して、X軸周り方向の相対傾斜角度θxが、旋回体3の左右の側部のうちの例えば右側の側部を周辺地面Graに近づける方向の角度である場合には、エリア設定部32は、油圧ショベル1をX軸方向で見た場合(旋回体座標系のYZ座標平面に投影して見た場合)における旋回体3の右端から、周辺地面Graまでの最小距離Dy(Y軸方向での最小距離Dy)を、X軸周り方向の相対傾斜角度θx(推定値)を用いて算出する。
【0090】
ここで、本実施形態では、油圧ショベル1をX軸方向で見た場合(旋回体座標系のYZ座標平面に投影して見た場合)における周辺地面Graは、
図4に示す如く、油圧ショベル1の存在領域の地面Gr0の右端から、Y軸方向に対して相対傾斜角度θxに一致する角度だけ傾いた方向に延在する直線であるとみなす。
【0091】
この場合、上記最小距離Dyは、次式(3)により算出することができる。
【0092】
Dy=h/tan(θx) ……(3)
【0093】
式(3)におけるhは、式(1)におけるhと同じである。なお、例えば、X軸周り方向の相対傾斜角度θx(推定値)から、あらかじめ作成したデータテーブル等を用いて上記最小距離Dyを求めるようにしてもよい。
【0094】
エリア設定部32は、次に、前記基準点P0から旋回体3の右端までのY軸方向での距離sと上記最小距離Dyとを加え合わせた値(=s+Dy)と、基準点P0から基準エリアAR1の右端までの距離Y1との大小関係に応じて、基準点P0から、実際に設定する監視エリアARの右端までの距離Y2を、次式(4a)又は(4b)により決定する。
【0095】
s+Dy>Y1である場合、Y2=Y1 ……(4a)
s+Dy≦Y1である場合、Y2=s+Dy−by ……(4b)
【0096】
ここで、sは、
図4に示す如く、基準点P0から旋回体3の右端までの距離(Y軸方向での距離)、byは、所定値(>0)のマージン定数である。s,by,Y1の値は、コントローラ30にあらかじめ記憶保持されている。なお、式(4b)におけるマージン定数byの値は、前記式(2b)におけるマージン定数bxと同じ値あるいは異なる値のいずれでもよい。
【0097】
s+Dy>Y1となる場合は、油圧ショベル1をX軸方向で見た場合に、旋回体3の右端から周辺地面Graまでの最小距離Dyが、旋回体3の右端から基準エリアAR1の右端までの距離よりも大きい状況である。この場合には、上記式(4a)によって、基準点P0から、実際に設定する監視エリアARの右端までの距離Y2が基準エリアAR1における距離Y1と同じ値に設定される。
【0098】
一方、s+Dy≦Y1となる場合は、油圧ショベル1をX軸方向で見た場合に、旋回体3の右端から周辺地面Graまでの最小距離Dyが、旋回体3の右端から基準エリアAR1の右端までの距離に一致するか、もしくは小さいものとなる状況である。
【0099】
この場合には、上記式(4b)によって、基準点P0から、実際に設定する監視エリアARの右端までの距離Y2が、基準点P0から旋回体3の右端までの距離sと、旋回体3の右端から周辺地面Graまでの最小距離Dyよりも前記マージン定数byの値だけ小さい値(=Dy−by)とを加え合わせた値に設定される。換言すれば、旋回体3の右端から監視エリアARの右端までの距離(=Y2−s)が、旋回体3の右端から周辺地面Graまでの最小距離Dyよりも若干短い距離(=Dy−by)に設定される。
【0100】
なお、基準点P0から監視エリアARの左端までの距離(Y軸方向での距離)は、基準エリアAR1と同じ距離(本実施形態ではY1)に設定される。
【0101】
また、X軸周り方向の相対傾斜角度θxが、旋回体3の左側の側部を周辺地面Graに近づける方向の角度である場合には、エリア設定部32は、基準点P0から監視エリアARの左端までの距離Y2を、上記と同様に、式(4a)又は(4b)により設定し、基準点P0から監視エリアARの右端までの距離を、基準エリアAR1と同じ距離(=Y1)に設定する。
【0102】
以上のように、エリア設定部32は、Y軸周り方向の相対傾斜角度θyに応じて監視エリアARのX軸方向のサイズを決定し、X軸周り方向の相対傾斜角度θxに応じて監視エリアARのY軸方向のサイズを決定する。そして、エリア設定部32は、これらの決定したサイズを有する領域として監視エリアARを設定する。
【0103】
この場合、例えば、r+Dx≦R1であり、且つ、s+Dy>Y1である場合には、監視エリアARは、例えば
