特許第6901047号(P6901047)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6901047電線の接続構造、および、電線の接続方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6901047
(24)【登録日】2021年6月21日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】電線の接続構造、および、電線の接続方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/02 20060101AFI20210701BHJP
   H01R 4/62 20060101ALI20210701BHJP
   H01R 43/02 20060101ALI20210701BHJP
   H02G 1/14 20060101ALI20210701BHJP
   H02G 15/08 20060101ALI20210701BHJP
【FI】
   H01R4/02 C
   H01R4/62 A
   H01R43/02 B
   H02G1/14
   H02G15/08
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2020-521202(P2020-521202)
(86)(22)【出願日】2019年5月17日
(86)【国際出願番号】JP2019019629
(87)【国際公開番号】WO2019225492
(87)【国際公開日】20191128
【審査請求日】2020年7月31日
(31)【優先権主張番号】特願2018-99503(P2018-99503)
(32)【優先日】2018年5月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川田 祐司
(72)【発明者】
【氏名】宮本 賢次
(72)【発明者】
【氏名】白井 大地
【審査官】 山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−014438(JP,A)
【文献】 特開2017−126520(JP,A)
【文献】 特開2013−242991(JP,A)
【文献】 特開2013−025997(JP,A)
【文献】 特開2017−168400(JP,A)
【文献】 特開2013−004346(JP,A)
【文献】 特開2013−235671(JP,A)
【文献】 特開2007−185706(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/02
H01R 43/02
H01R 4/62
H02G 1/14
H02G 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1芯線と、前記第1芯線を被覆する第1絶縁被覆とを備え、前記第1芯線が、部分的に前記第1絶縁被覆から露出された第1芯線露出部を有する単数または複数の第1電線と、
前記第1芯線とは異なる材料により構成された第2芯線と、前記第2芯線を被覆する第2絶縁被覆とを備え、前記第2芯線が、部分的に前記第2絶縁被覆から露出された第2芯線露出部を有する単数または複数の第2電線と、
前記第1芯線露出部と前記第2芯線露出部とが溶接された接合部とを備え、
前記第2芯線の総断面積が、前記第1芯線および前記第2芯線の総断面積の合計の3分の1以下であり、
前記接合部が、前記第1電線および前記第2電線の延び方向に沿って延び、互いに対向する2対の外面を有しているとともに、前記2対の外面のうち一方の対をなす外面間の距離が、他方の対をなす外面間の距離よりも長くなっており、
前記接合部において、前記第2芯線露出部が、前記一方の対をなす外面のうち一の外面に隣接して配置されている、電線の接続構造。
【請求項2】
前記第1芯線および前記第2芯線のうち一方がアルミニウムまたはアルミニウム合金製である、請求項1に記載の電線の接続構造。
【請求項3】
前記第1芯線および前記第2芯線のうち他方が銅または銅合金製である、請求項2に記載の電線の接続構造。
【請求項4】
前記接合部が、前記第1芯線露出部により構成される第1層と、前記第1層に隣接し、前記第2芯線露出部により構成される第2層とを備える、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電線の接続構造。
【請求項5】
第1芯線と、前記第1芯線を被覆する第1絶縁被覆とを備える単数または複数の第1電線と、
