特許第6901854号(P6901854)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6901854
(24)【登録日】2021年6月22日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】男性用吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/471 20060101AFI20210701BHJP
   A61F 5/44 20060101ALI20210701BHJP
   A61F 13/475 20060101ALI20210701BHJP
   A61F 13/56 20060101ALI20210701BHJP
【FI】
   A61F13/471
   A61F5/44 H
   A61F13/475 110
   A61F13/56 110
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-254358(P2016-254358)
(22)【出願日】2016年12月27日
(65)【公開番号】特開2018-102747(P2018-102747A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】滝田 浩美
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 陽一
(72)【発明者】
【氏名】横松 弘行
【審査官】 ▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−154606(JP,A)
【文献】 特開2004−159820(JP,A)
【文献】 特開平05−200059(JP,A)
【文献】 特開2002−345882(JP,A)
【文献】 特表2009−516539(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/471
A61F 5/44
A61F 13/475
A61F 13/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面シート、裏面シート及びこれら両シート間に位置する吸収体を含む吸収性本体を備え、長手方向及び該長手方向に直交する幅方向を有し、該長手方向の中央に位置する中央域と、該中央域から該長手方向の前後それぞれに延出する前方域及び後方域とを有する男性用吸収性物品であって、
前記吸収性本体の前記長手方向に沿う両側部であって前記表面シートの肌対向面側に、防漏カフが配されており、
前記防漏カフは、前記長手方向における該防漏カフの両端部間に、前記長手方向に沿う伸縮部を有しており、
前記中央域及び前記後方域の少なくとも一方における前記裏面シートの非肌対向面側の面が、衣類に固定するための粘着部を有する接着領域となっており、該接着領域より前記前方域側における前記裏面シートの非肌対向面側の面が、前記粘着部を有しない非接着領域となっており、
平面視において、前記伸縮部が、少なくとも前記接着領域と前記非接着領域とに跨って存在しており
前記吸収体の非肌対向面側には、前記幅方向に延びる弾性体が伸張状態で配されており、
前記弾性体の収縮により前記吸収性本体が前記幅方向に収縮可能な収縮領域が、前記幅方向に離間して複数形成されており、これら複数の収縮領域の間に非収縮領域が形成されており、
前記複数の収縮領域それぞれにおける前記弾性体は、該弾性体の肌対向面側に隣接する部材に接合されていない凸部形成領域と、該凸部形成領域の前記幅方向における両側に位置し、前記部材に接合されている固定領域とを有している、男性用吸収性物品。
【請求項2】
自然状態において、前記非接着領域を有する部分が、前記伸縮部の収縮により、前記接着領域と前記非接着領域との境を折り目として折れ曲がった状態となっている、請求項1に記載の男性用吸収性物品。
【請求項3】
前記非接着領域を有する部分が、前記接着領域を有する部分と相対向するように折れ曲がった状態で使用される、請求項1又は2に記載の男性用吸収性物品。
【請求項4】
前記弾性体は、前記長手方向において、前記中央域に位置している、請求項1〜3の何れか1項に記載の男性用吸収性物品。
【請求項5】
前記吸収体は、平面視において前記弾性体と重なる部分が、該吸収体を厚み方向に貫通する貫通部及び/又は他の部分に比して低坪量の低坪量部を有している、請求項1〜4の何れか1項に記載の男性用吸収性物品。
【請求項6】
前記弾性体は、前記吸収体と前記裏面シートとの間に配されている、請求項1〜5の何れか1項に記載の男性用吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、男性用吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
下着の内側や、おむつ又はおむつカバーの内側に取り付けて、主として尿を吸収するタイプの吸収性物品が知られている。この種の吸収性物品のうち、男性用のものとして、例えば特許文献1には、液透過性のトップシートと、バックシートと、ギャザーシートとを備え、該ギャザーシートは男性性器を挿入するための開口を形成しており、前記トップシートを内側として折り返した排尿ポケット内の折り返し部分にて前記トップシートと前記ギャザーシートとの間に通液部が設けられた、男性用吸収パッドが記載されている。
【0003】
特許文献2には、体液を吸収固定する吸収体本体を備え、該吸収性本体は屈曲構造部分を有しており、該屈曲構造部分を折り返し線とする折り返し部の両側縁部が接合されて袋状構造をなしている吸収体製品が記載されている。
【0004】
特許文献3には、尿を吸収して保持するナプキン本体と、このナプキン本体の内面で着用者のペニスを包持し得るように当該ナプキン本体の形状を矯正し保持する保形部材とを具備してなるメンズナプキンが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−351136号公報
【特許文献2】特開2008−23365号公報
【特許文献3】特開2015−142759
【0006】