図5Aに例示するごとき形状のエリアとして設定され、r+Dx>R1であり、且つ、s+Dy≦Y1である場合には、監視エリアARは、例えば
図5Bに例示するごとき形状のエリアとして設定される。また、r+Dx≦R1であり、且つ、s+Dy≦Y1である場合には、監視エリアARは、例えば
図5Cに例示するごとき形状のエリアとして設定される。
【0104】
これにより、監視エリアARとして基準エリアAR1を設定すると、該基準エリアAR1に周辺地面Graが含まれることになることが推定される場合には、監視エリアARは、周辺地面Graを含まないように、基準エリアAR1から修正される。この場合、監視エリアARは、基準エリアAR1のうちの周辺地面Gra寄りの部分を除去した形状のエリアとなる。
【0105】
なお、
図5Aに示した例では、監視エリアARの後部を円弧状に形成したが、円弧状でなくてもよい。例えば、監視エリアARの後部を、基準エリアAR1の後部のうち、基準点P0からの距離(X軸方向での距離)がR2よりも大きい部分だけを切り欠いたような形状にしてもよい。このことは、
図5Cに示す例でも同様である。
【0106】
ここで、本実施形態と本発明との対応関係について補足すると、本実施形態では、上記最小距離Dx,Dyは、本発明における第1距離の推定値に相当する。この場合、旋回体3がその後部が周辺地面Graに近づくように該周辺地面Graに対して傾斜している状況では、旋回体3の後端が、機体(旋回体3)の外周面のうち、周辺地面Graに最も近い部分に相当し、旋回体3の後端から監視エリアARの後端までの距離(=Dx−bx)が、当該最も近い部分から監視エリアARの外周境界までの距離に相当する。
【0107】
また、旋回体3がその右側(又は左側)の側部が周辺地面Graに近づくように該周辺地面Graに対して傾斜している状況では、旋回体3の右端(又は左端)が、機体(旋回体3)の外周面のうち、周辺地面Graに最も近い部分に相当し、旋回体3の右端(又は左端)から監視エリアARの右端(又は左端)までの距離(=Dy−by)が、当該最も近い部分から監視エリアARの外周境界までの距離に相当する。
【0108】
また、旋回体3がその後部が周辺地面Graに近づくように該周辺地面Graに対して傾斜している状況での前記式(2b)の不等式と、旋回体3がその右側又は左側の側部が周辺地面Graに近づくように該周辺地面Graに対して傾斜している状況での前記式(4b)の不等式とが、それぞれ本発明における所定の条件に相当する。
【0109】
以上説明した本実施形態では、上記の如く監視エリアARが設定されるので、該監視エリアARとして基準エリアAR1を設定しても、該監視エリアARに周辺地面Graが含まれないと推定し得る状況では、基準エリアAR1がそのまま監視エリアARとして設定される。このため、旋回体3の周囲の障害物を好適なサイズ及び形状の監視エリアARで検出することができる。
【0110】
また、周辺地面Graに対する旋回体3の傾斜に起因して、監視エリアARとして基準エリアAR1を設定すると、該監視エリアARに周辺地面Graが含まれてしまうことが推定される状況では、監視エリアARは、周辺地面Graを含まないものとなるように、基準エリアAR1の周辺地面Gra寄りの部分を除去したエリアとして設定される。このため、障害物検出部33により周辺地面Graが障害物として検出されてしまうのを防止し、ひいては、障害物対応処理部34による対応処理が頻繁に実行されてしまうのを防止することができる。
【0112】
次に、本発明の第2実施形態を
図6及び
図7を参照して説明する。なお、本実施形態は、エリア設定部32の処理だけが第1実施形態と相違するものであるので、その相違事項をを中心に説明し、第1実施形態と同一の事項については説明を省略する。
【0113】
前記第1実施形態では、基準エリアAR1のうち、旋回体3の後端からの距離(X軸方向での距離)が、周辺地面Graまでの最小距離Dxを超える部分や、旋回体3の右端又は左端からの距離(Y軸方向での距離)が、周辺地面Graまでの最小距離Dyを超える部分は、周辺地面Graの外側(空中側)に存在する部分を含めて監視エリアARに含まれないように該監視エリアARを設定した。
【0114】
