特許第6900965号(P6900965)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6900965
(24)【登録日】2021年6月21日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】長尺物振れ検出装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/02 20060101AFI20210701BHJP
   B66B 5/12 20060101ALI20210701BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20210701BHJP
   G01B 11/26 20060101ALI20210701BHJP
【FI】
   B66B5/02 C
   B66B5/12 A
   G01B11/00 A
   G01B11/26 Z
【請求項の数】7
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2019-49177(P2019-49177)
(22)【出願日】2019年3月15日
(65)【公開番号】特開2020-132426(P2020-132426A)
(43)【公開日】2020年8月31日
【審査請求日】2020年3月4日
(31)【優先権主張番号】201910124896.7
(32)【優先日】2019年2月19日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100191189
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100176016
【弁理士】
【氏名又は名称】森 優
(74)【代理人】
【識別番号】100199761
【弁理士】
【氏名又は名称】福屋 好泰
(74)【代理人】
【識別番号】100182121
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 紘子
(72)【発明者】
【氏名】中川 淳一
(72)【発明者】
【氏名】大野 佑輔
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 功一
(72)【発明者】
【氏名】劉 紅軍
【審査官】 須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−097871(JP,A)
【文献】 特開2010−254476(JP,A)
【文献】 特開平11−043271(JP,A)
【文献】 特開2018−154494(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/02
B66B 5/12
G01B 11/00
G01B 11/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの昇降路内に吊り下げられた長尺物の横振れの大きさを検出する長尺物振れ検出装置であって、
前記昇降路内に設置され、その設置位置を含む昇降路内の水平面を一定の時間間隔で走査して、前記水平面に存する昇降路内の物体の前記設置位置からの方向と距離を計測し、当該方向と距離を位置データとして出力する測域センサと、
前記測域センサから出力される位置データを、前記水平面上に採った座標平面における座標データに変換する変換手段と、
前記座標平面において、前記長尺物を囲繞する検出枠を設定する検出枠設定手段と、
前記測域センサの1回の走査で得られる複数の前記座標データの内、前記検出枠内に存する座標データ群の前記座標平面における中心座標を検出する検出手段と、
前記検出手段で検出される前記中心座標から、前記長尺物が横振れしたときの当該横振れの前記水平面における振幅を割り出す割出手段と、
を有し、
前記検出枠設定手段は、
前記検出手段がn回目(nは正の整数)の走査において検出した前記中心座標、(n+1)回目の走査において検出した前記中心座標、および前記時間間隔から、(n+2)回目の走査における前記座標データ群の中心座標を予測し、当該予測した中心座標に対応する位置に前記検出枠を移動させて、前記座標平面上の位置を更新することを特徴とする長尺物振れ検出装置。
【請求項2】
前記長尺物が静止している状態で、前記座標平面上において当該長尺物を囲繞する検出枠を記憶する初期検出枠記憶部を有し、
前記検出枠設定手段は、
前記長尺物に横振れが生じる前における前記測域センサの一の走査を1回目とし、1回目と2回目の走査では、前記初期検出枠記憶部に記憶されている検出枠を前記長尺物を囲繞する検出枠として設定することを特徴とする請求項1に記載の長尺物振れ検出装置。
【請求項3】
前記座標平面における、前記検出枠内に存する前記座標データ群の中心座標と前記長尺物の中心座標とは対応関係にあり、
前記検出枠は、前記測域センサの一の走査から次の走査の間に想定される最大に前記長尺物が変位した場合に、前記次の走査のときに、前記一の走査の結果得られた前記座標データ群の中心座標に対応する検出枠内に当該長尺物が入り得る最小の大きさに設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の長尺物振れ検出装置。
【請求項4】
前記測域センサの3回目以降の走査において、前記検出手段によって前記検出枠内に前記長尺物の座標データ群が検出されない場合、
前記検出枠設定手段は、前記検出枠を前記初期検出枠記憶部に記憶されている検出枠にリセットし、前記検出手段によって座標データ群が検出されるのを待って、当該検出枠の更新を再開することを特徴とする請求項3に記載の長尺物振れ検出装置。
【請求項5】
前記測域センサの3回目以降の走査において、前記検出手段によって前記検出枠内に前記長尺物の座標データ群が検出されない場合、
前記検出枠設定手段は、前記検出枠を一時的に拡大し、前記検出手段によって座標データ群が検出されるのを待って、当該検出枠を元の大きさに戻すことを特徴とする請求項3に記載の長尺物振れ検出装置。
【請求項6】
前記水平面に存する固定物の、前記座標平面上における存在領域を記憶する固定物存在領域記憶部を有し、
前記検出手段は、前記測域センサの1回の走査で得られる前記複数の座標データから前記固定物存在領域内の座標データを除いた残りの座標データの内、前記検出枠内に存する座標データ群の前記座標平面における中心座標を検出することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の長尺物振れ検出装置。
【請求項7】
前記エレベータは、かごと釣合おもりとが主ロープ群でつるべ式に吊り下げられると共に、前記かごと前記釣合おもりとの間に釣合ロープ群が垂下され、前記かごと前記釣合おもりとが前記昇降路内を反対向きに昇降する構成とされたエレベータであり、
前記長尺物は、前記主ロープ群または前記釣合ロープ群を構成する複数本のロープであって、
前記検出手段で検出される中心座標は、前記複数本のロープの検出結果である座標データ群の中心座標であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の長尺物振れ検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺物振れ検出装置に関し、特に、エレベータが設置された建物が地震等により揺れるのに起因して生じる主ロープ、釣合ロープその他の長尺物の振れを検出する長尺物振れ検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建築物の高層化が進むにつれ、ロープ式エレベータにおいて、地震や強風による建物の揺れに伴う主ロープ等の振れが問題になっている。
