特許第6901411号(P6901411)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6901411ウエハース製品又は膨張押出シリアル製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6901411
(24)【登録日】2021年6月21日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】ウエハース製品又は膨張押出シリアル製品
(51)【国際特許分類】
   A21D 13/45 20170101AFI20210701BHJP
   A21D 13/36 20170101ALI20210701BHJP
   A21D 10/04 20060101ALI20210701BHJP
   A23K 50/40 20160101ALI20210701BHJP
   A23K 10/30 20160101ALI20210701BHJP
【FI】
   A21D13/45
   A21D13/36
   A21D10/04
   A23K50/40
   A23K10/30
【請求項の数】14
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2017-565075(P2017-565075)
(86)(22)【出願日】2016年6月16日
(65)【公表番号】特表2018-519812(P2018-519812A)
(43)【公表日】2018年7月26日
(86)【国際出願番号】EP2016063855
(87)【国際公開番号】WO2016202913
(87)【国際公開日】20161222
【審査請求日】2019年6月13日
(31)【優先権主張番号】15172376.4
(32)【優先日】2015年6月16日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【弁理士】
【氏名又は名称】戸津 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】パウエル, ヒュー
(72)【発明者】
【氏名】ジャリ, パスカル
(72)【発明者】
【氏名】アブ−ハーデン, マディアン オスマン
【審査官】 市島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−532610(JP,A)
【文献】 米国特許第04759939(US,A)
【文献】 特表2011−523855(JP,A)
【文献】 特開2010−142177(JP,A)
【文献】 “上段内廻し蹴りは『3ポイント』と『チョコ入りプレッツェル』”, [online], 2011.10.8公開, [2020.3.17検索], インターネット<URL: https://blog.goo.ne.jp/yushiyuto/e/b6943cbd136c0ec5b6c44554fa6dfba1>
【文献】 “スナイダーズ チョコレートプレッツェル”, [online], 2015.3.29公開, [2020.3.17検索], インターネット<URL: https://costcotuu.com/20150329/post_48236.html>
【文献】 “Nutritive Sweeteners From Corn”, [online], 2006年公開, [2020/3/18検索], インターネット<URL: https://corn.org/wp-content/uploads/2018/10/NSFC2006.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21D 2/00−17/00
CAplus/FSTA/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼成食料品のウエハースであって、
(i) フラワー、
(ii) 数平均分子量が350g/モル未満であって、100重量部の前記フラワー当たり10重量部以下の量で存在する、サッカライド(複数可)の第1の低分子量画分、及び
(iii) 数平均分子量が350g/モル〜1600g/モルである、サッカライド(複数可)の第2の中程度分子量画分、
を含む製品であり、
(a) 成分(ii)及び(iii)が、デンプンから誘導され、及び/又はデンプンから誘導可能であり、
(b) 成分(ii)及び(iii)が合せて20〜70のデキストロース当量(DE)を有し、並びに
(c) 成分(ii)及び(iii)が合せて100重量部の前記フラワー当たり8重量部〜30重量部の合計量で存在し、並びに前記製品が、
モノサッカライドのグルコース、フルクトース及びガラクトース、並びにジサッカライドのスクロース、マルトース及びラクトースがないもの、又は、モノサッカライドのグルコース、フルクトース及びガラクトース、並びにジサッカライドのスクロース、マルトース及びラクトースの含有量が前記製品の総重量の10重量%未満の低含有量のものであり、及び
密度が2g/cm以下の低いものである焼成食料品のウエハース。
【請求項2】
成分(ii)、及び/又は(iii)が、トウモロコシ、コムギ、コメ、イモ、又はキャッサバから誘導される、請求項1に記載のウエハース。
【請求項3】
成分(ii)、及び/又は(iii)が、トウモロコシから誘導される、請求項2に記載のウエハース。
【請求項4】
成分(ii)、及び/又は(iii)が、20〜70のDEを有するグルコースシロップを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のウエハース。
【請求項5】
外部由来のアルファアミラーゼ、マルトデキストリン、及びイヌリン加水分解物を含有していない、請求項1〜4のいずれか一項に記載のウエハース。
【請求項6】
最初の水分活性(A)が0.3〜0.65である場合、水分活性(A)が0.1高まることにより得られる噛み砕き仕事量(W)の高まりが、2.0N.mm未満である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のウエハース。
【請求項7】
ヤング率が150g/mm未満である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のウエハース。
【請求項8】
水及び請求項1〜7のいずれか一項に記載の成分(i)〜(iii)を含む、ウエハースのバッター。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のウエハース及び別の可食性材料、を含む食料製品。
【請求項10】
前記別の可食性材料が、菓子、味付けした製品又はペットフード材料である、請求項9に記載の食料製品。
【請求項11】
前記別の可食性材料のうちの1つ以上が、前記ウエハースのための詰め物として含まれている、請求項9又は10に記載の食料製品。
【請求項12】
前記ウエハースが、菓子、味付けした製品又はペットフードの中心部又は中心部の一部である、請求項9〜11のいずれか一項に記載の食料製品。
【請求項13】
前記ウエハースが、水分バリアを介在せずに食品材料と直接に接している、請求項9〜12のいずれか一項に記載の食料製品。
【請求項14】
ウエハースの製造方法であって、
a) 少なくとも水、フラワー(i)、低分子量成分(ii)、及び中程度分子量成分(iii)を混合することで、請求項8に記載のバッターを製造するステップと、
b) 前記バッターを、少なくとも1つの熱表面上で焼成し、又は他の方法によって加熱して、焼成ウエハース製品を製造するステップとを含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載のウエハースを製造するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼成食料品の技術分野に関し、具体的には特定のデンプン由来のサッカライド(複数可)を含む、ウエハース及び膨張押出シリアル製品に関する。また、本発明は、そのような製品を製造するためのバッター、及びそのバッターを使用するためのプロセスにも関する。本発明の1つの特有の実施形態は、耐湿性が良好な、好ましくは中程度から高い水分活性であってもウエハースがパリパリ感を維持するほどに耐湿性の、ウエハースに関する。
【0002】
また、本発明の背景技術も、本出願人の国際公開第2009/149948号に、第1ページ第8行〜第4ページ第30行において記載されているとおり提示され、この部分は本明細書に参照により組み込まれる。
【0003】
ウエハースは、ウエハースのバッターから製造され、パリパリ感、脆性(brittle)及び破砕性(fragile)が調和した焼成製品である。ウエハースは薄型であり、全体的な厚さは通常1〜4mmであり、典型的には製品密度の範囲は0.1〜0.4g/cmである。ウエハースは、主にフラワー(典型的には30〜60重量%)及び水を含有する、他の副原材料が加えられていてもよい、流動性懸濁液であるバッターを、焼成する(国際公開第2009/149948号に記載されているものなど)ことによって製造される。本発明は、好ましくは、国際公開第2009/149948号の第2ページ第3行〜第16行において、ウエハースに関して記載されているとおりの、「無糖又は低糖」製品に関する。本発明のウエハース製品を、それに記載されているとおりに製造することができる。無糖又は低糖押出シリアル製品の、本明細書において使用される定義は、無糖又は低糖ウエハースに関して使用されているものと同様である。
【0004】
基本となる2種のウエハースが、K.F.Tiefenbacherにより、「Encyclopaedia of Food Science,Food Technology and Nutrition p417〜420−Academic Press Ltd London−1993」に記載されている。
【0005】
本明細書において、無糖又は低糖ウエハースは、最終製品がゼロ〜低いパーセンテージまでのスクロース又は他の糖を含有するものとして、定義される。好ましい低糖ウエハースは、ウエハース中に存在する全糖(total sugars)の総量が、乾燥ウエハースの10重量%未満、より好ましくは8重量%未満、更により好ましくは5重量%未満、とりわけ好ましくは4重量%未満のものである。典型的な無糖又は低糖ウエハース製品には、フラットなスカスカのウエハースシート、成型コーン、又は凝った形状のものがある。加糖ウエハースは、10%より多いスクロース又は他の糖が焼きたてシートの成形性に関与しているものとして、定義される。それらが異なる形状に成形された後、糖の再晶出が起こりうる。典型的な高糖ウエハース製品には、成型・ロールされたシュガーコーン、ロールされたウエハーススティック、及び凝った形状に成形されたものがある。無糖又は低糖ウエハースは、高糖ウエハースと比べ、異なる舌触り及び味わいのものである。無糖又は低糖ウエハースは、詰め物により層状化された場合、本出願人がKitKat(登録商標)の登録商標により販売しているものなどの公知のチョコレート菓子製品の、中心部として使用される。
【0006】
ウエハースの水含有量が特定の濃度を超過して高まる場合、ウエハースは、舌触りの品質が著しく悪化し、パリパリ感が失われ、板紙のようで非脆性のものになってしまうことが知られており、消費者には許容不可能な湿り気のものとして認められる。したがって、外部環境からの、又はウエハース製品中の他の原材料、例えば詰め物からの高濃度の水分に曝された際、ウエハースは、可能な限り長い間、パリパリ感のもののままであることが望まれる。
【0007】
製品の味わいに不利益な影響を与えることなく、多くの消費者が好む水系の詰め物の、水分活性を低下させることは、現実的ではない。水分活性は、グリセロールなどの人工原材料を加えることによって低くすることができる。しかし、消費者がとりわけ望む詰め物は、クリーム又はジャムなどの、果実由来のものであり、及び/又は大変甘い原材料を含むものであることから、そのため水分活性が高い。水の焼成食料品への移動を防止するため、ウエハースなどの焼成食料品を可食性水分バリアによりコーティングすることが試行されてきた。しかし、これには複雑な追加の処理が必要であり、それは、費用のかかるものであり、並びに/又はチョコレートを使用するものであり、及び/又は製品のカロリー含量を高め、及び/若しくは許容不可能な感覚への影響がある他の脂質を使用するものである。
【0008】
また、貯蔵寿命を長くするため、並びに広範な環境における高湿度に曝された際にパリパリ感をより長く維持するため、ウエハースを作りたての状態に保つことも望ましい。これによって、製品配送期間に、より柔軟性にあるものが得られ、それにより、サプライチェーンの物流が管理しやすくなる。
【0009】
得られる焼成ウエハースの舌触り特性を向上させるため、単糖の、ウエハースのバッターへの添加量を、バッターの5重量%以上にする場合があることは、知られている。このような量の単糖は、ウエハースの水分忍容性をわずかに高めることが分かったが、但し、この効果は、ウエハースの水分活性に応じて、数週間又は数ケ月の短い期間のみしか続かないことが分かった。ウエハースが高すぎる濃度の単糖を含有する場合、その糖は、ウエハースを、高い水分活性又は高温で成形し始める。
