特許第6901063号(P6901063)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6901063
(24)【登録日】2021年6月21日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】締結装置及び締結具の良否判定方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/32 20060101AFI20210701BHJP
   B29C 65/60 20060101ALI20210701BHJP
   B29C 65/82 20060101ALI20210701BHJP
【FI】
   B29C65/32
   B29C65/60
   B29C65/82
【請求項の数】24
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2019-529052(P2019-529052)
(86)(22)【出願日】2018年6月28日
(86)【国際出願番号】JP2018024593
(87)【国際公開番号】WO2019013007
(87)【国際公開日】20190117
【審査請求日】2019年10月9日
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2017/046318
(32)【優先日】2017年12月25日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2017-134652(P2017-134652)
(32)【優先日】2017年7月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000208857
【氏名又は名称】第一電通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】特許業務法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】江口 剛志
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】平沢 照彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 英範
【審査官】 田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】 特表2017−511443(JP,A)
【文献】 特開平5−92300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/32
B29C 65/60
B29C 65/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿通孔が貫設された複数のワークを締結具によって締結する締結装置であって、
第1頭部と、前記第1頭部と一体をなして軸方向に延びる軸部とからなる中間具を用い、
前記軸部を前記各ワークの前記各挿通孔に挿通させつつ非接触の状態で前記軸部のみを加熱するとともに加圧することにより、前記中間具に前記軸部と一体をなして前記第1頭部と対面する第2頭部を形成し、前記中間具を前記締結具とする締結器具と、
前記締結具の良否を判定する判定器具とを備え、
前記中間具は繊維強化熱可塑性樹脂製であり、
前記締結器具は、加熱された前記軸部から前記第2頭部を形成可能な締結金型と、
前記締結金型を加圧可能な軸部加圧器具とを有し、
前記判定器具は、加圧中における時間と荷重とによって規定される荷重曲線を算出し、基準荷重を超えた後の前記荷重曲線の単位時間当たりの変化量が予め設定された第1基準値の範囲内であるか否かを判断することを特徴とする締結装置。
【請求項2】
前記締結金型は、第1型と、前記第1型と対面する第2型とからなり、
前記軸部加圧器具は、前記第1型が前記軸部に当接するまでは第1速度で前記第1型を前記第2型に接近させる一方、前記第1型が前記軸部に当接すれば、前記第1速度よりも遅い第2速度で前記第1型を前記第2型に接近させる請求項1記載の締結装置。
【請求項3】
前記繊維強化熱可塑性樹脂は炭素繊維強化熱可塑性樹脂である請求項1又は2記載の締結装置。
【請求項4】
前記締結器具は、前記軸部を誘導加熱可能な高周波誘導コイルを有している請求項3記載の締結装置。
【請求項5】
挿通孔が貫設された複数のワークを締結具によって締結する締結装置であって、
軸方向に延びる軸体を用い、
前記軸体を前記各ワークの前記各挿通孔に挿通させつつ非接触の状態で前記軸体のみを加熱するとともに加圧することにより、前記軸体を第1頭部と、前記第1頭部と一体をなして軸方向に延びる軸部と、前記第1頭部と対面する第2頭部とを形成し、前記軸体を前記締結具とする締結器具と、
前記締結具の良否を判定する判定器具とを備え、
前記軸体は繊維強化熱可塑性樹脂製であり、
前記締結器具は、加熱された前記軸体から前記締結具を形成可能な締結金型と、
前記締結金型を加圧可能な軸体加圧器具とを有し、
前記判定器具は、加圧中における時間と荷重とによって規定される荷重曲線を算出し、基準荷重を超えた後の前記荷重曲線の単位時間当たりの変化量が予め設定された第1基準値の範囲内であるか否かを判断することを特徴とする締結装置。
【請求項6】
前記締結金型は、第1型と、前記第1型と対面する第2型とからなり、
前記軸体加圧器具は、前記第1型が前記軸体に当接するまでは第1速度で前記第1型を前記第2型に接近させる一方、前記第1型が前記軸体に当接すれば、前記第1速度よりも遅い第2速度で前記第1型を前記第2型に接近させる請求項5記載の締結装置。
【請求項7】
前記繊維強化熱可塑性樹脂は炭素繊維強化熱可塑性樹脂である請求項5又は6記載の締結装置。
【請求項8】
前記締結器具は、前記軸体を誘導加熱可能な高周波誘導コイルを有している請求項7記載の締結装置。
【請求項9】
前記荷重曲線を時間に関して微分することによって算出される修正荷重曲線を前記荷重曲線として用いる請求項1乃至8のいずれか1項記載の締結装置。
【請求項10】
前記判定器具は、前記荷重曲線において、加圧後初めて示す第1ピークの後の低下量が予め設定された第2基準値の範囲内であるか否かを判断する請求項1乃至9のいずれか1項記載の締結装置。
【請求項11】
前記判定器具は、前記荷重曲線において、前記第1ピークの後に示す第2ピークまでのピーク間時間が予め設定された第3基準値の範囲内であるか否かを判断する請求項10記載の締結装置。
【請求項12】
前記判定器具の判定結果を記録する記録器具をさらに備えている請求項1乃至11のいずれか1項記載の締結装置。
【請求項13】
軸部加熱工程と締結工程とが実行されることにより、挿通孔が貫設された複数のワークを締結する締結具の良否判定方法であって、
前記軸部加熱工程では、第1頭部と、前記第1頭部と一体をなして軸方向に延びる軸部とからなる繊維強化熱可塑性樹脂製の中間具を用い、前記軸部を前記各ワークの前記各挿通孔に挿通させつつ非接触の状態で前記軸部のみを加熱し、
前記締結工程では、軸部加圧器具によって締結金型を加圧し、前記締結金型によって、加熱された前記軸部から、前記軸部と一体をなして前記第1頭部と対面する第2頭部を形成し、前記中間具を前記締結具とすることで前記各ワークを締結し、
前記良否判定方法は、加圧中における時間と荷重とによって規定される荷重曲線を算出し、基準荷重を超えた後の前記荷重曲線の単位時間当たりの変化量が予め設定された第1基準値の範囲内であるか否かを判断することを特徴とする締結具の良否判定方法。
【請求項14】
前記締結金型は、第1型と、前記第1型と対面する第2型とからなり、
前記軸部加圧器具は、前記第1型が前記軸部に当接するまでは第1速度で前記第1型を前記第2型に接近させる一方、前記第1型が前記軸部に当接すれば、前記第1速度よりも遅い第2速度で前記第1型を前記第2型に接近させる請求項13記載の締結具の良否判定方法。
【請求項15】
前記繊維強化熱可塑性樹脂は炭素繊維強化熱可塑性樹脂である請求項12又は14記載の締結具の良否判定方法。
【請求項16】
前記軸部加熱工程では、高周波誘導コイルによって前記軸部を誘導加熱する請求項15記載の締結具の良否判定方法。
【請求項17】
軸体加熱工程と締結工程とが実行されることにより、挿通孔が貫設された複数のワークを締結する締結具の良否判定方法であって、
前記軸体加熱工程では、軸方向に延びる繊維強化熱可塑性樹脂製の軸体を用い、前記軸体を前記各ワークの前記各挿通孔に挿通させつつ非接触の状態で前記軸体のみを加熱し、
前記締結工程では、軸体加圧器具によって締結金型を加圧し、前記締結金型によって、加熱された前記軸体から前記締結具を形成することで前記各ワークを締結し、
前記良否判定方法は、加圧中における時間と荷重とによって規定される荷重曲線を算出し、基準荷重を超えた後の前記荷重曲線の単位時間当たりの変化量が予め設定された第1基準値の範囲内であるか否かを判断することを特徴とする締結具の良否判定方法。
【請求項18】
前記締結金型は、第1型と、前記第1型と対面する第2型とからなり、
前記軸体加圧器具は、前記第1型が前記軸体に当接するまでは第1速度で前記第1型を前記第2型に接近させる一方、前記第1型が前記軸体に当接すれば、前記第1速度よりも遅い第2速度で前記第1型を前記第2型に接近させる請求項17記載の締結具の良否判定方法。
【請求項19】
前記繊維強化熱可塑性樹脂は炭素繊維強化熱可塑性樹脂である請求項17又は18記載の締結具の良否判定方法。
【請求項20】
前記軸体加熱工程では、高周波誘導コイルによって前記軸体を誘導加熱する請求項19記載の締結具の良否判定方法。
【請求項21】
前記荷重曲線を時間に関して微分することによって算出される修正荷重曲線を前記荷重曲線として用いる請求項13乃至20のいずれか1項記載の締結具の良否判定方法。
【請求項22】
前記荷重曲線において、加圧後初めて示す第1ピークの後の低下量が予め設定された第2基準値の範囲内であるか否かを判断する請求項13乃至21のいずれか1項記載の締結具の良否判定方法。
【請求項23】
前記荷重曲線において、前記第1ピークの後に示す第2ピークまでのピーク間時間が予め設定された第3基準値の範囲内であるか否かを判断する請求項22記載の締結具の良否判定方法。
【請求項24】
判定結果を記録する請求項13乃至23のいずれか1項記載の締結具の良否判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、挿通孔が貫設された複数のワークを締結具によって締結する締結装置と、締結具の良否判定方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
