特許第6901819号(P6901819)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6901819
(24)【登録日】2021年6月22日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 15/06 20060101AFI20210701BHJP
   B60C 15/00 20060101ALI20210701BHJP
   B60C 15/024 20060101ALI20210701BHJP
【FI】
   B60C15/06 C
   B60C15/06 B
   B60C15/00 M
   B60C15/024 B
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-168744(P2015-168744)
(22)【出願日】2015年8月28日
(65)【公開番号】特開2017-43281(P2017-43281A)
(43)【公開日】2017年3月2日
【審査請求日】2018年6月26日
【審判番号】不服2020-8015(P2020-8015/J1)
【審判請求日】2020年6月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】棚田 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】轟 大輔
【合議体】
【審判長】 細井 龍史
【審判官】 岩田 健一
【審判官】 大島 祥吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−141943(JP,A)
【文献】 特開2005−178618(JP,A)
【文献】 特開2014−189178(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/105309(WO,A1)
【文献】 JATMA YEAR BOOK,2002年 1月 1日,第22版,3−11,9−15
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00−19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド、一対のサイドウォール、一対のクリンチ、一対のビード及びカーカスを備えており、
それぞれのサイドウォールが、上記トレッドの端から半径方向略内向きに延びており、
それぞれのクリンチが、上記サイドウォールの端から半径方向略内向きに延びており、
それぞれのビードが、上記クリンチよりも軸方向内側に位置しており、
上記カーカスが、上記トレッド及び上記サイドウォールの内側に沿って一方のビードと他方のビードとの間に架け渡されており、
それぞれのクリンチが半径方向外向きに延びて正規リムのフランジに当接するフランジ当接面を備えており、
上記フランジ当接面が凹部を備えており、
上記フランジ当接面の外端Paを通って上記凹部より半径方向内側で上記フランジ当接面に接する仮想直線をL1とし、この直線L1が上記凹部より半径方向内側で上記フランジ当接面と接する点をPbとすると、上記凹部がこの直線L1より軸方向内側に凹んでおり、
上記クリンチの厚さが上記フランジ当接面の上記点Pbから上記外端Paまでの領域で上記点Pbから上記外端Paに向かって漸増しており、
上記外端Paにおける上記クリンチの厚さTaが7mm以上18mm以下である、空気入りタイヤ。
【請求項2】
上記凹部の形状が円弧状であり、
上記凹部の形状の曲率半径Rdが20mm以上40mm以下である請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
上記正規リムのフランジが上記フランジ当接面が当接するフランジ面を備えており、
上記フランジ面の形状が円弧状であり、
上記フランジ面の形状の曲率半径Rfに対して上記凹部の曲率半径Rdの比が、1.7以上3.9以下である請求項2に記載のタイヤ。
【請求項4】
上記フランジ面の凸状の曲率半径Rfに対して上記フランジ当接面の上記直線L1からの最大凹み量Dの比が、0.05以上0.09以下である請求項3に記載のタイヤ。
【請求項5】
上記凹部の最大凹み位置における上記クリンチの厚さTdに対して上記外端Paにおける上記クリンチの厚さTaの比が、1.3以上3.0以下である請求項1から4のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項6】
上記ビード周りにおいて上記カーカスの軸方向外側に積層されたビードフィラを備えており、
上記ビードフィラが、上記ビードの軸方向外側において、点Pbの半径方向内側から上記外端Paの半径方向外側まで延びており、
上記ビードフィラの半径方向外端Peにおける上記クリンチの厚さTeに対して上記外端Paにおける上記クリンチの厚さTaの比が、1.1以上1.7以下である請求項1から5のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項7】
