(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の電力制御システムの蓄電池劣化診断方法および電力制御システムの実施の形態について図面を参照して説明する。
(実施の形態1)
まず、
図1を参照しながら実施の形態1の電力制御システムの蓄電池劣化診断方法を実施する電力制御システムの全体構成について説明する。
【0011】
この電力制御システムは、制御される建物としての住宅H1・・Hn・・HXは、電力会社の発電所や地域毎に設置されたコジェネレーション設備などの系統電力網としての商用電源Eに接続されている。なお、以下の説明において、住宅H1,・・・,HXのうちの特定のものを指さない場合は、単に住宅Hと表記する。
これらの複数の住宅Hは、全国に配置されている。また、各住宅Hは、その所在地に応じた省エネルギ基準に基づいて予め設定された複数の地域区分に分けられており、地域区分に応じた断熱性能が与えられている。
【0012】
各住宅Hは、少なくとも太陽光発電装置としての太陽光パネル1と、電力を一時的に蓄えておく蓄電池2とを備えている。さらに、これらの住宅Hは、住宅Hの電力を管理する住宅コントロールユニット10を備えている。
【0013】
そして、この住宅コントロールユニット10は、それぞれインターネットなどの外部の通信ネットワークNを介して住宅管理サーバ5aおよび蓄電池メーカ管理サーバ5bに接続され、住宅コントロールユニット10と両管理サーバ5a,5bとの間で、計測値や演算処理結果などのデータの送受信や各種制御信号の送受信などが行われる。
【0014】
なお、両管理サーバ5a,5bは、それぞれ、図示は省略するが、CPUとRAM、ROMなどのメモリを備えた情報処理装置により構成され、CPUの制御による通信ネットワークNを介した通信を行う通信インタフェースなどを備える。
【0015】
(住宅側の構成)
次に、住宅Hの電力系統について、簡単に説明する。
住宅Hの電力供給系として、分電盤20が設けられている。
分電盤20は、商用電源Eに接続され、かつ、住宅Hの太陽光パネル(太陽光発電装置)1、蓄電池2、電力負荷群3に接続されている。
【0016】
太陽光パネル1は、太陽電池を利用することによって、太陽光を電力に変換して発電を行う装置である。この太陽光パネル1は、太陽光を受けることができる時間帯のみ電力を供給することが可能である。また、太陽光パネル1によって発電された直流電力は、通常、パワーコンディショナ(不図示)によって交流電力に変換されて住宅H内で使用される。なお、これらの住宅Hに設置された太陽光パネル1は、複数の仕様があり、仕様の違いで発電容量などがことなるもので、住宅Hごとの仕様の違いについては、住宅管理サーバ5a側のデータベースに記憶されている。
【0017】
一方、蓄電池2も、太陽光パネル1と同様に、パワーコンディショナ(不図示)により直流−交流の変換が成されて、蓄電(充電)および放電の制御がなされる。なお、蓄電池2のメーカ、機種、蓄電容量や定格出力などの仕様も、住宅管理サーバ5aの邸情報データベース(不図示)に住宅Hに関連付けて記憶されている。
【0018】
この蓄電池2の蓄電、放電を含む電力の制御は、住宅コントロールユニット10により、住宅管理サーバ5aから送られる運転計画に基づいて行われる。
例えば、蓄電池2に、商用電源Eから供給される深夜電力などの電力価格が安い電力や、太陽光パネル1にて発電された電力を蓄電し、商用電源Eの電力価格が高い時間帯に放電を行うよう制御する。
また、売電価格などを考慮して、発電電力の一部あるいは全てを、商用電源E側に放電して売電する制御も含まれる。
【0019】
