特許第6901165号(P6901165)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6901165
(24)【登録日】2021年6月21日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】平衡接近反応器
(51)【国際特許分類】
   C10K 3/00 20060101AFI20210701BHJP
   C10K 1/02 20060101ALI20210701BHJP
   B01D 45/00 20060101ALI20210701BHJP
   B01J 19/24 20060101ALI20210701BHJP
【FI】
   C10K3/00
   C10K1/02
   B01D45/00
   B01J19/24 Z
【請求項の数】13
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2019-516281(P2019-516281)
(86)(22)【出願日】2017年6月1日
(65)【公表番号】特表2019-523812(P2019-523812A)
(43)【公表日】2019年8月29日
(86)【国際出願番号】GB2017051573
(87)【国際公開番号】WO2017212223
(87)【国際公開日】20171214
【審査請求日】2020年5月1日
(31)【優先権主張番号】1609849.3
(32)【優先日】2016年6月6日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】519422603
【氏名又は名称】キュウ テクノロジー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】KEW TECHNOLOGY LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100105131
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 満
(72)【発明者】
【氏名】カルシ,カマルディープ
【審査官】 森 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−059158(JP,A)
【文献】 特開昭62−045689(JP,A)
【文献】 特開2015−059159(JP,A)
【文献】 特開2009−298974(JP,A)
【文献】 特開2015−131936(JP,A)
【文献】 特表2014−515774(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0090938(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10J 1/00− 3/86
C10K 1/00− 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素質材料のガス化により得られた様々なレベルの固体を有するシンガス処理するための平衡接近反応器であって、
第1のチャンバ、第2のチャンバ及び第3のチャンバを有する容器であって、前記第1及び第2のチャンバは前記第1及び第2のチャンバに対して断面積が縮小した領域を有する接続部により接続され、前記第1のチャンバは前記シンガスが前記容器に流入することを可能にするように動作可能な入口を有する、該容器と、
酸素の前記第1のチャンバへの注入を許容する少なくとも3つの酸素の注入ノズルを有し、
前記入口及び前記注入ノズルは、前記第1のチャンバ、前記第2のチャンバ及び前記第3のチャンバのそれぞれを通過する軸に対して前記容器の周囲にらせん状に配置され、
前記第2のチャンバは処理済材料が前記容器から流出することを可能にするように動作可能な出口を有し、
前記入口から流入したシンガスが前記容器内に少なくとも10秒間にわたって保持され
前記第3のチャンバは、前記第2のチャンバの底部に落下した個体汚染物質を受容するように構成され、
前記第3のチャンバは蒸気注入点を有する、平衡接近反応器。
【請求項2】
1100℃超で動作するように構成される、請求項1に記載の平衡接近反応器。
【請求項3】
前記シンガスが灰分を含み、動作温度が前記灰分の溶融温度よりも低く維持される、請求項2に記載の平衡接近反応器。
【請求項4】
前記容器内の圧力が大気圧より高い圧力に保たれる、請求項1から3のいずれか一項に記載の平衡接近反応器。
【請求項5】
前記圧力が0.5〜12バール(g)である、請求項4に記載の平衡接近反応器。
【請求項6】
前記入口が熱交換器を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の平衡接近反応器。
【請求項7】
前記熱交換器が炭化ケイ素から構成される、請求項6に記載の平衡接近反応器。
【請求項8】
炭素質材料のガス化により得られた様々なレベルの固体を有するシンガスを処理するための平衡接近反応器であって、
第1のチャンバ及び第2のチャンバを有する容器であって、前記第1及び第2のチャンバは前記第1及び第2のチャンバに対して断面積が縮小した領域を有する接続部により接続されている、該容器を有し、
前記第1のチャンバは前記シンガスが前記容器に流入することを可能にするように動作可能な入口を有し、
前記第2のチャンバは処理済材料が前記容器から流出することを可能にするように動作可能な出口を有し、
前記入口から流入したシンガスが化学平衡に接近するのを可能にするように前記入口から流入したシンガスが前記容器内に少なくとも10秒間にわたって保持され、
前記平衡接近反応器システムはさらに、
一定の割合の前記シンガスの自己着火を生じさせて、前記容器内の温度を上昇させることで、前記シンガスが化学平衡に接近するように少なくとも10秒間にわたって前記シンガスが前記容器内に保持されるように、前記容器内に酸素を注入するように動作可能な酸素注入システムと、
酸素の前記第1のチャンバへの注入を許容する少なくとも3つの酸素の注入ノズルを有し、
前記入口及び前記注入ノズルは、前記容器の主軸に対して前記容器の周囲にらせん状に配置され、
前記酸素の注入ノズルはさらなる媒体の同時注入を可能にするための手段を有する、平衡接近反応器システム。