しかし、女性用の吸収性物品は、一般的に、着用時において着用者の排尿部と、尿などの排泄液を吸収する吸収体とが対向するのに対し、先に挙げた男性用吸収性物品は、着用者の排尿部と吸収体とが対向しないため、尿漏れを引き起こし易い。このような尿漏れを防止するため、吸収性物品を男性器に巻き付けるように直接装着して使用するものも知られているが、該吸収性物品を巻き付ける装着作業が簡便ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって本発明の課題は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る男性用失禁パッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、表面シート、裏面シート及びこれら両シート間に位置する吸収体を含む吸収性本体を備え、長手方向及び該長手方向に直交する幅方向を有し、該長手方向の中央に位置する中央域と、該中央域から該長手方向の前後それぞれに延出する前方域及び後方域とを有する男性用吸収性物品であって、前記吸収性本体の前記長手方向に沿う両側部であって前記表面シートの肌対向面側に、防漏カフが配されており、前記防漏カフは、前記長手方向における該防漏カフの両端部間に、前記長手方向に沿う伸縮部を有しており、前記中央域及び前記後方域の少なくとも一方における前記裏面シートの非肌対向面側の面が、衣類に固定するための粘着部を有する接着領域となっており、該接着領域より前記前方域側における前記裏面シートの非肌対向面側の面が、前記粘着部を有しない非接着領域となっており、平面視において、前記伸縮部が、少なくとも前記接着領域と前記非接着領域とに跨って存在している、男性用吸収性物品を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、尿漏れを抑制することができ、且つ装着作業が容易な男性用吸収性物品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の男性用失禁パッドの一実施形態を示す斜視図である。
図2図2(a)は、図1に示す男性用失禁パッドをその表面シート側から見た平面図である。図2(b)は、図1に示す男性用失禁パッドをその裏面シート側から見た平面図である。
図3図3は、図2(a)におけるI−I線断面図である。
図4図4は、図1に示す男性用失禁パッドの接着領域及び非接着領域を示す図である。
図5図5(a)は、図1に示す男性用失禁パッドを屈曲させる前の状態を示す平面図である。図5(b)は、図5(a)に示す男性用失禁パッドの屈曲状態を示す平面図であり、図5(c)は図5(b)のV−V線断面図である。
図6図6(a)及び図6(b)は、接着領域のバリエーションを示す平面図である。
図7図7は、本発明(第2発明)の男性用失禁パッドの別の実施形態を示す平面図である。
図8図8(a)は、図7のII−II線断面図である。図8(b)は、図8(a)の男性用失禁パッドによる男性器の固定状態を示す断面図である。
図9図9は、本発明の男性用失禁パッドの更に別の実施形態を示す平面図である。
図10図10(a)は、図9のIII−III線断面図である。図10(b)は、図10(a)の男性用失禁パッドによる男性器の固定状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1及び図2には、本発明の男性用吸収性物品の一実施形態である男性用失禁パッド1を示している。この男性用失禁パッド1は、本発明の第1実施形態であり、長手方向X及びそれと直交する幅方向Yを有する縦長の形状を有している。男性用失禁パッド1は、図2に示すように、その長手方向Xに沿う中央に位置する中央域Cを有している。また中央域Cから長手方向Xの前後にそれぞれ延出する前方域A及び後方域Bを有している。本実施形態において中央域Cは、男性用失禁パッド1をその長手方向に沿って三等分したときの中央に位置している。また、前方域A及び後方域Bは、男性用失禁パッド1をその長手方向に沿って三等分したときに、中央域Cに隣接し、かつ長手方向Xに沿う端部にそれぞれ位置する部位である。男性用失禁パッド1は、着用者の前後方向に対応する長手方向Xと、男性用失禁パッド1を、図2に示すように平面状に広げた状態において、該長手方向Xと直交する幅方向Yとを有している。
【0012】
男性用失禁パッド1は、表面シート11、裏面シート12及びこれら両シート11,12間に位置する吸収体13を含む吸収性本体10を備えている。表面シート11は、男性用失禁パッド1の着用時に着用者の肌と対向する面側に位置している。裏面シート12は、男性用失禁パッド1の着用時に着用者の肌から遠い側に位置する。肌対向面は、男性用失禁パッド又はその構成部材において、着用時に着用者の肌側に向けられる面であり、非肌対向面は、吸収性物品又はその構成部材において、着用時に着用者の肌側とは反対側に向けられる面である。
表面シート11及び裏面シート12としては、この種の吸収性物品に従来用いられている材料と同様のものを用いることができる。例えば表面シート11としては、液透過性を有する不織布や穿孔フィルムなどを用いることができる。裏面シート12としては、液不透過性である合成樹脂製のフィルムや、液難透過性である不織布などを用いることができる。また、裏面シート12として、液不透過性である合成樹脂製のフィルムと、不織布との貼り合わせたシート材を用いることもできる。
【0013】
男性用失禁パッド1は、中央域C及び後方域Bの少なくとも一方における裏面シート12の非肌対向面側の面が、衣類に固定するための粘着部を有する接着領域18となっており、該接着領域18より前方域A側における裏面シート12の非肌対向面側の面が、粘着部を有しない非接着領域17となっている。非接着領域17は、接着領域18よりも前方域A側に位置している。男性用失禁パッド1を使用する際、該男性用失禁パッド1は、接着領域18を介して、下着等の衣類に固定する他、おむつ又はおむつカバーの内面に固定しても良い。男性用失禁パッド1の使用前の状態において、この粘着部は、接着剤により形成されており、剥離可能な保護シート(図示せず)によって被覆されて保護されていることが好ましい。使用時には、保護シートを剥がして粘着部を下着等に固定する。
本実施形態において男性用失禁パッド1は、図4に示すように、厚み方向において吸収体13と重なる部分に接着領域18を有しているが、接着領域18は、吸収体13から長手方向X及び/又は幅方向Yに延出しても良い。