電力負荷群3は、電力を消費して駆動する複数の電力負荷から成るもので、電力負荷としては、例えば、図示を省略した給湯装置、空調装置、照明装置、冷蔵庫やテレビなどの家電装置(不図示)、調理装置などが含まれる。そして、分電盤20と、電力負荷群3の各電力負荷とは、複数の分岐回路(不図示)を介して接続されている。
【0020】
太陽光パネル1の発電量、蓄電池2の充放電量、電力負荷群3の消費電力は、計測装置4により計測される。
すなわち、計測装置4は、商用電源Eから分電盤20へ向けて供給される買電力量、住宅Hから商用電源Eへ向けて供給される売電力量、太陽光パネル1で発電された発電電力量、蓄電池2から放電される放電電力量、蓄電池2に充電される充電電力量を計測する。さらに、各分岐回路(不図示)を介して電力負荷群3へ供給される消費電力量も計測する。
【0021】
また、計測装置4による各電力量の計測は、1秒単位、1分単位、1時間単位などの任意の時間毎に積算して行うことができる。そして、計測装置4によって計測された計測値のデータは、住宅管理サーバ5aに設けられた消費電力等の履歴データベース(不図示)に入力され保存される。
なお、住宅コントロールユニット10と、両管理サーバ5a,5bとの通信は、ルータ11から、通信ネットワークNを介して行われる。
【0022】
(管理サーバの構成)
次に、住宅管理サーバ5a、蓄電池メーカ管理サーバ5bについて説明する。
蓄電池メーカ管理サーバ5bは、蓄電池2のメーカ毎に、自社の蓄電池2の作動を、独自に管理するもので、時々刻々と住宅コントロールユニット10から送られてくる充放電データに基づいて、蓄電池2の動作状態を管理している。この蓄電池メーカ管理サーバ5bでは、メーカ毎に独自に決めた基準に基づいて、蓄電池2の異常などを検出している。
【0023】
住宅管理サーバ5aは、各種データベース(不図示)に記憶されたデータ、制御部で行われた演算処理結果、更新プログラムなどを各住宅Hに向けて送る機能を有している。このような演算処理結果として、家庭での電力の使用の効率化を図ってエネルギを節約するいわゆるHEMS(Home Energy Management System)制御が含まれる。
【0024】
さらに、住宅管理サーバ5aのデータベースには、各住宅Hに与えられた邸コード(識別番号)、およびその邸コードに関連付けられた住所、建築年、断熱性能、間取りおよび床面積、電気配線、使用部材、太陽光パネル1の仕様(発電容量)、蓄電池2の仕様(蓄電容量、定格出力)などの各種設備の仕様に関する情報が入力され、保存されている。さらに、住宅管理サーバ5aのデータベースには、住宅Hごとに、実際の単位時間毎の発電量が、気象データ(日射量)に関連付けて記憶されている。
【0025】
また、住宅管理サーバ5aのデータベースには、各住宅Hで計測あるいは演算された消費電力量が、受信されて記憶される。この消費電力量の履歴は、単位時間毎に記憶されるとともに、曜日など暦に関連付けして記憶される。
【0026】
そして、住宅管理サーバ5aのデータベースには、各時間帯の電力価格(住人側から見て買電価格)や、太陽光パネル1で発電した電力を電力会社などが買い取る価格(住人側から見て売電価格)が記憶されている。また、気象庁や気象予報会社などの図示省略のサーバから通信ネットワークNを介して受信した各住宅Hが立地する全国各地の気温や日射量などの翌日の気象予報データが記憶されている。
【0027】
加えて、住宅管理サーバ5aのデータベースには、各住宅Hに設置された電力負荷群3および蓄電池2の様々な運転パターンが、気象データに対応付けて記憶されている。
【0028】
また、住宅管理サーバ5aは、運転計画部(不図示)や運転監視部51を備える。
運転計画部は、翌日の気象予報および過去の消費電力量データに基づいて、翌日の時間毎の必要な消費電力量、発電量、運転パターンを予測し、蓄電池2の蓄電運転時刻、放電運転時刻や、給湯装置(不図示)による蓄湯運転時刻などの設定を行う。
