(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
摩擦材の評価項目として、摩擦材を押しつぶした後に復元するまでの量又は時間、つまり摩擦材の復元量又は復元時間を評価したいという要請がある。しかしながら、摩擦材は非常に薄いことから、必然的に押しつぶされたときの変位量も非常に小さくなり、その評価には高い精度が要求されることになる。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたもので、クラッチプレートに設けられる摩擦材の復元量又は復元時間を精度良く測定可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様の測定装置は、クラッチプレートの摩擦材の
復元時の変位を測定する測定装置であって、測定プレートと、前記測定プレートを介して前記摩擦材よりも一方の側に配置される接触子を有する変位計と、前記測定プレートを介して前記摩擦材に圧力を付与する押し治具と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
ここで、接触子と摩擦材とを直接接触させた場合は、接触子の接触箇所のみが復元時の計測に寄与することになる。
【0008】
上記態様によれば、接触子と摩擦材との間に測定プレートを挟むことにより、復元時の計測に寄与する摩擦材の面積を増やすことができるので、変位検出精度が高くなる。また、上記態様によれば、摩擦材に圧力を付与するときも測定プレートを介して間接的に摩擦材を押すため、摩擦材を均一に押しつぶすことができる。結果、復元時の復元力を均一化することができる。
【0009】
このため、上記態様によれば、摩擦材の復元時の変位を精度良く検出することが可能になる。結果、クラッチプレートに設けられる摩擦材の復元量又は復元時間を精度良く測定することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0012】
図1、
図2は測定装置1の概略構成図である。
図3、
図4及び
図5は、受け治具3、測定プレート4及び押し治具5の平面図である。
図1では、挿入孔5bを含む断面で測定装置1を示す。
図2では、位置決め孔3aを含む断面で測定装置1を示す。
図1、
図2では、測定準備完了状態で測定装置1を示す。
【0013】
測定装置1は、クラッチプレートCLの摩擦材FMの変位を測定する測定装置であり、ベース2と、受け治具3と、測定プレート4と、押し治具5と、位置決めピン6と、変位計7と、入力治具8と、押し力付加機構9とを有して構成される。
【0014】
クラッチプレートCLは、リング状の形状を有する。クラッチプレートCLの表面には、摩擦材FMが設けられている。摩擦材FMは非常に薄く、クラッチプレートCL、ベース2、受け治具3、測定プレート4、押し治具5等と比較して柔軟となっている。クラッチプレートCLは、摩擦材FMが一の側に配置されるように測定装置1にセットされる。一方の側は、圧力付与方向において圧力を付与する側、つまり押し力付加機構9が配置される側であり、本実施形態では上下方向における上側とされる。このため、以下では一方の側を上側と称す。
【0015】
摩擦材FMは、次のように測定装置1にセットされる。すなわち、まずベース2上に受け治具3を配置し、受け治具3上にクラッチプレートCL、測定プレート4、押し治具5をこの順に積み重ねる。そして、位置決めピン6により受け治具3、クラッチプレートCL、測定プレート4及び押し治具5の位置決めを行う。
【0016】
これにより、クラッチプレートCLに設けられた状態で、摩擦材FMが測定装置1にセットされる。つまり、摩擦材FMのセットが完了する。摩擦材FMのセットが完了した状態は、このときの受け治具3、クラッチプレートCL、測定プレート4、押し治具5の配置を維持しつつ位置決めピン6を取り除いた状態、従って位置決めピン6を有しない場合にこれらの構成がこのときの配置とされた状態を含む。
【0017】
さらにその後、変位計7がセットされると測定装置1は測定準備完了状態になる。測定準備完了状態は、後述する押し力付加機構9のセットをさらに含むと把握されてもよい。
【0018】
ベース2は定盤により構成され、測定装置1の設備下部を構成する。
【0019】
受け治具3は、摩擦材FMを支持するための治具である。受け治具3の材質は例えば、炭素鋼とされる。受け治具3は、摩擦材FMのセットが完了した状態で、他方の側である下側から摩擦材FMに当接する。
【0020】