【請求項9】
1050℃から1200℃の間で動作するように構成される、請求項に記載の平衡反接近応器システム。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれかの平衡接近反応器又は請求項8又は9のシステムを動作させる方法であって、
a.前記入口から前記シンガス前記第1のチャンバに導入するステップと、
b.シンガスを前記容器内に少なくとも10秒間にわたって保持するステップを含む方法。
【請求項11】
前記反応器が1100℃超で動作される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記反応器が大気圧より高い圧力で動作される、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記反応器が複数の動作モードを含む、請求項10から12のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は平衡接近反応器に関し、さらに発電及び化学合成用に利用可能な安定した高品質エネルギ化学ガス製品を製造するための装置、及びその動作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの技術的及び工業的な分野で再利用及び燃料効率化に向けた流れがある。そのような分野の1つは、廃棄物からエネルギのある化学ベクトル(chemical vector/化学誘導物)を回収することに向けられている。そのようなガスは発電で使用可能であり、典型的には可燃燃料として使用される。
【0003】
そのようなガスの1つは合成ガス又はシンガスと称される。主成分として水素、一酸化炭素及び二酸化炭素を含むガスは、一般にシンガスと称される。様々な工業プロセス(工業処理)は、原料としてシンガスを必要とする。これらのプロセスは、メタノール、軽油、及びアンモニアなどの生成物の化学合成、並びに主エネルギとしてシンガスを利用する発電プロセスを含む。現在、後者の用途への関心は、資源の有効利用に対する需要、及び低炭素技術への流れから生じたバイオマス及び廃棄物燃料のガス化プロセスの出現と共にますます広まっている。
【0004】
周知のプロセスは、一般に、高度に多様な度合いで水素などの永久ガスを含むガスを生成し、また汚染成分を含むことが多い。これらは通常、広範な分子量の炭化水素と、煤塵や灰系成分などの個体との混合物からなっている。
【0005】
バイオマス及び廃棄物ガス化プロセスでは、製品ガスはガス化装置又は熱分解ユニットと称される装置によって生成される。廃棄物の組成は高度に多様(可変)であり得るため、ガス化により生成されるガス組成物の多様性(可変性)が高い。ガス化はまた、不要な副産物として多様でかつ相当なレベルの煤塵及び炭化水素汚染物質を生成する。
【0006】

バイオマス及び廃棄物ガス化から生じるさらに別の汚染物質は、従来の酸系洗浄を使用して除去することが困難なアンモニアである。そのような汚染物質並びにその変化物を含むシンガス、は、燃料としてシンガスを使用する下流側の装置に悪影響を及ぼすことがある。そのような再生燃料源を使用する商業的成功に少なくとも部分的に影響するのはこれらの問題である。
【0007】
周知のプロセスはフィッシャー・トロプシュ法である。この構成は、広範な分子量を有する不要な成分(通常は、所望の生成物の分子量のものが中心である)を生成する。不要な生成物は、一般に焼却(フレアリング)により、又は後続のプロセスを使用してさらに変換することにより処分される。その結果、さらなる残滓が生じ、これらはさらに使用するにはあまりに多様で汚染されているため、通常、フレアリングされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
より効率的に純粋なシンガスを生成することが有利であろう。本発明は、上記問題を解決するために考案された。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一般に、シンガスは廃棄物固形燃料(RDF)及び解体グレードバイオマス、並びに農業バイオマス及び畜産排出物などの低品位原料から調製される。
【0010】
本発明は、炭素質材料のガス化、及び化学原料としてシンガスを利用する化学合成プロセスから得られる材料を処理するための平衡接近反応器に関する。反応器は、組成に関して多様性が極めて高く、通常のプロセス温度で凝縮可能であり、かつ炭素又は灰分の形態の固体を含む投入ガスを、安定化され、かつ化学原料として有用な処理済みのシンガスに変換する。
【0011】
本発明の第1の態様によれば、
容器と、
処理材料(処理用材料)が容器に流入することを可能にするように動作可能な入口と、
処理済材料が容器から流出することを可能にするように動作可能な出口と、
を備え、
処理材料が平衡に接近(アプローチ/approach)することを可能にする十分な時間にわたって容器内に保持される、炭素質材料のガス化から得られる材料を処理するための平衡接近反応器が提供される。
【0012】
本構成は、エネルギ効率がよく、かつ固体汚染物質が確実に管理され得る態様で化学平衡に接近することを可能にする処理(プロセス)条件に投入ガスをさらすことによって、既存の処理に関する問題を軽減する。したがって、安定した、汚染されていないシンガスがさらなる使用のために生成される。
【0013】
したがって、シンガスは、低品質原料から製造することができ、安定した発電を含む多くの用途に利用され、これまで廃棄されてきたプロセスからの生成物を回収し、再使用することを可能にし、処理の効率を高める。
【0014】
反応器の機能は、流入する原料ガスが部分的に酸化されて、その温度を1050〜1250℃に上昇させ得る環境を提供することである。しかし、好ましい構成では、反応器は1100℃超で作動するように構成される。最も好ましくは、シンガスは1150℃に加熱される。好ましい構成では、特に処理材料が原料に灰分を含む場合、反応器の動作温度は原料の灰分の溶融温度より低く保たれる。
【0015】
好ましくは、容器内の圧力は大気圧より高い圧力に保たれる。より好ましくは、圧力は50kPa(g)〜1200kPa(g)(0.5〜12バール(g))である。容器内の圧力は、少なくとも部分的には、未処理シンガスをより高い圧力で容器内に入れることによって達成され得る。シンガスは、任意の従来の手段によって高圧で容器内に直接供給され得る。
