【文献】
International Journal of Nanomedicine,2015年,Vol.10,p.3581-3591
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複合システムは、キャリアとしてカルボキシ基を持つナノ炭素を採用し、鉄塩における鉄(II)イオン及び/又は鉄(III)イオンとからなる複合構造である複合システムであって、前記複合システムの粒子径は50nm〜500nmの間にあり、好ましくは90nm〜300nmであり、より好ましくは100nm〜250nmであり、さらに好ましくは120〜180nmであり、前記複合システムには、クエン酸ナトリウムがさらに含まれ、前記クエン酸ナトリウムと鉄塩における鉄元素との質量比は0.1〜3であり、好ましくは、クエン酸ナトリウムと鉄塩における鉄元素との質量比は1〜2であり、固形腫瘍治療薬物の調製、好ましくは、肝臓癌、肺癌、胃癌、結腸癌、乳癌、子宮頸癌、甲状腺癌、又は卵巣癌治療薬物の調製、より好ましくは、乳癌、子宮頸癌、及び肝臓癌治療薬物の調製に使用されることを特徴とする、ナノ炭素−鉄複合システム。
前記鉄塩において、鉄(II)イオン及び/又は鉄(III)イオンの濃度は1.36〜13.6mg/mLであり、好ましくは、鉄(II)イオン及び/又は鉄(III)イオンの濃度は1.5〜8.33mg/mLであり、より好ましくは2.73〜5.46mg/mLであることを特徴とする、請求項1に記載の複合システム。
前記鉄塩は、硫酸鉄(II)、硫酸鉄(III)、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、グルコン酸鉄(II)、鉄サッカラート、クエン酸鉄(III)アンモニウム、コハク酸鉄(II)、ソルビトール鉄、フマル酸鉄(II)から選択されるいずれか1種又は複数種であり、好ましくは、前記鉄塩は硫酸鉄(II)、硫酸鉄(III)、塩化鉄(II)、又は塩化鉄(III)であり、より好ましくは、前記鉄塩は硫酸鉄(II)であることを特徴とする、請求項2に記載の複合システム。
前記ナノ炭素と鉄塩における鉄元素との質量比は40:1〜3:1であり、好ましくは30:1〜5:1であり、より好ましくは18:1〜6:1であることを特徴とする、請求項1〜請求項2、請求項4のいずれか1項に記載の複合システム。
前記ナノ炭素において、炭素の含有量は86〜98%、水素の含有量は0.5〜2.5%、酸素の含有量は1.0〜10.0%であり、好ましくは、炭素の含有量は94〜97%、水素の含有量は0.7〜1.0%、酸素の含有量は2.0〜4.5%であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の複合システム。
前記ナノ炭素は、カーボンナノ粒子、カーボンナノチューブ、カーボン量子ドット、グラフェン、フラーレン、カーボンナノロッド、カーボンナノファイバーのうちの少なくとも1種又は複数種を含み、好ましくは、前記ナノ炭素はカーボンナノ粒子であり、より好ましくは、前記ナノ炭素はナノカーボンブラックC40であることを特徴とする、請求項6に記載の複合システム。
前記ナノ炭素におけるカルボキシ基の含有量は0.01mmol/g〜2.0mmol/gであり、好ましくは0.01mmol/g〜1.0mmol/gであり、より好ましくは0.03mmol/g〜0.7mmol/gであることを特徴とする、請求項7に記載の複合システム。
前記ナノ炭素と鉄塩とが静電作用、錯化作用、及びファンデルワールス力などの複数種の相互作用によって結合されてなる複合構造であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の複合システム。
前記複合システムには、懸濁剤がさらに含まれ、前記懸濁剤は、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、デキストランから選択されるいずれか1種又は複数種であり、好ましくはポリビニルピロリドンK30であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の複合システム。
【背景技術】
【0002】
現在、癌は人類の命を脅かす一番危険な疾患の1つであり、世界中で新たに増加する癌患者は毎年800万人に達し、中国だけで年間300万人の患者が発生する。固形腫瘍の場合、従来の主な治療手段は、手術による癌化組織の切除や、化学療法による癌細胞の消滅、又はその両方の組み合わせによる処置である。一般的に、手術による切除や化学療法は、いずれも比較的効果的な癌治療手段である。しかし、今まで、癌の治療において、手術で切除した後、腫瘍細胞が他の部位へ転移して再発した場合、化学療法では、化学療法の薬物が正常細胞と腫瘍細胞とを無差別に攻撃して、深刻な毒性・副作用を引き起こし、さらに、腫瘍細胞が化学療法の薬物に対して耐性(Multidrug resistance、MDR)を有するようになるという課題に直面している。
【0003】
PD−1、CAR−Tなどに代表される免疫細胞療法は、上記のジレンマを解決する方法の1つであり、世界中で積極的に臨床研究が進められており、特定の腫瘍を克服するための究極の解決策になることが期待されている。しかし、免疫細胞療法は、その遺伝子レベルでの精度のゆえ、今のところ、特定の遺伝子に対して驚くべき臨床治療効果がある一方、別の遺伝子に対しては、全く無効である。より汎用的な腫瘍治療法については、全世界の科学者たちによってより多くの研究や模索を行う必要がある。
【0004】
免疫細胞療法の他、2012年にDixonらは、低分子弾性タンパク質(erastin)の、発癌遺伝子であるRASの突然変異を有する腫瘍細胞を殺す作用機序を研究した際、新しい鉄依存的なアポトーシスを見出した。RASは最も一般的な癌遺伝子であり、それがコードするRASタンパク質は低分子量Gタンパク質であり、その活性はGTPとの結合に依存しており、突然変異したRASタンパク質がGTPを加水分解する活性を失うことによって、RAS経路の下流の関連遺伝子が活性化され、細胞の癌化が引き起こされる。RASの突然変異した腫瘍細胞において、トランスフェリン受容体1を上方制御するとともに、フェリチンを下方制御することで、細胞内の鉄含有量を増加させることができる。この低分子でRASが発現されている細胞を処置することで、細胞は、「酸化的で、非アポトーシス的な」メカニズムで死亡する。Dixonらは、大量の研究に基づいて、この細胞死の形態がアポトーシスや、ネクローシス、オートファジーと異なる新規な形態であることを認識し、この鉄依存的な細胞死の形態を「フェロトーシス(Ferroptosis)」と名付けた(参考文献1)。
【0005】
さらなる研究では、細胞表面トランスフェリン受容体と細胞内グルタミン刺激代謝経路は、細胞死の過程において決定的な役割を果たしていることが分かった。グルタミンの阻害は、フェロトーシスにおいて不可欠な部分であり、虚血・再灌流による心臓損傷を軽減することができ、これらのことから、フェロトーシスは関連疾患を治療するために有望な方法であることが示唆されている(参考文献2)。
【0006】
上記の研究に基づいて、「フェロトーシス」の作用機序が確認された後、2016年に、あるアメリカの腫瘍研究所は、メラノーマを標的とするポリペプチドによって機能化処理され、飢餓状態の癌細胞と担癌マウスにおいて「フェロトーシス」と呼ばれるプログラム細胞死を誘導することができる、超微細(直径10nm未満)のポリエチレングリコール被覆シリコンナノ粒子を採用した。さらなる研究において、脂質活性酸素種(ROS)の検出及び鉄キレート剤(DFO)を利用した実験によって、シリコンナノ粒子はフェロトーシスによって、アポトーシスを誘導することが証明された(参考文献3)。
【0007】
さらに、2016年にNatureの関連誌で発表された総説論文「Ferroptosis: process and function」では、2012年にフェロトーシスが提出された後のフェロトーシスに関する研究結論を包括的にレビューしてまとめ、フェロトーシスの形態学的特徴は、ミトコンドリアが小さくなり、ミトコンドリア膜密度が大きくなり、ミトコンドリアクリステが減少又は消失し、ミトコンドリア外膜が破裂することであることを指摘した。癌細胞や特定の正常細胞(例えば、尿細管細胞、ニューロン、線維芽細胞及びT細胞)において、フェロトーシスは、実験化合物(例えば、erastin、Ras選択的致死性低分子3及びブチオニンスルホキシイミン)又は臨床薬物(例えば、スルファサラジン、ソラフェニブ及びアーテスネート)によって誘導されうる。ミトコンドリア電位依存性アニオンチャネル及びマイトジェン活性化タンパク質キナーゼの活性化、小胞体ストレスの上方制御及びシステイン/グルタミン酸アンチポータータンパク質の阻害は、フェロトーシスの誘導に関与する。この過程は、脂質過酸化生成物や鉄代謝由来の致死活性酸素種(ROS)の蓄積を特徴とし、鉄キレート剤(例えば、デフェロキサミン及びデフェロキサミンメシル酸塩)や脂質過酸化防止剤(例えば、ferrostatin、liproxstatin及びzileuton)によって阻害され得る。
【0008】
フェロトーシスにおいてアポトーシスを直接引き起こすROSは、その発生について、細胞内の鉄濃度の増加によって、細胞内Fenton(フェントン)反応の進行が促進されることで、酸化性の極めて強いROSが発生し、細胞内に蓄積され、アポトーシスに繋がると考えるのが現時点で比較的合理的な解釈である(参考文献5)。
【0009】
今までの研究によると、鉄は人体において最も含有量の多い微量元素であり、人体の各臓器や組織に広く分布しており、DNAの合成、電子伝達、酸素輸送などの過程において重要な役割を果たしていることが分かっている。鉄、及び脳損傷や神経変性疾患が発生する時の細胞死に関与する現象はずっと前から注目されていた。パーキンソン病及びアルツハイマー病の患者の脳内において、いずれも鉄沈着が認められており、鉄キレート剤は、6−ヒドロキシドーパミン(6−OHDA)、1−メチル−4−フェニル−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン(MPP+)又はβ−アミロイド(Aβ)による神経毒性モデルに対して、保護作用を有する。フェロトーシスに関する研究の進行につれて、フェロトーシスは各種神経変性疾患に存在するか否かが確認され、薬物により神経細胞のフェロトーシスを調節することによって、このような神経系疾患の発症や発展を制御することができる。各種誘導剤によって、フェロトーシスが細胞に作用してアポトーシスを引き起こすように誘導することは、新しい腫瘍治療の概念であり得る。
【0010】
さらに、細胞鉄は、マクロファージの機能的選択も誘導しうることが研究で分かった。マクロファージは、かなりの可塑性及び多能性を有する細胞群であり、インビトロ・インビボの異なる微小環境の影響下で、主に、抗炎症性亜種のM2マクロファージから炎症誘発性亜種のM1マクロファージへの転換という顕著な機能的差異を示す。ナノ酸化鉄とマクロファージとを共培養した際、過酸化水素が11倍、ヒドロキシラジカルが16倍増加したことが分かっており、ナノ酸化鉄がマクロファージを介してROSの発生を増加させ、癌細胞の細胞毒性を増加させたことが示唆された。ナノ酸化鉄がM1マクロファージを誘導するか否かをさらに確認するために、共培養物からマクロファージを単離したところ、炎症誘発性M1型反応に関連するmRNAが増加し、M1関連のTNFα及びCD86マーカーが顕著に上方制御され、M2関連のCD206及びIL10マーカーが顕著に低下したことが分かった。インビボでは、ナノ酸化鉄は、マウスの皮下腺癌の増殖を有意に阻害した。さらに、腫瘍細胞を静脈注射する前にナノ酸化鉄を静脈注射すると、肝転移が予防された。蛍光活性化細胞選別(FACS)及び組織病理学の研究から、観察された腫瘍増殖阻害は、腫瘍組織における炎症誘発性M1マクロファージの増加を伴ったことが分かった(参考文献6)。
【0011】
鉄によるマクロファージの機能的選択の調節に関する研究において、超常磁性酸化鉄ナノ粒子(SPION)における鉄がTHP1細胞由来M2マクロファージから高いCD86+、腫瘍壊死因子(TNF−α+)のマクロファージサブタイプへの表現型転移を誘導することが分かった。M2マクロファージのこのような表現型転移は、M1マクロファージの特徴的標識である、細胞内のフェリチン及びカテプシンLのレベルの上方制御を伴う(参考文献7)。
【0012】
