(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
澱粉・樹脂複合中間粒体を形成する工程(a)が、澱粉、熱可塑性樹脂、低融点添加剤及び高融点添加剤を含む複合材料を、加熱撹拌及び加熱混合し、低融点及び高融点添加剤が溶融状態にある流動性の澱粉・樹脂複合材料を形成する工程、
低融点及び高融点添加剤が溶融状態にある流動性の澱粉・樹脂複合材料を撹拌しつつ、低融点添加剤の融点以上の所定温度まで冷却し、少なくとも高融点添加剤を冷却固化させる工程、及び、
熱可塑性樹脂をコア部とし、コア部表面に低融点添加剤を含有する澱粉を含む粉粒体を有する被覆層を形成した澱粉・樹脂複合中間粒体を形成させる工程
を含む、請求項1に記載の澱粉・樹脂複合成形加工材料の製造方法。
澱粉・樹脂複合中間粒体を形成する工程(a)が、加熱撹拌し、形成された流動性の澱粉・樹脂複合材料を低融点添加剤の融点温度以上であって、溶融した添加剤の少なくとも一種が冷却固化する温度に冷却しつつ、撹拌する工程を含む、熱可塑性樹脂をコア部とし、コア部表面に低融点添加剤を含有する澱粉を含む粉粒体を有する被覆層を形成した澱粉・樹脂複合中間粒体を形成する工程を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の澱粉・樹脂複合成形加工材料の製造方法。
加熱混練する工程(c)が、加熱加工温度100〜190℃に設定し、回転数を制御し、二軸スクリューにより剪断と温度上昇を抑えて加熱混練し、流動性の澱粉・樹脂複合材料を得る工程である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の澱粉・樹脂複合成形加工材料の製造方法。
加熱混練する工程(c)が、溶融温度以上で、所定の温度及び圧力下、押し出す工程を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の澱粉・樹脂複合成形加工材料の製造方法。
押し出し工程(d)が、澱粉・樹脂複合成形加工材料のシート状物又はストランド状物を形成する工程であり、冷却された澱粉・樹脂複合成形加工材料のシート状物を粉砕又は切断してペレットを得る工程を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の澱粉・樹脂複合成形加工材料の製造方法。
押し出した澱粉・樹脂複合成形加工材料のシート状物の厚み及び/又はスキン層の厚みを制御する工程をさらに含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の澱粉・樹脂複合成形加工材料の製造方法。
押し出した澱粉・樹脂複合成形加工材料のシート状物を圧延ロールで冷却処理する工程をさらに含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の澱粉・樹脂複合成形加工材料の製造方法。
温度制御された3本の圧延ロールにより冷却し、澱粉・樹脂複合成形加工材料シート状物の厚み及びスキン層の厚みを制御する工程である、請求項9又は10に記載の澱粉・樹脂複合成形加工材料の製造方法。
熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン又はABS樹脂から選択される1種であり、高融点添加剤が、100〜150℃の融点を有する滑材として機能する添加剤である、請求項2〜11のいずれか1項に記載の澱粉・樹脂複合成形加工材料の製造方法。
澱粉・樹脂複合成形加工材料が、発泡剤を含むもしくは含まない射出成形、ブロー成形、押出成形、キャストフィルム成形、インフレーション成形、コンプレッション成形、カレンダ成形、トランスファー成形、回転成形に適した澱粉・樹脂複合成形加工材料ペレット又はシート、又は発泡剤を含むもしくは含まない真空成形品もしくは真空圧空成形品、射出成形品、ブロー成形品、押出成形品、キャストフィルム成形品、インフレーション成形品、コンプレッション成形品、カレンダ成形品、回転成形又はトランスファー成形品のいずれかを製造するための澱粉・樹脂複合成形加工材料である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の澱粉・樹脂複合成形加工材料の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(澱粉・樹脂複合成形加工材料の製造)
上記の本発明の澱粉・樹脂複合成形加工材料の製造方法について、以下にさらに詳しく説明する。
本発明に係る澱粉・樹脂複合成形加工材料の製造方法は、特殊な手段、設備を使用することなく、安定した品質の澱粉・樹脂複合中間粒体を形成し、その澱粉・樹脂複合中間粒体を原材料とすることで、従来、得られ難かった澱粉が50重量%以上含有されていても、均一性、均質性に優れたバラツキの少ない澱粉・樹脂複合成形加工材料が得られる製造方法である。
【0024】
すなわち、本発明の製造方法は、澱粉と、低融点添加剤とを加熱撹拌して混合し、澱粉に溶融した低融点添加剤を絡ませ、付着させ、溶融した低融点添加剤を含有する澱粉を形成する。そして、さらに熱可塑性樹脂の粒状体と高融点添加剤を加熱撹拌しながら混合し、澱粉と熱可塑性樹脂の粒状体を均一分散させ、流動性の澱粉・樹脂複合材料とする。その後、流動性の澱粉・樹脂複合材料を撹拌しながら冷却し、少なくとも溶融状態にある高融点添加剤を再固化することにより、熱可塑性樹脂の粒状体をコア部とし、そのコア部の表面に低融点添加剤を含有する澱粉を含む粉粒体の被覆層を有する澱粉・樹脂複合中間粒体を製造する工程を含む方法である。
【0025】
そして、さらに、澱粉・樹脂複合中間粒体を製造する工程を、製造される澱粉・樹脂複合中間粒体を原材料として澱粉・樹脂複合成形加工材料の製造工程に供給するように組み込み、又は別途、澱粉・樹脂複合中間粒体が製造され、原材料として供給し、成形加工材料を製造する工程、すなわち材料劣化を抑えつつ溶融混練し、澱粉・樹脂複合材料の樹脂溶融物として押し出すことにより澱粉が50重量%以上含有されていても、均一性、均質性に優れた、常に安定した品質のバラツキの少ない澱粉・樹脂複合成形加工材料を製造する工程を含む、澱粉・樹脂複合成形加工材料を安定的に連続的に一貫して製造することができる方法である。
【0026】
(澱粉)