上記クリンチの複素弾性率Ecが5MPa以上20MPa以下である請求項1から6のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項8】
上記ビードがコアを備えており、
上記コアが、上記タイヤの底面が当接する上記正規リムのシート面に対向して延びるコア底面を備えており、
上記リムに組み込まれて正規内圧にされた状態において、上記コア底面と上記シート面とのなす角度の絶対値が3°以下である請求項1から7のいずれかに記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤでは、燃費の向上の観点から軽量化が求められている。この軽量化のために、タイヤのビード部でも、そのゴムボリュームの低減が図られている。このゴムボリュームの低減は、ビード部の剛性を低下させる。剛性の低下したビード部は、変形し易く、倒れ込み易くなる。
【0003】
特開2011−84148号公報やWO2013/111576号には、ゴムボリュームを低減して、軽量化されたタイヤが開示されている。特開2011−84148号公報には、ビード部の倒れ込みを引き起こさない位置で区画凹所を設けたタイヤが開示されている。WO2013/111576号では、ビード部近傍の凹所の曲率半径に応じてカーカスラインを設定したタイヤが開示されている。このタイヤでは、このようにカーカスラインを設定することで、ビード部の倒れ込みが抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−84148号公報
【特許文献2】WO2013/111576号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図5には、ゴムボリュームを低減して軽量化されたタイヤ52の外形形状が示されている。実線Tは、空気が充填されていないタイヤ52の外形形状を表している。この実線Tは、リムに組み込まれたタイヤ52に正規内圧の空気が充填され、その後に大気圧まで減圧された外形形状を表している。二点鎖線T’は、正規内圧の空気が充填されたタイヤ52の外形形状を表している。図示されないが、このタイヤ52は、その骨格を形成するカーカスが一方のビード部54から他方のビード部54まで架け渡されている。
【0006】
この図5に示される様に、タイヤ52のビード部54は、空気が充填されると軸方向外向きに倒れるように変形し易い。ビード部54の変形に応じて、ビード部54の周辺でカーカスも同様に倒れる様に変形する。このカーカスは、タイヤ最大幅位置で軸方向外側に移動する。このカーカスの変形に応じて、トレッド56は、センター領域に対してショルダー領域が半径方向内側に位置するように変形し易い。このトレッド56の変形は、トレッド56の偏摩耗の一因となる。
【0007】
ビード部54のゴムボリュームを低減したタイヤ52では、ビード部54の剛性が低下し易い。剛性が低下したビード部54は、荷重負荷時に変形し易く、軸方向外向きに倒れ易い。この様なビード部54には、歪みが生じやすい。このビード部54の歪みは、カーカスの損傷、具体的には所謂PTL(プライターンアップルース)の一因となる。
【0008】
本発明の目的は、軽量化しつつ、耐久性の低下と偏摩耗とを抑制したタイヤの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る空気入りタイヤは、トレッド、一対のサイドウォール、一対のクリンチ、一対のビード及びカーカスを備えている。それぞれのサイドウォールは、上記トレッドの端から半径方向略内向きに延びている。それぞれのクリンチは、上記サイドウォールの端から半径方向略内向きに延びている。それぞれのビードは、上記クリンチよりも軸方向内側に位置している。上記カーカスは、上記トレッド及び上記サイドウォールの内側に沿って一方のビードと他方のビードとの間に架け渡されている。それぞれのクリンチは、半径方向外向きに延びてリムのフランジに当接するフランジ当接面を備えている。上記フランジ当接面は、凹部を備えている。上記フランジ当接面の外端Paを通って上記凹部の半径方向内側で上記フランジ当接面に接する仮想直線がL1とされる。この直線L1が上記凹部の半径方向内側で上記フランジ当接面と接する点がPbとされる。このとき、上記凹部は、この直線L1より軸方向内側に凹んでいる。上記クリンチの厚さは、上記フランジ当接面の点Pbから上記外端Paに向かって漸増している。
【0010】
好ましくは、上記凹部の形状は円弧状である。この凹部の形状の曲率半径Rdは、20mm以上40mm以下である。
【0011】
上記リムのフランジは、上記フランジ当接面が当接するフランジ面を備えている。上記フランジ面の形状は、円孔状である。好ましくは、上記フランジ面の形状の曲率半径Rfに対して上記凹部の曲率半径Rdの比(Rd/Rf)は、1.7以上3.9以下である。
【0012】
好ましくは、上記フランジ面の凸状の曲率半径Rfに対して上記フランジ当接面の上記直線L1からの最大凹み量Dの比(D/Rf)は、0.05以上0.09以下である。
【0013】
好ましくは、上記凹部の最大凹み位置における上記クリンチの厚さTdに対して上記外端Paにおける上記クリンチの厚さTaの比(Ta/Td)は、1.3以上3.0以下である。