従来の鉄に関連する医薬品のうち、注射によって非経口的に吸収され、重度の鉄欠乏や、鉄欠乏性貧血、腸の鉄吸収不全を治療する、Venofer(登録商標)などの鉄サッカラート、Ferrlecitなどのグルコン酸ナトリウム鉄(III)錯体、デキストラン鉄、並びに新しいFerumoxytol(ナノ酸化鉄)などの市販が承認されており、いずれも鉄欠乏の患者の体内に微量元素の鉄を補うことで、貧血の問題を解決するためのものである。これらの製品は、血液へ直接静脈注射され、人体の血液における鉄元素の含有量を調節して、鉄欠乏の問題を解決するものである。しかしながら、細胞内トランスフェリンの存在により、このような鉄は細胞内へ取り入れられ、フェロトーシスを誘導することはできない。
【0013】
さらに、ナノ鉄に関する臨床開発について、例えば、ドイツの科学者が新しく出願した特許WO2015/007730A1では、フェロトーシスを阻害する阻害剤が提案されており、フェロトーシスによるROSストレス神経機能障害疾患を解決することが期待されている。
このように、鉄含有製剤は抗腫瘍薬の開発にとって重要な意義を有している。
【0014】
現在、腫瘍治療の研究方向は2つの方向に発展しており、一つは知能化、即ち正常細胞と腫瘍細胞とを知能的に認識することであり、もう一つは、抗腫瘍薬の毒性・副作用を低減し、耐性を低減ないし解消し、化学療法の投薬量を低減することである。長年の研究により、ナノ粒子は、細胞膜のバリア作用を通過し、直接細胞核に進入して腫瘍細胞に作用できることが分かった。グラフェン、磁性ナノ粒子、カーボンナノチューブなどのようなナノ粒子を薬物担体として用いることで、精度の高い薬物送達が図られ、例えば、中国特許CN105944110Aにおいて、架橋剤としてポリエチレングリコール(PEG)、標的分子としてトランスフェリン(Tf)を用いて、共有結合によって標的ナノ担体を形成する、ナノカーボン量子ドット補助薬物送達担体システムが開示されている。
【0015】
しかしながら、一般的な標的ナノ担体薬は、調製・動物実験において、どのように薬物の担持量を増やすか、また、どのように薬物を精度よく標的で放出するか、という無視できない課題がある。ナノ担体薬によって標的薬物送達を行うには、まず、薬物の担持量を増加させ、即ち、ナノ担体を一定量の薬物分子と結合させなければならず、また、ナノ担体に担持された薬物分子は、臨床治療効果を達成するために、ナノ担体によって体内へ入り、標的に到着した後、自動的に落下し、一定の濃度にならなければならない。
【0016】
また、細胞は鉄を能動的に排出する機構を有することで、細胞内に十分に高い鉄濃度を生じさせることができず、したがって、フェロトーシスや炎症誘発性マクロファージの分極化を効果的に引き起こして、癌細胞死を誘導することはできない。そのため、鉄の細胞内への進入効率を向上させて、短時間で細胞の鉄濃度を比較的高くし、フェロトーシスや炎症誘発性マクロファージの分極化を誘導するために、適切な濃度のFe製剤を担持して薬物担持システムを構成する、適切な標的ナノ薬物担持製剤を探すことが急務である。これら2つの作用機序において、癌細胞死を誘導する主な作用機序は、炎症誘発性マクロファージを分極化させて、一連の炎症因子やROSを生じさせ、さらにcaspase−3の活性を活性化させて、癌細胞をアポトーシスによって死滅させることである。
【0017】
参考文献1:Ferroptosis: An Iron-Dependent Form of Nonapoptotic Cell Death, Cell 149, 1060-1072, May 25, 2012;
【0018】
参考文献2:Glutaminolysis and Transferrin Regulate Ferroptosis, Molecular Cell 59, 298-308, July 16, 2015;
【0019】
参考文献3:Ultrasmall nanoparticles induce ferroptosis innutrient-deprived cancer cells and suppress tumour growth, Nature Technology, 26 Sep, 2016;
【0020】
参考文献4:Ferroptosis: process and function, Cell Death and Differentiation 23, 369-379, 2016;
【0021】
参考文献5:Generation of hydrogenperoxide primarily contributes to the induction of Fe(II)-dependentapoptosis in Jurkat cells by (-)-epigallocatechin gallate, Carcinogenesis, 25(9), 1567-1574, 2004;
【0022】
参考文献6:Iron oxide nanoparticles inhibit tumour growth by inducing pro-inflammatory macrophage polarization in tumour tissues, Nature NanoTechnology, Sep 26 , 2016;
【0023】
参考文献7:SPION primes THP1 derived M2 macrophages towards M1-likemacrophages, Biochemical and Biophysical Research Communications 441, 737-742, 2013.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明は、従来腫瘍治療に存在する問題点に着目し、M1型マクロファージの分極化による癌細胞アポトーシス誘導、及びナノ粒子の薬物送達の正確性に基づいて、インビトロ細胞及び動物実験の両方で、固形腫瘍に対する良好な阻害作用が認められたナノ炭素担持鉄の複合システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明は、担体として酸処理したナノ炭素と、鉄塩における鉄(II)イオン及び/又は鉄(III)イオンとからなる複合構造である複合システムであって、前記複合システムの粒子径は50nm〜500nmの間にあり、好ましくは90nm〜300nmであり、より好ましくは100nm〜250nmであり、さらに好ましくは120〜180nmであることを特徴とする、ナノ炭素−鉄複合システムを提供する。
【0026】
前記鉄塩において、鉄(II)イオン及び/又は鉄(III)イオンの濃度は1.36〜13.6mg/mLであり、好ましくは、鉄(II)イオン及び/又は鉄(III)イオンの濃度は1.5〜8.33mg/mLであり、より好ましくは2.73〜5.46mg/mLであることを特徴とする、前記いずれか1つに記載の複合システム。
【0027】
前記鉄塩は、硫酸鉄(II)、硫酸鉄(III)、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、グルコン酸鉄(II)、鉄サッカラート、クエン酸鉄(III)アンモニウム、コハク酸鉄(II)、ソルビトール鉄、フマル酸鉄(II)から選択されるいずれか1種又は複数種であり、好ましくは、前記鉄塩は硫酸鉄(II)、硫酸鉄(III)、塩化鉄(II)、又は塩化鉄(III)であり、より好ましくは、前記鉄塩は硫酸鉄(II)であることを特徴とする、前記いずれか1つに記載の複合システム。
【0028】
前記複合システムのpHは3.0〜6.0であり、好ましくは、前記複合システムのpHは3.5〜4.5であることを特徴とする、前記いずれか1つに記載の複合システム。
【0029】
前記ナノ炭素と鉄元素との質量比は40:1〜3:1であり、好ましくは30:1〜5:1であり、より好ましくは18:1〜6:1であることを特徴とする、前記いずれか1つに記載の複合システム。
【0030】
前記ナノ炭素において、炭素の含有量は86〜98%、水素の含有量は0.5〜2.5%、酸素の含有量は1.0〜10.0%であり、好ましくは、炭素の含有量は94〜97%、水素の含有量は0.7〜1.0%、酸素の含有量は2.0〜4.5%であることを特徴とする、前記いずれか1つに記載の複合システム。
【0031】
前記ナノ炭素は、カーボンナノ粒子、カーボンナノチューブ、カーボン量子ドット、グラフェン、フラーレン、カーボンナノロッド、カーボンナノファイバーのうちの少なくとも1種又は複数種を含み、好ましくは、前記ナノ炭素はカーボンナノ粒子であり、より好ましくは、前記ナノ炭素はナノカーボンブラックC
40であることを特徴とする、前記いずれか1つに記載の複合システム。
【0032】
前記ナノ炭素におけるカルボキシ基の含有量は0.01mmol/g〜2.0mmol/gであり、好ましくは0.01mmol/g〜1.0mmol/gであり、より好ましくは0.03mmol/g〜0.7mmol/gであることを特徴とする、前記いずれか1つに記載の複合システム。
【0033】
前記ナノ炭素と鉄塩とが静電作用、錯化作用、及びファンデルワールス力などの複数種の相互作用によって結合されてなる複合構造であることを特徴とする、前記いずれか1つに記載の複合システム。
【0034】
前記複合システムには、クエン酸ナトリウムがさらに含まれ、前記クエン酸ナトリウムと鉄塩における鉄元素との質量比は0.1〜3であり、好ましくは、クエン酸ナトリウムと鉄塩における鉄元素との質量比は1〜2であり、好ましくは、前記クエン酸ナトリウムと鉄(II)イオン及び/又は鉄(III)イオンとが錯体を形成していることを特徴とする、前記いずれか1つに記載の複合システム。
【0035】
前記複合システムには、懸濁剤がさらに含まれ、前記懸濁剤は、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、デキストランから選択されるいずれか1種又は複数種であり、好ましくはポリビニルピロリドンK
30であることを特徴とする、前記いずれか1つに記載の複合システム。懸濁剤は、分散媒の粘度を増大させて、粒子の沈降速度を低下させる、または粒子の親水性を増加させることができる添加剤である。
【0036】
前記懸濁剤の濃度は10〜40mg/mlであり、好ましくは、濃度は15〜25mg/mlである。
【0037】
本発明は、さらに、方法1又は方法2でナノ炭素−鉄複合システムを調製する方法であって、方法1は、
a)酸処理したナノ炭素を懸濁剤の生理食塩水溶液に均一に分散させて、懸濁液を調製し、クエン酸ナトリウムで前記懸濁液をpH値6.5〜8.0、好ましくはpH値6.8〜7.2に調整する工程と、
b)工程a)で得られたナノ炭素の懸濁液を鉄塩と混合し、空気遮断下で、鉄塩が完全に溶解するまで撹拌して、混合液を得る工程と、
c)工程b)で得られた混合液を高圧ホモジナイザーで均質化して、均質液を得て、そのpHが3.0〜6.0、好ましくは、均質液のpHが3.5〜4.5であることが測定され、ナノ炭素−鉄複合システムが得られる工程であって、好ましくは、均質圧力が30〜120MPaであり、より好ましくは、均質圧力が90MPaである工程と、
を含み、
【0038】
方法2は、
a)酸処理したナノ炭素を懸濁剤の生理食塩水溶液に均一に分散させ、5分間均一化して、懸濁液を調製し、クエン酸ナトリウムで前記懸濁液をpH値6.5〜8.0、好ましくはpH値6.8〜7.2に調整し、そして、高圧ホモジナイザーで均質化して、得られる混合液をバイアルに詰めて使用に備える工程であって、好ましくは、均質圧力が30〜120MPaであり、より好ましくは、均質圧力が90MPaである工程と、
b)鉄塩を生理食塩水に溶解させ、バイアルに詰め、凍結乾燥させ、そして窒素ガスを充填し密封保存して、固体の鉄塩を得る工程と、
c)使用する時に、工程b)における固体を溶解させてから、工程a)で得られた混合液と均一に混合し、そのpHが3.0〜6.0、好ましくは、pHが3.5〜4.5であることが測定され、ナノ炭素−鉄複合システムが得られる工程と、
を含むことを特徴とする、ナノ炭素−鉄複合システムの調製方法を提供する。
【0039】
本発明はさらに、前記ナノ炭素−鉄複合システムの、固形腫瘍治療薬物の調製、好ましくは、肝臓癌、肺癌、胃癌、結腸癌、乳癌、子宮頸癌、甲状腺癌、又は卵巣癌治療薬物の調製、より好ましくは、乳癌、子宮頸癌、及び肝臓癌治療薬物の調製への使用を提供する。
【0040】
本発明はさらに、前記いずれか1つに記載のナノ炭素−鉄複合システムを含む注射用懸濁液であって、前記ナノ炭素−鉄複合システムは、ポリビニルピロリドンとクエン酸ナトリウムとを含む混合液に均一かつ安定に分散されており、好ましくは、前記ポリビニルピロリドンはポリビニルピロリドンK
30であり、好ましくは、前記複合システムにおいて、鉄(II)イオン及び/又は鉄(III)イオンの濃度は1.36〜13.6mg/mLであり、好ましくは、前記複合システムにおいて、鉄(II)イオン及び/又は鉄(III)イオンの濃度は1.5〜8.33mg/mLであり、より好ましくは2.73〜5.46mg/mLであることを特徴とする、注射用懸濁液を提供する。
【発明の効果】
【0041】
