特許第6901260号(P6901260)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 和田 守弘の特許一覧

<>
  • 特許6901260-緩み止めナット 図000002
  • 特許6901260-緩み止めナット 図000003
  • 特許6901260-緩み止めナット 図000004
  • 特許6901260-緩み止めナット 図000005
  • 特許6901260-緩み止めナット 図000006
  • 特許6901260-緩み止めナット 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6901260
(24)【登録日】2021年6月21日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】緩み止めナット
(51)【国際特許分類】
   F16B 39/18 20060101AFI20210701BHJP
   F16B 39/12 20060101ALI20210701BHJP
【FI】
   F16B39/18
   F16B39/12 Z
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-250280(P2016-250280)
(22)【出願日】2016年12月24日
(65)【公開番号】特開2018-105367(P2018-105367A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年12月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】516388182
【氏名又は名称】和田 守弘
(74)【代理人】
【識別番号】100181881
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 俊一
(72)【発明者】
【氏名】和田 守弘
【審査官】 児玉 由紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−217486(JP,A)
【文献】 特開2011−017352(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第19516129(DE,A1)
【文献】 中国特許出願公開第110307239(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 23/00−43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同様のねじ孔を備える二種類のナットからなり、一方のナットの端部に凸部を備えると共に、他方のナットの端部に前記凸部が進入し得る凹部を備え、
前記凸部は、その先方が複数の挟持片に分割され、
前記凹部は、その先端部の内周に、前記凸部の先端が前後内外に滑動可能な先広がりの迎え部を備えると共に、その後方内周に前記凸部の進退の中心を当該他方のナットの回転軸上に規制するガイド部を備え、その後方内周に、前記凸部の進入に伴い当該凹部に内装された凸部先端を前記回転軸に向けて加圧する先広がりの誘導部を備え、
前記凸部の分割により生じた挟持片各々の先端部が、前記ガイド部より遠心方向外側へ均等に拡幅され、
当該凸部の先端側外周に当該凸部が振れなく滑らかに進退する摺動部を備え、
前記ガイド部は、一定長にわたる円筒状の等断面空洞を備え、前記二種類のナットの頭部角の位相が合致する位置を含むことを特徴とする緩み止めナット。
【請求項2】
前記ガイド部は、前記凸部が前記誘導部に達した位置で前記二種類のナットの頭部角の位相が合致する長さを備えることを特徴とする請求項1に記載の緩み止めナット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二種類のナットを一組としたナットであって、加締め具合に応じて螺合されたボルトを挟持し、緩み止め機能を奏するナットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、緩み止め機能を備えるナットには、例えば、ナット締め付け時にねじ孔に対して偏芯して嵌合する突出部と凹部の円錐台形状のテーパー面による楔作用でねじ嵌合部に軸線に対して直角方向の押圧力を加える緩み止め手法(下記特許文献1参照)や、第1ナットの凸部と第2座金の凹部とを偏芯して嵌合させた緩み止めナット(下記特許文献2参照)が公知となっている。