本発明の澱粉・樹脂複合成形加工材料の製造方法において、成分原料を澱粉・樹脂複合中間粒体の形態を経て混練し、溶融押し出しし、澱粉・樹脂複合成形加工材料を製造する方法において、澱粉・樹脂複合中間粒体を形成するためバイオマス材料として用いる原材料の澱粉としては、生澱粉を用いることができ、例えば、トウモロコシ澱粉、豆澱粉、タピオカ澱粉、いも澱粉、麦澱粉、米澱粉、キツサバ澱粉、ヒシ澱粉、ハス澱粉、サゴ澱粉、わらび澱粉、クズ澱粉等が挙げることができる。
【0027】
また、物理的な変性澱粉も用いることができ、アルファー化澱粉、湿熱澱粉などが挙げることができる。さらに、生分解性に影響ない程度に化学修飾した澱粉も用いることができ、例えば、アセト酢酸エステル化澱粉、酢酸エステル化澱粉、ヒドロキシメチルエーテル化澱粉、ヒドロキシプロピルエーテル澱粉、カルボキシメチルエーテル化澱粉、アリルエーテル化澱粉、メチルエーテル化澱粉、コハク酸エステル化澱粉、キサントゲン酢酸エステル化澱粉、硝酸エステル化澱粉、尿素リン酸エステル化澱粉、リン酸エステル化澱粉
、リン酸架橋澱粉、ホルムアルデヒド架橋澱粉、アクロレイン架橋澱粉、エピクロルヒドリン架橋澱粉などが挙げることができる。
【0028】
本発明において、澱粉として、生澱粉、物理的な変性澱粉又は化学修飾した澱粉の中から少なくとも1種以上、1種単独でも又は2種以上を組み合わせて配合して使用することができる。好ましくは、生澱粉が用いられる。
【0029】
(高分子材料)
本発明において、澱粉・樹脂複合成形加工材料の成分には、成形加工性、物性を改質するため少なくとも熱可塑性樹脂を含むものである。本発明では、さらに、生分解性を低下させず、生分解性材料の比率を高めるためコア部となる粒状体の高分子材料として生分解性樹脂を用いることもできる。
【0030】
本発明において、使用される熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系の樹脂、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエステル、エチレン/酢酸ビニル共重合体、アルキレン/アクリレート又はメタクリレート共重合体などの石油系プラスチックを用いることができる。好ましくは、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂が用いられる。特に、好ましくは、ポリプロピレンが用いられる。
【0031】
熱可塑性樹脂としては、ペレット状の粒状物が用いられ、本発明の均一、均質な澱粉・樹脂複合成形加工材料を形成するためには、20重量%以上50重量%未満の範囲にあることが好ましい。熱可塑性樹脂が、20重量%未満であると、得られる澱粉・樹脂複合成形材料として比重が小さい澱粉の量が多くなり、バイオマス成形材料として均一化し難くなり、複合成形加工材料として均一、均質なものが得難くなる。
【0032】
しかも添加剤の量も多くする必要がある。結果、機械的特性の低下が著しく、成形時、偏肉、破れなどが生じ、薄物の成形、深物の深絞り成形が困難となり、質感が得られず、成形加工が困難になる。
【0033】
一方、熱可塑性樹脂が50重量%以上だと、澱粉が熱可塑性樹脂の改質剤として、例えば、充填剤として位置付けられ、得られる澱粉・樹脂複合成形加工材料は、プラスチック成形材料としての物性、性質が強く出て、成形は可能であるが、得られる澱粉・樹脂複合成形材料は、澱粉が充填剤として添加されるものとなり、プラスチック材料の性質が強く、減容化がし難く、温室効果ガスの排出削減への貢献が低下し、バイオマス原料としての澱粉・樹脂複合成形加工材料が得られ難くなる。しかも、成形加工材料は、充填剤の澱粉が多く、成形加工材料の物性及び複合材料としての均一性、均質性の変動が大きく、安定した材料が得られ難くなる。
【0034】
本発明の複合成形加工材料の製造方法において澱粉・樹脂複合中間粒体を形成することなく、原材料の各成分組成が同じ材料から成形加工材料を製造した場合、製造される成形材料の物性、複合材料としての均一性、均質性の変動が大きく、バラツキが大きく、安定した材料が得られ難くなる。
【0035】
コア部を形成する生分解性材料としては、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸系ポリマー、ポリアクリルアミドなどの親水性高分子材料、各種アクリレート、エチレン/酢酸ビニル共重合体、ポリウレタンなどのエマルジョン、脂肪族ポリエステル系樹脂であるカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリブチレンアジペート、ポリブ
チレンサクシネート、ポリヒドロキシブチレート・バリレート共重合体などの生分解性材料を挙げることができる。
【0036】
本発明では、製造過程で形成された複合中間粒体、シート又は成形後の抜きかすを破砕し、粒状体にしたフラフも澱粉・樹脂複合材料あるいは澱粉材料からなる生分解性材料であることから、再利用し、熱可塑性樹脂とともに、コア部となる粒状体として用いることができる。
【0037】
本発明において、使用する熱可塑性樹脂の粒状体の平均粒径は、長軸1〜10mm、短軸1〜10mmの範囲のものが採用される。この長軸の大きさを超えた場合又は大きさが小さい場合は、粒体の付着量のバランスが悪くなるため、いずれも澱粉と熱可塑性樹脂との澱粉・樹脂複合中間粒体として均一、均質性が劣る。さらには、成形物中での分散性が劣る。粒径の大きい粒体が存在することもあって、物性や製品の外観も劣る結果となる。少ない量で効果的に粉粒体ができ、成形加工性がよく、製品の外観に影響しないことを総合的に考慮して、本発明の澱粉・樹脂複合成形加工材料に使用する熱可塑性樹脂は、平均粒径を上記の範囲のものを使用する。
【0038】
(添加剤)
本発明では、その流動性の澱粉・樹脂複合材料を形成し、澱粉・樹脂複合中間粒体を形成するため、加熱撹拌する工程では、添加剤が澱粉、熱可塑性樹脂に絡まり、付着し、澱粉と熱可塑性樹脂を親和し、付着させるように機能し、また澱粉と熱可塑性樹脂の粒状体を流動性の澱粉・樹脂複合材料の性状を保持できるようにするため、さらに、冷却撹拌し、少なくとも高融点添加剤が再固化されたとき、澱粉・樹脂複合中間粒体の形態を安定的に形成できるようにする接着剤的な役割を果たすことができる添加剤を加える必要がある。
【0039】
さらに、澱粉・樹脂複合成形材料の押出時には、澱粉と熱可塑性樹脂を均一に分散させる分散剤として機能し、さらに溶融混練し、溶融する樹脂と溶融しない澱粉とを材料劣化することなく押し出すことができるようにするため滑性を付与することができる添加剤を加える。
【0040】
