特許第6901319号(P6901319)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6901319
(24)【登録日】2021年6月21日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】台上試験装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 13/02 20190101AFI20210701BHJP
【FI】
   G01M13/02
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-101474(P2017-101474)
(22)【出願日】2017年5月23日
(65)【公開番号】特開2018-197658(P2018-197658A)
(43)【公開日】2018年12月13日
【審査請求日】2020年5月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003115
【氏名又は名称】東洋電機製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 穂高
【審査官】 福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−257236(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/105375(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 13/02〜13/028
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動モータと、この駆動モータの出力軸に継手を介して連結される連結軸を一端に有する試験機器とを備え、試験機器の他端に連結される供試体の試験を行う台上試験装置において、
出力軸と連結軸とが同芯に整列される方向をX軸方向、同一平面内でX軸方向に直交する方向をY軸方向として、出力軸がX軸に平行になるようにY軸方向に間隔を存して特性の異なる複数台の駆動モータを設けてモータユニットとし、
試験機器に対してモータユニットを一体にY軸方向に相対移動させる移動手段を更に備え、任意の一台の駆動モータの出力軸を試験機器の連結軸に継手を介して連結自在としたことを特徴とする台上試験装置。
【請求項2】
固定ベースと、固定ベース上に設けられてY軸方向に移動自在な可動ベースとを備え、可動ベースに、前記モータユニットと前記供試体が連結される前記試験機器とのいずれか一方が設置され、任意の一台の駆動モータの出力軸と試験機器の連結軸とが同心に整列される位置に可動ベースを位置決めする位置決め手段を備えることを特徴とする請求項1記載の台上試験装置。
【請求項3】
前記位置決め手段は、前記可動ベースのY軸方向の端部とこの端部に対峙する前記固定ベースの部分とに夫々設けられた、くさび状の突片とこの突片が係合する係合凹部とで構成されることを特徴とする請求項2記載の台上試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、トランスミッションやデファレンシャルギア等の自動車部品の試験を行うための台上試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の台上試験装置は例えば特許文献1で知られている。このものは、自動車用エンジンを模擬する駆動モータと、この駆動モータの出力軸に継手を介して連結される連結軸を一端に有するトルクメータ等の試験機器とを備え、試験機器の他端に、トランスミッションやデファレンシャルギア等の自動車部品(以下、「供試体」という)が連結されて供試体に対して各種の試験が行われる。具体的には、例えば、1)エンジンの回転数を模擬するような場合には、回転数が所定範囲(0〜8000rpmの範囲)内の一定回転数になるように制御され、2)エンジンのトルクを模擬するような場合には、トルクが所定範囲(0〜1000N・mの範囲)の一定値になるように制御され、また、3)車重を模擬するような場合には機械慣性(0.5〜5kg・m)が調整される。この場合、台上試験装置には、台上試験装置を用いてしようとする試験目的に応じて、回転数、トルクや慣性といった各種の試験パラメータを適宜変更できることが望まれる。
【0003】