【0014】
表面シート11と裏面シート12との間には吸収体13が配置されている。吸収体13は液保持性のものである。表面シート11及び裏面シート12は、吸収体13の周縁から外方に延出しており、これらのシートの延出部位が互いに接合されることで、これらのシート間に吸収体13が挟持される。吸収体13は、主たる液保持部位である吸収性コア13aを有している。吸収性コア13aは、例えば親水性の繊維材料、例えばフラッフパルプ等のセルロース系繊維の積層体や、該親水性の繊維材料と、ヒドロゲル材料等の高吸収性ポリマーとの混合積層体を用いることができる。吸収性コア13aは、その一部又は全体が、ティッシュペーパーなどの液透過性シートからなるコアラップシート13bで被覆されていてもよい。本実施形態では、図3に示すとおり、吸収体13は、吸収性コア13aと、該吸収性コア13aの表面を被覆するコアラップシート13bから構成されている。
【0015】
吸収体13における吸収性コア13aは、好ましくは長手方向Xにおける男性用失禁パッド1の概ね全長L、より好ましくは全長の80〜90%にわたって配置されており、吸収体13の平面視での輪郭をなしている。そして、男性用失禁パッド1が、前方域A、中央域C及び後方域Bに区分されるのに対応して、吸収性コア13aも、コア前方域14A、コア中央域14C及びコア後方域14Bに区分される。コア前方域14Aは、吸収性コア13aのうち、男性用失禁パッド1の前方域Aに位置する領域である。コア中央域14Cは、吸収性コア13aのうち、男性用失禁パッド1の中央域Cに位置する領域である。同様に、コア後方域14Bは、吸収性コア13aのうち、男性用失禁パッド1の後方域Bに位置する領域である。
【0016】
吸収体13は、男性用失禁パッド1の装着状態において違和感が生じない程度に薄いものであることが好ましい。例えば圧力196cN/cm下での吸収体13の厚みは5mm以下であることが好ましく、4mm以下であることが更に好ましく、3mm以下であることが一層好ましい。厚みの下限値は1.5mmであることが好ましい。吸収体13における吸収性コア13aが、親水性の繊維材料及び高吸収性ポリマーを含む場合、該繊維材料の坪量は、100g/m以上240g/m以下であることが好ましく、120g/m以上220g/m以下であることが更に好ましい。一方、高吸収性ポリマーの坪量は、40g/m以上150g/m以下であることが好ましく、40g/m以上120g/m以下であることが更に好ましい。
【0017】
吸収性本体10の長手方向Xに沿う両側部であって表面シート11の肌対向面側には、防漏カフ16が配されている。より具体的には、図1及び図2に示すように、男性用失禁パッド1は、その表面シート11側において、幅方向Yの両側部の位置に、長手方向Xに延びる一対の防漏カフ16,16を備えている。防漏カフ16,16は、長手方向Xにおける該防漏カフ16の両端部が、吸収性本体10の一部に固定された端部固定部16cを有している。本実施形態において、防漏カフ16の前記両端部は、表面シート11に、接着剤等の公知の手段で固定され、端部固定部16cとなっている。端部固定部16cは、平面視して、吸収性本体10の長手方向Xの端部から、吸収体13と重なる位置まで形成されていることが好ましい。防漏カフ16は、長手方向Xに延びるシート材16aを有している。シート材16aは、長手方向Xに延びる一対の側部域のうち、幅方向Yの外方側に位置する側部域が、表面シート11と接合されている(図3参照)。またシート材16aは、幅方向Yの内方側に位置する側部域の側縁の位置に、該側縁に沿って配されている弾性部材16bを有している。
【0018】
本実施形態の弾性部材16bは、長手方向Xに沿う端部固定部16c間において部分的に伸張状態で配されている。具体的には、弾性部材16bは、図4に示すとおり、接着剤等の公知の手段によって、シート材16aに複数箇所、伸張状態で固定された部分Nを有している。これにより、防漏カフ16は、弾性部材16bが伸張状態で固定された部分Nにおいて収縮性を有している。また、本実施形態の弾性部材16bは、シート材16aに固定された部分間以外の部分では非伸張状態で配されており、該非伸張状態の部分では収縮性を有していない。シート材16aは、表面シート11と接合されていない部位が、弾性部材16bの収縮によって起立して、液抵抗性の防漏カフ16が形成される。このように、防漏カフ16は、長手方向Xにおける該防漏カフ16の両端部間に、長手方向Xに沿って収縮性を有する伸縮部Nを有している。
【0019】
上記の防漏カフ16の伸縮部Nは、図4に示すように、平面視において少なくとも接着領域18と非接着領域17とに跨って存在している。より具体的には、図5(a)に示すように、伸張状態の弾性部材16bが、長手方向Xに沿って、接着領域18と非接着領域17とに跨っている。ここで、「平面視において」とは、男性用失禁パッド1の各部の弾性部材を伸長させ、設計寸法(弾性部材の影響を一切排除した状態で平面状に広げたときの寸法と同じ)となるまで拡げた状態において厚み方向から見た状態をいう。斯かる構成により、防漏カフ16の伸縮部N(弾性部材16b)が長手方向Xに収縮して、男性用失禁パッド1の前方域Aが長手方向Xの内方へ引っ張られる。これにより、男性用失禁パッド1は、自然状態において図5(b)及び(c)に示すように、接着領域18と非接着領域17との境Eにおいて、幅方向Yに沿った折り目で屈曲し、肌対向面側に折り返される。折り返された状態において、前方域Aと中央域Cとは着用者の男性器P部分に対応し、後方域Bは着用者の股下部分に対応する。このように屈曲した男性用失禁パッド1は、折り返し部分である前方域Aと中央域Cとの間に、男性器Pを挟むようにして装着することができるため〔図5(b)及び(c)参照〕、排尿部を吸収体13に対向させた状態で固定することができ、尿漏れの発生を効果的に抑制することができる。また、男性用失禁パッド1は、下着等の衣類やおむつに接着させて装着するため、装着作業が簡便である。
【0020】
上記の効果をより確実に奏させる観点及び、男性用失禁パッド1の屈曲を容易にする観点から、裏面シート12おける接着領域18、非接着領域17、防漏カフ16の伸縮部Nは以下の寸法等であることが好ましい。
非接着領域17は、男性用失禁パッド1の前方域Aに位置するが、長手方向Xにおいて、前方域Aを越えて中央域Cに部分的に配されていても良い。