本発明は、添加剤を加えることにより成形加工性、機械的強度などが改善されたバラツキの少ない澱粉・樹脂複合成形加工材料が得られるように機能する添加剤が選択され、用いられる。
【0041】
(低融点添加剤)
本発明では、上記のように機能する添加剤として、投入直後は粉体だが、材料の昇温と共に溶融状態になり、澱粉に付着することで澱粉を熱可塑性樹脂と付着させやすくし、澱粉と均一、均質に混合され、澱粉の流動性を高めるように働くよう、内部滑性を高める添加剤を用いる。そして添加剤は、熱可塑性樹脂の溶融温度より低い融点温度を有し、比較的低温度で溶融する、例えば、100℃以下で溶融するもの、好ましくは、60〜100℃で溶融するもの、しかも粘性があり、粉体と絡み粘着させるように機能し得る添加剤が用いられる。少なくとも前記のような性質、機能を果たすことができ、澱粉・樹脂複合中間粒体中に同時存在する、相対的に低温で溶融され、澱粉と絡ませ、付着され添加される添加剤を本発明では「低融点添加剤」と定義する。
【0042】
低融点添加剤として、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、アセチル化モノグリセリド、有機酸モノグリセリド、中鎖脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、特殊脂肪酸エステル、高級アルコール脂肪酸エステルなどが挙げられる。好ましくは、グリセリ
ン系脂肪酸エステル等の低融点添加剤が用いられる。
【0043】
該低融点添加剤の添加量は、好ましくは、0.1〜10.0重量%である。0.1重量%以下であると、付着剤としての機能が不十分であり、10重量%以上であると、原材料にベタ付きを生じさせ、流動撹拌性が低下し、また、澱粉玉が形成されやすくなり、高温撹拌機中での流動性のある澱粉混合物の形成が遅れ、製造効率が低下する。しかも、加熱時間が長くなることで澱粉の黄変が観察される。
【0044】
(高融点添加剤)
本発明では、澱粉・樹脂複合中間粒体中に同時存在する、相対的に低温で溶融され、澱粉と絡ませ、付着される低融点添加剤よりも高い融点を有する添加剤をさらに添加する。この添加剤は、上述した低融点添加剤より高い融点を有しており、好ましくは、100〜150℃の範囲のもので、低融点添加剤より先に固化する添加剤であって、熱可塑性樹脂の溶融温度より低い融点を有するものであり、冷却撹拌したときに、低融点添加剤より先に再固化し、熱可塑性樹脂をコア部とし、そのコア部表面に、低融点添加剤を付着し含有する澱粉を含む粉粒体の被覆層を付着させ、澱粉・樹脂複合中間粒体を形成する役割を果たすものである。
【0045】
高融点添加剤は、さらに、成形加工材料を製造するため使用されるまで澱粉・樹脂複合中間粒体から澱粉が剥離し、粉落ちすることなく、あるいは中間粒体が崩壊することなく複合中間粒体の形態を保持するように機能する添加剤である。
【0046】
高融点添加剤は、熱可塑性樹脂の種類、添加剤との相性をも考慮する必要があるが、澱粉・樹脂複合中間粒体を原材料として加工機中で均一、均質な澱粉・樹脂複合成形加工材料とするため複合原材料を分散させ、澱粉・樹脂複合材料として溶融混練するとき均一分散し、しかも加工機との摩擦を軽減させ、かつ加工機中の流動性を高め、外部滑性を高める滑性を付与することができる添加剤が好適に使用される。
【0047】
少なくとも前記のような性質、機能を果たすことができる、澱粉・樹脂複合中間粒体中に同時存在する、相対的に高温で溶融される添加剤を、本発明では「高融点添加剤」と定義する。
【0048】
本発明では、澱粉・樹脂複合中間粒体を形成し、その溶融混練時の分散性を向上させ、滑性を付与することができる高融点添加剤には、脂肪酸金属塩、炭化水素系、高級アルコール系、脂肪族アミド系、脂肪酸エステルなどが使用できる。本発明の高融点添加剤には、脂肪酸金属塩としては、炭素数が少なくとも10個以上の飽和又は不飽和脂肪酸の金属塩であり、ステアリン酸などの脂肪酸系のものが好適に使用できる。
【0049】
具体的には、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン鎖アルミニウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、安息香酸カリウム、安息香酸ナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム等が挙げられる。これらのうち少なくとも1種類が使用できる。
高融点添加剤の含有量は、好ましくは、1.0〜15重量%である。
【0050】
本発明は、上記したような低融点及び高融点の添加剤を2種以上使用するものであって、加熱撹拌時に、澱粉や樹脂への付着と流動性を高め、冷却撹拌したとき、再固化することにより自動的に本発明の澱粉・樹脂複合中間粒体の形態が形成されるように添加剤を選択したものである。そして、形成された澱粉・樹脂複合中間粒体を原材料にして、加工機中で複合中間粒体を溶融もしくは溶融混練することにより均一、均質な複合材料とすることができ、溶融押出を可能にするとともに、本発明の生産品である澱粉・樹脂複合成形加
工材料に必要な配合剤を添加することにより必要な物性、成形加工性を備えた生産品を得ることができるものである。
【0051】
(その他の添加剤)
本発明は、澱粉・樹脂複合中間粒体を用いることにより、均一、均質なバラツキの少ない澱粉・樹脂複合成形加工材料が得られるように、また各種成形加工法における成形加工性を有し、作業性に優れた材料が得られるように、さらに食品容器を初めとして、シート、フィルムなどの包装材料、緩衝材、生活用品、農業用製品など各種用途に好適に加工して使用が可能となるように、添加剤を選択し用いることが好ましい。その際、上記の澱粉、熱可塑性樹脂及び上記添加剤以外に各種の添加剤が各用途及び求められる物性、機能に応じて選択され、本発明の目的を損なわない範囲で1種又は2種以上を組み合わせて添加することができる。
【0052】
本発明では、澱粉と熱可塑性樹脂との親和性を向上させるため相溶化剤を添加することもできる。相溶化剤としては、酸変性ポリオレフィン、酸変性ナイロン、酸変性ポリスチレン、酸変性EVA、酸変性エチレン共重合ポリマー、酸変性アクリレート、アクリル酸変性EVA、変性エチレンアクリレートなどが使用できる。
【0053】