【0016】
シンガスが反応器内に保持される時間は、ドエル時間又は滞留時間と称される。好ましい構成では、処理材料は少なくとも10秒間反応器内に保持されるが、より好ましくは、ドエル時間は少なくとも15秒間である。反応器の設計、高温及び加圧された原料シンガスの投入は全て、滞留時間の改善に役立つ。従来のドエル時間よりも長いと、反応器内に含まれる材料が化学平衡を達成することが可能になる。
【0017】
したがって、1つの構成では、シンガスは、加圧された反応器内でそのごく一部を燃焼させることによって約1150℃に加熱される。その結果、少なくとも10秒の滞留時間がもたらされ、これは原料の処理材料が平衡に接近するように反応するのに十分な時間である。
【0018】
平衡への接近を可能にすることは、シンガス組成を正規化(平準化)することと共に、処理材料中の全ての有機汚染物質及びタールを破壊する効果を有する。したがって、有利には、原料の種類にかかわらず、ガスの組成はほぼ同様になる。これは、低品位(かつ潜在的に高多様性の)原料にとって特に有利である。
【0019】
好ましくは、入口は熱交換器を含み、より好ましくは炭化ケイ素から構成される熱交換器を含む。この構成は、反応器から流出する処理済シンガスが、流入する原料シンガスに熱を提供することを可能にするために使用され得る。したがって、未処理シンガスは予熱される。好ましい構成では、未処理シンガスは、チャンバに入る前に約700℃から900℃に加熱される。原料シンガスを予熱するために熱交換器を使用すると、酸素注入システムによって点火されるのに必要なシンガスがより少なくて済む。
【0020】
加えて、平衡接近反応器は、容器内に酸素を注入するように動作可能な酸素注入システムを含み得る。酸素はシンガスの一部と反応し、それが容器内の温度を上昇させる。
【0021】
好ましい構成では、酸素注入システムは複数のノズルを含む。より好ましい構成では、システムは少なくとも3つのノズルを含む。ノズルは、それらがらせん経路上に配置されるように反応器上に配置され得る。
【0022】
投入シンガス流を高圧で供給し、そして酸素注入システムを使用して容器内部の温度を上昇させることによって、容器内部の圧力は大気圧より高いレベルに維持され得る。投入圧力及び/又は注入された酸素のレベルを制御することによって、圧力が制御され得る。
【0023】
好ましくは、シンガス及び酸素は、反応器内の乱流を促進するように反応器に注入される。
【0024】
より高い圧力で容器を保持することは、容器内の材料の滞留時間(ドエル時間とも呼ばれる)を増加させる。この構成は大気圧又は準大気圧で機能され得るが、同じドエル時間のためには、容器は加圧容器よりも相対的に大きい必要がある。しかし、この構成も本文献の範囲内にあると考えられることを理解されたい。
【0025】
本発明の第2の態様によれば、シンガスを処理するように動作可能な容器と、加圧された未処理のシンガスを容器に導入する手段と、シンガスが化学平衡に達するのに十分なドエル時間にわたって容器内に保持されるように、容器内の温度を上昇させるためにシンガスの一部の自己着火を引き起こすために、容器内に酸素を注入するように動作可能な酸素注入システムと、を備える平衡接近反応器システムが提供される。
【0026】
シンガスのための所望の滞留時間を確保するために、容器内で圧力と温度との組み合わせが使用される。好ましい実施形態では、これは少なくとも10秒であり、より好ましい実施形態では少なくとも15秒である。
【0027】
酸素が容器内に導入され、容器内のシンガスと反応させて容器内の温度を少なくとも1100℃に上昇させることが好ましく、1150℃がより好ましい。特に好ましい構成では、水蒸気と酸素とが組み合わせて投入される。
【0028】
好ましくは、システムは熱交換器、より具体的には並流熱交換器を含む。好ましい実施形態では、処理済シンガス及び未処理シンガスは、同時ではあるが独立して別個に熱交換器を通過されることで、処理済シンガスが使用されて未処理シンガスを加熱する。この配置のさらなる利点は、処理済シンガスが原料シンガスによって冷却されることである。
【0029】
システムが蒸気を容器内に注入するための手段を含むことがさらに好ましい。これは酸素注入システムを用いて達成され得る。
【0030】
好ましくは、酸素注入システムはセラミックランセット又は管を含む。代替的には、ランセット又は管は、耐熱合金から構成されたノズルを含み得る。
【0031】
好ましい構成では、酸素注入システムは複数の注入点を含む。システムが少なくとも3つの注入点を含むことがより好ましい。
【0032】
好ましい構成では、平衡接近反応器システムは、研磨媒体と収着剤媒体の一方又は両方を容器に注入するように動作可能な手段を含む。この手段は分離しても組み合わせてもよく、さらに酸素注入システムと組み合わせてもよい。
【0033】
システムは排出システムを含むことが好ましい。好ましい構成では、このシステムは容器の底部に配置される。排出システムは、固形物を受容するように動作可能な砂浴を含み得る。システムは、冷却された排出スクリューを用いた段階的除去を利用し得る。
【0034】
本発明の第3の態様によれば、処理材料を収容するように動作可能な容器を提供するステップと、前記容器に処理材料を導入するステップと、前記処理材料が実質的に平衡に接近するまで前記容器内に処理材料を保持するステップと、を含む平衡接近反応器の動作方法が提供される。
【0035】
平衡接近反応器は複数のモードで動作され得ることが好ましい。一方のモードは実質的に乾燥状態の固体の除去/処理に役立ち、第2のモードは実質的に溶融状態の固体を除去することが好ましい。
【0036】
本発明の第4の態様によれば、一次軸を有する容器を含む反応器が提供され、前記反応器はさらに、処理ガスが反応器に投入でされ得るように動作可能な少なくとも1つの処理ガス投入点と、酸素が容器に注入されることを可能にする少なくとも3つの酸素注入ノズルとを含み、投入点及び注入ノズルは主軸に関して容器の周囲に配置される。ノズルはらせん経路に沿って配置されることが好ましい。
【0037】
好ましくは、処理ガス投入点は実質的に容器の第1の端部にあり、酸素注入ノズルはらせん経路に沿って容器の第2の端部に向かって離間している。
【0038】