【0021】
前方域Aに位置する非接着領域17の長手方向Xにおける全長L17(図4参照)は、長手方向Xにおける前方域Aの全長LA(図4参照)に対し、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上であり、また好ましくは100%以下、より好ましくは98%以下であり、また好ましくは50%以上100%以下、より好ましくは70%以上98%以下である。
【0022】
前方域Aに位置する非接着領域17の長手方向Xにおける全長L17(図4参照)は、好ましくは30mm以上、より好ましくは50mm以上であり、また好ましくは130mm以下、より好ましくは100mm以下であり、また好ましくは30mm以上130mm以下、より好ましくは50mm以上100mm以下である。
幅方向Yにおける非接着領域17の長さは、図4に示すように、幅方向Yにおける裏面シート12の長さと同じである。
【0023】
男性用失禁パッド1は、吸収性本体10の後方域B側の端部(後端)側にも非接着領域17を有していても構わない。この場合、前方域Aに位置する非接着領域17の長手方向Xにおける全長は、後方域Bに位置する非接着領域17の長手方向Xにおける全長よりも長いことが好ましい。
【0024】
非接着領域17は前方域A側に位置しているが、図4に示すように、接着領域18の一部が、前方域Aと中央域Cとの境界を越えて前方域Aに存在している場合、非接着領域17は、吸収性本体10の前方域A側の端部(前端)側に位置していれば良い。接着領域18は、少なくともその一部が吸収体13と重なるようにして配されていることが好ましい。また、接着領域18は、長手方向Xにおいて、好ましくは男性用失禁パッド1の中央域Cの全域に亘って、より好ましくは中央域C及び後方域Bの全域に亘って配されている。
【0025】
上述したように、接着領域18は、長手方向X及び幅方向Yの何れか一方又は双方に、吸収体13から延出した状態で配されていても良い。長手方向Xにおける接着領域18の全長L18(図4参照)は、長手方向Xにおける吸収体13の全長L13(図4参照)に対し、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上であり、また好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下であり、また好ましくは30%以上80%以下、より好ましくは50%以上70%以下である。
【0026】
幅方向Yにおける接着領域18の長さW18(図4参照)は、幅方向Yにおける吸収体13の長さW13(図4参照)に対し、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上であり、また好ましくは100%以下、より好ましくは80%以下であり、また好ましくは20%以上100%以下、より好ましくは30%以上80%以下である。尚、吸収体13が、図4に示すように、長手方向Xに沿って幅方向Yにおける長さが変化している場合、上記の幅方向Yにおける接着領域18の長さW18の割合は、接着領域18が配されている、吸収体13の幅方向Yにおける最大長さW13に応じた割合である。また、図6(b)に示すように、接着領域18において粘着部18aが存在しない部分がある場合、上記の幅方向Yにおける接着領域18の長さW18は、幅方向Yにおいて最も外方側に位置する粘着部18aどうしを基準にする。即ち、幅方向Yにおける接着領域18の長さW18は、幅方向Yにおいて最も外方側に位置する粘着部18aどうしの幅方向Yの外方端部間の長さを指す。
【0027】
長手方向Xにおける接着領域18の全長L18(図4参照)は、好ましくは40mm以上、より好ましくは70mm以上であり、また好ましくは290mm以下、より好ましくは240mm以下であり、また好ましくは40mm以上290mm以下、より好ましくは70mm以上240mm以下である。
【0028】
幅方向Yにおける接着領域18の長さW18(図4参照)は、好ましくは20mm以上、より好ましくは40mm以上であり、また好ましくは150mm以下、より好ましくは100mm以下であり、また好ましくは20mm以上150mm以下、より好ましくは40mm以上100mm以下である。幅方向Yにおける接着領域18の長さW18は、長手方向Xに沿って上記の範囲で変化させても良い。
【0029】
防漏カフ16の伸縮部Nは、長手方向Xにおいて、少なくとも接着領域18と非接着領域17とに跨って存在しているが、長手方向Xにおける一方の端部固定部16cから他方の端部固定部16cに亘って連続して存在していることが好ましい。
また、接着領域18に存在する伸縮部Nの長さは以下の範囲であることが好ましい。尚、本実施形態のように、伸縮部Nが伸張状態の弾性部材16bから構成される場合、伸縮部Nの長さは、伸張状態の弾性部材16bの長さを指す。
【0030】
接着領域18に存在する伸縮部Nの長さLN18(図4参照)は、長手方向Xにおける接着領域18の全長L18に対して、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上であり、また好ましくは100%以下、より好ましくは80%以下であり、また好ましくは10%以上100%以下、より好ましくは15%以上80%以下である。
【0031】
また、非接着領域17に存在する伸縮部Nの長さLN17(図4参照)は、長手方向Xにおける非接着領域17の全長L17に対して、好ましくは35%以上、より好ましくは50%以上であり、また好ましくは100%以下、より好ましくは80%以下であり、また好ましくは35%以上100%以下、より好ましくは50%以上80%以下である。
【0032】
長手方向Xにおける防漏カフ16の伸縮部Nの全長LNは、長手方向Xにおける吸収体13の全長L13に対し、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上であり、また好ましくは95%以下、より好ましくは85%以下であり、また好ましくは15%以上95%以下、より好ましくは20%以上85%以下である。また、防漏カフ16の伸縮部Nは、長手方向Xにおいて吸収体13が存在している領域に亘って存在していることがさらに好ましい。
【0033】