本発明において提供されるナノ炭素−鉄複合システムに基づいて、理論的分析、インビトロ細胞実験、及び動物実験を行った結果、本発明は、以下のような好適な効果を有することが分かった。
【0042】
1.良好な安定性、生体適合性を有する安定したナノ炭素−鉄複合システムを形成した。
【0043】
2.ナノ炭素を担体として鉄を輸送する輸送効果が好ましい。細胞自体は鉄を能動的に排出する機構を有することから、細胞内に十分に高い鉄濃度を生じさせることができず、従って、フェロトーシスや炎症誘発性マクロファージの分極化を効果的に引き起こして、癌細胞死を誘導することはできない。ナノ炭素を担体として用いれば、鉄の細胞内への進入効率を向上させて、短時間で細胞の鉄濃度を比較的高くし、フェロトーシスを生じさせるとともに炎症誘発性マクロファージの分極化を誘導して、癌細胞アポトーシスを促進することができる。
【0044】
3.この製剤は、SMMC7721肝臓癌細胞、A549肺癌細胞、SGC−7901胃癌細胞、HCT116結腸癌細胞、MDA−MB−231乳癌細胞、Hela子宮頸癌細胞、TPC−1甲状腺癌細胞、SKOV3卵巣癌細胞、マウス由来肝臓癌H22細胞を含むあらゆる固形腫瘍に対して、強い阻害作用を有し、なかでも、乳癌、子宮頸癌、及び肝臓癌に対する治療効果により優れる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1a】酸処理したナノ炭素のXPSスペクトルである。
【
図1b】酸処理したナノ炭素−鉄複合システムのXPSスペクトルである。
【
図2】ナノ炭素及びナノ炭素−鉄複合システムの赤外分光スペクトルである。
【
図3】(a1)は陰性対照群の細胞の鉄イオンのプルシアンブルー染色の図であるり、(b1)はナノ炭素群の細胞の鉄イオンのプルシアンブルー染色の図であり、(c1))は硫酸鉄(II)群の細胞の鉄イオンのプルシアンブルー染色の図であり、(d1)はナノ炭素−硫酸鉄(II)複合システム群の細胞の鉄イオンのプルシアンブルー染色の図であり、(a2)は陰性対照群のH22腫瘍の鉄イオンのプルシアンブルー染色の図であり、(b2)はナノ炭素群のH22腫瘍の鉄イオンのプルシアンブルー染色の図であり、(c2)は硫酸鉄(II)群のH22腫瘍の鉄イオンのプルシアンブルー染色の図であり、(d2)はナノ炭素−硫酸鉄(II)複合システム群のH22腫瘍の鉄イオンのプルシアンブルー染色の図であり、
【
図4】ナノ炭素−硫酸鉄(II)複合システム群のH22腫瘍の増殖体積のグラフである。
【
図5】ナノ炭素−鉄サッカラート複合システム群のH22腫瘍の増殖体積のグラフである。
【
図6】ナノ炭素−グルコン酸鉄(II)複合システム群のH22腫瘍の増殖体積のグラフである。
【
図7】ナノ炭素−クエン酸鉄(III)アンモニウム複合システム群のH22腫瘍の増殖体積のグラフである。
【
図8】ナノ炭素−硫酸鉄(II)複合システム群のA549腫瘍の増殖体積のグラフである。
【
図9】ナノ炭素−鉄サッカラート複合システム群のA549腫瘍の増殖体積のグラフである。
【
図10】ナノ炭素−グルコン酸鉄(II)複合システム群のA549腫瘍の増殖体積のグラフである。
【
図11】ナノ炭素−クエン酸鉄(III)アンモニウム複合システム群のA549腫瘍の増殖体積のグラフである。
【
図12】ナノ炭素−硫酸鉄(II)複合システム群のHCT116腫瘍の増殖体積のグラフである。
【
図13】ナノ炭素−鉄サッカラート複合システム群のHCT116腫瘍の増殖体積のグラフである。
【
図14】ナノ炭素−グルコン酸鉄(II)複合システム群のHCT116腫瘍の増殖体積のグラフである。
【
図15】ナノ炭素−クエン酸鉄(III)アンモニウム複合システム群のHCT116腫瘍の増殖体積のグラフである。
【
図16】ナノ炭素−硫酸鉄(II)複合システム群のHela腫瘍の増殖体積のグラフである。
【
図17】ナノ炭素−鉄サッカラート複合システム群のHela腫瘍の増殖体積のグラフである。
【
図18】ナノ炭素−グルコン酸鉄(II)複合システム群のHela腫瘍の増殖体積のグラフである。
【
図19】ナノ炭素−クエン酸鉄(III)アンモニウム複合システム群のHela腫瘍の増殖体積のグラフである。
【
図20】ナノ炭素−硫酸鉄(II)複合システム群のMDA−MB−231腫瘍の増殖体積のグラフである。
【
図21】ナノ炭素−鉄サッカラート複合システム群のMDA−MB−231腫瘍の増殖体積のグラフである。
【
図22】ナノ炭素−グルコン酸鉄(II)複合システム群のMDA−MB−231腫瘍の増殖体積のグラフである。
【
図23】ナノ炭素−クエン酸鉄(III)アンモニウム複合システム群のMDA−MB−231腫瘍の増殖体積のグラフである。
【
図24】ナノ炭素−硫酸鉄(II)複合システム群のSGC−7901腫瘍の増殖体積のグラフである。
【
図25】ナノ炭素−鉄サッカラート複合システム群のSGC−7901腫瘍の増殖体積のグラフである。
【
図26】ナノ炭素−グルコン酸鉄(II)複合システム群のSGC−7901腫瘍の増殖体積のグラフである。
【
図27】ナノ炭素−クエン酸鉄(III)アンモニウム複合システム群のSGC−7901腫瘍の増殖体積のグラフである。
【
図28】ナノ炭素−硫酸鉄(II)複合システム群のSKOV3腫瘍の増殖体積のグラフである。
【
図29】ナノ炭素−鉄サッカラート複合システム群のSKOV3腫瘍の増殖体積のグラフである。
【
図30】ナノ炭素−グルコン酸鉄(II)複合システム群のSKOV3腫瘍の増殖体積のグラフである。
【
図31】ナノ炭素−クエン酸鉄(III)アンモニウム複合システム群のSKOV3腫瘍の増殖体積のグラフである。
【
図32】ナノ炭素−硫酸鉄(II)複合システム群のSMMC−7721腫瘍の増殖体積のグラフである。
【
図33】ナノ炭素−鉄サッカラート複合システム群のSMMC−7721腫瘍の増殖体積のグラフである。
【
図34】ナノ炭素−グルコン酸鉄(II)複合システム群のSMMC−7721腫瘍の増殖体積のグラフである。
【
図35】ナノ炭素−クエン酸鉄(III)アンモニウム複合システム群のSMMC−7721腫瘍の増殖体積のグラフである。
【
図36】ナノ炭素−硫酸鉄(II)複合システム群のTPC−1腫瘍の増殖体積のグラフである。
【
図37】ナノ炭素−鉄サッカラート複合システム群のTPC−1腫瘍の増殖体積のグラフである。
【
図38】ナノ炭素−グルコン酸鉄(II)複合システム群のTPC−1腫瘍の増殖体積のグラフである。
【
図39】ナノ炭素−クエン酸鉄(III)アンモニウム複合システム群のTPC−1腫瘍の増殖体積のグラフである。
【
図40】2つの方法で調製したナノ炭素−硫酸鉄(II)複合システム群のH22腫瘍の増殖体積のグラフである。
【
図41】2つの方法で調製したナノ炭素−硫酸鉄(II)複合システム群のHela腫瘍の増殖体積のグラフである。
【
図42】2つの方法で調製したナノ炭素−硫酸鉄(II)複合システム群のMDA−MB−231腫瘍の増殖体積のグラフである。
【
図43】ナノ炭素−硫酸鉄(II)複合システム群がHela細胞に作用した場合の細胞生存率の図である。
【
図44】(a)はナノ炭素のマウスリンパ節に対するトレース効果であり、(b)はカーボンナノチューブのマウスリンパ節に対するトレース効果であり、(c)はナノ炭素−硫酸鉄(II)複合システム群のマウスリンパ節に対するトレース効果であり、(d)はカーボンナノチューブ−硫酸鉄(II)複合システム群のマウスリンパ節に対するトレース効果である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
一.ナノ炭素−鉄複合システムの調製
以下の試料を調製した。各試料の原料組成の詳細を以下の1−16に示す。
【0051】
5. カーボンナノチューブ+硫酸鉄(II)七水和物
【0052】
6.グラフェン+硫酸鉄(II)七水和物
【0053】
7.カーボン量子ドット+硫酸鉄(II)七水和物
【0054】
8.フラーレン+硫酸鉄(II)七水和物
【0059】
13.ナノ炭素+グルコン酸鉄(II)
【0062】
16.ナノ炭素+クエン酸鉄(III)アンモニウム
【0063】
各試料の具体的な調製プロセスは以下の通りである(試料Aは方法1によって調製され、試料Bは方法2によって調製された)。
1.ナノ炭素+硫酸鉄(II)
試料1A
生理食塩水10mlにPVPK30を200mg加え、室温で十分に溶解した後、ナノ炭素粉末(カルボキシ基の含有量0.01mmol/g、粒子径160nm)を250mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約50mg)加えて調節した後、硫酸鉄(II)七水和物を135.5mg加え、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力90mpa)を3回行い、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する。
【0064】
試料1B
生理食塩水10mlにPVPK30を200mg加え、室温で十分に溶解した後、ナノ炭素粉末(カルボキシ基の含有量0.01mmol/g、粒子径160nm)を500mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約50mg)加えて調節し、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力90mpa)を3回行い、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する(第1成分)。固体である硫酸鉄(II)七水和物を271.0mg採り、生理食塩水10mLに溶解させたものをバイアルに詰め、凍結乾燥させ、窒素ガスを充填して密封保存する(第2成分)。使用する時に、第1成分と第2成分とを混合する。
試料2A
【0065】
生理食塩水10mlにPVPK30を200mg加え、室温で十分に溶解した後、ナノ炭素粉末(カルボキシ基の含有量0.07mmol/g、粒子径160nm)を250mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約50mg)加えて調節した後、硫酸鉄(II)七水和物を135.5mg加え、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力90mpa)を3回行い、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する。
【0066】
試料2B
生理食塩水10mlにPVPK30を200mg加え、室温で十分に溶解した後、ナノ炭素粉末(カルボキシ基の含有量0.07mmol/g、粒子径160nm)を500mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約50mg)加えて調節し、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力90mpa)を3回行い、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する(第1成分)。固体である硫酸鉄(II)七水和物を271.0mg採り、生理食塩水10mLに溶解させたものをバイアルに詰め、凍結乾燥させ、窒素ガスを充填して密封保存する(第2成分)。使用する時に、第1成分と第2成分とを混合する。
【0067】
試料3A
生理食塩水10mlにPVPK30を200mg加え、室温で十分に溶解した後、ナノ炭素粉末(カルボキシ基の含有量2.00mmol/g、粒子径160nm)を250mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約50mg)加えて調節した後、硫酸鉄(II)七水和物を135.5mg加え、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力90mpa)を3回行い、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する。
【0068】
試料3B
生理食塩水10mlにPVPK30を200mg加え、室温で十分に溶解した後、ナノ炭素粉末(カルボキシ基の含有量2.00mmol/g、粒子径160nm)を500mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約50mg)加えて調節し、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力90mpa)を3回行い、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する(第1成分)。固体である硫酸鉄(II)七水和物を271.0mg採り、生理食塩水10mLに溶解させたものをバイアルに詰め、凍結乾燥させ、窒素ガスを充填して密封保存する(第2成分)。使用する時に、第1成分と第2成分とを混合する。