【0003】
例えば、長周期地震動により建物が揺れると、昇降路内において建物最上部からかごを吊下げている主ロープやかごから垂下されている釣合ロープ(以下、本欄および[発明が解決しようとする課題]欄において、主ロープと釣合ロープを総称して、単に「ロープ」とする。)が、建物の揺れとほぼ同じ向きに、水平方向に振れる(以下、この水平方向のロープの振れを「横振れ」と称する。)。
【0004】
この場合、横振れの大きさに応じた管制運転が実施される。ここで、ロープの横振れの大きさが、ある閾値を超えたか否かを検出するロープ振れ検出装置が特許文献1に開示されている。
【0005】
特許文献1のロープ振れ検出装置は、投光器と受光器が1組となったセンサを有している。このセンサを第1のロープ横振動センサ12とし、特許文献1の段落[0028]、[0029]において、
図4図1の第1のロープ横振動センサ12の第1の例を示す平面図である。この例では、第1のロープ横振動センサ12は、検出光20を投光する投光器21と、検出光20を受光する受光器22とを有している。投光器21及び受光器22は、真上から見てかご7の幅方向(図のY軸方向)の両側に配置されている。検出光20は、かご7の幅方向に平行かつ水平に投光されている。
かご7の前後方向(図のX軸方向)への主ロープ6の横振動の振幅が予め設定された振幅閾値に達すると、検出光20が遮断される。即ち、この例では、主ロープ6の横振動に応じて断続的なON/OFF信号が出力される。上記のように2つの振幅閾値を設定する場合には、主ロープ6から検出光20までの距離が異なるように、2組の投光器21及び受光器22が配置される。』
と記されている。
【0006】
特許文献1のロープ振れ検出装置によれば、主ロープ6のX軸方向の横振れの大きさの程度を2段階で検出することが可能となる。
【0007】
また、特許文献1には、第2の例として、図5に、投光器21と受光器22をかご7の前後方向(図のX軸方向)両側に設置した例が開示されている。
【0008】
よって、特許文献1の図4図5、およびこれらの図に関する記載から、特許文献1のロープ振れ検出装置によれば、かご7の前後方向(図4のX軸方向)と幅方向(図5のY軸方向)に振れる主ロープ6の横振れの大きさの程度をそれぞれ2段階で検出することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2014−156298号公報(特許第5791645号)
【特許文献2】特開2006−124102号公報(特許第4773704号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記したように、ロープは建物の揺れの向きとほぼ同じ向きに振れるため、ロープの振れの方向は、かごの幅方向と前後方向に限られない。よって、特許文献1のセンサ(投光器と受光器の1組)を用いて、上記方向以外のロープの横振れを検出しようとすると、さらに多くのセンサが必要となる。
【0011】
また、昇降路内に吊り下げられている長尺物は、主ロープや前記釣合ロープの他にもガバナロープやトラベリングケーブルがある。特許文献1に記載の技術を用いて、これら長尺物各々の横振れも検出しようとすると、長尺物毎に対応させてさらにセンサを設けることが考えられるが、この場合、狭い昇降路内に多くの検出光20が輻湊することとなる。このため、ある長尺物の検出のための検出光20を他の長尺物が遮断してしまう事態が起こり、長尺物個々の確実な検出が困難となる。
【0012】
本発明は、上記した課題に鑑み、可能な限り確実に、検出対象とする長尺物のあらゆる方向の横振れの大きさを検出することが可能な長尺物振れ検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するため、本発明に係る長尺物振れ検出装置は、エレベータの昇降路内に吊り下げられた長尺物の横振れの大きさを検出する長尺物振れ検出装置であって、前記昇降路内に設置され、その設置位置を含む昇降路内の水平面を一定の時間間隔で走査して、前記水平面に存する昇降路内の物体の前記設置位置からの方向と距離を計測し、当該方向と距離を位置データとして出力する測域センサと、前記測域センサから出力される位置データを、前記水平面上に採った座標平面における座標データに変換する変換手段と、前記座標平面において、前記長尺物を囲繞する検出枠を設定する検出枠設定手段と、前記測域センサの1回の走査で得られる複数の前記座標データの内、前記検出枠内に存する座標データ群の前記座標平面における中心座標を検出する検出手段と、前記検出手段で検出される前記中心座標から、前記長尺物が横振れしたときの当該横振れの前記水平面における振幅を割り出す割出手段と、を有し、前記検出枠設定手段は、前記検出手段がn回目(nは正の整数)の走査において検出した前記中心座標、(n+1)回目の走査において検出した前記中心座標、および前記時間間隔から、(n+2)回目の走査における前記座標データ群の中心座標を予測し、当該予測した中心座標に対応する位置に前記検出枠を移動させて、前記座標平面上の位置を更新することを特徴とする。
【0014】
また、前記長尺物が静止している状態で、前記座標平面上において当該長尺物を囲繞する検出枠を記憶する初期検出枠記憶部を有し、前記検出枠設定手段は、前記長尺物に横振れが生じる前における前記測域センサの一の走査を1回目とし、1回目と2回目の走査では、前記初期検出枠記憶部に記憶されている検出枠を前記長尺物を囲繞する検出枠として設定することを特徴とする。
【0015】
また、前記座標平面における、前記検出枠内に存する前記座標データ群の中心座標と前記長尺物の中心座標とは対応関係にあり、前記検出枠は、前記測域センサの一の走査から次の走査の間に想定される最大に前記長尺物が変位した場合に、前記次の走査のときに、前記一の走査の結果得られた前記座標データ群の中心座標に対応する検出枠内に当該長尺物が入り得る最小の大きさに設定されていることを特徴とする。
【0016】
さらに、前記測域センサの3回目以降の走査において、前記検出手段によって前記検出枠内に前記長尺物の座標データ群が検出されない場合、前記検出枠設定手段は、前記検出枠を前記初期検出枠記憶部に記憶されている検出枠にリセットし、前記検出手段によって座標データ群が検出されるのを待って、当該検出枠の更新を再開することを特徴とする。
【0017】
あるいは、前記測域センサの3回目以降の走査において、前記検出手段によって前記検出枠内に前記長尺物の座標データ群が検出されない場合、前記検出枠設定手段は、前記検出枠を一時的に拡大し、前記検出手段によって座標データ群が検出されるのを待って、当該検出枠を元の大きさに戻すことを特徴とする。
【0018】
また、さらに、前記水平面に存する固定物の、前記座標平面上における存在領域を記憶する固定物存在領域記憶部を有し、前記検出手段は、前記測域センサの1回の走査で得られる前記複数の座標データから前記固定物存在領域内の座標データを除いた残りの座標データの内、前記検出枠内に存する座標データ群の前記座標平面における中心座標を検出することを特徴とする。
【0019】
また、前記エレベータは、かごと釣合おもりとが主ロープ群でつるべ式に吊り下げられると共に、前記かごと前記釣合おもりとの間に釣合ロープ群が垂下され、前記かごと前記釣合おもりとが前記昇降路内を反対向きに昇降する構成とされたエレベータであり、前記長尺物は、前記主ロープ群または前記釣合ロープ群を構成する複数本のロープであって、前記検出手段で検出される中心座標は、前記複数本のロープの検出結果である座標データ群の中心座標であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