前記第1芯線とは異なる材料により構成された第2芯線と、前記第2芯線を被覆する第2絶縁被覆とを備える単数または複数の第2電線とを接続する方法であって、
前記第2芯線の総断面積が、前記第1芯線および前記第2芯線の総断面積の合計の3分の1以下であり、
前記第1電線および前記第2電線のそれぞれの一部において、前記第1絶縁被覆および前記第2絶縁被覆を皮剥きして前記第1芯線および前記第2芯線を露出させる露出工程と、
溶接ホーンと受け冶具とを備える超音波溶接装置によって、前記第1芯線および前記第2芯線のうち前記露出工程において露出された部分を超音波溶接して接合部を形成する溶接工程とを含み、
前記溶接工程において、
前記第1芯線が前記受け冶具に当接し、前記第2芯線が前記溶接ホーンに当接するようにして溶接を行うとともに、
前記接合部において、前記受け冶具に当接する第1当接面と、前記溶接ホーンに当接する第2当接面との距離が、前記第1当接面および前記第2当接面とは異なる1対の外面間の距離よりも大きくされる、電線の接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、電線の接続構造、および、電線の接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の電線の芯線同士が接合された電線の接続構造が知られている。芯線の接合方法としては、例えば、複数の電線の芯線を束ねてねじり合わせ、超音波溶接によって接合する方法がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−322544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような接合方法では、芯線の材質が異なる2種類の電線を接合する場合に、接合強度が十分でなく、接合部分が剥離してしまうなどの問題が生じることがあり、改善が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書によって開示される電線の接続構造は、第1芯線と、前記第1芯線を被覆する第1絶縁被覆とを備え、前記第1芯線が、部分的に前記第1絶縁被覆から露出された第1芯線露出部を有する単数または複数の第1電線と、前記第1芯線とは異なる材料により構成された第2芯線と、前記第2芯線を被覆する第2絶縁被覆とを備え、前記第2芯線が、部分的に前記第2絶縁被覆から露出された第2芯線露出部を有する単数または複数の第2電線と、前記第1芯線露出部と前記第2芯線露出部とが溶接された接合部とを備え、前記第2芯線の総断面積が、前記第1芯線および前記第2芯線の総断面積の合計の3分の1以下であり、前記接合部が、前記第1電線および前記第2電線の延び方向に沿って延び、互いに対向する2対の外面を有しているとともに、前記2対の外面のうち一方の対をなす外面間の距離が、他方の対をなす外面間の距離よりも長くなっており、前記接合部において、前記第2芯線露出部が、前記一方の対をなす外面のうち一の外面に隣接して配置されている。
【0006】
また、本明細書によって開示される電線の接続方法は、第1芯線と、前記第1芯線を被覆する第1絶縁被覆とを備える単数または複数の第1電線と、前記第1芯線とは異なる材料により構成された第2芯線と、前記第2芯線を被覆する第2絶縁被覆とを備える単数または複数の第2電線とを接続する方法であって、前記第2芯線の総断面積が、前記第1芯線および前記第2芯線の総断面積の合計の3分の1以下であり、前記第1電線および前記第2電線のそれぞれの一部において、前記第1絶縁被覆および前記第2絶縁被覆を皮剥きして前記第1芯線および前記第2芯線を露出させる露出工程と、溶接ホーンと受け冶具とを備える超音波溶接装置によって、前記第1芯線および前記第2芯線のうち前記露出工程において露出された部分を超音波溶接して接合部を形成する溶接工程とを含み、前記溶接工程において、前記第1芯線が前記受け冶具に当接し、前記第2芯線が前記溶接ホーンに当接するようにして溶接を行うとともに、前記接合部において、前記受け冶具に当接する第1当接面と、前記溶接ホーンに当接する第2当接面との距離が、前記第1当接面および前記第2当接面とは異なる1対の外面間の距離よりも大きくされる。
【発明の効果】
【0007】
本明細書によって開示される電線の接続構造、および、電線の接続方法によれば、接合部分の剥離を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態のハーネスの斜視図