【0014】
好ましくは、このタイヤは、上記ビード周りにおいて上記カーカスの軸方向外側に積層されたビードフィラを備えている。上記ビードフィラは、上記ビードの軸方向外側において、点Pbの半径方向内側から上記外端Paの半径方向外側まで延びている。上記ビードフィラの半径方向外端Peにおける上記クリンチの厚さTeに対して上記外端Paにおける上記クリンチの厚さTaの比(Ta/Te)は、1.1以上1.7以下である。
【0015】
好ましくは、上記クリンチの複素弾性率Ecは、5MPa以上20MPa以下である。
【0016】
好ましくは、上記フランジ当接面の外端Paにおける上記クリンチの厚さTaは、7mm以上18mm以下である。
【0017】
好ましくは、上記コアは、上記リムの上記シート面に対向して延びるコア底面を備えている。上記リムに組み込まれて正規内圧にされた状態において、上記コア底面と上記シート面とのなす角度の絶対値は、3°以下である。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る空気入りタイヤでは、フランジ当接面は、軸方向内向きに凹んでいる。このフランジ当接面は、リムのフランジと、フランジ面に沿って当接する。これにより、空気が充填されたときに、ビード及びカーカスの動きが抑制される。クリンチの厚さは、フランジ当接面の点Pbから外端Paに向かって、漸増している。これにより、空気を充填したときに、ビード及びカーカスが軸方向外向きに倒れ込むことが抑制されている。これにより、空気が充填されたときに、タイヤの外形形状が変化することが抑制されている。このタイヤでは、トレッドの変形が抑制されている。このタイヤでは、従来のタイヤに比べ、ゴムボリュームを低減しつつ、耐久性の低下とトレッドの偏摩耗とが抑制されうる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤの一部が示された断面図である。
図2図2は、図1のタイヤの一部が拡大された断面図である。
図3図3は、図1のタイヤの一部が拡大された説明図である。
図4図4は、図1のタイヤをリムに組み込んだ使用状態の一部が示された説明図である。
図5図5は、従来のタイヤの外形形状が示された説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0021】
図1には、空気入りタイヤ2が示されている。図1において、上下方向がタイヤ2の半径方向であり、左右方向がタイヤ2の軸方向であり、紙面に対して垂直方向がタイヤ2の周方向である。図1において、一点鎖線CLは、タイヤ2の赤道面を表している。このタイヤ2の形状は、トレッドパターンを除き、赤道面に対して対称である。直線BLは、ビードベースラインを表す。このビードベースラインは、図示されないが、タイヤ2が装着されるリムのリム径を規定する線である。
【0022】
このタイヤ2は、トレッド4、一対のサイドウォール6、一対のクリンチ8、一対のビード10、カーカス12、ベルト14、インナーライナー16、一対のビードフィラ18、一対のカバーゴム19及び一対のチェーファー20を備えている。このタイヤ2は、チューブレスタイプである。このタイヤ2は、トラック、バス等に装着される。言い換えると、このタイヤ2は、重荷重用空気入りタイヤである。
【0023】
トレッド4は、半径方向外向きに凸な形状を呈している。トレッド4は、路面と接地するトレッド面22を形成する。トレッド4には、溝24が刻まれている。この溝24により、トレッドパターンが形成されている。トレッド4は、ベース層とキャップ層とを有している。キャップ層は、ベース層の半径方向外側に位置している。キャップ層は、ベース層に積層されている。ベース層は、接着性に優れた架橋ゴムからなる。ベース層の典型的な基材ゴムは、天然ゴムである。キャップ層は、耐摩耗性、耐熱性及びグリップ性に優れた架橋ゴムからなる。
【0024】
それぞれのサイドウォール6は、トレッド4の端から半径方向略内向きに延びている。このサイドウォール6の半径方向外側端は、トレッド4と接合されている。このサイドウォール6の半径方向内側端は、クリンチ8と接合されている。このサイドウォール6は、耐カット性及び耐候性に優れた架橋ゴムからなる。このサイドウォール6は、カーカス12の損傷を防止する。
【0025】
それぞれのクリンチ8は、サイドウォール6の半径方向略内側に位置している。クリンチ8は、軸方向において、ビード10及びカーカス12よりも外側に位置している。クリンチ8は、耐摩耗性に優れた架橋ゴムからなる。タイヤ2がリムに組み込まれると、このクリンチ8がリムのフランジと当接する。
【0026】
それぞれのビード10は、サイドウォール6の半径方向内側に位置している。ビード10は、コア26と、このコア26から半径方向外向きに延びるエイペックス28とを備えている。このエイペックス28は、コア26から半径方向外向きに延びる硬質エイペックス30と、この硬質エイペックス30から半径方向外向きに延びる軟質エイペックス32とを備えている。コア26はリング状であり、巻回された非伸縮性ワイヤーを含む。ワイヤーの典型的な材質は、スチールである。硬質エイペックス30は、半径方向外向きに先細りである。硬質エイペックス30は、高硬度な架橋ゴムからなる。軟質エイペックス32は、硬質エイペックス30に比べて軟質な架橋ゴムからなる。