上記の構成からなる本発明に係る長尺物振れ検出装置によれば、設置位置を含む昇降路内の水平面を一定の時間間隔で走査する測域センサから、前記水平面に存する物体の前記設置位置からの方向と距離が位置データとして出力され、当該位置データは、前記水平面上に採った座標平面における座標データに変換される。
【0021】
一方、前記座標平面において、昇降路内に吊り下げられた長尺物を囲繞する検出枠が設定され、測域センサの1回の走査で得られる複数の座標データの内、前記検出枠内に存する座標データ群の中心座標が検出され、当該中心座標から、前記長尺物が横振れしたときの当該横振れの前記水平面における振幅が割り出される。
【0022】
ここで、n回目(nは正の整数)の走査において検出された前記中心座標、(n+1)回目の走査において検出された前記中心座標、および前記時間間隔から、(n+2)回目の走査における前記座標データ群の中心座標が予測され、当該予測された中心座標に対応する位置に前記検出枠は移動されて、前記座標平面上の位置が更新される。これにより、可能な限り確実に、検出対象とされる長尺物が前記検出枠で特定されて、あらゆる方向の横振れの大きさを検出することができることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施形態に係る長尺物振れ検出装置を有するエレベータの概略構成を示す図である。
図2】上記エレベータにおける各種ロープの掛け方(ローピング)の一例を示す図である。
図3】主ロープ群を構成する複数本の主ロープの配列の一例を説明するための概念図である。
図4】上記長尺物振れ検出装置の構成要素である測域センサの上部近傍で切断した昇降路内を示す平面図であり、前記測域センサの下方にかごが停止している状態を示す図である。
図5】上記長尺物振れ検出装置の構成要素である測域センサの上部近傍で切断した昇降路内を示す平面図であり、前記測域センサの上方にかごが停止している状態を示す図である。
図6】(a)は制御回路ユニットの機能ブロック図であり、(b)は長尺物振れ量検出部の詳細な機能ブロック図である。
図7】(a)は、図4に示す状態で、上記測域センサの1回の走査で検出された物体の座標データをプロットした図であり、(b)は、図5に示す状態で、上記測域センサの1回の走査で検出された物体の座標データをプロットした図である。
図8】(a)は、上記制御回路ユニットの不要座標排除部によって、図7(a)に示す座標データから不要な座標データを排除した結果を示す図であり、(b)は、上記制御回路ユニットの不要座標排除部によって、図7(b)に示す座標データから不要な座標データを排除した結果を示す図である。
図9】(a)は、検出枠を示す図であり、(b)は、前記検出枠の座標平面上の位置の更新を説明するための図であり、(c)は、前記検出枠の大きさを説明するための図である。
図10図8(a)に示す複数の座標データの内の、かご側主ロープ部分に該当する座標データ群の中心座標を所定時間モニタリングした結果(当該所定時間中の複数回に亘る走査結果)を示す図であり、(a)は前記中心座標が直線的に変位した場合、(b)は前記中心座標が楕円状に変位した場合をそれぞれ示している。
図11】上記測域センサとは性能の異なる測域センサを用いて、かご側主ロープ部分を走査した結果得られた座標データ群を示す図であり、(a)は当該座標データ群と上記検出枠の関係を示し、(b)は当該座標データ群と前記検出枠とは別の検出枠の関係を示している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る長尺物振れ検出装置の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図において、構成要素間の尺度は、必ずしも統一していない。
【0025】
図1は、実施形態に係る長尺物振れ検出装置の構成要素である測域センサ50,52を有するエレベータ10が収納された昇降路12内を乗り場(不図示)側から見た正面図であり、図2は、エレベータ10の右側面図である。なお、図2おいて、測域センサ50,52の図示は省略している。
【0026】
図1図2に示すように、エレベータ10は駆動方式としてトラクション方式を採用したロープ式エレベータである。昇降路12最上部よりも上の建物14部分に機械室16が設けられている。機械室16には、巻上機18とそらせ車20が設置されている。巻上機18を構成する綱車22とそらせ車20には、複数本の主ロープが巻き掛けられている。この複数本の主ロープを「主ロープ群24」と称することとする(なお、図1において、主ロープ群24は正確な本数で記載していない。)。
【0027】
主ロープ群24の一端部にはかご26が連結されており、他端部には釣合いおもり28が連結されていて、かご26と釣合おもり28とが主ロープ群24でつるべ式に吊り下げられている。
【0028】
かご26と釣合おもり28との間には、最下端に釣合車30が掛けられた複数本の釣合ロープが垂下されている。この複数本の釣合ロープを「釣合ロープ群32」と称することとする。本例では、主ロープ群24を構成する主ロープの本数と釣合ロープ群32を構成する釣合ロープの本数は同数(本例では、6本)である。主ロープと釣合ロープの径は、一般的に、10mm〜20mmである。なお、主ロープ群24を構成する主ロープの本数と、釣合ロープ群32を構成する本数は、上記の本数に限らず、エレベータの仕様に応じて任意に選択される。
【0029】
かご26の下端部からはトラベリングケーブル34が垂下されていて、トラベリングケーブル34のかご26とは反対側の端部は、昇降路12の上下方向における中程の側壁に設置されたケーブル接続箱(不図示)に接続されている。すなわち、トラベリングケーブル34は、かご26の下端部と前記ケーブル接続箱との間で、細長いU字状に吊り下げられている。トラベリングケーブル34は、かご26と後述する制御盤46との間で電力・信号を伝送するケーブルであり、かご26の動きに合わせて昇降するケーブルである。トラベリングケーブル34としては、一般的には平形ケーブルが用いられ、例えば、その厚みは15mmで幅が100mm程度である。
【0030】
昇降路12内には、一対のかご用ガイドレール36,38と一対の釣合いおもり用ガイドレール40,42とが、上下方向に敷設されている(いずれも、図1図2において不図示、図4図5を参照)。
【0031】
上記の構成を有するエレベータ10において、不図示の巻上機モータにより綱車22が正転または逆転されると、綱車22に巻き掛けられた主ロープ群24が走行し、主ロープ群24で吊り下げられたかご26と釣合おもり28が互いに反対向きに昇降する。また、これに伴って、かご26と釣合おもり28との間に垂下された釣合ロープ群32は、釣合車30において折り返し走行する。さらに、かご26の昇降に伴って、U字状に吊り下げられたトラベリングケーブル34の下端部(折返し部)も上下方向に変位する。
【0032】
機械室16には、巻上機18やそらせ車20の他に、地震や強風に伴って生じる建物14の長周期揺れを検知する長周期振動感知器44が設置されている。
【0033】
機械室16には、また、巻上機18やかご26に設置された各種装置(不図示)に電力を供給する電源ユニット(不図示)、および、前記各種装置を制御する制御回路ユニット48(図6)を有する制御盤46が設置されている。
【0034】
制御回路ユニット48は、CPUにROM、RAMが接続された構成を有している(いずれも、不図示)。前記CPUは、前記ROMに格納された各種制御プログラムを実行することにより、巻上機18などを統括的に制御して、円滑なかごの昇降動作等による通常運転を実現する一方、地震などが発生した場合には、乗客の安全を図るため管制運転を実現する。
【0035】