好ましい構成では、処理ガス及び酸素は、乱流を促進するために容器内に投入されるように動作可能である。処理ガスと酸素は互いに反応して、処理ガスの部分酸化を引き起こす。これは容器内の温度を上昇させる効果がある。上昇した温度及び乱流は、容器内に処理ガスを長時間にわたって保持するのに役立つ。さらに、ノズルのらせん状構成は、それがバルクガスの放射加熱を促進するように配置される。
【0039】
好ましくは、処理ガス及び酸素は、それらが化学平衡に接近するような時間にわたって容器内に保持される。
【0040】
好ましくは、酸素注入ノズルは、さらなる媒体の同時注入を可能にするための手段を含む。例えば、蒸気が容器内に注入され得る。追加、又は代替そして、固体媒体が容器内に向けられ得る。これらは、収着剤又は研磨媒体又は化学触媒を含み得る。
【0041】
第4の態様に関して開示された特徴は、第1及び第2の態様と相補的であるように設計されており、したがってそれらに対する好ましい特徴と見なされるべきである。
【0042】
本発明の第5の態様によれば、第1のチャンバと第2のチャンバと、前記第1のチャンバと第2のチャンバ間の接続部と、流体を混合させて反応させて乱流を形成させるように前記第1のチャンバに複数の前記流体を注入する手段を含み、前記接続部は、第2のチャンバ内への急速な膨張を可能にすることによって乱流が解かれる(disengage turbulent flow/乱流を解消する/乱流が離脱する)ように動作可能な反応器を提供する。
【0043】
この構成はシンガス内に含まれる固体を処理するのに特に有利である。接続部で乱流が離脱すると、シンガスが急速に膨張し、ガスの速度が低下する。これにより、固形物がシンガスから離脱し、第2のチャンバの底部に落下する。
【0044】
好ましくは、複数の流体はシンガスと酸素とを含み、双方の間の反応はシンガスの部分酸化を引き起こし、第1のチャンバ内の温度を上昇させる。
【0045】
好ましくは、接続部は、第1及び第2のチャンバよりも断面積が縮小された領域を含む。一般的な構成では、接続部は、第1のチャンバと第2のチャンバ間の縮径頸部と見なされ得る。
【0046】
好ましくは、第2のチャンバはシンガス出口を含む。好ましい構成では、シンガス出口は、反応器の使用中は、第1及び第2のチャンバに対して上方に傾斜している。
【0047】
反応器は、固体汚染物質を受容するように動作可能な第3のチャンバをさらに含むことが好ましい。シンガスから分離された固体は通常、第2のチャンバの底部に落下する。さらに別のチャンバを提供することによって、固体が収集され得る。第3のチャンバは、固体汚染物質を除去するように動作可能な排出システムの一部であり得る。
【0048】
第3のチャンバは蒸気注入点を含み得る。この構成は、第3のチャンバ内の炭素含有固体間の反応を水蒸気と反応させて水素、一酸化炭素及び二酸化炭素を生成することを可能にするという点で特に有利である。
【0049】
記載された様々な態様における特徴は互いに組み合わされ得ることを理解されよう。例えば、第1、第2、第4、及び第5の態様の特徴が組み合わされてもよく、集合的に又は個別に第3の方法の態様と併せて使用されてもよい。
【0050】
したがって、本発明の一態様は、接続部によって接続された第1及び第2のチャンバを有する容器と、第1のチャンバにシンガスを投入するように動作可能なシンガス投入点(入力)と、処理済シンガスが第2のチャンバから流出できるように動作可能なシンガス放出点(出力点)とを備え、前記第1のチャンバは、シンガス投入点と共に、前記第1チャンバの周囲にらせん経路を画定する3つの酸素注入ノズルを含み、使用時に、少なくとも第1チャンバの圧力と温度は、そこに収容されるシンガスが化学平衡に接近するのに十分な時間にわたって保持されるような圧力と温度である、平衡接近反応器を備えている。
【0051】
本発明をより容易に理解するために、ここで添付の図面を参照してその特定の実施形態が説明される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
理解を容易にするために、図は本発明による平衡接近反応器の個々の態様を示すことを理解されたい。1つの図に示されている特徴が、別の図に示されている構成に存在することがある。
図1a】一実施形態による平衡反応器の側面図である。
図1b図1aの平衡反応器の正面図である。
図2】反応器の実施例、投入及び放出原料、並びに熱交換器の実施例を示す図である。
図3a】二次床フィードシステム(二次床供給システム)を特に参照して平衡接近反応器の実施例を示す図である。
図3b図3aのSBFシステムのダクト内注入点の拡大図である。
図4】一実施形態による反応器の平面視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本発明の実施形態は、投入材料を化学平衡にする傾向にさせる処理条件にその材料をさらすことによって既存の処理に固有の問題を解決する平衡接近反応器(以下、「反応器」と称する)を含む。本構成は、エネルギ効率が高く、かつ投入材料中の固体汚染物質を確実に管理し得る方法でこれが達成されるという点で特に有利である。反応器は、さらなる使用のために安定した、汚染されていないシンガスを生成する。したがって、反応器は、低品位の原料からのシンガスを安定した発電に利用することを可能にし、そうしないと無駄になる処理からの生成物を回収し、かつ再使用することを可能にし、処理効率を高める。
【0054】
工業処理は一般に原料として投入材料を必要とする。水素、一酸化炭素及び二酸化炭素を主成分として含むガスはシンガスと称されることがある。反応器に導入されるシンガスは、原料シンガス、又は未処理シンガスと称されることがある。反応器を通過したシンガスは、処理済又は被処理シンガスと称されることがある。
【0055】
メタン又は他の炭化水素をシンガスに変換するように操作可能な従来の反応器は、さまざまな状態の固体を処理することができない。そうしようとすると、固体の溶解が避けられない。結果として、これは、汚損、閉塞及び/又は設備の故障(ひいては反応器の停止時間)を招く可能性がある。加えて、反応器中のシンガスの滞留時間が短すぎるので、一般的な方法は高レベルの煤塵生成をもたらす。既知の構成における欠点に対処するために、本構成はシンガスの温度を上昇させ、制御された態様で所定の期間にわたって高温でそれを保持する。このシステムは、炭化水素の分解及び固体汚染物(及び特に飛灰)の放出を得るために必要な滞留時間と温度との組み合わせを提供するための容器と、制御された態様で酸化を開始するために容器に酸素を供給するための手段、及び容器から堆積した粒子状物質を除去する手段を備えている。これらの要素は以下で検討される。