挿通孔が貫設された複数のワークを締結具によって締結する締結装置は、従来より種々のものが提案されている。また、近年では、締結具の軽量化や腐食等の防止の観点から、繊維強化樹脂製の締結具によって複数のワークを締結する締結装置も提案されている。このような締結装置は、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
この締結装置では、軸方向に延びる炭素繊維強化熱可塑性樹脂製の軸体を用いる。そして、始めにその軸体を各ワークの各挿通孔に挿通させる。次に、この状態で軸体及び各ワークを2つの締結金型の間に配置する。次に、両締結金型を加熱しつつ、両締結金型で軸体及び各ワークを加圧しつつ挟持する。これにより、軸体は、両締結金型によって加熱されて塑性変形可能な軟化状態となり、両締結金型による加圧によって塑性変形する。この結果、軸体の軸方向の一端側に第1頭部が形成されるとともに、軸方向の他端側に第2頭部が形成される。また、第1頭部と第2頭部との間には、各ワークの各挿通孔に挿通された軸部が形成される。こうして軸体は締結具となる。その後、締結具が冷却されることにより、締結具は各ワークを締結する。そして、これらの締結具及び各ワークが両締結金型から取り出されることにより、締結具による複数のワークの締結作業が完了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−244609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の締結装置では、加熱された両締結金型の熱によって軸体を加熱するため、軸体を塑性変形可能な軟化状態にするに当たって、両締結金型を高温にする必要がある。このため、両締結金型による加圧で軸体に第1、2頭部及び軸部が形成された後も、両締結金型は長期間に亘って高熱を維持することになる。この結果、この締結装置では、締結具が冷却されるまでに長い時間を要することになる。これにより、この締結装置では、締結具による複数のワークの締結作業を素早く行うことができない。
【0006】
また、締結具を形成するに当たって、軸体に対する加熱不良が生じ得る他、軸体には固体毎のバラツキが不可避的に存在する。これらにより、この締結装置では、締結具の形成不良が不可避的に生じることとなる。このような形成不良の締結具による場合、各ワークの締結作業が不完全となるおそれがあるものの、この締結装置では、形成不良の締結具やそれによる不完全な締結作業が生じても、その発見が難しい。このため、この締結装置では、各ワークの締結作業の品質を高くし難い。
【0007】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、繊維強化樹脂製の締結具による複数のワークの締結作業を迅速に行うことが可能であり、かつ、各ワークの締結作業の品質を高くすることが可能な締結装置と、締結具の良否判定方法とを提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の締結装置は、挿通孔が貫設された複数のワークを締結具によって締結する締結装置であって、
第1頭部と、前記第1頭部と一体をなして軸方向に延びる軸部とからなる中間具を用い、
前記軸部を前記各ワークの前記各挿通孔に挿通させつつ非接触の状態で前記軸部のみを加熱するとともに加圧することにより、前記中間具に前記軸部と一体をなして前記第1頭部と対面する第2頭部を形成し、前記中間具を前記締結具とする締結器具と、
前記締結具の良否を判定する判定器具とを備え、
前記中間具は繊維強化熱可塑性樹脂製であり、
前記締結器具は、加熱された前記軸部から前記第2頭部を形成可能な締結金型と、
前記締結金型を加圧可能な軸部加圧器具とを有し、
前記判定器具は、加圧中における時間と荷重とによって規定される荷重曲線を算出し、基準荷重を超えた後の前記荷重曲線の単位時間当たりの変化量が予め設定された第1基準値の範囲内であるか否かを判断することを特徴とする。
【0009】
本発明の第1の締結装置では、繊維強化熱可塑性樹脂製の中間具の軸部を加熱によって軟化させるために、軸部を各ワークの各挿通孔に挿通させつつ非接触の状態で加熱する。このため、この締結装置では、軸部を加熱するために締結金型を加熱する必要がない。これにより、軸部が加熱された中間具に比べ、締結金型は低温となる。このため、中間具から締結具を形成する際に、中間具の熱を締結金型に吸熱させることができる。この結果、この締結装置によれば、締結金型を加熱して締結具を形成する場合に比べ、形成された締結具を素早く冷却することができる。
【0010】
また、この締結装置では、判定器具は、加圧中における時間と荷重とによって規定される荷重曲線を算出し、基準荷重を超えた後の荷重曲線の単位時間当たりの変化量が予め設定された第1基準値の範囲内であるか否かを判断する。締結具の形成中に軸部に座屈や割れが生じれば、基準荷重を超えた後の荷重曲線の単位時間当たりの変化量が第1基準値の範囲を超えることとなる。これにより、判定器具は、締結具の形成不良を判定することが可能となる。こうして、この締結装置では、判定器具によって、締結具の良否を判定することが可能であるため、形成不良の締結具を発見し易く、また、形成不良の締結具による不完全な締結作業が生じても、その発見が容易となる。
【0011】
したがって、本発明の第1の締結装置によれば、繊維強化樹脂製の締結具による複数のワークの締結作業を迅速に行うことが可能であり、かつ、各ワークの締結作業の品質を高くすることができる。
【0012】
第1の締結装置において、締結金型は、第1型と、第1型と対面する第2型とからなり得る。そして、軸部加圧器具は、第1型が軸部に当接するまでは第1速度で第1型を第2型に接近させる一方、第1型が軸部に当接すれば、第1速度よりも遅い第2速度で第1型を第2型に接近させることが好ましい。
【0013】
この場合には、第1型が軸部に当接するまでは第1型を第2型に向けて素早く移動させる反面、第1型が軸部に当接した後は、締結金型を慎重に加圧することが可能となる。このため、各ワークの締結作業を迅速に行いつつ、締結具を好適に形成することが可能となる。
【0014】
第1の締結装置において、繊維強化熱可塑性樹脂は炭素繊維強化熱可塑性樹脂であることが好ましい。
【0015】
この場合、炭素繊維によって締結具を好適に補強することが可能となる。このため、たとえ各ワークに大きな荷重が作用した場合であっても、各ワークによって締結具の第1、2頭部が変形し難く、各ワークの締結が解除され難い。これにより、この締結装置によれば、各ワークを炭素繊維強化熱可塑性樹脂製の締結具で強固に締結することができる。
【0016】
上記の場合において、締結器具は、軸部を誘導加熱可能な高周波誘導コイルを有していることが好ましい。
【0017】
この締結装置では、高周波誘導コイルによって軸部を各ワークの各挿通孔に挿通させつつ非接触の状態で加熱する。ここで、中間具が炭素繊維強化熱可塑性樹脂製であることから、中間具は、軸部を含めて導電性を有している。これにより、高周波誘導コイルは、誘導加熱によって軸部を非接触で直接加熱することができる。この際、軟化した樹脂が熱源に付着し難い。また、炭素繊維は優れた伝熱性も有しているため、中間具全体に熱が伝わり易く、中間具全体が比較的短時間で軟化し易い。
【0018】
本発明の第2の締結装置は、挿通孔が貫設された複数のワークを締結具によって締結する締結装置であって、
軸方向に延びる軸体を用い、
前記軸体を前記各ワークの前記各挿通孔に挿通させつつ非接触の状態で前記軸体のみを加熱するとともに加圧することにより、前記軸体を第1頭部と、前記第1頭部と一体をなして軸方向に延びる軸部と、前記第1頭部と対面する第2頭部とを形成し、前記軸体を前記締結具とする締結器具と、
前記締結具の良否を判定する判定器具とを備え、
前記軸体は繊維強化熱可塑性樹脂製であり、
前記締結器具は、加熱された前記軸体から前記締結具を形成可能な締結金型と、
前記締結金型を加圧可能な軸体加圧器具とを有し、
前記判定器具は、加圧中における時間と荷重とによって規定される荷重曲線を算出し、基準荷重を超えた後の前記荷重曲線の単位時間当たりの変化量が予め設定された第1基準値の範囲内であるか否かを判断することを特徴とする。
【0019】
本発明の第2の締結装置では、軸体を各ワークの各挿通孔に挿通させつつ非接触の状態で加熱する。このため、この締結装置でも、軸体を加熱するために締結金型を加熱する必要がなく、軸体から締結具を形成する際に、軸体の熱を締結金型に吸熱させることができる。これにより、この締結装置でも、形成された締結具を素早く冷却することができる。
【0020】
また、この締結装置でも、判定器具は、加圧中における時間と荷重とによって規定される荷重曲線を算出し、基準荷重を超えた後の荷重曲線の単位時間当たりの変化量が予め設定された第1基準値の範囲内であるか否かを判断する。締結具の形成中に軸部や軸体に座屈や割れが生じれば、基準荷重を超えた後の荷重曲線の単位時間当たりの変化量が第1基準値の範囲を超えることとなる。これにより、判定器具は、締結具の形成不良を判定することが可能となる。こうして、この締結装置でも、判定器具によって、締結具の良否を判定することが可能であるため、形成不良の締結具を発見し易く、また、形成不良の締結具による不完全な締結作業が生じても、その発見が容易となる。
【0021】
したがって、本発明の第2の締結装置によっても、繊維強化樹脂製の締結具による複数のワークの締結作業を迅速に行うことが可能であり、かつ、各ワークの締結作業の品質を高くすることができる。
【0022】
特に、第2の締結装置では、軸体に対して第1頭部と第2頭部と軸部を同時に形成することで、中間具を用いることなく、軸体から締結具を直接形成する。このため、第2の締結装置では、第1の締結装置に比べて、より迅速に各ワークの締結作業を行うことができる。
【0023】
第2の締結装置において、締結金型は、第1型と、第1型と対面する第2型とからなり得る。そして、軸体加圧器具は、第1型が軸体に当接するまでは第1速度で第1型を第2型に接近させる一方、第1型が軸体に当接すれば、第1速度よりも遅い第2速度で第1型を第2型に接近させることが好ましい。この場合も、各ワークの締結作業を迅速に行いつつ、締結具を好適に形成することが可能となる。
【0024】
第2の締結装置において、繊維強化熱可塑性樹脂は炭素繊維強化熱可塑性樹脂であることが好ましい。
【0025】
この場合、炭素繊維によって締結具を好適に補強することが可能となる。このため、たとえ各ワークに大きな荷重が作用した場合であっても、各ワークによって締結具の第1、2頭部が変形し難く、各ワークの締結が解除され難い。これにより、この締結装置によれば、各ワークを炭素繊維強化熱可塑性樹脂製の締結具で強固に締結することができる。
【0026】
上記の場合において、締結器具は、軸体を誘導加熱可能な高周波誘導コイルを有していることが好ましい。
【0027】