ここで、図2に示すように、主ロープ群24において、かご26を吊り下げる部分をかご側主ロープ部分24Aと称し、釣合おもり28を吊り下げる部分を釣合おもり側主ロープ部分24Bと称することとする。また、釣合ロープ群32において、かご26から垂下された部分(かご26と釣合車30との間の釣合ロープ群32部分)をかご側釣合ロープ部分32Aと称し、釣合おもり28から垂下された部分(釣合おもり28と釣合車30との間の釣合ロープ群32部分)を釣合おもり側釣合ロープ部分32Bと称することとする。
【0036】
さらに、トラベリングケーブル34において、図1に示すように、かご26から吊り下がっている部分をかご側ケーブル部分34A、前記接続箱から吊り下がっている部分を接続箱側ケーブル部分34Bと称することとする。
【0037】
上記の定義に従えば、主ロープ群24に占めるかご側主ロープ部分24Aと釣合おもり側主ロープ部分24Bの長さ(範囲)、および、釣合ロープ群32に占めるかご側釣合ロープ部分32Aと釣合おもり側釣合ロープ部分32B長さ(範囲)は、かご26および釣合おもり28の昇降位置によって伸縮(変動)する。また、トラベリングケーブル34に占めるかご側ケーブル部分34Aと接続側ケーブル部分34Bの長さ(範囲)もかご26の昇降位置によって伸縮(変動)する。
【0038】
主ロープ群24を構成する複数本(本例では6本)の主ロープM1〜M6の配列について、図3を参照しながら説明する。図3は、綱車22とかご26との間の主ロープ群24部分、すなわち、かご側主ロープ部分24Aを表した概念図である。
【0039】
図3(a)の上図は、綱車22およびかご側主ロープ部分24Aの一部を正面から見た図であり、図3(a)の下図は、かご26を上面から見た図である。図3(a)の下図は、平面視において、主ロープ群24を構成する主ロープM1〜M6のかご26に対する連結位置と主ロープM1〜M6との対応関係を示す図である。図3(b)は、綱車22、かご側主ロープ部分24A、およびかご26の一部を右側方から見た図である。
【0040】
6本の主ロープM1〜M6は、図3(a)の上図に示すように、この順で、綱車22に水平方向(綱車22の軸心方向)に等間隔で巻き掛けられている。また、主ロープM1〜M6は、図3(a)の下図に示すように、この順で、かご26に等間隔で連結されている。
【0041】
ここで、かご26での連結間隔の方が、綱車22における巻き掛け間隔よりも大きくなっている。これは、主ロープM1〜M6端部をかご26へ連結する止め金具(シャックルロッド)の大きさ(外径)の影響による。このため、図3(a)に示すように、主ロープM1〜M6の間隔は、下方に行くほど、僅かではあるが広がっている。
【0042】
なお、釣合おもり側主ロープ部分24Bにおける主ロープM1〜M6の配列の態様も、上記したかご側主ロープ部分24Aと基本的に同様である(図5)。また、釣合ロープ群32を構成する複数本(本例では6本)の釣合ロープC1〜C6に関しても、その折り返し位置が綱車22になるか釣合車30になるかが異なるだけで(すなわち、上下方向が反対になるだけで)、かご側釣合ロープ部分32A、釣合おもり側釣合ロープ部分32Bにおける複数本のロープの配列は、図5図4に各々示すように、基本的に、それぞれ、かご側主ロープ部分24A、釣合おもり側主ロープ部分24Bと同様である。
【0043】
上記の構成を有するエレベータ10が設置される建物14が長周期地震や強風によって揺れると、昇降路12内に吊り下げられた主ロープ群24、釣合ロープ群32、トラベリングケーブル34などの長尺物が横振れする。なお、昇降路12内に吊り下げられた長尺物は、これら以外に、ガバナロープ(不図示)がある。ガバナロープは、言うまでもなく、機械室16に設置された調速機のシーブと昇降路12底部に設けられた張り車との間にエンドレスに張られたロープである(いずれも不図示)。
【0044】
長尺物、例えば、主ロープ群24や釣合ロープ群32の横振れの程度に応じた管制運転を実現するため、横振れの振幅の程度が検出される。
【0045】
当該横振れの振幅を検出するための測域センサ50,52が、図1に示すように、昇降路12の側壁に設置されている。測域センサ50は、上下方向における昇降路12の中央位置に設置されており、測域センサ52は、昇降路12の全長に対して昇降路12の底部から1/4の高さの位置に設置されている。測域センサ50と測域センサ52は、上下方向における設置位置が異なるだけで同じセンサであり、用いられ方も同じである。よって、以下、測域センサ50を代表に説明し、測域センサ52の詳細については省略する。
【0046】
ここで、昇降路12は、図4図5に示すように、本例では、四つの側壁54で囲まれた空間である。この四つの側壁54を区別する必要がある場合は、符号「54」にアルファベットA,B,C,Dを付すこととする。測域センサ50は、側壁54Bに設置されている。また、測域センサ50は、図1図4図5に示すように、かご26および釣合おもり28の昇降経路外に設置されている。
【0047】
測域センサ50は、その設置位置を含む水平面に存する昇降路12内の物体(通常、複数)の当該設置位置からの方向と距離を計測し、当該方向と距離を2次元位置データとして出力する。前記2次元位置データは、極座標形式である。
【0048】
測域センサ50は、例えば、所定角度間隔(例えば、0.125度)でレーザ光を出射して前記水平面を扇状に走査し、出射したレーザ光毎に物体まで往復してくる時間を計測し、距離に換算する光飛行時間測距法(Time of Flight)により、測域センサ50の設置位置から物体までの距離を計測する公知の2次元測域センサ(Laser Range Scanner)である。走査1回当たりの時間(走査時間)は、例えば、25msecであり、1秒当たりの走査回数は40回である。測域センサ50の走査角度αは、図4に示すように180度に近い大きさであり、測域センサ50の設置位置を含む水平面における昇降路12のほぼ全域が走査範囲になっている。
【0049】
かご26が測域センサ50より下方に位置するときは(図1)、図4に示すように、かご側主ロープ部分24A、釣合おもり側釣合ロープ部分32Bが検出対象となり、かご16が測域センサ50より上方に位置するときは、図5に示すように、かご側釣合ロープ部分32A、釣合おもり側主ロープ部分24B、トラベリングケーブル34が検出対象となる。
【0050】
続いて、長周期地震や強風に起因して横振れしているかご側主ロープ部分24A等の長尺物の前記水平面における振幅を検出する方法について説明する。
【0051】
測域センサ50からの前記2次元位置データは、制御回路ユニット48の図6(a)に示す長尺物振れ量検出部60に入力される。制御回路ユニット48は、長尺物振れ量検出部60の他、運転制御部62を含む。運転制御部62は、上述したように、各種装置を制御して前記通常運転や前記管制運転を実現する。
【0052】
極座標形式の2次元位置データは、長尺物振れ量検出部60の図6(b)に示す座標変換部6002によって、前記水平面上に採った座標平面における直交座標(xy直交座標)に変換される。
【0053】
当該直交座標は、例えば、測域センサ50(図7では不図示)の設置位置を原点とする図7(a)、図7(b)に示すようなxy直交座標である。
【0054】
図7(a)には、かご側主ロープ部分24Aおよび釣合おもり側釣合ロープ部分32Bが測域センサ50の走査範囲に入っている状態(図4に示す状態)において一走査で検出された物体の座標(以下、「座標データ」と言う。)がプロットされている。図7(b)には、かご側釣合ロープ部分32A、釣合おもり側主ロープ部分24B、およびトラベリングケーブル34が測域センサ50の走査範囲に入っている状態(図5に示す状態)において一走査で検出された座標データがプロットされている。
【0055】
図7(a)、図7(b)において、プロットされた座標データに対応する物体の符号を括弧付きで記すこととする(図8についても同様)。
【0056】
