(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
3相ブラシレスモータを動力源とする電動作業機において、3相ブラシレスモータの回転を低下若しくは停止させる際には、3相ブラシレスモータの各端子間を短絡することで制動力を発生させる、所謂短絡ブレーキが利用されている。
【0003】
また、短絡ブレーキとしては、3相ブラシレスモータの全相にブレーキ電流を流す3相短絡制御が一般的であるが、3相短絡制御では、制動力が大きくなりすぎ、その制動力により電気機器に加わる力が大きくなって、電気機器に不具合が生じることがある。
【0004】
そこで、電動作業機においては、各端子と直流電源の正極との間、若しくは、各端子と直流電源の負極との間、の3つの通電経路のうち、2つの通電経路だけを導通状態とする2相短絡制御を実施することで、所望の制動力を発生できるようにすることが提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0005】
2相短絡制御では、例えば、
図7に示すように、3相ブラシレスモータの各相(U,V,W)の端子と直流電源の正極(H側)との間の通電経路に設けられる3つのスイッチング素子(ハイサイドスイッチ)をオフ状態とする。
【0006】
そして、3相ブラシレスモータの各相(U,V,W)の端子と直流電源の負極(L側)との間の通電経路に設けられる3つのスイッチング素子(ローサイドスイッチ)のオン・オフ状態を、3相ブラシレスモータの回転に応じて切り替える。
【0007】
このため、2相短絡制御を実施する際には、モータの所定の回転角度毎(図では電気角60度毎)に検出信号(図に示すホール信号)を発生する回転センサが使用される。
2相短絡制御では、回転センサからの検出信号に対応した所定の回転角度毎(図に矢印で示すタイミング毎)に、次にオン・オフ状態を切り替えるまでの時間(図では電気角30度に対応する時間)をタイマにセットして、タイマに計時を開始させる(時点t1)。
【0008】
そして、タイマにセットした時間が経過し、タイマによる計時が終了すると(時点t2)、予め設定された切り替えパターンに従い、スイッチング素子のオン・オフ状態を切り替える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、回転センサは、モータの相U,V,W毎に電気角120度間隔で配置される3つのホール素子にて構成されるのが一般的である。
このため、各相U,V,Wのホール素子の配置がずれると、回転センサからの検出信号(ホール信号)の変化タイミングがばらつき、一定の回転角度毎(例えば、電気角60度毎)に変化しなくなる。
【0011】
そして、このように回転センサから出力される検出信号の間隔にばらつきが生じると、タイマにセットする時間もばらつくことから、ブレーキ制御を適正に実施できないことがある。
【0012】
つまり、
図8に例示するように、ホール素子の配置のずれ等によって、各相のホール信号の変化タイミング(t)が変動すると、検出信号の間隔T1,T2,T3…が変動することから、その間隔T1,T2,T3…に基づき設定される時間D1,D2,D3…も変動する。
【0013】
この場合、
図8の上段に示すように、タイマにセットする時間D1,D2,D3…が、検出信号の間隔T1,T2,T3…の50%である場合(タイマ50%設定)には、各相のホール信号のばらつきによって生じる誤差は小さいので、大きな問題とはならない。
【0014】
しかし、例えば、ブレーキ制御で発生する制動力を抑えるために、時間D1,D2,D3…を、検出信号の間隔T1,T2,T3…の80%となるように設定した場合(タイマ80%設定)には、タイマ50%設定に比べて、D1,D2,D3…の誤差が大きくなる。
【0015】
この結果、
図8の中段に示す「対策前」のように、誤差によって時間D1が長くなり、タイマに時間D1をセットしてから、その時間D1が計時されてスイッチング素子のオン・オフ状態を切り替えるまでの間に、タイマに次の時間D2がセットされることがある。
【0016】
そして、この場合には、
図8に点線で示すように、検出信号の入力タイミングでタイマに時間D1をセットしてから、時間D1が経過しても、そのタイミングで実施すべきブレーキ制御(スイッチング素子のオン・オフ状態の切り替え)が、実施されなくなる。
【0017】
本開示の一局面は、3相ブラシレスモータを備えた電動作業機において、2相短絡ブレーキにより制動力を発生させる場合に、回転センサからの検出信号のばらつきによって、ブレーキ制御を正常に実施できなくなるのを抑制することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0018】