図2】実施形態において、超音波溶接装置に第1芯線露出部と第2芯線露出部とをセットした様子を示す側面図
図3】実施形態において、超音波溶接装置により第1芯線露出部と第2芯線露出部とを接合した様子を示す側面図
図4】実施形態における接合部の正面図
図5】変形例1における接合部の正面図
図6】変形例2のハーネスの斜視図
図7】試験例において、引裂試験の様子を模式的に示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施形態の概要]
本明細書によって開示される電線の接続構造は、第1芯線と、前記第1芯線を被覆する第1絶縁被覆とを備え、前記第1芯線が、部分的に前記第1絶縁被覆から露出された第1芯線露出部を有する単数または複数の第1電線と、前記第1芯線とは異なる材料により構成された第2芯線と、前記第2芯線を被覆する第2絶縁被覆とを備え、前記第2芯線が、部分的に前記第2絶縁被覆から露出された第2芯線露出部を有する単数または複数の第2電線と、前記第1芯線露出部と前記第2芯線露出部とが溶接された接合部とを備え、前記第2芯線の総断面積が、前記第1芯線および前記第2芯線の総断面積の合計の3分の1以下であり、前記接合部が、前記第1電線および前記第2電線の延び方向に沿って延び、互いに対向する2対の外面を有しているとともに、前記2対の外面のうち一方の対をなす外面間の距離が、他方の対をなす外面間の距離よりも長くなっており、前記接合部において、前記第2芯線露出部が、前記一方の対をなす外面のうち一の外面に隣接して配置されている。
【0010】
また、本明細書によって開示される電線の接続方法は、第1芯線と、前記第1芯線を被覆する第1絶縁被覆とを備える単数または複数の第1電線と、前記第1芯線とは異なる材料により構成された第2芯線と、前記第2芯線を被覆する第2絶縁被覆とを備える単数または複数の第2電線とを接続する方法であって、前記第2芯線の総断面積が、前記第1芯線および前記第2芯線の総断面積の合計の3分の1以下であり、前記第1電線および前記第2電線のそれぞれの一部において、前記第1絶縁被覆および前記第2絶縁被覆を皮剥きして前記第1芯線および前記第2芯線を露出させる露出工程と、溶接ホーンと受け冶具とを備える超音波溶接装置によって、前記第1芯線および前記第2芯線のうち前記露出工程において露出された部分を超音波溶接して接合部を形成する溶接工程とを含み、前記溶接工程において、前記第1芯線が前記受け冶具に当接し、前記第2芯線が前記溶接ホーンに当接するようにして溶接を行うとともに、前記接合部において、前記受け冶具に当接する第1当接面と、前記溶接ホーンに当接する第2当接面との距離が、前記第1当接面および前記第2当接面とは異なる1対の外面間の距離よりも大きくされる。
【0011】
本明細書によって開示される電線の接続構造、および、電線の接続方法において、「第1芯線の総断面積」は、第1電線が1本である場合には、1本の第1電線に備えられる1本の第1芯線の断面積であり、第1電線が複数である場合には、複数の第1電線に備えられる複数の第1芯線の断面積の合計である。同様に、「第2芯線の総断面積」は、第2電線が1本である場合には、1本の第2電線に備えられる1本の第2芯線の断面積であり、第2電線が複数である場合には、複数の第2電線に備えられる複数の第2芯線の断面積の合計である。
【0012】
また、本明細書によって開示される電線の接続構造において、「前記接合部において、前記第2芯線露出部が、前記一方の対をなす外面のうち一の外面に隣接して配置されている」とは、第2電線が1本である場合には、1本の第2電線に備えられる1本の第2芯線露出部が一の外面に隣接して配置されていることを意味し、第2電線が複数である場合には、複数の第2電線に備えられる複数の第2芯線露出部の束が一の外面に隣接して配置されていることを意味する。
【0013】
また、本明細書によって開示される電線の接続方法において、「前記第1芯線が前記受け冶具に当接し、」とは、第1電線が1本である場合には、1本の第1電線に備えられる1本の第1芯線が受け冶具に当接することを意味し、第1電線が複数である場合には、複数の第1電線に備えられる複数の第1芯線の束が受け冶具に当接することを意味する。同様に、「前記第2芯線が前記溶接ホーンに当接する」とは、第2電線が1本である場合には、1本の第2電線に備えられる1本の第2芯線が受け冶具に当接することを意味し、第2電線が複数である場合には、複数の第2電線に備えられる複数の第2芯線の束が受け冶具に当接することを意味する。
【0014】