【0010】
しかし、糖(特に単糖)の濃度がバッターの5重量%より高い、ウエハースのバッターは、固着性が高すぎて、工業的な焼成するプロセスにおいて容易に加工することができないことが判明した。先行技術の、糖が低量の(ウエハースのバッターの5重量%未満の)ウエハースのバッターは、より容易に加工されるが、その後、得られるウエハースに十分なパリパリ感保持が得られない。
【0011】
したがって、単糖のみ(又は更にはモノサッカライドとジサッカライドとのみ)の使用によると、パリパリ感があり耐湿性の、工業規模での製造容易なウエハースが得られなくなると考えられる。
【0012】
本明細書において使用する場合、「単糖」は、モノサッカライドのグルコース(デキストロースとしても知られる。)、フルクトース、及びガラクース、並びにジサッカライドのスクロース(フルクトース単位とグルコース単位との組み合わせ)、マルトース(2個のグルコース単位)、及びラクトース(ガラクトースとスクロースと)の意味である。本明細書において、3個以上のサッカライド単位を含む長鎖の糖は、「多糖(complex sugar:糖複合体)」と呼ばれ、その分子量に応じて、オリゴサッカライド(複数可)(3〜5個のサッカライド単位)及び/又はポリサッカライド(複数可)(6個以上のサッカライド単位)を含む。
【0013】
本出願人の国際公開第2009/149948号に、ウエハース製品であって、9〜20のデキストロース当量(DE)を有する単分散マルトデキストリン又はフルクト−オリゴサッカライドが製品の貯蔵寿命にわたって、約0.6の水分活性の水中にてウエハースのパリパリ感を維持するものが、記載されている。用語「マルトデキストリン」は、アルファ(1−4)グルコシド結合を介して結合された3〜17個のD−グルコース単位からなる、オリゴサッカライド及び/又はポリサッカライドの意味である。マルトデキストリンは、いくつかの国においては天然原材料(又は、いわゆる「クリーン」ラベルの原材料)として認められず、また、いくつかの国においては調達するのが困難な、費用のかかる原材料である。そのことから、マルトデキストリン低使用又は無使用の解決策を見出す必要がある。
【0014】
また、ウエハースは、本出願人の、大判押出ウエハースを製造するための方法に関する国際公開第2008/031796号及び同第2008/031798号に記載されているとおり、押出法によっても得ることができる。
【0015】
低水含有量の高密度のウエハースが、本出願人の国際公開第2009/149947号に記載されており、それにはまた、40より高いDEを有するジサッカライド甘味料若しくはデンプン加水分解物と合せて、又は40より高いフルクトース当量を有するイヌリン加水分解物であって、スクロース、グルコース、ラクトース、マルトース、フルクトース、及びイソマルトース、トレハロース、若しくはラフィノースのような結晶性水和物形成剤、又はそれらの混合物から選択されるものと共に、固形マルトデキストリンの粒子を含む、ウエハースが開示されている。その出願には、そのようなウエハースが水分忍容性を向上させたことについて示されていない。
【0016】
また、酵素も、国際公開第2009/149948号の第3ページ第6行〜第16行に全般的に記載されているとおり、ウエハース生産に使用することができる。そこで、例えば本出願人の国際公開第2004/039162号(欧州特許公開1415539号)に、ウエハースの舌触り特性を調節するため、熱安定性アルファアミラーゼを使用することによって製造されたウエハースなどの、フラワーによる食料製品が開示されている。水分忍容性のあるウエハースが、本出願人の国際公開第2008/129027号に記載されており、その記載中、デンプンのより小さい分子への加水分解を触媒することによって耐湿性を向上させるため、それによりマルトデキストリンをin situで生成させるため、熱安定性アルファアミラーゼ酵素を使用した。しかし、アルファアミラーゼの使用には、例えば、国際公開第2009/149948号の第4ページ第10行〜第12行に記載されているとおり、重大な加工における問題がある。
【0017】
国際公開第2008/129027号に記載されている発明とは違い、本発明は、アルファアミラーゼの使用を回避し、複雑な酵素の使用することなく、同一又は同様の結果を達成するものである。本発明において、ウエハースがオーブン加熱したプレート上に固着するリスクは低い。もしプロセス条件が異なれば、酵素の反応が予測不可能になるので、本発明のプロセスにより、酵素を使用する必要性を回避し、それによって、ウエハースの品質がより安定なものとなる。グルコース(シロップ又はパウダーの形態)を加えることによって、最終製品に、より一貫した結果を達成することができた。
【0018】
ここに、様々な他の先行技術文献及び製品を記載する。
Unileverは、ベーキングミックス製品を提供し、これは(ミニテルのレコード263254によれば)、Germanyで2004年3月から、商品名Mondamin(登録商標)で市販されていた。これらのパンケーキミックスは、グルコースシロップを含有するが、但し、グルコースを加えることに関する利点は述べられていない。
【0019】
「Nutritive Sweeteners from Corn」,8th ed,2006,pages1〜24(XP2751262)と題された項目に、湿潤剤を、製造、特徴付け、及び使用するためのプロセスの全般説明がなされている。また、この文献の第8ページに、「非甘味料機能要件」が、「湿潤性」をはじめとする、「多様性のある物理的特性」を反映するために、トウモロコシを原料とする、グルコース製品を提供できることが開示されている。ウエハースの湿りを保つのではなく、ウエハースの乾燥状態及びパリパリ感を望ましく保つため、本発明において、湿潤剤の存在は望ましくない。この文献の、「吸湿性」の見出しの第26ページに、コーンシロップが、(特に)「水分調整剤」、食料成形剤(food plasticizer)、及び/又は晶出阻害剤として使用されていることについて記述されている。本発明により、反対のこと(すなわち、成形性を阻害すること、及び/又は晶出状態を維持すること)を達成することが望まれる。それ故、この文献の開示は、本発明からまったくかけ離れたことを教示している。
【0020】
米国特許第4880653号(Keller Lewis1)に、トウモロコシ加水分解物及びコーンシロップを使用する押出及び後焼成による、プレッシェルを製造するためのプロセスが開示されている。第4欄第3行〜第11行に、
「一般的に、D.E.値が約65〜約20の範囲のコーンシロップが入手可能であり、D.E.値が約44〜約20の範囲のコーンシロップ固形分が入手可能である。以下、本明細書において、本発明は、D.E.値の全範囲にわたって実施することができ、成形の際、低水分であり、様々な断面の構図が形成可能となる特有のコシのある構造を有する、プレッシェル型の製品を製造することができると実証した。」と記述されている。
【0021】
プレッシェル(及びそれを製造するためのプロセス)は、本発明の対象であるウエハース及びウエハースを製造するプロセスと大変異なる。Keller Lewis1の知見として、プレッシェルは「特に、暗褐色の外部表面の存在を特徴とするもの」である(第1欄第28行〜第30行)。また、3次元の結び目のあるプレッシェルも、フラットなウエハースと大変異なる内部構造を有する。Keller Lewis1を読む者は、コーンシロップを、送り込むプレッシェル生地混合物に加え成形した後、押出する(第4欄第29行〜第52行を参照)との教示を受ける。Keller Lewis1は、当業者に、コーンシロップが有益な舌触り及び/又はパリパリ感をウエハースにもたらし得ることについて、示していない。米国特許第4759939号(Keller Lewis2)は、Keller Lewis1が子出願となる親出願であり、押出加熱調理による、プレッシェルの連続製造方法が記載されている。12.25重量部の「Corn Syrup Solids(Maltrin M365,D.E.36)」を含有する原材料のドライミックスから、Keller Lewis2は単一の実施例において製造されている。Keller Lewis1についての上記の理由と同様の理由のため、Keller Lewis2もまた本出願との関連性がない。本明細書において記載する問題を懸念し取り組む当業者には、Keller Lewis1又はKeller Lewis2のいずれも、参照する価値がなかろう。
【0022】
米国特許第4803084号(Shine Ward)に、製品の水分活性(A)を0.75以下に抑制することによって、貯蔵安定性のある軟質生地を製造するための方法が、記載されている。Aを制御するため、及び微生物による腐敗を低減若しくは遅延させるため、加水分解したデンプン[マルトデキストリン(MD)、コーンシロップ、又はグルコースシロップ(GS)など]が、使用されている。デンプンの添加量は、20〜50重量%である。この文献には、そのような原材料の使用により、ウエハース製品のパリパリ感を高いA値において向上させ得ることの示唆がない。
【0023】
ハンガリー特許第214189号(Interkolloid)に、糖を含まない加熱成形ウエハース製品が記載されており、製品の、水分への脆弱性(susceptibility)を低減させることができる方法について、示唆はない。
【0024】
英国特許第1240557号(CPC International)に、ドライミックスの食料中での凝集を防止するためのケーキング防止剤(anti−caking additive)としての、5〜25のD.E.値の、プロテイン加水分解物(デンプン加水分解物など)が記載されている。具体的な種類の食料に関するものではない。
【0025】
国際公開第2002−0239820号(Pillsbury)に、甘味があり密度のあるウエハースのパリパリ感を高い水分含有量において高めるための、デンプン加水分解物の使用が記載されている。本発明の無糖及び低糖ウエハースは、菓子に使用するために設計された軽やかでフワフワの舌触りを有するものであり、アイスクリームのコーンとして使用するために設計されたよく詰まった舌触りのPillsburyの高糖ウエハースと正反対のものである。Pillsburyのウエハースと本発明のものとの差異を、本出願において、以下更に説明する。
【0026】
そのことから、例えば、具体的にはマルトデキストリンを用いる従来技術の製品の原材料よりも、より良い舌触りをして、より簡単に入手可能、及び/又は手頃な値段で入手可能である原材料の使用によって、ウエハースなどの焼成食料品において、製品の作りたての舌触りを、より良好に保つことがなお望まれていることを知り得る。
【0027】
そこで、任意に、本発明の1つの実施形態において、望ましくは、製品の貯蔵寿命到来までの、パリパリ感の保持、水分忍容性、及び/又は作りたての舌触りの長期的知覚が強化された、マルトデキストリン非含有焼成食料品(ウエハース製品など)が提供されるものとなり、好ましくは、「クリーンラベル」の原材料が使用されるものであり、好便には、より簡単な入手可能性、及び/又は手頃な値段での入手可能性を有するマルトデキストリンと同等の、又はより向上した利点をもたらすものである。
【0028】
そこで、望ましい食料品は、少なくとも、低い水分活性の(すなわち、A値が0.4以下の)詰め物に対する耐性があるウエハースとなる。別の望ましい食料品は、中程度の水分活性の(すなわち、A値が0.4〜0.5の)詰め物の存在下で作りたての舌触りをより長く維持するウエハースとなり、これは、マルトデキストリンを含有する製品の性能に匹敵する、又はより良好なものである。更に望ましい食料品は、高い水分活性の(すなわち、A値が0.5〜0.6の)詰め物の存在下で作りたての舌触りをより長く有するウエハースとなり、それにより、製品を、より健康に良い、及び/又は甘いものに向上させることにつながる。
【0029】
本発明の目的は、本明細書において記載されている問題のいくつか又は全てを克服することである。
【0030】
したがって、広範に、本発明の1つの態様によれば、焼成食料品のウエハース又は膨張押出シリアル製品が提供され、その製品が、
(i) フラワー、
(ii) 数平均分子量が350g/モル未満であって、100重量部の上記フラワー当たり10重量部以下の量で存在する、サッカライド(複数可)の第1の低分子量画分、及び
(iii) 数平均分子量が350g/モル〜1600g/モルである、サッカライド(複数可)の第2の中程度分子量画分、
を含む製品であり、
(a) 成分(ii)及び(iii)が、デンプンから誘導され、及び/又はデンプンから誘導可能であり、
(b) 成分(ii)及び(iii)が合せて少なくとも20のデキストロース当量(DE)を有し、並びに
(c) 成分(ii)及び(iii)が合せて100重量部の上記フラワー当たり少なくとも8重量部の合計量で存在し、並びに上記製品が、
無単糖のもの、又は製品の総重量の10重量%未満の低単糖含有量のものであり、及び
