特許第6900973号(P6900973)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6900973
(24)【登録日】2021年6月21日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】飴
(51)【国際特許分類】
   A23G 3/34 20060101AFI20210701BHJP
   A23L 29/269 20160101ALI20210701BHJP
   A23L 29/256 20160101ALI20210701BHJP
【FI】
   A23G3/34 101
   A23L29/269
   A23L29/256
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2019-105795(P2019-105795)
(22)【出願日】2019年6月6日
(65)【公開番号】特開2020-226(P2020-226A)
(43)【公開日】2020年1月9日
【審査請求日】2020年9月30日
(31)【優先権主張番号】特願2018-118466(P2018-118466)
(32)【優先日】2018年6月22日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】湊 孝文
(72)【発明者】
【氏名】山下 美保
(72)【発明者】
【氏名】藤原 将平
(72)【発明者】
【氏名】小柳 里帆
【審査官】 福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−109998(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0172724(US,A1)
【文献】 特開2012−039965(JP,A)
【文献】 特開2016−002068(JP,A)
【文献】 特開2013−129641(JP,A)
【文献】 今回のおやつ:関東パックの「食べる豆乳アソートグミ」, [online] [internet], 2017/8/21, [検索日:2020.12.17], <URL: https://toriaezukasi.com/2017/08/21/tounyuu-gummy>
【文献】 M'colla 食べる豆乳 アソートグミ 75g×6袋, [online] [internet],Amazon.co.jpでの取り扱い開始日:2016/10/11, [検索日:2020.12.17],<URL: https://www.amazon.co.jp/%E4%B8%89%E8%8F%B1%E9%A3%9F%E5%93%81-Mcolla-%E9%A3%9F%E3%81%B9%E3%82%8B%E8%B1%86%E4%B9%B3-%E3%82%A2%E3%82%BD%E3%83%BC%E3%83%88%E3%82%B0%E3%83%9F-75g%C3%976%E8%A2%8B/dp/B01M22RDH1>
【文献】 扇雀飴 のど包むのど飴 80g×6袋, [online] [internet],Amazon.co.jpでの取り扱い開始日:2017/9/17, [検索日:2020.12.17],<URL: https://www.amazon.co.jp/%E6%89%87%E9%9B%80%E9%A3%B4%E6%9C%AC%E8%88%97-750105-%E6%89%87%E9%9B%80%E9%A3%B4-%E3%81%AE%E3%81%A9%E5%8C%85%E3%82%80%E3%81%AE%E3%81%A9%E9%A3%B4-80g%C3%976%E8%A2%8B/dp/B075743HCP>
【文献】 GNPD - Throat-Moisturising Mint Candy, ID# 850937, 2008, [検索日:2020.12.17]
【文献】 GNPD - Marine Mint Lozenges, ID# 383476, 2005, [検索日:2020.12.17]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリグルタミン酸ナトリウム、(b)0.05〜1w/w%のキサンタンガム、(c)コンブエキス、及び(d)90〜98w/w%の砂糖又は水飴を含むことを特徴とするハードキャンディ(ただし、発泡成分を含まない)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飴に関し、食品、医薬部外品、又は医薬品分野において利用されうる。
【背景技術】
【0002】
飴のカテゴリーにおいてのど飴と呼ばれる製品群がある。のど飴はセチルピリジニウム塩化物水和物などの薬効成分を配合した医薬品・医薬部外品や、ハーブエキスなどによりハーブ感を付与した、或いはメントールなどによる清涼感を付与したような食品などがある。購入者はこれらのど飴を、のどの痛み・はれ・不快感を取り除くため、口の中をすっきりさせるため、気分転換のため、そしてのどの乾燥予防など幅広い目的で利用している。
【0003】