この締結装置では、高周波誘導コイルによって軸体を各ワークの各挿通孔に挿通させつつ非接触の状態で加熱する。上記の中間具と同様、軸体も炭素繊維強化熱可塑性樹脂製であることから、高周波誘導コイルは、誘導加熱によって軸体を非接触で直接加熱することができる。この際、軟化した樹脂が熱源に付着し難い。また、炭素繊維は優れた伝熱性も有しているため、締結具全体に熱が伝わり易く、締結具全体が比較的短時間で軟化し易い。
【0028】
第1の締結装置及び第2の締結装置において、荷重曲線を時間に関して微分することによって算出される修正荷重曲線を荷重曲線として用いることも好ましい。
【0029】
第1の締結装置及び第2の締結装置において、判定器具は、荷重曲線において、加圧後初めて示す第1ピークの後の低下量が予め設定された第2基準値の範囲内であるか否かを判断することも好ましい。
【0030】
軸部や軸体に対する加熱が不足して軸部や軸体が十分に塑性変形可能な軟化状態とならなかった場合や、反対に軸部や軸体に対する加熱が過剰となり、軸部や軸体が必要以上に軟化した場合には、荷重曲線において、第1ピークの後の低下量が予め設定された第2基準値の範囲を超えることとなる。このため、このような場合にも、判定器具は、締結具の形成不良を判定することが可能となる。
【0031】
また、この場合、判定器具は、荷重曲線において、第1ピークの後に示す第2ピークまでのピーク間時間が予め設定された第3基準値の範囲内であるか否かを判断することが好ましい。
【0032】
軸部や軸体に対する加熱が不足したり、軸部や軸体に対する加熱が過剰となったりした場合には、荷重曲線におけるピーク間時間が第3基準値の範囲内を超えることとなる。このため、判定器具は、締結具の形成不良をより好適に判定することが可能となる。
【0033】
第1の締結装置及び第2の締結装置は、判定器具の判定結果を記録する記録器具をさらに備えていることが好ましい。この場合には、締結具の品質管理、ひいては、各ワークの締結作業の品質管理を好適に行うことが可能となる。
【0034】
本発明の第1の締結具の良否判定方法は、軸部加熱工程と締結工程とが実行されることにより、挿通孔が貫設された複数のワークを締結する締結具の良否判定方法であって、
前記軸部加熱工程では、第1頭部と、前記第1頭部と一体をなして軸方向に延びる軸部とからなる繊維強化熱可塑性樹脂製の中間具を用い、前記軸部を前記各ワークの前記各挿通孔に挿通させつつ非接触の状態で前記軸部のみを加熱し、
前記締結工程では、軸部加圧器具によって締結金型を加圧し、前記締結金型によって、加熱された前記軸部から、前記軸部と一体をなして前記第1頭部と対面する第2頭部を形成し、前記中間具を前記締結具とすることで前記各ワークを締結し、
前記良否判定方法は、加圧中における時間と荷重とによって規定される荷重曲線を算出し、基準荷重を超えた後の前記荷重曲線の単位時間当たりの変化量が予め設定された第1基準値の範囲内であるか否かを判断することを特徴とする。
【0035】
第1の締結具の良否判定方法において、締結金型は、第1型と、第1型と対面する第2型とからなり得る。そして、軸部加圧器具は、第1型が軸部に当接するまでは第1速度で第1型を第2型に接近させる一方、第1型が軸部に当接すれば、第1速度よりも遅い第2速度で第1型を第2型に接近させることが好ましい。
【0036】
第1の締結具の良否判定方法において、繊維強化熱可塑性樹脂は炭素繊維強化熱可塑性樹脂であることが好ましい。
【0037】
上記の場合において、軸部加熱工程では、高周波誘導コイルによって軸部を誘導加熱することが好ましい。
【0038】
本発明の第2の締結具の良否判定方法は、軸体加熱工程と締結工程とが実行されることにより、挿通孔が貫設された複数のワークを締結する締結具の良否判定方法であって、
前記軸体加熱工程では、軸方向に延びる繊維強化熱可塑性樹脂製の軸体を用い、前記軸体を前記各ワークの前記各挿通孔に挿通させつつ非接触の状態で前記軸体のみを加熱し、
前記締結工程では、軸体加圧器具によって締結金型を加圧し、前記締結金型によって、加熱された前記軸体から前記締結具を形成することで前記各ワークを締結し、
前記良否判定方法は、加圧中における時間と荷重とによって規定される荷重曲線を算出し、基準荷重を超えた後の前記荷重曲線の単位時間当たりの変化量が予め設定された第1基準値の範囲内であるか否かを判断することを特徴とする。
【0039】
第2の締結具の良否判定方法において、締結金型は、第1型と、第1型と対面する第2型とからなり得る。そして、軸体加圧器具は、第1型が軸体に当接するまでは第1速度で第1型を第2型に接近させる一方、第1型が軸体に当接すれば、第1速度よりも遅い第2速度で第1型を第2型に接近させることが好ましい。
【0040】
第2の締結具の良否判定方法において、繊維強化熱可塑性樹脂は炭素繊維強化熱可塑性樹脂であることが好ましい。
【0041】
上記の場合において、軸体加熱工程では、高周波誘導コイルによって前記軸体を誘導加熱することが好ましい。
【0042】
第1の締結具の良否判定方法及び第2の締結具の良否判定方法では、荷重曲線を時間に関して微分することによって算出される修正荷重曲線を荷重曲線として用いることも好ましい。
【0043】
第1の締結具の良否判定方法及び第2の締結具の良否判定方法では、荷重曲線において、加圧後初めて示す第1ピークの後の低下量が予め設定された第2基準値の範囲内であるか否かを判断することが好ましい。
【0044】
また、この場合、荷重曲線において、第1ピークの後に示す第2ピークまでのピーク間時間が予め設定された第3基準値の範囲内であるか否かを判断することが好ましい。
【0045】
第1の締結具の良否判定方法及び第2の締結具の良否判定方法では、判定結果を記録することが好ましい。
【発明の効果】
【0046】
本発明の第1の締結装置、第2の締結装置、第1の締結具の良否判定方法及び第2の締結具の良否判定方法によれば、繊維強化樹脂製の締結具による複数のワークの締結作業を迅速に行うことが可能であり、かつ、各ワークの締結作業の品質を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1図1は、実施例1の締結装置を示す模式図である。
図2図2は、実施例1の締結装置によってワークの締結作業を行う際の流れ図である。
図3図3は、実施例1の締結装置によって軸部加熱工程を行う際の制御フローである。
図4図4は、実施例1の締結装置によって締結工程を行う際の制御フローである。
図5図5は、実施例1の締結装置によって判定工程を行う際の制御フローである。
図6図6は、中間具を示す断面図である。
図7図7は、実施例1の締結装置に係り、軸部を各ワークの各挿通孔に挿通させた中間具が保持金型に保持された状態を示す要部拡大断面図である。
図8図8は、実施例1の締結装置に係り、軸部が高周波誘導コイルによって誘導加熱されている状態を示す要部拡大断面図である。
図9図9は、実施例1の締結装置に係り、図8におけるD1方向から軸部及び高周波誘導コイルを見た場合の上面図である。
図10図10は、実施例1の締結装置に係り、頭部成形金型が軸部に当接した状態を示す要部拡大断面図である。
図11図11は、実施例1の締結装置に係り、第2頭部が形成され、締結具によって各ワークが締結された状態を示す要部拡大断面図である。
図12図12は、実施例1の締結装置に係り、各ワークを締結した締結具等を示す要部拡大断面図である。
図13図13は、実施例1の締結装置に係り、締結工程で算出された荷重曲線を示すグラフである。
図14図14は、実施例1の締結装置に係り、締結具の形成が良好である場合の修正荷重曲線を示すグラフである。
図15図15は、実施例1の締結装置に係り、締結具の形成が不良である場合の修正荷重曲線を示すグラフである。
図16図16は、軸体を示す断面図である。
図17図17は、実施例2の締結装置に係り、ワークの各挿通孔に軸体を挿通させた状態を示す要部拡大断面図である。
図18図18は、実施例2の締結装置に係り、軸体が高周波誘導コイルによって誘導加熱されている状態を示す要部拡大断面図である。
図19図19は、実施例2の締結装置に係り、頭部成形金型及び保持金型が軸体に当接した状態を示す要部拡大断面図である。
図20図20は、実施例2の締結装置に係り、第1頭部、第2頭部及び軸部が形成され、締結具によって各ワークが締結された状態を示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明を具体化した実施例1、2を図面を参照しつつ説明する。
【0049】
(実施例1)
図1に示すように、実施例1の締結装置は、プレスユニット1と、高周波誘導加熱機3と、制御コンピュータ5とによって構成されている。プレスユニット1及び高周波誘導加熱機3は、本発明における「締結器具」を構成している。この締結装置では、図12に示すように、締結具11によって、金属製の第1ワークW1と金属製の第2ワークW2との締結作業を行う。なお、第1ワークW1及び第2ワークW1の材質は適宜変更可能である。
【0050】
本実施例では、図1の紙面の上方を締結装置の上方とし、図1の紙面の下方を締結装置の下方として、締結装置の上下方向を規定している。また、図1の紙面の右方を締結装置の右方とし、図1の紙面の左方を締結装置の左方として、締結装置の左右方向を規定している。また、図7、8、10、11、17〜20は、図1における領域Xを拡大した断面図である。そして、図7等では、図1に対応させて上下方向及び左右方向を規定している。なお、これらの上下方向及び左右方向は一例であり、適宜変更可能である。
【0051】
図1に示すように、プレスユニット1は、支持部材7とサーボプレス機9とを有している。支持部材7は、上側に位置する上端部7aと、下側に位置する下端部7bと、上端部7aと下端部7bとに接続する把持部7cとを有しており、略コ字形状をなしている。また、支持部材7において、上端部7aと下端部7bとの間は、作業空間7dが形成されている。上端部7aには、サーボプレス機9を取り付けるための第1台座71が設けられている。第1台座71には、作業空間7dに向かって上下方向に延びる貫通孔73が形成されている。下端部7bには、作業空間7d内に位置するように第2台座75が設けられている。第2台座75には、後述する締結金型15の一部を構成する保持金型151を取付可能となっている。作業空間7dは左方が開放されており、高周波誘導加熱機3の高周波誘導コイル3bが進入可能となっている。把持部7cは、作業空間7dよりも右方で上下方向に延びている。
【0052】
サーボプレス機9は、プレス機本体9aとプレスヘッド9bとを有している。サーボプレス機9は、本発明における「軸体加圧器具」及び「軸部加圧器具」の一例である。図示を省略するものの、プレス機本体9a内には、サーボモータやサーボモータの作動制御を行うプレスコントローラが設けられている他、プレスヘッド9bを通じて締結金型15に作用する荷重を検知する荷重検出検知器等が設けられている。プレスヘッド9bはプレス機本体9aに取り付けられている。プレスヘッド9bは、サーボモータによって速度や荷重を適宜変更しつつ、プレス機本体9aから伸縮可能となっている。プレスヘッド9bには、後述する頭部成形金型151が取り付けられるようになっている。