上述した測域センサ50の検出原理から理解されるように、第1の物体が検出された場合、測域センサ50から見て、第1の物体の背後に隠れた第2の物体(または、その部分)は検出されない。例えば、図7(a)において、側壁54Cの一部が検出されていないのは、当該一部が測域センサ50から見てガイドレール36、釣合おもり側釣合ロープ部分32Bの背後に隠れているからである。また、測域センサ50の本例での設置位置では、釣合おもり用ガイドレール40(図4)は、かご用ガイドレール36の背後に隠れて、全く検出されていない。
【0057】
本例において、必要な座標データは、横振れの検出対象である長尺物の座標データであり、かご用ガイドレール36,38、釣合おもり用ガイドレール40,42、側壁54などの固定物の座標データは、長尺物の特定のためには支障となる。
【0058】
そこで、測域センサ50の走査面(水平面)に存する固定物の、前記座標平面(xy直交座標)上における存在領域を予め記憶しておき、座標変換部6002から出力される座標データから固定物存在領域内の座標データを除いた座標データを長尺物の座標データと見做すこととしている。
【0059】
具体的には、図4図5において、一点鎖線で区画する領域を固定物存在領域F1,F2,F3,F4,F5とする。一点鎖線の四角枠F1,F2,F3,F4の内側は、それぞれ、かご用ガイドレール36,38、釣合おもり用ガイドレール40,42が存在する領域である。また、一点鎖線の四角枠F5の外側は、側壁54が存在する領域である。なお、F1,F2,F3,F4は、四角に限らす、かご用ガイドレール36,38、釣合おもり用ガイドレール40,42の横断面形状に合わせたT字状の枠にしても構わない。
【0060】
四角枠F1,F2,F3,F4,F5の前記座標平面上における位置は、長尺物振れ検出部60の固定物存在領域記憶部6006に記憶されており、四角枠F1,F2,F3,F4の内側と四角枠F5の外側とが固定物存在領域として認識されるように設定されている。
【0061】
長尺物振れ量検出部60の図6(b)に示す不要座標排除部6004は、固定物存在領域記憶部6006に記憶されている前記固定物存在領域を参照し、座標変換部6002から出力される座標データから当該固定物存在領域内の座標データを除いた残りの座標データを出力する。
【0062】
不要座標排除部6004から出力された座標データがプロットされた座標平面を図8(a)、図8(b)に示す。図8(a)では、座標変換部6002から出力される座標データ(図7(a))から、固定物(かご用ガイドレール36,38、釣合おもり用ガイドレール40,42、側壁54)の座標データが排除された残りの座標データ、すなわち、長尺物(本例では、かご側主ロープ部分24A、釣合おもり側釣合ロープ部分32A)の座標データがプロットされている。また、図8(b)では、座標変換部6002から出力される座標データ(図7(b)から、固定物(かご用ガイドレール36,38、釣合おもり用ガイドレール40,42、側壁54)の座標データが排除された残りの座標データ、すなわち、長尺物(本例では、かご側釣合ロープ部分32A、釣合おもり側主ロープ部分24B、トラベリングケーブル34のかご側ケーブル部分34A)の座標データがプロットされている。
【0063】
上述の通り、不要座標排除部6004からは、図8(a)、図8(b)に示すように、複数の長尺物のみの座標データが出力される。これら長尺物各々の横振れの振幅を検出するためには、どの座標データがいずれの長尺物に該当するかを特定する必要がある。
この場合、長尺物が静止しているときはともかく、横振れし始めると、いずれの座標データがいずれの長尺物に対応するかを特定するのは困難である。
【0064】
そこで、本実施形態では、以下のような方法で、個々の長尺物を特定している。
前記座標平面において、長尺物毎に、横振れを開始する前の状態、すなわち静止位置での状態を囲む検出枠を長尺物振れ量検出部60の初期検出枠記憶部6010に記憶している。本例では、かご側主ロープ部分24A(かご側釣合ロープ部分32A)、釣合おもり側釣合ロープ部分32B(釣合おもり側主ロープ部分24B)、およびトラベリングケーブル34のかご側ケーブル部分34A毎に、それぞれ、図4図5に二点鎖線で示すような検出枠W1、検出枠W2、検出枠W3を初期検出枠記憶部6010記憶している。
【0065】
検出枠W1、W2、W3を用いた長尺物の検出方法は、いずれの検出枠でも同様なので、以下、検出枠W1を代表に説明し、検出枠W2、W3については、必要に応じて言及することとする。また、検出枠W1は、かご側主ロープ部分24A(図4)およびかご側釣合ロープ部分32A(図5)の検出に用いるが、いずれの検出方法も同様なので、かご側主ロープ部分24Aを例に説明することとする。
【0066】
図9(a)に示すように、検出枠W1は、本例では方形をしている。検出枠W1は、前記座標平面において、かご側主ロープ部分24Aを囲繞する。
検出枠W1の中心P1は、本例では、静止状態のかご側主ロープ部分24Aの中心座標と一致している。検出枠W1の中心は方形をした検出枠W1の図心(前記方形の対角線の交点)である。かご側主ロープ部分24Aの中心座標は、複数本(本例では6本)の主ロープM1〜M6の前記座標平面上の座標の算術平均で求まる座標であり、設計上定まる座標である。
【0067】
検出枠W1は、かご側主ロープ部分24A(主ロープM1〜M6)を過不足なく囲繞する所定の大きさに設定されている。当該所定の大きさについては後述する。
【0068】
検出枠W1と同様に、釣合おもり側釣合ロープ部分32B(釣合おもり側主ロープ部分24B)、およびトラベリングケーブル34のかご側ケーブル部分34Aの、それぞれに対応する検出枠W2(図4図5)、検出枠W3(図5)が初期検出枠記憶部6010(図6(b))に記憶されている。
【0069】
なお、トラベリングケーブル34において、検出枠W3は、かご側ケーブル部分34Aと接続箱側ケーブル部分34Bの内、図5に示すように、かご側ケーブル部分34Aの方だけを囲繞するように設定している。これは、測域センサ50の本例の設置位置では、主にかご側ケーブル部分34Aが検出され、接続箱側ケーブル部分34Bはその背後に隠れてほとんど検出されないことによる。また、かご側ケーブル部分34Aと接続箱側ケーブル部分34Bは同様の挙動で横振れするため、片方のケーブル部分が検出できれば足りるためである。もちろん、かご側ケーブル部分34Aと接続箱側ケーブル部分34Bの両方が同じように検出できる位置に測域センサ50を設置する場合は、かご側ケーブル部分34Aと接続箱側ケーブル部分34Bの両方を囲繞するように、検出枠W3を設定しても構わない。
【0070】
長尺物振れ量検出部60の中心座標検出部6008は、不要座標排除部6004から出力される座標データを、検出枠設定部6012で設定される検出枠W1、W2、W3内に存する座標データ毎に識別し、当該座標データ毎に処理する。検出枠W1、W2、W3内各々に存する座標データは、通常、複数個になるので、各検出枠W1、W2、W3内の座標データを「座標データ群」と称することとする。
【0071】
中心座標検出部6008は、検出枠W1、W2、W3内各々に存する座標データ群の中心座標R1、R2、R3を検出する。
【0072】
中心座標R1、R2、R3は、対応する座標データ群を構成する複数の座標データの算術平均として検出する。中心座標R1、R2、R3は、本例では、前記座標平面における、かご側主ロープ部分24A(かご側釣合ロープ部分32A)、釣合おもり側釣合ロープ部分32B(釣合おもり側主ロープ部分24B)、およびトラベリングケーブル34のかご側ケーブル部分34A各々の中心座標である。すなわち、中心座標R1、R2、R3は、本例では、かご側主ロープ部分24A(かご側釣合ロープ部分32A)、釣合おもり側釣合ロープ部分32B(釣合おもり側主ロープ部分24B)、およびトラベリングケーブル34のかご側ケーブル部分34A各々の中心座標と対応している。