【0027】
カーカス12は、カーカスプライ34を備えている。カーカスプライ34は、両側のビード10の間に架け渡されている。カーカスプライ34は、トレッド4及びサイドウォール6の内側に沿っている。カーカスプライ34は、コア26の周りを、軸方向内側から外側に向かって折り返されている。この折り返しにより、カーカスプライ34には、主部34aと折り返し部34bとが形成されている。この主部34aは両側のビード10の間に位置している。折り返し部34bは、ビード10の軸方向外側に位置している。この折り返し部34bの外端34eは、エイペックス28の軸方向外側に位置している。外端34eは、軟質エイペックス32の軸方向外側に位置している。外端34eにおける応力集中は、軟質エイペックス32より緩和される。
【0028】
図示されていないが、カーカスプライ34は、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。各コードが赤道面に対してなす角度の絶対値は、例えば、75°から90°である。換言すれば、このカーカス12はラジアル構造を有する。コードは、例えば、スチールからなる。カーカス12が、2枚以上のカーカスプライ34から形成されてもよい。
【0029】
ベルト14は、半径方向においてトレッド4の内側に位置している。ベルト14は、図1の断面において、軸方向一方から他方に延在している。このベルト14は、カーカス12の半径方向外側に位置している。ベルト14は、カーカス12を補強する。このベルト14は、第一層14a、第二層14b、第三層14c及び第四層14dからなる。この第一層14aから第四層14dまで、半径方向に積層されている。各層は、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。各コードは、スチールからなる。このコードは、赤道面に対して傾斜している。このコードが赤道面に対してなす角度の絶対値は、15°から70°である。このベルト14は、補強層を構成している。
【0030】
インナーライナー16は、タイヤ2の内面を構成している。インナーライナー16は、架橋ゴムからなる。インナーライナー16には、空気遮蔽性に優れたゴムが用いられている。インナーライナー16の典型的な基材ゴムは、ブチルゴム又はハロゲン化ブチルゴムである。インナーライナー16は、タイヤ2の内圧を保持する。
【0031】
図2に示される様に、それぞれのビードフィラ18は、ビード10の軸方向外側に位置している。ビードフィラ18は、カーカスプライ34の軸方向外側に積層されている。ビートフィラ18の半径方向外端部18aは、軸方向において折り返し部34bとクリンチ8の間に位置している。ビードフィラ18の半径方向内端部18bは、半径方向においてカーカスプライ34とチェファー20との間に位置している。
【0032】
このビードフィラ18の外端18cは、ビードベースラインより半径方向外側に位置している。この外端18cは、折り返し部34bの外端34eより半径方向内側に位置している。このビードフィラ18の内端18dは、ビードベースラインより半径方向内側に位置している。この内端18dは、ビードトゥPtより半径方向外側に位置している。
【0033】
このビードフィラ18は、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。ビードフィラ18は、例えば、スチールフィラからなる。各コードは、スチールからなる。このビードフィラ18は、ビード10の変形を抑制する。ビードフィラ18は、タイヤ2の耐久性の向上に寄与しうる。
【0034】
このビードフィラ18は、コア26の周りで折り返されてもよい。カーカスプライ34の外側に積層されて、軸方向外側から軸方向内側に折り返されてもよい。この折り返しにより、ビード10の軸方向外側で半径方向外向きに延びる外側部と、ビード10の軸方向内側で半径方向外向きに延びる内側部とが形成されてもよい。
【0035】
それぞれのカバーゴム19は、軸方向において軟質エイペックス32よりも外側に位置している。図示されているように、カバーゴム19は、折り返し部34bの外端34eを覆う。カバーゴム19は、この折り返し部34bの外端34eへの応力集中を緩和しうる。
【0036】
それぞれのチェーファー20は、ビード10の近傍に位置している。タイヤ2がリムに組み込まれると、このチェーファー20がリムと当接する。この当接により、ビード10の近傍が保護される。このタイヤ2では、チェーファー20は、クリンチ8と一体である。従って、チェーファー20の材質はクリンチ8の材質と同じである。チェーファー20が、布とこの布に含浸したゴムとからなってもよい。
【0037】
このタイヤ2では、チェーファー20が底面36を形成している。クリンチ8がフランジ当接面38を形成している。タイヤ2がリム組み込まれると、この底面36とフランジ当接面38とがリムに当接する。前述のビードフィラ18の外端18cは、フランジ当接面38より半径方向外側に位置している。
【0038】