そこで、異なる目的の試験を実施できるように、動力一定領域を広く取れる誘導電動機を使用したり、または、駆動モータに、歯速比の切換機構を持つ歯車装置を備えて連結軸の特性を切り換えて使用することが考えられる。また、慣性については、慣性調整機構を設けて機械的に調整したり、または、電気慣性制御により模擬的に慣性を切り換えることが考えられる。然し、誘導電動機を用いる場合、トルクを優先して駆動モータの機種を選定すると、慣性が大きくなる一方で、慣性を優先してその機種を選定すると、必要なトルクが得られない。他方、歯車装置により連結軸の特性を切り換える場合、歯車装置で減速されるように設計すると、トルクを確保できるものの、高速回転時の試験に対応できない一方で、歯車装置で増速されるように設計すると、高速回転の試験には対応できるものの、必要なトルクを確保できない。更に、慣性に関し、例えば慣性調整機構を設けても駆動モータの慣性以下の慣性は得られないといった制約がある。このように従来の台上試験装置は、複数の異なる試験目的に対応できるものではなく、試験目的毎に駆動モータが選定され、その目的用のものとして製作されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−184258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、回転数、トルクや慣性といった各種の試験パラメータを適宜変更できて異なる目的の複数の試験を単一で実施できる台上試験装置を提供することをその目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、駆動モータと、この駆動モータの出力軸に継手を介して連結される連結軸を一端に有する試験機器とを備え、試験機器の他端に連結される供試体の試験を行う台上試験装置において出力軸と連結軸とが同芯に整列される方向をX軸方向、同一平面内でX軸方向に直交する方向をY軸方向として、出力軸がX軸に平行になるようにY軸方向に間隔を存して特性の異なる複数台の駆動モータを設けてモータユニットとし、試験機器に対してモータユニットを一体にY軸方向に相対移動させる移動手段を更に備え、任意の一台の駆動モータの出力軸を試験機器の連結軸に継手を介して連結自在としたことを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、供試体に対して所定目的の試験を行う場合、移動手段により試験機器に対してモータユニットを一体にY軸方向に相対移動させ、任意の一台の駆動モータの出力軸を試験機器の連結軸に継手を介して連結する。そして、他の目的の試験を行うために特性の異なる駆動モータに切り換える場合には、駆動モータの出力軸と連結軸との連結を解除した後、移動手段により試験機器に対してモータユニットを一体にY軸方向に相対移動させ、他の駆動モータの出力軸を試験機器の連結軸に継手を介して連結すれば、その駆動モータの特性に応じて回転数、トルクや慣性といった各種の試験パラメータを適宜変更することができる。このように本発明では、特性の異なる複数台の駆動モータを備えるため、単一の台上試験装置によって、低慣性・高速回転・低トルク、大慣性・高速・大トルク、または、中慣性・低速回転・大トルクといった複数の試験パラメータ(条件)で供試体に対して所定目的の試験を行うことができる。
【0008】
本発明においては、固定ベースと、固定ベース上に設けられてY軸方向に移動自在な可動ベースとを備え、可動ベースに、前記モータユニットと前記供試体が連結される前記試験機器とのいずれか一方が設置され、任意の一台の駆動モータの出力軸と試験機器の連結軸とが同心に整列される位置に可動ベースを位置決めする位置決め手段を備えることが好ましい。これによれば、特性の異なる駆動モータに切り換えるときに、出力軸と連結軸との芯出しを行う作業等を不要にでき、有利である。
【0009】
この場合、前記位置決め手段は、可動ベースのY軸方向の端部とこの端部に対峙する固定ベースの部分とに夫々設けられた、くさび状の突片とこの突片が係合する係合凹部とで構成されることができる。これによれば、くさび状の突片を係合凹部に係合させるだけで、固定ベースに対して可動ベースがX軸方向及びY軸方向の二方向で位置決めされるので、駆動モータの切り換え作業を簡素化できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態の台上試験装置を、第1駆動モータを連結した状態で示す模式平面図。
図2】本実施形態の台上試験装置を、第2駆動モータを連結した状態で示す模式平面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、トランスミッションやデファレンシャルギア等の自動車部品(以下、「供試体Tb」という)を試験するための本発明の台上試験装置TMの実施形態を説明する。以下においては、後述の出力軸と連結軸とが同芯に整列される方向をX軸方向(図1中、左右方向)、同一平面内でX軸方向に直交する方向をY軸方向(図1中、上下方向)として説明する。