【0053】
プレスユニット1では、貫通孔73にプレスヘッド9bを挿通させた状態で、プレス機本体9aが複数のボルト13によって第1台座71に固定されている。こうして、プレスユニット1では、支持部材7とサーボプレス機9とが一体とされている。そして、プレスヘッド9bは、プレス機本体9aから伸縮し、作業空間7d内を自己の軸方向に移動することで、図1に示す初期位置と、図7及び図8等に示す待機位置と、図11及び図20に示すプレス位置とに変位可能となっている。初期位置とは、図1に示すように、作業空間7d内において、プレスヘッド9bが第2台座75から最も遠ざかる位置である。待機位置は、図7及び図8等に示すように、作業空間7d内において、プレスヘッド9bが初期位置よりも第2台座75に近づいた位置である。プレス位置は、図11及び図20に示すように、作業空間7d内において、プレスヘッド9bが第2台座75に最も近づいた位置である。
【0054】
また、図1に示すように、この締結装置では、プレスユニット1は第1作業用アーム101によって保持されている。具体的には、第1作業用アーム101は支持部材7の把持部7cを把持することにより、プレスユニット1を保持している。詳細な図示を省略するものの、第1作業用アーム101は把持部7cを把持した状態で回動及び伸縮可能に構成されている。これにより、第1作業用アーム101は、制御コンピュータ5によって制御されることにより、任意の角度でプレスユニット1を保持することが可能となっている。
【0055】
図1及び図8に示すように、高周波誘導加熱機3は、本体部3aと、第1高周波誘導コイル3bと、通電コントローラ3cと、図示しない温度センサとを有している。第1高周波誘導コイル3bは、本発明における「高周波誘導コイル」の一例である。本体部3aは、第2作業用アーム102によって保持されている。高周波誘導コイル3bは、本体部3aに固定されており、本体部3a側から支持部材7の作業空間7d側に向かって延びている。図9に示すように、高周波誘導コイル3bにおける作業空間7d側には、1つの先端部31が設けられている。この先端部31には、後述する軸部11bを囲包可能な凹部31aが形成されている。図1及び図7に示す通電コントローラ3cは、本体部3aに固定されている。通電コントローラ3cは、制御コンピュータ5によって制御されることにより、第1高周波誘導コイル3bに電力を供給する。温度センサは、軸部11bの表面温度を検出する。
【0056】
第2作業用アーム102は、本体部3aを把持した状態で回動及び伸縮可能に構成されている。これにより、第2作業用アーム102は、制御コンピュータ5によって制御されることにより、任意の角度で高周波誘導加熱機3を保持することが可能となっている。また、第2作業用アーム102は、制御コンピュータ5によって制御されることにより、本体部3aを移動させて、第1高周波誘導コイル3bを図1に示す退避位置と、図8及び図18に示す加熱位置とに変位させることが可能となっている。退避位置は、図1に示すように、第1高周波誘導コイル3bが作業空間7d内から脱した位置である。加熱位置は、図8及び図18に示すように、第1高周波誘導コイル3bが作業空間7d内に進入した位置である。
【0057】
図1に示す制御コンピュータ5は、サーボプレス機9、通電コントローラ3c、第1作業用アーム101、第2作業用アーム102及び後述する第3作業用アーム103に制御信号を発信することで、これらの制御を実行する。さらに、制御コンピュータ5は、本発明における「判定器具」としても機能し、締結具11の良否判定を行う。
【0058】
制御コンピュータ5は、コンピュータ本体5aと、ディスプレイ5bと、キーボード5cとを有している。キーボード5cは、図示しない作業者が後述する中間具110や軸体111の寸法の他、第1、2ワークW1、W2の形状や材質等の作業用データを入力可能である。
【0059】
コンピュータ本体5a内には、ROM51、RAM52、CPU53及びストレージ54等が収容されている。ROM51には、サーボプレス機9、通電コントローラ3c、第1〜3作業用アーム101〜103等の制御を行うための各種の制御プログラムが記憶されている。また、ROM51には、図13に示す荷重曲線や図14及び図15に示す修正荷重曲線を算出するための算出プログラムが記憶されている他、第1〜5基準値が記憶されている。さらに、ROM51には、締結具11の良否判定を行うための判定プログラムが記憶されている。
【0060】
RAM52には、キーボード5cを通じて入力された作業用データが記憶される他、荷重曲線や修正荷重曲線が記憶される。CPU53は、ROM51に記憶された制御プログラム及びRAM52に記憶された作業用データに基づき、サーボプレス機9等を制御するための各種の演算を行う。また、CPU53は、荷重曲線を算出する他、荷重曲線から修正荷重曲線を算出する。また、CPU53は、第1〜5基準値及び判定プログラムに基づき、締結具11の良否判定を行う。
【0061】
ストレージ54は、本発明における「記録器具」の一例である。ストレージ54は磁気ディスクやシリコンディスク等によって構成されており、CPU53による締結具11の良否判定の結果を記録する他、CPU53が算出した荷重曲線を記録する。ディスプレイ5bには、作業者が入力した作業用データの他、締結装置の作動状態等が表示される。さらに、ディスプレイ5bには、CPU53が算出した修正荷重曲線が表示される他、締結具11の良否判定の結果が表示される。なお、荷重曲線、修正荷重曲線及び第1〜5基準値についての詳細は後述する。
【0062】
以上のように構成された締結装置では、図2に示す流れ図に沿って、締結具11による第1ワークW1と第2ワークW2との締結作業を行う。以下、具体的に説明する。まず始めに、準備工程として、図12に示す第1ワークW1及び第2ワークW2を準備するとともに、図6に示す中間具110を準備する(ステップS1)。図12に示すように、第1ワークW1には挿通孔W10が貫設されており、第2ワークW2には挿通孔W20が貫設されている。挿通孔W10と挿通孔W20とは同径であり、後述する中間具110の軸部11bを挿通可能となっている。
【0063】
図6に示すように、中間具110は、ナイロン等の熱可塑性樹脂TPと、複数の炭素繊維CFとで構成されている。つまり、中間具110は、炭素繊維強化熱可塑性樹脂(CFRTP)製である。中間具110は、第1頭部11aと軸部11bとからなる。第1頭部11aは、挿通孔W10及び挿通孔W20よりも大径をなす略半球状に形成されている。軸部11bは、第1頭部11aよりも小径の円柱状に形成されている。軸部11bは、一端側で第1頭部11aと一体をなしており、他端側が軸方向に向かって直線状に延びている。第1頭部11aの径の大きさや軸部11bの軸方向の長さ等を含む中間具110の寸法は、締結を行う第1、2ワークW1、W2の形状に応じて規定されている。また、各炭素繊維CFは、第1頭部11aから軸部11bの他端側の端部まで延びている。なお、図6及び図12では、説明を容易にするため、炭素繊維CFの数を簡略化しているとともに、炭素繊維CFの形状を誇張して図示している。また、第1頭部11aは、挿通孔W10、W20よりも大径であれば、他の形状であっても良い。同様に、軸部11bは、円柱状に限らず、他の形状であっても良い。
【0064】
次に、作業者は、キーボード5cを通じて必要な作業用データを入力する(図2のステップS2)。そして、作業者は、制御コンピュータ5によって、第1、2作業用アーム101、102の制御信号を送信し、第1、2作業用アーム101、102の制御を開始する。これにより、第1作業用アーム101は、図1に示すように、サーボプレス機9が上下方向に起立する状態でプレスユニット1を保持する。また、第2作業用アーム102は、プレスユニット1の左方に高周波誘導加熱機3を位置させる。
【0065】
次に、作業者は、プレスユニット1に中間金型15を取り付ける(図2のステップS3)。図7に示すように、中間金型15は、保持金型151と頭部成形金型152とで構成されている。保持金型151は本発明における「第2型」の一例であり、頭部成形金型152は本発明における「第1型」の一例である。保持金型151には、中間具110の第1頭部11aを保持可能な半球状の第1凹部151aが凹設されている。保持金型151は、第1凹部151aをプレスヘッド9b側に向けた状態で支持部材7の第2台座75に取り付けられている。頭部成形金型152には、半球状の第2凹部152aが形成されている。第2凹部152aは、第1凹部151aと同径状に形成されている。頭部成形金型152は、第2凹部152aを保持金型151側に向けた状態でプレスヘッド9bに取り付けられている。第2凹部152aは、第2ワークW2との間に第1キャビティC1を形成する。なお、第2凹部152aは、第1凹部151aと異なる径状であっても良い。
【0066】
次に、軸部加熱工程を行う(図2のステップS4)。この軸部加熱工程は、図3に示す制御フローに基づいて行われる。この軸部加熱工程では、中間具110の軸部11bを第1、2ワークW1、W2の各挿通孔W10、W20に挿通させつつ非接触の状態で軸部11bを加熱する。まず始めに、作業者は、制御コンピュータ5によって、図7に示す第3作業用アーム103に制御信号を送信する。これにより、第3作業用アーム103は、中間具110を保持金型151まで運搬し、第1頭部11aを第1凹部151aに載置する。こうして、第1頭部11aを保持金型151に保持させる(ステップS401)。これにより、中間具110では、軸部11bの他端側が頭部成形金型152の第2凹部152aに向かって延びる状態となる。また、第3作業用アーム103は、第1ワークW1を中間具110まで運搬し、挿通孔W10に軸部11bを挿通させる。これにより、第1ワークW1は保持金型151に載置される。さらに、第3作業用アーム103は、第2ワークW2を中間具110まで運搬し、挿通孔W10と挿通孔W20とを整合させつつ、挿通孔W20に軸部11bを挿通させる。こうして、第1ワークW1と第2ワークW2と中間具110とが第1組付体A1を構成する。なお、第3作業用アーム103は、挿通孔W20に軸部11bを挿通させた後も第2ワークW2を保持することで、第1組付体A1を保持し続ける。また、図7等では、説明を容易にするため、挿通孔W10、W20の形状を誇張して図示しているものの、挿通孔W10、W20と軸部11bとは、ほぼ同径に形成されている。
【0067】