【0029】
運転監視部51は、住宅Hから送られてくるデータに基づいて、住宅Hにおける電力を利用する運転状態を監視する。この監視対象には、蓄電池2が含まれ、蓄電池2の劣化などの異常を含む異常発生時には、その異常を報せるなどの異常に応じた処理を実行する。
【0030】
保守管理部6は、住宅管理サーバ5aと蓄電池メーカ管理サーバ5bとの管理情報が送られる。そして、住宅管理サーバ5aと蓄電池メーカ管理サーバ5bとのいずれかにおいて、蓄電池2の異常を含む各種異常を発見した場合には、保守管理部6に異常発生およびその内容を出力し、保守管理部6から、住宅Hに対して、異常を報せるとともに、異常に対応した修理や交換などを行う。
【0031】
(蓄電池劣化診断方法)
本実施の形態1の電力制御システムの蓄電池劣化診断方法は、上記の住宅管理サーバ5aの運転監視部51により実行される。すなわち、運転監視部51では、多様な蓄電池2の劣化を統合管理する。
【0032】
そこで、運転監視部51のデータベース(不図示)には、各住宅Hに設置された蓄電池2のメーカおよび機種ごとの劣化パターン情報が記憶されている。
この劣化パターン情報としては、
図2に示す保証値と劣化判断閾値とが設定されている。
すなわち、住宅Hに設置された蓄電池2は、多種多様に亘り、製造メーカが異なるものが存在するとともに、同一メーカであっても、複数の異なる機種が存在する。
【0033】
そして、これらの蓄電池2は、機種ごとに、保証値(Ga〜Gc(
図2参照))が設定されている。つまり、蓄電池容量(SOC:State of Charge)は、年々劣化して低下する。それに対して、蓄電池容量が、異常に低下した場合に、これを保証する保証値が設定されている。この保証値は、いわゆる蓄電池メーカの製品保証値であり、例えば、
図2において機種aの保証値Gaは、10年間、蓄電池容量(SOC%)が正常であれば、この値よりも低くなることは無いとして設定された値である。したがって、機種aの場合、蓄電池2のメーカは、蓄電池容量(SOC)が、10年以内にこの保証値Ga以下に低下した場合には、新品への交換や修理などで保証する。また、機種bの場合は、その保証期間を15年としている。
【0034】
なお、機種a〜cは、それぞれ、機種が異なるもので、メーカも異なる場合もあるが、メーカの相違は、図には表していない。また、この機種の数も、実際には、機種a〜cの「3」よりも多く、例えば、メーカ数として、5〜10程度存在するとともに、各メーカにおいて、1〜10程度の範囲の機種を有する。
【0035】
劣化判断閾値La〜Lcは、住宅管理サーバ5a側で独自に設定した値であり、蓄電池2の異常劣化の判断に用いる。蓄電池2の容量は、正常であっても使用に伴い年々劣化する。そこで、この劣化判断閾値La〜Lcは、蓄電池2が正常な範囲内で劣化した場合の蓄電池容量よりも低い値(%)であって、保証値(Ga〜Gc)以上の値に設定されている。
【0036】
ここで、正常範囲内の劣化による蓄電池容量は、設置年数=0の蓄電池容量を100%とし、保証期間の終了時点で保証値(Ga〜Gc)の範囲内となるように設定する。そして、劣化判断閾値La〜Lcは、この正常範囲内の劣化による蓄電池容量に対してある程度低い値とする。さらに、劣化判断閾値La〜Lcは、100%未満〜保証値の範囲内で、」1年毎に値(%)を低下させ、保証期間の終了時あるいは終了前に保証値(Ga〜Gc)と等しくなるように設定している。
【0037】
すなわち、