【0056】
図1a及び図1bを参照すると、一実施形態では、反応器10は、耐火物でライニングされた容器からなるチャンバ12を備える。チャンバ12は円筒形でもよいが、任意の適切な寸法(形状)で十分であろう。耐火性ライニングは、高い炭化ケイ素含有量のるアルミナ系ライニングを含み得る。これは、アルカリ浸透、剥離及び熱衝撃に対する耐性をもたらす。
【0057】
一貫したシンガスを生成するように最適化されたシステムでは、低すぎるチャンバ12内の動作温度は、炭化水素を十分に改質しない一方、高すぎる温度は、大きなエネルギ損失、及び全体的効率の損失をもたらす。したがって、反応器は約1100℃〜1200℃、より好ましくは1150℃で動作されることが好ましい。
【0058】
原料シンガスのチャンバ12への投入を可能にするシンガス投入点14がさらに設けられる。この構成は、チャンバ12からの被処理シンガスの放出を可能にするシンガス放出点16をさらに含む。シンガス放出点は通常、チャンバ12に対して上方に傾斜している。チャンバ12内のシンガスは高められた圧力で処理されることが好ましい。これは通常50kPa〜1200kPaである。しかし、反応器及び/又はシステムの仕様に応じて、他の圧力が使用され得る。補助するために、シンガスは高圧でチャンバ12に投入されてもよい。
【0059】
チャンバ12は、上部20と下部22とを含み得る。シンガス投入点14は、上部18に配置され、一方、シンガス放出点16は、チャンバ12の下部22に配置される。
【0060】
上側部分20は第1のチャンバと見なされ、下部分22は第2のチャンバと見なされ得る。
【0061】
上部18は、部分酸化ゾーン(以下、POXと称されることがある)と呼称されることがある。シンガスは、接線方向にチャンバ12の上部に投入される。未処理シンガスの高速の投入及びチャンバ12の寸法により、POXは強い渦巻き状の乱流を含む。乱流及び渦流を促進するために、酸素がチャンバ12内に注入され得る。そのような構成は、未処理シンガスの混合及び滞留時間を向上させる。酸素注入に関する詳細は以下に記載される。
【0062】
上部及び下部20、22は、縮径頸部30などの接続部(界面/interface)によって接続されてもよい。縮径頸部30は、混合が促進され、次いで(渦流運動を中断することによって)ガス速度を減速させて固体が流れから排出システム34へと離脱するようにする機能を有する。
【0063】
この構成はまた、チャンバ12内に酸素を導入して少量のシンガスの自己着火を引き起こすためのシステム40を含み得る。この反応は、チャンバ12内の温度を上昇させる効率果を有する。所望の温度は、少なくとも部分的に、チャンバ12への酸素の流れを制御することによって達成可能である。図2は、そのようなシステムを備える反応器10の実施例を示す。
【0064】
したがって、一実施形態では、酸素又は酸素/蒸気混合物を注入して段階的に温度を上昇させるために酸素注入システム40と連携するための投入点18が反応器10に設けられる。
【0065】
酸素注入システム40は、炭化物系材料から製造された多環式配置からなる1つ又は複数の注入ノズル42を含み得る。ノズル42は、酸化剤注入から生じる拡散炎がノズル面からオフセットされるように構築される。
【0066】
酸素注入システムが少なくとも3つのノズルを露出させることが特に好ましい。シンガス投入点14、及び複数の酸素注入ノズル42を上部20(第1のチャンバ)の周囲のらせん状又は渦巻状の経路上に設けることによって、POX内で乱流及び渦流が促進される。
【0067】
図4は、シンガス投入点14及び複数の酸素注入ノズル42の位置の例を示す反応器の上面図を示す。反応器が原位置にある場合、シンガス投入点14は実質的に第1のチャンバの頂部にあり、複数の酸素注入ノズルは(シンガス投入点14を基点として時計回りに見て)次第に低くなるため、シンガス投入点14と複数の酸素注入ノズルとによってらせん経路が画定される。
【0068】
使用時には、酸素注入ノズル42は高温で動作する。灰のなどの固形物が投入された原料シンガス中に存在する場合、灰が高温のノズル先端と接触して溶融すると、従来の注入ノズルはファウリング(汚染)を受け得る。ノズルは、酸素と共に、又は周囲の環状ジャケットを通して蒸気の同時注入を可能にする。この構成は、ノズルのファウリングを軽減し、さらに有利には投入された廃棄物の処理済シンガスへのより良好な全体的変換をもたらす。ノズルはまた、処理の有効性を高める無炎酸化を可能にするように、予熱された酸化剤との併用を可能にする。
【0069】
酸素注入ノズル42は各々、セラミック被覆ランセットを含み得る。各ノズル42は、耐用年数を延ばすために窒素又は蒸気で冷却され得る。各ノズル42は周囲シュラウドを含み得る。好ましい構成では、ランセットは、交換可能なノズル部で終端するセラミック被覆管である。ノズルは、カーバイド系セラミック又は耐熱合金から構築され、メンテナンス目的でランセットから取り外し可能である。
【0070】
酸素供給アセンブリ40全体が反応器10から分離され得る。これにより、メンテナンスのためのより容易なアクセスが可能になる。
【0071】
使用時に、それによって酸素が流れる工学的パターンで、各ノズルに幾つかの発射(ファイアリング)ポートが穿孔され得る。
【0072】
反応器20のための所望の温度分布は事前に計算され得る。チャンバ12内への酸素流量は、ブードア反応を介した汚染物質(ナフタレン、ベンゼン及び煤塵など)の高い変換効率のための温度と滞留時間との所望の組み合わせを提供する反応器10内の温度分布を達成するように流量を測定する制御弁によって制御される。
【0073】
各ノズル42の幾何的構造(幾何的形状)は、火炎の過度のリフトオフ(浮き上がり)を許すことなく、十分な酸素流出速度及び表面保護を可能にするように構成される。ある程度の火炎のリフトオフは、ノズル先端部の寿命を改善するので望ましい場合がある。フレームアレスタが設けられてもよい。酸素注入システム40への酸素供給ラインに爆発防止も設けてもよい。
【0074】