本発明の澱粉・樹脂複合成形加工材料を製造するために使用する添加剤としては、必要に応じて、酸化チタン、カーボンブラック、染料、顔料などの着色剤が使用できる。その他にも必要に応じて、エラストマ、酸化防止剤、架橋剤、紫外線吸収剤、発泡剤などの添加剤を適宜添加することができる。
本発明において澱粉・樹脂複合中間粒体の形状や大きさは、この澱粉と混合される粒状の熱可塑性樹脂の粒状体の形状や粒子径等を考慮して適宜決定できる。粒体の大きさは、直径が、例えば、1〜10mmの範囲であり、長さが1〜10mmの範囲である。
【0054】
本発明の澱粉・樹脂複合成形加工材料の製造方法において、複合中間粒体の製造には、上記したとおり高温撹拌機で形成された流動性の澱粉・樹脂複合材料を冷却撹拌機中で冷却し再固化させることにより粒状体の熱可塑性樹脂の粒状体をコア部とし、澱粉を主成分とする粉粒体により形成された被覆層を表面に有する形態としたものを得ることができる。
【0055】
本発明において複合中間粒体の製造方法は、生産品である澱粉・樹脂複合成形加工材料を製造するために複合中間粒体を溶融混練するまでは澱粉・樹脂複合中間粒体が形崩れを起こさない程度の、及び澱粉が剥離しない程度の粘着力で付着されている形態安定性を有し、複合中間粒体材料として安定した状態を維持できるように形成することができる。そのことにより、澱粉を主成分として含有するバイオマス・樹脂複合材料からなる成形材料の製造において、複合成形加工材料としてバラツキが少なく、均一性、均質性、成形加工性、作業性及び定量性を改善することができる。
【0056】
(澱粉・樹脂複合成形加工材料の製造)
本発明の澱粉・樹脂複合中間粒体を用いた澱粉・樹脂複合成形加工材料の製造は、例えば、澱粉複合中間粒体を構成する成分組成の材料を原材料とし、又は澱粉・樹脂複合中間粒体を原材料とし、生産品である澱粉・樹脂複合成形加工材料までを連続的に一貫して製造する方法として組み立てられている、
図1に示す澱粉・樹脂複合成形加工材料連続一貫製造装置を用いることにより製造が行なわれる。
【0057】
本発明の澱粉・樹脂複合成形加工材料連続一貫製造装置は、本発明の成形加工材料の製造を可能にする澱粉・樹脂複合中間粒体を製造し、貯蔵し得る澱粉・樹脂複合中間粒体製
造装置部Aと、前記製造された複合中間粒体を原材料とし、生産品である澱粉・樹脂複合成形加工材料を製造し、及び又はカレンダ成形等の二次加工し、最終製品の原材料を製造する澱粉・樹脂複合成形加工材料製造装置部Bを含む装置からなっている。
【0058】
澱粉・樹脂複合中間粒体の製造は、澱粉・樹脂複合成形加工材料連続一貫製造装置の澱粉・樹脂複合中間粒体製造装置部Aに示す各装置からなる製造装置を独立した装置として、又は例示したように連続一貫装置の一部装置により製造するものであって、澱粉・樹脂複合中間粒体製造装置部Aは、澱粉と溶融した低融点添加剤の澱粉混合物を形成するため加熱撹拌する高温撹拌機1と、澱粉と熱可塑性樹脂の粒状体と低融点及び高融点添加剤を含む澱粉・樹脂複合材料から該複合中間粒体を形成するため冷却あい撹拌する冷却撹拌機2と、造粒した澱粉・樹脂複合中間粒体をストックし、澱粉・樹脂複合成形加工材料を連続的に製造可能にするように原材料とする複合中間粒体の供給バッファとすることができるストックタンク兼供給装置3を含む製造装置である。
【0059】
そして、澱粉・樹脂複合成形加工材料は、澱粉・樹脂複合成形加工材料製造装置部Bにより製造されるものであって、該澱粉・樹脂複合中間粒体を製造する装置部Aにおいて製造され、貯蔵された澱粉・樹脂複合中間粒体を原材料として連続的に供給できるように構成されたストックタンク兼供給装置3から澱粉・樹脂複合中間粒体を供給し、加熱混練され、流動性の澱粉・樹脂複合材料にして押し出す二軸押出機4と、混練され溶融状態にある熱可塑性樹脂を更にシリンダ温度を高くし、溶融熱可塑性樹脂澱粉複合成形材料として安定的に押し出す一軸押出機5を少なくとも含む構成とした澱粉・樹脂複合成形加工材料製造装置Bである。
【0060】
澱粉・樹脂複合成形加工材料製造装置部Bを単独の製造装置とし、原材料として澱粉・樹脂複合中間粒体を別途準備し、バッチ的に製造する装置とすることもできる。
【0061】
本発明で用いる前記澱粉・樹脂複合成形加工材料連続一貫製造装置は、さらに、シート状に押し出しし、該シートをカレンダ成形により、シートの厚さ制御、表面層の形成制御を行なうことができるローラ圧延装置や、ストランド状に押し出しし、切断するか又はシート状に押し出しし、賽の目上に切断することにより、ペレット化するための切断装置等を含むことができる。
【0062】
(澱粉・樹脂複合中間粒体の製造)
本発明の澱粉・樹脂複合成形加工材料の製造方法において、原材料として用いる澱粉・樹脂複合中間粒体の製造には、
図1に示す高温撹拌機と冷却撹拌機からなる装置部Aにより製造することができる。
澱粉・樹脂複合中間粒体の製造では、澱粉及び低融点添加剤の少なくとも1種以上を高温撹拌機中で熱可塑性樹脂の溶融温度より低い、低融点添加剤が溶融する温度以上の温度で加熱撹拌しながら混合し、澱粉に溶融させた低融点添加剤が付着した混合物とするように加熱撹拌を制御する。
【0063】
その後、熱可塑性樹脂と脂肪酸金属塩等の高融点添加剤を添加し、必要ならば、成形加工材料に求める物性、性質を有するようにその他の添加剤を加え、さらに加熱撹拌して混合し、流動性の澱粉・樹脂複合材料を形成する。
【0064】
次いで、形成した流動性の澱粉・樹脂複合材料を、冷却撹拌機に移し、冷却撹拌機中で冷却撹拌しながら、主として高融点添加剤を再固化する。
【0065】
高融点添加剤を主として再固化することにより熱可塑性樹脂の粒状体をコア部とし、そのコア部の表面に少なくとも低融点添加剤を含有する澱粉を含む粉粒体の被覆層を形成し
た澱粉・樹脂複合中間粒体を製造する。
【0066】
(高温撹拌機による加熱撹拌処理)
(1)澱粉と低融点添加剤の加熱撹拌処理
加熱撹拌処理では、高温撹拌機中で澱粉と低融点添加剤を加熱撹拌することで、撹拌しながら昇温することで澱粉と溶融した低融点添加剤を加熱混合し、加熱乾燥するものであって、以下のように行う。
【0067】
先ず、高温撹拌機1中に澱粉と、グリセリン系脂肪酸エステルなどの低融点添加剤を混合投入し、加熱撹拌し、昇温させる。
その加熱撹拌処理は、加熱温度を低融点添加剤の融点温度以上に設定し、低融点添加剤を溶融させ、低融点添加剤が溶融状態を維持できる温度、例えば、低融点添加剤の融点温度より10〜20℃高く設定、あるいは高融点添加剤の融点温度以上の温度に設定し、回転数及び撹拌時間を制御することで澱粉の粉体と溶融した低融点添加剤とが絡み、低融点添加剤が付着され含有された澱粉の流動性の澱粉混合物が形成できるように、製造効率を考え、温度、回転数及び撹拌時間などを制御し、処理する。