図3は、タイヤ2の部分拡大図である。このフランジ当接面38には、凹部40が形成されている。凹部40は、タイヤ2の内側に向かって凹んでいる。凹部40は、このフランジ当接面38を周方向に一周している。この凹部40は、フランジ当接面38の全体に形成されてもよいし、フランジ当接面38の一部に形成されてもよい。図3に示される様に、このフランジ当接面38は、凹部40の半径方向内側において、軸方向外向きに凸状の形成されている。この凸状の輪郭は、滑らかな曲線で形成されている。この凸状に形成されたフランジ当接面38は、その半径方向内側で底面36に連続している。
【0039】
図3の符号Paは、フランジ当接面38の半径方向外端を示している。この外端Paは、このタイヤ2がリムに組み込まれて正規内圧にされたときに、リムのフランジと接触する半径方向外端を表している。直線L1は、この外端Paを通って、凹部40の半径方向内側でフランジ当接面38に接する仮想直線を表している。符号Pbは、フランジ当接面38と直線L1との接点を表している。このタイヤ2では、凹部40は、この直線L1より軸方向内側に凹んでいる。
【0040】
図3に示される様に、タイヤ2の周方向に垂直な断面において、凹部40は円弧形状に凹んでいる。図3の矢印Rdは、凹部40の曲率半径を表している。このタイヤ2では、凹部40は、この円弧形状にされて周方向に一周している。符号Pdは、この凹部40において、直線L1から最も離れるフランジ当接面38上の点を表している。両矢印Dは、この直線L1から点Pdまでの深さを表している。深さDは、直線L1と直交する方向に、測定される。本発明では、この深さDは、最大凹み量と称される。この点Pdは、凹部40の最大凹みの位置である。符号Peは、ビードフィラ18の外端18cが位置する、クリンチ8の軸方向内側面8aの点を表している。
【0041】
図3の両矢印Taは、フランジ当接面38の外端Paにおけるクリンチ8の厚さを表している。両矢印Tdは、点Pdにおけるクリンチ8の厚さを表している。両矢印Teは、点Peにおけるクリンチ8の厚さを表している。言い換えると、厚さTeは、ビードフィラ18の外端18cにおけるクリンチ8の厚さを表している。この厚さTa、厚さTd及び厚さTeは、クリンチ8の軸方向内側面8aに対して垂直方向に測られる。
【0042】
図4には、このタイヤ2がリム42に組み込まれて、正規内圧の空気を充填された状態が示されている。このリム42は、タイヤ2の正規リムである。このリム42は、シート部44及びフランジ46を備えている。このシート部44は、タイヤ2の底面36が当接するシート面48を形成している。このフランジ46は、タイヤ2のフランジ当接面38が当接するフランジ面50を形成している。図4の矢印Rfは、フランジ面50の曲率半径を表している。
【0043】
このタイヤ2は、リム42に組み込まれて空気が充填されて使用される。このとき、フランジ当接面38は、リム46のフランジ面50に当接する。このクリンチ8では、フランジ当接面38に当接圧が作用する。このフランジ当接面38が凹部40を備えているので、フランジ当接面38では局所的に高い当接圧が作用することが抑制されている。フランジ当接面38が凹部40を備えているので、フランジ当接面38の全体に当接圧が作用する。このタイヤ2は凹部40を備えることで、タイヤ2がリム42に確りと固定される。これにより、ビード10及びカーカス12の動きが抑制されている。
【0044】
更に、このフランジ当接面38において、クリンチ8の厚さは、点Pbから外端Paに向かって漸増している。このフランジ当接面38は、点Pbから外端Paにおいて、半径方向内側から外側に向かって、軸方向内側から外側向きに傾斜して延びている。このフランジ当接面38によって、タイヤ2に空気が充填されたときに、ビード10が半径方向内側から外側に向かって、軸方向内側から外向きに倒れることが抑制されている。このタイヤ2がリム42に確りと固定されて、ビード10の倒れが抑制されることで、カーカス12の倒れは抑制されている。
【0045】
凹部40がフランジ面50に当接することで、荷重が負荷されたタイヤ2においても、ビード10の変形や倒れが抑制される。カーカス12の動きや倒れが抑制される。このタイヤ2が転がることで、クリンチ8は繰り返し変形させられる。この凹部40が形成されることで、クリンチ8の変形量が軽減される。クリンチ8の変形による発熱が抑制される。この発熱の抑制は、ビード10の耐久性の向上に寄与する。このフランジ当接面38は、ビード10の耐久性の向上に寄与する。更に、カーカス12の動きが抑制されることで、カーカスプライ34の外端34eの剥離が抑制される。この外端34eの剥離は、PTL(プライターンアップルース)と称される。このフランジ当接面38は、PTLの発生の抑制に寄与する。
【0046】
このタイヤ2では、カーカス12の倒れが抑制されることで、トレッド4のセンター領域4Cに対してショルダー領域4Sが半径方向内向きに変形することが抑制されている。このタイヤ2では、カーカス12の倒れが抑制されているので、トレッド4の変形を抑制しつつ、ゴムボリュームが低減されうる。トレッド4、サイドウォール6、クリンチ8、ビード10等のゴムボリュームが低減されうる。このタイヤ2は、軽量化されつつ、トレッド4の偏摩耗が抑制されうる。