かかる目的を達成するためになされた本開示の一局面の電動作業機には、3相ブラシレスモータと、ブリッジ回路と、回転検出部と、制動制御部とが備えられている。
ここで、ブリッジ回路は、3相ブラシレスモータの3つの端子と直流電源の正極側及び負極側とをそれぞれ接続する正極側通電経路及び負極側通電経路に設けられ、各通電経路を導通・遮断する6つのスイッチング素子を有するものである。
【0019】
また、回転検出部は、モータの所定回転角度毎に、モータの回転位置を表す検出信号を発生するものであり、例えば、上述したホール素子等にて構成される回転センサにて構成される。
【0020】
また、制動制御部は、3相ブラシレスモータの回転時に制動制御の実行条件が成立すると、2相短絡ブレーキにより3相ブラシレスモータに制動力を発生させるためのものである。
【0021】
つまり、制動制御部は、ブリッジ回路において、正極側通電経路及び負極側通電経路の一方に設けられた3つのスッチング素子をオフ状態とする。そして、正極側通電経路及び負極側通電経路の他方に設けられた3つのスッチング素子のオン・オフ状態を回転検出部からの検出信号に基づき切り替えることで、3相ブラシレスモータに2相短絡ブレーキによる制動力を発生させる。
【0022】
また、制動制御部は、回転検出部が発生する検出信号に基づき、次に前記スイッチング素子のオン・オフ状態を切り替える切り替えタイミングを設定する。そして、切り替えタイミングの設定後、切り替えタイミングよりも前に検出信号が発生した際には、その検出信号に基づきスイッチング素子のオン・オフ状態を切り替える。
【0023】
このため、制動制御部が、設定した切り替えタイミングでスイッチング素子のオン・オフ状態を切り替える前に、検出信号が発生し、切り替えタイミングを更新するようになっても、更新前の切り替えタイミングに対応した切り替えは必ず実施されることになる。
【0024】
よって、本開示の電動作業機によれば、回転検出部が発生する検出信号の間隔のばらつきによって、モータの回転に同期して実施すべきブレーキ制御(スイッチング素子のオン・オフ状態の切り替え)が実施されなくなるのを、抑制することができる。
【0025】
ここで、制動制御部は、検出信号に基づき切り替えタイミングまでの時間をタイマにセットし、そのセットした時間の計時を開始させるタイマ設定部と、タイマにて時間が計時されると、スイッチング素子のオン・オフ状態を切り替える切り替え制御部とを備えていてもよい。
【0026】
また、この場合、タイマ設定部は、前回、タイマにセットした前記時間が経過する前に、検出信号に基づきタイマに前記時間をセットする際には、切り替え制御部に代わってスイッチング素子のオン・オフ状態を切り替えるように構成されているとよい。
【0027】
つまり、このようにすれば、回転検出部が発生する検出信号の間隔にばらつきが生じ、タイマ設定部がタイマに時間をセットする際に、前回セットした時間が経過していない場合であっても、前回セットした時間に対応したブレーキ制御を実施できるようになる。
【0028】
よって、制動制御部を上記のように構成すれば、回転検出部が発生する検出信号の間隔のばらつきによって、モータの回転に同期して実施すべきブレーキ制御(スイッチング素子のオン・オフ状態の切り替え)が実施されなくなるのを、抑制することができる。
【0029】
また、上記のように、タイマ設定部において、切り替え制御部に代わって、スイッチング素子のオン・オフ状態の切り替えるブレーキ制御を実施する際には、本来実施すべきブレーキ制御のタイミングで、ブレーキ制御を実施するようにするとよい。
【0030】
しかし、このためには、ブレーキ制御の実施タイミングを計測するためのタイマを別途設ける等の対策が必要で、構成が複雑になる。
このため、タイマ設定部は、切り替え制御部に代わってブレーキ制御を実施する際には、モータが、検出信号から得られる所定の回転位置に達してから、所定時間内に、ブレーキ制御(スイッチング素子のオン・オフ状態の切り替え)を実施するように構成されていてもよい。
【0031】
また、この場合、タイマ設定部は、モータが、検出信号から得られる所定の回転位置に達すると、直ぐに、ブレーキ制御(スイッチング素子のオン・オフ状態の切り替え)を実施するように構成されていてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、本開示の実施形態を図面と共に説明する。