【0068】
加熱撹拌処理では、高温撹拌機を、例えば、加熱温度110〜160℃、回転数5〜50Hzに設定し、回転数、撹拌時間を制御して、低融点添加剤の成分を溶融状態にし、高温撹拌機中で澱粉と低融点添加剤を撹拌、混合する。この処理により澱粉に溶融した低融点添加剤を付着させ、含有し、低融点添加剤を含有した澱粉混合物を形成する。その際、澱粉に低融点添加剤がくまなく絡めている状態となる。本発明の加熱撹拌処理では、製造時間、製造効率を考慮して温度は100℃以上とすることが好ましい。温度と時間の調整により澱粉が黄変するのを避けるようにすることが好ましい。また、黄変、製造効率に問題なく手早く均等に混ぜるため、撹拌状態、回転数及び剪断力などを調整して行なうことが好ましい。
【0069】
(2)澱粉・樹脂複合材料の製造
高温撹拌機で澱粉と溶融された低融点添加剤の混合物とした後、熱可塑性樹脂の粒状体及び少なくとも1種以上の脂肪酸金属塩等の高融点添加剤をさらに添加し、加熱撹拌する。
本発明では、加熱撹拌時の温度を高融点添加剤が溶融する温度以上、熱可塑性樹脂の溶融温度以下に高温撹拌機の温度を設定、例えば、加熱撹拌温度として、当初から高融点添加剤の溶融温度以上に設定し、加熱温度を固定して行なうこともでき、例えば、110〜160℃に設定し、少なくとも2種類の、低融点及び高融点添加剤が溶融した状態にして撹拌混合する。そして低融点及び高融点添加剤が溶融した状態下、回転数及び撹拌時間を制御しつつ加熱撹拌することで、澱粉及び熱可塑性樹脂の粒状体と、溶融した低融点及び高融点添加剤とが撹拌混合され、均一に分散された流動性の澱粉・樹脂複合材料の混合物が形成されるまで加熱撹拌する。
【0070】
(冷却撹拌機による冷却撹拌処理)
高温撹拌機中で得られた流動性の澱粉・樹脂複合材料の混合物は、冷却撹拌機に移され、低融点添加剤成分の溶融温度以上であって、その溶融温度近傍まで冷却撹拌機中で撹拌しながら冷却され、溶融した添加剤成分が再固化されるように冷却撹拌する。
【0071】
澱粉・樹脂複合材料は、冷却撹拌機中で冷却しながら撹拌することにより流動性の澱粉・樹脂複合材料の温度が低下し、主として脂肪酸金属塩などの高融点添加剤成分が冷却され、溶融温度以下になることにより再固化するように冷却撹拌する。その際、流動性の澱粉・樹脂複合材料の混合物中の高融点添加剤が冷却撹拌されることにより熱可塑性樹脂の粒状体の表面に付着した状態に固化し、また流動性のある低融点添加剤を含有した澱粉が
、再固化する少なくとも高融点添加剤を介して熱可塑性樹脂の粒状体に付着することにより、熱可塑性樹脂の粒状体をコア部とし、そのコア部の表面に少なくとも低融点添加剤を含有する澱粉を含む粉粒体の被覆層が形成され、
図2aに示すように澱粉・樹脂複合中間粒体となる。その澱粉・樹脂複合中間粒体は、その断面を模式的に示すと
図3に示す構造のものである。
【0072】
澱粉・樹脂複合中間粒体の製造方法は、製造工程への原材料の安定供給を可能にする、取り扱い性のよい澱粉・樹脂複合中間粒体の形態を製造する方法であって、性質や形状が異なる混合し難い成分材料の原料を加熱混合した後、流動性の複合材料を撹拌しながら冷却し、流動性の複合材料が温度の低下により、溶融した添加剤成分が溶融温度以下になることにより、固化し、澱粉・樹脂複合中間粒体が形成されるという、原料を加熱混合した後、冷却撹拌するという単純な操作により簡単に、造粒化できる製法である。
【0073】
本発明では、従来、成形加工材料の製造に際し、性状や形状が異なる成分の原材料を、それぞれ、製造工程に個別又はバッチで供給していたのを、取り扱い性のよい複合中間粒体という複合形態の原材料として成形加工材料の製造工程に投入できるようになるものであり、澱粉・樹脂複合成形加工材料の製造において原材料の安定供給及び定量化を可能にすることができる。
【0074】
冷却撹拌操作による造粒工程は、温度、回転数及び撹拌時間などを制御し、添加剤成分を再固化することにより熱可塑性樹脂の粒状体の表面に澱粉を含む粉粒体の被覆層が形成される状態を確認しながら、最適温度下に冷却撹拌することで造粒化し、形成された粒体の形態、形状を維持し取り出すことを可能にする。
【0075】
本発明の製造方法では、澱粉・樹脂複合中間粒体を、造粒された粒体の外観をみながら、外観の仕上がりのよい状態を確認しながら、低融点添加剤成分の固化が進まない温度域で冷却撹拌機から排出してストックタンク中に落下させ、澱粉・樹脂複合中間粒体形状の中間原料として取り出され、ストックされる。これにより、粉落ちのほとんどない、形態安定性の優れた澱粉・樹脂複合中間粒体を得ることができる。
【0076】
複合中間粒体の形成状況を温度、回転数及び撹拌時間などを制御し、添加剤の成分を再固化することにより熱可塑性樹脂の粒状体の表面に澱粉を含む粉粒体の被覆層が形成される状態を観察し、確認することにより、形成された粒体の形態、形状を維持し、粉落ちのほとんどない、形態安定性の優れた澱粉・樹脂複合中間粒体を得ることができる。
【0077】
複合中間粒体の形成する過程で低融点添加剤及び又は高融点添加剤の添加量が少ない場合、澱粉と熱可塑性樹脂の粒状体との親和性が低下するためか澱粉が付着して被膜層ができず、粉状のままあるいは被覆層からの澱粉の脱落が生じ、複合中間粒体と粉状体とが混合した状態の混合物(
図2b参照)となり、押出ができなかった。また、複合中間粒体を低融点添加剤の溶融温度より十分に高い温度で排出すると、表面被覆層の粉粒体が流動変形し得るため、落下時の衝撃で粒体の形状、形態が変形し、型崩れを生じ、かつ粒体が塊状になり、流動安定性が低下する。
【0078】
この加熱、冷却撹拌工程により澱粉・樹脂複合中間粒体を製造する方法は、バッチで製造することもできる。一方、澱粉・樹脂複合成形加工材料の製造は、成分材料を複合中間粒体という形態の原材料として連続的に混練し押し出することを可能にするので、澱粉・樹脂複合中間粒体の製造方法において、複合中間粒体をストックタンクに排出する工程は、複合中間粒体製造工程を澱粉・樹脂複合成形加工材料の製造方法に組み入れるバッファとなり、澱粉・樹脂複合成形加工材料を連続的に一貫して製造することを可能にする。
【0079】