【0047】
この凹部40の曲率半径Rdがフランジ面50の曲率半径Rfより小さいタイヤ2ではクリンチ8の厚さTdが小さい。このタイヤ2では、クリンチ8のフランジ当接面38とフランジ46との当接圧が小さい。このタイヤ2では、ビード10が動き易い。このタイヤ2では、ビード10の耐久性が低下し、PTLが生じ易い。このタイヤ2の耐久性の観点から、この曲率半径Rdは、好ましくは20mm以上であり、更に好ましくは25mm以上である。
【0048】
一方で、この曲率半径Rdが大きいタイヤ2では、フランジ当接面38において局所的に当接圧が高くなり易い。この局所的に当接圧が高いタイヤ2では、ビード10の耐久性が低下し、PTLが生じ易い。このタイヤ2の耐久性の観点から、曲率半径Rdは、好ましくは40mm以下であり、更に好ましくは35mm以下である。
【0049】
図3の厚さTaが大きいタイヤ2では、ビード10の倒れが抑制されている。このタイヤ2では、カーカス12の倒れが抑制されている。このビード10の倒れを抑制する観点から、この比(Ta/Td)は、好ましくは1.3以上であり、更に好ましくは1.7以上である。同様の観点から、厚さTeに対する厚さTaの比(Ta/Te)は、好ましくは1.1以上であり、更に好ましくは1.3以上である。
【0050】
一方で、厚さTaに比べて相対的に厚さTdが薄いと歪みの集中が生じる。この歪みの集中は、ビード10の耐久性を低下させる。ビード10の耐久性の向上の観点から、厚さTdに対する厚さTaの比(Ta/Td)は、好ましくは3.0以下であり、更に好ましくは2.5以下である。同様の観点から、厚さTeに対する厚さTaの比(Ta/Te)は、好ましくは1.7以下であり、更に好ましくは1.5以下である。
【0051】
フランジ46の曲率半径Rfに対して凹部40の曲率半径Rdの比(Rd/Rf)が大き過ぎるタイヤ2では、クリンチ8とフランジ46との間で局所的に大きな当接圧が生じる。このタイヤ2では、ビード10が動き易く、ビード10の耐久性が低下する。カーカス12も動き易く、PTLが生じ易い。ビード10の耐久性と耐PTLとの観点から、この比(Rd/Rf)は、好ましくは3.9以下であり、更に好ましくは3.5以下である。
【0052】
一方で、この比(Rd/Rf)が小さ過ぎるタイヤ2では、クリンチ8とフランジ46との間で十分な当接圧が得られ難い。このタイヤ2では、ビード10が動き易く、ビード10の耐久性が低下する。カーカス12も動き易く、PTLが生じ易い。ビード10の耐久性と耐PTLとの観点から、この比(Rd/Rf)は、好ましくは1.7以上であり、更に好ましくは2.0以上である。
【0053】
フランジ当接面38の最大凹み量Dが小さ過ぎるタイヤ2では、クリンチ8とフランジ46との間で局所的に大きな当接圧が生じる。このタイヤ2では、ビード10の耐久性が低下する。また、PTLが生じ易い。ビード10の耐久性と耐PTLとの観点から、フランジ面50の曲率半径Rfに対する最大凹み量Dの比(D/Rf)は、好ましくは0.05以上であり、更に好ましくは0.06以上である。
【0054】
一方で、この最大凹み量Dが大き過ぎるタイヤ2では、クリンチ8とフランジ46との間で十分な当接圧が得られ難い。このタイヤ2では、ビード10の耐久性が低下する。PTLが生じ易い。ビード10の耐久性と耐PTLとの観点から、この比(D/Rf)は、好ましくは0.09以下であり、更に好ましくは0.08以下である。
【0055】
上記クリンチ8の複素弾性率Ecが大きいタイヤ2では、荷重負荷時のビード10の倒れ込みが軽減される。カーカスプライ34の外端34eの動きが抑制される。このタイヤ2は、ビード10の耐久性と耐PTLとに優れる。このタイヤ2は、トレッド4の偏摩耗を抑制すると共に、耐久性を向上しうる。これらの観点から、この複素弾性率Ecは、好ましくは5MPa以上であり、更に好ましくは6MPa以上である。
【0056】
一方で、複素弾性率Ecが大き過ぎるタイヤ2では、隣接するサイドウォール6、ビードウィラ18との間で、応力集中が生じ易い。このビード10及びビード10の周辺の耐久性の観点から、この複素弾性率Ecは、好ましくは20MPa以下であり、更に好ましくは18MPa以下である。
【0057】
本発明では、複素弾性率Ecは、「JIS K 6394」の規定に準拠して、下記の測定条件により、粘弾性スペクトロメーター(岩本製作所社製の商品名「VESF−3」)を用いて計測される。この計測では、クリンチ8のゴム組成物から板状の試験片(長さ=45mm、幅=4mm、厚み=2mm)が形成される。この試験片が、計測に用いられる。
初期歪み:10%
振幅:±2.0%
周波数:10Hz
変形モード:引張
測定温度:70℃
【0058】
フランジ当接面38の外端Paにおいて、クリンチ8の厚さTaが大きいタイヤ2では、クリンチ8とフランジ46との間に十分な当接圧が得られる。これにより、ビード10の動きが抑制される。PTLの発生が抑制される。このタイヤ2の耐久性の向上の観点から、この厚さTaは、好ましくは7mm以上であり、更に好ましくは9mm以上である。
【0059】