中間具110を保持金型151に保持させた後、作業者は、制御コンピュータ5によって、サーボプレス機9の制御信号を送信する(図3のステップS402)。これにより、プレスユニット1では、サーボプレス機9がプレスヘッド9bを作動させる。このため、プレスヘッド9bが図1に示す初期位置から第2台座75、ひいては、保持金型151に向かって下降を開始する(図3のステップS403)。プレスヘッド9bの下降は、プレスヘッド9bが待機位置に到達するまで継続する(ステップS404:NO)。そして、図7、8に示すように、作業空間7d内において、プレスヘッド9bが待機位置に到達すれば、サーボプレス機9は、プレスヘッド9bの下降を停止する(図3のステップS404:YES)。
【0068】
このように、プレスヘッド9bが待機位置に到達すれば、制御コンピュータ5は、第2作業用アーム102に制御信号を送信する。これにより、図8の黒色矢印で示すように、第2作業用アーム102は、高周波誘導加熱機3をプレスユニット1に向けて移動させる。これにより、第1高周波誘導コイル3bは、図1に示す退避位置から図8に示す加熱位置に向けて移動を開始する(図3のステップS405)。ここで、第1高周波誘導コイル3bが加熱位置に到達していなければ、第2作業用アーム102は高周波誘導加熱機3の移動を継続する(ステップS406:NO)。そして、第1高周波誘導コイル3bが加熱位置に到達すれば、第2作業用アーム102は高周波誘導加熱機3の移動を停止する(ステップS406:YES)。
【0069】
第1高周波誘導コイル3bが加熱位置に到達することにより、図9に示すように、第1高周波誘導コイル3bの先端部31は、作業空間7d内で中間具110に接近する。そして、先端部31に形成された凹部31a内に、軸部11bの他端側が収容される。ここで、第1高周波誘導コイル3bが加熱位置に到達しても、凹部31aを含め、第1高周波誘導コイル3bと中間具110とは接触しない。なお、図9では、説明を容易にするため、第1、2ワークW1、W2等の図示を省略している。
【0070】
このように、第1高周波誘導コイル3bが加熱位置にある状態で、制御コンピュータ5は通電コントローラ3cに制御信号を送信する。これにより、通電コントローラ3cは、第1高周波誘導コイル3bに向けて通電を開始する。このため、第1高周波誘導コイル3bは磁力線を発生させる。ここで、中間具110は、CFRTP製であることから、炭素繊維CFが導電性及び優れた伝熱性を発揮する。このため、凹部31a内に収容された軸部11bは、磁力線の影響によって内部に渦電流が発生する。これにより、軸部11bは、渦電流に基づくジュール熱で発熱する。こうして、軸部11bに対して、第1高周波誘導コイル3bによる誘導加熱が開始される(図3のステップS407)。また、温度センサは、軸部11bの表面温度を検出する。
【0071】
この軸部11bに対する誘導加熱は、軸部11bの一端側の表面温度が制御プログラムによって予め設定された設定温度に達した後、予め設定された設定時間が経過するまで継続される(ステップS408:NO)。そして、軸部11bの一端側の表面温度が設定温度に達し、設定時間が経過すれば(ステップS408:YES)、制御コンピュータ5は、通電コントローラ3cから誘導コイル3への通電を終了させる。こうして、軸部11bに対する誘導加熱が終了する(ステップS409)。この誘導加熱を経ることにより、軸体11bの他端側は、発熱によって塑性変形可能な軟化状態となる。
【0072】
軸部11bに対する誘導加熱が終了すれば、制御コンピュータ5は、第2作業用アーム102を再び制御し、高周波誘導加熱機3をプレスユニット1から遠ざける。これにより、第1高周波誘導コイル3bは、図8に示す加熱位置から図1に示す退避位置に向けて移動を開始する(図3のステップS410)。第2作業用アーム102による高周波誘導加熱機3の移動は、第1高周波誘導コイル3bが退避位置に到達するまで継続する(ステップS411:NO)。そして、第1高周波誘導コイル3bが退避位置に到達すれば、第2作業アーム102は高周波誘導加熱機3の移動を停止する(ステップS410:YES)。こうして、軸部加熱工程が終了する。
【0073】
次に、締結工程を行う(図2のステップS5)。この締結工程は、図4に示す制御フローに基づいて行われる。締結工程では、制御コンピュータ5がサーボプレス機9を制御する。これにより、サーボプレス機9は、図10の白色矢印で示すように、待機位置にあるプレスヘッド9bをプレス位置に向けて下降させる(図4のステップS501)。上記のように、サーボプレス機9において、プレスヘッド9bは、サーボモータによって速度や荷重を適宜変更しつつ、プレス機本体9aから伸縮可能となっている。このため、制御コンピュータ5は、待機位置からプレス位置に向けてプレスヘッド9bを下降させるに当たっては、まず第1速度でプレスヘッド9bを下降させて、頭部成形金型152を保持金型151に接近させる。また、この際、制御コンピュータ5は、プレスヘッド9bの荷重を第1荷重に設定する。こうして、サーボプレス機9は、第1荷重による締結金型15の加圧を開始する。
【0074】
さらに、プレスヘッド9bがプレス位置に向けて下降することにより、プレス機本体9aの荷重検出検知器は、検知した荷重を制御コンピュータ5に向けて送信する。これにより、制御コンピュータ5では、荷重検出検知器が検知した荷重に基づき、CPU53が荷重曲線の算出を開始する(ステップS502)。この荷重曲線は、サーボプレス機9による締結金型15の加圧中における時間と、プレスヘッド9bを通じて締結金型15に作用する荷重、ひいては中間具110に作用する荷重とによって規定されている(図13参照)。
【0075】
このように、プレスヘッド9bがプレス位置に向けて下降し、保持金型151と頭部成形金型152とが接近することで、図10に示すように、保持金型151に保持された中間具110では、軸部11bの他端側が頭部成形金型152の第2凹部152a内に進入する。そして、軸部11bの他端側が第2凹部152aの内周面と当接することにより、サーボプレス機9は、頭部成形金型152が軸部11bに当接したことを検知し、第1当接検知信号を制御コンピュータ5に向けて送信する。制御コンピュータ5は、第1当接検知信号の受信の有無により、頭部成形金型152と軸部11bとの当接の有無を判断する。このため、制御コンピュータ5は、第1当接検知信号を受信するまでは(図4のステップS503:NO)、第1速度かつ第1荷重でプレスヘッド9bを下降させる。一方、制御コンピュータ5は、第1当接検知信号を受信すれば(ステップS503:YES)、第1速度よりも遅い第2速度でプレスヘッド9bを下降させるように、サーボプレス機9に向けて速度切替信号を発信する(ステップS504)。また同時に、制御コンピュータ5は、プレスヘッド9bの荷重を第1荷重から徐々に増大させる。
【0076】
サーボプレス機9は、速度切替信号を受信することにより、プレスヘッド9bの下降速度を第2速度に切り替える(ステップS505)。このように、頭部成形金型152が軸部11bに当接した後、実際にプレスヘッド9bの下降速度が第2速度に切り替わるまでには、時間に多少のずれが存在することとなる。そして、これ以降は、プレスヘッド9bは、第2速度でプレス位置に向けて下降する。つまり、プレスヘッド9bは、頭部成形金型152によって軸部11bの他端側を塑性変形させつつ、第2速度で頭部成形金型152を保持金型151に接近させる。また、この際、プレスヘッド9bは、第1荷重から図13に示す基準荷重まで荷重を増大し、さらに、基準荷重から目標荷重まで荷重を増大する。図13に、プレスヘッド9bの荷重が基準荷重を超えた時間TR1と、プレスヘッド9bの荷重が目標荷重まで増大した時間TR2とを示す。図14及び図15にも、プレスヘッド9bの荷重が基準荷重を超えた時間TR1と、プレスヘッド9bの荷重が目標荷重まで増大した時間TR2とを示す。ここで、プレスヘッド9bは、目標荷重に到達するまで荷重を増大し続ける(ステップS506:NO)。一方、目標荷重まで荷重が増大すれば(ステップS506:YES)、制御コンピュータ5は、プレスヘッド9bの荷重増大を停止する。
【0077】
そして、図11に示すように、プレスヘッド9bがプレス位置に到達して、頭部成形金型152と保持金型151とが最接近することにより、頭部成形金型152と第2ワークW2とが当接する。また、サーボプレス機9は、頭部成形金型152と第2ワークW2との当接を検知することで、第2当接検知信号を制御コンピュータ5に向けて送信する。つまり、制御コンピュータ5は、第2当接検知信号の受信の有無により、プレスヘッド9bがプレス位置に到達したか否かを判断する。このため、制御コンピュータ5は、第2当接検知信号を受信するまでは(ステップS507:NO)、引き続きプレスヘッド9bを第2速度で下降させる。一方、制御コンピュータ5は、第2当接検知信号を受信すれば(ステップS507:YES)、保持金型151と頭部成形金型152とによって、第1組付体A1を所定の保持圧力で保持する(ステップS508)。なお、この保持圧力は、制御プログラムによって予め設定されている。
【0078】
こうして、軸部11bの他端側には、第1キャビティC1によって第2頭部11cが形成される。これにより、中間具110から締結具11が得られる。上記のように、中間具110がCFRTP製であることから、締結具11もCFRTP製である。締結具11において、第2頭部11cは、軸部11bを挟んで第1頭部11aと対向している。また、第1頭部11aと同様、第2頭部11cは軸部11bよりも大径をなしており、第1、2ワークW1、W2の挿通孔W10、W20よりも大径となっている。これにより、図12に示すように、挿通孔W10、W20に挿通された軸部11bは、第1頭部11a及び第2頭部11cによって両側から抜け止めされる。こうして、第1、2ワークW1、W2が締結具11によって締結される。
【0079】
この保持金型151と頭部成形金型152とによる第1組付体A1の保持は、制御プログラムによって予め設定された保持時間が経過するまで継続される(図4のステップS509:NO)。このため、締結工程では、上記の軸部加熱工程において加熱された軸部11b、ひいては、中間具110から得られた締結具11の熱が締結金型15である保持金型151及び頭部成形金型152に吸熱される。そして、保持時間が経過すれば(ステップS509:YES)、制御コンピュータ5は、サーボプレス機9を制御し、プレスヘッド9bを初期位置に向けて変位させる(ステップS510)。また、制御コンピュータ5のCPU53は、荷重曲線の算出を終了する(ステップS511)。CPU53が算出した荷重曲線は、例えば図13に示すグラフのような形状となる。そして、この荷重曲線は、RAM52に一時的に記憶される。こうして、締結工程が終了し、第1ワークW1と第2ワークW2との締結作業が完了する。なお、図13に示す荷重曲線は一例であり、軸部加熱工程における軸部11bに対する加熱の程度の他、締結工程における軸部11bの塑性変形の程度等によって、CPU53が算出する荷重曲線は適宜変化する。
【0080】