ノズル周辺の温度は熱電対を使用して測定される。熱電対はノズルに埋め込まれ得る。しかし、熱電対はノズルに近接した任意の位置に配置され得る。熱電対は、少なくとも部分的に、(窒素又は蒸気などの)冷却媒体の流量を制御するように動作可能である。
【0075】
酸素注入の結果として生じる火炎は拡散火炎であり、したがって、迅速な混合を確実にするためにチャンバ12の上部の高乱流が必要である。通常動作でのチャンバ12への流速は、好ましくは0.1〜0.2Kg/sである。ノズル42の後の中間領域内の(火炎温度を称されることがある)温度は3000℃を超えることがある。
【0076】
酸素注入ノズル42の近傍のゾーン内のシンガスは、水素と酸素との燃焼により高温になる。これらのゾーンの高温ガスは、より低温のガスと急速に混ざり合い、流れのバルク温度(混合平均温度)を上昇させる。これらの局所的なゾーンに存在する灰は溶解するので、スラグ化の可能性が高い。これは反応器10の効率に有害な影響を及ぼすため、ノズルチップでのスラグ化の軽減が有利である。以下の好ましい特徴は、酸素注入システム40の性能を個々に、かつ集合的に高める。
【0077】
反応器10は複数の酸素注入点18を含む。注入点は酸素注入システム40からのノズルを受容する。一般的には3つの点があるが任意の数を設け得る。ノズルを上部チャンバ20上のらせん経路に沿って設けることが望ましい。複数の注入点は、酸素添加、ひいては温度上昇が段階的であり、局所温度が灰の溶解温度より数百度高いゾーンにならないことを確実にする。したがって、絶対量で実際に溶解する灰の総量は限られている。チャンバ12内の温度の一貫性は、温度上昇を低減するために酸素と共に蒸気注入を使用することによっても支援される。
【0078】
酸素と共に水蒸気を添加することにより、注入された噴射の速度を高速に維持することが可能になる。反応器内での酸素とのシンガスの燃焼は拡散火炎として発生するので、高速度は火炎がノズル42から常に「リフトオフ」することを確実にする。ノズルの周囲のチャンバ12内への蒸気の注入は、ノズル表面近くの温度がブルク温度より数百度低いことを確実にする。蒸気注入は、「リフトオフ」が一貫して達成されることを確実にするように調整される。
【0079】
高温火炎ゾーンがノズル表面から遠ざけられるリフトオフ効果と同様、酸素注入ノズル42は再循環ゾーンを回避するように構成される。これは、局所的に溶融されたスラグがこれらのゾーンに蓄積して堆積物を成長させないようにするために行われる。
【0080】
各ノズル42は反応器10に進退自在に取り付けられ得る。したがって、メンテナンスのための停止中、各ノズル42はより迅速に、かつより確実な方法で整備され得る。
【0081】
図2は、シンガス入口14及びシンガス出口16を有する反応器10を示す(上部20と下部22との間の接続部30は示されていない)。熱交換器50がさらに備えられる。熱交換器は、供給源Aからシンガスを受容し、それを反応器10に送るように動作可能である。加えて、熱交換器50はまた、チャンバ12から処理済シンガスを受容し、それを行先Bに送るように動作可能である。この構成は、原料シンガスが既存のシンガスによって予熱されることを可能にし、かつ必然的な結果として、処理済シンガスが、流入するシンガスによって冷却されることを可能にするという点で有利である。
【0082】
シンガス処理の重要な態様は、反応器10内の固形物、例えば煤塵や灰を管理する(取り扱う)ことである。原料シンガス中の固形物のレベルは未知である場合がある。したがって、様々なレベルの固形分を有する投入材料を処理することができる構成を提供することが望ましい。
【0083】
高温チャンバ内の固体に対処する能力は、例えば廃棄物から生成されたシンガスの燃焼用に多数の廃棄物−エネルギ技術で利用されるような、灰が混入したシンガス流の燃焼用に設計された構成においてよく知られている。
【0084】
固体の管理を必要とする他の構成は石炭のガス化である。これらの構成は、灰がチャンバから除去され得るように灰が完全に液体スラグ状態になるのに十分に高い温度に依存する。スラグの流動挙動を改善するために、一般的に石炭及びケイ砂などの添加物が添加される。十分なエネルギが利用できない場合は、温度を上げるために天然ガスが補給され得る。
【0085】
本構成では、シンガスがガス化処理を使用して燃料源から導出される場合、チャンバ12に流入する原料シンガスは一般に、煤塵などの固体を含有する。使用される燃料源に応じて、固体は未溶融、部分溶融、又はさまざまな粘度の完全液体であり得る。固体を処理する既知の方法は現在の構成には適切ではない。
【0086】
固体は、反応器10、又は反応器10を含むシステム内の装置内で閉塞を引き起こす可能性がある。したがって、反応器10を通る投入ガスのための閉塞されていない流路を確保することが重要である。加えて、固体が、それらの融点に関わりなく、ガスとともに通過物として、又は排出システム34を使用して除去され得るように、反応器は、(通常、「ドライモード」及び「ウェットモード」と称され、以下に詳細に記載される)複数のモードで操作され得る。以下で、排出システム34は、特に図3a及び図3bに関連して以下にさらに説明される。
【0087】
本実施形態は、組成及び物理的状態(固体、部分的に溶融/軟化した液体固体混合物、完全に溶融した液体)に関係なく固形分を管理するように動作可能である。図1a及び図1bに示されるように、反応器10は、バルクガス混合物の平衡接近に必要な温度動作範囲内で可能なあらゆる状態の固体を効果的に通過させるように形成されている。
【0088】
反応器の形状はシンガスからの固体汚染物質の除去を助ける。具体的には、反応器10は、第1のチャンバ20と第2のチャンバ22と、それらの間の接続部30とを含む。第1のチャンバ内に複数の流体を注入して、前記流体を混合し反応させて乱流を形成させるための手段がさらに提供される。接続部30は、第2のチャンバ22内への急速な膨張を可能にすることによって乱流が離脱するように動作可能である。
【0089】
接続部30は、減速頸部30を含み得る。これは、典型的には、第1及び第2のチャンバ20、22に対して断面積が縮小された部分である。
【0090】