【0069】
試料4A
生理食塩水10mlにPVPK30を200mg加え、室温で十分に溶解した後、ナノ炭素粉末(カルボキシ基の含有量0.07mmol/g、粒子径160nm)を200mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約50mg)加えて調節した後、硫酸鉄(II)七水和物を67.8mg加え、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力90mpa)を3回行い、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する。
【0070】
試料4B
生理食塩水10mlにPVPK30を200mg加え、室温で十分に溶解した後、ナノ炭素粉末(カルボキシ基の含有量0.07mmol/g、粒子径160nm)を400mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約50mg)加えて調節し、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力90mpa)を3回行い、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する(第1成分)。固体である硫酸鉄(II)七水和物を135.5mg採り、生理食塩水10mLに溶解させたものをバイアルに詰め、凍結乾燥させ、窒素ガスを充填して密封保存する(第2成分)。使用する時に、第1成分と第2成分とを混合する。
【0071】
試料5A
生理食塩水10mlにPVPK30を200mg加え、室温で十分に溶解した後、ナノ炭素粉末(カルボキシ基の含有量0.07mmol/g、粒子径160nm)を400mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約50mg)加えて調節した後、硫酸鉄(II)七水和物を271.0mg加え、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力90mpa)を3回行い、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する。
【0072】
試料5B
生理食塩水10mlにPVPK30を200mg加え、室温で十分に溶解した後、ナノ炭素粉末(カルボキシ基の含有量0.07mmol/g、粒子径160nm)を800mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約50mg)加えて調節し、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力90mpa)を3回行い、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する(第1成分)。固体である硫酸鉄(II)七水和物を542.0mg採り、生理食塩水10mLに溶解させたものをバイアルに詰め、凍結乾燥させ、窒素ガスを充填して密封保存する(第2成分)。使用する時に、第1成分と第2成分とを混合する。
【0073】
試料6A
生理食塩水10mlにPVPK30を200mg加え、室温で十分に溶解した後、ナノ炭素粉末(カルボキシ基の含有量0.07mmol/g、粒子径160nm)を800mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約50mg)加えて調節した後、硫酸鉄(II)七水和物を406.5mg加え、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力90mpa)を3回行い、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する。
【0074】
試料6B
生理食塩水10mlにPVPK30を200mg加え、室温で十分に溶解した後、ナノ炭素粉末(カルボキシ基の含有量0.07mmol/g、粒子径160nm)を1600mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約50mg)加えて調節し、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力90mpa)を3回行い、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する(第1成分)。固体である硫酸鉄(II)七水和物を813.0mg採り、生理食塩水10mLに溶解させたものをバイアルに詰め、凍結乾燥させ、窒素ガスを充填して密封保存する(第2成分)。使用する時に、第1成分と第2成分とを混合する。
【0075】
試料7A
生理食塩水10mlにPVPK30を200mg加え、室温で十分に溶解した後、ナノ炭素粉末(カルボキシ基の含有量0.07mmol/g、粒子径160nm)を1000mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約50mg)加えて調節した後、硫酸鉄(II)七水和物を677.5mg加え、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力90mpa)を3回行い、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する。
【0076】
試料7B
生理食塩水10mlにPVPK30を200mg加え、室温で十分に溶解した後、ナノ炭素粉末(カルボキシ基の含有量0.07mmol/g、粒子径160nm)を2000mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約50mg)加えて調節し、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力90mpa)を3回行い、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する(第1成分)。固体である硫酸鉄(II)七水和物を1355.0mg採り、生理食塩水10mLに溶解させたものをバイアルに詰め、凍結乾燥させ、窒素ガスを充填して密封保存する(第2成分)。使用する時に、第1成分と第2成分とを混合する。
【0077】
試料8A
生理食塩水100mlにPVPK30を2000mg加え、室温で十分に溶解した後、ナノ炭素粉末(カルボキシ基の含有量0.07mmol/g、粒子径160nm)を2500mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約500mg)加えて調節した後、硫酸鉄(II)七水和物を1355mg加え、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力90mpa)を3回行い、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する。
【0078】
試料8B
生理食塩水100mlにPVPK30を2000mg加え、室温で十分に溶解した後、ナノ炭素粉末(カルボキシ基の含有量0.07mmol/g、粒子径160nm)を5000mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約50mg)加えて調節し、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力90mpa)を3回行い、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する(第1成分)。固体である硫酸鉄(II)七水和物を2710mg採り、生理食塩水1000mLに溶解させたものをバイアルに詰め、凍結乾燥させ、そして窒素ガスを充填して密封保存する(第2成分)。使用する時に、第1成分と第2成分とを混合する。
【0079】
試料9A
生理食塩水1000mlにPVPK30を20000mg加え、室温で十分に溶解した後、ナノ炭素粉末(カルボキシ基の含有量0.07mmol/g、粒子径160nm)を25000mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約5000mg)加えて調節した後、硫酸鉄(II)七水和物を13550mg加え、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力90mpa)を3回行い、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する。
【0080】
試料9B
1000ml生理食塩水にPVPK30を20000mg加え、室温で十分に溶解した後、ナノ炭素粉末(カルボキシ基の含有量0.07mmol/g、粒子径160nm)を500mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約50mg)加えて調節し、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力90mpa)を3回行い、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する(第1成分)。固体である硫酸鉄(II)七水和物を27100mg採り、生理食塩水10000mLに溶解させたものをバイアルに詰め、凍結乾燥させ、窒素ガスを充填して密封保存する(第2成分)。使用する時に、第1成分と第2成分とを混合する。
【0081】
試料10A
生理食塩水10mlにPVPK30を100mg加え、室温で十分に溶解した後、ナノ炭素粉末(カルボキシ基の含有量0.07mmol/g、粒子径160nm)を250mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約50mg)加えて調節した後、硫酸鉄(II)七水和物を135.5mg加え、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力90mpa)を3回行い、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する。
【0082】
試料10B
生理食塩水10mlにPVPK30を100mg加え、室温で十分に溶解した後、ナノ炭素粉末(カルボキシ基の含有量0.07mmol/g、粒子径160nm)を500mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約50mg)加えて調節し、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力90mpa)を3回行い、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する(第1成分)。固体である硫酸鉄(II)七水和物を271.0mg採り、生理食塩水10mLに溶解させたものをバイアルに詰め、凍結乾燥させ、窒素ガスを充填して密封保存する(第2成分)。使用する時に、第1成分と第2成分とを混合する。
【0083】
試料11A
生理食塩水10mlにPVPK30を400mg加え、室温で十分に溶解した後、ナノ炭素粉末(カルボキシ基の含有量0.07mmol/g、粒子径160nm)を250mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約50mg)加えて調節した後、硫酸鉄(II)七水和物を135.5mg加え、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力90mpa)を3回行い、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する。
【0084】
試料11B
生理食塩水10mlにPVPK30を400mg加え、室温で十分に溶解した後、ナノ炭素粉末(カルボキシ基の含有量0.07mmol/g、粒子径160nm)を500mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約50mg)加えて調節し、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力90mpa)を3回行い、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する(第1成分)。固体である硫酸鉄(II)七水和物を271.0mg採り、生理食塩水10mLに溶解させたものをバイアルに詰め、凍結乾燥させ、窒素ガスを充填して密封保存する(第2成分)。使用する時に、第1成分と第2成分とを混合する。