上記の構成によれば、第2芯線露出部が、接合部の一方の対をなす外面のうち一の外面に隣接して配置されている。ここで、接合部において、2対の外面のうち一方の対をなす外面間の距離が、他方の対をなす外面間の距離よりも長いから、一方の対をなす外面のそれぞれの幅は、他方の対をなす外面のそれぞれの幅よりも短い。もし、総断面積が少ない方の第2芯線露出部が、他方の対をなす外面(幅の広い外面)のいずれかに隣接して配置されていると、第2芯線露出部の配置が溶接毎に変わってしまい、溶接強度のばらつきが大きくなってしまう。これに対し、総断面積が少ない方の第2芯線露出部が、一方の対をなす外面(幅の狭い外面)のいずれかに隣接して配置されることにより、溶接強度のばらつきを小さくすることができ、接合部分の剥離を抑制できる。
【0015】
上記の構成において、前記第1芯線および前記第2芯線のうち一方がアルミニウムまたはアルミニウム合金製であっても構わない。また、前記第1芯線および前記第2芯線のうち他方が銅または銅合金製であっても構わない。
【0016】
上記の構成において、前記接合部が、前記第1芯線露出部により構成される第1層と、前記第1層に隣接し、前記第2芯線露出部により構成される第2層とを備えていても構わない。
【0017】
ここで、「前記第1芯線露出部により構成される第1層」とは、第1電線が1本である場合には、第1層が1本の第1電線に備えられる1本の第1芯線露出部により構成されることを意味し、第1電線が複数である場合には、第1層が複数の第1電線に備えられる複数の第1芯線露出部の束により構成されることを意味する。同様に、「前記第2芯線露出部により構成される第2層」とは、第2電線が1本である場合には、第2層が1本の第2電線に備えられる1本の第2芯線露出部により構成されることを意味し、第2電線が複数である場合には、第2層が複数の第2電線に備えられる複数の第2芯線露出部の束により構成されることを意味する。
【0018】
このように、接合部において、第1芯線露出部により構成される部分と第2芯線露出部により構成される部分とが2層に分かれていると、第1芯線露出部により構成される部分と第2芯線露出部により構成される部分とが完全に2層に分かれていない場合と比較して、溶接強度のばらつきをいっそう抑制することができ、接合部分の剥離を抑制できる。
【0019】
[実施形態の詳細]
本明細書によって開示される技術の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0020】
<実施形態>
実施形態を、図1図4を参照しつつ説明する。本実施形態の電線の接続構造は、複数の電線10A、10Bが接続されたハーネス1の一部である。ハーネス1は、図1に示すように、複数の第1電線10Aと、複数の第2電線10Bとを備えている。
【0021】
第1電線10Aは、図1に示すように、アルミニウムまたはアルミニウム合金製の素線の複数本を撚り合わせた撚り線によって構成された第1芯線11Aと、この第1芯線11Aを被覆する合成樹脂製の第1絶縁被覆12Aとを備えた、周知の構成のアルミニウム電線である。第1芯線11Aは、第1電線10Aの端末部において、第1絶縁被覆12Aから露出された部分(第1芯線露出部11AE)を有している。
【0022】
第2電線10Bは、図1に示すように、銅または銅合金製の素線の複数本を撚り合わせた撚り線によって構成された第2芯線11Bと、この第2芯線11Bを被覆する合成樹脂製の第2絶縁被覆12Bとを備えた、周知の構成の銅電線である。第2芯線11Bは、第2電線10Bの端末部において、第2絶縁被覆12Bから露出された部分(第2芯線露出部11BE)を有している。
【0023】
本実施形態では、第1芯線11Aの総断面積A1(複数の第1電線10Aの第1芯線11Aの断面積の合計)よりも、第2芯線11Bの総断面積A2(複数の第2電線10Bの第2芯線11Bの断面積の合計)の方が小さい。より具体的には、第2芯線11Bの総断面積A2が、第1芯線11Aと第2芯線11Bの総断面積の合計(A1+A2)の3分の1以下である。
【0024】
複数の第1芯線露出部11AEおよび第2芯線露出部11BEは、束ねられた状態で、超音波溶接によって溶接されている。
【0025】
複数の第1芯線露出部11AEおよび第2芯線露出部11BEが溶接された部分(接合部20)は、図3および図4に示すように、第1電線10A、第2電線10Bの延び方向に沿って延び、互いに対向する2対の外面(上面Upと下面Ud、および右側面Rと左側面L)を有している。図4に示すように、2対の外面のうち一方の対をなす外面(上面Upと下面Ud)間の距離Hが、他方の対をなす外面(右側面Rと左側面L)間の距離Wよりも長い。接合部20は、図1に示すように、第1芯線露出部11AEにより構成される第1層21と、この第1層21に重なって配置され、第2芯線露出部11BEにより構成される第2層22との2層に分かれており、第2層22、つまり第2芯線露出部11BEにより構成される層が、図4に示すように、上面Upに隣接して位置している。