図2において、劣化判断閾値Laを表すa1〜a10の値(%)は、90%>a1>a2>a3・・・a7>a8=a9=a10(=保証値Ga)の高低関係に設定している。劣化判断閾値Lbを表すb1〜b14の値は、90%>b1>b2>b3・・・>b11>b12=b13=b14=b15(=保証値Gb)の高低関係に設定している。劣化判断閾値Lcを表すc1〜c9の値も、90%>c1>c2>c3・・・>b7>c8=c9=c10(=保証値Gc)の高低関係に設定している。なお、保証値(Ga〜Gc)は、例えば、設置年数0年の蓄電池容量を100%としたときに、50%〜60%程度の値である。また、各劣化判断閾値La〜Lcにおいて最も低い値a10、b15、c10は、保証値Ga,Gb,Gcよりも大きな値としてもよい。
【0038】
次に、
図3のフローチャートに基づいて運転監視部51において実行される蓄電池劣化診断処理について説明する。なお、この蓄電池の劣化診断処理は、各蓄電池2について、設置時点から所定期間(例えば、数か月、半年、1年など)が経過する毎に実行する。
【0039】
まず、最初のステップS1では、診断対象の蓄電池2に関する情報を読み込む。この蓄電池2に関する情報とは、診断対象の蓄電池2の機種、設置年数、保証値(Ga〜Gc)、劣化判断閾値(La〜Lc)などである。
【0040】
続くステップS2では、診断対象の蓄電池2の設置年数が、保証年数を越えていないか判断し、越えている場合は、処理を終了し、越えていない場合は、次のステップS3に進む。
ここで、保証年数は、メーカにより異なっており、例えば、
図2に示すように、機種aおよび機種cは、保証期間を10年としており、劣化判断閾値Laも10年の設定としている。したがって、保証期間である10年を越えると、劣化判断も行わない。また、機種bでは、保証期間を15年としている。なお、この保証年数や保証値(Ga〜Gc)は、この
図2に示した年数および数値に限定されるものではなく、保証年数を例えば20年などの15年よりも長い期間としてもよい。
【0041】
ステップS2において、設置年数が保証年数を越えていない場合(NO判定の場合)に進むステップS3では、診断対象の蓄電池2の現在の蓄電池容量(最新SOC%)を計測する。なお、この蓄電池容量の計測の仕方の詳細は、後述する。
次のステップS4では、ステップS1で求めた蓄電池容量(最新SOC%)が、診断対象の蓄電池2に応じて設定された各劣化判断閾値(La〜Lc)未満であるかどうか判定する。そして、蓄電池容量が劣化判断閾値(La〜Lc)よりも大きい場合(NO判定の場合)は、診断対象の蓄電池2に問題ないとして劣化診断を終了する。
【0042】
一方、ステップS4において、蓄電池容量<劣化判断閾値(La〜Lc)である場合(YES判定の場合)は、ステップS5に進む。
このステップS5では、ステップS1で求めた蓄電池容量が、診断対象の蓄電池2に応じて設定された保証値(Ga〜Gc)未満であるかどうか判定する。
そして、蓄電池容量が保証値(Ga〜Gc)よりも大きい場合(NO判定の場合)は、ステップS6に進み、要注意観察する旨を保守管理部6に出力する。
また、ステップS5において蓄電池容量<保証値(Ga〜Gc)の場合(YES判定の場合)は、ステップS7に進んで、蓄電池2が異常に劣化しているとして、交換保証や修理保証などを実行する旨を、保守管理部6に出力する。
【0043】
(蓄電池容量の計測)
次に、ステップS1における蓄電池容量の計測の処理の流れを、
図4のフローチャートにより説明する。
最初のステップS11は、蓄電池2を満充電する。
次のステップS12では、電力負荷群3の電力消費を、蓄電池2からの放電により行う。
次のステップS13では、蓄電池2の蓄電池容量(SOC)が、予め設定された放電閾値未満に達したか否か判定する。そして、蓄電池容量が放電閾値未満ではない場合は、電力負荷群3での消費を続ける。