【0085】
試料12A
生理食塩水10mlにPVPK30を200mg加え、室温で十分に溶解した後、ナノ炭素粉末(カルボキシ基の含有量0.07mmol/g、粒子径90nm)を250mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約50mg)加えて調節した後、硫酸鉄(II)七水和物を135.5mg加え、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力120mpa)を5回行い、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する。
【0086】
試料12B
生理食塩水10mlにPVPK30を200mg加え、室温で十分に溶解した後、ナノ炭素粉末(カルボキシ基の含有量0.07mmol/g、粒子径90nm)を500mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約50mg)加えて調節し、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力120mpa)を5回行ない、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する(第1成分)。固体である硫酸鉄(II)七水和物を271.0mg採り、生理食塩水10mLに溶解させたものをバイアルに詰め、凍結乾燥させ、窒素ガスを充填して密封保存する(第2成分)。使用する時に、第1成分と第2成分とを混合する。
【0087】
試料13A
生理食塩水10mlにPVPK30を200mg加え、室温で十分に溶解した後、ナノ炭素粉末(カルボキシ基の含有量0.07mmol/g、粒子径120nm)を250mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約50mg)加えて調節した後、硫酸鉄(II)七水和物を135.5mg加え、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力110mpa)を3回行い、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する。
【0088】
試料13B
生理食塩水10mlにPVPK30を200mg加え、室温で十分に溶解した後、ナノ炭素粉末(カルボキシ基の含有量0.07mmol/g、粒子径120nm)を500mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約50mg)加えて調節し、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力110mpa)を3回行い、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する(第1成分)。固体である硫酸鉄(II)七水和物を271.0mg採り、生理食塩水10mLに溶解させたものをバイアルに詰め、凍結乾燥させ、窒素ガスを充填して密封保存する(第2成分)。使用する時に、第1成分と第2成分とを混合する。
【0089】
試料14A
生理食塩水10mlにPVPK30を200mg加え、室温で十分に溶解した後、ナノ炭素粉末(カルボキシ基の含有量0.07mmol/g、粒子径180nm)を250mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約50mg)加えて調節した後、硫酸鉄(II)七水和物を135.5mg加え、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力80mpa)を3回行い、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する。
【0090】
試料14B
生理食塩水10mlにPVPK30を200mg加え、室温で十分に溶解した後、ナノ炭素粉末(カルボキシ基の含有量0.07mmol/g、粒子径180nm)を500mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約50mg)加えて調節し、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力80mpa)を3回行い、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する(第1成分)。固体である硫酸鉄(II)七水和物を271.0mg採り、生理食塩水10mLに溶解させたものをバイアルに詰め、凍結乾燥させ、窒素ガスを充填して密封保存する(第2成分)。使用する時に、第1成分と第2成分とを混合する。
【0091】
試料15A
生理食塩水10mlにPVPK30を200mg加え、室温で十分に溶解した後、ナノ炭素粉末(カルボキシ基の含有量0.07mmol/g、粒子径300nm)を250mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約50mg)加えて調節した後、硫酸鉄(II)七水和物を135.5mg加え、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力60mpa)を3回行ない、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する。
【0092】
試料15B
生理食塩水10mlにPVPK30を200mg加え、室温で十分に溶解した後、ナノ炭素粉末(カルボキシ基の含有量0.07mmol/g、粒子径300nm)を500mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約50mg)加えて調節し、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力60mpa)を3回行い、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する(第1成分)。固体である硫酸鉄(II)七水和物を271.0mg採り、生理食塩水10mLに溶解させたものをバイアルに詰め、凍結乾燥させ、窒素ガスを充填して密封保存する(第2成分)。使用する時に、第1成分と第2成分とを混合する。
【0093】
試料16A
生理食塩水10mlにPVPK30を200mg加え、室温で十分に溶解した後、ナノ炭素粉末(カルボキシ基の含有量0.07mmol/g、粒子径500nm)を250mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約50mg)加えて調節した後、硫酸鉄(II)七水和物を135.5mg加え、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力30mpa)を2回行い、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する。
【0094】
試料16B
生理食塩水10mlにPVPK30を200mg加え、室温で十分に溶解した後、ナノ炭素粉末(カルボキシ基の含有量0.07mmol/g、粒子径500nm)を500mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約50mg)加えて調節し、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力30mpa)を2回行い、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する(第1成分)。固体である硫酸鉄(II)七水和物を271.0mg採り、生理食塩水10mLに溶解させたものをバイアルに詰め、凍結乾燥させ、窒素ガスを充填して密封保存する(第2成分)。使用する時に、第1成分と第2成分とを混合する。
【0095】
2.ナノ炭素+塩化鉄(II)
試料17
生理食塩水10mlにPVPK30を200mg加え、室温で十分に溶解した後、ナノ炭素粉末(カルボキシ基の含有量0.07mmol/g、粒子径160nm)を250mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約50mg)加えて調節した後、塩化鉄(II)を48.5mg加え、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力90mpa)を3回行い、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する。
【0096】
試料18
生理食塩水10mlにPVPK30を200mg加え、室温で十分に溶解した後、ナノ炭素粉末(カルボキシ基の含有量0.07mmol/g、粒子径160nm)を250mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約50mg)加えて調節した後、塩化鉄(II)を96.9mg加え、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力90mpa)を3回行い、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する。
【0097】
試料19
生理食塩水10mlにPVPK30を200mg加え、室温で十分に溶解した後、ナノ炭素粉末(カルボキシ基の含有量0.07mmol/g、粒子径160nm)を250mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約50mg)加えて調節した後、塩化鉄(II)を290.7mg加え、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力90mpa)を3回行い、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する。
【0098】
3.ナノ炭素+塩化鉄(III)
試料20
生理食塩水10mlにPVPK30を200mg加え、室温で十分に溶解した後、ナノ炭素粉末(カルボキシ基の含有量0.07mmol/g、粒子径160nm)を250mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約50mg)加えて調節した後、塩化鉄(III)を65.9mg加え、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力90mpa)を3回行い、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する。
【0099】
試料21
生理食塩水10mlにPVPK30を200mg加え、室温で十分に溶解した後、ナノ炭素粉末(カルボキシ基の含有量0.07mmol/g、粒子径160nm)を250mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約50mg)加えて調節した後、塩化鉄(III)を131.8mg加え、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力90mpa)を3回行い、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する。
【0100】
試料22
生理食塩水10mlにPVPK30を200mg加え、室温で十分に溶解した後、ナノ炭素粉末(カルボキシ基の含有量0.07mmol/g、粒子径160nm)を250mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約50mg)加えて調節した後、塩化鉄(III)を395.4mg加え、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力90mpa)を3回行い、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する。
【0101】
4.ナノ炭素+硫酸鉄(III)
試料23
生理食塩水10mlにPVPK30を200mg加え、室温で十分に溶解した後、ナノ炭素粉末(カルボキシ基の含有量0.07mmol/g、粒子径160nm)を250mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約50mg)加えて調節した後、硫酸鉄(III)を48.7mg加え、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力90mpa)を3回行い、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する。
