(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
(実施の形態1)
まず、
図1を参照しながら実施の形態1の電力制御システムの全体構成について説明する。この電力制御システムは、制御される建物としての住宅H1,H2,H3,・・・,HXは、電力会社の発電所や地域毎に設置されたコジェネレーション設備などの系統電力網から電力の供給を受けるための電力網である系統電力網(不図示)に接続されている。なお、以下の説明において、住宅H1,・・・,HXのうちの特定のものを指さない場合は、単に住宅Hと表記する。
【0011】
各住宅Hは、発電装置としての太陽電池パネル1と、電力を一時的に蓄えておく蓄電装置2とを備えている。さらに、これらの住宅Hは、それぞれインターネットなどの外部の通信ネットワークNを介して管理サーバ5に接続され、管理サーバ5との間で、計測値や演算処理結果などのデータの送受信や各種制御信号の送受信などが行われる。
【0012】
なお、管理サーバ5は、図示は省略するが、CPUとRAM、ROMなどのメモリを備えた情報処理装置により構成され、CPUの制御による通信ネットワークNを介した通信を行う通信部71(
図3参照)などを備える。
【0013】
(住宅側の構成)
次に、実施の形態1の電力制御システムを適用した住宅の電力系統および通信系統を模式的に示すブロック図である
図2に基づいて、住宅Hの構成について説明する。
各住宅Hの電力供給系として、分電盤10が設けられている。
分電盤10は、外部の電力網としての商用電源Eに接続され、かつ、住宅Hの太陽電池パネル1、蓄電装置2、電力負荷群3に接続されている。
【0014】
太陽電池パネル1は、太陽光を、太陽電池を利用することによって、電力に変換して発電を行う装置である。この太陽電池パネル1は、太陽光を受けることができる時間帯のみ電力を供給することが可能である。また、太陽電池パネル1によって発電された直流電力は、通常、図示を省略したパワーコンディショナによって交流電力に変換されて使用される。なお、この住宅Hに設置された太陽電池パネル1の発電量の容量などの仕様については、管理サーバ5側の後述する邸情報データベース51(
図3参照)に記憶されている。
【0015】
一方、蓄電装置2も、太陽電池パネル1と同様に、不図示のパワーコンディショナに接続されて、蓄電(充電)および放電の制御がなされる。この蓄電、放電制御では、例えば、蓄電装置2に、外部の電力網としての商用電源Eから供給される深夜電力などの電力価格が安い外部電力や、太陽電池パネル1にて発電された電力を蓄電する。この蓄電装置2の蓄電電力の容量や定格出力などの仕様も、管理サーバ5側の後述する邸情報データベース51(
図3参照)に記憶されている。
【0016】
電力負荷群3は、電力を消費して駆動する複数の電力負荷から成るもので、電力負荷としては、例えば、給湯装置31、空調装置32、照明スタンドやシーリングライトなどの照明装置(不図示)、冷蔵庫やテレビなどの家電装置(不図示)などが含まれる。そして、分電盤10と、電力負荷群3の各電力負荷とは、複数の分岐回路20a,20b〜20nを介して接続されている。
【0017】
さらに、電力負荷群3には、電気自動車やプラグインハイブリッド車などの電動車両MVが含まれる。この電動車両MVに車載の蓄電池(不図示)は、EVパワーコンディショナ8を介して分電盤10と接続可能となっており、走行のための充電を行う場合は、負荷となり、住宅Hの電力負荷のために放電させる場合は、蓄電装置として用いることができる。なお、前述した蓄電装置2も、同様に充電を行う場合には、電力負荷に含まれる。
【0018】
電力負荷群3などの消費電力は、計測装置4により計測される。
すなわち、計測装置4は、商用電源Eから分電盤10へ向けて供給される買電力、住宅Hから商用電源Eへ向けて供給される売電力量、太陽電池パネル1で発電された発電電力量、蓄電装置2から放電される放電電力量、蓄電装置2に充電される充電電力量、各分岐回路20a〜20nを介して電力負荷群3へ供給される消費電力量を計測する。