一方、蓄電池容量が放電閾値未満となったら、ステップS14に進んで、現在の蓄電池容量(最新SOC%)を求める。なお、放電閾値は、本実施の形態1では、蓄電池2が、ほぼ空の状態になるまで放電しきった状態と判断する値としている。
【0044】
(実施の形態の作用)
次に、実施の形態1の電力制御システムの作用について説明する。
住宅Hに蓄電池2を設置する際には、住宅管理サーバ5aには、住宅Hに関連付けて、蓄電池2の機種、設置時期の情報を入力する。また、住宅管理サーバ5aには、予め、蓄電池2の機種ごとに、保証値(Ga〜Gc)および劣化診断閾値(La〜Lc)が入力されている。
【0045】
そして、住宅管理サーバ5aでは、住宅Hにおいて蓄電池2の使用開始後、所定期間の経過毎(例えば、使用開始から数カ月毎、半年毎、1年毎など)に、蓄電池2の劣化診断を実行する。
【0046】
この劣化診断では、まず、診断対象の蓄電池2の各種情報である、設置時期、保証年数、保証値(Ga〜Gc)、劣化診断閾値(La〜Lc)を読み込み(S1)、診断対象の蓄電池2の設置年数が保証年数を越えていないか判断し(S2)、保証年数を越えていれば、診断を終了する。すなわち、劣化診断は、予め蓄電池2の製造メーカにより設定された保証年数の期間実行するもので、この保証期間を越えているものには行わない。
【0047】
劣化診断対象の蓄電池2の設置年数が保証年数以内の場合、蓄電池2の現在の蓄電池容量(SOC)を計測する(S3)。
この蓄電池容量の計測にあたっては、まず、蓄電池2を満充電状態とする指示を出力する(S11)。そして、蓄電池2が満充電となったら、蓄電池2を放電させる(S12)。この放電は、住宅H内の電力負荷群3の電力消費を蓄電池2からの放電により賄うことにより行う。
その後、蓄電池2の蓄電池容量が、放電閾値未満に達した時点で、放電を終了し(S13)、現時点の蓄電池容量(最新SOC%)を求める(S14)。
【0048】
上記のようにして蓄電池容量の計測を終えると、計測した蓄電池容量(最新SOC%)が劣化診断閾値(La〜Lc)未満であるか判定する(S4)。そして、蓄電池容量(最新SOC%)が劣化診断閾値(La〜Lc)未満でない場合には、現在の蓄電池容量は、劣化診断閾値(La〜Lc)の範囲内であるから、蓄電池2に異常なしとして劣化診断を終了する。
【0049】
一方、蓄電池容量(最新SOC%)が劣化診断閾値(La〜Lc)未満の場合は、さらに、蓄電池容量(最新SOC%)が保証値(Ga〜Gc)未満であるか否か判定する(S5)。そして、蓄電池容量(最新SOC%)が保証値(Ga〜Gc)未満の場合は、診断対象の蓄電池2が大幅に劣化しているとして、交換保証する旨の連絡を保守管理部6に出力する(S7)。
【0050】
また、蓄電池容量(最新SOC%)が劣化診断閾値(La〜Lc)未満、かつ、保証値(Ga〜Gc)以上の場合(S5においてNO判定の場合)、保守管理部6へ、要注意観察が必要である旨の出力を行う(S6)。
【0051】
以上のように、住宅管理サーバ5aでは、異なるメーカにより製造された複数種類の蓄電池2を統合管理し、蓄電池2に対して個別に劣化診断を行い、保証値(Ga〜Gc)を越える異常な劣化と診断した場合には、保守管理部6に報せる。
なお、蓄電池メーカ管理サーバ5bでは、メーカ毎に、自社の蓄電池2について、独立した管理を行っているが、本開示の要旨ではないので、詳細な説明は省略する。一例としては、所定期間(例えば、毎年〜毎日の範囲内)毎に、蓄電池容量(最新SOC%)と保証値と比較し、保証値を越えて劣化している場合には、異常と判断する。
【0052】
(実施の形態1の効果)
以下に、本開示の実施の形態1の効果を列挙する。
1)実施の形態1の電力制御システムの蓄電池劣化診断方法は、
複数の住宅Hのそれぞれに設けられた蓄電池2と、