【0012】
図1及び図2を参照して、TMは、本実施形態の台上試験装置である。台上試験装置TMは、所定面積を有する固定ベース1と、固定ベース1上に設置される、当該固定ベース1より面積の小さい可動ベース2とを備える。固定ベース1の上面一側(図1中、左側)には、Y軸方向にのびる2本のレール部材3,3がX軸方向に間隔を存して夫々敷設されている。そして、特に図示して説明しないが、可動ベース2の下面所定位置にはレール部材3,3に摺動自在に夫々係合するスライダが設けられ、図外のアクチュエータにより固定ベース1に対して可動ベース2がY軸方向に移動自在となっている。
【0013】
固定ベース1の上面他側(図1中、右側)には、一端に連結軸41を有する試験機器4が固定配置されている。試験機器4としては、台上試験装置TMを用いてしようとする試験目的に応じて適宜選定され、本実施形態では、慣性調整機構42、トルクメータ43及び軸受装置44が直列に連結されたものを例示している。これらの機器としては公知のものが利用されるため、ここでは詳細な説明は省略する。そして、試験機器4の他端(図1中、右端)に供試体Tbが連結されている。
【0014】
可動ベース2の上面にはモータユニット5が設けられている。モータユニット5は特性の異なる2台の駆動モータ51,52を有する。例えば、一の駆動モータ51は同期電動機で構成され、他の駆動モータ52は誘導電動機で構成され、各駆動モータ51,52が、シーケンサ、ドライバやインバータ等を備える制御ユニット53により制御されるようになっている。そして、両駆動モータ51,52は、その出力軸51a,52aがX軸に夫々平行になるようにY軸方向に間隔をおいて可動ベース2上に設置されている。この場合、スライダを有する可動ベース2及びレール部材3,3が試験機器4に対してモータユニット5を一体にY軸方向に相対移動させる本実施形態の移動手段を構成し、この移動手段により可動ベース2をY軸方向に移動させた後、任意の一台の駆動モータ51,52の出力軸51a,51bを試験機器4の連結軸41に継手6を介して連結自在としている。なお、継手6としては、撓み継手等の公知のものが利用されるため、これ以上の説明は省略する。
【0015】
また、可動ベース2のY軸方向の両端部には可動位置決め部材7a,7bがX軸方向に間隔を存して2個ずつ設けられ、X軸方向一方の可動位置決め部材7aと他方の可動位置決め部材7bとが同一のY軸上に位置するようになっている。各可動位置決め部材7a,7bは同一の形態を有し、可動ベース2に固定される支持板部71と、支持板部71から可動ベース2の外方に向けて突設されたくさび状の突片72(具体的には、平面視で二等辺三角形の輪郭を持つ三角柱状の部材)とで構成される。また、各突片72の位置に夫々対応させて固定ベース上面には、固定位置決め部材8a,8bが設けられている。固定位置決め部材8a,8bもまた、同一の形態を有し、固定ベース1の所定位置に立設した支持板部81を有し、各突片72に夫々正対する支持体部81の部分には係合凹部82(具体的には、上記部材を受け入れる傾斜面が形成された凹孔)が形成されている。そして、可動ベース2をY軸方向一方に移動させると、各突片72が各係合凹部82が夫々係合し、この状態では、一方の駆動モータ51の出力軸51aと連結軸41とが同芯に整列されるようになっている。本実施形態では、各突片72と各係合凹部82とが可動ベース2の位置決め手段を構成する。特に図示して説明しないが、固定ベース1には、可動ベース2の移動を規制するロック機構が設けられ、一方の出力軸51a,52aと連結軸41とが同芯に整列された状態を保持できるようにしている。更に、いずれの駆動モータ51,52の出力軸51a,52aが連結軸41と同芯に整列されたかを制御ユニット53が判別できるように、固定ベース1の所定位置にはマイクロスイッチ等の判別手段9が設けられている。以下に、本実施形態の台上試験装置TMを用いた供試体の試験方法を具体的に説明する。
【0016】