【0102】
試料24
生理食塩水10mlにPVPK30を200mg加え、室温で十分に溶解した後、ナノ炭素粉末(カルボキシ基の含有量0.07mmol/g、粒子径160nm)を250mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約50mg)加えて調節した後、硫酸鉄(III)97.5mgを加え、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力90mpa)を3回行い、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する。
【0103】
試料25
生理食塩水10mlにPVPK30を200mg加え、室温で十分に溶解した後、ナノ炭素粉末(カルボキシ基の含有量0.07mmol/g、粒子径160nm)を250mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約50mg)加えて調節した後、硫酸鉄(III)を292.5mg加え、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力90mpa)を3回行い、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する。
【0104】
5.カーボンナノチューブ+硫酸鉄(II)七水和物
試料26
生理食塩水10mlにPVPK30を200mg加え、室温で十分に溶解した後、カーボンナノチューブ(カルボキシ基の含有量0.07mmol/g、粒子径160nm)を250mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約50mg)加えて調節した後、硫酸鉄(II)七水和物を135.5mg加え、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力90mpa)を3回行い、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する。
【0105】
6.グラフェン+硫酸鉄(II)七水和物
試料27
生理食塩水10mlにPVPK30を200mg加え、室温で十分に溶解した後、グラフェン(カルボキシ基の含有量0.07mmol/g、粒子径160nm)を250mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約50mg)加えて調節した後、硫酸鉄(II)七水和物を135.5mg加え、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力90mpa)を3回行い、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する。
【0106】
7.カーボン量子ドット+硫酸鉄(II)七水和物
試料28
生理食塩水10mlにPVPK30を200mg加え、室温で十分に溶解した後、カーボン量子ドット(カルボキシ基の含有量0.07mmol/g、粒子径160nm)を250mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約50mg)加えて調節した後、硫酸鉄(II)七水和物を135.5mg加え、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力90mpa)を3回行い、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する。
【0107】
8.フラーレン+硫酸鉄(II)七水和物
試料29
生理食塩水10mlにPVPK30を200mg加え、室温で十分に溶解した後、フラーレン(カルボキシ基の含有量0.07mmol/g、粒子径160nm)を250mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約50mg)加えて調節した後、硫酸鉄(II)七水和物を135.5mg加え、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力90mpa)を3回行い、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する。
【0108】
9.活性炭+硫酸鉄(II)七水和物
試料30
生理食塩水10mlにPVPK30を200mg加え、室温で十分に溶解した後、活性炭(カルボキシ基の含有量0.07mmol/g、粒子径160nm)を250mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約50mg)加えて調節した後、硫酸鉄(II)七水和物を135.5mg加え、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力90mpa)を3回行い、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する。
【0109】
試料31
生理食塩水10mlにPVPK30を200mg加え、室温で十分に溶解した後、ナノ炭素(カルボキシ基の含有量0.07mmol/g、粒子径160nm)を250mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約50mg)加えて調節した後、水酸化鉄(III)を51.9mg加え、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力90mpa)を3回行い、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する。
【0110】
試料32
生理食塩水10mlにPVPK30を200mg加え、室温で十分に溶解した後、ナノ炭素(カルボキシ基の含有量0.07mmol/g、粒子径160nm)を250mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約50mg)加えて調節した後、水酸化鉄(III)を155.7mg加え、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力90mpa)を3回行い、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する。
【0111】
10.ナノ炭素+鉄サッカラート
試料33
生理食塩水9.3mlにPVPK30を200mg加え、室温で十分に溶解した後、ナノ炭素(カルボキシ基の含有量0.07mmol/g、粒子径160nm)を250mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約50mg)加えて調節した後、鉄サッカラートを0.7mL加え、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力90mpa)を3回行い、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する。
【0112】
試料34
生理食塩水8.6mlにPVPK30を200mg加え、室温で十分に溶解した後、ナノ炭素(カルボキシ基の含有量0.07mmol/g、粒子径160nm)を250mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約50mg)加えて調節した後、鉄サッカラートを1.4mL加え、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力90mpa)を3回行い、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する。
【0113】
試料35
生理食塩水5.8mlにPVPK30を200mg加え、室温で十分に溶解した後、ナノ炭素(カルボキシ基の含有量0.07mmol/g、粒子径160nm)を250mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約50mg)加えて調節した後、鉄サッカラートを4.2mL加え、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力90mpa)を3回行い、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する。
【0114】
11.ナノ炭素+コハク酸鉄(II)
試料36
生理食塩水9.75mlにPVPK30を200mg加え、室温で十分に溶解した後、ナノ炭素(カルボキシ基の含有量0.07mmol/g、粒子径160nm)を250mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約50mg)加えて調節した後、コハク酸鉄(II)を0.25mL加え、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力90mpa)を3回行い、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する。
【0115】
試料37
生理食塩水9.5mlにPVPK30を200mg加え、室温で十分に溶解した後、ナノ炭素(カルボキシ基の含有量0.07mmol/g、粒子径160nm)を250mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約50mg)加えて調節した後、コハク酸鉄(II)を0.5mL加え、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力90mpa)を3回行い、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する。
【0116】
試料38
生理食塩水8.5mlにPVPK30を200mg加え、室温で十分に溶解した後、ナノ炭素(カルボキシ基の含有量0.07mmol/g、粒子径160nm)を250mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約50mg)加えて調節した後、コハク酸鉄(II)を1.5mL加え、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力90mpa)を3回行い、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する。
【0117】
12.ナノ炭素+グルコン酸鉄(II)
試料39
生理食塩水10mlにPVPK30を200mg加え、室温で十分に溶解した後、ナノ炭素(カルボキシ基の含有量0.07mmol/g、粒子径160nm)を250mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約50mg)加えて調節した後、グルコン酸鉄(II)を108.7mg加えて、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力90mpa)を3回行い、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する。
【0118】
試料40
生理食塩水10mlにPVPK30を200mg加え、室温で十分に溶解した後、ナノ炭素(カルボキシ基の含有量0.07mmol/g、粒子径160nm)を250mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約50mg)加えて調節した後、グルコン酸鉄(II)を217.5mg加え、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力90mpa)を3回行い、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する。
【0119】
試料41
生理食塩水10mlにPVPK30を200mg加え、室温で十分に溶解した後、ナノ炭素(カルボキシ基の含有量0.07mmol/g、粒子径160nm)を250mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約50mg)加えて調節した後、グルコン酸鉄(II)を652.5mg加え、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力90mpa)を3回行い、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する。
【0120】
13.ナノ炭素+ソルビトール鉄
試料42