【0019】
また、計測装置4による各電力量の計測は、1秒単位、1分単位、1時間単位などの任意の時間毎に積算して行うことができる。そして、計測装置4によって計測された計測値のデータは、管理サーバ5側の後述する消費電力履歴データベース52に記憶される。
【0020】
なお、各住宅Hには、通信インタフェース19が設けられている。このインタフェース19は、インターネットなどの外部の通信ネットワークNを介して管理サーバ5に接続されており、管理サーバ5との間で、計測装置4の計測値や管理サーバ5における演算処理結果などのデータの送受信や制御信号の送受信を行う。
【0021】
また、住宅コントロールユニット18は、分電盤10から蓄電装置2を含む電力負荷群3への電力の供給をコントロールすることができるもので、この住宅コントロールユニット18は、管理サーバ5から送られる運転計画に基づいて、蓄電装置2を含む電力負荷群3の運転を行う。
【0022】
(管理サーバ側の構成)
次に、各住宅Hと通信ネットワークN(
図1参照)を介して接続される管理サーバ5側の構成について、
図3に基づいて説明する。なお、
図3は、実施の形態1の電力制御システムの主として管理サーバ側の構成を模式的に示すブロック図である。
管理サーバ5側は、通信インタフェースである通信部71と、各種制御を行う制御部6と、邸情報データベース(DB)51、消費電力履歴データベース(DB)52、電力価格データベース(DB)53、気象データベース(DB)54、運転パターンデータベース(DB)55を備える。
【0023】
通信部71は、住宅Hから送信されてくる各種設備の仕様、計測値、処理要求などを、管理サーバ5の制御部6に送る。さらに、通信部71は、各種データベース51,52,53,54,55に記憶されたデータ、制御部6で行われた演算処理結果、更新プログラムなどを住宅Hに向けて送る機能を有している。
【0024】
邸情報データベース51には、各住宅Hの邸コード(識別番号)、その邸コードに関連付けられた住所、建築年、断熱性能、間取り、電気配線、使用部材、太陽電池パネル1の仕様(発電容量)、蓄電装置2の仕様(蓄電容量、定格出力)などの情報が記憶されている。また、邸情報データベース51には、住宅Hごとに、実際の単位時間毎の発電量が、気象データ(日射量)に関連付けて記憶されている。例えば、住宅H毎に太陽電池パネル1の設置条件が異なることから、同じ地域で同じ日射量であっても、発電量に違いが生じるため、住宅Hごとにそのデータを記憶する。
【0025】
消費電力履歴データベース52には、各住宅Hで計測された消費電力量の計測データが、通信部71を介して受信されて記憶される。この消費電力量の履歴は、単位時間毎に記憶されるとともに、曜日など暦に関連付けして記憶される。なお、消費電力履歴データベース52では、気温などの気象条件に影響を受け易い空調装置32などの空調負荷および給湯装置31などの給湯負荷の消費電力量と、気温などの気象条件に影響を受け難いその他の負荷の消費電力量とを負荷別にカテゴリー分けして記憶してもよい。
【0026】
電力価格データベース53には、商用電源Eに電力を供給する電力会社などが設定する外部電力の時刻によって変化する電力価格(住人側から見て買電価格)に関する情報が記憶されている。さらに、この情報として、電力会社などが時間帯ごとのピーク値を算出する際の単位時間(時間幅)である計測単位時間および各計測単位時間の境界となる時刻も記憶されている。本実施の形態では、計測単位時間(幅)は30分であり、各計測単位時間どうしの間の境界となる時刻は、
図9に示すように、0:00時から30分刻みで設定されている。すなわち、電力会社などの電力供給者は、
図8に示す例では、1:00〜1:30、1:30〜2:00、2:00〜2:30・・・の各30分間における電力量(住宅側における買電電力量)を計測するとともに、その最大値であるピーク値を求める。