【0073】
中心座標検出部6008は、検出した中心座標R1、R2、R3を振幅割出部6014と検出枠設定部6012へ出力する。
【0074】
ここで、検出枠設定部6012は、横振れする長尺物の変位に対応させ、当該長尺物を囲繞する位置に検出枠W1、W2、W3を移動させて、前記座標平面上の位置を更新する。
前記座標平面上における位置の更新方法は、検出枠W1、W2、W3のいずれも同様なので、ここでは、検出枠W1を例に、かご側主ロープ部分24Aを検出する場合について説明する。
【0075】
測域センサ50による走査は、エレベータ10の運転開始前から、運転制御部62の指示によって開始される。エレベータ10の運転開始前においては、通常、かご側主ロープ部分24Aは静止していて、横振れは生じていない。この横振れが生じていない状態における測域センサ50の一の走査を1回目の走査とし、1回目と2回目の走査では、検出枠設定部6012は、初期検出枠記憶部6010に記憶されている検出枠W1を読み出して、当該初期の検出枠W1をかご側主ロープ部分24Aを囲繞する検出枠として設定する。もっとも、かご側主ロープ部分24Aは、静止していて、横振れが生じていないといっても、当然のことながら、完全に不動ではなく、建物14の僅かな揺れ等に起因して微動はしているものである。
【0076】
なお、かご側主ロープ部分24Aに横振れが生じていないことは、長周期振動感知器44からの出力結果を参照して確認しても構わない。すなわち、長周期振動感知器44によって、所定の時間、建物14に長周期揺れが生じていないことが確認されると、かご側主ロープ部分24Aにも横振れが生じていないと見做せるからである。
【0077】
初期検出枠記憶部6010に記憶されている検出枠W1は、上述の通り、横振れが生じていないかご側主ロープ部分24Aを囲繞するものなので、中心座標検出部6008は、1回目の走査では、間違いなく、かご側主ロープ部分24Aを特定することができる。また、走査の時間間隔は、上記したように、例えば、25msecと非常に短いため、この間に、
かご側主ロープ部分24Aが初期検出枠記憶部6010に記憶されている検出枠W1から外にはみ出すことはない。
【0078】
中心座標検出部6008は、検出枠設定部6012が設定した検出枠W1(初期検出枠記憶部6010から読みだされた検出枠W1)を利用して、1回目と2回目の走査におけるかご側主ロープ部分24Aの中心座標を検出する。中心座標検出部6008は、検出した中心座標を振幅割出部6014と検出枠設定部6012へ出力する。
【0079】
検出枠設定部6012は、1回目の走査における中心座標、2回目の走査における中心座標、および走査の時間間隔から3回目の走査におけるかご側主ロープ部分24Aの中心座標を予測し、当該予測した中心座標に対応する位置に検出枠W1を移動させて、検出枠W1の前記座標平面上の位置を更新し、3回目の走査におけるかご側主ロープ部分24Aの検出に供する。
【0080】
検出枠設定部6012は、中心座標検出部6008がn回目(nは正の整数)の走査において検出したかご側主ロープ部分24Aの中心座標、(n+1)回目の走査において検出したかご側主ロープ部分24Aの中心座標、および走査の時間間隔から、(n+2)回目の走査におけるかご側主ロープ部分24Aの中心座標を予測し、当該予測した中心座標に対応する位置に検出枠W1を移動させて、前記座標平面上の位置を更新する。
【0081】
このことについて、図9を参照しながら、さらに詳細に説明する。
図9(b)において、n回目と(n+1)回目の走査における検出のために設定された検出枠をそれぞれW1(n)、W1(n+1)とする。また、検出枠W1(n)、W1(n+1)を利用して検出されたかご側主ロープ部分24Aの中心座標をそれぞれR1(n)、R1(n+1)とする。
【0082】
検出枠設定部6012は、中心座標R1(n)と中心座標R1(n+1)から、中心座標R1(n)と中心座標R1(n+1)間の距離、すなわち、n回目の走査から(n+1)回目の走査の間におけるかご側主ロープ部分24Aの移動距離を求める。
【0083】
また、検出枠設定部6012は、中心座標R1(n)から見た中心座標R1(n+1)の方向、すなわち、n回目の走査から(n+1)回目の走査の間におけるかご側主ロープ部分24Aの移動方向を求める。
【0084】
検出枠設定部6012は、前記移動距離と走査の時間間隔から、この間におけるかご側主ロープ部分24Aの平均移動速度(移動距離/時間間隔)を求める。
【0085】
検出枠設定部6012は、当該平均移動速度、走査の時間間隔、および前記移動方向から、(n+2)回目の走査におけるかご側主ロープ部分24Aの中心座標を予測し、検出枠W1を当該予測した中心座標に対応する位置に移動させ、前記座標平面における検出枠W1の位置を更新する(検出枠W1(n+2))。「中心座標に対応する位置」とは、検出枠W1の中心P1(図9(a))が中心座標に一致する位置である。
【0086】
このように、本実施形態では、n回目の走査において検出された中心座標R1(n)、(n+1)回目の走査において検出された中心座標R1(n+1)、および走査の時間間隔から、(n+2)回目の走査におけるかご側主ロープ部分24Aの中心座標が予測され、当該予測された中心座標に対応する位置に検出枠W1が移動されて[検出枠W1(n+2)]、前記座標平面上の位置が更新される。これにより、(n+2)回目の走査において、不要座標排除部6004から出力される座標データ中のかご側主ロープ部分24Aの座標データが検出枠W1(n+2)内の座標データとして特定され、他の長尺物と区別される。
【0087】
ここで、検出枠W1が大きすぎると、横振れ中に、かご側主ロープ部分24A以外の他の長尺物も検出枠W1内に入ってしまうおそれがある。一方、小さすぎると、かご側主ロープ部分24Aが速い速度で変位しているときに、その全部を捉え難くなる。
【0088】
そこで、図9(c)に示すように、検出枠W1は、その中心P1と実線で示すかご側主ロープ部分24Aの中心座標が一致している状態から、走査の時間間隔の間に、破線で示すように、かご側主ロープ部分24Aが想定される最大に変位した状態でも、破線で示したかご側主ロープ部分24Aが検出枠W1内に入り得る、最小の大きさに設定されている。
【0089】
すなわち、検出枠W1の大きさは、かご側主ロープ部分24Aが横振れしているときに、測域センサ50の一の走査[(n+1)回目の走査]から次の走査[(n+2)回目の走査]の間に想定される最大にかご側主ロープ部分24Aが変位した場合でも、前記次の走査[(n+2)回目の走査]のときに、かご側主ロープ部分24Aの前記一の走査[(n+1)回目の走査]の結果得られたかご側主ロープ部分24Aの中心座標R1(n+1)に対応する検出枠W1内に、かご側主ロープ部分24Aが入り得る最小の大きさに設定されている。
【0090】
このような大きさに設定しておけば、図9(b)で説明した、(n+1)回目の走査のときから、かご側主ロープ部分24Aが予測を超えて変位し、その超過した変位量が最大の場合、すなわち上記の最大に変位した場合でもあっても、(n+2)回目の走査のときに、かご側主ロープ部分24Aは、中心座標R(n+1)に対応する検出枠W1内に入っている。ということは、(n+2)回目の走査のときに、かご側主ロープ部分24Aは検出枠W1(n+2)内にも入ることとなるので、(n+2)回目の走査において、かご側主ロープ部分24Aを検出することができるのである。
【0091】
ここで、検出枠W1の大きさは、かご側主ロープ部分24Aにおけるかご26との連結位置近傍の主ロープM1〜M6の配列を基準に設定される。図3を参照しながら説明した通り、この位置おいて、主ロープM1〜M6の間隔が最も拡がっているため、当該位置でのかご側主ロープ部分24Aが囲繞できる大きさであれば足りるからである。