唾液は耳下腺、顎下腺、舌下腺やその他の小唾液腺などから分泌される分泌液である。唾液は口腔内やのどに潤いをもたらすだけでなく、自浄作用、抗菌作用、pH緩衝作用、再石灰化作用、消化作用、粘膜保護・潤滑作用、溶解・凝集作用、粘膜修復作用など様々な働きを有する。唾液は、健康な成人で1日1.0L〜1.5L分泌されているが、加齢やストレス、各種疾患の治療などにより分泌量が低下することが知られている。唾液の分泌量を増加させる手段としては、有機酸の利用(特許文献1)、アオギリ科植物コーラノキ種子の利用(特許文献2)、フウチョウソウ科植物バビンロウ、スイビンロウ及びセリ科植物ツボクサの利用(特許文献3)、ポリグルタミン酸の利用(特許文献4)、大豆イソフラボンであるエクオールの利用などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−101856号公報
【特許文献2】特開平10−182392号公報
【特許文献3】特開2002−265375号公報
【特許文献4】特許第4632048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、唾液分泌作用が向上し、口腔やのどへの潤い感が増した飴を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、唾液分泌促進作用を有するポリグルタミン酸又はイソフラボンにキサンタンガムを組み合わせることで、唾液分泌作用が飛躍的に向上し、潤い感が顕著に増した飴を提供出来ることを見出した。
【0007】
かかる知見により得られた本発明の態様は次のとおりである。
(1)(a)ポリグルタミン酸ナトリウム又はイソフラボン、及び(b)キサンタンガムを含むことを特徴とする飴、
(2)さらに(c)コンブエキスを含むことを特徴とする(1)に記載の飴、
(3)砂糖又は水飴を含むことを特徴とする(1)又は(2)に記載の飴、
(4)ハードキャンディ、ソフトキャンディ、トローチ、又は錠菓である(1)〜(3)のいずれかに記載の飴、
である。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、唾液分泌作用が向上し、口腔やのどへの潤い感が増した飴を提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明において、「ポリグルタミン酸ナトリウム」とは納豆菌の培養液などから得られる、グルタミン酸がγ-グルタミル結合で連なった高分子のナトリウム塩である。本発明では、何れのポリグルタミン酸ナトリウムを用いてもよく、製法等について特に制限はないが、ポリグルタミン酸ナトリウムの含有量は、本発明の飴全量に対して通常0.01〜3W/W%、好ましくは0.025〜2W/W%、より好ましくは0.05〜1W/W%である。
【0010】
本発明において、「イソフラボン」とは大豆の「えぐみ」成分の一つと考えられており、ダイズイン、ゲニスチン、グリシチンなどの成分の総称である。ポリフェノール類の仲間で、フラボノイド群に分類される。本発明では、何れのイソフラボンを用いてもよく、製法等について特に制限はない。本発明のイソフラボンの含有量は、本発明の飴全量に対して通常0.01〜3W/W%、好ましくは0.01〜2W/W%、より好ましくは0.025〜1W/W%である。
【0011】
本発明において、「キサンタンガム」とは、微生物発酵により得られる高分子である。本発明では、何れのキサンタンガムを用いてもよく、製法等について特に制限はない。市販品として、例えば、「SATIAXANETM」(ユニテックフーズ株式会社)「サンエース NXG−S」「サンエース NXG−C」(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)などが挙げられる。キサンタンガムの含有量は、本発明の飴全量に対して通常0.05〜3W/W%、好ましくは0.075〜2W/W%、より好ましくは0.1〜1W/W%、更に好ましくは0.2〜1W/W%である。配合量が3W/W%を超えると、飴の風味・食感に悪影響を与えるため、使用上好ましくない。
【0012】
本発明において、「コンブエキス」とは、コンブ目コンブ科の海藻から水やエタノールなどの溶媒にて抽出し、濃縮・ろ過などを行うことで得られるエキスである。本発明では、何れのコンブエキスを用いてもよく、製法等について特に制限はない。市販品として、例えば、「昆布エキスL-A」(佐藤食品工業株式会社)「コンブエキスB5」(三菱商事フードテック株式会社)などが挙げられる。コンブエキスの含有量は、本発明の飴全量に対して通常0.05〜3W/W%、好ましくは0.1〜2W/W%、より好ましくは0.2〜1W/W%である。
【0013】
本発明の「飴」とは、糖類(砂糖、水飴、ブドウ糖、果糖、異性化糖、還元水あめ、マルチトール、ソルビトール、パラチニット、エリスリトール、オリゴ糖など)を主原料とする口腔内で溶解および咀嚼して服用する固形物であり、例えば、ハードキャンディ、ソフトキャンディ、トローチ、錠菓、フィルム剤が挙げられるが、これに限定されるものではなく、また、その製造方法、容器および包装形態に限定されるものではない。糖類の含有量は本発明の飴全量に対して通常70〜98W/W%、好ましくは90〜98W/W%である。これら糖類中でも砂糖及び/又は水飴を主原料とした飴は、甘味度が高く、唾液分泌をより促すため好ましい。