【0026】
複数の第1電線10Aおよび第2電線10Bを接続して上記の構成のハーネス1を製造する方法の一例を以下に示す。
【0027】
まず、複数の第1電線10Aのそれぞれの端末部において、第1絶縁被覆12Aを皮剥きして第1芯線11Aを露出させる。複数の第2電線10Bのそれぞれについても同様に、端末部において、第2絶縁被覆12Bを皮剥きして第2芯線11Bを露出させる。(露出工程)。
【0028】
次に、露出工程において第1芯線11Aおよび第2芯線11Bが露出された部分(第1芯線露出部11AE、第2芯線露出部11BE)を束ねて、超音波溶接により接合する(接合工程)。図2に示すように、超音波溶接装置30のアンビル31(受け冶具に該当)上に、第1芯線露出部11AE、第2芯線露出部11BEを載置する。このとき、アンビル31側(図2の下側)に、総断面積A1が大きい第1芯線露出部11AEを配置し、溶接ホーン32側(図2の上側)に、総断面積A2が小さい第2芯線露出部11BEを配置する。
【0029】
次に、図3に示すように、溶接ホーン32を下降させて、第1芯線露出部11AEおよび第2芯線露出部11BEを押さえつつ、第1電線10Aおよび第2電線10Bの軸線方向に沿った超音波振動を加える。これにより、第1芯線露出部11AEおよび第2芯線露出部11BEが溶接されて、接合部20が形成される。なお、溶接条件は、アルミニウムの溶接に適合する条件、すなわち、総断面積A1が大きい第1芯線11Aの材質に合わせた条件で行えばよい。
【0030】
この溶接工程においては、第1芯線露出部11AEがアンビル31に当接し、第2芯線露出部11BEが溶接ホーン32に当接する。また、形成される接合部20において、アンビル31に当接する下面Ud(第1当接面に該当)と、溶接ホーン32に当接する上面Up(第2当接面に該当)との距離Hが、右側面Rと左側面L間の距離Wよりも大きくされる。
このようにして、ハーネス1が完成する。
【0031】
以上のように本実施形態のハーネス1は、アルミニウムまたはアルミニウム合金製の第1芯線11Aと、第1芯線11Aを被覆する第1絶縁被覆12Aとを備え、第1芯線11Aが、部分的に第1絶縁被覆12Aから露出された第1芯線露出部11AEを有する第1電線10Aと、銅または銅合金製の第2芯線11Bと、第2芯線11Bを被覆する第2絶縁被覆12Bとを備え、第2芯線11Bが、部分的に第2絶縁被覆12Bから露出された第2芯線露出部11BEを有する第2電線10Bと、第1芯線露出部11AEと第2芯線露出部11BEとが溶接された接合部20とを備える。第2芯線11Bの総断面積A2が、第1芯線11Aおよび第2芯線11Bの総断面積の合計(A1+A2)の3分の1以下である。そして、接合部20が、第1電線10Aおよび第2電線10Bの延び方向に沿って延び、互いに対向する2対の外面を有しているとともに、2対の外面のうち一方の対をなす外面(上面Upと下面Ud)間の距離Hが、他方の対をなす外面(右側面Rと左側面L)間の距離Wよりも長くなっており、接合部20において、第2芯線露出部11BEが、上面Upに隣接して配置されている。
【0032】
また、本実施形態の電線の接続方法は、アルミニウムまたはアルミニウム合金製の第1芯線11Aと、第1芯線11Aを被覆する第1絶縁被覆12Aとを備える第1電線10Aと、銅または銅合金製の第2芯線11Bと、第2芯線11Bを被覆する第2絶縁被覆12Bとを備える第2電線10Bとを接続する方法であって、第2芯線11Bの総断面積A2が、第1芯線11Aおよび第2芯線11Bの総断面積の合計(A1+A2)の3分の1以下であり、第1電線10Aおよび第2電線10Bのそれぞれの端末部において、第1絶縁被覆12Aおよび第2絶縁被覆12Bを皮剥きして第1芯線11Aおよび第2芯線11Bを露出させる露出工程と、溶接ホーン32とアンビル31とを備える超音波溶接装置30によって、第1芯線11Aおよび第2芯線11Bのうち露出工程において露出された部分(第1芯線露出部11AEおよび第2芯線露出部11BE)を超音波溶接して接合部20を形成する溶接工程とを含む。溶接工程において、第1芯線11Aがアンビル31に当接し、第2芯線11Bが溶接ホーン32に当接するようにして溶接を行うとともに、接合部20において、アンビル31に当接する下面Udと、溶接ホーン32に当接する上面Upとの距離Hが、下面Udおよび上面Upとは異なる1対の外面(右側面Rと左側面L)間の距離Wよりも大きくされる。