次に、判定工程を行う(図2のステップS6)。この判定工程では、制御コンピュータ5が上記の締結工程で形成された締結具11の良否を判定する。具体的には、ROM51に記録された算出プログラムや判定プログラムに基づき、CPU53が図5に示す制御フローに沿って締結具11の良否を判定する。
【0081】
判定工程では、まず始めに、CPU53は、締結工程で算出した荷重曲線から修正荷重曲線を算出する(ステップS601)。この修正荷重曲線は、締結工程で算出した荷重曲線を時間に関して微分することによって算出される(図14及び図15参照)。算出された修正荷重曲線は、RAM52に一時的に記憶されるとともに、ディスプレイ5bに表示される(ステップS602)。
【0082】
ここで、図13に示す荷重曲線や図14及び図15に示す修正荷重曲線を参照しつつ、締結工程時にプレスヘッド9bを通じて締結金型15、ひいては中間具110に作用する荷重の変化について説明する。上記のように、締結工程では、プレスヘッド9bの荷重を第1荷重に設定しつつ、プレスヘッド9bがプレス位置に向けて下降を開始するものの、軸部11bの他端側が第2凹部152aの内周面と当接するまでは、締結金型15、ひいては、中間具110に作用する荷重はほぼゼロとなる。そして、軸部11bの他端側が第2凹部152aの内周面と当接することにより、中間具110に作用する荷重が一時的に大きくなる。このため、図13に示す荷重曲線や図14及び図15に示す修正荷重曲線では、サーボプレス機9による締結金型15の加圧後に、初めて第1ピークP1が示される。
【0083】
軸部11bの他端側は誘導加熱によって塑性変形可能な軟化状態となっているため、軸部11bの他端側が第2凹部152aの内周面と当接すれば、軸部11bの他端側は第2凹部152aの形状に沿って塑性変形し始める。このため、図14及び図15に示す領域Y1のように、第1ピークP1後に中間具110に作用する荷重は低下する。その後、プレスヘッド9bの荷重が第1荷重から徐々に増大することにより、中間具110に作用する荷重が再び徐々に増加し始める。そして、プレスヘッド9bの下降速度が第1速度から第2速度に実際に切り替わる際、中間具110に作用する荷重が一時的に大きくなり、荷重曲線や修正荷重曲線では、第2ピークP2が示される。
【0084】
第2ピークP2の後、中間具110に作用する荷重が一時的に低下するものの、プレスヘッド9bの荷重が第1荷重から基準荷重まで増大するにつれて、中間具110に作用する荷重も基準荷重まで増大する。さらに、プレスヘッド9bの荷重が基準荷重を超えて目標荷重まで増大することにより、中間具110に作用する荷重も基準荷重を超えて目標荷重まで増大する。目標荷重に到達した後は、保持金型151と頭部成形金型152とによって、第1組付体A1が所定の保持圧力で保持されるため、中間具110には保持圧力に相当する荷重が作用する。なお、保持時間が経過し、プレスヘッド9bを初期位置に向けて変位することにより、中間具110、すなわち、締結具11に作用する荷重が低下することになる(図14及び図15参照)。
【0085】
また、CPU53は、ROM51に記憶された第1〜5基準値の読出しを行う(図5に示すステップS603)。第1基準値は、基準荷重を超えた後の荷重曲線の単位時間当たりの変化量が設定されている。第2基準値は、荷重曲線における第1ピークP1の後の低下量が設定されている。第3基準値は、荷重曲線において、第1ピークP1から第2ピークP2までのピーク間時間が設定されている。第4基準値は、荷重曲線における第1ピークP1の大きさが設定されている。第5基準値は、荷重曲線において、サーボプレス機9による締結金型15の加圧の開始から第1ピークP1が発生するまでの時間が設定されている。ここで、これらの第1〜5基準値は、締結具11の形成が良好であると判断された複数種類の荷重曲線に基づいて決定されている。なお、第1〜5基準値を理論値等としても良い。
【0086】
そして、CPU53は、図4に示すステップS501からステップS511の間に算出した現実の荷重曲線が第1〜5基準値の各範囲内にあるか否かを判断する。具体的には、この締結装置では、CPU53が荷重曲線に基づいて修正荷重曲線を算出しているため、図5に示すステップS604〜ステップS608を経ることにより、修正荷重曲線が第1〜5基準値の各範囲内にあるか否かを判断する。以下、ステップS601において、図14に示す修正荷重曲線が算出された場合と、図15に示す修正荷重曲線が算出された場合とに分けて説明する。
【0087】
図14に示す修正荷重曲線が算出された場合>
まず始めに、CPU53は、サーボプレス機9による締結金型15の加圧の開始から第1ピークP1が発生するまでの時間である第1時間T1が第5基準値の範囲内であるか否かを判断する。ここで、中間具110における軸部11bの寸法が予め設定された規格の範囲内にあれば、サーボプレス機9による締結金型15の加圧開始から、軸部11bの他端側が第2凹部152aの内周面と当接するまでの時間はおおよそ一定となる。このため、図14に示す修正荷重曲線において、第1時間T1が第5基準値の範囲内となり、第1ピークP1の発生が第5基準値の範囲内となる(図5に示すステップS604:YES)。反対に、軸部11bの寸法が規格から外れていれば、サーボプレス機9による締結金型15の加圧開始から、軸部11bの他端側が第2凹部152aの内周面と当接するまでの時間のバラツキが大きくなる。また、保持金型151に保持された中間具110に傾き等が生じている場合にも、軸部11bの他端側が第2凹部152aの内周面と当接するまでの時間のバラツキが大きくなる。これらのため、第1時間T1が第5基準値よりも長くなったり、短くなったりする。この場合、CPU53は、第1ピークP1の発生が第5基準値の範囲を超えていると判断する(ステップS604:NO)。第5基準値の範囲を超えているとCPU53が判断した場合には、以降のステップS605からステップS609までの判断は行わずに、ステップS612へ進む。
【0088】
図14に示す修正荷重曲線では、CPU53は、第1ピークP1の発生が第5基準値の範囲内であると判定した(ステップS604:YES)。このため、次に、CPU53は、修正荷重曲線において、第1ピークP1の大きさが第4基準値の範囲内であるか否かを判断する。軸部11bに対する誘導加熱が好適に行われ、軸部11bの他端側が好適に塑性変形可能な軟化状態となっている場合には、第1ピークP1の大きさはおおよそ一定となり、第4基準値の範囲内となる(ステップS605:YES)。しかし、例えば、軸部11bに対する誘導加熱において、軸部11bの表面温度は設定温度に達していたものの、軸部11bの内部は十分に加熱されず、塑性変形可能な軟化状態となっていなかったり、設定温度到達後、設定時間が経過するまでに軸部11bの他端側が過剰に軟化したりする等、軸部11bに対する誘導加熱が好適に行われなかった場合もあり得る。このような場合、修正荷重曲線において、第1ピークP1の大きさのバラツキが大きくなることから、CPU53は、第1ピークP1の大きさが第4基準値の範囲を超えていると判断する(ステップS605:NO)。第4基準値の範囲を超えているとCPU53が判断した場合には、以降のステップS606からステップS609までの判断は行わずに、ステップS612へ進む。
【0089】
図14に示す修正荷重曲線では、CPU53は、第1ピークP1の大きさが第4基準値の範囲内であると判定した(ステップS605:YES)。このため、次に、CPU53は、修正荷重曲線において、第1ピークP1の後の低下量が第2基準値の範囲内であるか否かを判断する。具体的には、CPU53は、領域Y1での低下量が第2基準値の範囲内であるか否かを判断する。ここで、軸部11bの他端側が好適に塑性変形可能な軟化状態となっている場合には、軸部11bの他端側における塑性変形が好適に開始する。このため、第1ピークP1の後の低下量はおおよそ一定となり、第2基準値の範囲内となる(ステップS606:YES)。しかし、上記のように、軸部11bに対する誘導加熱が好適に行われなかった場合には、軸部11bの他端側における塑性変形が好適に開始せず、修正荷重曲線において、第1ピークP1の後の低下量、すなわち、領域Y1での低下量のバラツキが大きくなる。これにより、CPU53は、第1ピークP1の後の低下量が第2基準値の範囲を超えていると判断する(ステップS606:NO)。第2基準値の範囲を超えているとCPU53が判断した場合には、以降のステップS607からステップS609までの判断は行わずに、ステップS612へ進む。
【0090】
図14に示す修正荷重曲線では、CPU53は、第1ピークP1の後の低下量が第2基準値の範囲内であると判定した(ステップS606:YES)。このため、次に、CPU53は、修正荷重曲線において、第1ピークP1から第2ピークP2までのピーク間時間である第2時間T2が第3基準値の範囲内であるか否かを判断する。ここで、軸部11bの他端側が好適に塑性変形可能な軟化状態となっており、軸部11bの他端側における塑性変形が好適に行われている場合には、第2時間T2の長さはおおよそ一定となり、第3基準値の範囲内となる(ステップS607:YES)。しかし、軸部11bの他端側が塑性変形可能な軟化状態となっていなかったり、軸部11bの他端側が過剰に軟化したりする場合には、軸部11bの他端側における塑性変形が好適に行われない。このため、第2時間T2が第3基準値よりも長くなったり、短くなったりする。この場合、CPU53は、ピーク間時間、つまり第2時間T2が第3基準値の範囲を超えていると判断する(ステップS607:NO)。第3基準値の範囲を超えているとCPU53が判断した場合には、以降のステップS608及びステップS609の判断は行わずに、ステップS612へ進む。
【0091】
図14に示す修正荷重曲線では、CPU53は、第2時間T2が第3基準値の範囲内であると判定した(ステップS607:YES)。このため、次に、CPU53は、基準荷重を超えた後の荷重曲線の単位時間当たりの変化量が第1基準値の範囲内であるか否かを判断する。軸部11bの他端側における塑性変形が好適に行われている場合、プレスヘッド9bの荷重が基準荷重を超えて目標荷重まで増大することにより、多少の荷重のバラツキはあるものの、基準荷重から目標荷重まで、中間具110に作用する荷重は比較的なだらかに増大する。このため、修正荷重曲線においても、基準荷重から目標荷重まで中間具110に作用する荷重がなだらかに増大するため、基準荷重を超えた後の修正荷重曲線の単位時間当たりの変化量は、第1基準値の範囲内となる。そして、図14に示す修正荷重曲線では、CPU53は、基準荷重を超えた後の修正荷重曲線の単位時間当たりの変化量が第1基準値の範囲内であると判断した(図5に示すステップS608:YES)。
【0092】