先ず、供試体Tbを準備し、試験機器4の他端に供試体Tbを連結する。次に、供試体Tbに対して行う試験目的に応じた特性を持つ一の駆動モータ51,52をモータユニット5の中から任意に選択する。例えば、一方の駆動モータ51が選択されると、可動ベース2が固定ベース1に対してY軸方向一方(例えば、図1中、上方)に移動される。すると、その移動方向前方に位置する両可動位置決め部材7aの各突片72が固定ベース1に設けた両固定位置決め部材8aの係合凹部82に夫々係合し、固定ベース1に対して可動ベース2が位置決めされ、ロック機構により可動ベース2が固定される。この状態では、一方の駆動モータ51の出力軸51aと連結軸41とが同芯に整列され、この状態で継手6を介して出力軸51aと連結軸41とが連結され、試験準備が終了する(図1に示す状態)。この場合、制御ユニット53が判別手段9により一方の駆動モータ51の出力軸51aが連結軸41に連結されていることが認識できるようになっている。そして、自動車用エンジンを模擬する一の駆動モータ51により試験機器4の他端に連結された供試体Tbに対し試験が行われる。
【0017】
次に、同一の供試体Tbに対して回転数、トルクや慣性といった各種の試験パラメータを適宜変更して他の目的の試験をする場合、その試験目的に応じた特性を持つものが他方の駆動モータ52である場合には、出力軸51aと連結軸41との連結を解除した後、可動ベース2が固定ベース1に対してY軸方向他方(図1中、下方)に移動される。すると、両可動位置決め部材7bの各突片72が両固定位置決め部材8bの係合凹部82に夫々係合し、固定ベース1に対して可動ベース2が位置決めされ、ロック機構により可動ベース2が固定される。この状態では、一方の駆動モータ52の出力軸52aと連結軸41とが同芯に整列され、この状態で継手6を介して出力軸52aと連結軸41とが連結され、試験準備が終了する(図2に示す状態)。そして、他の駆動モータ52により試験機器4の他端に連結される供試体Tbに対し他の目的の試験が行われる。
【0018】
以上によれば、特性の異なる2台の駆動モータ51,52を設けたため、単一の台上試験装置TMによって、低慣性・高速回転・低トルク、大慣性・高速・大トルク、または、中慣性・低速回転・大トルクといった複数の試験パラメータ(条件)で供試体Tbに対して異なる目的の複数の試験を行うことができる。この場合、モータユニット5が2台の駆動モータ51,52を有するが、試験機器4や各駆動モータ51,52の制御ユニット53は共通するため、試験目的に応じて複数台の台上試験装置を設置する場合に比べてその設置面積を小さくできる。
【0019】
また、くさび状の突片72と係合凹部82とからなる位置決め手段を備えるため、可動ベース2を一方向に移動させ、突片72と係合凹部82とを係合させるだけで、固定ベース1に対して可動ベース2がX軸方向及びY軸方向の二方向で位置決めされるため、特性の異なる駆動モータ51,52に切り換えるときに、出力軸51a,52aと連結軸41との芯出しを行う作業等を不要にできて、駆動モータ51,52の切り換え作業を簡素化できる。この場合、くさび状の突片72と係合凹部82とをX軸方向に間隔を存して2か所設けているため、連結軸41の軸線に対するθ方向の位置ずれも補正される。
【0020】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記のものに限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱しない範囲で適宜変形が可能である。上記実施形態では、モータユニットを構成する特性の異なる駆動モータ51,52を2台としたものを例に説明したが、3台以上とすることもできる。また、上記実施形態では、モータユニット5を可動ベース2上に設置したものを例に説明したが、他端に供試体Tbが連結された試験機器4を可動ベース2上に設置し、モータユニット5を固定ベース1上に設置するようにしてもよい。他方、可動ベース2に突片72、固定ベース1に係合凹部82を夫々設けたものを例に説明したが、固定ベース1に突片72、可動ベース2に係合凹部82を夫々設けるようにしてもよい。
【0021】
また、上記実施形態では、試験機器4に対してモータユニット5を一体にY軸方向に相対移動させる移動手段として、スライダを有する可動ベース2とレール部材3,3とを用いるものを例に説明したが、これに限定されるものではなく、モータユニット5をY軸方向に直進性をもって移動できるものであれば、その形態は問わない。また、くさび状の突片72と係合凹部82とで位置決め手段を構成するものを例に説明したが、可動ベース2を一方向に移動させると、固定ベース1に対して可動ベース2がX軸方向及びY軸方向の二方向で位置決めされるものであれば、その形態は問わない。
【符号の説明】
【0022】
TM…台上試験装置、1…固定ベース、2…可動ベース(移動手段の構成要素)、4…試験機器、41…連結軸、5…モータユニット、51,52…特性の異なる駆動モータ、51a,52a…出力軸、72…くさび状の突片、82…係合凹部、Tb…供試体。
図1
図2