第1のチャンバ20はPOXを含む。シンガスは高温で処理され、かつ高速である。第1のチャンバ20内の流体速度は典型的には6ms−1である。この時点で固体汚染物質は典型的には、高速シンガス中に浮遊する。シンガスが縮径頸部30に到達すると、乱流は解除され、第2のチャンバ22内への急速な膨張のため、0.4ms−1未満までかなり遅くなる。この作用により、固体がシンガスから落下して第2チャンバ22の底部の排出システム34内に集められる。
【0091】
又は、言い換えれば、処理ガスは、乱流が離脱される接続部30を通って移動する。この機構は、シンガスと任意の含有固体汚染物質の解離を可能にする。
【0092】
1)ファウリングの傾向が低い(粘着性ではない)完全な非溶融の固体灰、又は2)反応器の壁に沿ってスラグとして排出システムに流れる完全に溶融した灰のいずれかである全固体負荷の管理は、比較的制御可能である。しかし、ほとんどプロセスにおいて、固体は両方の状態の一部を含むであろう。典型的なプロセスは、固体が反応器10の壁に沿って流れるレオロジーを有さず、それに固着するのに十分に粘性であるような温度で動作される。
【0093】
収着剤媒体は、反応器10への導入前にシンガスに添加され得る。この収着剤媒体は、灰よりも高い融点を有し、従って灰のバルク溶融特性を増大させる。収着剤媒体は反応器10内での固体の滞留を防止する。この配置のさらなる詳細は以下に記載される。
【0094】
反応器10は、二次床フィード注入システム22及び温度制御システム(図示せず)をさらに含み得る。二次床フィードは、典型的には、チャンバ12に供給される研磨媒体である。この研磨媒体は、入口ダクト内の投入位置を介して反応器へ、又は蒸気などの搬送媒体と共に酸素注入ランセット42を介してチャンバ内に導入され得る。
【0095】
(SBFと称されることがある)二次床フィードはまた、凝縮又は溶融画分が核形成及び堆積し得る高表面積を有する収着剤としても作用し、灰がチャンバ12の内面に堆積することを防止する。典型的には、SBFから得られる表面積は内部処理表面よりも2000〜4000%多く、SBF上への堆積の可能性は表面上への堆積の可能性よりもはるかに高い。
【0096】
SBF媒体は、チャンバ12内の反応を向上させ、かつ/又はファウリングを抑制するのに役立つ灰分改質剤又は触媒であり得る。
【0097】
図3aを参照すると、反応器10は、二次床フィード媒体を導入するためのダクト又は入口、並びに二次ベッド媒体及び収集された固体を放出するための第2のダクト又は出口を含む。二次床フィードシステム22は、蒸気フィード、窒素フィード及び二次ベッド媒体フィードが投入され得るロックホッパ36を含む。各供給(フィード)原料は、反応器10と係合する入口ダクトに送られる。
【0098】
二次床フィード媒体を導入するためのダクト又は入口は、シンガス投入点14、及び複数の酸素注入ノズル42のうちの1つ以上であり得る。しかし、専用の投入部も考えられる。
【0099】
さらなる二次ベッド媒体フィード50が提供され得る。
【0100】
第3のSBFシステム52が出口ダクトに設けられ得る。
【0101】
SBF注入点は、ファウリング傾向を軽減するように配置され得る。
【0102】
図3bは入口ダクトの拡大概略図を示す。ダクトは、二次ベッド媒体が反応器10に導入される前に静的ミキサ54を含み得る。静的ミキサ54は、典型的には、炭化ケイ素から製造される。ミキサは、反応器10に導入される媒体の混合を促進するように動作可能である。
【0103】
反応器10は2つのモードで動作され得る。第一のモードは、固体が未溶融又は部分溶融されるドライモードであり、第二のモードは、固体が完全な流動スラグである場合のウエットモードである。二次床フィード22は、通常動作でのドライモードでもウエット循環モードでも反応器10と共に機能し得る。
【0104】
ドライモードでは、典型的には、アルミナ系媒体からなる研磨媒体が流れに注入され得る。タールク分解の最適温度範囲は1050℃〜1100℃である。これは反応器10の所望の動作パラメーターと相関し、したがって、固体は、典型的には、主として未溶融状態であろう。したがって、反応器10は通常はドライモードで機能するであろう。
【0105】
反応器排出システム34は、反応器10から除去された固体を受容するように動作可能な砂浴からなり、冷却された排出スクリューを使用してそれらを徐々に除去する。砂浴は、温度制御のため、また受容された固形物又はスラグが確実に凝集して搬出されるように、小流動化流に保たれる。流動化流の流速は、凝集体の寸法を変えるために変更され得る。
【0106】
好ましい構成では、蒸気が反応器排出システム34に注入され得る。反応器排出システム34に集められた固体は、通常は炭素が豊富であり、蒸気と反応して水素、一酸化炭素及び二酸化炭素を生成する。
【0107】
SBFを注入することのさらなる利点は、少なくとも第1のチャンバ20の内部洗浄である。第1のチャンバ20内の流速は典型的には6ms−1を超える。したがって、SBF媒体(収着剤媒体)は研磨媒体として作用し、堆積物を侵食することによって個体の蓄積を防止する。この処理はサンドブラスト処理に類似していると考えられる。さらに、SBF媒体が構造中に存在する結果として形成される任意の堆積物はより脆い。
【0108】
ウエット循環法は、堆積したスラグが溶融して反応器底部に流入することができるように、反応器10の動作温度を一時的に1250℃以上に上昇させるように設計されている。これは3000時間間隔で1回必要とされ、灰生成物の量と特性に応じて、約6時間実行されると予測される。
【0109】
ウエット循環は、より高い生産量を達成するためにより多くのシンガスを燃焼させる酸素要求量の増加を必要とする。この処理は、天然ガスなどのPOXチャンバに注入される補助燃料を補給することによって効率化され得る。反応炉の急冷は、このモードで下流のSBFがフライスラグ(飛散スラグ)のチャンバ12への進入を制御して行われる。スラグは砂浴に排出され、次いで反応器から抜き出される。
【0110】
臨界ゾーンにおける堆積物形成の可視化を可能にするため、冷却プロセスカメラ26が反応器10に取り付けられ得る。
【0111】
本発明は上記の実施形態によって限定されるべきではなく、多くの変形形態が添付の特許請求の範囲の範囲内にあることが理解されよう。
【0112】
さらに、本構成は、極めて多様なガスを受容し、それを有用な品質に規格化する能力を反応器にもたらし、好ましい構成では、ガス自体からのエネルギを利用して動作温度を確実に上昇させ、複数の状態で固体を処理する能力を持ちつつ、良好な混合と高い変換を確実にする。