つまり、図14に示す修正荷重曲線では、CPU53は、上記の各項目がいずれも第1〜5基準値の範囲内であると判定した。このため、制御コンピュータ5は、上記の締結工程における締結具11の形成が良好であると判定する(ステップS609)。また、制御コンピュータ5は、判定結果をディスプレイ5bに表示することで作業者に判定結果を報知する(ステップS610)。さらに、制御コンピュータ5は、上記の判定結果と、図14に示す修正荷重曲線の基となった荷重曲線とをストレージ54に記録する(ステップS611)。こうして、判定工程が終了する。
【0093】
図15に示す修正荷重曲線が算出された場合>
この場合についても、CPU53は、第1〜4基準値については、いずれも範囲内であると判定した(ステップS603〜S607:YES)。ここで、この修正荷重曲線では、図15に示す領域Y2において、荷重が著しく低下している。このような荷重の低下は、プレスヘッド9bの荷重が基準荷重を超えて目標荷重まで増大する際、軸部11bに座屈や割れが生じたことが要因であると考えられる。そこで、このような場合には、CPU53は、基準荷重を超えた後の荷重曲線の単位時間当たりの変化量が第1基準値の範囲を超えていると判定する(ステップS608:NO)。
【0094】
このため、制御コンピュータ5は、上記の締結工程における締結具11の形成が不良であると判定する(ステップS612)。なお、第1〜4基準値のいずれかにおいて、CPU53が範囲を超えていると判定した場合についても、制御コンピュータ5は、締結具11の形成が不良であると判定する。
【0095】
そして、締結具11の形成が不良であると判定した場合についても、制御コンピュータ5は、判定結果をディスプレイ5bに表示することで作業者に判定結果を告知する(ステップS610)。さらに、制御コンピュータ5は、上記の判定結果と、図15の修正荷重曲線の基となった荷重曲線とをストレージ54に記録する(ステップS611)。こうして、この場合も判定工程が終了する。
【0096】
判定工程が終了した後、締結具11によって締結された第1、2ワークW1、W2を締結金型15から取り出す(図2に示すステップS7)。この取り出しは、第3作業用アーム103によって行う。こうして、第1ワークW1と第2ワークW2との締結作業が完了する。そして、作業者は、形成が良好であると判定された締結具11によって締結された第1ワークW1と第2ワークW2との締結物については、良品の締結物として処理する。一方、作業者は、形成が不良であると判定された締結具11によって締結された第1ワークW1と第2ワークW2との締結物については、不完全な締結作業による締結物として、良品の締結物とは別に処理する。
【0097】
このように、この締結装置では、第1高周波誘導コイル3bによって軸部11bを加熱する。このため、軸部加熱工程において、第1高周波誘導コイル3bによる誘導加熱で軸部11bの他端側を非接触で直接かつ局所的に加熱することができる。この際、軟化した樹脂が熱源に付着し難い。このため、この締結装置では、軸部11bを加熱するに当たって、締結金型15を加熱する必要がない。これにより、軸部11bが加熱された中間具110に比べ、締結金型15は低温となる。このため、中間具110から締結具11を形成する際に、中間具110の熱を締結金型15に吸熱させることができる。この結果、この締結装置によれば、締結金型15を加熱して締結具11を形成する場合に比べ、形成された締結具11を素早く冷却することができる。
【0098】
また、この締結装置では、制御コンピュータ5によって、締結具11の形成の良否を判定することが可能であるため、形成不良の締結具11を発見し易くなっている。また、この締結装置では、形成不良の締結具11による不完全な第1ワークW1と第2ワークW2との締結作業が生じても、その発見が容易となっている。
【0099】
したがって、実施例1の締結装置によれば、繊維強化樹脂製の締結具11による第1ワークW1と第2ワークW2との締結作業を迅速に行うことが可能であり、かつ、第1ワークW1と第2ワークW2との締結作業の品質を高くすることができる。
【0100】
特に、この締結装置において、サーボプレス機9は、頭部成形金型152の第2凹部152aの内周面に軸部11bの他端側が当接するまでは、第1速度で頭部成形金型152を保持金型151に接近させる一方、第2凹部152aの内周面に軸部11bの他端側が当接すれば、第2速度で頭部成形金型152を保持金型151に接近させる。このため、サーボプレス機9は、第2凹部152aの内周面に軸部11bの他端側が当接するまでは、頭部成形金型152を保持金型151に向けて素早く移動させる反面、第2凹部152aの内周面に軸部11bの他端側が当接した後は、締結金型15を慎重に加圧することが可能となっている。これにより、この締結装置では、第1ワークW1と第2ワークW2との締結作業を迅速に行いつつ、締結具11を好適に形成することが可能となっている。
【0101】
また、この締結装置では、CPU53が荷重曲線に基づいて算出した修正荷重曲線をディスプレイ5bに表示しつつ、締結具11の良否判定を行う。そして、締結具11の良否判定の結果についてもディスプレイ5bに表示される。このため、締結具11の形成が不良であると判定された際、作業者は、ディスプレイ5bに表示された修正荷重曲線を参照することで、締結具11の形成不良の要因を容易に発見することが可能となっている。
【0102】
さらに、形成が不良であると判定された締結具11によって締結された第1ワークW1と第2ワークW2との締結物については、不完全な締結作業による締結物として、良品の締結物とは別に処理する。このため、不完全な締結作業による締結物が良品の締結物に混入することを未然に防止することが可能となっている。
【0103】
また、この締結装置では、締結具11の良否判定の結果及び荷重曲線をストレージ54に記録するため、締結具11の品質管理、ひいては、第1ワークW1と第2ワークW2との締結作業の品質管理を好適に行うことが可能となっている。
【0104】
さらに、図6に示すように、中間具110では、各炭素繊維CFが第1頭部11aから軸部11bの他端側の端部まで延びている。このため、締結工程を経ることにより、締結具11では、図12に示すように、各炭素繊維CFが第1頭部11aから軸部11bを経て第2頭部11cまで延びることとなる。このため、第1、2頭部11a、11c及び軸部11bを炭素繊維CFによって好適に補強することが可能となっている。このため、たとえ第1ワークW1や第2ワークW2に大きな荷重が作用した場合であっても、第1ワークW1や第2ワークW2によって第1、2頭部11a、11cが変形し難く、第1ワークW1と第2ワークW2との締結が解除され難くなっている。これにより、この締結装置によれば、第1ワークW1と第2ワークW2とをCFRTP製の締結具11で強固に締結することができる。
【0105】
(実施例2)
実施例2の締結装置は、高周波誘導加熱機3が第1高周波誘導コイル3bに換えて、図18に示す第2高周波誘導コイル3dを有している。第2高周波誘導コイル3dも本発明における「高周波誘導コイル」の一例である。第2高周波誘導コイル3dには、先端部32と先端部33とが形成されている。先端部32は、実施例1における先端部31と同様の形状をなしている。先端部33は、先端部32と対称の形状となっている。つまり、先端部32には凹部32aが形成されており、先端部33には凹部33aが形成されている。これらの凹部32a及び凹部33aは、後述する軸体111を囲包可能となっている。先端部32と先端部33とは、双方の間に第1ワークW1及び第2ワークW2を収容可能な間隔を設けつつ、軸体111、ひいては、締結具11の軸方向に整列して配置されている。また、この締結装置では、通電コントローラ3c(図1参照)は、第2高周波誘導コイル3dに電力を供給可能となっている。さらに、温度センサは、軸体111の表面温度を検出する。この締結装置における他の構成は実施例1の締結装置と同様であり、同一の構成については同一の符号を付して構成に関する詳細な説明を省略する。
【0106】
この締結装置では、以下の締結方法によって、締結具11による第1ワークW1と第2ワークW2との締結作業を行う。まず始めに、準備工程として、第1ワークW1及び第2ワークW2を準備するとともに、図16に示す軸体111を準備する。上記の中間具110と同様、軸体111も、ナイロン等の熱可塑性樹脂TPと、複数の炭素繊維CFとで構成されている。つまり、軸体111もCFRTP製である。軸体111は、軸方向に延びる円柱状をなしている。軸体111の寸法は、締結を行う第1、2ワークW1、W2の形状に応じて規定されている。また、各炭素繊維CFは、軸体111の軸方向の一端側から他端側まで延びている。なお、図16では、説明を容易にするため、炭素繊維CFの数を簡略化しているとともに、炭素繊維CFの形状を誇張して図示している。
【0107】
次に、作業者は、実施例1の締結装置と同様、キーボード5cを通じて必要な作業用データを入力する。そして、作業者は、制御コンピュータ5によって、第1、2作業用アーム101、102の制御信号を送信し、第1、2作業用アーム101、102の制御を開始する。この際、第1作業用アーム101は、図1に示す状態から右方向にプレスユニット1を90°回転させてプレスユニット1を保持する。つまり、プレスユニット1では、サーボプレス機9が左右方向に水平な状態となっている。また、第2作業用アーム102は、高周波誘導加熱機3を保持しつつ、プレスユニット1の上方に高周波誘導加熱機3を位置させる。
【0108】
次に、実施例1の締結装置と同様、作業者は、プレスユニット1に締結金型15を取り付ける(図17参照)。これにより、この締結装置では、頭部成形金型152の第2凹部152aは、第1ワークW1との間で第2キャビティC2を形成する。また、保持金型151の第1凹部151aは、第2ワークW2との間で第3キャビティC3を形成する。
【0109】
次に、作業者は、制御コンピュータ5によって第3作業用アーム103を制御し、第1ワークW1の挿通孔W10と、第2ワークW2の挿通孔W20とに軸体111を挿通させる。これにより、第1ワークW1と、第2ワークW2と、軸体111とにより、第2組付体A2が構成される。次に、第3作業用アーム103は、第1ワークW1を保持しつつ、第2組付体A2を作業空間7d内で頭部成形金型152と保持金型151との間に配置する。この際、第3作業用アーム103は、第2組付体A2において軸体111が上下方向に直交する状態、つまり、軸体111が第1凹部151a及び第2凹部152aに対向する状態で、頭部成形金型152と保持金型151との間に第2組付体A2を配置する。なお、図17図20においても、説明を容易にするため、挿通孔W10、W20の形状を誇張して図示しているものの、軸体111、ひいては軸部11bと、挿通孔W10、W20とは、ほぼ同径に形成されている。このため、頭部成形金型152と保持金型151との間に第2組付体A2を配置した際に、挿通孔W10、W20から軸体111が抜け落ちることが確実性高く防止されている。