長手方向Xにおける防漏カフ16の伸縮部Nの全長LNは、好ましくは40mm以上、より好ましくは60mm以上であり、また好ましくは340mm以下、より好ましくは270mm以下であり、また好ましくは40mm以上340mm以下、より好ましくは60mm以上270mm以下である。
【0034】
本実施形態の男性用失禁パッド1は、長手方向Xにおける防漏カフ16の両端部間に、長手方向Xに沿う弾性部材16bを伸張状態で配することで、伸縮部Nを有している。このように、防漏カフ16の伸縮部Nが伸張状態の弾性部材16bから構成される場合、弾性部材16bは、伸縮部N以外の部分に非伸張状態で配されていても良く、伸縮部Nのみに伸張状態で配されていても良い。
また、弾性部材16bに代わって、防漏カフ16を構成するシート材16aが長手方向Xに収縮する伸縮性シートであっても良い。伸縮性シートとしては、各種公知のものを用いることができ、例えば、特開2008−179128号公報に記載の伸縮シート、特開2007−22066号公報に記載の伸縮性シート、特開2007−22066号公報に記載の伸縮性不織布の製造方法により製造される伸縮性不織布、特許3054930号公報等を用いることもできる。
【0035】
本実施形態において接着領域18は、図4に示すように、長手方向Xに沿う縦長の長方形状をしており、幅方向Yにおける防漏カフ16間の略全域に亘って配されているが、図6(a)に示すように、吸収体13の外縁に沿った形状をしていても良い。
また、接着領域18は、図6(b)に示すように、粘着部18aが複数存在し、これら粘着部18aどうしが幅方向Yに離間した状態で配されていても良い。このように幅方向Yにおいて、粘着部18aどうしが離間して存在し、該粘着部18a間に粘着部18aが存在しない部分がある場合、接着領域18は、粘着部18a及び粘着部18aが存在しない部分を含む。即ち、接着領域18は、幅方向Yにおいて少なくとも一部に粘着部18aが存在する領域である。また、非接着領域17とは、幅方向Yの全てにおいて粘着部18aが存在しない領域である。このように、接着領域18と非接着領域17とは、幅方向Yにおける粘着部18aの有無により、長手方向Xに沿って区別される。
【0036】
装着作業をより容易にする観点から、男性用失禁パッド1は、自然状態において、非接着領域17を有する部分が、伸縮部Nの収縮により、接着領域18と非接着領域17との境Eを折り目として折れ曲がった状態となっていることが好ましい〔図5(b)及び(c)参照〕。自然状態とは、男性用失禁パッド1を装着する前の状態である。
また、尿漏れをより抑制する観点から、男性用失禁パッド1は、図5(b)及び(c)に示すように、非接着領域17と重なる部分が、伸縮部Nの収縮により、接着領域18と相対向するように折れ曲がった状態で使用されることが好ましい。
「非接着領域17と重なる部分が、接着領域18と相対向するように折れ曲がった状態」とは、非接着領域17と接着領域18とが平面視投影図において重なっていれば良く、非接着領域17と接着領域18との間に隙間があっても良い。また、自然状態においても、男性用失禁パッド1は、このように折れ曲がった状態であることが好ましい。
【0037】
次に、本発明の第2実施形態の男性用失禁パッド1について説明する。第2実施形態の男性用失禁パッド1については、第1実施形態と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。特に説明しない点については、第1実施形態の男性用失禁パッド1と同様であり、同様の構成要素には同様の符号を付してある。
図7には、本発明の第2実施形態の男性用失禁パッド1が示されている。図7に示す男性用失禁パッド1において、吸収体13の非肌対向面側には、幅方向Yに延びる弾性体が伸張状態で配されている。より具体的には、吸収体13のコアラップシート13bと裏面シート12との間に、幅方向Yに延びる弾性体15が伸張状態で配されている。
【0038】
本実施形態の男性用失禁パッド1において、弾性体15と、該弾性体15を挟む部材とは接合されている。より具体的には、弾性体15を挟むコアラップシート13bと裏面シート12とが、弾性体15と接合している。
また、本実施形態の男性用失禁パッド1は、伸張状態の弾性体15が収縮することにより、吸収性本体10が幅方向Yに収縮可能な収縮領域を有している。幅方向Yに延びる弾性体15が収縮すると、該弾性体15を挟む部材が、幅方向Yの内方に縮むように変形し、これに伴い吸収性本体10が幅方向Yに収縮する。より具体的には、図8(b)に示すように、弾性体15が幅方向Yに収縮することにより、該弾性体15と接合しているコアラップシート13bと、裏面シート12とが、幅方向Yの内方に収縮するように変形する。これに伴い吸収性本体10も幅方向Yの内方に収縮する。吸収性本体10が幅方向Yに収縮すると、幅方向Yにおける防漏カフ16間の幅が狭まる。そして、図8(b)に示すように、幅方向Yにおいて男性器Pを起立した防漏カフ16間で挟みこむことができる。これにより、男性器Pを安定して男性用失禁パッド1に収めることができるため、排尿部が吸収体13の幅方向Y外方にずれることを抑制し、尿漏れの発生を効果的に抑制することができる。また、このような男性用失禁パッド1は、男性器に巻きつけるような操作を要しないため、装着作業が簡便である。
【0039】
上記の効果をより確実に奏させる観点から、弾性体15は、長手方向Xにおいて、好ましくは前方域A又は中央域Cに位置しており、より好ましくは中央域Cに位置している。
また、弾性体15は、長手方向Xにおける前方域Aの端部(前端)から、長手方向Xにおける男性用失禁パッド1の全長Lの好ましくは15%以上、より好ましくは25%以上の位置に配され、また好ましくは50%以下、より好ましくは35%以下の位置に配され、また好ましくは15%以上50%以下、より好ましくは25%以上35%以下の位置に配される(図7参照)。尚、このような位置に配される弾性体15は、伸張状態で配されることにより、収縮性を有している。
【0040】
上記の効果をより確実に奏させる観点から、弾性体15の寸法は下記の範囲であることが好ましい。尚、弾性体15は、下記の範囲において伸張状態であり、収縮性を有している。弾性体15は、伸張状態で該弾性体15を挟む部材に、接着剤等の公知の手段によって固定することで、伸張状態とすることができる。
【0041】