密度が2g/cm以下の低いものである、焼成食料品のウエハース又は膨張押出シリアル製品である。
【0031】
また役立つには、本発明の焼成食料品は、以下の更なる特性のうちの1つ以上、すなわち、
ヤング率が150g/mm未満、及び/又は
割裂点穿刺圧耐性(resistance to apuncture pressure before breaking)が少なくとも100g/mm、のうちの1つ以上を有する。
【0032】
本発明の1つの実施形態において、焼成食料品製品の密度は、1g/cm以下、より好ましくは0.5g/cm以下である。
【0033】
本発明の別の実施形態において、ウエハース製品の密度は、0.1〜0.3g/cmである。
【0034】
本発明の更に他の実施形態において、膨張押出シリアル製品の密度は、0.04〜0.5g/cmである。
【0035】
低糖
好便には、本発明の1つの実施形態において、製品の単糖含有量は、製品の総重量の8重量%未満、より好便には5重量%未満、とりわけ好便には4重量%未満、例えば、0重量%(すなわち、無単糖)である。また、特定量未満の単糖含有量は、無単糖、すなわち、重量%がゼロの組成も含み、その場合、単糖が存在しないか、又は単糖が従来の技法により検出可能な濃度未満の痕跡量で存在することを理解されたい。
【0036】
本明細書において使用する場合、用語「無単糖」は、本明細書において定義されるとおりの単糖が本発明の組成物(例えば、ウエハース、製品及び/又はバッターなど)の中に存在しないことを指す。そのため、本発明の1つの(無糖の)代替的実施形態において、製品、及び/又はバッターは、いずれの単糖も実質的に含まず(好ましくは含まず)、一方、もちろんのこと、本明細書において成分(i)及び(ii)(並びに任意に(iv))として定義されるとおりの、多糖[低分子量、中分子量(及び任意に高分子量)のサッカライドなど]の存在を排除しない。
【0037】
糖分は、組成物(例えば、バッター又は製品)の中に存在する、単糖と多糖の両方の総量を表している。好ましくは、本発明のバッター、及び/又は製品の糖分含有量は、バッター又は製品の総量の10重量%未満、更により好ましくは8重量%未満、より好ましくは5重量%未満、とりわけ好ましくは4重量%未満である。
【0038】
本発明のウエハース製品は、本明細書において定義されるとおりの低糖又は無糖ウエハースであり、1つの実施形態において、ウエハースの総量の15重量%以下の、全糖(例えば、スクロース、フルクトース、マルトース、ラクトースなど)をはじめとするいずれかの添加甘味料及び/又はそれらのいずれかの他の人工置換物を含む。本発明の好ましいウエハースの含有する添加甘味料(全糖をはじめとするもの)は、ウエハースの重量に基づいて、10重量%以下から、より好ましくは8重量%以下、とりわけ好ましくは5重量%以下である。好ましい無糖ウエハースは、天然に存在するものに加えて添加される余分な糖がゼロのものである。
【0039】
1つの好ましい実施形態において、本発明の製品は、厚みが2.2mm及び水分濃度が10%の製品で測定し、耐破壊性(puncture resistance)が少なくとも150g/mm、及び/又はヤング率が100g/mm未満のものである。いずれかの、又は両者のパラメータは、国際公開第2002−0239820号の第11ページ第17行〜第25行に記載されている試験方法を使用して求めることができ、その節が、本明細書に参照により組み込まれる。
【0040】
ヤング率(弾性率としても知られる。)は、所与の材料に関して、応力(単位面積当たりの力)と歪み(比例変形)との関係として定義される、材料のコシの尺度であり、よりコシのある材料を変形させるには、より軟質の材料を変形させるよりも、大きな力が必要である。これは、(合理的な近似のため)、弾性変形が線型であること、及び試験される試料が等方性であることを想定している。非線型の弾性の、及び/又は異方性の材料のコシを試験するため、任意に、(ヤング率以外の)類似の弾性率(moduli)及び好適な相当する試験方法を、当業者がよく知り得るとおりに、使用する場合がある。
【0041】
本発明の、より好ましい製品であるウエハースのコシ(好ましくはいずれかの従来の方法を使用するヤング率で測定)は、50g/mm未満、更により好ましくは0.1〜50g/mm、とりわけ好ましくは0.2〜20g/mm、例えば、0.5〜10g/mmである。典型的な本発明のウエハース製品のヤング率は、約2g/mmである。本発明の製品のコシ及び/又はヤング率は、従来の菓子のウエハースのヤング率と同等でよく、Pillsburyにおいて記載されているアイスクリームコーンのウエハースに関する最低限度として特定される値より、はるかに低くてもよい。
【0042】
1つの代替的な実施形態において、本発明の製品であるウエハースの割裂点穿刺圧耐性は、有利には500g/mm未満、また役立つには少なくとも200g/mm、好ましくは少なくとも300g/mm、より好ましくは少なくとも350g/mm、とりわけ好ましくは少なくとも400g/mmである。国際公開第2002−0239820号において記載されているとおり、Instron Universal Testing Machine(Model1011)を圧縮モードで使用する穿刺試験による、ウエハースの材質(wafer texture)の分析によって、又は当業者に公知のいずれかの好適な試験によって、これらの穿刺耐性値(コシの尺度とするヤング率と同じではない。)を得ることができる。国際公開第2002−0239820号の第11ページ第26行以降の表1から知り得るとおり、本発明の製品の耐破壊性値は、従来の菓子のウエハースの耐破壊性値と同様でよく、Pillsburyにおいて記載されているアイスクリームコーンのウエハースに関する最低限度として特定される値より、はるかに低くてもよい。
【0043】
成分(ii)[低分子量サッカライド]、及び(iii)[中程度分子量サッカライド]は、製造後の、焼成ウエハース又は押出シリアル食料製品の、原材料に関係する。バッター又は生地のそれぞれを焼成するか又は押出するかの前に、レシピを準備するため、最終製品の中に存在するフラワーの量に対する原材料使用量を計算すること、すなわち、製品(例えば、焼成する前のバッター又は押出する前の生地)を準備するため、レシピにての原材料の使用の絶対量又は割合(例えば重量%)ではなく、フラワーの量に対する原材料の重量比率として計算することは、焼成産業において従来からのものである。これは、レシピにおけるウエハースの最終的な水の使用量が変動し得るものであり、多くの要因に応じて、例えば、製品の製造時に遭遇する環境条件に応じて調整することを必要とするためである。
【0044】
国際公開第2002−0239820号(以下、Pillsbury)において記載されているウエハースは、本発明のものと大変異なる。例えば、Pillsburyの、パリパリ感の尺度が、本明細書において使用されるものと異なるため、Pillsburyによって使用される用語「パリパリ感」は、本明細書において使用される意味合いの用語「パリパリ感」と同義のものに考えることができない。Pillsburyは、ウエハースのパリパリ感を、修正版のヤング率の使用により測定している。Pillsburyの第8ページ第33行〜第35行において、
「パリパリ感は、製品の弾性率によって定量され、製品の割裂、亀裂、又は穿刺に必要な、単位面積当たりの力であり、典型的には、g/mmにて測定される。」と記述されている。
【0045】
Pillsburyにおいて記載されているパリパリ感のパラメータと、本明細書において使用されるものとの差異を、より明確にし、本発明を特徴付けるため、便宜上、用語「パリパリ感」を、本明細書において、用語「噛み砕き仕事量(work of crushing)」によって広く代えた。
【0046】
Pillsburyのウエハースの糖含有量は高く、水分の存在下、非晶質の糖の硬質で脆い「ガラス質の」状態からゴム状の状態への転移の機序(mechanism)によって、パリパリ感を失う。非晶質の糖ドメインは、糖が水分を吸収するにつれて、ガラス転移する。そのため、糖は、成形剤として作用し、Pillsburyのウエハース内部のドメインの、硬質でガラス質のドメインかから軟質でゴム質のドメインへの相転移をもたらし、これらのウエハースが軟化し、高い水分含有量でより柔軟性のあるものになる。
【0047】
Pillsburyのウエハースとは反対に、本発明のウエハースは、軽やかでパリパリ感のあるものであり、甘味がない、低単糖又は単糖無添加のものである。いずれの機序にも束縛されるものではないが、本発明のウエハースは、糖ドメインが主にゴム質の状態を呈する箇所では、ガラス転移が起きる前に、パリパリ感を失うと考えられる。本発明のウエハースが異なる分子量のサッカライド分子の混合物を含有することから、これらの混合物は、デンプンの存在下、より容易に水分を吸収すると考えられる。そのため、ウエハースの中に存在するいずれのデンプンも、成形剤として作用する機会がより少ない。本発明のウエハースにおけるパリパリ感(本明細書において、噛み砕き仕事量とも呼ばれるパラメータWによって測定されるもの)の喪失は、「硬質」から「硬質の感触」、及び「軟質の感触」のドメインまでの相転移として、3段階で起きると考えられる。本発明のウエハースにおいて、異なる分子の大きさの存在は、糖がより接近して相互作用することを可能にし、それにより所与の量の糖の構造強度(例えば、本明細書において記載されるとおりの穿刺試験におけるものなどのこわさで測定)が高まると考えられる。そのため、1つの実施形態において、本発明のウエハースは、公知のウエハース(Pillsburyのウエハースなど)より少ない糖を使用し、所与の耐湿性、及び/又は構造強度を達成することができる。あるいは、別の、及び/又は追加の態様において、本発明のウエハースは、公知のウエハース(Pillsburyのウエハースなど)より低密度でより開放された構造を有しうり、公知のウエハースと同じ程度の構造強度、及び/又は耐湿性が更にもたらす。1つの更なる代替的な、及び/又は追加の態様において、本発明のウエハースは、公知のウエハース(Pillsburyのウエハースなど)より高い構造強度、及び/又は耐湿性のものにでき、任意に、低密度、開放された構造、及び/又は低い糖含有量が伴うものにできる。
【0048】
役立つには、成分(ii)は、重合度(DP)が1〜6のサッカライド部分(複数可)を含み、より役立つには、モノサッカライド(複数可)、及び/又はジサッカライド(複数可)からなり、更により役立つには、各々のサッカライド部分が、分子量が350g/モル未満のものであり、とりわけ役立つには、単糖からなる。
【0049】
役立つには、成分(ii)は、重合度(DP)が少なくとも2のサッカライド部分(複数可)を含み、より役立つには、ジサッカライド(複数可)部分、オリゴサッカライド(複数可)部分、及び/又はポリサッカライド(複数可)部分からなり、更により役立つには、各々のサッカライド(複数可)部分が、重合度(DP)が2〜20のものであり、とりわけ役立つには、各々のサッカライド(複数可)部分が、分子量が少なくとも350g/モルのものである。
【0050】
驚くべきことに、本出願人は、本発明の1つの実施形態において、低分子量のモノサッカライド(複数可)、他のジサッカライド(複数可)と組み合わせたジサッカライド(複数可)(単糖など)、オリゴサッカライド(複数可)、及び/又はポリサッカライド(複数可)(多糖)の使用により、耐湿性のある製品、バッターが得られ、またそのために加工可能でもあることを見出した。
【0051】
広範に、本発明の別の態様において、本発明のウエハース製品又は膨張押出シリアル製品を製造するために好適なバッターが提供され、そのバッターは、水、フラワー、低分子量サッカライド(複数可)成分(ii)(例えば単糖)、及び中程度分子量サッカライド(複数可)成分(iii)(例えば多糖)を含むものであり、それらの成分の量及び特性は、本明細書における本発明のウエハース製品又は膨張押出シリアル製品のためのものとして本明細書において提示されるとおりのものである。好ましいバッターは、ウエハースの製造のために好適なものである。
【0052】
任意に、本発明の1つの実施形態において、ある期間にわたって製品(例えばウエハース)を熟成させることにより、酵素(複数可)(フラワーの中に天然に存在するもの、及び/又は別個にバッターに加えられるもののいずれか)が、製品の糖組成物を転移させ、そこで例えば、別の実施形態において、熟成したバッター又はウエハースの中に存在する糖の量は、最初のバッター又はウエハースに加えられた糖よりも多くなる。酵素(複数可)は、いくつかの糖(例えばスクロース)を消費する場合があり、及び/又はそれらを他の糖若しくは非糖質に転移させる場合がある。そのためまた、本明細書において記載される本発明の製品の組成は、熟成工程後に製造される本発明の発酵したバッター(複数可)、及び/若しくは製品(複数可)にも関係し、並びに/又は酵素が存在するか否かに応じて、バッター、及び/若しくは製品の中に本明細書において記載される量で最初に存在する糖にも関係する。熟成が必要な場合、熟成のための最適期間は当業者に公知であり、並びに/又は例えば、所望の値に到達するまで糖含有量及び/若しくは分子量分布を測定することによって(及び次に更なる発酵を停止することによって)、並びに/又は発酵が実質的に終了するまで待つことによって、特定のレシピに関して容易に求めることができる。