【0033】
上記の構成によれば、第2芯線露出部11BEが、接合部20の上面Upに隣接して配置されている。ここで、接合部20において、2対の外面のうち一方の対をなす外面(上面Upと下面Ud)間の距離Hが、他方の対をなす外面(右側面Rと左側面L)間の距離Wよりも長いから、上面Upおよび下面Udの幅(図4の右端−左端間の距離)は、右側面Rおよび左側面Lの幅(図4の上端−下端間の距離)よりも短い。もし、総断面積A2が小さい第2芯線露出部11BEが、幅の広い右側面Rまたは左側面Lに隣接して配置されていると、第2芯線露出部11BEの配置が溶接毎に変わってしまい、溶接強度のばらつきが大きくなってしまう。これに対し、総断面積A2が小さい第2芯線露出部11BEが、幅の狭い上面Upに隣接して配置されることにより、溶接強度のばらつきを小さくすることができ、接合部分の剥離を抑制できる。
【0034】
このような第2芯線露出部11BEの配置は、第1芯線11Aの総断面積A1と第2芯線11Bの総断面積A2との差が大きい場合に効果的であり、特に、第2芯線11Bの総断面積A2が、第1芯線11Aと第2芯線11Bの総断面積の合計(A1+A2)の3分の1以下である場合に効果的である。
【0035】
また、接合部20が、第1芯線露出部11AEにより構成される第1層21と、第1層21に隣接し、第2芯線露出部11BEにより構成される第2層22とを備える。このように、接合部20において、第1芯線露出部11AEにより構成される部分と第2芯線露出部11BEにより構成される部分とが2層に分かれていると、溶接強度のばらつきをいっそう抑制することができ、接合部分の剥離を抑制できる。
【0036】
<変形例1>
変形例1のハーネス40は、実施形態と同様に、第1芯線露出部11AEおよび第2芯線露出部11BEが溶接された部分(接合部41)を備えている。接合部41は、実施形態と同様に、電線10A、10Bの延び方向に沿って延び、互いに対向する一対の外面(上面Upと下面Ud)間の距離Hが、第1電線10Aおよび第2電線10Bの延び方向に沿って延び、互いに対向する他の一対の外面(右側面Rと左側面L)間の距離Wよりも長い。
【0037】
図5に示すように、接合部41において、一対の外面(上面Up、下面Ud)のうち一方(上面Up)に隣接する部分の大部分が、第2芯線露出部11BEにより構成される第2接合部43となっており、残りの部分が、第1芯線露出部11AEにより構成される第1接合部42となっている。その他の構成については実施形態と同様であるため、実施形態と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0038】
本変形例では、接合部41において、第1接合部42と第2接合部43とが、実施形態とは異なり、完全に2層に分かれていない。しかし、第2接合部43が、幅の狭い上面Upに隣接して配置されているから、溶接強度のばらつきを小さくし、接合部分の剥離を抑制するという一定の効果が得られる。
【0039】
<変形例2>
変形例2のハーネス50は、図6に示すように、複数の第1電線51Aと、複数の第2電線51Bとを備えている。本変形例では、実施形態と逆に、第1電線51Aが、銅または銅合金製の第1芯線52Aを備える銅電線であり、第2電線51Bが、アルミニウムまたはアルミニウム合金線の第2芯線52Bを備えるアルミニウム電線である。第2芯線52Bの総断面積A2は、第1芯線52Aと第2芯線52Bの総断面積の合計(A1+A2)の3分の1以下である。
【0040】
本変形例のハーネス50を製造する際には、接合工程において、銅の溶接に適合する溶接条件にて超音波溶接を行えばよいが、銅の溶接温度がアルミニウムの溶接温度よりも高いため、溶融したアルミニウムが溶接ホーン32に付着してしまうことがある。そこで、接合工程を、以下のように2段階で行うことが好ましい。
【0041】
まず、第1の接合工程においては、第1芯線露出部52AEのみを束ねて超音波溶接によって接合し、第1層54を先に形成させる。このとき、溶接条件は、第1芯線52Aの材質に合わせた条件(銅の溶接に適合する条件)で行えばよい。
【0042】
次に、第2の接合工程においては、第1の接合工程において形成された第1層54をアンビル31上に載置する。次いで、第1層54の上(溶接ホーン32側)に、第2芯線露出部52BEを配置する。そして、超音波溶接を行って、第1層54上に、第2芯線露出部52BEを接合して第2層55を形成させ、接合部53を完成させる。このとき、溶接条件は、第2芯線52Bに合わせた条件(アルミニウムの溶接に適合する条件)で行えばよい。