弾性体15は、吸収体13の幅方向Yの全域に配されていることが好ましいが、幅方向Yの一部に配置しても良く、上記の効果を奏する程度に弾性体15の収縮により吸収体13の幅が狭くなれば良い。幅方向Yにおける弾性体15の長さW15a〔図8(a)参照〕は、幅方向Yにおける吸収体13の長さW13cに対して、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上であり、また好ましくは100%以下、より好ましくは90%以下であり、また好ましくは30%以上100%以下、より好ましくは50%以上90%以下である。本実施形態の吸収体13のように、長手方向X沿って吸収体13の幅方向Yが変化する場合、上記の弾性体15の長さの割合は、該弾性体15が配されている長手方向Xの位置における、吸収体13の幅(幅方向Yの長さ)である。
【0042】
幅方向Yにおける弾性体15の長さW15a〔図8(a)参照〕は、好ましくは20mm以上、より好ましくは50mm以上であり、また好ましくは150mm以下、より好ましくは135mm以下であり、また好ましくは20mm以上150mm以下、より好ましくは50mm以上135mm以下である。
尚、前述した通り、弾性体15は伸張状態で配されているため、上記の幅方向Yにおける弾性体15の長さW15aは、伸張状態の弾性体15の長さである。
【0043】
弾性体15は、吸収体13の非肌対向面側に配されていれば良い。本実施形態のように、弾性体15を、吸収体13の非肌対向面側に配置すると、該弾性体15の収縮力を吸収体13へ伝え易く、幅方向Yの内方に向かって吸収性本体10及び防漏カフ16を収縮させることができる。この収縮をより容易にする観点から、弾性体15は、吸収体13と裏面シート12との間に配されていることが好ましい。吸収体13がコアラップシート13bを備える場合は、弾性体15は、コアラップシート13bと裏面シート12との間に配されていることが好ましく、コアラップシート13bを備えていない場合は、吸収性コア13aと裏面シート12との間に配されていることが好ましい。この他に、裏面シート12が複数枚のシートで構成されている場合、該裏面シート12を構成するシート間に配されていても良く、吸収体13を構成する吸収性コア13aが複数の層からなる積層構造である場合、該吸収性コア13aの層間に配されていても良い。
【0044】
男性用失禁パッド1は、裏面シート12の非肌対向面側の面に、上述した衣類に固定するための粘着部を有する接着領域18を有している。上記の男性器Pを安定して男性用失禁パッド1に固定する観点から、裏面シート12の非肌対向面側の面において、弾性体15と重なる部分には、接着領域18が存在しないことが好ましい。
【0045】
尿漏れをより確実に抑制する観点から、第1実施形態のように、防漏カフ16の伸縮部Nと非接着領域17とを具備することに加え、本実施形態のように、幅方向Yに延びる伸張状態の弾性体15を具備することが好ましい。斯かる構成により、男性用失禁パッド1の非接着領域17と重なる部分が、伸縮部Nの収縮により、接着領域18と対向するように折れ曲がると共に、男性用失禁パッド1を幅方向Yに収縮させることができる。この場合、男性用失禁パッド1の折り曲げと、幅方向Yにおける男性用失禁パッド1の収縮とを容易に両立させる観点から、弾性体15は、長手方向Xにおいて、接着領域18よりも前方域A側に位置していることが好ましく、接着領域18と非接着領域17との境Eに位置していることがより好ましい。
【0046】
次に、本発明の第3実施形態の男性用失禁パッド1について説明する。第3実施形態の男性用失禁パッド1については、第2実施形態と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。特に説明しない点については、第2実施形態の男性用失禁パッド1と同様であり、同様の構成要素には同様の符号を付してある。
【0047】
図9及び図10(a)には、本発明の第3実施形態の男性用失禁パッド1が示されている。図9に示す男性用失禁パッド1において、吸収体13のコアラップシート13bと裏面シート12との間には、幅方向Yに延びる弾性体15が配されている。男性用失禁パッド1は、幅方向Yに離間して形成された複数の収縮領域15bを有し、複数の該収縮領域の間は非収縮領域21を形成している。換言すると、弾性体15は、非収縮領域21を挟んで相互に離間した左右の収縮領域を形成している。複数の収縮領域のそれぞれにおける弾性体15は、該弾性体15の肌対向面側に隣接する部材である吸収体13に接合されていない凸部形成領域22と、該凸部形成領域22の幅方向Yにおける両側に位置し、吸収体13に接合されている固定領域20とを有している〔図10(a)参照〕。より具体的には、2本の弾性体15が、幅方向Yにおける吸収体13の中央部に間隔21を空けて、伸張状態で配され、収縮領域15bを形成している。この幅方向Yにおける吸収体13の中央部において弾性体15が配されていない領域が、非収縮領域21である。ここで、吸収体13の中央部とは、該吸収体13を、男性用失禁パッド1の長手方向Xに延びる互いに平行な2直線であって且つ該吸収体13の幅方向Yの最大長さ(最大幅ともいう)を3等分する2直線で区分したとき、その中央に位置する部分である。非収縮領域21は、図9及び図10(a)に示すように、少なくとも吸収体13の中央部と部分的に重なる位置に存在すればよい。前記2本の弾性体15は、弾性収縮性を発現する態様で配されており、非収縮領域21を挟んで相互に離間した左右の収縮領域15bを形成している。
【0048】
また、本実施形態の弾性体15は、幅方向Yにおける両側端部に吸収体13と接合している固定領域20と、該固定領域20間に吸収体13と接合していない領域22とを有している。一方、弾性体15は、幅方向Yにおける該弾性体15の全域において、裏面シート12と接合している(不図示)。このような接合態様により、伸張状態の弾性体15の収縮に伴い、該弾性体15を挟む部材が、幅方向Yの内方に縮むように変形する。この際、吸収体13における弾性体15と接合していない領域22が、厚み方向Zにおいて、肌対向面側に向かって凸状に盛り上がるようにして変形する〔図10(b)参照〕。以下、弾性体15の収縮により盛り上がる領域22を、凸部形成領域22ともいう。本実施形態の弾性体15は、凸部形成領域22間で男性器Pを挟むようにして固定することができるため、排尿部が吸収体13の幅方向にずれることを抑制し、尿漏れの発生を効果的に抑制することができる。