本発明は、簡単かつ少ない操作により製造された澱粉・樹脂複合中間粒体を原材料とする製造方法とすることにより、粉落ちのない、形態安定性のよい澱粉・樹脂複合中間粒体を製造することができ、品質にバラツキの少ない澱粉・樹脂複合成形加工材料を得ることができる。そして、均一で均質な澱粉・樹脂複合成形加工材料を安定的に安価に調製することが可能になり、バイオマス複合材料の安定的な製造方法とすることができる。
【0080】
(澱粉・樹脂複合成形加工材料の製造)
本発明の澱粉・樹脂複合成形加工材料の製造方法において、製造された澱粉・樹脂複合中間粒体が、各成分材料が併存した集合体の澱粉・樹脂複合材料であることから、各種成形加工法の澱粉・樹脂複合成形加工材料を澱粉・樹脂複合中間粒体を原材料として製造するには、澱粉・樹脂複合中間粒体を製造し、該澱粉・樹脂複合中間粒体を澱粉・樹脂複合成形加工材料の製造工程中に澱粉・樹脂複合成形加工材料の中間原材料としてストックすることを可能に製造工程に組み込んだ製造ラインとするか、あるいは、澱粉・樹脂複合成形加工材料の製造工程とは別に複合中間粒体の製造ラインとして設けることで、澱粉・樹脂複合中間粒体を原材料として安定して供給可能とし、性質や形状の異なる原材料の安定供給を実現し、バラツキの少ない、各種成形加工法の原材料となる澱粉・樹脂複合成形加工材料を連続的に一貫して製造することができる製造方法を実現するものである。
【0081】
製造された澱粉・樹脂複合成形加工材料は、さらに、シート状又はフィルム状に成形されたり、ブロー成形されたり、あるいは真空成形され、最終製品の成形加工材料として供給可能にすることもできる。
【0082】
本発明の製造過程でストックされた澱粉・樹脂複合中間粒体は、熱可塑性樹脂をコア部とし、その外側に低融点添加剤を含有する澱粉の粉粒体の被覆層で覆われた構造を有する澱粉・樹脂複合材料の均一な粒体として存在することから、各種成形加工法の澱粉・樹脂複合成形加工材料の製造には、通常のプラスチックの成形加工技術のように、例えば、ヘンシエルミキサー、タンブラー型混合機、バーバリミキサー、ニーダーミキサーなどの混合機により澱粉や添加剤等を混合する必要なく、澱粉・樹脂複合中間粒体を直接二軸押出機に投入、供給するだけで、通常のプラスチック成形加工と同様に回転数、撹拌時間及び温度などの制御を行い、加熱混練することにより澱粉と熱可塑性樹脂を均一に混練、混合することができる。
【0083】
澱粉・樹脂複合中間粒体を二軸押出機中で加熱混練する処理に際し、加熱加工温度(シリンダ温度)を100℃〜190℃、熱可塑性樹脂が溶融する温度以下の温度、添加剤の融点以上の温度に設定し、加熱混練する。それにより澱粉・樹脂複合中間粒体を流動性の澱粉・樹脂複合成形加工材料の溶融樹脂澱粉複合混合物を形成する前段階として、剪断と温度上昇を抑えつつ、安定した材料の定量送りを行い及び材料を十分に撹拌混練する。これにより、材料の劣化、退色させずに均一に混練することができ、均一で均質なバラツキの少ない澱粉・樹脂複合成形加工材料を製造することができる。
【0084】
本願発明では、澱粉・樹脂複合中間粒体を十分な加熱混練の後、プラスチックの溶融押出工程と同様、流動性のある澱粉・樹脂複合材料を一軸押出機により熱可塑性樹脂の溶融温度以上、150〜220℃に温度設定し、押出圧力を適宜設定し、熱可塑性樹脂を安定状態で溶融押出することができることにより、安定した押出温度、押出圧力下で、均一で均質なバラツキの少ない澱粉・樹脂複合成形加工材料を製造することができる。
【0085】
押出に際し、押出機による成形品の製造、Tダイ押出機によるシートの製造、インフレーション成形機によるフィルムの製造、カレンダ成形機によるシートの製造、インジェクション成形機による成形品の製造などの成形加工技術及び成形加工機が採用でき、各種成形加工法における優れた成形加工性を備えた澱粉・樹脂複合成形加工材料が得られる。
【0086】
本発明では、澱粉・樹脂複合中間粒体を原材料とし、Tダイスを用い、150〜220℃に温度設定し、澱粉・樹脂複合成形加工材料をシート状物として押出し、シート状成形加工材料を得ることができる。
【0087】
成形温度が220℃を越えた場合は、ヤケの発生や分解の発生が起きる。著しい場合は、茶色又は黒色に変色し、シリンダ内の焼き付きにより成形機を損傷する。また、150℃未満の成形温度域では澱粉・樹脂複合成形加工材料が未溶融状態で吐出され、好ましくない。著しい場合は、シリンダとスクリュー間の剪断力が高まり、圧力上昇とともに、トラブルの原因となる。
【0088】
押出機によりシート状に押し出し成形した澱粉・樹脂複合成形加工材料シートは、押し出された後、直ちに、引取りロールの温度を60℃以下に設定し、所定の厚さに成形したシートを冷却し、原反ロールとして引取り、巻き取られるか、あるいは、澱粉・樹脂複合成形加工材料の原反ロールをロールに冷却機能を持たせてロール表面を冷却して行なう三本圧延ロールの間を通過させ、圧延ロールによりシート化しつつ冷却して厚み0.1〜2.0mmの澱粉・樹脂複合成形加工シートを得、各種成形加工法の原材料シートとして又は該シートを粉砕又はカットして粒状体を得ることによりインジェクション成形、インフレーション成形、ブロー成形に適した原材料ペレットの成形加工材料として供給することもできる。
【0089】
本発明において、シート状物の澱粉・樹脂複合成形加工材料原反ロールを圧延ロールにより厚みを制御された、表面スキン層を形成した成形加工材料シートとするため、あるいは表面スキン層のない成形加工材料シートとするため、冷却はロールに冷却機能を持たせてその表面を冷却して行なう三本圧延ロールの間を通過させ、厚さと表面スキン層の有無及び厚みを制御し、さらにシート表面温度の温度制御をすることにより所望の成形加工材料シート又は粉砕又はカット可能な成形加工材料シートを製造することができる。圧延ロールによってシートに成形することで、澱粉・樹脂複合成形加工材料シートの厚さが均一になり、均質なペレットを製造することもできる。加えて圧延ロールの作用によってシートの表裏に平滑なスキン層を形成することにより、ペレット化後の水分吸収を減じた材料を製造することができる。
【0090】
以下、本発明を実施例により、さらに詳しく説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に制限されるものではない。
【0091】
得られた澱粉・樹脂複合成形加工材料の評価として、成形加工性材料として、比重、引張伸度を測定し、均一、均質性を比重と引張伸度の変動に着目し、評価した。なお、比重、引張伸度を測定するため以下に説明する試験法により測定した。
その評価方法は、以下の要領で行った。
【実施例】