なお、本実施形態では、本開示の電動作業機として、被加工材に対して研削、研磨、切断等の加工を行うグラインダを例にとり説明する。
【0034】
図1に示すように、本実施形態のグラインダ2は、モータハウジング4と、ギヤハウジング6と、リヤハウジング8とが一体的に組み付けられた本体部を有する。
モータハウジング4は、使用者が片手で把持し得る外径を有する円筒形状であり、その内部に、
図2に示すモータ5を収容している。なお、モータ5は、3相ブラシレスモータである。
【0035】
モータ5は、モータハウジング4内に、モータ5の回転軸がモータハウジング4の中心軸と平行で略一致するように配置されており、モータ5の回転軸は、ギヤハウジング6に向かって突出されている。
【0036】
リヤハウジング8は、モータハウジング4と同様に略円筒形状になっており、モータハウジング4の中心軸の一端側(詳しくはギヤハウジング6とは反対側)に設けられている。また、リヤハウジング8のモータハウジング4とは反対側には、バッテリパック20A,20Bを着脱自在に装着するための装着部9が設けられている。
【0037】
そして、装着部9の内部には、バッテリパック20A,20Bから電力供給を受けて、モータ5を駆動制御するためのモータ駆動回路30(
図2参照)が収容されている。
また、リヤハウジング8には、使用者がリヤハウジング8を把持した状態で引き操作可能なトリガスイッチ16が設けられており、モータ駆動回路30は、トリガスイッチ16の操作状態に応じて、モータ5を駆動したり停止したりする。
【0038】
次に、ギヤハウジング6は、モータハウジング4のリヤハウジング8とは反対側に設けられ、モータ5の回転をその回転軸と直交する出力軸に伝達するギヤ機構を収容している。また、出力軸は、ギヤハウジング6から突出されており、その突出部分には、研削砥石、切断砥石、等の円板状の先端工具10が固定される。
【0039】
このため、グラインダ2は、モータ5が駆動されることにより、先端工具10が回転して、研削、研磨、切断等の作業を行うことができるようになる。
また、先端工具10の周囲には、研削、研磨、切断等の作業時に発生する粉塵等が使用者側に飛散するのを防止し、使用者を保護するためのホイールカバー12が設けられている。
【0040】
このホイールカバー12は、先端工具10の一部(略半分)をギヤハウジング6側から覆うように、略半円形状に形成されており、ギヤハウジング6において出力軸が突出される部分の周囲に、円環形状の固定具14を介して固定される。
【0041】
次に、モータ駆動回路30は、
図2に示すように、ブリッジ回路32、ゲート回路34、制御回路36、及び、レギュレータ40を備える。
ブリッジ回路32は、直列接続されたバッテリパック20A,20Bから電力供給を受けて、モータ5の各相巻線に電流を流すためのものであり、本実施形態では、6つのスイッチング素子Q1〜Q6からなる3相フルブリッジ回路として構成されている。
【0042】
ブリッジ回路32において、3つのスイッチング素子Q1〜Q3は、モータ5の各端子U,V,Wと、バッテリパック20Aの正極側に接続された電源ライン(正極側電源ライン)との間に、いわゆるハイサイドスイッチとして設けられている。
【0043】
また、他の3つのスイッチング素子Q4〜Q6は、モータ5の各端子U,V,Wと、バッテリパック20Bの負極側に接続されたグラウンドラインとの間に、いわゆるローサイドスイッチとして設けられている。
【0044】
従って、スイッチング素子Q1〜Q3は、オン状態であるとき、モータ5に対する正極側通電経路を形成し、スイッチング素子Q4〜Q6は、オン状態であるとき、モータ5に対する負極側通電経路を形成することになる。
【0045】
また、スイッチング素子Q1〜Q6は、本実施形態では、nチャネルのMOSFETにて構成されている。このため、スイッチング素子Q1〜Q6を構成するFETのドレイン−ソース間には、ソースからドレインに向けて順方向となるダイオード(所謂、寄生ダイオード)が並列に接続されることになる。
【0046】
従って、これら各ダイオードは、対応するスイッチング素子Q1〜Q6がオフ状態であるとき、直列接続されたバッテリパック20A,20Bの正極側から負極側に至る正方向とは逆方向に電流を流すことができる。
【0047】
次に、ゲート回路34は、制御回路36から出力された制御信号に従い、ブリッジ回路32内の各スイッチング素子Q1〜Q6をオン/オフさせることで、モータ5の各相巻線に駆動電流若しくはブレーキ電流を流し、モータ5を回転若しくは制動させるものである。