【0053】
本発明の好ましい製品は、本明細書において記載される望ましい舌触り、及び/又は感覚的性質を、少なくとも3ケ月、より好ましくは6ケ月、とりわけ好ましくは9ケ月にわたって維持する。
【0054】
役立つにはまた、本発明の製品は、製品が低い水分活性(すなわち、Aが0.4未満)のものである場合、耐湿性のあるもの(例えば、本明細書において提示される望ましい値の範囲内の舌触り、及び/又は感覚的性質を維持するもの)である。より役立つには、本発明の製品は、製品が中程度の水分活性(すなわち、Aが0.4〜0.5)のものである場合、耐湿性があり、とりわけ役立つには、製品が高い水分活性(すなわち、Aが0.5〜0.6)のものである場合、耐湿性がある。
【0055】
また、本発明の好ましい製品のために望ましい舌触りの性質は、噛み砕き仕事量(本明細書において記載されるとおりに測定される、Wで表されるもの)が6N.mm未満、より好ましくは5N.mm未満のものでよい。噛み砕き仕事量は、製品のパリパリ感に関係する。
【0056】
1つの、本発明の更に他の態様において、本発明のバッターを焼成する工程、及び/又は押出する工程を含む、焼成ウエハース製品及び/又は膨張押出シリアル製品を得るためのプロセスが提供される。好ましいプロセスは、本発明のバッターを焼成することによって、ウエハースを製造するためのものである。更なる任意による工程(特に、バッター、及び/若しくはウエハースが、糖の転移ができる酵素を含む場合のもの)は、例えばバッターの中でその中の糖組成物を本明細書において記載されるものに展開するため、又はウエハースの中で水分含有量を変化させるため、バッター及び/若しくはウエハースを好適な条件下(任意に環境より高い温度で)、保持する熟成工程である。
【0057】
好ましくは、本発明の1つの実施形態において、ウエハース製品又は膨張押出シリアル製品は、イヌリン加水分解物を実質的に含まない。いずれの機序にも束縛されるものではないが、本出願人は、イヌリン加水分解物の存在、特に製品の約5重量%より高い、特に約15重量%より高いイヌリン加水分解物の存在により、製品の舌触りに悪影響を及ぼす恐れ(すなわち、Wがより高くなることにより、所与の水分活性について噛み砕き仕事量がより低くなる恐れ)があると考えている。
【0058】
イヌリンは天然に産出して貯蔵される炭水化物であり、ベータ(2,1)結合によって結合した鎖末端グルコシル部分及びそれぞれのフルクトシル部分からなるフルクトースポリマーの多分散混合物を含み、その混合物の、生産若しくは精製後のDPは、10〜60である。イヌリン加水分解物は、イヌリンを加水分解することによって得られ、DPが10未満のフルクトオリゴサッカライドオリゴマーの低分子量混合物からなる。
【0059】
低MWサッカライド成分(ii)
任意による低MW成分(ii)は、モノサッカライド、及び/又はジサッカライドからなり、好ましくは単糖からなる。
【0060】
好ましくは、低MW成分(ii)は、5%以下のイヌリン加水分解物を含み、より好ましくは実質的に含まず、とりわけ好ましくは含まない。
【0061】
好便には、低MW成分(ii)は、100重量部であるフラワーの総重量に対し、少なくとも0.1重量部、より好便には少なくとも1重量部、とりわけ好便には少なくとも2重量部、例えば、少なくとも3重量部の量で存在する。
【0062】
役立つには、低MW成分(ii)は、100重量部であるフラワーの総重量に対し、5重量部以下、より好便には4重量部以下、とりわけ好便には3.5重量部以下の量で存在する。
【0063】
好ましくは、低MW成分(ii)は、100重量部であるフラワーの総重量に対し、0.1〜10重量部、より好ましくは1〜5重量部、とりわけ好ましくは2〜4重量部の量で存在する。
【0064】
有利には、低MW成分(ii)は、組成物(例えば、ウエハース、押出シリアル製品、又はバッター)に対し、15重量%以下、好ましくは10重量%以下、より好ましくは8重量%より高く、とりわけ好ましくは5重量%以下の量で存在する。
【0065】
役立つには、低MW成分(ii)が、少なくとも25、より役立つには少なくとも30、とりわけ役立つには少なくとも35、例えば少なくとも38の平均デキストロース当量(DE)を有する。
【0066】
好便には、低MW成分(ii)が、70以下、より好便には60以下、とりわけ好便には55以下、例えば50以下の平均DEを有する。
【0067】
好ましくは、低MW成分(ii)が、20〜70、より好ましくは25〜60、とりわけ好ましくは30〜55、例えば、35〜50の平均DEを有する。
【0068】
また、本明細書において使用する場合、少なくとも1つのモノサッカライド(複数可)、及び/又は少なくとも1つのジサッカライド(複数可)が、低MW成分(ii)の中に存在し、また本明細書において、用語「低分子量サッカライド(複数可)」、及び/又は「低MWサッカライド(複数可)」によっても表される。好ましい低MWサッカライド(複数可)からは、イヌリン加水分解物、フルクトオリゴサッカライド、及びマルトデキストリンが除外される。
【0069】
役立つには、低MWサッカライド(複数可)は、少なくとも1つのモノサッカライド、及び/又は少なくとも1つのジサッカライドからなり、より役立つには、少なくとも1つのモノサッカライド、及び少なくとも1つのジサッカライド(複数可)からなり、とりわけ役立つには、(乾燥した、又は液状(例えばシロップとして)の形態の)、20〜70のDEを有するグルコース、更により好ましくは25〜65のDEを有するグルコース、より好ましくは25〜50のDEを有するグルコース、とりわけ好ましくは29〜45のDEを有するグルコース、例えば、29、31、40、42、及び/又は44のDEを有するグルコースのうちの、少なくとも1つから選択されるグルコースからなる群から選択される、少なくとも1つのモノサッカライド(複数可)からなる。
【0070】
有利には、組成物(例えば、製品、ウエハース、又はバッター)の中の糖(すなわち、単糖に加え多糖)の総量の総重量に対する重量%として表される、低MWサッカライド(複数可)は、成分(ii)及び(iii)(並びに任意に(iv))の全糖の、例えば、総重量の(これらのみが存在する成分である場合)、少なくとも10重量%、より有利には少なくとも15重量%、更により有利には少なくとも20重量%、とりわけ有利には少なくとも25重量%の量で存在する。
【0071】
役立つには、組成物の中の糖の総量に対する重量%として表される、低MWサッカライド(複数可)は、成分(ii)及び(iii)(並びに任意に(iv))の全糖の、例えば、総重量の(これらのみが存在する成分である場合)、45重量%以下、より役立つには40重量%以下、更により役立つには35重量%以下、とりわけ有利には30重量%以下の量で存在する。
【0072】
好ましくは、組成物の中の全糖の総重量に対する重量%として表される、低MWサッカライド(複数可)は、成分(ii)及び(iii)(並びに任意に(iv))の全糖の、例えば、総重量の(これらのみが存在する成分である場合)、10〜50重量%、より好ましくは15〜45重量%、更により好ましくは20〜35重量%、とりわけ好ましくは25〜30重量%の量で存在する。
【0073】
好ましくは、低MWサッカライド(複数可)は、分子量が150g/モル〜350g/モル、より従来からのものとしては200g/モル〜342g/モル、更により従来からのものとしては250g/モル〜340g/モル、とりわけ従来からのものとしては280g/モル〜330g/モルの分子からなる。
【0074】
従来からのものとしては、低MWサッカライド(複数可)の数平均分子量(M)は、150g/モル〜350g/モル、より従来からのものとしては200g/モル〜342g/モル、更により従来からのものとしては250〜340g/モル、とりわけ従来からのものとしては280g/モル〜330g/モルである。
【0075】
典型的には、低MWサッカライド(複数可)の重量平均分子量(M)は、100g/モル〜400g/モル、より典型的には150g/モル〜380g/モル、更により典型的には200g/モル〜370g/モル、とりわけ典型的には250g/モル〜350g/モルである。
【0076】
中程度MWサッカライド成分(iii)
任意に、中程度MW成分(iii)は、多糖からなる。
【0077】
好ましくは、中程度MW成分(iii)は、マルトデキストリンを実質的に含まず、より好ましくは含まない。
【0078】
好ましくは、中程度MW成分(iii)は、5%以下のイヌリン加水分解物を含み、より好ましくは実質的に含まず、とりわけ好ましくは含まない。
【0079】
好便には、中程度MW成分(iii)は、100重量部であるフラワーの総重量に対し、少なくとも5重量部、より好便には少なくとも8重量部、更により好便には少なくとも9重量部、とりわけ好便には少なくとも10重量部、更にとりわけ好便には少なくとも12重量部、例えば、15重量部の量で存在する。
【0080】
役立つには、中程度MW成分(iii)は、100重量部であるフラワーの総重量に対し、25重量部以下、より好便には20重量部以下、とりわけ好便には18重量部以下、例えば17重量部以下の量で存在する。
【0081】
好ましくは、中程度MW成分(iii)は、100重量部であるフラワーの総重量に対し、5〜25重量部、より好ましくは8〜20重量部、とりわけ好ましくは10〜18重量部、例えば、12〜17重量部の量で存在する。
【0082】
有利には、中程度MW成分(iii)は、組成物(例えば、ウエハース、押出シリアル製品、又はバッター)に対し、15%以下、好ましくは10%以下、より好ましくは8%より高く、とりわけ好ましくは5%以下の量で存在する。
【0083】
有利には、組成物(例えば、製品、ウエハース、又はバッター)の中の糖(すなわち、単糖に加え多糖)の総量の総重量に対する重量%として表される、中程度MWサッカライド(複数可)は、成分(ii)及び(iii)の全糖の、例えば、総重量の(これらのみが存在する成分である場合)、70重量%以下、より有利には80重量%以下、更により有利には85重量%以下、とりわけ有利には90重量%以下の量で存在する。
【0084】
役立つには、組成物の中の糖の総量に対する重量%として表される、中程度MWサッカライド(複数可)は、成分(ii)及び(iii)の全糖の、例えば、総重量の(これらのみが存在する成分である場合)、少なくとも50重量%、より役立つには少なくとも55重量%、更により役立つには少なくとも60重量%、とりわけ有利には少なくとも65重量%の量で存在する。
【0085】
好ましくは、組成物の中の全糖の総重量に対する重量%として表される、低MWサッカライド(複数可)は、成分(ii)及び(iii)の全糖の、例えば、総重量の(これらのみが存在する成分である場合)、50〜90重量%、より好ましくは55〜85重量%、更により好ましくは65〜80重量%、とりわけ好ましくは70〜75量%の量で存在する。
【0086】
役立つには、中程度MW成分(iii)が、少なくとも25、より役立つには少なくとも30、とりわけ役立つには少なくとも35、例えば少なくとも38の平均デキストロース当量(DE)を有する。
【0087】
好便には、中程度MW成分(iii)が、70以下、より好便には60以下、とりわけ好便には55以下、例えば50以下の平均DEを有する。
【0088】
好ましくは、中程度MW成分(iii)が、20〜70、より好ましくは25〜60、とりわけ好ましくは30〜55、例えば、35〜50の平均DEを有する。
【0089】
好ましくは、中程度MWオリゴサッカライド(複数可)は、分子量が500g/モル〜1600g/モルの巨大分子からなる。役立つには、中程度分子量画分の数平均分子量(M)は、500g/モル〜1500g/モルのものであり、及び/又は重量平均分子量(M)が400g/モル〜1800g/モルである。
【0090】
中程度MW成分は、中程度分子量オリゴサッカライド(複数可)、及び/又は中程度MWオリゴサッカライド(複数可)を含んでもよい。好ましい中程度MWオリゴサッカライド(複数可)からは、イヌリン加水分解物、フルクトオリゴサッカライド、及びマルトデキストリンが除外される。
【0091】
好ましくは、中程度MWオリゴサッカライド(複数可)は、3〜9個のモノサッカライド繰り返し単位を有する、1つ以上のオリゴサッカライドからなる。
【0092】
成分(ii)、(iii)、及び任意に(iv)(低、中程度、及び高MWの組み合わせ)
いくつかの場合において、低分子量成分(ii)を中程度分子量成分(iii)から分離することはできないことが認識されよう。これらの成分は、別々に加えられても、又は一緒に加えられてもよく、及び生成物の中に均質混合物を形成する場合があり、それらは、最初に分離された後、単一の原材料に組み合わされてもよく、並びに/又は1つの実施形態において、低MW成分(ii)の特性のものでそれとして記載されるパート、及び中程度MW成分(iii)の特性によって特徴付けられそれとして記載されるパート、によって特徴付けられる(任意に連続的な)分子量分布の、単一の成分若しくは原材料として考えることができる。任意に、高分子量成分(iv)が存在する場合、同じ考察をそれに当てはめてもよい。