これに対して、本実施形態では、基準エリアAR1のうち、周辺地面Graの外側(空中側)に存在する部分が極力、監視エリアARに含まれるように該監視エリアARを設定する。このため、本実施形態では、エリア設定部32は、X軸及びY軸の各軸周りの相対傾斜角度の一方又は両方の大きさが、第1実施形態で説明した所定の閾値よりも大きい場合に、Y軸周り方向の相対傾斜角度θy(推定値)に応じて監視エリアARの後部の境界を決定し、X軸周り方向の相対傾斜角度θx(推定値)に応じて監視エリアARの側部の境界を決定する。
【0115】
監視エリアARの後部の境界を決定する処理は、例えば次にように行われる。
図6を参照して、Y軸周り方向の相対傾斜角度θyが、図示の如く、旋回体3の後部を周辺地面Graに近づける方向の角度であり、且つ、前記式(2b)に係る不等式条件(r+Dx≦R1という条件)が成立する場合には、エリア設定部32は、油圧ショベル1をY軸方向で見た場合(旋回体座標系のZX座標平面に投影して見た場合)における監視エリアARの後部の境界線として、周辺地面Graに相当するラインから周辺地面Graの外側に一定のオフセットを有するラインを決定する。
【0116】
一例として、エリア設定部32は、
図6に示す如く、周辺地面Graに相当するラインから、X軸方向で前記マージン定数bxだけオフセットさせたラインLcを、監視エリアARの後部の境界線として決定する。この場合、ラインLc(以降、境界線Lcということがある)は、前記基準点P0を旋回体座標系の原点とした場合、該旋回体座標系のZX座標系面において、次式(5)により表される。
【0117】
Z=(X−R2)・tan(θy)+z0 ……(5)
【0118】
なお、R2は、前記式(2b)により算出される値である。また、z0は、旋回体3の下端面(Z軸方向での下端面)のZ軸座標位置であり、コントローラ30にあらかじめ記憶保持されている。
【0119】
そして、エリア設定部32は、Y軸方向で見た監視エリアARを、基準エリアAR1のうち、次式(6)の不等式を満たす領域として決定する。
【0120】
Z≧(X−R2)・tan(θy)+z0 ……(6)
【0121】
なお、Y軸周り方向の相対傾斜角度θyが、旋回体3の後部を油圧ショベル1の周辺地面Graに近づける方向の角度であり、且つ、前記式(2b)に係る不等式条件が成立しない場合(r+Dx>R1である場合)、あるいは、Y軸周り方向の相対傾斜角度θyが、旋回体3の後部を油圧ショベル1の周辺地面Graから遠ざける方向の角度である場合には、エリア設定部32は、第1実施形態と同様に、Y軸方向で見た監視エリアARを、基準エリアAR1と同じにする。
【0122】
また、
図7を参照して、X軸周り方向の相対傾斜角度θxが、図示の如く、旋回体3の左右の側部のうち、例えば右側の側部を周辺地面Graに近づける方向の角度であり、且つ、前記式(4b)に係る不等式条件(s+Dy≦Y1という条件)が成立する場合には、エリア設定部32は、油圧ショベル1をX軸方向で見た場合(旋回体座標系のYZ座標平面に投影して見た場合)における監視エリアARの右側部の境界線として、周辺地面Graに相当するラインから、周辺地面Graの外側に一定のオフセットを有するラインを決定する。
【0123】
一例として、エリア設定部32は、
図7に示す如く、周辺地面Graに相当するラインから、Y軸方向で前記マージン定数byだけオフセットさせたラインLdを、監視エリアARの右側部の境界線として決定する。この場合、ラインLd(以降、境界線Ldということがある)は、旋回体座標系(前記基準点P0を原点とする旋回体座標系)のYZ座標系面において、次式(7)により表される。
【0124】
Z=(Y−Y2)・tan(θx)+z0 ……(7)
【0125】
なお、Y2は、前記式(4b)により算出される値であり、z0は、式(5)に示したものと同じである。
【0126】
そして、エリア設定部32は、X軸方向で見た監視エリアARを、基準エリアAR1のうち、次式(8)の不等式を満たす領域として決定する。
【0127】
Z≧(Y−Y2)・tan(θx)+z0 ……(8)
【0128】
なお、X軸周り方向の相対傾斜角度θxが、旋回体3の左側の側部を周辺地面Graに近づける方向の角度であり、且つ、前記式(4b)に係る不等式条件(s+Dy≦Y1という条件)が成立する場合も、上記と同様に、X軸方向で見た監視エリアARが決定される。
【0129】
また、旋回体3が周辺地面Graに対して左右いずれに傾いている場合でも、前記式(4b)に係る不等式条件が成立しない場合(s+Dx>Y1である場合)には、エリア設定部32は、第1実施形態と同様に、X軸方向で見た監視エリアARを、基準エリアAR1と同じにする。