【0092】
(実施形態)
本発明の澱粉・樹脂複合中間粒体及び澱粉・樹脂複合成型加工材料を製造するための実施例における使用原料及び試料作成は、以下のとおりである。
【0093】
(澱粉・樹脂複合成形加工材料の製造)
本発明の澱粉・樹脂複合中間粒体及び澱粉・樹脂複合成形加工材料を形成するため配合した原材料は、以下のとおりである。
澱粉 : コーンスターチ 50〜70重量%
低融点添加剤: グリセリン脂肪酸エステル、グリセリンモノステアレート 0.1〜
10.0重量%
高融点添加剤: ステアリン酸金属塩 ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム
1.0〜15重量%
熱可塑性樹脂: ポリプロピレンペレット 20〜40重量%
上記した各原材料を表1の配合割合にしたがって用いた。
【0094】
(1)加熱撹拌1
高温撹拌機を110〜160℃、回転数5〜50Hzに設定し、澱粉としてコーンスターチ50〜70重量%と低融点添加剤としてグリセリンモノステアレート0.1〜10.0重量%を配合し、材料を加熱撹拌、混合する。グリセリンモノステアレートの融点以上の温度で加熱撹拌して溶融し、コーンスターチに溶融したグリセリンモノステアレートを絡ませ、グリセリンモノステアレートを付着し、含有する澱粉にする。
【0095】
(2)加熱撹拌2
高温撹拌機中で十分に混合したコーンスターチを澱粉・樹脂複合材料とするため、ポリプロピレン20〜40重量%、高融点添加剤としてステアリン酸金属塩であるステアリン酸亜鉛0.5〜5.0重量%、ステアリン酸マグネシウム0.5〜10重量%、及びその他必要な添加剤、例えば、白色顔料、相溶化剤を投入し、撹拌しながら、110〜160℃まで昇温し、上記ステアリン酸の金属石鹸を溶融し、流動性の澱粉・樹脂複合材料の混合物が形成されるまで混合撹拌する。
【0096】
(3)冷却撹拌
次いで、澱粉・樹脂複合中間粒体を形成するため、流動性の澱粉・樹脂複合材料の混合物を形成した後、高温撹拌機から排出し、冷却撹拌機中に移し、110〜160℃の澱粉・樹脂複合材料の混合物を60〜100℃に冷却しながら回転数5〜40Hzで冷却撹拌しながら、降温させ、熱可塑性樹脂であるポリプロピレンの粒状体をコア部とし、そのコア部表面に、グリセリンモノステアレートを付着し、含有する澱粉を含む粉粒体が付着し被覆した澱粉・樹脂複合中間粒体が形成されるのを確認するまで低融点添加剤のグリセリンモノステアレートの融点以上の温度で冷却撹拌する。
【0097】
(4)ストックタンクへの排出
冷却撹拌により澱粉・樹脂複合中間粒体が形成されたことが確認された後、澱粉・樹脂複合中間粒体の破壊、粉体の剥離、脱落を防止するため低融点添加剤のグリセリンモノステアレートの溶融温度以上の温度を維持しつつ、直ちに、澱粉・樹脂複合中間粒体を連続製造工程内に配置したストックタンクに排出し、中間原材料として貯蔵する。貯蔵される複合中間粒体は、熱可塑性樹脂のコア部と、少なくとも低融点添加剤のグリセリンモノステアレートを含有する澱粉を含む粉粒体の被覆層が高融点添加剤のステアリン酸亜鉛及びマグネシウムの再固化により付着された、密接に結合した状態にある、粉粒体の脱落又は剥離のない安定した澱粉・樹脂複合中間粒体として形成される。
【0098】
(澱粉・樹脂複合中間粒体の評価)
本発明の澱粉・樹脂複合中間粒体の評価方法は、以下の要領で行った。中間原材料として、中間粒体を排出時の粉落ちの有無、及び熱可塑性樹脂をコアとし、表面が澱粉で被覆された粒体の形成割合を観察し、形態安定性を評価した。
粉落ちの有無:ほとんど粉落ちなし〇、粉落ち生じる×
さらに、得られた澱粉・樹脂複合中間粒体を原材料とし、製造した澱粉・樹脂複合成形加工材料の比重及び引張伸度並びにそのバラツキの程度により中間粒体を評価した。
【0099】
(5)澱粉・樹脂複合成形加工材料の製造
澱粉・樹脂複合中間粒体を原材料としてストックタンクから二軸混練可塑化一軸押出機
を用い、澱粉・樹脂複合成形加工材料を次のように製造した。
(5−1)澱粉・樹脂複合中間粒体の混練
澱粉・樹脂複合中間粒体をストックタンクから二軸混練可塑化押出機に連続投入し、シリンダ温度120〜190℃、樹脂圧1〜4MPaに設定し、混練、可塑化する。
(5−2)澱粉・樹脂複合成形加工材料の成形
澱粉・樹脂複合成形加工材料を製造するため、上記1段目の二軸押出機中で混練、可塑化して調製された澱粉・樹脂複合成形加工材料を、加熱帯域の設定温度をポリプロピレンの溶融温度以上の160〜210℃、樹脂圧3〜20MPaに運転条件を設定した2段目の一軸押出機に供給し、澱粉複合溶融ポリプロピレンを押し出した。
【0100】
(6)澱粉・樹脂複合成形加工材料の後処理
本発明の形成した澱粉・樹脂成形加工材料の成形加工性、作業性に対する影響評価を行なうため次のような後処理を行なった。
(6−1)シートの作成
澱粉・溶融ポリプロピレン複合成形加工材料をシート状物として製造するため、T−ダイ押出機(LAB TECHエンジニアリング社製)を使用して、シート状に押し出し、引取りロールの温度を55℃に設定し、所定の厚さ0.7mmに成形したシートを冷却し、引取り、紙管に巻き取った。
また、必要に応じて冷却三本ローラ(上ロール:50℃、中ロール:95℃、下ロール:90℃)でカレンダ圧延処理して、シートの厚みを制御し、あるいは、シート表面にスキン層の厚みを制御して形成し、つやのあるシートを製造することもできる。
さらに、溶融押出により形成された澱粉・樹脂複合成形加工材料を各種成形加工法の原材料として利用するため、厚み制御した又は表面層を有する成形したシートをペレタイズ化するためさいの目状に裁断した。
【0101】
成形した澱粉・樹脂複合成形加工材料の原反シートの長さ100mあたり10箇所からシート片(2×20cm)をサンプリング抽出し、
(a)材料の比重に関しては、上記サンプリングシート片をJIS K7112に従って3回測定し、平均値を求め、その平均値を測定値とする。長手方向の位置を異にするシート片について同様に測定し、平均値を求め各位置における測定値とする。材料の原反シートの各測定値の平均値を求め、各測定値と平均値の変動値を求め、原反シートの比重の測定値の変動幅によりバラツキを確認した。
(b)材料の引張伸度に関して、上記サンプリングシート片をJIS K 7161に従って、シート片を引張り、クリープ現象が起きる前までの最大引張伸度を3回測定し、平均値を求め、その平均値を測定値とする。長手方向の位置を異にするシート片について同様に測定し、平均値を求め各位置における測定値とする。材料の原反シートの各測定値の平均値を求め、各測定値と平均値の変動値を求め、原反シートの該最大引張伸度の測定値の変動幅によりバラツキを確認した。