図8は、その一例を示しており、1:00〜3:30までの30分毎の時間帯では、それぞれ、5kVAの電力が計測され、この図示した時間の範囲内でのピーク値は5kVAとなる。
【0027】
図4Aはこの実施の形態1において商用電源Eの電力供給者(電力会社)の料金体系を示す。この料金体系は、1:00〜6:00までの夜間の低価格帯と、6:00〜あくる日の1:00までの高価格帯の2種類の電力価格帯が設定されている。また、電力料金の基本料金は、ピーク値により設定される料金体系となっている。
【0028】
なお、料金体系は、これに限定されず、
図4Bに示すように3種類の電力価格帯、あるいは、4種類以上の電力価格帯を備えた料金体系を適用することもできる。ちなみに、
図4Bに示す料金体系は、7:00〜10:00までの朝の中価格帯、10:00〜17:00までの昼間の高価格帯、17:00〜23:00までの晩の中価格帯、23:00〜翌日の7:00までの夜間の低価格帯を備える。
【0029】
電力価格データベース53には、電力価格が切り替わる時刻と、各時間帯の電力価格(住人側から見て買電価格)が記憶されている。さらに、電力価格データベース53には、太陽電池パネル1で発電した電力を電力会社などが買い取る価格(住人側から見て売電価格)も記憶されていてもよい。
【0030】
図3に戻り、気象データベース54には、気象庁や気象予報会社などの図示省略のサーバから通信ネットワークNを介して受信した各住宅Hが立地する全国各地の気温や日射量などの翌日の気象予報データが記憶されている。さらに、気象データベース54には、時々刻々の実際の気象データ、気温、湿度、日照量などの気象データを記憶し、これを過去のデータとして用いるようにしてもよい。
【0031】
運転パターンデータベース55には、各住宅Hに設置された電力負荷群3および蓄電装置2の様々な運転パターンが、気象データに対応付けて記憶されている。
【0032】
制御部6は、蓄電装置2の蓄電運転時刻、放電運転時刻、給湯装置31による蓄湯運転時刻の設定を行うもので、消費電力量予測部61、発電量予測部62、電力需要量予測部63、蓄電池充電可能容量演算部64、運転計画部65を備える。
【0033】
消費電力量予測部61は、計測単位時間毎の消費電力量を予測する。例えば、前日に翌日の各住宅Hの時間毎の消費電力量を予測する。この消費電力量予測部61は、消費電力履歴データベース52に記憶された過去の履歴の消費電力データを読み込み(
図5のステップS101A参照)、この過去の消費電力データに基づいて翌日の時間帯別の消費電力量予測値を求める(
図5のステップS102A参照)。ここで、時間帯とは、前述のように、0:00から30分単位で切り分けた時間帯である。なお、この消費電力量予測値は、住宅Hにおける全体消費量に加え、後述する運転計画の設定を行う対象の負荷については、個別に時間帯毎の消費電力量予測値を求めるもので、これには、少なくとも、蓄電装置2、給湯装置31、空調装置が含まれる。
【0034】
また、過去の消費電力データとしては、例えば、予測対象日(翌日など)の数日前の消費電力量や、1〜数年前の同季節における時間毎の消費電力量も参照してもよく、その場合、それらの平均値を用いる。さらに、予測対象日が、平日か休日かを区別したり、あるいは、住宅H毎の曜日別の消費電力傾向を参照したりするのが好ましい。加えて、過去の消費電力量を、気温、日射量などの気象データと関連付けしておき、気象予報データに類似した気象データに対応する過去の運転パターンデータを参照するようにしてもよい。
【0035】
図7は、消費電力量、発電量などの変化の一例を示す。
この例では、消費電力量は、住人が不在となる昼間の値が低く、住人が在宅する夕方頃から夜に高くなる。また、深夜は、安価な商用電源Eの電力を用いて、給湯装置31の蓄湯運転を行うとともに、蓄電装置2への蓄電運転を行うため、消費電力量の値が高い値となっている。
【0036】