受け治具3は、リング状の形状を有する。受け治具3の外径は、クラッチプレートCLの外径よりも大きく設定されている。受け治具3は、位置決め孔3aを有する。位置決め孔3aは、位置決めピン6による位置決めで用いられる孔であり、位置決めピン6の外径と同等の内径を有する。位置決め孔3aは受け治具3を貫通する。
【0021】
位置決め孔3aは複数設けられ、本実施形態では2つ設けられる。複数の位置決め孔3aは、摩擦材FMのセットが完了した状態で、位置決めピン6がクラッチプレートCLの内周壁と接触する位置に設けられる。複数の位置決め孔3aは、均等に配置することができる。
【0022】
測定プレート4は、摩擦材FMの変位測定に用いられるプレートである。測定プレート4の材質は例えば、炭素鋼とされる。測定プレート4は、摩擦材FMのセットが完了した状態で、摩擦材FMに上側から当接する。また、測定プレート4は、摩擦材FMのセットが完了した状態で上側から見た場合に、摩擦材FMとオーバーラップする。
【0023】
測定プレート4は、リング状の形状を有する。測定プレート4の外径は、クラッチプレートCLの外径よりも大きく設定されている。測定プレート4の内径は、クラッチプレートCLの内径よりも小さく設定されている。測定プレート4は、位置決め孔4aを有する。位置決め孔4aは、位置決めピン6による位置決めで用いられる孔であり、位置決め孔3aと同様に設けられる。
【0024】
押し治具5は、摩擦材FMに圧力を付与するための治具である。押し治具5の材質は例えば、炭素鋼とされる。押し治具5は、摩擦材FMのセットが完了した状態で、測定プレート4に上側から当接する。また、押し治具5は、摩擦材FMのセットが完了した状態で上側から見たときに、摩擦材FMとオーバーラップする。押し治具5は、測定プレート4を介して摩擦材FMに圧力を付与する。
【0025】
押し治具5は、円盤状の形状を有する。押し治具5の外径は、測定プレート4の外径よりも大きく設定されている。押し治具5の中央部はボス状に形成されており、当該中央部には入力治具8を取り付けるためのボルト穴が形成されている。
【0026】
押し治具5は、位置決め孔5aと挿入孔5bとを有する。位置決め孔5aは、位置決めピン6による位置決めで用いられる孔であり、位置決め孔3aと同様に設けられる。挿入孔5bは、変位計7を挿入するための孔であり、押し治具5を貫通する。
【0027】
挿入孔5bは複数設けられ、後述する接触子7aと同数設けられる。挿入孔5bは、本実施形態では4つ設けられる。複数の挿入孔5bそれぞれは、摩擦材FMのセットが完了した状態で上側から見た場合に、押し治具5のうち摩擦材FMとオーバーラップする領域の一部に形成されている。複数の挿入孔5bは、均等に配置することができる。
【0028】
位置決めピン6は、受け治具3、摩擦材FM、測定プレート4及び押し治具5の位置決めを行う。位置決めピン6は、摩擦材FMのセットが完了した状態で、位置決め孔3a、位置決め孔4a及び位置決め孔5aに挿入される。位置決めピン6は、この状態でクラッチプレートCLの内周壁に接触することで、上側から見た場合に接触子7aとオーバーラップするように摩擦材FMを位置決めする。
【0029】
これにより、摩擦材FMが受け治具3、測定プレート4及び押し治具5に対し偏った位置に配置されることが防止されるとともに、接触子7aに対し偏った位置に配置されることが防止される。結果、摩擦材FMがセンタリングされる。位置決めピン6はセンタリングピンを構成する。
【0030】
変位計7は、測定対象である摩擦材FMの変位を計測する計測機器であり、接触子7aと本体7bとを有する。接触子7aは、測定準備完了状態で先端が測定プレート4に接触するよう挿入孔5bに挿入される。このため、接触子7aは、測定プレート4を介して摩擦材FMよりも上側、つまり測定プレート4を間に挟んで摩擦材FMよりも上側に配置され、摩擦材FMに直接接触されない。
【0031】
接触子7aの先端部は、圧力付与により生じる摩擦材FMの変位に応じて測定プレート4が移動することにより変位する。接触子7aの変位は当該先端部の変位であり、変位計7は、接触子7aの変位を計測することにより、測定プレート4を介して間接的に摩擦材FMの変位を計測する。接触子7aは複数設けられ、本実施形態では4つ設けられる。
【0032】
本体7bは検知部であり、電子機器で構成される。本体7bには接触子7aが電気的に接続されており、本体7bは接触子7aの変位を電気的に検知して変位量及び変位時間を取得するように構成されている。変位量及び変位時間は、接触子7aの変位量及び変位時間として取得されると同時に、摩擦材FMの変位量及び変位時間として取得される。