【0130】
本実施形態では、以上の如く、エリア設定部32は、基準エリアAR1に周辺地面Graが含まれることが推定される場合に、Y軸周り方向の相対傾斜角度θyに応じて、Y軸方向で見た監視エリアARの後部の境界線Lcを決定し、X軸周り方向の相対傾斜角度θxに応じて、X軸方向で見た監視エリアARの側部の境界線Ldを決定する。これらの境界線Lc,Ldは、周辺地面Graと所定のオフセットを有して該周辺地面Graと平行な直線として決定される。
【0131】
そして、エリア設定部32は、基準エリアAR1のうち、境界線Lc,Ldの上側の領域を、監視エリアARとして設定する。この場合、例えば、r+Dx≦R1であり、且つ、s+Dy>Y1である場合には、監視エリアARは、基準エリアAR1のうち、式(6)の不等式条件を満たす領域とされ、r+Dx>R1であり、且つ、s+Dy≦Y1である場合には、監視エリアARは、基準エリアAR1のうち、式(8)の不等式条件を満たす領域とされる。また、r+Dx≦R1であり、且つ、s+Dy≦Y1である場合には、監視エリアARは、基準エリアAR1のうち、式(6)及び式(8)の両方の不等式条件を満たす領域とされる。
【0132】
このため、Y軸方向及びX軸方向のそれぞれの方向で見た監視エリアARの周辺地面Gra寄りの部分は、基準エリアAR1のうち、周辺地面Graと重なる領域(周辺地面Graの内側に入り込む領域)を除去した形状に近似する形状になるように監視エリアARが設定される。
【0133】
なお、前記マージン定数bx,byを十分に微小な値に設定しておけば、Y軸方向及びX軸方向のそれぞれの方向で見た監視エリアARの周辺地面Gra寄りの部分が、基準エリアAR1のうち、周辺地面Graと重なる領域(周辺地面Graの内側に入り込む領域)を除去した形状にほぼ一致する形状になるように監視エリアARを設定することも可能である。
【0134】
本実施形態は以上説明した事項以外は第1実施形態と同じである。かかる本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。加えて、本実施形態では、監視エリアARとして基準エリアAR1を設定すると、該基準エリアAR1に周辺地面Graが含まれることになることが推定される場合には、監視エリアARが、周辺地面Graを含まず、且つ、基準エリアAR1のうちの周辺地面Graの外側の部分を極力含むように該監視エリアARを設定することができる。
【0135】
このため、障害物検出部33により周辺地面Graが障害物として検出されるのを防止することができると共に、周辺地面Gra以外の実際の障害物を、監視エリアARとして基準エリアAR1を設定した場合と同様に検知することができる。従って、障害物の検出漏れを極力防止することができる。
【0137】
次に、本発明の第3実施形態を説明する。なお、本発明は、前記第1実施形態又は第2実施形態と、傾斜情報取得部31の処理だけが第1実施形態と相違するものであるので、その相違事項を中心に説明し、第1実施形態又は第2実施形態と同一の事項については説明を省略する。
【0138】
本実施形態では、傾斜情報取得部31は、油圧ショベル1の動作環境の地面の傾斜角度が所々でばらつきを有するような場合でも、油圧ショベル1の周辺地面Graに対する相対的な傾斜状態を示す傾斜情報としての相対傾斜角度の推定値を取得し得るように構成されている。
【0139】
具体的には、本実施形態では、傾斜情報取得部31は、走行体2の走行動作中に、該走行体2が、例えば所定の単位距離だけ移動する毎に、旋回体3の現在の傾斜角度を示す検出データ(傾斜センサ21の検出データ)と、旋回体3の現在の旋回角度を示す検出データと、走行体2の現在の進行方向を示す検出データとを取得し、これらの検出データの組を時系列的に記憶保持する。なお、走行体2の現在の進行方向は、例えばGNNS(Global Navigation Satellite System)の受信信号等を用いて検出され得る。
【0140】
そして、傾斜情報取得部31は、傾斜角度、旋回角度及び進行方向の新たに取得した検出データと、前回取得した検出データ(又は過去の複数回分の検出データ)とに基づいて、走行体2の現在位置の直前の移動経路上での、旋回体3の傾斜角度の変化量(現在の旋回体3の旋回角度に対応する旋回体座標系で見た変化量)を推定し、その推定値を、前記相対傾斜角度の推定値として取得する。