【0048】
また、制御回路36は、CPU、ROM、RAM等を中心とするMCU(Micro Control Unit)にて構成されており、ゲート回路34を介してモータ5の駆動及び制動を制御する。なお、制御回路36には、制御対象となるモータ5やモータ駆動回路30の状態(異常等)を記憶するための不揮発性のメモリ38が設けられている。
【0049】
また、制御回路36には、上述したトリガスイッチ(以下、スイッチをSWと記載する)16や、モータハウジング4若しくはリヤハウジング8に設けられた表示LED18が接続されている。
【0050】
また、制御回路36には、バッテリ電圧検出部24、電流検出回路26、及び、回転検出部28も接続されており、制御回路36は、これら各部からの検出信号に基づきモータ5を制御する。
【0051】
なお、バッテリ電圧検出部24は、直列接続されたバッテリパック20A,20Bから供給されるバッテリ電圧を検出するためのものである。
また、電流検出回路26は、ブリッジ回路32からグラウンドラインに至るモータ5への通電経路(負極側通電経路)上に設けられて、モータ5に流れる電流を検出するためのものである。
【0052】
また、回転検出部28は、モータ5の所定回転角度毎(本実施形態では電気角60度毎)に検出信号を発生するものであり、モータ5のU,V,W相毎に、電気角120度間隔で配置される3つのホール素子にて構成されている。
【0053】
従って、回転検出部28からは、
図7に示すように、モータ5のU,V,W相毎に電気角で位相差が120度となるホール信号が出力されることになり、制御回路36は、各相のホール信号の変化に基づき、モータ5の回転速度を検出することができる。
【0054】
つまり、制御回路36は、各相のホール信号が反転するエッジ毎に、検出信号が入力されたと判断して、検出信号の間隔とその間の回転角度(電気角60度)とに基づき、モータ5の回転速度を検出する。
【0055】
また、制御回路36は、回転検出部28からの検出信号からモータ5の回転位置を把握し、スイッチング素子Q1〜Q6のオン・オフ状態の切り替えタイミングを制御することで、モータ5の駆動時及び制動時に流れる電流を制御する。
【0056】
次に、制御回路36にて、モータ5の駆動及び制動を制御するために実行される制御処理について説明する。
図3に示すように、制御回路36は、所定の制御周期(タイムベース)でS120〜S150(Sはステップを表す)の一連の処理を繰り返し実行する。
【0057】
すなわち、制御回路36は、S110にて、タイムベースが経過したか否かを判断することにより、所定の制御周期が経過するのを待ち、S110にてタイムベースが経過したと判断すると、S120に移行する。
【0058】
S120では、トリガSW16のオン・オフ状態を確認することで、使用者によるトリガSW16の操作を検出する、スイッチ操作検出処理を実行し、S130に移行する。
S130では、バッテリ電圧検出部24及び電流検出回路26からの検出信号を、A/D変換して取り込むA/D変換処理を実行する。
【0059】
そして、続くS140では、S120、S130にて読み込んだトリガSW16のオン・オフ状態、バッテリ電圧、電流、等に基づきモータ5の駆動及び制動を制御するモータ制御処理を実行する。
【0060】
また、続くS150では、バッテリ電圧や電流等から、モータ5の駆動・制動系の状態を検出して、表示LED18を介して表示する表示処理を実行し、S110に移行する。なお、この表示処理では、例えば、表示LED18の点灯色や点灯パターンを制御することで、グラインダ2が正常動作しているか否か、異常時には異常内容、を識別可能に表示する。
【0061】
次に、S140のモータ制御処理では、
図4に示すように、S210にて、トリガSW16がオン状態か否かを判断する。そして、トリガSW16がオン状態でなければ、外部(使用者)からモータ5の駆動指令は入力されていないので、S240に移行する。
【0062】
また、S210にて、トリガSW16がオン状態であると判断されると、S220に移行して、上述したバッテリ電圧、電流に基づき、モータ5を駆動可能であるか否かを判断する。
【0063】
そして、モータ5を駆動可能であれば、モータ5を駆動すべくS230に移行し、モータを駆動可能でなければ、S240に移行する。
S230では、モータ5の回転速度(又は駆動電流)を、目標回転速度(電流)まで徐々に増加させて、モータ5を目標回転状態に制御するためのブリッジ回路32の駆動デューティ比を演算するモータ駆動処理を実行し、当該モータ制御処理を終了する。