生理食塩水9.45mlにPVPK30を200mg加え、室温で十分に溶解した後、ナノ炭素(カルボキシ基の含有量0.07mmol/g、粒子径160nm)を250mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約50mg)加えて調節した後、ソルビトール鉄を0.55mL加え、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力90mpa)を3回行い、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する。
【0121】
試料43
8.9ml生理食塩水にPVPK30を200mg加え、室温で十分に溶解した後、ナノ炭素(カルボキシ基の含有量0.07mmol/g、粒子径160nm)を250mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約50mg)加えて調節した後、ソルビトール鉄を1.1mL加え、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力90mpa)を3回行い、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する。
【0122】
試料44
6.7ml生理食塩水にPVPK30を200mg加え、室温で十分に溶解した後、ナノ炭素(カルボキシ基の含有量0.07mmol/g、粒子径160nm)を250mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約50mg)加えて調節した後、ソルビトール鉄を3.3mL加え、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力90mpa)を3回行い、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する。
【0123】
14.ナノ炭素+フマル酸鉄(II)
試料45
生理食塩水10mlにPVPK30を200mg加え、室温で十分に溶解した後、ナノ炭素(カルボキシ基の含有量0.07mmol/g、粒子径160nm)を250mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約50mg)加えて調節した後、フマル酸鉄(II)を41.4mg加え、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力90mpa)を3回行い、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する。
【0124】
試料46
生理食塩水10mlにPVPK30を200mg加え、室温で十分に溶解した後、ナノ炭素(カルボキシ基の含有量0.07mmol/g、粒子径160nm)を250mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約50mg)加えて調節した後、フマル酸鉄(II)を82.8mg加え、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力90mpa)を3回行い、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する。
【0125】
試料47
生理食塩水10mlにPVPK30を200mg加え、室温で十分に溶解した後、ナノ炭素(カルボキシ基の含有量0.07mmol/g、粒子径160nm)を250mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約50mg)加えて調節した後、フマル酸鉄(II)を248.4mg加え、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力90mpa)を3回行い、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する。
【0126】
15.ナノ炭素+クエン酸鉄(III)アンモニウム
試料48
生理食塩水10mlにPVPK30を200mg加え、室温で十分に溶解した後、ナノ炭素(カルボキシ基の含有量0.07mmol/g、粒子径160nm)を250mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約50mg)加えて調節した後、クエン酸鉄(III)アンモニウムを118.9mg加え、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力90mpa)を3回行い、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する。
【0127】
試料49
生理食塩水10mlにPVPK30を200mg加え、室温で十分に溶解した後、ナノ炭素(カルボキシ基の含有量0.07mmol/g、粒子径160nm)を250mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約50mg)加えて調節した後、クエン酸鉄(III)アンモニウムを237.9mg加え、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力90mpa)を3回行い、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する。
【0128】
試料50
生理食塩水10mlにPVPK30を200mg加え、室温で十分に溶解した後、ナノ炭素(カルボキシ基の含有量0.07mmol/g、粒子径160nm)を250mg加え、十分に撹拌して均一に分散させ、pH値が6.8〜7.2の間になるようにクエン酸ナトリウムを(約50mg)加えて調節した後、クエン酸鉄(III)アンモニウムを713.7mg加え、室温で均一になるように十分に混合し、その後、高圧均質化(圧力90mpa)を3回行い、均質化終了後、懸濁液をバイアルに詰め、窒素ガスを充填して密封保存する。
【0129】
上記試料は、同様のプロセスで、異なる原料と異なる鉄塩とを組み合わせたものであり、ナノ炭素−鉄複合システムの構造や構成をXPSスペクトル及び赤外分光スペクトルで調べたところ、ナノ炭素−鉄複合システムはかなり一致した構造を有していることが分かった。従って、各鉄塩はいずれも本発明を実現でき、ここで一々列挙はしない。
【0130】
図1に示すように、ナノ炭素のXPSスペクトルと複合システムのXPSスペクトルとの比較から、Feの添加によって、ナノ炭素のOの新たなピークが現れ、FeとOとが相互作用を起こしたしていることを示している。ここで、ナノ炭素中の、Feと相互作用したOの割合は52.5%であり、元素構成によると、複数のO原子が同一のFeと相互作用していることを示している。ナノ炭素において、Oは主にC−O単結合(C−OH又はC−O−C)として存在しており、C−O−Cは完全にC−O−にイオン化され難く、−OHのみが一部−O−にイオン化され得る。従って、FeとOとの相互作用には、静電相互作用(Fe
2+/Fe
3+と−O−とによるもの)とFeとOとの間の錯化作用の両方があり、多配位相互作用である。
【0131】
元素分析マッピングから、表17に示すように、ナノ炭素が鉄を吸着してから、組成への影響が少ないことが分かるが、これは、Feがナノ炭素の表面に吸着されたことによって、少量の水がFeに配位し、Oの含有量がわずかに増加したからであると推測される。
【0132】
図2に示す赤外分光スペクトルのように、ナノ炭素鉄複合物は、ナノ炭素にない1216cm
−1、1128cm
−1、640cm
−1、608cm
−1、471cm
−1のピークを有する。一般的に、604cm
−1、443cm
−1に新たな吸収ピークを有することは、Fe−O結合があることを示す(1216cm
−1、1128cm
−1はクエン酸鉄(III)錯体の吸収ピークである)。
【0133】
XPS、元素マッピング、赤外分光スペクトルの解析結果をまとめると、ナノ炭素−鉄複合物は、静電相互作用、錯化作用、及びファンデルワールス力等の複数の相互作用によって結合されてなる複合物であることが確認できた。
【0134】
粒子径と濃度の選択について、実験で使用されたナノ炭素は、酸による酸化処理によって表面に一定量のカルボキシ基を含有するものであり、そのカルボキシ基の含有量は0.01mmol/g〜0.10mmol/gの間にある。カルボキシ基の含有量が0.03mmol/g未満であると、懸濁系の安定性が低くなり、沈降しやすくなり、安定した懸濁液を形成するとができない。カルボキシ基は親水性基であるので、含有量が多いほど、懸濁系の安定性にとって有利になり、ポリビニルピロリドンK30(PVPK30)の含有量を増やして、懸濁系の安定性をある程度向上させることもできるが、それとともに、系の粘度も顕著に増加してしまい、注射投与に不利となる。カルボキシ基の含有量が0.08mmol/gより高くなると、懸濁液の色はより明るくなり(黒から薄黒へ)、これは、ナノ炭素のトレース効果の観察に不利となる。従って、総合的に考慮すると、好ましくは、カルボキシ基の含有量を0.03mmol/g〜0.08mmol/gの範囲とすることが合理的である。
【0135】
ナノ炭素−鉄複合システムは、製剤の安定性と薬理学的効果との両方から、懸濁液粒子径について要求がある。腫瘍組織の毛細血管径が50nm程度であり、リンパ管の孔径が150nm程度であるため、ナノ炭素鉄複合物の粒子径が50nm未満であると、毛細血管に入りやすくなり、血中の鉄濃度に影響する一方、粒子に対するマクロファージの食作用は選択的であって、粒子径が大きいほど、粒子がマクロファージに飲み込まれやすくなり、また、ナノ炭素の粒子径が300nmを超えると、懸濁液の安定性が悪くなり、放置中に沈降や凝集が起こりやすく、安定性の要求を満足できなくなる。なお、リンパ管の開口は150nm程度であるので、300nmを超える大粒子径のナノ炭素鉄粒子は、リンパ管を塞ぎ、その後取り込まれるナノ炭素鉄粒子がリンパ管を通過できず、トレース効果や治療効果を損なう可能性が高い。したがって、製剤の安定性と薬理学的効果の観点から、ナノ炭素−鉄複合物の粒子径を90nm〜300nmの間に制御し、なかでも、より好ましい態様では100nm〜250nmであり、さらに好ましい態様では120nm〜180nmの間である。
【0136】
調製プロセスで添加されるクエン酸ナトリウムは、懸濁液のpH値を調整することに加えて、もう一つより大きな用途は、注射後に、ナノ炭素−鉄複合物が有効成分である鉄を細胞内へ輸送できるように、懸濁液が一定の流動性を有することを確保する抗凝固剤として用いられることである。
【0137】
前記複合物は、第一鉄と第二鉄を含み、「フェロトーシス」及びマクロファージM2のM1への分極化によって、アポトーシスを誘導し抗癌作用を発揮する主な活性成分である。複合物中の鉄は、硫酸鉄(II)、硫酸鉄(III)、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、鉄サッカラート、コハク酸鉄(II)、グルコン酸鉄(II)、デキストラン鉄、ソルビトール鉄、フマル酸鉄(II)、クエン酸鉄(III)アンモニウムなどの有機鉄塩又は無機鉄塩由来のものであってよく、好ましい態様では、硫酸鉄(II)を用いる。
【0138】
ナノ炭素−鉄複合システムにおいて、ナノ炭素は大きな比表面積と多数の空隙を有し、大きな吸着容量を有するとともに、表面における酸素含有基と鉄イオンとの間に、ファンデルワールス力、錯化作用、及び静電相互作用が存在し、炭素と鉄との吸着結合強度が適切であり、ナノ炭素鉄複合物が腫瘍のマクロファージに飲み込まれてから、2価鉄イオンがフェントン反応を起こす。したがって、ナノ炭素−鉄複合物は可溶性の2価鉄塩が好ましく、より好ましい態様では硫酸鉄(II)である。
【0139】
本発明は、カーボンナノ粒子と硫酸鉄(II)との質量比の範囲を含むものであり、これは、ナノ炭素鉄複合物が抗癌効果を発揮するのに重要な要素であって、主に薬理学的実験によって得られるものである。高投与量の鉄は、インビトロ・インビボの腫瘍細胞に対して直接的な細胞毒性を有するので、鉄の投与量を適切に選択しなければならない。多くの実験により、ナノ炭素と鉄との質量比が9.2:1であると、腫瘍細胞に対して高い阻害率を有することが確認されたので、薬理学的実験で、ナノ炭素と鉄との比を3:1〜40:1とする。その結果、ナノ炭素と鉄との比が5:1〜30:1であると、腫瘍に対して50〜80%と高い腫瘍阻害率を有することが示された。ナノ炭素と鉄との比が30:1を超えると、腫瘍阻害率が低くなり、ナノ炭素と鉄との比が5:1未満であると、わずかでも毒性がある。したがって、組み合わせの質量比の好ましい範囲は5:1〜30:1であり、より好ましい態様では6:1〜18:1である。