一方で、この厚さTaを小さくすることは、タイヤ2の軽量化に寄与する。このタイヤ2は、転がり抵抗が小さい。この観点から、この厚さTaは、好ましくは18mm以下であり、更に好ましくは15mm以下である。
【0060】
図4の状態のタイヤ2では、コア底面26Sとフランジ6のシート面48とのなす角度の絶対値は小い。これにより、タイヤ2に外力が作用したときの、コア26のローテーションが抑制される。このタイヤ2は、フランジ当接面38を備え、更にこのコア底面26Sを備えることで、ビード10の倒れが一層抑制される。カーカス12の動きが一層抑制される。トレッド4の偏摩耗が一層抑制される。この観点から、コア底面26Sとシート面48とのなす角度の絶対値は、好ましくは3°以下である。
【0061】
更に、この角度の絶対値が小さいタイヤ2では、空気が充填されたときに、シート面48に沿って移動して、クリンチ8のフランジ当接面38がフランジ面50に押し付けられ易い。クリンチ8とフランジ46との間に十分な当接圧が得られ易い。これにより、このフランジ当接面38は、その効果を十分に発揮しうる。
【0062】
このタイヤ2のビードフィラ18は、エイペック32の軸方向内側に位置していない。このタイヤ2では、フランジ当接面38がビード10の倒れを抑制している。これにより、ビードフィラ18がエイペックス28の軸方向内側を覆うことなく、PTLの発生が抑制されている。また、このタイヤ2では、このフランジ当接面38がビード10の倒れを抑制しているので、外端34eがビードフィラ18に覆われなくても、PTLの発生が抑制されている。このタイヤ2は、ビードフィラ18を小さくして軽量化しうると共に、PTLの発生が抑制される。
【0063】
重荷重用タイヤであるタイヤ2の正規内圧は、例えば600kPa以上900kPa以下の範囲で設定される。乗用車用タイヤのそれは、例えば180kPa以上240kPa以下の範囲で設定される。このタイヤ2の正規内圧は、乗用車用タイヤのそれに比べて大きい。このタイヤ2の正規荷重は、乗用車用タイヤのそれに比べて大きい。このタイヤ2は、乗用車用タイヤに比べて大きな負荷荷重を受ける。このタイヤ2では、フランジ当接面38を備えることで、クリンチ8に局所的に高い当接圧が作用することが抑制されている。クリンチ8に局所的は歪みが発生することが抑制されている。このフランジ当接面38は、クリンチ8の耐久性の向上に寄与する。このタイヤ2は、高圧の空気が充填されて大きな負荷荷重を受ける重荷重用タイヤに、特に適している。
【0064】
本発明では、タイヤ2の各部材の寸法及び角度は、特に言及されない限り、図1に示されるように、タイヤ2から切り出された断面で測定される。本明細書において正規リムとは、タイヤ2が依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。本明細書において正規内圧とは、タイヤ2が依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。本明細書において正規荷重とは、タイヤ2が依拠する規格において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最高負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。
【実施例】
【0065】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0066】
[テスト1]
[実施例1]
図1に示された基本構造を備え、下記の表1に示された仕様を備えた空気入りタイヤを得た。このタイヤサイズは、「11R22.5」であった。このフランジ当接面の凹部の曲率半径Rdと、クリンチの厚さTdに対する厚さTaの比(Ta/Td)と、厚さTeに対する厚さTaの比(Ta/Te)とは表1に示す通りであった。また、表1において、「クリンチの厚サ」の丸印は、クリンチの厚さがフランジ当接面の点Pbから外端Paに向かって漸増することを表す。X印は、クリンチの厚さがフランジ当接面の点Pbから外端Paに向かって漸増しないことを表す。この「クリンチの厚サ」の丸印とX印の意味は、表2から表6においても同様の意味である。
【0067】
[比較例1]
市販タイヤが準備された。このタイヤは、フランジ当接面に凹部を備えていない。その他の基本的構成は、実施例1と同様であった。
【0068】
[比較例2]
トレッド部材が変更された他は、比較例1と同様にしてタイヤを得た。このトレッド部材を備えるローカバー(生タイヤ)を加硫成形してタイヤを得た。このトレッド部材からタイヤのトレッドが形成された。このトレッドは、比較例1のトレッドに比べて厚さが小さい。このトレッドが変更された他は、比較例1と同様にしてタイヤを得た。
【0069】
[比較例3]
ビード部材が変更された他は、比較例1と同様にしてタイヤを得た。このビード部材を備えるローカバー(生タイヤ)を加硫成形してタイヤを得た。このビード部材からタイヤのビードが形成された。このビードは、比較例1のビードに比べてボリュームが小さい。このビードが変更された他は、比較例1と同様にしてタイヤを得た。
【0070】
[比較例4]