また、昼間には、太陽電池パネル1により発電が行われる。さらに、朝の7時〜10時および、夕方の17時以降は、蓄電装置2の放電を行い、これにより消費電力量の一部を賄うことにより、電気料金の高価格帯における消費電力量(買電量)を抑えている。さらに、消費電力量を上回る発電量は、売電したり蓄電したりすることができる。
【0037】
発電量予測部62は、太陽電池パネル1の時間毎の発電量(
図7参照)を予測する。例えば、前日に翌日の住宅Hの時間毎の発電量を予測する。
この太陽電池パネル1の時間毎の発電量の予測は、気象予報データと過去の気象データとに基づいて行う。すなわち、予測対象日(翌日など)気象データベース54に記憶された翌日の気象予報データ(特に日射量)を読み込むとともに(
図5のステップS101C参照)、気象予報データに相関する過去の気象データ(日射量)に関連付けられた発電量履歴を読み込む(
図5のステップS101B参照)。そして、これらの読み込んだデータに基づいて、時間毎の発電量予測値を求める(
図5のステップS102B)。なお、発電量予測値は、例えば、
図7の発電量変化に示すように、日照時間帯においてプラスの値となり、夜間は0となる。
【0038】
電力需要量予測部63は、予測消費電力量から予測発電量を差し引いた電力需要量を演算する(
図5のステップS103参照)。この電力需要量は、外部の系統電力網(不図示)から買電するか、あるいは蓄電装置2からの放電を用いて電力消費を行う必要がある電力量である。
蓄電池充電可能容量演算部64では、蓄電池における充電可能容量を演算する。この充電可能容量は、満充電量(100%)から残容量を差し引いた値である。
【0039】
運転計画部65は、ピーク時刻予測部65aと運転時刻計画部65bとを備え、給湯装置31が蓄湯運転を実行する時刻(その運転開始時刻および終了時刻)と、蓄電装置2の蓄電運転時刻および放電運転時刻(その運転開始時刻および終了時刻)を含み、各電力負荷の運転開始時刻、運転終了時刻の設定を行う。また、設定した運転計画は、住宅コントロールユニット18に送信し、住宅コントロールユニット18は、運転計画に基づいて、蓄電装置2を含む電力負荷群3の運転を行う。
ピーク時刻予測部65aは、予測した電力需要量のピーク値およびピーク値の発生時刻であるピーク時刻を求める(
図5のステップS104)。
【0040】
運転時刻計画部65bは、予測した電力需要量のピーク値およびピーク時刻に基づいて、ピーク値が予め設定されたピーク上限値Pmaxを越えた場合、このピーク値を抑制するピーク値抑制運転計画を設定する(ステップS105→S106)。なお、ピーク上限値Pmaxは、基本料金の基準となる値であり、住宅Hにより予め設定された基本料金となるように設定された値である。
また、ピーク値がピーク上限値Pmaxを越えない場合には、予測した電力需要量に基づいて、電力供給を行う通常の電力計画を設定する(S107)。
【0041】
(ピーク値抑制運転計画)
以下に、ステップS106において実行するピーク値抑制運転計画を設定する処理について説明するが、この説明に先立ち、商用電源Eによる電力供給者である電力会社における使用電力量(買電した電力量)の計測およびその電力使用量の算出について説明する。
【0042】
電力会社は、住宅H側で買電した使用電力量の計測は、前述のように30分を1単位として計測するもので、この1単位の時間を、本明細書では計測単位時間と称する。また、各計測単位時間は、N時とN時30分を境界時刻としている。
【0043】
さらに、電力会社では、各計測単位時間において計測した電力量のピーク値(最大値)に応じて基本料金の設定を行う。すなわち、過去の所定期間(例えば、数か月あるいは1年)におけるピーク値が高いほど、基本料金を高く設定する。なお、電気料金は、基本料金に所定期間(例えば、1カ月)に計測した電力量の料金を加算した値に基づいて決定されるようになっている。
【0044】