【0110】
次に、制御コンピュータ5がサーボプレス機9を制御することにより、プレスヘッド9bを初期位置から待機位置に変位させる。そして、軸体加熱工程を行う。軸体加熱工程では、軸体111を第1、2ワークW1、W2の各挿通孔W10、W20に挿通させつつ非接触の状態で軸体111を加熱する。まず、制御コンピュータ5は、第2作業用アーム102に制御信号を送信し、高周波誘導加熱機3を下降させて、図18に示すように、第2高周波誘導コイル3dを加熱位置に移動させる。これにより、第2高周波誘導コイル3dでは、先端部32に形成された凹部32a内に軸体111の一端側が収容され、先端部33に形成された凹部33a内に軸体111の他端側が収容される。なお、この場合も、第2高周波誘導コイル3dと軸体111とは接触しない。
【0111】
そして、制御コンピュータ5が通電コントローラ3cに制御信号を送信し、通電コントローラ3cが第2高周波誘導コイル3dに向けて通電を開始することにより、第2高周波誘導コイル3dによる軸体111に対する誘導加熱が開始される。こうして、第2高周波誘導コイル3dにより、軸体111の一端側と他端側とが同時に加熱される。このため、軸体111は、両端が発熱によって塑性変形可能な軟化状態となる。そして、実施例1の締結装置と同様、軸体111の一端側及び他端側の温度が設定温度に達した後、設定時間が経過することで、軸体111に対する誘導加熱が終了する。これにより、第2作業用アーム102は、第2高周波誘導コイル3dを退避位置に移動させる。こうして、軸体加熱工程が終了する。
【0112】
次に、締結工程を行う。締結工程では、実施例1の締結装置と同様、制御コンピュータ5がサーボプレス機9を制御し、図19の白色矢印で示すように、待機位置にあるプレスヘッド9bをプレス位置に向けて移動させる。この場合も、制御コンピュータ5は、まずは、第1速度で頭部成形金型152を保持金型151に接近させる。また、制御コンピュータ5は、プレスヘッド9bの荷重を第1荷重に設定する。こうして、サーボプレス機9は、第1荷重による締結金型15の加圧を開始する。さらに、実施例1の締結装置と同様、制御コンピュータ5のCPU53は、荷重曲線の算出を開始する。ここで、この締結装置では、同図の黒色矢印で示すように、プレスヘッド9bがプレス位置に移動することに合わせて、第3作業用アーム103は、第2組付体A2を保持金型151に徐々に近づける。
【0113】
こうして、軸部111の一端側が頭部成形金型152の第2凹部152a内に進入するとともに、軸部111の他端側が保持金型151の第1凹部151a内に進入する。そして、頭部成形金型152が軸部111の一端側に当接すると同時に、保持金型151が軸部111の他端側に当接する。これにより、サーボプレス機9は、頭部成形金型151が軸部111に当接したことを検知し、実施例1の締結装置と同様、第1当接検知信号を制御コンピュータ5に向けて送信する。そして、制御コンピュータ5は、第1当接検知信号を受信すれば、実施例1の締結装置と同様、サーボプレス機9に対して、第1速度から第2速度への速度切替信号を発信する。また同時に、制御コンピュータ5は、プレスヘッド9bの荷重を第1荷重から徐々に増大させる。
【0114】
これにより、プレスヘッド9bは、頭部成形金型152によって軸体111の一端側を塑性変形させつつ、プレス位置に向けてさらに移動する。また、保持金型151によって軸体111の他端側も同様に塑性変形する。そして、図20に示すように、プレスヘッド9bがプレス位置に到達することにより、この締結装置では、第1ワークW1と頭部成形金型152とが当接するとともに、第2ワークW2と保持金型151とが当接する。また、サーボプレス機9は、第1ワークW1と頭部成形金型152とが当接を検知することで、第3当接検知信号を制御コンピュータ5に向けて送信する。制御コンピュータ5は、第3当接検知信号を受信すれば、サーボプレス機9を制御して、保持金型151と頭部成形金型152とによって、第2組付体A2を所定の保持圧力で所定の保持時間が経過するまで保持する。なお、この際の保持圧力及び保持時間は実施例1の締結装置と同様である。
【0115】
こうして、軸体111の一端側には、第2キャビティC2によって第1頭部11aが形成され、軸体111の他端側には、第3キャビティC3によって第2頭部11cが形成される。また、第1頭部11aと第2頭部11cとの間には、軸部11bが形成される。このように、この締結装置では、CFRTP製の軸体111からCFRTP製締結具11が得られる。また、実施例1の締結装置と同様、締結具11の熱は、締結金型15である保持金型151及び頭部成形金型152に吸熱される。これにより、第1、2ワークW1、W2がCFRTP製の締結具11によって締結される。そして、制御コンピュータ5のCPU53は、荷重曲線の算出を終了する。こうして、締結工程が終了し、第1ワークW1と第2ワークW2との締結作業が完了する。
【0116】
さらに、実施例1の締結装置と同様、この締結装置においても、図5に示す制御フローに沿って、制御コンピュータ5が上記の締結工程で形成された締結具11の良否を判定する。
【0117】
このように、この締結装置では、軸体111に対して第1頭部11aと第2頭部11cと軸部11bを同時に形成することで、中間具110を用いることなく、軸体111から締結具11を直接形成する。このため、この締結装置では、実施例1の締結装置に比べて、より迅速に第1ワークW1と第2ワークW2との締結作業を行うことが可能となっている。また、図16に示すように、軸体111では、軸方向の一端側から他端側まで各炭素繊維CFが延びている。このため、軸体111から得られた締結具11についても、各炭素繊維CFが第1頭部11aから軸部11bを経て第2頭部11cまで延びることとなる。このため、この締結具11でも、第1、2頭部11a、11c及び軸部11bを炭素繊維CFによって好適に補強することが可能となっている。この締結装置における他の作用は実施例1の締結装置と同様である。
【0118】
以上において、本発明を実施例1、2に即して説明したが、本発明は上記実施例1、2に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0119】
(変形例)
実施例1に係る第1高周波誘導コイル3bや、実施例2に係る第1高周波誘導コイル3dの代わりに、赤外線ヒータを採用し、軸部又は軸体を非接触の状態で加熱する構成も本発明に含まれる。この変形例において、赤外線ヒータは、ガラス管と、その内部に配設されたヒータ電線と、ガラス管の壁面の一部、又はガラス管の外部に設けられた反射面とを有している。赤外線ヒータの形状は、図8及び図9に示す第1高周波誘導コイル3bや、図18に示す第1高周波誘導コイル3dと同様の形状であってもよいし、軸部又は軸体を非接触の状態で加熱可能であれば、どのような形状であってもよい。そして、この変形例では、実施例1、2の締結装置と同様、図5に示す制御フローに沿って、制御コンピュータ5が上記の締結工程で形成された締結具11の良否を判定する。したがって、この変形例においても、繊維強化樹脂製の締結具11による第1ワークW1と第2ワークW2との締結作業を迅速に行うことが可能であり、かつ、第1ワークW1と第2ワークW2との締結作業の品質を高くすることができる。
【0120】
例えば、実施例1の締結装置では、第1〜5基準値の全てが範囲内にある場合に締結具11の形成が良好であると判定している。しかし、これに限らず、第1〜5基準値のうちのいずれか1つが範囲内にある場合や、第1〜5基準値のうちで2つ以上が範囲内にある場合には、締結具11の形成が良好であると判定しても良い。実施例2の締結装置も同様である。
【0121】
また、実施例1の締結装置において、第1〜5基準値以外の基準値を設け、この基準値に基づいて締結具11の良否判定を行っても良い。実施例2の締結装置も同様である。
【0122】
さらに、実施例1の締結装置では、ディスプレイ5bに修正荷重曲線を表示しつつ、締結具11の良否判定を行うとともに、締結具11の良否判定の結果をディスプレイ5bに表示している。しかし、これに限らず、作業者が操作を行った時のみ、修正荷重曲線や締結具11の良否判定の結果をディスプレイ5bに表示しても良い。実施例2の締結装置も同様である。
【0123】
また、実施例1の締結装置では、締結具11の良否判定を行うに当たって、締結工程で算出された荷重曲線から修正荷重曲線を算出している。しかし、これに限らず、修正荷重曲線を算出せずに、締結工程で算出された荷重曲線から締結具11の良否判定を行っても良い。実施例2の締結装置も同様である。
【0124】
さらに、実施例1の締結装置において、軸部11bの他端側の温度が設定温度に達するか否かを問わず、設定時間が経過することのみによって軸部11bに対する誘導加熱を終了させても良い。実施例2の締結装置における軸体111に対する誘導加熱も同様である。
【0125】
また、実施例2の締結装置において、高周波誘導加熱機3は、軸体111の一端側のみを誘導加熱する高周波誘導コイルと、軸体111の他端側のみを誘導加熱する高周波誘導コイルとを有していても良い。
【0126】
また、実施例1、2の締結装置について、締結金型15を冷却液によって冷却可能に構成しても良い。
【0127】
さらに、中間具110及び軸体111、ひいては締結具11は、交差する複数の炭素繊維CFを含んでいても良い。
【0128】
また、実施例1に係る中間具110と、実施例2に係る軸体111とが炭素繊維強化熱可塑性樹脂(CFRTP)製であるが、この構成には限定されない。たとえば、中間具は、例えばガラス繊維等の炭素繊維とは異なる繊維によって強化された熱可塑性樹脂製であってもよいし、それらの繊維と炭素繊維とを含む複数種類の繊維によって強化された熱可塑性樹脂製であってもよい。軸体についても同様である。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明は車両の組立装置等に利用可能である。
【符号の説明】
【0130】
1…プレスユニット(締結器具)
3…高周波誘導加熱機(締結器具)
3b…第1高周波誘導コイル(高周波誘導コイル)
3d…第2高周波誘導コイル(高周波誘導コイル)
5…制御コンピュータ(判定器具)
9…サーボプレス機(軸部加圧器具、軸体加圧器具)
11…締結具
11a…第1頭部
11b…軸部
11c…第2頭部
15…締結金型
54…ストレージ(記録器具)
110…中間具
111…軸体
151…保持金型(第2型)
152…頭部成形金型(第1型)
P1…第1ピーク
P2…第2ピーク
W1…第1ワーク(ワーク)
W2…第2ワーク(ワーク)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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