【0093】
好便には、成分(ii)及び(iii)は、100重量部であるフラワーの総重量に対し、少なくとも10重量部、より好便には少なくとも12重量部、とりわけ好便には少なくとも13重量部、例えば、少なくとも15重量部の量で存在する。
【0094】
役立つには、成分(ii)及び(iii)は、100重量部であるフラワーの総重量に対し、30重量部以下、より好便には25重量部以下、とりわけ好便には20重量部以下、例えば、少なくとも18重量部の量で存在する。
【0095】
好ましくは、成分(ii)及び(iii)は、100重量部であるフラワーの総重量に対し、8〜30重量部、より好ましくは10〜25重量部、とりわけ好ましくは12〜20重量部、例えば、15〜18重量部の量で存在する。
【0096】
役立つには、本発明の製品の中に存在する量において、成分(ii)及び(iii)が合せて、少なくとも25、より役立つには少なくとも30、とりわけ役立つには少なくとも35、例えば少なくとも38の平均デキストロース当量(DE)を有する。
【0097】
好便には、本発明の製品の中に存在する量において、成分(ii)及び(iii)が合せて、70以下、より好便には60以下、とりわけ好便には55以下、例えば50以下の平均DEを有する。
【0098】
好ましくは、本発明の製品の中に存在する量において、成分(ii)及び(iii)が合せて、20〜70、より好ましくは25〜60、とりわけ好ましくは30〜55、例えば、35〜50の平均DEを有する。
【0099】
本発明の1つの実施形態において、本発明の組成物(例えば、ウエハース、押出シリアル製品、又はバッター)は、低MW成分(ii)及び中程度MW成分(iii)以外の、他の糖(複数可)/サッカライド(複数可)をまったく含まない。この実施形態において、成分(ii)及び(iii)を合せての重量%として計算される、成分(ii)及び(iii)の量は、合計100%となり、そのため例えば、「n」%の最低限度の重量%が成分(ii)又は(iii)のいずれかに関し本明細書において先に提示されている場合、成分(iii)又は(ii)のそれぞれに対応する量は(100−n)%である。
【0100】
本発明の別の実施形態において、本発明の組成物(例えば、ウエハース、押出シリアル製品、又はバッター)は、低MW成分(ii)のパート及び中程度MW成分(iii)のパートのものに加え、他の糖(複数可)/サッカライド(複数可)を含むものであり、例えば、他の糖、及び/又は成分(iv)などの他の(より高)分子量成分を含んでもよい。
【0101】
高分子量画分(1600g/モルより高い高分子量画分)
本発明の製品又はバッターは、第1及び第2の画分に加え、任意による成分(iv)として、サッカライド(複数可)の第3の(高)分子量画分を含んでもよく、すなわち、1600g/モルより高い分子量のサッカライド(複数可)部分を含んでもよい。そこでまた、このサッカライド(複数可)画分を高分子量画分と呼び、これは少なくとも1つのポリサッカライド(複数可)を含む。
【0102】
また、本明細書において使用する場合、定義されるとおりの高分子量画分の中に存在する少なくとも1つのポリサッカライド(複数可)は、本明細書において、用語「高分子量ポリサッカライド(複数可)」、及び/又は「高MWポリサッカライド(複数可)」によって表される。
【0103】
好ましくは、高MW分子量画分(iv)は、9個より多いモノサッカライド繰り返し単位を有する、1つ以上のポリサッカライドからなる。
【0104】
高MWポリサッカライド(複数可)は、分子量が1600g/モルより高い巨大分子からなる。役立つには、高分子量画分の数平均分子量(Mn)は、1600g/モル〜20000g/モルのものであり、及び/又は重量平均分子量(M)が1600g/モル〜30000g/モルである。
【0105】
上記の高分子量画分が任意に含んでもよい糖の総重量は、例えば成分(ii)、(iii)、及び(iv)の総重量に対し、40重量%以下、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下、とりわけ好ましくは10重量%以下である。他の糖成分が存在しない場合、糖分の重量によって計算すると、低分子量画分(ii)、中程度分子量画分(iii)、及び高分子量画分(iv)の重量%は合計100%となることが認識されよう。
【0106】
本発明の他の態様
本発明の1つの更なる態様において、本明細書において記載されるとおりの低分子量サッカライド(複数可)成分(ii)、及び中程度分子量サッカライド(複数可)成分(iii)を含む、無糖又は低糖ウエハースのためのウエハースのバッターが提供される。
1つの更なる態様により、本発明により、本明細書において記載されるとおりのウエハース又は膨張押出シリアル製品を製造するための方法が提供される。更に、本発明により、本明細書において記載されるとおりのウエハース又は膨張押出シリアル製品を含む食料製品が提供される。
【0107】
本発明の1つの更なる態様により、ウエハース又は製品の耐湿性を高めるための、ウエハース(好ましくは無糖若しくは低糖ウエハース)又は膨張押出シリアル製品の製造における、本明細書において記載されるとおりの低分子量サッカライド(複数可)成分(ii)、及び中程度分子量サッカライド(複数可)成分(iii)の使用が提供される。
【0108】
本発明の1つの特に好ましい実施形態において、耐湿性のある、無糖又は低糖の低密度ウエハースであって、0.4〜0.6の水分活性(A)、並びに6N.mm未満の噛み砕き仕事量のウエハースであり、上記ウエハースがイヌリン加水分解物及びマルトデキストリンを実質的に含まず、上記水が、フラワー、並びにデンプンから誘導される、及び/又はデンプンから誘導可能なモノサッカライド(複数可)、オリゴサッカライド(複数可)、及び/若しくはポリサッカライド(複数可)からなる成分を含み、上記デンプンから誘導可能な成分が、
(a) 100重量部であるフラワーの総重量に対し、少なくとも8重量部〜20重量部の量で上記ウエハースの中に存在し、
(b) 20〜70のDEを有するものであり、並びに
(c) 分子量分布が、
(1)分子量が1000g/モル未満であって、第1の分子量画分が、100重量部である糖(単糖及び多糖)の総存在重量に対し、少なくとも25重量部の量で存在する、オリゴサッカライド(複数可)の第1の分子量画分、及び
(2)分子量が1000g/モル〜1500g/モルであって、第2の分子量画分が、100重量部である糖(単糖及び多糖)の総存在重量に対し、少なくとも10重量部の量で存在する、オリゴサッカライド(複数可)の第2の分子量画分、によって特徴付けられるものであり、
(d) (c)(1)及び(c)(2)の合計量が、100重量部の全糖(単糖及び多糖)に対し、10〜50重量部の量で存在する、デンプンから誘導可能な成分であり、
上記ウエハースは、
単糖が上記ウエハースの5重量%未満の量で存在する無糖又は低糖ウエハースであって、
密度が1g/cm以下の低いものである、低密度ウエハース、が提供される。
【0109】
機序
いずれの特定の理論にも束縛されるものではないが、本発明の食料品の水分忍容性の向上は、焼成食料品の中のデンプン分子間の隙間の空間の全部又は一部を占める中程度分子量オリゴサッカライドが、得られるデンプンマトリクスに、以下の効果のうちの一つ以上をもたらすことに、少なくとも一部、起因していると考えられ、その効果とは、マトリクスの高密度化、水分結合部位を遮断することによる、マトリクスの吸湿性(hygrocapacity)の低減、マトリクス内部の水分の結合競合、マトリクス内部でのデンプンの局所運動の減少、及び/又はマトリクスのガラス転移点の変化のうちの一つ以上である。したがって、高分子量化合物により高粘度及び高T値が得られることから、並びに低分子量化合物が高分子量分子間の空隙を埋めてしまうことによってマトリクス密度が高まることから、広範な分子量分布の原材料の存在は、製品の舌触りの、水に対する忍容性を高めると考えられる。所与の水分活性でTを高める原材料は、水分忍容性を高め得る。吸湿性は、物質が分子マトリクス中への吸着及び自由表面領域上への吸着によって水を結合する能力の、定量的尺度である。吸湿性が高められた原材料により、所与の水分活性で、より長い時間にわたってパリパリ感を保つ、ウエハースを得ることができ、これにより、ウエハースのパリパリ感の、水への脆弱性を低減させることができる。ウエハースのマトリクスの強度を高める原材料により、(Tへの影響とは独立して)、ウエハースのパリパリ感の、水への忍容性を高めることができる。
【0110】
ウエハース
本発明のウエハース製品は、本明細書において定義されるとおりの低糖又は無糖ウエハースであり、1つの実施形態において、ウエハースの総量の15重量%以下の、糖をはじめとする添加甘味料、又はそれらの他の人工置換物を含む。
【0111】
本明細書において定義されるとおり、本発明の製品の有するサッカライド(低及び中程度MW)は、100部のフラワー当たり35部以下であるが、他の原材料(水など)を計算に入れ、及び天然に既に存在している糖の量を計算に入れた後、製品の総重量に基づいて計算すると、本発明のウエハース製品の大半が、加えられた糖に基づいて低糖であると、十分に考え得る。
【0112】
デキストロース当量(DE)は、デンプン加水分解生成物の中に存在する還元糖の量の、デキストロースを基準とする尺度であり、乾燥基準での百分率として表される。デンプンから製造された溶液に関しは、それは全デンプン生成物の中で存在する還元糖の百分率の算定である。例えば滴定などの従来からの方法によってDEを実験的に求めることができ、(還元糖含有量(グルコース)/全固形分含有量 ×100%)としてDEを計算する。DEを使用し、巨大分子の中に存在する繰り返し単位の数である重合度(DP)の近似的な指標を得ることができ、典型的なものとしては、デンプン糖に関し、DE=100/DPである。
【0113】
本発明のウエハースは、例えば、幾何学的な形状又はアニメキャラクターの形状のうちのいずれか、並びにアルファベットの文字又は数字の、フラットなウエハースでもよい。また、それは、例えば、コーン、グラス、皿などの、3次元の形状のウエハースでもよい。ウエハースの舌触りは、主に糊化デンプンから構成されるゲル構造の中での、気泡(gas cell)の発生からもたらされる。高温の焼成プレートにより、フラワーの中に存在するデンプン顆粒の速やかな糊化、並びに糊状マトリクス内部での気泡(gas bubble)の生成及び膨張が引き起こされる。これらの気泡は、常識的には、主に加えられた重炭酸塩などの気化剤(gassing agent)から発生したもの、又は酵母などの気体を発生させる微生物からバッター発酵の間に生成した二酸化炭素から発生したもの、及び加熱によって生成した水蒸気から発生したものである。したがって、ウエハースは、気泡が分散した糊化及び乾燥デンプン/フラワーの固形発泡体(特定の場合において、ほぼ連続的な相が形成される場合がある。)として、見える場合がある。
【0114】
通常、ウエハースのバッターは、ほぼ30〜60%のフラワー、例えば小麦粉を含む。いくつかのバッターにおいて、フラワーに加えて、デンプンを加えることができる。また、バッターは、以下の原材料、すなわち、脂質及び/又は油、レシチン及び/又は乳化剤、糖、全卵、食塩、重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、脱脂粉乳、大豆粉及び/又は酵素(キシラナーゼ、プロテアーゼなど)、のうちの少なくとも1つを含んでもよい。いずれの標準的なウエハースのバッターも、本発明に従って、グルコースシロップを液状又は乾燥パウダーの形態で加えることによって、使用してもよい。任意に、バッター及び/又はウエハースが、糖の転移ができる酵素を含む場合、バッター又はウエハースを熟成させ、その中の糖を、本明細書において記載される量でそれに対応するものに展開できる。
【0115】
本発明のウエハースは、当業者に公知のいずれの方法によって製造してもよい。例えば、国際公開第2009/149948号において記載されているとおりである。
【0116】
本発明のバッターは、本発明のウエハースに関して本明細書において特定されるものと同じ量の成分(i)を含んでもよい(及びその逆も可)。
【0117】
1つの代替において、本発明のバッターが含むことのできる低MW成分(ii)は、1部を100kgのフラワー当たり1kgの比率のものとして定義した場合、3〜10部、好ましくは4〜9部、とりわけ好ましくは5〜8部である。またあるいは、本発明のバッターが含むことのできる中程度MW成分(iii)は、1部を100kgのフラワー当たり1kgの比率のものとして定義した場合、5〜20部、好ましくは6〜15部、とりわけ好ましくは7〜12部である。なおもまたあるいは、本発明のバッターが含むことのできる成分(ii)及び(iii)は合せて1部を100kgのフラワー当たり1kgの比率のものとして定義した場合、8〜30部、好ましくは10〜24部、とりわけ好ましくは12〜20部である。