【0043】
その他の構成については実施形態と同様であるため、実施形態と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0044】
<他の変形例>
上記実施形態では、第1電線10Aおよび第2電線10Bがともに複数であったが、第1電線および第2電線のいずれか、または双方が1本であっても構わない。また、第1電線および第2電線は、互いに、芯線の太さ(断面積)が異なっていてもよく、複数の第1電線が、互いに芯線の太さ(断面積)が異なる電線を含んでいてもよく、複数の第2電線が、互いに芯線の太さ(断面積)が異なる電線を含んでいてもよい。
【0045】
<試験例>
[使用機器、使用材料]
超音波溶接機としては、シュンク社製「Schunk Mimic4」を使用した。引張試験機としては、株式会社サンメック製「横型引張試験機:MS−6」を使用した。
電線サイズは、芯線(撚り線)の断面積(平方ミリメートル:sq)により表示した。
【0046】
[試験方法]
1.試験例1
1)試験体の作製
表1に示す電線をそれぞれ100mmの長さに切断し、先端10mmの絶縁被覆を除去して芯線を露出させた。
続いて、超音波溶接機を用いて、溶接機の銅推奨条件で、銅の芯線の露出部分を溶接した。次に溶接機のアルミニウムの推奨条件で、アルミニウムの芯線の露出部分と、先ほど作製した銅の芯線露出部分を超音波溶で固めたものを溶接し、試験体を得た。このとき、溶接ホーン側に、銅電線の芯線(断面積の合計が少ない方の芯線)が配置されるようにした。接合部分の幅(上記実施形態の距離Wに相当)と高さ(距離Hに相当)とを表1に示した。
得られた試験体を、引裂強度試験に供した。
【0047】
2)引裂強度試験
引張試験機を用いて、図7に示すように、他の電線61を固定具62により固定した状態で、1本の銅電線60を100mm/minで引っ張り、接合部分が引き裂かれるに至るまでの最大荷重を測定した。5個の試験体を試験し、最大荷重の平均値を引裂強度とした。
次に、他の電線を固定した状態で、アルミニウム電線1本を100mm/minで引っ張り、接合部分が引き裂かれるに至るまでの最大荷重を測定した。5個の試験体を試験し、最大荷重の平均値を引裂強度とした。結果を表1に示した。
【0048】
2.試験例2
表2に示す電線を用いて、試験例1と同様に試験体を作製し、引裂強度試験を行った。結果を表2に示した。
【0049】
3.試験例3
表3に示す電線を用いて、試験例1と同様に試験体を作製し、引裂強度試験を行った。結果を表3に示した。
【0050】
4.試験例4
表4に示す電線を用いて、試験例1と同様に試験体を作成し、引裂強度試験を行った。結果を表4に示した。
【0051】
5.試験例5
表5に示す電線を用いて、試験体を作製した。溶接機の銅推奨条件で、溶接ホーン側に、アルミニウム電線の芯線(断面積の合計が少ない方の芯線)が配置されるようにした。その他の作製条件は、試験例1と同様である。
得られた試験体について、試験例1と同様に引裂強度試験を行った。結果を表5に示した。
【0052】
6.試験例6
表6に示す電線を用いて、試験例1と同様に試験体を作成し、引裂強度試験を行った。結果を表6に示した。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
【0056】
【表4】
【0057】
【表5】
【0058】
【表6】
【0059】
[結果]
表1に示すように、試験例1において、銅電線を引っ張った場合、アルミニウム電線を引っ張った場合のいずれにおいても、高い引裂強度が示され、接合部分において2種の芯線が強固に接合していることが分かった。他の試験例についても同様であった。
【符号の説明】
【0060】
1、40、50…ハーネス
10A、51A…第1電線
10B、51B…第2電線
11A、52A…第1芯線
11B、52B…第2芯線
11AE、52AE…第1芯線露出部
11BE、52BE…第2芯線露出部
12A…第1絶縁被覆
12B…第2絶縁被覆
20、41、53…接合部
21、54…第1層
22、55…第2層
30…超音波溶接装置
31…アンビル(受け冶具)
32…溶接ホーン
L…左側面 (他方の対をなす外面)
R…右側面 (他方の対をなす外面)
Up…上面 (一方の対をなす外面、第2当接面)
Ud…下面 (一方の対をなす外面、第1当接面)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7