【0064】
一方、S240では、上述したホール信号の変化等から、現在、モータ5が回転していて、制動力を発生させる必要があるか否か(換言すれば、ブレーキ制御の実行条件が成立したか否か)を判断する。
【0065】
そして、ブレーキ制御を実施する必要があれば、S250に移行して、ブレーキフラグをセットし、当該モータ制御処理を終了する。また逆に、ブレーキ制御を実施する必要がなければ、S260に移行して、ブレーキフラグをクリアし、当該モータ制御処理を終了する。
【0066】
次に、制御回路36において、回転検出部28からの検出信号(詳しくは各相U,V,Wのホール信号)に従い、モータ5の電気角60度回転毎に実行される信号割り込み処理について説明する。
【0067】
図5に示すように、この信号割り込み処理では、S310にて、ブレーキフラグがセットされているか否かを判断し、ブレーキフラグがセットされていれば、S320に移行して、以降の処理でセットされるソフトブレーキ処理要求がセットされているか否かを判断する。
【0068】
そして、ソフトブレーキ処理要求がセットされていなければ、S340に移行して、前回、当該信号割り込み処理を開始してからの経過時間を取得し、S350に移行する。
S350では、S340で取得した経過時間と、予め設定された遅延角度とから、当該割り込み処理を開始してから、次にスイッチング素子Q1〜Q6のオン・オフ状態を切り替える迄の遅延時間を求める。
【0069】
なお、遅延角度は、
図7に示した「電気角30度」というような角度であり、具体的には、経過時間に対応する回転角度(電気角60度)に対し、上述した50%、80%といった比率にて設定される。このため、S350では、S340で取得した所定回転角度に対応する経過時間に対し、所定の比率(50%、80%)を乗じることで、遅延時間を算出する。
【0070】
このように、S350にて、遅延時間が算出されると、続くS360にて、その遅延時間を計時用のタイマにセットして、遅延時間の計時を開始させる。そして、最後に、S370にて、ソフトブレーキ処理要求をセットし、当該信号割り込み処理を終了する。
【0071】
また、S310にて、ブレーキフラグはセットされていないと判断されると、S380に移行して、モータ駆動など、ブレーキ以外の処理を実行して、当該信号割り込み処理を終了する。
【0072】
次に、S360にて、タイマに遅延時間がセットされると、その後、遅延時間が経過したタイミングで、
図6に示すタイマ割り込み処理が開始される。
このタイマ割り込み処理では、まず、S410にて、ソフトブレーキ処理要求がセットされているか否かを判断する。そして、ソフトブレーキ処理要求がセットされていれば、S420に移行して、2相短絡ブレーキによりモータ5に制動力を発生させるブレーキ制御処理を実行する。
【0073】
このブレーキ制御処理は、
図7に例示したように、ブリッジ回路32を構成する全てのハイサイドスイッチ(Q1〜Q3)をオフ状態に保持し、ローサイドスイッチ(Q4〜Q6)のオン・オフ状態を所定パターンで順次切り替えるための処理である。
【0074】
このため、S420では、今回のタイマ割り込み処理でオン・オフ状態を切り替えるべきスイッチング素子を、予め設定されている制御パターンから特定し、そのスイッチング素子のオン・オフ状態を切り替える(時点t2参照)ことで、2相短絡ブレーキを実現する。
【0075】
そして、このようにタイマ割り込み処理でブレーキ制御処理が実施されると、S430に移行して、ソフトブレーキ処理要求をクリアし、当該タイマ割り込み処理を終了する。
一方、S410にて、ソフトブレーキ処理要求がセットされていないと判断されると、S440に移行し、モータ駆動など、ブレーキ以外の処理を実行して、当該タイマ割り込み処理を終了する。
【0076】
S440の処理は、信号割り込み処理のS380にてタイマにセットされた時間が経過することにより実施される処理であり、S380の処理に連動して実施される。
例えば、モータ駆動の場合、上述したS230のモータ駆動処理にて求められた駆動デューティ比にて、ブリッジ回路32内のスイッチング素子Q1〜Q6を所定の駆動パターンでオンさせる必要がある。
【0077】
このため、信号割り込み処理のS380では、所定の駆動パターンでスイッチング素子Q1〜Q6のオン・オフ状態を切り替えるタイミングを、タイマを介して設定する。また、タイマ割り込み処理のS440では、予め設定された駆動パターンに従い、今回のタイマ割り込み処理でオン・オフ状態を切り替えるべきスイッチング素子を特定し、そのスイッチング素子のオン・オフ状態を切り替える。