【0118】
そのような原材料が液状又はパウダーの形態で入手可能であり、及びバッターに、他のバッターの原材料と同時に加えてもよく、又は別個に加えてもよいことから、これらの成分の使用により、製造プロセスにいかなる余分な複雑性も生じるものではない。
【0119】
いずれの理論に束縛されるものではないが、分子の分子量が広がっている範囲が狭いと、それが、特定の分子量画分の影響を弱め、及びウエハースの舌触りを守る一助となることから、有利であると考えられる。加えて、モノ及びジサッカライドの割合を確実に低いものにしておくと、これらの分子は、高すぎる濃度で使用された場合、ウエハースの焼成の間のプレート上への固着に関与することから、有利であると考えられる。
【0120】
加工性を良好なものにするため、低糖又は無糖ウエハースのレシピは、ウエハースが焼成後ウエハース焼成プレートに固着する、原因とならないものである必要があり、並びにウエハースは、輸送及び詰め物のクリームとの層状化が困難となる程に砕けやすくなく、割裂しないものである必要があり、及びウエハースのバッターは、生産後、ウエハースの焼成前までバッターを貯蔵できるように、少なくとも30分、好ましくは1時間、安定である必要がある。
【0121】
本明細書において別段の指示のない限り、本明細書において使用される技術分野用語は、国際公開第2009/149948号における用語による意味のものであり、又はこの参考文献において定義されていない場合、工業規模のウエハース焼成の技術分野の当業者に公知であり得るものによる意味のものである。
【0122】
製品
本発明の製品は、ウエハース、例えば、単一シートの、コーティングなし又は積層したウエハース、いわゆる「ネイキッド・ウエハース(naked wafer)」でもよい。そのようなウエハースシートは、更なる製品、例えば、1つ以上の他のウエハースで積層したもので、その上及び/若しくは間に詰め物を有するもの、並びに/又は、他のコーティング及び/若しくは脂質による菓子(チョコレート若しくはその類似品など)でコーティング、塗り付け、及び/又は成型されたもの、に組み込んでもよい。したがって、本明細書において使用する場合、用語「製品」は、必ずしも、世間に向け市販されている形態での製品そのもののみを指すものではなく、必ずしも別個に販売されるものではない半製品など、より複雑な製品の製造に使用される半製品の成分である製品も含み、そのような半製品の提供は、明確に区別される分野である。
【0123】
したがって、本発明のウエハース又は膨張押出シリアル製品は、ウエハース又は膨張押出シリアル製品そのものとして消費者に提供される場合があるが、また、菓子、味付けした製品又はペットフードを製造するため、更に加工される場合もある。それによりまた、本発明は、上記のとおり、耐湿性のあるウエハース又は膨張押出シリアル製品を別の食品材料と接して含む、製品も含む。他の食品材料は、菓子、味付けした製品又は若しくはペットフードでもよい。好ましくは、ウエハース又は膨張押出シリアル製品は、食品材料と直接に接している。
【0124】
従来からの食品材料が使用されてもよく、好適な食品材料の例には、チョコレート、ジェリー、コンパウンドチョコ、アイスクリーム、シャーベット、ナッツペースト、クリームによる製品、ケーキ、ムース、ヌガー、カラメル(caramel)、プラリネ、ジャム、ウエハース焼き直し品(wafer rework)があり、又はこれらの原材料の組み合わせがあり、異なる状態の同一原材料若しくは異なる原材料を含むものか否かによらない。味付けした製品に好適な食品材料は、魚若しくは肉のペースト、チーズによる材料、又は野菜ピューレを含み得る。そのような食料製品は、ウエハース又は膨張押出シリアル製品の詰め物として、これらの他の材料のうちの1つ以上を含んでもよい。
【0125】
同じ又は異なる詰め物の縁となるウエハースの外層から構成される、サンドイッチ状のバーを製造することができる。また、サンドイッチは、ウエハースと詰め物との対が積み重なったものにでき、第1の層及び最後の層がウエハースであり、2〜15のウエハース層を含むことができる。一般に水分バリアの使用は不要であるが、所望の場合、任意に使用される場合がある。
【0126】
また、菓子、味付けした製品又はペットフードの、中心部又は中心部の一部として、ウエハース又は膨張押出シリアル製品を使用することもできる。ウエハース又は膨張押出シリアル製品が、コーティング材料の中で塗り付け、又は成型されてもよく、それは通常のコーティングのいずれか、例えば、チョコレート、コンパウンド、アイシング(icing)、カラメル、又はこれらの組み合わせでもよい。好ましくは、食料製品は、菓子製品である。
【0127】
本発明のウエハース及び膨張押出シリアル製品が、パリパリ感又は脆性などの望ましい舌触り品質を、高い水分活性で維持することから、本発明により、低脂質若しくは低カロリーの詰め物などのより健康に良い詰め物、又はカラメル、フルーツジャム、若しくは本物のフルーツなどの新たな詰め物による、新規な菓子製品の製造が可能となり、ウエハース又は膨張押出シリアル製品は、詰め物と直接に接し、水分バリアを必要としない。
【0128】
定義
本明細書において使用される場合、用語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」及び関連語は、排他的な又は排除する意味合いで解釈されるものではなく、それ以降に列挙されるものが非排除的なものであること、並びに適宜、いずれかの他の追加の好適な項目、例えば、1つ以上の更なる特徴(複数可)、成分(複数可)、原材料(複数可)、及び/又は置換物(複数可)を含んでもよく、又は含まなくてもよいこと意味するものとして理解され、換言すれば、これらの用語は、「含む/をはじめとする(including)」がそれに特に限定されないことを意味する目的のものである。
【0129】
用語「効果的」、「許容可能」、「活性」、及び/又は「好適」は(例えば、適宜、本明細書において記載されるいずれかのプロセス、使用、方法、適用/用途、製造/準備、製品/生成物、材料、処方、化合物/コンパウンド、モノマー、オリゴマー、ポリマー前駆体、及び/又はポリマーを指して)、本発明のそれらの特徴により、正しい要領で使用された場合に、本明細書において記載されるとおりの有用性があるものとして加えられるのに、及び/又は組み込まれるのに、必要な特性が得られることを指すものとして理解される。そのような有用性は、例えば、材料の特性が、前述の使用に必要なものである場合、直接的なものとなり得、及び/又はそのような有用性は、例えば、材料の使用が、直接的に有用な他の材料を製造する際の半製品としてのものである場合、間接的なものとなり得る。また、本明細書において使用される場合、これらの用語は、機能群(functional group)が、効果的な、許容可能な、活性のある、及び/又は好適な、最終製品を製造するのに適することも表す。
【0130】
好ましい有用性の本発明の含むウエハースは、本明細書において記載される望ましい特性のうちの1つ以上のものである。
【0131】
別途定義がない限り、全ての技術用語及び科学用語は、本発明の属する技術分野の当業者に共通して理解されるものと同じ意味のものであり、同じ意味を与える必要がある。
【0132】
本明細書において使用される場合、用語「実質的に」は、多量又はそれらの割合を意味する、量又は実体を指し得る。これに関連し、「実質的に」が使用される文脈において、「実質的に」は、(記載の文脈において参照される量又は実体のいずれかとの関係における)量を意味し、対象とするものの全量(relevant whole:関連するものの全量)の少なくとも80%の割合、好ましくは少なくとも85%の割合、より好ましくは少なくとも90%の割合、とりわけ好ましくは少なくとも95%の割合、特に少なくとも98%の割合、例えば、約100%の割合を構成する量として理解できる。類似する用語「実質的に含まない」は、同様に、参照される量又は実体が、対象とするものの全量の20%以下、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下、とりわけ好ましくは5%以下、特に2%以下、例えば、約0%であることを表すことができる。好ましくは、適切な場合(例えば、原材料の量において)、そのような百分率は重量基準である。
【0133】
本明細書における本発明の議論において、矛盾する記載のない限り、ある値が他の値よりも好ましいことを示すパラメータについて許容される範囲の上限値及び下限値の代替的な値の開示は、前述のパラメータに関し各中間値も汲むものとみなされ、より好ましい、かつ好ましさに劣る前述のそれぞれの値の間に含まれる値そのものは、前述の好ましさに劣る値よりも好まれ、かつ同様にして好ましさに劣る各値及び前述の中間値よりも好まれる。
【0134】
本明細書において提示されるいずれのパラメータについての全ての上限値及び/又は下限値に関しても、各パラメータの値には境界値が含まれる。本発明の様々な実施形態において本明細書に記載されるパラメータに関し好ましい及び/又は下限値及び上限値の中間値の全ての組み合わせは、様々な他の実施形態の各パラメータに関する代替的な範囲、及び/又は具体的に本願に開示されていようがいまいが値の組み合わせの好ましさを定義する際にも使用できることも理解されたい。
【0135】
本明細書に記載のいずれの量についても、百分率としての合計量は、(丸め誤差を許容しつつも(allowing for rounding errors))100%を超過し得ないものと理解されたい。例えば、本発明の組成物が含む成分(又はそれらの部分(複数可))の合計は、組成物(又はそれらの同じ部分(複数可)の重量(又は他の)百分率として記載される場合、丸め誤差を許容しつつも、合計100%とすることができる。しかし、成分の列挙が非排除的なものである場合、そのような成分の各々についての百分率の合計は、本明細書において明示的に記載されていない場合のある追加のいずれの成分量(複数可)に関しても、ある程度の百分率を許容するため、100%未満になり得る。量についての全ての百分率は、別段の指示がなく適用可能ではない場合、重量%で与えられる。
【0136】
また、本発明の組成物、及び/又は本発明に使用する組成物は、同様の要領で使用される公知の組成物と比べ、特性の向上も示すことができる。そのような特性の向上は、(好ましくは下記で定義されるものとして)、下記の1〜5と付番した特性(複数可)のうちの少なくとも1つ、好ましくは複数、より好ましくは3つ以上におけるものでよい。本発明の好ましい組成物、及び/又は本発明に使用する好ましい組成物は、(公知の組成物及び/又はその成分と比べ)、下記の1〜5と付番した特性のうちの少なくとも1つ、より好ましくは少なくとも2つ、更により好ましくは少なくとも3つ、とりわけより好ましくは少なくとも4つ、例えば全てにおいて、同等な特性(comparable property)を示すことができる。
1)パリパリ感保持
2)耐湿性
3)板紙感(Cardboardiness)
4)所与の水分活性(A)での噛み砕き仕事量(W
【0137】
本明細書において使用される場合、「特性の向上」は、成分及び/若しくは組成物の特性の値、並びに/又は本発明において使用される特性の値が、定量的に測定できる場合、本明細書において記載される既知の参照成分及び/若しくは組成物の値の+8%より大、より好ましくは+10%より大、更により好ましくは+12%より大、とりわけより好ましくは+15%より大となることを意味する。
【0138】
本明細書において使用される場合、「同等な特性」は、成分及び/若しくは組成物の特性の値、並びに/又は本発明において使用される特性の値が、定量的に測定できる場合、本明細書において記載される既知の参照成分及び/若しくは組成物の値の±6%以内、より好ましくは±5%以内、とりわけより好ましくは±4%以内となることを意味する。
【0139】
本明細書における、特性の向上と、同等な特性とでの百分率の差異は、成分及び/若しくは組成物の間の、並びに/又は本発明において使用されるものと、本明細書において記載される既知の参照成分及び/若しくは組成物との間の、特性が同じ単位にて同じ方法で測定された場合の、(すなわちまた、比較される値が百分率として測定され、絶対値の差異(absolute difference)を表していない場合の)、わずかな差異を参照してのものである。
【0140】
好ましくは、向上性又は同等性を測定するため使用する参照組成物は、本明細書において記載される追加の原材料を含む本発明のものと類似の組成物であって、その追加の原材料が同じ総重量の他の従来からの原材料に置き換えられ、全ての他の原材料は変えられず残っている組成物である。
【0141】
試験方法
板紙のような口当たり又は舌触り(「板紙感」)
本明細書において使用される場合、製品(例えばウエハース)の、板紙のような口当たりは、舌触りが許容不可能(例えば、水分濃度が許容不可能なまでに高い場合がある。)であることの指標であり、逆にそのような板紙のような舌触りがないことは、水分濃度が許容可能限度内にあることを示す。本明細書において、これは、訓練された官能試験モニター(sensory panel)によって採点され、また、「板紙感」とも呼ばれる。