【0003】
一方で、第1のナットの円錐状突出部と第2ナットの貫通孔とを嵌合する際、前記突出部と貫通孔との接触干渉により緩み止め効果を奏し得るダブルナット(下記特許文献3参照)や、第1ナットと第2座金からなり第1ナットを回転させて締め付けることにより当該第1ナットの凸部テーパー状外周面が第2座金の凹部テーパー状内周面に内側へ押し付けられ、その作用により前記第1ナットの食い付き爪がボルト軸のネジ山に強力に密着する緩み止めナット(下記特許文献4又は5参照)が公知となっている。
前記従来の技術は、二種類のナットを一組として緩み止め機能を得る点で共通している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平3−526号公報
【特許文献2】特開2015−203492号公報
【特許文献3】特公平6−80325号公報
【特許文献4】特開2015−165154号公報
【特許文献5】実用新案登録第3205075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記いずれの技術にあっても、二種類のナットの管理が煩雑である他、二種類のナットを一体的に螺合することが困難であり、効率的な作業を阻害するなど、物資の管理及び施工に煩雑さを伴うという問題がある。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、二種類のナットを一体的に螺合することが可能であり、ナットの管理が容易であり、且つ効率的な作業を可能とする緩み止めナットの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた本発明による緩み止めナットは、同様のねじ孔を備える二種類のナットからなり、一方のナットの端部に凸部を備えると共に、他方のナットの端部に前記凸部が進入し得る凹部を備え、前記凸部は、その先方(進入方向)が複数の挟持片に分割され、前記凹部は、その先端部(前記凸部が進入してくる方向の端部)の内周に、前記凸部の先端が前後内外に滑動可能な先広がりの迎え部を備えると共に、その後方(前記凸部の進入方向)内周に前記凸部の進退の中心を当該凹ナットの回転軸上に規制するガイド部を備え、その後方内周に、前記凸部の進入に伴い当該凹部に内装された凸部の先端を前記回転軸に向けて加圧する先広がり(凸部の進入方向の奥に向って狭くなる)の誘導部を備えることを特徴とする。
【0008】
前記挟持片に、前記ガイド部に圧接する幅広部を備える構造を有する緩み止めナットとして構成することもできる。
【発明の効果】
【0009】
本発明による緩み止めナットによれば、一方のナットの端部に凸部を備えると共に、他方のナットの端部に前記凸部が進入し得る前記凸部より深い凹部を備える構成と、前記摺動部とガイド部の存在によって、同様のねじ孔のピッチに両ナットの配置を容易に合わせ、両ナットを一体的にボルトへ螺合することができ、効率的な作業が可能となる。
また、前記幅広部を備える構成を採ることによって、両ナットの一体性を容易に高めることができる。
【0010】
また、上記構成を有することによって、二種類のナットをそのピッチを合わせて一体化した状態で管理することによって、煩雑な二種類のナットの管理が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明による緩み止めナットの一例を示す緩み止め作業時における縦断面図及び正面図である。
図2】本発明による緩み止めナットの組立工程の一例を示す縦断面図及び平面図である。
図3】本発明による緩み止めナットを構成する凸ナットの一例を示す(A):底面図,(B):正面図,(C):平面図,(D):A−A矢視断面図,(E):B−B矢視断面図,(F):側面図,(G):C−C矢視断面図,(H):D−D矢視断面図である。
図4】本発明による緩み止めナットを構成する凸ナットの一例を示す(A):底面図,(B):正面図,(C):平面図,(D):E−E矢視断面図,(E):F−F矢視断面図,(F):側面図,(G):G−G矢視断面図,(H):H−H矢視断面図である。
図5】本発明による緩み止めナットを構成する凹ナットの一例を示す(A):平面図,(B):底面図,(C):正面図,(D):I−I矢視断面図,(E):側面図,(F):J−J矢視断面図である。