図8は、電力需要量の予測値の一例を示している。すなわち、電力需要量予測部63は、電力価格が安価な夜間の低価格時間帯(1;00〜6:00)に、蓄電装置2による充電運転、給湯装置31における蓄熱運転を行うとともに、空調装置32も、住宅Hを所定の空調環境に維持するために、空調運転を実行すると予測している。具体的には、蓄電装置2による充電運転の電力需要量の予測は、1:00〜3:30までの2時間30分である。また、給湯装置31における蓄熱運転、および、空調装置32の空調運転の電力需要量の予測は、いずれも、1:00〜6:00までの5時間である。
【0045】
さらに、
図8に示す電力需要量の予測では、ピーク値が5kVAとなっており、かつ、このピーク値となる時刻は、1:00〜3:30までであって、2時間30分の時間(幅)である。
【0046】
また、本実施の形態1では、予め設定されたピーク上限値Pmax(4kVAとする)であり、かつ、この値(4kVA)を、制御目標とするピーク値であるピーク目標値Petに設定しているものとする。したがって、
図8の例では、1:00〜3:30の時間帯で、ピーク値がピーク上限値Pmaxを越えており、ステップS105においてYES判定し、運転時刻計画部65bがステップS106のピーク値抑制運転計画の設定を実行する。なお、前述のピーク上限値Pmaxとピーク目標値Petとは、同値としてもよいが、確実にピーク値を抑えるために、ピーク目標値Petの方を、多少小さな値とした方が好ましい。
【0047】
ピーク値抑制運転計画では、充電運転と蓄熱運転とのいずれか一方、あるいは両方の運転のための予測電力需要量を、分散させて供給する分散供給パターンの運転計画を設定する。この分散供給パターンにあっては、電力供給者が、電力量のピーク値を算出する単位時間帯毎に、運転を実行する運転時間帯と、運転を実行しない待機時間帯とに分け、運転時間帯を分散させる。また、この分散した運転時間帯を合計した時間(幅)が、電力需要量の予測値における運転時間(幅)と一致するようにする。
【0048】
以下、このピーク値抑制運転計画の処理の流れを、
図6のフローチャートに基づいて説明する。
まず、運転時刻計画部65bは、運転時間(蓄熱運転、充電運転)の分散が可能であるか否か判定する(S201)。すなわち、
図8に示す電力需要量の予測では、蓄熱運転は、夜間の全時間帯で実行しているため、分散は不可能と判定する。一方、充電運転については、夜間の時間帯(5時間)のうち、その半分の2時間30分であるため、分散可能と判定する。
【0049】
そこで、運転時刻計画部65bは、充電時間(計画)を分散する処理を行う(S202)。具体的には、
図9に示すように、各単位時間帯を、それぞれ、その1/2の15分間の運転時間と、その1/2の15分間の待機時間とに分散する。さらに、各運転時間は、境界時刻である、1:30、2:30、3:30、4:0、5:30を跨いで連続するように振り分ける。そして、各単位時間帯において、待機時間を設定したことにより運転時間が減った分、蓄電運転の運転開始から運転終了するまでの時間帯を1:15〜5:45までの時間帯に広げる。なお、この分散した充電運転の運転時間の合計値は、
図8の予測した運転時間と同じく、2時間30分としている。
【0050】
このように、充電運転の運転時間を各計測単位時間帯において1/2として分散することにより、各単位時間帯における電力需要量が低下し、1:00〜5:00については、ピーク値が5kVaから4kVAに低下した。しかしながら、給湯装置31の蓄熱運転、空調装置32の空調運転について分散などを行わない場合、空調装置32による電力需要量が増加する5:00〜6:00の時間帯については、充電運転の分散後もピーク値がピーク上限値Pmaxおよびピーク目標値Petよりも高い値となる。
【0051】
そこで、上記のステップS202の分散処理の後、ならびに、ステップS201において分散可能ではないと判定された場合には、ピーク値がピーク目標値Petよりも大きいか否か判定し(S203)、ピーク値>ピーク目標値Petの場合、充電運転、蓄熱運転の少なくとも一方の電力需要量を、ピーク目標値Petまで低下させるよう、他の時間帯に移動させる移動運転計画処理を行う(S204)。