【0142】
本発明の好ましい製品に望ましい感覚的性質は、6以下の格付けの板紙感であり、より好ましくは5以下であり、これは、これらの値を、許容可能な味わいを得るための最低限度とみなしたことによる。これらの格付けは、0〜10の無次元目盛(ゼロは板紙のような味わいがまったくなく、10は完全に板紙のような味わい)にて、訓練された官能試験モニターによって採点された。
【0143】
本図面における図から知り得るとおり、N.mm単位で分析的に求めたW値と、訓練された官能試験モニターによって求めた板紙感の格付け(0〜10の目盛)との間に顕著な相関関係がある。したがって、いずれかの方法を使用し、製品の、同じ舌触りの性質を記載することができる。
【0144】
噛み砕き仕事量(W
ニュートン.ミリメートル(Newtonmillimetre:N.mm)単位で測定した噛み砕き仕事量(W)の定義は、次のとおりである。
【数1】

(式中、Noは、ピークの総数であり、
Aは、力−変形曲線下の面積であり、N.mm単位となる。)
【0145】
は、製品(例えばウエハース)を噛み分けるのに必要なエネルギーであり、噛んだ際、製品を割り裂いてしまうための強度が表される。Wの値が高いほど、製品の湿り気は高くなり(又は逆にパリパリ感は低くなり)、(望ましくない(undesirable))板紙のような舌触り(また「板紙感」とも呼ばれる。)はより著しくなる。Wの勾配及び値が、ウエハースの密度に応じて変化していくためまた、Wはバッターのレシピにおける、水のフラワーに対する比率にも依存するものとなる。Wは、国際公開第2009/149948号の第12ページ第15行〜第14ページ第13行(本明細書に参照により組み込まれる。)において更に説明されている。また、Wは、パリパリ感とも呼ばれるが、混同を回避するため、本明細書においては、噛み砕き仕事量と呼ばれる。
【0146】
を求めるため、及びウエハースの舌触りを分析するため、使用される方法は以下のとおりである。円形切断具(半径2cm)を使用して、ウエハースの6枚の円板を切り出し、6枚の円板の積層体を8個作製する。4mmのプローブを使用し、8mmの、円板の積層体(sample disk stack)に通す。ウエハースの積層体の中へのプローブの貫通の間の、力/距離のパラメータが記録できる、舌触り分析機を、記載されているとおり使用した。装置により、円筒形プローブをウエハースの積層体の中に入れ、構造断裂(力降下)を記録する。力降下の数が大きくなればなるほどパリパリ感が大きくなるので、力降下の頻度により、ウエハースの舌触りの識別が可能となる。この試験のため、Texture Analyser TA.HD,Stable Micro Systems,Englandにより、以下の使用条件とした。ロードセル 50kg、円筒形ステンレスプローブ 直径4mm、貫通速度 1mm/秒、距離 8mm、力降下の記録 0.2Nより大、トリガー力 0.5Nより大、取得速度 500点/秒。試験を、合計8回の繰り返しとなるまで繰り返す。結果(W)の平均及び標準偏差を記録する。類似の同様の方法を、非ウエハース製品(例えば押出製品)について使用することができる。
【0147】
水分活性(A
水分活性は、温度依存性であり、物質の中の自由水(すなわち、結合していない水)の量を表す。そのことから、水分活性は、物質の中の水の蒸気分圧を純水の標準状態での蒸気分圧で割り算したものである。数値Aは、0〜1(純水のAが1となる。)の無次元数である。本明細書において実施する試験に関し、別段の指示のない限り、水分活性を標準条件下で試験する。
【0148】
環境に曝されたウエハースなどの食料品製品の水分活性を、調湿(equilibration:平衡)期間後、求める。水は、高A領域から低A領域に移る。典型的には、乾燥したと思われる場合であっても、ネイキッド・ウエハースは、いくらかの自由水をなお含み、それにより、ゼロより高い、典型的には約0.1の水分活性のものである場合がある。乾燥ウエハースがより高い水濃度(例えば、高い水分活性の詰め物からのもの)に曝された場合、それは自由水を吸収していく。同様に、ウエハースと接する高い水分活性の詰め物は、水分を乾燥ウエハースに逃がしていく。したがって、詰め物の水分活性が低下し、ウエハースの水分活性は高まっていくことで、それらが均衡するものとなり、その後、次に調湿した製品のAを求めることができる。調湿に必要な期間は、試験される材料によって変動する場合があるが、当業者に公知のものであり、例えば、変化がなくなる(すなわち、均衡に達している。)まで、Aを同じ条件下で測定することによって、求めることができる。
【0149】
本発明の食料品は、低い水分活性のものでも、中程度の水分活性のものでも、又は高い水分活性のものでもよい。詰め物による、本発明の食料品(ウエハース又は膨張押出シリアル製品など)に関し、詰め物と製品との間での調湿後、本発明の製品は、ある範囲の水分活性の範囲、好ましくはAが0.4以下、より好ましくは0.5以下、更により好ましくは0.55以下、とりわけより好ましくは0.6以下、例えば0.65以下にわたって、受容可能な、又は満足な感覚的知覚を達成できることが分かった。
【0150】
そのことから、本発明の好ましいウエハース又は膨張押出シリアル製品は、水分活性が0.3〜0.65である場合、水分活性が0.1高まることにより得られるWの高まりが、2.0N.mm未満、より好ましくは1.5N.mm未満、更により好ましくは1.25N.mm未満、とりわけ好ましくは1.0N.mm未満となる。
【0151】
耐湿性
本明細書において使用される場合、用語「耐湿性」及び「水分忍容性」は、同じことを意味し、互換可能に使用される。それ故、「耐湿性のある製品」(例えばウエハース)は、大量の自由水による環境の中(すなわち、製品の水分活性が、典型的には例えばウエハースの菓子の中で一般的に遭遇するものより高くなる場合)であっても、満足なパリパリ感、及び/又は満足な感覚的知覚を維持する製品の意味である。
【0152】
したがって、本発明の耐湿性のある製品により、許容可能な機械的耐性(例えば、Wで測定し、6未満)及び感覚的性質(例えば、板紙感で測定し、6未満)が、先行技術製品及び/又はより高い水分活性のものよりも長期間(例えば、少なくとも3ケ月)維持される。したがって、本発明の耐湿性のある製品により、満足なW及び低い板紙感が、低い水分活性、すなわち、0.4以下(例えば0.3〜0.4)で、好ましくは先行技術の組成物よりも長く維持される。驚くべきことに、本発明のより好ましい耐湿性のある製品により、満足なW及び低い板紙感が、中程度の水分活性の0.4〜0.5で維持される。更により驚くべきことに、本発明のとりわけ好ましい耐湿性のある製品により、満足なW及び低い板紙感が、より高い水分活性の0.5以上(例えば、高い水分活性0.5〜0.6で)で維持される。
【0153】
いずれの理論にも束縛されるものではないが、一般的に、本発明の製品で耐湿性について試験する場合、本発明の1つの実施形態において、水分活性が0.1高まることにより好便にも得られる付随するWの高まりは、2N.mm未満(噛み砕き仕事量又はパリパリ感の少しの低下のみに相当)にできる。水分活性が0.3〜0.6のウエハースの耐湿性を試験する場合、本発明の別の実施形態において、ウエハースの水分活性が0.1高まることにより有用にも得られる付随するWの高まりは、1.5N.mm未満、より好ましくは1.25N.mm未満、より好ましくは1.0N.mm未満にできる。一般的には、更に高い水分活性の(すなわち、0.6より高い)ウエハースの試験により、先行技術のウエハース組成物と比べ、更に大きな水分忍容性が示される。それ故、最初の水分活性が0.3〜0.65のウエハースの耐湿性について試験する場合、本発明の更に他の実施形態において、ウエハースの水分活性が0.1高まることにより有利にも得られる、本発明のウエハースについて付随するWの高まりは、2倍未満、好ましくは1.5倍未満、より好ましくは1.25倍未満(これは、噛み砕き仕事量の小さい低下のみに相当)となる。
【0154】
本明細書において使用される場合、用語「耐湿性の/耐湿性のある」は、試験される製品の、機械的耐性(例えば、Wで測定)、及び/又は最初の感覚的性質(官能試験モニターによって求めたとおりの板紙感)のうちの少なくとも1つ(好ましくは両方)が、製品を試験環境若しくは所望の組成物(例えば、低A、中程度A、若しくは高A、の詰め物)により調湿した後、実質的に維持されていることを表す(好ましくは10%以内の製品の最初の値)。この試験において、比較は、詰め物なしの乾燥(したと思われる)製品、(例えばネイキッド・ウエハース)の最初の値とで行い、W及び板紙感については、標準条件下の空気中で調湿の後、試験する。通常、試験期間は、結果の中で特定されており、典型的には0ケ月(すなわち最初の値)、3ケ月、6ケ月、又は9ケ月である。期間が特定されていない場合、その試験は、期間を最初の試験(0ケ月)後からのものとする。通常、参照試料は、気密包装(密封したホイルの袋)の中に密封して、試験の間、16℃で保管でき、試験される他の試料は、従来からの(非気密の)包装の中に保管される。また、この試験に合格している試料は、「満足」な耐湿性、機械的特性、及び/又は感覚的性質のものとして表される。
【0155】
任意に、本発明の製品の水分活性は、0.55〜0.65である。
【0156】
本発明の製品は、本明細書において定義されるとおりの、少なくとも0.4以下の水分活性(A)で、耐湿性のものである。
【0157】
本発明の好ましい製品は、本明細書において定義されるとおりの、0.5以下の水分活性(A)、好ましくは0.6以下の水分活性、とりわけ好ましくは0.65以下の水分活性で、耐湿性のものである。
【0158】
本発明の有用な製品は、本明細書において定義されるとおりの、少なくとも0.05の水分活性(A)、より有用には少なくとも0.1の水分活性、更により有用には少なくとも0.2の水分活性、とりわけより有用には少なくとも0.3の水分活性、例えば、少なくとも0.4の水分活性で、耐湿性のものである。
【0159】
好便には、本発明の製品は、本明細書において定義されるとおりの、0.2〜0.4の水分活性(A)、より好便には0.2〜0.5の水分活性、更により好便には0.1〜0.5の水分活性、とりわけより好便には0.05〜0.65の水分活性で、耐湿性のものである。
【0160】
発明の1つの実施形態が含む製品は、本明細書において定義されるとおりの、0.4以下の水分活性(A)(本明細書において低Aともまた表されるもの)で、任意に少なくとも3ケ月、通常的には少なくとも6ケ月、より通常的には少なくとも9ケ月にわたって耐湿性のものであり、またそのような製品は、本明細書において、耐湿性のものとも呼ばれる。
【0161】
発明の1つの好ましい更なる実施形態が含む製品は、本明細書において定義されるとおりの、0.4〜0.5の水分活性(A)(本明細書において中程度Aともまた表されるもの)で、任意に少なくとも3ケ月、通常的には少なくとも6ケ月、より通常的には少なくとも9ケ月にわたって耐湿性のものであり、またそのような製品は、本明細書において、中程度耐湿性のものとも呼ばれる。
【0162】
発明の1つのより好ましい更なる他の実施形態が含む製品は、本明細書において定義されるとおりの、0.5〜0.6の水分活性(A)(本明細書において高Aともまた表されるもの)で、任意に少なくとも3ケ月、通常的には少なくとも6ケ月、より通常的には少なくとも9ケ月にわたって耐湿性のものであり、またそのような製品は、本明細書において、高耐湿性のものとも呼ばれる。
【0163】
有利にも、本発明の別の態様において、上記の耐湿性についての試験を1つの手法として使用し、本発明の製品(本明細書において記載される原材料を含むもの)のレシピを、選択、予測、及び/又は手入れし、特に望ましい水準の耐湿性(例えば、耐湿性、中程度耐湿性、又は高耐湿性)のものにすることができ、それは任意に特定された期間(例えば、3、6、又は9ケ月)にわたってである。したがって、例えば高耐湿性が、特定のウエハース製品に必要ではない場合、これにより、水及び/又はフラワー量の選定が、ウエハースを製造するバッターのレシピ(これはWに影響を及ぼす。)において使用することができるものよりも大きな柔軟性のあるものでよくなり、一方、なお、最低限度必要な水準の所望の耐湿性のものとなる。
【0164】
標準条件
本明細書において使用される場合、文脈による別段の指示のない限り、標準条件は、大気圧、環境温度(22℃±2℃)、及び任意に50%±5%の相対湿度(RH)を意味する。別段の指示のない限り、本明細書における、全ての試験は、本明細書において定義される標準条件下で実施される。しかし、水分活性について試験する場合、試料は調湿され、それにより、試料の実際のAは、試験環境のRHに相当するものとなり(すなわち、Aが0.5の試料は、RHが50%で試験されるものとなる。)、そこで、これらの試験のRHは様々なものとなる。
【0165】