図6】本発明による緩み止めナットを構成する凹ナットの一例を示す(A):I−I矢視断面図,(B):K−K矢視断面図,(C):L−L矢視断面図,(D):M−M矢視断面図,(E):N−N矢視断面図,(F):O−O矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明による緩み止めナットの実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。
図に示す例は、ピッチ及び径が合致した(以下「同様」という)のねじ孔を備える二種類のナットX,Yからなる(図1参照)。
前記二種類のナットX,Yは、端部に凸部3を備える凸ナット(図3又は図4参照)Xと、端部に前記凸部3が進入し得る前記凸部3より深い凹部10を備える凹ナット(図5及び図6参照)Yである。
【0013】
この例の前記凸ナットXは、その中央を貫通する前記ねじ孔1を備え、六角柱の頭部2と、その端面中央から突出する前記凸部3を備える。
この例の前記凸部3は、その先方に複数(この例では六つ)の切欠部4を等角度間隔で備え、各切欠部4を挟む複数(この例では六つ)の挟持片5に分割されている他、その先端側外周に当該凸部3が振れなく滑らかに進退する摺動部6を備える。
この例では、前記凸部3の先端外周に先細りのテーパー部7を備える。
【0014】
一方、この例の凹ナットYは、前記凸ナットXと同じ六角柱の頭部8と、当該頭部8の中央を貫通する透孔9を備える。
前記透孔9は、その前部(前記凸部が進入してくる方向の部位)に前記凸部3を収容する前記凹部10を備えると共に、その後部に前記凸ナットXのねじ孔1と同様のねじ孔11を備える。
この例の前記凹部10は、その先端部の内周に、前記凸部3の先端が前後内外に滑動可能な先広がりの迎え部12を備えると共に、その後方内周に前記摺動部6の進退の中心を当該凹ナットYの回転軸上に規制するガイド部13を備え、更に、その後方内周に、当該凹部10に内装された凸部3の先端が前後内外に摺動する先広がりの誘導部14を備える。
【0015】
前記挟持片5は、当該挟持片5各々の先端部を、当該凸ナットXの遠心方向へ前記ガイド部13より外側へ均等に拡幅し、各挟持片5先端部を前記ガイド部13に対して均一に圧接する拡幅部5aを備える構成とすることが、前記二種類のナットX,Yを一体化することに寄与し(図2参照)、ボルトZと螺合する際に一体的形態を維持する上で望ましい(図3参照)。

【0016】
本発明による緩み止めナット及びそれを構成する前記凸ナットX及び前記凹ナットYは、以上の如く構成され、先ず、ボルトWに前記凸ナットXを螺合し、更に、同じボルトWに前記凹ナットYを螺合し、前記拡幅部5aが前記ガイド部13に圧接する位置から両ナットX,Yの頭部2の六角形の角(以下「頭部角」という)の位相が合致する位置にまで加締め、両ナットX,Yを組立形態に一体化する組立工程を経ることによって完成する(図2参照)。
【0017】
本発明による緩み止めナットは、使用時においては、前記組立工程で一体化した状態で、指定されたボルトZに螺合し、所望の位置まで両ボルトX,Yを回し入れる工程(図1上参照)、前記凸ナットXを所定のトルクで締める工程、及び前記凹ナットYのみを所定のトルクで加締める工程(図1下参照)を順次経ることにより、当該緩み止めナットの装着作業及び緩み止め作業を完了する。
【0018】
前記緩み止め作業においては、前記凸部3の進入に伴って、前記凸部3の先端が、前記凹部10の誘導部14により、螺合されたボルトZのネジ山へ向けて押し入れられ、前記凸部3の各把持片5がボルトZを把持することにより、前記凸ナットXとボルトZとの締結力が高められ、緩み止め機能を奏することとなる。
【0019】
この例の前記ガイド部13は、一定長にわたる円筒状の等断面空洞を備え、両ナットX,Yの頭部角の位相が合致する位置を含む部位である。
前記ガイド部13は、前記摺動部6又は前記拡幅部5aが当該ガイド部13に接し又は圧接する位置から両ナットX,Yの頭部角の位相が合致する位置に至るまで加締め得る進入長を確保することが望ましい。
前記ガイド部13の進入長は、前記凸部3が先広がり(末窄み)の誘導部14に達した位置で両ナットX,Yの頭部角の位相が合致し、当該ガイド部13と誘導部14との境界で組立形態が保持される長さを採用してもよい(図1又は図2参照)。
【符号の説明】
【0020】
X 凸ナット,Y 凹ナット,Z ボルト,W ボルト,
1 ねじ孔,2 頭部,3 凸部,4 切欠部,
5 挟持片,5a 拡幅部,
6 摺動部,7 テーパー部,
8 頭部,9 透孔,10 凹部,
11 ねじ孔,12 迎え部,13 ガイド部,14 誘導部,
図1
図2
図3
図4
図5
図6