【0052】
以下に、このステップS204における移動運転計画処理について説明する。
この運転時間の移動については、電力需要量にマイナスとなる時間帯が存在するか否かにより、具体的な処理が異なるもので、まず、マイナスとなる時間帯が存在する場合について説明する。
【0053】
(電力需要量がマイナスとなる時間帯が存在する場合)
電力需要量がマイナスとなる時間帯は、図示は省略するが、要するに太陽電池パネル1などの発電装置による発電量が電力需要量を越える時間帯であり、晴天が予測される昼間に生じ得る。この場合、5:00〜6:00の運転時間を、この電力需要量がマイナス値の時間帯に移動させる。すなわち、本実施の形態では、この時間帯の電力需要量をピーク目標値Petまで低下させる分だけの給湯装置31の蓄熱運転を、電力需要量がマイナスの時間帯に移動させる。なお、空調装置32の運転は、この時間帯5:00〜6:00において必要な運転量であるとともに、給湯装置31による給湯は、夕方以降の使用量が多いため、電力需要量がマイナス値となる昼間に移動させても、問題が無い。
【0054】
この蓄熱運転の一部を、電力需要量がマイナス値の時間帯に移動させることにより、
図9に示すように、蓄熱運転と空調運転との電力需要量の合計値が、5:00以前の電力需要量の合計値と同等の値となり、1:00〜6:00の夜間の時間帯全域の電力需要量のピーク値を、ピーク目標値Petまで低下させることができる。
【0055】
(電力需要量がマイナス値となる時刻が存在しない場合)
電力需要量がマイナスとなる時刻が存在しない場合としては、例えば、曇りや雨天の場合などのように太陽電池パネル1の発電が無い場合など、昼間の電力需要量がマイナス値となる時間帯が存在しない場合がある。この場合、ピーク値を超える時間帯の蓄熱運転の電力需要量を、電力需要量がピーク目標値Petよりも低い時間帯に移動させる。これによっても、1:00〜6:00の夜間の時間帯全域の電力需要量のピーク値を、ピーク目標値Petまで低下させることができる。
【0056】
(実施の形態1の効果)
以下に、本実施の形態1の電力制御システムの効果を列挙する。
1)実施の形態1の電力制御システムは、
建物としての住宅Hに設けられた電力負荷としての蓄電装置2および電力負荷群3と、
住宅Hの外部の電力網としての商用電源Eから買電した電力を、電力負荷に供給する配電部としての分電盤10と、
商用電源Eからの買電電力の料金体系および買電電力の課金のために設定された電力量の計測単位時間に関する情報に基づいて、分電盤10から電力負荷への電力供給を制御する電力制御部としての管理サーバ5および住宅コントロールユニット18と、
を備え、
管理サーバ5は、電力負荷に対する電力供給として、計測単位時間内において電力供給を行う供給時間帯と、電力供給を行わない待機時間帯とを交互に設定した分散供給パターンを
選択する運転計画部65を備えることを特徴とする。
したがって、1計測単位時間あたりの電力供給量を低減し、運転する電力負荷が複数存在していても、計測単位時間あたりの供給電力量のピーク値を、より確実に抑えることが可能となる。
【0057】
2)実施の形態1の電力制御システムは、
運転計画部65は、分散供給パターンでは、供給時間帯を、計測単位時間の境界となる境界時刻を跨いで設定することを特徴とする。
したがって、供給時間帯と待機時間帯との切り替えの回数を抑えつつ、上記1)の効果を得ることができる。
【0058】
3)実施の形態1の電力制御システムでは、
運転計画部65は、分散供給パターンでは、供給時間帯と待機時間帯とを、1つの計測単位時間内に均等に設定することを特徴とする。