上記の理論分析を基に、上記試料に対して以下のように細胞実験及び動物実験を行った。
【0140】
1.実験材料:
1)細胞株
SMMC7721肝臓癌細胞、A549肺癌細胞、SGC−7901胃癌細胞、HCT116結腸癌細胞、MDA−MB−231乳癌細胞、Hela子宮頸癌細胞、TPC−1甲状腺癌細胞、SKOV3卵巣癌細胞、マウス由来肝臓癌H22細胞
【0141】
2)細胞培地
細胞用DMEM培地、RMPI1640培地、ウシ胎児血清(FBS)、細胞消化液トリプシン、ペニシリン・ストレプトマイシン混合物、リン酸緩衝食塩水(PBS、pH7.4)
【0142】
3)実験動物
BalB/c−nuマウス、雌、4〜6週齢、体重20±2g。実験中自由に摂食摂水。毎日12時間光照射、マウス5匹/ケージ、独立送風隔離ケージで飼育。
【0143】
クリーングレードの近交系の昆明マウス、雌、6−7週齢、体重20±2g。実験中自由に摂食摂水。毎日12時間光照射、ケージ(5匹/ケージ)は集中換気システムによって通気。
【0144】
4)実験用薬品及び主な機器設備
ナノ炭素−鉄懸濁液(ナノ炭素:鉄イオン=9.2:1)、ナノ炭素懸濁液、硫酸鉄(II)、グルコン酸鉄(II)、鉄サッカラート、クエン酸鉄(III)アンモニウム、シスプラチン注射液、0.9%塩化ナトリウム注射液、プルシアンブルー染色キット、ヌクレアファストレッド染色液、キシレン、無水エタノール、塩酸、中性バルサム、脱水機、包埋機、病理スライサー、スライドドライヤー、高速遠心機、送風乾燥箱、恒温水槽、倒立型蛍光顕微鏡、生物光学顕微鏡、恒温インキュベータ、純水装置、オートクレーブ、クリーンベンチ、マイクロプレートリーダー、電子天秤
【0145】
2.実験方法:
1)細胞実験
対数期で増殖する細胞を採取し、細胞懸濁液の濃度を調整し、1ウェルあたり100μLずつ加えて、測定される細胞の密度が1×10
3〜10
4個/ウェルになるように播種した(周辺部のウェルは無菌PBSで充填された)。5%CO
2、37℃で24時間インキュベートし、濃度勾配を有する(ナノ炭素125、62.5、15.63、3.91μg/mL、鉄イオン13.65、6.83、1.71、0.43μg/mLを含む)ナノ炭素鉄溶液を加え、重複ウェルを3つにした。そして、5%CO
2、37℃の条件で48時間インキュベートした。1ウェルあたりCCK8溶液を10μLずつ加え、引き続き2時間培養した。マイクロプレートリーダーのOD=450nmのところで、各ウェルの吸光度の値を測定した。なお、陰性対照群、同濃度ナノ炭素対照群、及び同濃度鉄剤対照群を設けた。
【0146】
対数期で増殖する細胞を採取し、細胞懸濁液の濃度を調整し、6ウェルプレートを取り、細胞懸濁液を1ウェルあたり1mLずつ加え、細胞数を3×10
4個にした。5%CO
2、37℃で24時間インキュベートし、濃度勾配を有する(ナノ炭素125、62.5、15.63、3.91μg/mL、鉄イオン13.65、6.83、1.71、0.43μg/mLを含む)ナノ炭素鉄溶液を加え、重複ウェルを3つにした。そして、5%CO
2、37℃の条件で48時間インキュベートした。細胞を消化しカウントし、なお、陰性対照群、同濃度ナノ炭素対照群、及び同濃度鉄剤対照群を設けた。
【0147】
2)腫瘍増殖阻害実験
対数増殖期の細胞を採取し、細胞懸濁液の濃度を3×10
7個/mLに調整し、細胞をヌードマウスの右上肢に0.1mL/匹(細胞数約3×10
6個を含む)で皮下接種し、接種したマウスの腫瘍体積が平均100mm
3になったとき、担癌マウスを無作為に、陰性対照群(0.9%塩化ナトリウム注射液)、ナノ炭素対照群、鉄剤対照群、ナノ炭素鉄懸濁液実験群、シスプラチン対照群(腹腔内注射、投与量5mg/kg)にヌードマウス8匹ずつ分けた。上記の各薬物を腫瘍内へ注射した。体積=(長さ×幅
2)/2の式で体積を算出し、腫瘍体積の変化を記録した。
【0148】
H22担癌マウスの乳白色の濃厚な腹水を抽出し、細胞数を3×10
7個/mLに調整し、細胞懸濁液を0.1mLずつ(細胞数約3×10
6個を含む)昆明マウスの右上肢に皮下接種し、接種したマウスの腫瘍体積が平均100mm
3になったとき、担癌マウスを無作為に、陰性対照群(0.9%塩化ナトリウム注射液)、ナノ炭素対照群、鉄剤対照群、ナノ炭素−鉄懸濁液実験群、シスプラチン対照群(腹腔内注射、投与量5mg/kg)に8匹ずつ分けた。上記の各薬物を腫瘍内へ注射した。体積=(長さ×幅
2)/2の式で体積を算出し、腫瘍体積の変化を記録した。
【0149】
3)リンパ節転移阻害実験
対数増殖期の細胞を採取し、細胞懸濁液の濃度を3×10
7個/mLに調整し、細胞を接種量0.05mLずつ(細胞数約1.5×10
6個を含む)ヌードマウスの左後肢足蹠に皮下接種し、癌リンパ節転移マウスモデルを得た。腫瘍の直径が6〜8mmになって、潰瘍や壊死がない場合にマウスを処置した。マウスを無作為に、陰性対照群(0.9%塩化ナトリウム注射液)、ナノ炭素対照群、鉄剤対照群、ナノ炭素鉄懸濁液実験群の4群に10匹ずつ分けた。接種の10日後、マウスを屠殺し、膝窩リンパ節を採集・秤量・固定し、病理学的検査を行った。
【0150】
H22担癌マウスの乳白色の濃厚な腹水を抽出し、細胞数を3×10
7個/mLに調整し、細胞懸濁液を0.05mLずつ(細胞数約1.5×10
6個を含む)昆明マウスの左後肢足蹠に皮下接種し、癌リンパ節転移マウスモデルを得た。腫瘍の直径が6〜8mmになって、潰瘍や壊死がない場合にマウスを処置した。マウスを無作為に陰性対照群(0.9%塩化ナトリウム注射液)、ナノ炭素対照群、鉄剤対照群、ナノ炭素鉄懸濁液実験群の4群に10匹ずつ分けた。接種の10日後、マウスを屠殺し、膝窩リンパ節を採集・秤量・固定し、病理学的検査を行った。
【0151】
4)鉄イオン細胞内分布実験
対数期で増殖する細胞を採取し、細胞懸濁液の濃度を調整し、6ウェルプレートを取り、各ウェルをカバーガラスを覆って、細胞懸濁液を1mlずつ加え、1ウェルあたりの細胞を3×10
4個とした。5%CO
2、37℃で24時間インキュベートし、濃度125:13.65μg/mLのナノ炭素鉄溶液を加え、重複ウェルを3つにした。そして、5%CO
2、37℃の条件で、48時間インキュベートした。各ウェルに4%パラホルムアルデヒド溶液を1mlずつ加えて、30分間固定し、プルシアンブルー染色を行った。
【0152】
H22皮下腫瘍実験では、3週間の観察が終わってから、陰性群、ナノ炭素群、硫酸鉄(II)群、及びナノ炭素硫酸鉄(II)群の腫瘍を採集して固定し、プルシアンブルー染色を行って腫瘍内の鉄イオンを観察した。
【0153】
5)マウスリンパ節トレース実験
KMマウスの足蹠に薬物を50ul注射し、10分間後、マウスを屠殺し、その膝窩リンパ節、総腸骨リンパ節、大動脈周囲リンパ節を解剖し、採点し、写真を撮影した。採点基準について、リンパ節全体が黒染された場合、1点とし、一部黒染された場合、0.5点とし、黒染なしの場合、0点とする。
【0154】
3.実験結果
1)細胞結果:
また、各癌細胞に対する、ナノ炭素と、硫酸鉄(II)、グルコン酸鉄(II)、クエン酸鉄(III)アンモニウム及び鉄サッカラートとの混合物の阻害作用を調べた結果、4種類の鉄剤のうち、ナノ炭素−硫酸鉄(II)混合物の阻害作用が最も強く、Hela細胞、SMMC−7721肝臓癌細胞、H22肝臓癌細胞に対する効果がもっと良好で、細胞生存率が49.54%〜61.26%、即ち阻害率が39.74%〜50.46%であったことが分かった。結果を表18〜21に示す。
図43に、ナノ炭素硫酸鉄(II)がHela子宮頸癌細胞に作用してから48時間後の細胞生存率を示し、49.54%であった。
【0159】
腫瘍増殖阻害結果:
なお、各癌細胞移植皮下腫瘍に対する、ナノ炭素と、硫酸鉄(II)、グルコン酸鉄(II)、クエン酸鉄(III)アンモニウム、及び鉄サッカラートとの混合物の阻害作用を調べた結果、4種類の鉄剤のうち、ナノ炭素硫酸鉄(II)混合物の阻害作用が最も強く、各癌細胞に対する腫瘍阻害率が50〜73%であり、なかでも、H22肝臓癌細胞に対する皮下腫瘍阻害作用が最も強く、73%に達しており、結果を
図4に示す。9種類の癌細胞皮下移植腫瘍に対する4種類の鉄剤の増殖阻害作用を
図4〜
図39に示す。ナノ炭素単体、硫酸鉄(II)、グルコン酸鉄(II)、クエン酸鉄(III)アンモニウム、鉄サッカラート、及びナノ炭素グルコン酸鉄(II)、ナノ炭素クエン酸鉄(III)アンモニウム、ナノ炭素鉄サッカラートは、9種類の腫瘍の増殖に対してほぼ阻害作用がなかったのに対して、ナノ炭素硫酸鉄(II)は9種類の腫瘍に対する腫瘍阻害率がいずれも50%以上になった。なお、ナノ炭素硫酸鉄(II)の異なる質量比における腫瘍に対する増殖阻害作用を比較した。例えば、表22に示すように、ナノ炭素の濃度が25mg/mLである場合、ナノ炭素−硫酸鉄(II)の質量比が2:1〜30:1であると、腫瘍阻害率が50%〜80%で、良好であるが、質量比が2:1であると、毒性が大きく、質量比が5:1未満であると、やや毒性があり、質量比が30:1を超えると、腫瘍増殖阻害作用に劣り、したがって、5:1〜30:1とすることが考えられ、より好ましくは6:1〜18:1である。
【0160】
ナノ炭素−硫酸鉄(II)複合システムの調製には2つの方法があるので、H22肝臓癌細胞、Hela子宮頸癌細胞、及びMDA−MB−231乳癌細胞で、2つの方法の治療効果を比較し、結果を
図40−42に示す。2つの方法によって調製されたナノ炭素−硫酸鉄(II)複合システムはいずれも3種類の癌細胞に対して良好な阻害作用を有し、かつ2つの方法の間に有意差はない。
【0162】
なお、各癌細胞リンパ節転移に対する、ナノ炭素と、硫酸鉄(II)、グルコン酸鉄(II)、クエン酸鉄(III)アンモニウム、及び鉄サッカラートとの混合物の阻害作用を調べた結果、4種類の鉄剤のうち、ナノ炭素硫酸鉄(II)混合物の阻害作用が最も強く、転移リンパ節の重量が有意に軽減され、転移率が有意に減少したことが示され、H22、A549、HCT、Hela、MDA−MB−231、SGC−7901、SKOV3、SMMC−7721、TPC−1を含む9種類の腫瘍細胞に対する動物体内での阻害作用について、詳しい動物実験の比較結果を表23に示す。ナノ炭素単体、硫酸鉄(II)、グルコン酸鉄(II)、クエン酸鉄(III)アンモニウム、鉄サッカラートは、転移リンパ節に対して阻害作用を有さず、ナノ炭素グルコン酸鉄(II)、ナノ炭素クエン酸鉄(III)アンモニウムもリンパ節に対して阻害作用を有さず、ナノ炭素鉄サッカラートはH22、TPC−1リンパ節転移に対して阻害作用を有し(P<0.05)、ナノ炭素硫酸鉄(II)は9種類のリンパ節転移の全てに対して阻害作用を有する。
【0163】
注:「*」は陰性群と比較してP<0.05、「**」は陰性群と比較してP<0.01であることを示す。
【0164】
細胞実験において、陰性群(a1)、ナノ炭素群(b1)、及び硫酸鉄(II)群(c1)では、染色された鉄イオンが見られず、ナノ炭素−硫酸鉄(II)群(d1)では、染色された鉄イオンが多く見られた。動物の腫瘍において、陰性群(a2)及びナノ炭素群(b2)では、鉄イオンの存在が見られず、硫酸鉄(II)群(c2)では、鉄イオンが極僅かに見られたが、ナノ炭素−硫酸鉄(II)群の腫瘍(d2)では、大量の鉄イオンの存在が見られた。結果を
図3に示す。ナノ炭素−鉄複合システムは鉄を細胞内へ効率的に輸送し、細胞内の鉄の濃度を増加させることができることが示唆された。
【0165】
本発明者は、適切な担体を選別すために、ナノ炭素−硫酸鉄(II)とカーボンナノチューブ−硫酸鉄(II)との間で、マウスリンパ節に対するトレース性を比較した。マウスリンパ節トレースの結果、ナノ炭素、ナノ炭素−硫酸鉄(II)によるトレースが良好な結果になったが、カーボンナノチューブ、カーボンナノチューブ−硫酸鉄(II)によるトレースが劣る結果になり、結果を
図44に示し、採点結果を表24に示す。ナノ炭素によるトレースが非常に良好な結果になり、3つのリンパ節ステーションがすべて黒染され、ナノ炭素−硫酸鉄(II)によるトレースも良好な結果になり、3つのリンパ節ステーションはすべて黒染されたが、黒染されたリンパ節の黒さがナノ炭素より薄く、カーボンナノチューブによるトレース性が悪く、膝窩リンパ節のみが一部黒染され、総腸骨リンパ節及び大動脈周囲リンパ節に対してトレース性を有さず、カーボンナノチューブ−硫酸鉄(II)はトレース性を有さず、これらのことから、担体としてナノ炭素を選択する。
【0167】
なお、上記内容は説明を目的とするものに過ぎず、本発明の実施形態を限定するものではなく、上記実施例を参照して本発明を詳しく説明したが、本発明は当業者よって変更又は同等に置き換えられ得ることが理解されるべきであり、本発明の精神及び範囲を逸脱しない、いかなる変更又は部分的な置換は全て、本発明の特許請求の範囲に含まれる。