フランジ当接面に凹部を備えていた。クリンチの厚さが、フランジ当接面の点Pbから外端Paに向かって徐々に薄くなって最も薄い部分に至り、その後外端Paに向かって徐々に厚くなっていた。その他の構成は実施例1と同様にしてタイヤを得た。
【0071】
[実施例2−4]
曲率半径Rdと、比(Ta/Td)と、比(Ta/Te)とが、表2の通りにされた他は、実施例1と同様にしてタイヤを得た。
【0072】
[トレッド及びビードの質量]
加硫されてトレッドを構成するトレッド部材の質量と、加硫されてビードを構成するビード部材の質量とが測定された。
【0073】
[トレッドラジアス]
タイヤを正規リム「22.5×8.5」に組み込んだ。このタイヤの内圧が800kPaになるように空気が充填された。このタイヤのプロファイルがプロファイル測定機で測定された。このプロファイルから、トレッドラジアスが測定された。このトレッドラジアスは、周方向に垂直なタイヤ断面において、赤道面位置のトレッド面を含む領域で測定された。このトレッドラジアスが比較例1のタイヤを100とした指数として、下記表1及び2に示されている。この指数の数値が大きいほど、曲率半径が大きく、トレッド面の変形が抑制されている。この指数の数値が大きいほど、偏摩耗が抑制されうる。
【0074】
[耐PTL]
タイヤを正規リムに組み込んだ。このタイヤの内圧が1000kPaになるように空気が充填された。このタイヤをドラム式走行試験機に装着し、76.53kNの縦荷重をタイヤに負荷した。このタイヤを、ドラムの上を20km/hで走行させて、耐PTL性能が評価された。この結果が、実施例1のタイヤを100とした指数として、下記の表1及び2に示されている。この指数の数値が大きいほど、好ましい。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
[テスト2]
[実施例5]
図1の示された基本構造を備え、下記の表3に示された仕様を備えた空気入りタイヤを得た。このタイヤサイズは、「11R22.5」であった。このタイヤの「クリンチの厚サ」と、比(Rd/Rf)と、比(D/Rf)と、クリンチの複素弾性率E*cと、厚さTaと、エイペックスの厚さとは、表3に示す通りであった。このエイペックスの厚さは、カーカスプライの折り返し部の外端の位置で測定された。表4から表6も同様にされた。
【0078】
[比較例5]
クリンチのフランジ当接面に凹部が形成されておらず、「クリンチの厚サ」と、クリンチの複素弾性率E*cと、厚さTaと、エイペックスの厚さとが表3に示す通りにされた他は、実施例7と同様にしてタイヤを得た。表3に示される様に、このタイヤのビードの厚さは、実施例1のそれに比べて厚くされていた。
【0079】
[実施例6−8]
比(Rd/Rf)が表3に示す通りにされた他は、実施例5と同様にしてタイヤを得た。
【0080】
[実施例9−12]
比(D/Rf)が表4に示す通りにされた他は、実施例5と同様にしてタイヤを得た。
【0081】
[実施例13−16]
クリンチの複素弾性率E*cが表5に示す通りにされた他は、実施例5と同様にしてタイヤを得た。
【0082】
[実施例17−20]
厚さTaが表6に示す通りにされた他は、実施例5と同様にしてタイヤを得た。
【0083】
[ビード耐久性]
タイヤを正規リム「8.25×22.5」に組み込んだ。このタイヤの内圧が正規内圧になるように空気が充填された。このタイヤをドラム式走行試験機に装着し、規格荷重の3倍の縦荷重をタイヤに負荷した。このタイヤを、ドラム上で走行させた。ビードが損傷するまでの走行時間が測定された。この結果が、比較例5のタイヤを100とした指数として、下記の表1から5に示されている。この指数の数値が大きいほど、好ましい。
【0084】
[転がり抵抗]
転がり抵抗試験機を用い、下記の測定条件で転がり抵抗を測定した。その結果が、比較例5のタイヤを100とした指数として、下記の表1及び2に示されている。この指数の数値が大きいほど好ましい。
使用リム:22.5×8.5
内圧:900kPa
荷重:33.83kN
速度:80km/h
【0085】
【表3】
【0086】
【表4】
【0087】
【表5】
【0088】
【表6】
【0089】
表1から表2に示される様に、実施例のタイヤでは、比較例のタイヤに比較して、軽量化されている。表3から表4に示される様に、実施例のタイヤは軽量化されて、転がり抵抗が低減されている。一方で、実施例のタイヤは、比較例のタイヤと同等の耐久性を備え、同等の耐偏摩耗を発揮しうる。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0090】
以上説明されたタイヤは、空気入りタイヤに広く適している。このタイヤは、特に高圧の空気が充填されて大きな荷重が負荷される重荷重用タイヤに、特に適している。
【符号の説明】
【0091】
2・・・タイヤ
4・・・トレッド
8・・・クリンチ
10・・・ビード
12・・・カーカス
18・・・ビードフィラ
20・・・チェーファー
22・・・トレッド面
26・・・コア
28・・・エイペックス
34・・・カーカスプライ
36・・・底面
38・・・フランジ当接面
40・・・凹部
42・・・リム
46・・・フランジ
50・・・フランジ面
図1
図2
図3
図4
図5