したがって、上記2)のように供給時間帯が境界時刻を跨いで連続させるのが容易となる。また、供給時間帯と待機時間帯とが1つの計測単位時間に1/2ずつ設定されることで、必要な電力需要量を得るために電力供給が必要な時間の2倍の長さで分散供給パターンによる電力供給を行えばよく、制御が容易である。
【0059】
4)実施の形態1の電力制御システムでは、
電力負荷に、蓄電装置2と給湯装置31とが含まれ、
分散供給パターンにおける供給時間帯による電力供給は、蓄電装置2の充電のための電力供給(充電運転)と、給湯装置31の蓄熱のための電力供給(蓄熱運転)とが含まれる(S202)ことを特徴とする。
例えば、空調装置32や照明への電力供給と異なり、充電や蓄熱は、電力供給時に待機時間帯を設定しても、蓄電装置2や給湯装置31の運転に悪影響を与えにくい。特に、深夜の安価な電力を用いて運転する際には、即座に放電や給湯が必要ではないため、悪影響を与えにくい。このため、分散供給パターンによる電力供給の実施が容易となる。
【0060】
5)実施の形態1の電力制御システムでは、
管理サーバ5は、過去の前記電力負荷の消費電力量を含む電力量の計測データに基づいて、電力負荷に対して商用電源Eから買電を行って供給する電力量である電力需要量を、計測単位時間毎に予測する電力需要量予測部63を備え、
運転計画部65は、予測した電力需要量を供給するため運転計画として分散供給パターンの
選択を行うことを特徴とする。
したがって、翌日などの電力需要量の予測に基づいて、適切にピーク値の抑制を図ることができる。
【0061】
6)実施の形態1の電力制御システムでは、
運転計画部65は、予測した電力需要量が、予め設定した上限設定値としてのピーク上限値Pmaxを超えた場合に、分散供給パターンの
選択を行う(ステップS105→S106)ことを特徴とする。
したがって、予測した電力需要量のピーク値がピーク上限値Pmaxよりも低い場合には、分散供給パターンによりピーク値を抑制することは無い。よって、無駄に待機時間帯を設定し、ON、OFFを繰り返すことなく、連続的に運転させることができる。
【0062】
7)実施の形態1の電力制御システムでは、
運転計画部65は、予測した電力需要量が、予め設定した上限設定値としてのピーク上限値Pmaxを超えた場合に、電力需要量が所定の時間帯(低価格帯)内で分散可能か否か判定し、分散可能と判定した場合に、分散供給パターンによる電力供給の
選択を行うことを特徴とする。
したがって、所定の時間帯内で必要な電力需要量の分散が可能な場合に限って、分散供給パターンの
選択を行うことができる。
【0063】
8)実施の形態1の電力制御システムは、
住宅Hに太陽電池パネル1が設けられており、
電力需要量予測部63は、過去の電力負荷の消費電力量に基づいて電力負荷の計測単位時間毎の消費電力量を予測する(消費電力量予測部)とともに、気象予報データと、過去の発電量データおよび過去の実際の気象データである気象実績データとに基づいて太陽電池パネル1の計測単位時間毎の発電量を予測し(発電量予測部)、予測した消費電力量から予測した発電量を差し引いて、計測単位時間毎の前記電力需要量を予測することを特徴とする。
したがって、過去の計測データに基づいて、高精度で電力需要量を予測することが可能である。
【0064】
9)実施の形態1の電力制御システムは、
運転計画部65は、計測単位時間毎の電力需要量が予め設定したピーク目標値Pet以下になるよう分散供給パターンによる電力供給の開始から終了までの実行時間幅の設定を行う(ステップS202)ことを特徴とする。
したがって、実際の消費電力を精度高く、予め設定したピーク目標値まで低減させることができる。
【0065】
10)実施の形態1の電力制御システムは、
運転計画部65は、分散供給パターンの
選択では計測単位時間毎に予測した電力需要量が予め設定したピーク目標値以下にならない場合には、充電のための電力供給と、蓄熱のための電力供給を、電力需要量がピーク目標値よりも低い時間帯にシフトさせる(S204)ことを特徴とする。
したがって、分散供給パターンの