【0049】
上記の効果をより確実に奏させる観点から、収縮領域15b(弾性体15)、非収縮領域21、固定領域20及び凸部形成領域22の寸法等は以下の範囲であることが好ましい。尚、収縮領域15bは弾性体15が弾性収縮性を発現可能な領域である。
【0050】
幅方向Yにおける収縮領域15bの長さW15b〔図10(a)参照〕は、幅方向Yにおける吸収体13の長さW13dに対して、好ましくは15%以上、より好ましくは25%以上であり、また好ましくは40%以下、より好ましくは35%以下であり、また好ましくは15%以上40%以下、より好ましくは25%以上35%以下である。本実施形態の吸収体13のように、長手方向X沿って吸収体13の幅方向Yが変化する場合、上記の弾性体15の長さの割合は、該収縮領域15bが配されている長手方向Xの位置における吸収体13の幅(幅方向Yの長さ)である。
【0051】
幅方向Yにおける収縮領域15bの長さW15b〔図10(a)参照〕は、好ましくは15mm以上、より好ましくは20mm以上であり、また好ましくは50mm以下、より好ましくは40mm以下であり、また好ましくは15mm以上50mm以下、より好ましくは20mm以上40mm以下である。
【0052】
幅方向Yにおける非収縮領域21の長さW21〔図10(a)参照〕は、幅方向Yにおける吸収体13の長さW13dに対して、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上であり、また好ましくは50%以下、より好ましくは35%以下であり、また好ましくは15%以上50%以下、より好ましくは20%以上35%以下である。本実施形態の吸収体13のように、長手方向Xに沿って吸収体13の幅方向Yが変化する場合、上記の非収縮領域21の割合は、該弾性体15が配されている長手方向Xの位置における吸収体13の幅(幅方向Yの長さ)である。
【0053】
幅方向Yにおける非収縮領域21の長さW21〔図10(a)参照〕は、好ましくは15mm以上、より好ましくは20mm以上であり、また好ましくは50mm以下、より好ましくは40mm以下であり、また好ましくは15mm以上50mm以下、より好ましくは20mm以上40mm以下である。
【0054】
幅方向Yにおける固定領域20の長さW20〔図10(a)参照〕は、幅方向Yにおける弾性体15の長さW15bに対して、好ましくは2%以上、より好ましくは4%以上であり、また好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下であり、また好ましくは2%以上20%以下、より好ましくは4%以上10%以下である。
【0055】
幅方向Yにおける固定領域20の長さW20〔図10(a)参照〕は、好ましくは1mm以上、より好ましくは2mm以上であり、また好ましくは10mm以下、より好ましくは5mm以下であり、また好ましくは1mm以上10mm以下、より好ましくは2mm以上5mm以下である。
【0056】
幅方向Yにおける凸部形成領域22の長さW22〔図10(a)参照〕は、幅方向Yにおける弾性体15の長さW15bに対して、好ましくは60%以上、より好ましくは80%以上であり、また好ましくは98%以下、より好ましくは95%以下であり、また好ましくは60%以上98%以下、より好ましくは80%以上95%以下である。
【0057】
幅方向Yにおける凸部形成領域22の長さW22〔図10(a)参照〕は、好ましくは14mm以上、より好ましくは18mm以上であり、また好ましくは49mm以下、より好ましくは38mm以下であり、また好ましくは14mm以上49mm以下、より好ましくは18mm以上38mm以下である。
【0058】
非収縮領域21は、幅方向Yにおける収縮性を有していなければ良い。非収縮領域21には、本実施形態のように弾性体15が配されていなくても良く、弾性体15が弾性収縮性を発現しない態様で配されていても良い。弾性体15は、非伸張状態にすることで、弾性収縮性が発現されず、例えば、弾性体15を1か所又は複数箇所で切断することで、非伸張状態にすることができる。また、1本の弾性体15が、幅方向Yにおける吸収体13の全長に亘って配される場合、収縮領域15bでは伸張状態で固定され、非収縮領域21では非伸張状態で固定されている態様が挙げられる。
【0059】
尿漏れをより確実に抑制する観点から、第1実施形態のように、防漏カフ16の伸縮部Nと非接着領域17とを具備することに加え、本実施形態のように、凸部形成領域22と固定領域20とを有する弾性体15を、非収縮領域21を挟むように配して成る、幅方向Yに離間して形成された複数の収縮領域15bを具備することが好ましい。斯かる構成により、男性用失禁パッド1が上記のように折れ曲がると共に、吸収体13の凸部形成領域22と重なる部分を厚み方向Zに盛り上がるように変形させて、男性用失禁パッド1を幅方向Yに収縮させることができる。この場合、男性用失禁パッド1の折り曲げと、吸収体13の変形に伴う男性用失禁パッド1の収縮とを容易に両立させる観点から、弾性体15は、長手方向Xにおいて、接着領域18よりも前方域A側に位置していることが好ましく、接着領域18と非接着領域17との境に位置していることがより好ましい。
【0060】
吸収体13は、コア前方域14A、コア中央域14C及びコア後方域14Bが相互に連続している。吸収体13は、これら各域において同材料から構成されており、各域における坪量が同じであっても良い。上記の第2実施形態又は第3実施形態のように、吸収体13を収縮又は変形させる際、吸収体13を柔らかくして、弾性体15による収縮を容易にする観点から、第2実施形態又は第3実施形態を採用する場合、吸収体13は、平面視して弾性体15と重なる部分が、該吸収体を厚み方向に貫通する貫通部及び/又は他の部分に比して低坪量の低坪量部を有していることが好ましい。これにより、吸収性本体10を幅方向Yに収縮させることによる男性器Pの固定を容易に行うことができる。
【0061】
吸収体13が、平面視して弾性体15と重なる部分に、該吸収体13を厚み方向に貫通する貫通部を有する場合、貫通部は長手方向Xに延びるスリット状のものが好ましく、該長手方向Xにおける長さは、好ましくは10mm以上、より好ましくは20mm以上であり、また好ましくは80mm以下、より好ましくは50mm以下であり、また好ましくは10mm以上8mm以下、より好ましくは20mm以上50mm以下である。