【0102】
(6−2)容器の成形
澱粉・樹脂複合成形加工材料から製造された上記シートの成形性を確認するために成形したシートを、真空圧空機:(株)脇坂エンジニアリング社製、FVS−500P型を用いて、成形条件:設定温度450℃に加熱した後、円錐カップとなるように真空圧空機により成形した。
【0103】
(実施例1〜7及び比較例1〜5)
澱粉・樹脂複合成形加工材料の原材料として、上記実施態様において示したような製造条件の成分組成に従い原料を準備し、各製造工程の製造条件に従い工程処理し、それぞれ
、実施例1〜7及び比較例1〜5の澱粉・樹脂複合中間粒体及び澱粉・樹脂複合成形加工材料を製造した。
【0104】
実施例及び比較例に従って製造した澱粉・樹脂複合中間粒体についてそれぞれ評価方法に従って評価した。また、実施例及び比較例に従って製造した澱粉・樹脂複合成形加工材料を評価用試料とし、評価方法に従って澱粉・樹脂複合成型加工材料の成形加工性を、及び複合成形材料として重要な材料の均一性及び均質性について、引張伸度、比重のバラツキを評価した。
【0105】
シートの成形加工性については、上記T−ダイ一軸押出機(LAB TECHエンジニアリング社製)でシートが成形できるかを確認した。成形したシートを真空圧空機:(株)脇坂エンジニアリング社製、FVS−500P型により円錐カップになるように真空圧空して深絞りの容器が成形できるかを確認した。またインジェクション成形機で容器が成形できるかについても評価した。
【0106】
その原料の成分組成及び製造された複合中間粒体及び複合成形加工材料についての評価結果は、表1のとおりである。
【0107】
【表1】
【0108】
表1に示すとおり、実施例1ないし実施例3の澱粉・樹脂複合中間粒体及びその複合中間粒体を原材料として溶融押出して製造された澱粉・樹脂複合成形加工材料は、各実施例の材料の1ロッドの中で上記試験法により測定した平均引張伸度が36〜160%、平均比重が1.08〜1.21の範囲の複合成形材料であって、実施例毎の引張伸度の測定値のバラツキは、実施例1〜3、それぞれ、34〜39%、73〜77%及び148〜164%の変動幅を有するものであり、変動幅が大きくても±7%以内、比重の測定値は、±0と変動幅がなく、バラツキの少ない優れた物性を有するものである。
【0109】
その製造した材料を用いた各成形加工法による成形加工性についても、シート化、及び容器の成形もでき、深絞りも可能な材料を製造することができた。
【0110】
これに対し、比較例に示したとおり複合中間粒体を経ない澱粉・樹脂複合成型加工材料では、シート化できるが、成形できないか、材料に滑性がなく押出できず、又は複合中間粒体が大きすぎ、シート化することができないか、あるいは成形加工材料として溶融押出して製造された複合成形加工材料として1ロッドの中での引張伸度が15%、測定値の変動は7〜21%、変動幅が±50%、平均比重が1.24、測定値が1.19〜1.26の変動値を有し、1ロット内でばらついた値を示すなど、引張伸度等の機械的物性が低下する又は機械的物性が悪く、あるいは比重がバラツキ、安定しない。また、成形加工性の点でも、シート化はできても、シート表面がべたついている、あるいは材料が粉のまま又は塊状となり、成形加工できないなどの材料であった。また、容器の成形はできなかった。
【0111】
本発明の方法である、澱粉・樹脂複合中間粒体を製造した後、該複合中間粒体を原材料として澱粉・樹脂複合成形加工材料を製造する方法の方が優れた物性、性状及び成形性の澱粉・樹脂複合成型加工材料を製造できることが確認され、本発明の澱粉・樹脂複合中間粒体を形成した後、複合成形加工材料を製造することが有効であることが明らかとなった。
【0112】
実施例、比較例は、表1のとおりの配合組成の澱粉・樹脂複合成形加工材料の組成物とした。実施例2で用いた澱粉・樹脂複合成形加工材料の配合組成のうち、実施例4、5で
は、主としてモノグリセリッドの配合量を、0.1重量%;10.0重量%に大幅に変更、実施例6、7では、ステアリン酸亜鉛及びステアリン酸マグネシウムの配合量をそれぞれ、0.5、0.5;5.0、10.0重量%に大幅に変更して各添加剤の造粒化、成形加工性への影響について確認した。
【0113】
製造された澱粉・樹脂複合成形加工材料から実施例1と同様の方法で、ペレット、シートを製造するとともに、そのシートを真空圧空成形で実施例1と同じ寸法の容器に成形し、実施例1と同様に成形加工性の評価をした。また、引張伸度、比重について、上記で説明した測定法に従い測定し、評価した。さらに、比較例として、澱粉とポリプロピレンの配合量、モノグリセリッドの配合量及びステアリン酸金属石鹸の配合量をそれぞれ変更し、表1に示すように形成された成形品を評価しつつ、添加する量の範囲を広げ、組成物を調製し、同様の測定を行ない評価した。
その結果を表1に示す。
【0114】
実施例、比較例をみて分かるように低融点添加剤のモノグリセリッド、高融点添加剤のステアリン酸亜鉛、マグネシウムを添加する量によって造粒化できる場合とできない場合が生じる。さらに、含有量により、シート化及びその容器の成形加工性が期待できない場合とできる場合が生じる。
【0115】
T−ダイ押出機によるシート成形などが発明の効果であり、添加剤の添加量の増加により成形加工性が阻害されていることが分かることが分かる。
【0116】
実施例と比較例によれば、本発明の製造方法による原材料を供給し複合成形加工材料を製造する方が、T−ダイ押出機によるシート成形など各種成形加工法による成形加工が可能であり、成形加工性において優位性がある。
【0117】
本発明の澱粉・樹脂複合中間粒体を原材料とした澱粉・樹脂複合成形加工材料の製造方法は、複合成形加工材料の製造及び製造された材料の物性等が優れたものが得られる。従来法や極端な成分組成を用いた製造方法では同じ成分系であっても、表1にまとめたとおり中間粒体が形成できない、比重が安定しない、澱粉が舞ってしまうあるいは押出時、滑性がないため圧力が掛かりすぎシート化できない、シート化した際ブリードが激しくべたつく、又は中間粒体同士がくっつき、粒体が大きくなりすぎ、成形機に供給できないなど成形加工性が阻害されることが確認され、本発明の中間粒体を形成し、複合成形材料を製造する方法が優れていることが確認できた。