【0141】
本実施形態は、以上説明した事項以外は、前記第1実施形態又は第2実施形態と同じである。かかる本実施形態によれば、第1実施形態又は第2実施形態と同様の効果を奏することができる。また、油圧ショベル1の動作環境の地面の傾斜角度が所々でばらつきを有するような場合でも、周辺地面Graに対する旋回体3の相対傾斜角度を高い信頼性で推定することができる。ひいては、油圧ショベル1の動作環境の地面の実際の形状に整合させて、監視エリアARを適切に設定することができる。
【0143】
次に、本発明の第4実施形態を
図8を参照して説明する。なお、本発明は、前記第1実施形態又は第2実施形態と、傾斜情報取得部31の処理だけが第1実施形態と相違するものであるので、その相違事項を中心に説明し、第1実施形態又は第2実施形態と同一の事項については説明を省略する。
【0144】
本実施形態では、油圧ショベル1には、
図8に示す如く、傾斜センサ21の代わりに、GNSS受信機24が備えられ、このGNSS受信機24で受信されだGNNS信号(油圧ショベル1の位置や移動速度を示す信号)がコントローラ30に入力される。
【0145】
また、本実施形態では、コントローラ30の傾斜情報取得部31は、油圧ショベル1の動作環境の3次元の地形データが記憶保持した地形データ記憶部31aを含む。なお、地形データは、外部のサーバ等から随時、コントローラ30にダウンロードし得るようになっていてもよい。
【0146】
そして、傾斜情報取得部31は、所定の演算処理周期毎に、GNSS受信機24から入力されるGNNS信号に基づいて、油圧ショベル1の現在位置と進行方向(走行体2の向き)とを特定し、これらの現在位置及び進行方向と、上記地形データと、旋回体3の現在の旋回角度の検出値とから、現在位置における油圧ショベル1の周辺地面Graに対する旋回体3の相対傾斜角度(旋回体3の現在の旋回角度に対応する旋回体座標系で見た相対傾斜角度)を推定する。
【0147】
本実施形態は、以上説明した事項以外は、前記第1実施形態又は第2実施形態と同じである。かかる本実施形態によれば、第1実施形態又は第2実施形態と同様の効果を奏することができる。また、油圧ショベル1の動作環境の種々様々な地形において、油圧ショベル1の任意の移動位置で、地面Graに対する旋回体3の相対傾斜角度を高い信頼性で推定することができる。ひいては、油圧ショベル1の動作環境の地面の実際の形状に整合させて、監視エリアARを適切に設定することができる。
【0148】
なお、以上説明した第1〜第4実施形態では、旋回体3の全体を旋回軸Czの方向で地面に投影してなる領域を、油圧ショベル1の存在領域とした。ただし、例えば旋回体3の全体を旋回軸Czの方向で地面に投影してなる領域、あるいは、旋回体3及び走行体2の全体を、旋回軸Czの方向で地面に投影してなる領域を油圧ショベル1の存在領域とみなしてもよい。
【0149】
また、前記第1〜第4実施形態では、油圧ショベル1をY軸方向で見た場合と、X軸方向で見た場合とで各別に監視エリアARのサイズや境界を決定するようにした。ただし、例えば、相対傾斜角度の推定値に基づいて、旋回体座標系で見た周辺地面Graを近似する3次元平面を特定し、この3次元平面が基準エリアAR1の空間領域(3次元領域)に含まれる場合に、該3次元平面が、監視エリアARの空間領域(3次元領域)に含まれないように、該監視エリアARの空間形状及びサイズを設定するようにすることも可能である。
【0150】
また、前記第1〜第4実施形態では、建設機械として油圧ショベル1を例示した。ただし、本発明は、油圧ショベルに限らず、機械周囲に位置する障害物を検知する機能を有する各種建設機械に広く適用することができる。また、本発明における建設機械の機体は、走行体に対して旋回しないようになっていてもよい。例えば、機体は走行体のフレームに固定されたものであってもよい。
【0151】
また、前記第1〜第4実施形態では、障害物検知用センサ23を油圧ショベル1(建設機械)に搭載したが、監視エリアARに存在する障害物を、油圧ショベル1(建設機械)の外部のカメラ等のセンサを用いて検出するようにしてもよい。
【0152】
また、コントローラ30の少なくとも一部の処理を、油圧ショベル1(建設機械)の外部のコンピュータ等により実行するようにしてもよい。