【0062】
また、吸収体13は、長手方向Xに複数の貫通部が間欠的に並んだ貫通部列を幅方向Yに複数列有していることが好ましい。貫通部列における長手方向Xに沿う貫通部どうしの間隔は、好ましくは2mm以上、より好ましくは3mm以上であり、また好ましくは8mm以下、より好ましくは5mm以下であり、また好ましくは2mm以上8mm以下、より好ましくは3mm以上5mm以下である。幅方向Yに沿う貫通部列どうしの間隔は、好ましくは2mm以上、より好ましくは3mm以上であり、また好ましくは8mm以下、より好ましくは5mm以下であり、また好ましくは2mm以上8mm以下、より好ましくは3mm以上5mm以下である。
【0063】
吸収体13が、平面視して弾性体15と重なる部分に、他の部分に比して低坪量に形成された低坪量部を有する場合、低坪量部は長手方向Xに延びる縦長のものが好ましく、該低坪量部の長手方向Xにおける長さは、好ましくは10mm以上、より好ましくは20mm以上であり、また好ましくは80mm以下、より好ましくは50mm以下であり、また好ましくは10mm以上80mm以下、より好ましくは20mm以上50mm以下である。
【0064】
また、低坪量部の幅方向Yにおける長さは、好ましくは10mm以上、より好ましくは20mm以上であり、また好ましくは120mm以下、より好ましくは100mm以下であり、また好ましくは10mm以上120mm以下、より好ましくは20mm以上100mm以下である。
低坪量部の例として、吸収性コア13aの肌対向面側及び非肌対向面側のいずれか一方に開口した底部を有する溝部を形成することが挙げられる。この溝部の開口部分は、吸収性コア13aの形成材料からなる層で塞がれていてもよい。
【0065】
吸収体13は、男性用失禁パッド1に付加的な機能を付与する目的で、弾性体15と重なる部分以外の部分において、コア前方域14A、コア中央域14C及びコア後方域14Bの各域の坪量を異ならせてもよい。例えば、コア前方域14A及びコア中央域14Cにおける親水性の繊維材料や高吸収性ポリマーの坪量が、コア後方域14Bにおけるそれらの坪量よりも多くなるように偏在化させることにより、液の吸収速度が速くなり更に漏れにくくなる。また、親水性の繊維材料や高吸収性ポリマーの坪量を男性着用者の排泄部にあたるコア前方域14Aに偏在化させると一層効果を奏する。
【0066】
更に、各域の少なくとも1つに、貫通部や溝部を形成してもよい。特に、コア中央域14Cに貫通部及び/又は溝部を形成すると、尿の拡散性を高め吸収力が向上し漏れ防止につながる点で有利である。溝部及び/又は貫通孔は、例えば長手方向Xに沿って延びるように1条又は複数条形成することができる。
【0067】
男性用失禁パッド1においては、表面シート11と吸収体13との間に、別のシートを配置してもよい。以下、このシートのことを「サブレイヤーシート」と呼ぶこととする。サブレイヤーシートは、男性用失禁パッド1に付加的な機能を付与するために用いられる。付加的な機能の例としては、吸収した尿から発生する臭いの消臭機能や、吸収した尿の逆戻り防止機能などが挙げられる。消臭機能を付与するためには、サブレイヤーシートに、例えば活性炭等の消臭剤を含有させればよい。尿の逆戻り防止機能を付与するためには、例えば繊維存在密度が低く、嵩高な構造の繊維シートをサブレイヤーシートとして用い、表面シート11と吸収体13とを離間させるようにすればよい。サブレイヤーシートとしては、親水性シート材料で例えばエアスルー不織布、スパンボンド不織布、立体賦形不織布、開孔フィルム等を用いることができる。また、サブレイヤーシートの坪量は、15g/m以上80g/m以下であることが好ましい。
【0068】
サブレイヤーシートは、吸収体13における表面シート11との対向面の全域にわたって配置することができ、また該対向面の一部にのみ配置することもできる。該対向面の一部にのみサブレイヤーシートを配置する場合には、吸収体13における幅方向Yの中央の位置に、長手方向Xに延びるように配置することができる。この場合、少なくとも中央域Cにサブレイヤーシートを配置することが好ましく、中央域C及び前方域Aにサブレイヤーシートを配置することがより好ましく、吸収体13における長手方向全域にわたってサブレイヤーシートを配置することがさらに好ましい。
【0069】
弾性体15及び防漏カフ16に配された弾性部材16bは、例えば糸ゴム、平ゴム、フィルム状のゴムから構成することができる。これらの弾性部材が糸ゴムから構成される場合、複数本を並べて配置することができ、糸ゴムの繊度は、470dtex以上1240dtex以下であることが好ましく、620dtex以上940dtex以下であることがより好ましい。また、防漏カフ16に配された弾性部材16bとして用いられる糸ゴムの繊度は、弾性体15として用いられる糸ゴムの繊度の1倍以上1.6倍以下であることが好ましい。
【0070】
防漏カフ16の弾性部材16b及び弾性体15は、好ましくは2倍以上4倍以下、より好ましくは2.5倍以上3倍以下の伸張倍率である。この範囲の伸張倍率を採用することで、十分な収縮力が発現し、伸縮部Nによる男性用失禁パッド1の屈曲や、弾性体15による吸収性本体10の収縮をより容易にすることができる。
【0071】
以上のとおりの男性用吸収性物品は、下着等の衣類の内面に装着したり、あるいはおむつ又はおむつカバーの内面に装着したりする尿吸収のための男性用失禁用パッドとして特に好適なものである。
【0072】
また、上述した一の実施形態における説明省略部分及び一の実施形態のみが有する要件は、それぞれ他の実施形態に適宜適用することができ、また、各実施形態における要件は、適宜、実施形態間で相互に置換可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 男性用失禁パッド
10 吸収性本体
11 表面シート
12 裏面シート
13 吸収体
15 弾性体
15b 収縮領域
16 防漏カフ
16a シート材
16b 弾性部材
17 非接着領域
18 接着領域
20 固定領域
21 非収縮領域
22 凸部形成領域
A 前方域
B 後方域
C 中央域
N 伸縮部
X 長手方向
Y 幅方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10