【0033】
入力治具8は、摩擦材FMに付与する圧力が入力される治具である。入力治具8は、ボルト等で構成され、押し治具5に取り付けられる。入力治具8には押し力付加機構9から圧力が入力される。入力治具8は、入力された圧力を押し治具5を介して測定プレート4さらには摩擦材FMに付与する。
【0034】
押し力付加機構9は、クラッチプレートCL、測定プレート4又は押し治具5の中央部に向かって押し力を加える機構であり、測定装置1の設備上部を構成する。押し力付加機構9はボルト9aを有し、ボルト9aを入力治具8の受圧端部である上側端部に当接させ、この状態からボルト9aをさらに締め込むことにより圧力付与が行われるように構成されている。押し力付加機構9は、ベース2と一体とされてもよく、ベース2と別体とされ測定を行う際にセットされてもよい。
【0035】
次に、本実施形態の主な作用効果について説明する。
【0036】
測定装置1は、クラッチプレートCLの摩擦材FMの変位を測定する測定装置であって、測定プレート4と、測定プレート4を介して摩擦材FMよりも上側に配置される接触子7aを有する変位計7と、測定プレート4を介して摩擦材FMに圧力を付与する押し治具5と、を有する。
【0037】
このような構成によれば、接触子7aと摩擦材FMとの間に測定プレート4を挟むことにより、復元時の計測に寄与する摩擦材FMの面積を増やすことができるので、変位検出精度が高くなる。また、このような構成によれば、摩擦材FMに圧力を付与するときも測定プレート4を介して間接的に摩擦材FMを押すため、摩擦材FMを均一に押しつぶすことができる。結果、復元時の復元力を均一化することができる。
【0038】
このため、このような構成によれば、復元時の摩擦材FMの変位を精度良く検出することが可能になる。結果、クラッチプレートCLに設けられる摩擦材FMの復元量又は復元時間を精度良く測定することが可能になる(請求項1に対応する効果)。
【0039】
ここで、変位計7をセットするにあたっては例えば、測定プレート4の外径を押し治具5の外径よりも大きく設定し、押し治具5よりも径方向外側の位置に接触子7aを配置することも考えられる。
【0040】
しかしながら、摩擦材FMは、復元量が非常に小さいため、接触子7aが摩擦材FMから離れた位置にあると検知精度が低くなる。特に、測定プレート4の外周側端部付近などは測定プレート4が反り返るなどして検知精度に影響が出やすい。
【0041】
このため、接触子7aは、摩擦材FMの直上位置に配置されることが好ましいが、その一方でこの位置には測定プレート4を均一に押すための押し治具5が存在する。
【0042】
本実施形態では、押し治具5を上側から見たときに、押し治具5は摩擦材FMとオーバーラップしており、押し治具5のうち摩擦材FMとオーバーラップする領域の一部には、接触子7aが挿入される挿入孔5bが形成されている。
【0043】
このような構成によれば、押し治具5により均一に押すことと、精度よく変位を検出することとを両立させることができる(請求項2に対応する効果)。
【0044】
本実施形態では、接触子7aは複数設けられる。このような構成によれば、複数の接触子7aに応じた各位置の検出結果を得ることができ、且つ各位置の検出結果の平均値を算出することもできるので、検出結果の検討をより詳細に行うことが可能になる(請求項3に対応する効果)。
【0045】
ここで、摩擦材FMの復元量や復元時間については、例えばノギス等の手動式のメジャーやストップウォッチを利用して目視的に計測を行うことも不可能とはいえないが、この場合は計測精度が低下する。特に時間に関しては、復元が完了した際に停止することなくそのまま経過してしまうので、計測精度が低下しやすい。
【0046】
本実施形態では、変位計7は、接触子7aの変位を電気的に検知して変位量及び変位時間を取得する検知部としての本体7bを有する。このような構成によれば、接触子7aの変位を電気的に検知して変位量及び変位時間を求めるので、変位量及び変位時間を精度良く検出することができる(請求項4に対応する効果)。
【0047】
測定装置1は、クラッチプレートCLの内周壁に接触することで接触子7aとオーバーラップするように摩擦材FMを位置決めする位置決めピン6をさらに有する。このような構成よれば、摩擦材FMを確実に位置決めすることにより、測定精度向上を図ることができる(請求項5に対応する効果)。
【0048】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。