住宅Hと通信ネットワークNを介して接続され、住宅Hの電力に関する情報を取得可能であるとともに、予め住宅H毎に住宅Hに関連付けられて、蓄電池2の種別に関する情報および、蓄電池2の種別ごとに、所定の設置期間に対応した劣化を判断する劣化判断閾値(La〜Lc)が予め設定され入力された管理装置と、
備えた電力制御システムの蓄電池劣化診断方法であって、
診断対象の蓄電池2の蓄電池容量(SOC%)を、所定の期間毎(例えば、1年毎)に計測し(S1)、
この計測した蓄電池容量(最新SOC%)と、診断対象の蓄電池2の種別(機種a〜機種c)およびその時点の設置期間に対応した劣化判断閾値(La〜Lc:a1〜a10)とを比較し(S2、S3)、
この比較に基づいて劣化の有無を診断する(S5)。
したがって、様々な機種の蓄電池2の劣化診断を総合的に行うことが可能である。すなわち、蓄電池2のメーカ毎に、蓄電池メーカ管理サーバ5bにより、蓄電池2の管理はできるものの、複数の住宅Hに、異なるメーカの複数種類の蓄電池2を設置した場合に、それを総合的に管理するものはなかった。本実施の形態1では、住宅Hにおける電力の管理を行う住宅管理サーバ5aを利用し、異なるメーカの複数種類の蓄電池2の劣化診断を、総合的に行うことが可能となった。
しかも、設置期間に対応して設定した劣化を判断する劣化判断閾値(La〜Lc)と蓄電池容量(最新SOC%)とを比較するため、高精度で劣化を検出することができる。
【0053】
2)実施の形態1の電力制御システムの蓄電池劣化診断方法は、
蓄電池容量の計測は、蓄電池2を満充電した後、住宅Hの電力負荷群3の消費により蓄電池2を放電させることにより行う(S12)。
したがって、放電用の抵抗などを別途設ける必要が無い。
【0054】
3)実施の形態1の電力制御システムの蓄電池劣化診断方法は、
劣化判断閾値(La〜Lc)は、蓄電池のメーカおよび機種(a〜c)毎に設定された保証値(Ga〜Gc)以上の値であって、設置期間が長くなる毎に低くなる値として設定されている。
したがって、蓄電池容量が、交換が必要な保証値となるまで劣化する前に、劣化を検出することができる。しかも、劣化診断において、設置期間に応じてさらに高精度で劣化を検出することができる。つまり、蓄電池の蓄電池容量は、正常であっても、設置期間が長くなるほど低下する。そこで、設置期間による劣化を加味して年々低下するよう設定した劣化判断閾値(La〜Lc)を用いることで、正常範囲の劣化を省いた異常な劣化を検出することが可能となる。
【0055】
4)実施の形態1の電力制御システムの蓄電池劣化診断方法は、
計測した蓄電池容量が保証値(Ga〜Gc)と劣化判断閾値(La〜Lc)との間の値である場合は、劣化の注意を促す出力を行う(S4〜S6)。
したがって、蓄電池2が保証値(Ga〜Gc)を越える異常な劣化状態となる前に、劣化の注意を促すことができる。
【0056】
5)実施の形態1の電力制御システムの蓄電池劣化診断方法は、
住宅管理サーバ5aには、予め、保証期間が設定されており、
診断対象の蓄電池2の設置期間が保証期間を過ぎている場合には、劣化の有無の診断を行わない(S2)。
したがって、保証期間外の無駄な診断を行わない。
【0057】
6)実施の形態1の電力制御システムの蓄電池劣化診断方法は、
住宅管理サーバ5aは、劣化有りとの判断時に、蓄電池2の保守管理部6および診断対象の蓄電池2を備えた住宅Hに蓄電池2の劣化を報せる(S7)。
したがって、保守管理部6と、蓄電池2が設置された住宅Hとで、それぞれ、蓄電池2に異常が生じたことを知ることができる。
【0058】
7)実施の形態1の電力制御システムは、
複数の住宅Hのそれぞれに設けられた蓄電池2と、