【0092】
上記のようにして、検出枠設定部6012は、検出枠W1の前記座標平面上の位置を更新し、中心座標検出部6008は、検出枠W1内の座標データ群の中心座標、すなわち、かご側主ロープ部分24Aの中心座標R1を検出する。
【0093】
上記の通り、検出枠W1の大きさは、かご側主ロープ部分24Aの設計上の中心座標と検出枠W1の中心P1が一致している状態(対応している状態)で設定している一方、検出枠W1は、現実に検出されたかご側主ロープ部分24Aの中心座標R1(すなわち、検出枠W1内の座標データ群の中心座標)に基づいて更新している。かご側主ロープ部分24Aを構成する主ロープM1〜M6の各々は、測域センサ50の上記検出原理から、その約半周しか検出されない(図7(a)、図8(a))。よって、かご側主ロープ部分24Aの設計上の中心座標と測域センサ50の検出により定まる中心座標とは、完全には一致しない。しかしながら、前記両中心座標のずれは僅かなので、特に問題とはならない。
【0094】
振幅割出部6014は、中心座標検出部6008から出力される中心座標R1から、かご側主ロープ部分24Aの振幅を割り出す。
【0095】
ここで、長周期地震や強風に伴う建物14の揺れに起因してかご側主ロープ部分24Aが横振れする場合、かご側主ロープ部分24Aを構成する主ロープM1〜M6の各々は、独立して横振れするものの、障害物が無い場合には、基本的には同じ挙動で横振れする。すなわち、図4に示す配列を維持したまま、横振れする。
【0096】
よって、かご側主ロープ部分24Aの中心座標R1の振幅を割り出せば、主ロープM1〜M6個々の振幅を割り出したことになる。そこで、振幅割出部6014は、中心座標R1の変位から、かご側主ロープ部分24A全体の走査面(水平面)における振幅を割り出すこととしている。
【0097】
振幅割出部6014は、測域センサ50の一走査毎に中心座標検出部6008から入力される中心座標R1を所定時間(複数回の走査に亘って)モニタリングする。当該所定時間は、例えば、想定される横振れの最大周期(例えば、10秒)である。この所定時間を以下、「観測時間」と言う。
【0098】
1回のモニタリングの結果を図10に示す。1回のモニタリングにおける複数の中心座標R1は、図10(a)に示すように、直線的に列を成したり(以下、この列を「座標列」と称する。)、図10(b)に示すように、楕円状の軌跡を描いたりする。振幅割出部6014は、前記座標列の両端に位置する座標(Xe1,Ye1)、(Xe2,Ye2)または、前記楕円の長軸(不図示)の端部付近の座標(Xe1,Ye1)、(Xe2,Ye2)を抽出し、この2点間の距離SXを演算する。SXが、1回のモニタリングの観測時間中に生じた最大振幅SXとみなされる。
【0099】
振幅割出部6014は、SXを振れレベル判定部6016へ出力する。振れレベル判定部6016は、振幅割出部6014から入力されるSXに基づいて、横振れの大きさのレベルを判定する。
【0100】
振れレベル判定部6016は、予め定められた振幅の基準値S1、S2、S3、S4(S1<S2<S3<S4)と振幅SXを以下のように比較し、振幅SXが振れレベルL0(管制運転不要レベル)、L1(特低レベル)、L2(低レベル)、L3(高レベル)、およびL4(極高レベル)のいずれに該当するかを判定する。
【0101】
SX<S1→L0
S1≦SX<S2→L1
S2≦SX<S3→L2
S3≦SX<S4→L3
S4≦SX →L4
【0102】
振れレベル判定部6016は、判定結果の振れレベル(L0、L1、L2、L3、L4のいずれか)を運転制御部62へ出力する。
【0103】
運転制御部62は、振れレベル判定部6016から入力される振れレベルに応じた管制運転を実施する。レベル毎に異なる管制運転の内容については省略する。
【0104】
なお、かご側主ロープ部分24Aが、図8(a)における上下方向に大きく横振れして、X軸の原点まで、あるいは原点を超えて変位した場合、測域センサ50の検出原理から、原点およびその近傍の位置(以下、単に「原点位置」と言う。)では、主ロープM1だけが検出され、これ以外の主ロープM2〜M6はほとんど検出されない場合がある。
【0105】
そこで、かご側主ロープ部分24AがX軸の原点位置に在ると見做される場合、すなわち、主ロープM1〜M6の全てが検出される場合と比較して、検出枠W1内で検出される座標データの点数が極端に少ない場合は、そのときの座標データ群の中心座標は、検出枠W1の移動には用いるものの、かご側主ロープ部分24Aの振幅の割出には供しないこととしても構わない。
【0106】
ここで、主として、かご側主ロープ部分24Aを検出する目的であれば、測域センサ50を、かご側主ロープ部分24Aの横振れ中の位置に関わらず、常に、6本の主ロープM1〜M6の全てが検出できる位置に設置することとしても構わない。
【0107】
そのような位置としては、例えば、図4に示す側壁54が好ましく、より好ましくは、側壁54Aの幅方向(図4における左右方向)の中央である。すなわち、かご側主ロープ部分24Aの横振れに関わらず、主ロープM1〜M6の並びの方向と交差する方向であって、主ロープM1〜M6までの間に他の物体が存在しない位置である。
【0108】
以上説明したように、実施形態では、測域センサ50、長尺物振れ量検出部60の座標変換部6002、不要座標排除部6004、固定物存在領域記憶部6006、中心座標検出部6008、初期検出枠記憶部6010、検出枠設定部6012および振幅割出部6014でロープ振れ検出装置が構成されている(図6)。
【0109】
当該ロープ振れ検出装置によれば、上述の通り、設置位置を含む昇降路12内の水平面を一定の時間間隔で走査する測域センサ50から、前記水平面に存する物体の前記設置位置からの方向と距離が位置データとして出力され、当該位置データは、前記水平面上に採った座標平面における座標データに変換される。
【0110】
一方、前記座標平面において、昇降路12内に吊り下げられた長尺物(本例は、かご側主ロープ部分24A)のみを囲繞する検出枠が設定され、測域センサ50の1回の走査で得られる複数の座標データの内、前記検出枠内に存する座標データ群の前記座標平面における中心座標が検出され、当該中心座標から、前記長尺物が横振れしたときの当該横振れの前記水平面における振幅が割り出される。
【0111】
ここで、n回目(nは正の整数)の走査において検出された前記中心座標、(n+1)回目の走査において検出された前記中心座標、および前記時間間隔から、(n+2)回目の走査における座標データ群の中心座標が予測され、当該予測された中心座標に対応する位置に前記検出枠は移動されて、前記座標平面上の位置が更新される。これにより、可能な限り確実に、前記検出枠で特定されて検出対象とされる長尺物のあらゆる方向の横振れの大きさを検出することができる。なお、本例では、検出枠内の座標データ群の中心座標と当該検出枠で囲繞される長尺物の中心座標とは対応しているため(略一致しているため)、予測される(n+2)回目の走査の座標データ群の中心座標は、(n+2)回目の走査における前記長尺物の中心座標でもある。
【0112】
上述した通り、座標変換部6002から出力される座標データの内、検出対象とする長尺物、例えば、上記の例では、かご側主ロープ部分24Aは、検出枠W1で特定される。このため、不要座標排除部6004は、必ずしも設けなくても構わないが、設けることにより以下の利点が得られる。
【0113】
不要座標排除部6004を設けない場合、例えば、かご側主ロープ部分24Aの横振れが非常に大きく、検出枠W1が釣合おもり用ガイドレール40に近接する場合、検出枠W1内に釣合おもり用ガイドレール40の座標データの一部が入ってしまう場合があり、誤検出を招く可能性があるからである。換言すると、不要座標排除部6004を設けることにより、長尺物が非常に大きく横振れしても、当該長尺物を検出するための検出枠内に固定物の座標データが含まれる事態を回避して誤検出が防止できる。