【0014】
また、本発明の飴にはその他の成分として、塩類(食塩など)、甘味料(アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、アドバンテーム、ネオテーム、プシコースなど)、酸味料(クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、フマル酸、アスコルビン酸、リン酸など)、香料、着色料、保存料、ミネラル類、ビタミン類、アミノ酸及びその塩類、生薬、生薬抽出物、カフェイン、ローヤルゼリー、食物繊維、果汁、ポリフェノール等を本発明の効果を損なわない範囲で適宜に配合することができる。また、酸味料を配合する場合は、本発明の飴全量に対して通常0.1〜3W/W%、好ましくは0.2〜2W/W%である。配合量が3W/W%を超えると、飴の風味や品質安定性に悪影響を与える可能性がある。一方、本発明の飴に発泡成分を含んだ場合、風味や品質の安定性に影響すること、また、製造時に割れや欠けも生じやすくなるという理由から発泡成分を含まないものとするのが好ましい。
【実施例】
【0015】
以下に、実施例、比較例及び試験例を挙げ、本発明を更に詳細に説明する。
【0016】
[試験例1]
砂糖167gと水あめ167gに水を添加し、常法にて加熱溶解して煮詰め、飴生地300gを調製した。その後、表1及び表2記載の組成となるように各成分を飴生地に添加し、成形、冷却固化させることでハードキャンディ(1個あたり約3.0g)を得た。得られたサンプルについて下記方法により咀嚼時の唾液分泌促進効果を評価した。
(1)精製水約30mLで洗口した。
(2)コットン球を口に入れて1分間咀嚼した。咀嚼後、コットン球と分泌された唾液を回収し、唾液分泌量を測定した。
(3)精製水約30mLで洗口した。
(4)サンプル1個を舐めた。
(5)舐め終わってから5分後にコットン球を口に入れて1分間咀嚼した。咀嚼後、同様に、コットン球と分泌された唾液を回収し、唾液分泌量を測定した。
パネル4名にて、サンプルを舐める前後の唾液分泌量を比較し、増加量の平均を算出した。評価基準1に従い、結果を表1に示した。
【0017】
[評価基準1]
比較例1に対して唾液分泌増加量が100%未満 :−
比較例1に対して唾液分泌増加量が100%〜105%未満 :±
比較例1に対して唾液分泌増加量が105%〜110%未満 :+
比較例1に対して唾液分泌増加量が110%〜130%未満 :++
比較例1に対して唾液分泌増加量が130%〜150%未満 :+++
比較例1に対して唾液分泌増加量が150%以上 :++++
【0018】
【表1】
【0019】
【表2】
【0020】
表1の結果より、比較例2〜6では比較例1に比べ十分な唾液分泌促進作用の向上が認められなかったが、キサンタンガムとポリグルタミン酸ナトリウムを組み合わせた実施例1では唾液分泌促進作用の向上が認められた。表2の結果より、比較例7に対し、キサンタンガムとイソフラボンを組み合わせた実施例4では唾液分泌促進作用の向上が認められた。
【0021】
[試験例2]
砂糖167gと水あめ167gに水を添加し、常法にて加熱溶解して煮詰め、飴生地300gを調製した。その後、表2記載の組成となるように各成分を飴生地に添加し、成形、冷却固化させることでハードキャンディ(1個あたり約3.0g)を得た。得られたサンプルについて下記方法により安静時の唾液分泌促進効果を評価した。
(1)精製水約30mLで洗口した。
(2)サンプル1個を舐めた。
(3)舐め終わってからは唾液を飲み込まずに溜め込み、1分毎に唾液をカップに吐き出し、30分までの累積唾液分泌量を測定した。
パネル1名にて本試験を2回行い、累積唾液分泌量の平均を算出した。評価基準2に従い、結果を表2に示した。
【0022】
[評価基準2]
比較例1に対して累積唾液分泌量が100%未満 :−
比較例1に対して累積唾液分泌量が100%〜105%未満:±
比較例1に対して累積唾液分泌量が105%〜110%未満:+
比較例1に対して累積唾液分泌量が110%〜130%未満:++
比較例1に対して累積唾液分泌量が130%〜150%未満:+++
比較例1に対して累積唾液分泌量が150%以上 :++++
【0023】
【表3】
【0024】
【表4】
【0025】
表3、4の結果より、安静時の唾液分泌量に対しても、キサンタンガムとポリグルタミン酸ナトリウムを組み合わせた実施例2、5〜7において、唾液分泌促進作用が認められた。さらに、コンブエキスを含んだ実施例3において、実施例2と比べても唾液分泌量が1割以上増大し、強い唾液分泌促進作用が認められた。
【0026】
以下に製剤例を示す。
砂糖と水あめに水を添加し、常法にて加熱溶解して煮詰め、飴生地を調製した。その後、ポリグルタミン酸ナトリウム、キサンタンガム、コンブエキス、茶抽出物、ペパーミントエキス粉末、アスパルテーム、果汁、着色料、酸味料、香料を飴生地に添加し、成形、冷却固化させることでハードキャンディを得た。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明により、唾液分泌作用が向上し、口腔やのどへの潤い感が増した飴を提供することが可能となった。よって、本発明を医薬品、医薬部外品及び食品として提供することにより、これらの産業の発展が期待される。