【0078】
上記のように、タイマ割り込み処理では、S420のブレーキ制御処理を実行することで、2相短絡ブレーキを実現する。しかし、回転検出部28からの検出信号(ホール信号)の間隔にばらつきが生じると、
図8の中段に示したように、タイマ割り込み処理でスイッチング素子のオン・オフ状態を切り替える前に、信号割り込み処理でタイマに時間が設定されて、ブレーキ制御を正常に実施できないことがある。
【0079】
そこで、本実施形態では、
図5に示す信号割り込み処理において、S320にて、ソフトブレーキ処理要求がセットされていると判断された場合には、タイマ割り込み処理でブレーキ制御処理が実施されていないので、S330に移行する。そして、S330では、タイマ割り込み処理で実施すべきブレーキ制御処理を、タイマ割り込み処理に代わって実施し、S340に移行する、ようにされている。
【0080】
この結果、
図8の下段に示すように、タイマ割り込み処理でブレーキ制御処理が実施されていない状態で、信号割り込み処理が実施された際には、その信号割り込み処理にて、タイマ割り込み処理で実施すべきブレーキ制御(スイッチング素子のオン・オフ状態の切り替え)を実施できるようになる。
【0081】
従って、本実施形態のグラインダ2によれば、回転検出部28から入力される検出信号(ホイール信号)の間隔にばらつきが生じ、信号割り込み処理でタイマにセットした時間が経過するまでの間に、次の検出信号が入力されたとしても、ブレーキ制御を正常に実施することが可能となる。
【0082】
なお、本実施形態においては、制御回路36が、本開示の制動制御部に相当する。また、制御回路36が実行する制御処理のうち、信号割り込み処理にて、本開示のタイマ設定部としての機能が実現され、タイマ割り込み処理にて、本開示の切り替え制御部としての機能が実現される。
【0083】
以上、本開示の一実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の態様をとることができる。
例えば、上記実施形態では、信号割り込み処理において、S320にて、ソフトブレーキ処理要求がセットされており、タイマ割り込み処理にてブレーキ制御処理が実施されていないと判断した場合には、直ぐに、S330のブレーキ制御処理を実行するようにしている。
【0084】
しかし、実際にブレーキ制御処理を実施すべきタイミングは、タイマにて計時すべき残時間が経過したタイミングであるので、その残時間が経過したときに、S330のブレーキ制御処理を実施するようにしてもよい。
【0085】
但し、残時間を計時するには、タイマ割り込み処理を実施するのに用いるタイマとは別に、計時用のタイマを設ける必要があるので、制御回路36による制御処理が複雑になる。
このため、信号割り込み処理において、S320にて、ソフトブレーキ処理要求がセットされていると判断されると、S325に移行し、S330のブレーキ制御処理を実施するまで所定時間だけ遅延させる遅延処理を実施するようにしてもよい。
【0086】
次に、上記実施形態では、2相短絡ブレーキは、ブリッジ回路32を構成するハイサイドスイッチ(Q1〜Q3)をオフ状態にし、ローサイドスイッチ(Q4〜Q6)のオン・オフ状態をモータ5の回転に応じて切り替えるものとして説明した。
【0087】
しかし、2相短絡ブレーキは、ブリッジ回路32を構成するローサイドスイッチ(Q4〜Q6)をオフ状態にし、ハイサイドスイッチ(Q1〜Q3)のオン・オフ状態を切り替えることで、実施するようにしてもよい。
【0088】
また、モータ5のブレーキ制御は、上述した2相短絡ブレーキと、全相短絡ブレーキとを組み合わせて実施するようにしてもよい。
また、上記実施形態では、バッテリパック20A,20Bから電力供給を受けてモータ5を駆動するよう構成されたグラインダ2について説明したが、本開示の電動作業機は、こうしたグラインダに限定されるものではない。
【0089】
例えば、本開示の電動作業機は、バッテリパックを備えた他の電動作業機であってもよい。また、ACアダプタ等の外部の直流電源から電源供給を受けて動作する電動作業機であっても、或いは、商用電源等の交流電源から電源供給を受けて動作する電動作業機であってもよい。
【0090】
また、上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。なお、特許請求の範囲に記載した文言のみによって特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本発明の実施形態である。