【0113】
シンガスを約1200℃に加熱し、それを所定の滞留時間にわたってこの温度に保持するように動作可能な反応器10が提供されることがさらに理解されるであろう。この組み合わせは、シンガス中のタールを高効率で分解する。この温度は、ある割合のガスを局所的に自己着火させる酸素の注入によって達成される。
【0114】
反応器10はシンガスから飛灰も除去するように設計されている。チャンバ12の流体力学的設計により、材料の流れとチャンバの壁との間の接触時間が必然的に長くなる。この構成は、飛灰がチャンバ12に付着することを許容する。システムは、制御された方法で飛灰を周期的に排出する。
下記は、本願の出願当初に記載の発明である。
<請求項1>
炭素質材料のガス化によりシンガスを処理するための平衡接近反応器であって、
容器と、
処理材料が前記容器に流入することを可能にするように動作可能な入口と、
処理済材料が前記容器から流出することを可能にするように動作可能な出口と、を備え、
処理材料が平衡に接近するのを可能にするのに十分な時間にわたって処理材料が前記容器内に保持される、平衡接近反応器。
<請求項2>
1100℃超で動作するように構成される、請求項1に記載の平衡接近反応器。
<請求項3>
前記処理材料が灰分を含み、動作温度が前記灰分の溶融温度よりも低く維持される、請求項2に記載の平衡接近反応器。
<請求項4>
前記容器内の圧力が大気圧より高い圧力に保たれる、請求項1から3のいずれか一項に記載の平衡接近反応器。
<請求項5>
前記圧力が0.5〜12バール(g)である、請求項4に記載の平衡接近反応器。
<請求項6>
前記処理材料が少なくとも10秒間前記反応器内に保持される、請求項1から5のいずれか一項に記載の平衡接近反応器。
<請求項7>
前記入口が熱交換器を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の平衡接近反応器。
<請求項8>
前記熱交換器が炭化ケイ素から構成される、請求項7に記載の平衡接近反応器。
<請求項9>
前記容器内に酸素を注入するように動作可能な酸素注入システムをさらに備える、請求項1から8のいずれか一項に記載の平衡接近反応器。
<請求項10>
シンガスを処理するように動作可能な容器と、
加圧された未処理シンガスを前記容器に導入する手段と、
一定の割合の前記シンガスの自己着火を生じさせて、前記容器内の温度を上昇させることで、前記シンガスが化学平衡に接近するために十分な滞留時間にわたって前記シンガスが前記容器内に保持されるように、前記容器内に酸素を注入するように動作可能な酸素注入システムと、を備える平衡反応器システム。
<請求項11>
1050℃から1200℃の間で動作するように構成される、請求項10に記載の平衡反応器システム。
<請求項12>
前記滞留時間が少なくとも15秒である、請求項10又は11に記載の平衡反応器システム。
<請求項13>
前記容器が、上部と下部を含み、少なくとも前記上部と比較して縮径された領域によって前記上部と下部が接続される、請求項10から12のいずれか一項に記載の平衡反応器システム。
<請求項14>
平衡接近反応器を動作させる方法であって、
a.処理材料を収容するように動作可能な容器を準備するステップと、
b.処理材料を前記容器に導入するステップと、
c.前記処理材料が実質的に平衡に接近するまで前記処理材料を前記容器内に保持するステップを含む方法。
<請求項15>
前記反応器が1100℃超で動作される、請求項14に記載の方法。
<請求項16>
前記反応器が大気圧より高い圧力で動作される、請求項14又は15に記載の方法。
<請求項17>
前記反応器が複数の動作モードを含む、請求項14から16のいずれか一項に記載の方法。
<請求項18>
主軸を有する容器を備える反応器であって、
処理ガスの前記反応器への投入を許容するように動作可能な少なくとも1つの処理ガス投入点と、酸素の前記容器への注入を許容する少なくとも3つの酸素注入ノズルとをさらに備え、前記投入点及び前記注入ノズルは前記主軸に対して前記容器の周囲にらせん状に配置される、反応器。
<請求項19>
前記処理ガス投入点が実質的に前記容器の第1の端部にあり、前記酸素注入ノズルが前記容器の第2の端部に向かってらせん経路に沿って離間している、請求項18に記載の反応器。
<請求項20>
前記処理ガス及び前記酸素が、乱流を促進するように前記容器に投入されることができる、請求項18又は19に記載の反応器。
<請求項21>
前記処理ガス及び酸素が、化学平衡に接近するような時間にわたって前記容器内に保持される、請求項20に記載の反応器。
<請求項22>
前記酸素注入ノズルが、さらなる媒体の同時注入を可能にするための手段を備える、請求項18から21のいずれか一項に記載の反応器。
<請求項23>
第1のチャンバと、
第2のチャンバと、
前記第1のチャンバと第2チャンバとの間の接続部と、
流体を混合させ、反応させて、乱流を形成するように前記第1のチャンバに複数の前記流体を注入する手段と、を備え、
前記接続部は、前記第2のチャンバ内への急速な膨張を生じさせることによって乱流を解くように作用可能である反応器。
<請求項24>
前記複数の流体が、シンガスと酸素とを含む、請求項23に記載の反応器。
<請求項25>
前記酸素と前記シンガスとが反応して前記シンガスの部分酸化を引き起こして温度上昇を生じさせる、請求項24に記載の反応器。
<請求項26>
前記接続部が、前記第1及び第2のチャンバに対して断面積が縮小した領域を含む、請求項23から25のいずれか一項に記載の反応器。
<請求項27>
前記第2のチャンバがシンガス出口を備える、請求項24から26のいずれか一項に記載の反応器。
<請求項28>
個体汚染物質を受容するように作用可能な第3のチャンバをさらに備える、請求項23から27のいずれか一項に記載の反応器。
<請求項29>
前記第3のチャンバは、蒸気注入点を含む、請求項28に記載の反応器。
<請求項30>
化学平衡が実質的に達成されるまで前記シンガスが第1のチャンバ内に保持される、請求項25に記載の反応器。
<請求項31>
請求項18から22のいずれか一項の特徴をさらに備える請求項23から30のいずれか一項に記載の反応器。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4