【0114】
なお、何らかの原因により、横振れ中の、例えば、かご側主ロープ部分24Aが検出枠W1で捕捉できなくなるとき(すなわち、検出枠W1内に、かご側主ロープ部分24Aに相当する点数の座標データ(座標データ群)が検出されないとき)がある。この場合、検出枠設定部6012は、以下のいずれかの処理を実行することとしても構わない。
【0115】
[リセット処理]
検出枠W1を初期検出枠記憶部6012に記憶されている検出枠W1にリセットする。
長尺物、本例では、かご側主ロープ部分24Aは、横振れの際、通常、元の位置(静止状態の位置)を通過する。そこで、初期位置にリセットされた検出枠W1で、中心座標検出部6008により、かご側主ロープ部分24A(の座標データ群)が検出されるのを待って、検出枠W1の前記平面座標上の位置の更新を再開させる。
【0116】
[拡大処理]
検出枠設定部6012は、検出枠W1を一時的に拡大し、中心座標検出部6008により、かご側主ロープ部分24A(の座標データ群)が検出されるのを待って、拡大した検出枠を元の大きさに戻す。
【0117】
具体的には、次の手順に従う。
(i)検出枠W1内にかご側主ロープ部分24A(の座標データ群)が検出されないと、
(ii)検出されなかった位置において、検出枠W1を拡大する。この拡大率は、例えば、2倍とする。
(iii)拡大された検出枠で、かご側主ロープ部分24A(の座標データ群)が検出されるのを待つ。
(iv)ある一の走査で、かご側主ロープ部分24A(の座標データ群)が再検出されると、
(v)前記一の走査と同じ位置で、検出枠を元の大きさに戻す。
(vi)そして、当該一の走査によって得られた座標データ群の中心座標とこの次の走査によって得られた(元の大きさの検出枠内の)座標データ群の中心座標から、さらにこの次の走査における座標データ群の中心位置を予測し、予測した中心位置に対応する位置に検出枠W1を移動させる。
(vii)以降、上記した実施形態と同様にする。
【0118】
以上、本発明に係る長尺物振れ検出装置を実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上記形態に限らないことはもちろんであり、例えば、以下の形態としても構わない。
【0119】
(1)上記実施形態において検出枠は方形にしたが、検出枠の形状は方形に限らない。例えば、楕円形にしても良い。
【0120】
(2)上記実施形態において、検出枠設定部6012は、常に、検出枠W1、W2、W3を設定している。しかし、かご26が上昇するのに伴って、トラベリングケーブル34の下端部(折返し部)も上昇し、かご26が、ある位置より上方にある間は、例えば、トラベリングケーブル34は、測域センサ52(図1)で検出されなくなる。
【0121】
そこで、検出枠設定部6012は、かご26の昇降位置に応じて、設定する検出枠を変更しても構わない。具体的には、測域センサ52であれば、(i)かご26が測域センサ52より下方に位置する場合は、検出枠W1、W2を設定し、(ii)かご16が測域センサ52よりも上方で、かつ、トラベリングケーブル34の下端部が測域センサ52よりも下方に位置する場合は、検出枠W1、W2、W3を設定し、(iii)トラベリングケーブル34の下端部が測域センサ52よりも上方に位置する場合は、検出枠W1、W2を設定する。
【0122】
(i)、(ii)、(iii)のいずれに該当するかは、かご26の昇降位置によって定まる。検出枠設定部6012は、運転制御部62から出力されるかご位置情報を参照して、設定すべき検出枠を決定する。
【0123】
(3)上記実施形態では、主ロープ、釣合ロープ、およびトラベリングケーブルを検出対象としたが、さらに、ガバナロープ(不図示)を検出対象に加えても構わない。この場合、初期検出枠記憶部6010には、検出枠W1、W2、W3と同様に、ガバナロープ用の初期位置での検出枠が記憶され、検出枠設定部6012は、初期検出枠記憶部6010からガバナロープ用の前記検出枠を読み出した後、上記検出枠W1、W2、W3と同様にして、前記座標平面上における当該検出枠の位置を更新する。
【0124】
上述したように、主ロープ群や釣合ロープ群では、複数のロープの並び方向と測域センサの設置位置の関係で、検出結果に影響が出るが、ガバナロープは、1本のロープであるため、そのような影響は受けない。
【0125】
(4)上記実施形態では、例えば、かご側主ロープ部分24Aを測域センサ50で検出すると、図8(a)等で示したように、主ロープM1〜M6各々の約半周が正確に検出された。
【0126】
しかしながら、測域センサの性能によっては、得られる座標データは、図11(a)、図11(b)に示すような結果となる。すなわち、前記約半周の両端部およびその近傍が正しく検出されないことがある。これは、測域センサから出射され、前記両端部とその近傍に照射されたレーザ光が測域センサへ正しく反射されて戻ってこないことに起因している。
【0127】
このため、主ロープM1〜M6各々の検出結果として得られる座標データの分布領域が、図11(a)に示すように、図8(a)と比較して、若干広がってしまう。ここで、主ロープM1〜M6各々の検出結果として得られる座標データの内、真に主ロープM1〜M6各々の周面の位置を示す座標データを「正規データ」と称し、正規データ以外の座標データを「ゴーストデータ」と称する。ゴーストデータは、図11(a)、図11(b)に示すように、測域センサ(座標原点)からみて正規データの僅か後方に散在する。
【0128】
そこで、測域センサの性能に対応させて、上記検出枠W1と同様にして移動させても、常に、正規データはもとよりゴーストデータも入り得る範囲を有する大きさの検出枠WE1(検出枠W1よりも大きめの検出枠)を設定する。
【0129】
検出枠WE1を用いての、かご側主ロープ部分24Aの振幅の検出は、上記実施形態と同様に行われる。すなわち、検出枠WE1内に検出される座標データ群の中心座標に基づいて、検出枠WE1を走査毎に移動させ、前記観測時間中に得た複数の中心座標から振幅を割り出すのである。
【0130】
なお、図11(b)に示す座標データの分布状況から分かるように、座標データ群の中心座標の、当該座標データ群の中の正規データ全体に対する相対位置は変動する。しかし、その変動量は僅かであり、当該変動量を考慮した大きさに検出枠WE1を設定しておけば、検出枠WE1の移動に関わらず、検出枠WE1で略全ての座標データ(正規データおよびゴーストデータ)を囲繞することができる。
【0131】
また、上記の通り、座標平面において、ゴーストデータを含む座標データ群の中心座標の、かご側主ロープ部分24A(主ロープM1〜M6)の中心座標(複数の正規データの中心座標)との相対位置は変動する。しかしながら、その変動量は僅かである。
【0132】
よって、座標データ群の中心座標の変位量は、かご側主ロープ部分24Aの中心座標の変位量と見做せるため、座標データ群の中心座標の変位に基づいて、かご側主ロープ部分24Aの振幅が求められることになる。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明に係る長尺物振れ検出装置は、エレベータを構成する主ロープ、釣合ロープなどの長尺物の、長周期地震動等に起因する横振れの振幅の程度を長尺物毎に検出する装置として好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0134】
50、52 測域センサ
6002 座標変換部
6008 中心座標検出部
6012 検出枠設定部
6014 振幅割出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11