住宅Hと通信ネットワークNを介して接続され、住宅Hの電力に関する情報を取得可能であるとともに、予め住宅H毎に住宅Hに関連付けられて、蓄電池2の種別に関する情報および、蓄電池2の種別ごとに、設置期間に対応した劣化を判断する劣化判断閾値が予め設定され入力された管理装置と、
備えた電力制御システムであって、
住宅管理サーバ5aは、
診断対象の蓄電池2の蓄電池容量(SOC%)を、所定の期間毎(例えば、1年毎)に計測し(S1)、
この計測した蓄電池容量(最新SOC%)と、診断対象の蓄電池2の種別(機種a〜機種c)およびその時点の設置期間に対応した劣化判断閾値(La〜Lc:a1〜a10)とを比較し(S2、S3)、
この比較に基づいて劣化の有無を診断する(S5)。
したがって、様々な機種の蓄電池2の劣化診断を総合的に行うことが可能である。すなわち、蓄電池2のメーカ毎に、蓄電池メーカ管理サーバ5bにより、蓄電池2の管理はできるものの、複数の住宅Hに、異なるメーカの複数種類の蓄電池2を設置した場合に、それを総合的に管理するものはなかった。本実施の形態1では、住宅Hにおける電力の管理を行う住宅管理サーバ5aを利用し、異なるメーカの複数種類の蓄電池2の劣化診断を、総合的に行うことが可能となった。
しかも、設置期間に対応して設定した劣化を判断する劣化判断閾値(La〜Lc)と蓄電池容量(最新SOC%)とを比較するため、高精度で劣化を検出することができる。
【0059】
以上、図面を参照して、本開示の電力制御システムの蓄電池劣化診断方法および電力制御システムの実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0060】
例えば、実施の形態では、本開示の電力制御システムの蓄電池劣化診断方法を適用する建物として住宅を例に挙げたが、住宅以外の建物に適用することも可能である。
また、実施の形態では、太陽光パネルを有した建物(住宅)を示したが、太陽光パネルを設置せずに、蓄電池のみが設置された建物に適用してもよい。その場合、例えば、夜間の料金が低い時間帯に充電し、昼間の料金の高い時間帯に放電させる。あるいは、発電装置として、風力発電など、太陽光パネル以外の発電装置を備えていてもよい。
【0061】
また、実施の形態では、
例えば、機種aでは、保証期間の終了時(機種aでは10年目)の劣化判断閾値が保証値となるように設定した例を示したが、これに限定されない。例えば、保証期間の終了時(機種aでは10年目)の劣化判断閾値を保証値よりも高い値としてもよい。つまり、保証期間の終了年であっても、劣化度合いが保証値を超える前に劣化と判断するようにしてもよい。
【0062】
また、実施の形態では、保証期間および保証値は、それぞれ、実施の形態で示した値に限定されるものではない。例えば、保証期間は、15年よりも長くしてもよい。また、劣化判断閾値は、設置期間が長くなるに連れて年々低下する値としたが、これに限定されず、保証値よりも高い値の1つだけの固定値としてもよい。また、設置期間が長くなるに連れて低下させる値とした場合、年々低下するのではなく、複数年毎に低下する値としたり、逆に、1年未満の半年毎、あるいは、2か月毎などの複数月毎に低下する値としたりしてもよい。
あるいは、劣化判断閾値は、計測した蓄電池容量と比較して異常劣化と判断する値であって、保証値に関係なく設定してもよい。
【0063】
また、実施の形態では、計測した蓄電池容量と保証値とを比較するステップを有した例を示したが、この比較を行わなくてもよい。すなわち、計測した蓄電池容量と劣化判断閾値とを比較し、蓄電池容量が劣化判断閾値よりも低い場合は、異常を報せ、蓄電池容量が劣化判断閾値よりも大きければ、そのまま終了するようにしてもよい。
また、
図3のフローチャートにおいて、蓄電池の設置年数や、機種、保証値、劣化判断閾値の読込と、蓄電池容量の計測とは、どちらを先に行ってもよい。