選択でピーク値をピーク目標値よりも低下できない場合でも、ピーク値をピーク目標値よりも低下させることが可能である。
【0066】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0067】
例えば、実施の形態では、建物として住宅を例示したが、住宅に限定されるものではなく、電力負荷を有した建物であれば、住宅以外の建物にも適用することができる。さらに、住宅に太陽光発電装置を備えるものを示したが、太陽光発電装置を備えないものにも適用できる。
また、実施の形態では、一日の中で2種類の電力価格が存在する料金体系に適用した例を説明したが、料金体系はこれに限定されるものではなく、3種類以上の電力価格が存在する料金体系にも適用できようできる。すなわち、電力価格およびその切り替わりの時刻は例示であって、電力価格が変化する時刻や価格が異なる時間帯の数は、電力会社などの外部の系統電力網を供給する会社の経営方針やその時の政策などによって変化する。また、電力需要量などの予測する単位時間も、任意に設定することができる。
【0068】
また、実施の形態では、管理サーバにおいて発明を実施する例を示したが、各住宅などの建物のコントローラにおいて実施してもよい。
【0069】
また、実施の形態では、分散供給パターンによる運転計画は、供給時間帯と待機時間帯とを1計測単位時間において1/2ずつ設定する例を示したが、1計測単位時間あたりの供給時間帯と待機時間帯との配分は、これに限定されない。例えば、1計測単位時間を3以上に分割し、各分割した時間に供給時間帯と待機時間帯とを配分してもよい。この場合、偶数に分割すれば、1計測単位時間帯において、供給時間帯と待機時間帯とを均等に分けることが可能であるが、奇数に分割した場合、供給時間帯と待機時間帯とを均等に設けなくてもよい。さらに、1計測単位時間において供給時間帯と待機時間帯とを均等に設けない場合には、ピーク値の抑制のために必要な電力需要量の低下量に応じ、供給時間帯と待機時間帯との割合を、任意に変えるようにしてもよい。
さらに、実施の形態では、計測単位時間帯を区画する境界時刻を跨いで、供給時間帯を設定するようにした。この場合、境界時刻を跨がずに設定するものと比較して、供給時間帯と待機時間帯の切り替え回数を減らすメリットはあるものの、所期のピーク値を抑えるという目的では、境界時刻を跨がない設定としてもよい。例えば、1計測単位時間帯を2分する場合でも、各計測単位時間帯において、N:00およびN:30から供給時間帯を設定し、N:15、N:45から待機時間帯を設定するようにしてもよい。
【0070】
(実施の形態2)
ここで、上記のように、1計測単位時間を3以上に分割し、各分割した時間に供給時間帯と待機時間帯とを配分した例を、実施の形態2として
図10に基づいて説明する。
なお、
図10は、実施の形態2による分散供給パターンの
選択および電力供給のシフトを行った場合の運転計画の一例を示すタイムチャートである。
また、実施の形態2の電力制御システムは、実施の形態1の変形例であるから、実施の形態1との相違点のみを説明し、実施の形態1と共通する構成、作用、効果については説明を省略する。
【0071】
この実施の形態2では、運転計画部65が、1計測単位時間を3分割し、その3分割の中央の時間帯を待機時間帯とし、待機時間帯の両側の2つの時間帯を供給時間帯とするよう設定する例である。
したがって、この実施の形態2の場合も、供給時間帯は、分散供給パターンでは、供給時間帯を、計測単位時間の境界となる境界時刻を跨いで設定することになる。
【0072】
この実施の形態2にあっても、待機時間帯に対し供給時間帯の割合が多くなるため、実施の形態1と比較して、ピーク値の低下量は低くなるが、元々のピーク値が低い場合や、実施の形態1と比較して、ピーク上限値Pmaxの設定が高い場合など、このような処理でも十分にピーク値を下げることができる。なお、
図10に示す例では、実施の形態1と同様に、蓄熱運転の一部を昼間稼働へ移動させている。