なお、本発明の実施形態の1つの態様の文脈で記載されている実施形態及び特徴は、本発明の他の態様にも当てはまることに留意されたい。実施形態が特定の実施例と関連して本明細書中に開示されてきたが、本発明がこれらの実施形態に限定されるものではないことは認識されよう。様々な修正が、当業者には明らかなものとなり得、及び本発明の実施及びから取得され、並びにそのような変形例は、本発明の広範な範囲内のものであると意図されている。使用される材料及び化学的詳細が、本発明により開示及び教示された方法及び組成物から逸脱することなく、明細書とは若干異なったものにされる又は修正される場合があることは理解されよう。
【0166】
別々の実施形態の文脈において明確性のために記載されている本発明のある種の特徴を、単一の実施形態に組み合わせて用意することもできることは理解されよう。反対に、簡潔性のため単一の実施形態の文脈において記載されている本発明の様々な特徴を別々に用意してもよく、又はいずれの好適なサブ・コンビネーションで用意してもよい。
【0167】
本発明の更なる態様及びその好ましい特徴は、本特許請求の範囲において請求項の中に提示されている。
本明細書における先行技術文献のいかなる参照も、かかる先行技術が周知であるか、又は当分野で共通の一般的な認識の一部を形成していると認めるものとはみなされるべきではない。
【0168】
本発明を、ここに以下の図及び非限定的な実施例の参照により詳細に説明するが、これは例示のみの目的ものである。
【図面の簡単な説明】
【0169】

本発明を、本明細書において、以下の非限定的な図によって例示する。
図1】本明細書において記載されるとおりの異なるレシピから製造された様々な異なるウエハースの、縦軸の噛み砕き仕事量(本明細書において記載されるとおりのWで測定)の、横軸の水分活性(本明細書において記載されるとおり測定されたA)に対するプロット図である(説明は、実施例中の表5に提示)。
図2】本発明の様々な実施例を製造するため使用された、マルトデキストリン及びグルコースシロップの分子量分布のプロット図である。
図3】本明細書において記載されるとおりの異なるレシピから製造された様々な異なるウエハースの、縦軸の知覚された板紙のような舌触り(本明細書において記載されるとおりの官能試験モニターからのもの)の、横軸の水分活性(本明細書において記載されるとおり測定されたA)に対するプロット図である(説明は、図1についてものもの、及び実施例中の表5に提示されたものと同じである。)。
図4】官能試験モニターによって0〜10に格付けされた板紙感(縦軸)の、N.mmで測定された噛み砕き仕事量(W)(横軸)に対するプロット図であり、これらの2つのパラメータの間に強い相関関係があることを示している。
【0170】
実施例
以下の、基本となる参照レシピ(比較例A)を使用し、ウエハースの、本発明の実施例及び比較例を製造できる。
【0171】
【表1】
【0172】
フラワーは、ウエハースを製造するのに好適なものとして当業者に公知の、軟質フラワーである。
【0173】
同様に、以下の、膨張押出シリアル製品のための基本となる参照レシピ(比較例B)を使用し、押出シリアル製品の、本発明の実施例及び比較例が製造できる。
【0174】
【表2】
【0175】
上記の基本となる参照の比較例A又は比較例Bに、「n」部の様々な糖原材料を、本明細書において言及した量で加える(ここで、「n」は、原材料の、100部のフラワーに対する重量部)。様々な糖原材料を使用し、本発明の実施例のウエハース及び比較例のウエハースを製造する。これらの糖原材料は、比較例A又は比較例Bに加えられ実施例のレシピにより本発明のウエハース又はシリアル製品が製造される場合、「Ix」と付番され、又はレシピにより更に比較例が製造される場合、「Cx」と付番される。
【0176】
糖原材料
以下の原材料を本明細書において使用し、比較例を製造することができる。
【0177】
C1(マルトデキストリン)は、6のDEを有する85重量部のマルトデキストリン、及び46のDEを有する15重量部のマルトデキストリンのそれぞれの重量比率の、マルトデキストリンの混合物を表す。
【0178】
C2(本明細書においてまた、参照により「MD12〜16DEパウダー」とも呼ばれる。)は、Cargill Powderから商品名「C Dry MD01910」で市販されている、12〜16のDEを有するマルトデキストリンを表す。
【0179】
以下の原材料を使用し、本発明の実施例を製造することができる。
グルコース原材料(I1〜I12)
I1(本明細書においてまた、参照により「高DP4(50%)液状」とも呼ばれる。)は、100重量部のシロップ当たり50乾燥重量部のグルコースを含み、そのグルコースは4のDP及び31のDEを有するものである、グルコースシロップを表し、Tereos Syralから商品名「Mylose351」で市販されている。
I2(本明細書においてまた、参照により「高DP4(50%)パウダー」とも呼ばれる。)は、I1で提示した同じグルコース原材料の乾燥形態のものを表し、Tereos Syralから商品名「「Glucodry314」」で市販されている。
I3(本明細書においてまた、参照により「GS20〜23DEパウダー」とも呼ばれる。)は、20〜23のDEを有するグルコースシロップを表し、Roquetteから商品名「Glucidex21」で市販されている。
I4(本明細書においてまた、参照により「GS27〜33DEパウダー」とも呼ばれる。)は、27〜33のDEを有するグルコースシロップを表し、Roquetteから商品名「Glucidex29」で市販されている。
I5(本明細書においてまた、参照により「GS38〜42DEパウダー」とも呼ばれる。)は、38〜42のDEを有するグルコースシロップを表し、Roquetteから商品名「Glucidex40」で市販されている。
I6(本明細書においてまた、参照により「GS38〜42DE液状」とも呼ばれる。)は、38〜42のDEを有するグルコースシロップを表し、Tereos Syralから商品名「Mylose66N」で市販されている。
I7(本明細書においてまた、参照により「GS42〜52DE高マルトース低デキストロース液状」とも呼ばれる。)は、42〜52のDEを有するグルコースシロップを表し、Donauchem polska Cargillから商品名「CSweet M01261」で市販されている。
I8(本明細書においてまた、参照により「GS58〜63DE液状」とも呼ばれる。)は、58〜63のDEを有するグルコースシロップを表し、Tereos Syralから商品名「Glucoplus361」で市販されている。
I9(本明細書においてまた、参照により「GS71.5〜75.5DE液状」とも呼ばれる。)は、74のDEを有するグルコースシロップを表し、Tereos Syralから商品名「Glucoplus86A」で市販されている。
I10(本明細書においてまた、参照により「GS78〜84DE液状」とも呼ばれる。)は、81のDEを有する91.5重量部のグルコースシロップの、9.5重量部のフルクトースとのブレンドを表し、Tereos Syralから商品名「Glucosweet761」で市販されている。
I11(本明細書においてまた、参照により「DE31」とも呼ばれる。)は、31のDEを有するグルコースシロップを表し、Tereos Syralから商品名「Mylose351」で市販されている。
I12(本明細書においてまた、参照により「DE80」とも呼ばれる。)は、80のDEを有するグルコースシロップを表し、Tereos Syralから商品名「Glucosweet711」で市販されている。
I1及びI2のグルコース混合物の有するモノ及びジサッカライド含有量は、対応するグルコースシロップの同様の平均DE値がI4のものなどと比べ有意に低い。
【0180】
分析証明書及び供給元による原材料仕様に基づいて、下記の表3に、これらの原材料のうちのいくつかの組成を提示する。
【0181】
【表3】
【0182】
【表4】
【0183】
グルコース原材料に関し、吸湿性及び粘度の限界に起因し、各々の形態で利用可能な値の範囲の、いくつかの制約がある。一般的に、DP値が大変高い原材料は液状として利用可能である一方、一般的に、DP値が大変低い原材料はパウダーの形態で利用可能である。
【0184】
実施例1〜12(ウエハース)に加え比較例A〜D
本明細書において別段の指示のない限り、比較例Aのレシピのものの中に上記原材料を混合することで、ウエハースのバッターを製造することによって、実施例1〜12(及び比較例A〜D)を製造した。
【0185】
130℃まで加熱した2枚の金属プレートに挟んで、オーブン(プレートが25枚のウエハース用オーブン、Hebenstreit(Moerfelded、Germany))の中で2分間バッターを焼成することによって、ウエハースを製造した。短時間の冷却後、調湿室(climatic chamber)の中で15日間、所望の水分活性(A)に試料を与湿した後、機械的試験を行った。試料の正しい与湿を確かめるため、与湿後、各々の試料のAを測定した。
【0186】
【表5】
【0187】
【表6】
【0188】
更なる実施例及び試験(実施例13並びに比較例E及び比較例F)
本発明の別段の同等の実施例(原材料I6、42のDEを有するグルコースシロップ)により、それぞれ、100重量部のフラワー当たり、I6の9重量部、12.5重量部、及び15重量部(他の原材料の割合は比較例Aにおけるものと同じとする。)としたものが、製造できる。9部のグルコースシロップを有する実施例により、15部のグルコースシロップを有するものと同じ効果が、本明細書において記述され提示される本発明の有利な点の全てのうちいくつかで、もたらされることを、示すことができる。
【0189】
また一般的に、本発明のウエハースの、30℃/RHが35までの熟成は、それらの板紙感に有意には影響を及ぼさないことが分かった。
【0190】
図1から知り得るとおり、80のDEを有するグルコースシロップ(I12)を含む実施例1などの、ウエハースが示す水分忍容性の利点は、本発明の他のウエハースよりも低い。30℃/RHが50、及び30℃/RHが60の熟成条件下、比較例のレシピにより製造されたウエハースの板紙感は、本発明のウエハースよりも高いものであり、好ましくは本発明のウエハースのうち、80未満のDEを有する糖原材料を有するものが製造される。
【0191】
30名のモニターにより、Aが0.55〜0.56のウエハースの板紙感は許容不可能なものであること、一方、Aが0.48以下で試験したウエハースの板紙感は許容可能なものであること、が示された。ウエハースの板紙感は、活性が約0.55より高いウエハースに相当する約6よりも高いと、許容不可能となる。
【0192】
更なるウエハースの実施例を、本明細書において記載されるとおり、製造し、試験結果を下記に提示する。
【0193】
【表7】
【0194】
選ばれたレシピを、味わいのコンセンサス試験によって採点し、1(パリパリ感最高)〜12(パリパリ感最低)まで格付けした。また、結果の解釈の一助とするため、表6にW及びAの値を示す。60%のRHで、グルコースシロップのみを含有する本発明のウエハース(実施例13)の示す噛み砕き仕事量は、マルトデキストリンを含有するウエハース(比較例E)よりも高く、イヌリンを含有するウエハース(比較例F)は、舌触りに、負の影響(Wがより高く、及び噛み砕き仕事量がより低くなる影響)を及ぼした。
【0195】
実施例14〜26(押出シリアル製品)
本発明の押出シリアル製品の実施例は、本明細書におけるウエハースの実施例と類似して製造でき、例えば、実施例1〜13で提示されたウエハースのレシピの修正と類似して、比較例Bのレシピを修正し、従来からの要領で押出可能なそれぞれの組成物をそれぞれ成形することによって製造でき、押出シリアル製品の実施例14〜26のそれぞれが製造され、それらが示すことのできる特性は、本明細書において記載される特性と同様に有利なものである。
【0196】
実施例27〜29(ウエハース製品)
実施例27、28、及び29は、本発明の更なるウエハースのレシピである。
実施例27
【0197】
【表8】

実施例28
【0198】
【表9】

実施例29
【0199】
【表10】
【0200】
本発明の実施例(実施例30〜59)は、下記の表10〜12のレシピにしたがって製造できるものであり、表中、「重量部(wt.pt.)」は原材料の重量部を表し、「糖分(total sugar又はtot.sgr)」は、成分(i)、(ii)、及び(iii)(存在する場合)の全体の意味であり、「重量%(wt% sgr)」は、100%である「糖分」の%としての、成分の重量%を表す。
【0201】
バッターの実施例30〜39
本発明の焼成ウエハースの製造に好適なバッターは、表10に提示された以下のレシピから、水とこれらの原材料との混合量をフラワーの130重量部として、従来からの要領で製造できるものである。
【0202】
【表11】
【0203】
ウエハース製品の実施例40〜49
本発明の焼成ウエハースは、表11に提示された以下のレシピから、従来からの要領で製造できるものである。
【0204】
【表12】
【0205】
押出シリアル製品の実施例50〜59
本発明の押出シリアル製品は、表12に提示された以下のレシピから、従来からの要領で製造できるものである。
【0206】
【表13】
図1
図2
図3
図4