特許第6901867号(P6901867)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6901867
(24)【登録日】2021年6月22日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】浮体式洋上プラットフォーム
(51)【国際特許分類】
   B63B 35/44 20060101AFI20210701BHJP
   B63B 35/00 20200101ALI20210701BHJP
   F03D 13/25 20160101ALI20210701BHJP
【FI】
   B63B35/44 F
   B63B35/44 L
   B63B35/00 T
   F03D13/25
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-27004(P2017-27004)
(22)【出願日】2017年2月16日
(65)【公開番号】特開2018-131095(P2018-131095A)
(43)【公開日】2018年8月23日
【審査請求日】2020年2月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】秋場 俊一
(72)【発明者】
【氏名】浅野 均
(72)【発明者】
【氏名】小林 修
【審査官】 福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】 韓国公開特許第10−2012−0014657(KR,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0104762(US,A1)
【文献】 特開2014−173579(JP,A)
【文献】 特表2015−530315(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0279434(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第104058073(CN,A)
【文献】 特開2014−173586(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 35/44
B63B 35/00
F03D 13/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパー型浮体式洋上風力設備と一体化された浮体式洋上プラットフォームであって、
前記スパー型浮体式洋上風力設備は、筒状形状の浮体と、この浮体に連結された複数の係留索と、前記浮体の上端部に連結されたタワーと、このタワーの頂部に設備されたナセル及び複数のブレードからなる風車とから構成されるとともに、海面上の浮体部分又はタワー部分を基端として平面視で放射方向に延びる支持用ブラケットを備えており、
前記浮体式洋上プラットフォームは、プラットフォーム本体に上下方向の貫通孔を有し、この貫通孔を前記浮体又はタワーが貫通した状態で前記スパー型浮体式洋上風力設備が設置されるとともに、プラットフォーム本体の下面側に周方向に均等配置で複数の補助浮体を備えており、
前記浮体式洋上プラットフォームと前記スパー型浮体式洋上風力設備とは、スパー型浮体式洋上風力設備の前記支持用ブラケットの上面と前記浮体式洋上プラットフォームの貫通孔周辺の下面との間に介在された、両者の挙動差を吸収可能な支承によって連結されているとともに、前記支承は、水平方向の移動追随機構と、鉛直方向の移動追随機構と、水平軸回りの回転追随機構と、ヨー回転の追随機構とを備えていることを特徴とする浮体式洋上プラットフォーム。
【請求項2】
前記支承において、前記浮体式洋上プラットフォーム側からの下側方向荷重と、前記支持用ブラケット側からの上側方向荷重とが対向している荷重釣合い関係となっている請求項1記載の浮体式洋上プラットフォーム。
【請求項3】
前記支持用ブラケットは、周方向に均等角度で分割された方向に延びる3本以上のアーム状部材とする請求項1、2いずれかに記載の浮体式洋上プラットフォーム。
【請求項4】
前記支持用ブラケットは、全周方向に亘る平板状部材とする請求項1,2いずれかに記載の浮体式洋上プラットフォーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパー型洋上風力発電設備と一体化された浮体式洋上プラットフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
我が国の200海里水域面積は、約447km2に及び、世界第6位の広大な海域となっている。これら広大な水域内での石油やガス等の資源採掘はもとより、海底鉱物資源、漁業資源の確保、海洋調査・観測、各種海洋実験・海洋研究、更には国土防衛基地や洋上基地ネットワークの構築などのために、洋上にプラットフォームを設置することが検討・開発されている。
【0003】
従来より存在する洋上プラットフォームとしては、水深が比較的浅い水域に適用される着底式の脚部を備えた着底式プラットフォームと、水深が比較的深い水域に適用される浮体式プラットフォームとが存在する。
【0004】
前者の着底式プラットフォームとしては、例えば下記特許文献1に、倒立させた複数の脚柱を駆動制御部により摺動ロック自在に支持させた浮体を台船で搬送したうえ、現場周辺で台船を沈潜させると同時に、沈潜される台船上に脚柱を下降させ重心を下げたうえ浮体を台船から引き出し、脚柱を海底に着底しない深さまで下降させて重心を下げたうえ浮体を設置位置まで曳航して脚柱を海底に着底させるプラットフォームが開示されている。
【0005】
一方、後者の浮体式プラットフォームとしては、大きくポンツーン式とセミサブ式とに大別される。ポンツーン式は下記特許文献2に開示されるような台船形式の浮体構造物であり、前記セミサブ式は下記特許文献3に開示されるような半潜水式の浮体構造物である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015−206252号公報
【特許文献2】特開2011−251675号公報
【特許文献3】特開2010−175262号公報
【特許文献4】特開2014−173586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記浮体式プラットフォームのポンツーン式やセミサブ式の浮体構造物の場合は、いわば巨大な鋼製船舶を建造し、その上面部をプラットフォームとして利用するものであるため、建造コストが甚大となる。また、浮体構造物の断面積が大きくなるため、波や潮流から受ける力が大きくなる傾向にあり、係留本数も多くなる等、係留構造が大規模になるなどの問題があった。
【0008】
一方、陸地から遠く離れた海上に洋上プラットフォームを設置する場合は、地上からの電力供給が困難であるため、発電設備を別途備える必要がある。発電設備としては、一般的に太陽光発電や風力発電などが考えられるが、太陽光発電の場合は、プラットフォーム上の多くのスペースを占有することになるため、風力発電が好適となる。風力発電設備を備える場合は、前記特許文献2のように、前記ポンツーン式やセミサブ式の浮体構造物に対して固設することになるが、このような構造とした場合は、風力発電設備の設置により全体の重心位置が上側に移動することになるため、浮体の安定性が低下する等の問題が発生する。
【0009】
他方で、本出願人は、上記特許文献4などにおいて、釣浮きのように起立状態で浮く、所謂スパー型の浮体式洋上風力発電設備を開発している。このようなスパー型浮体は、経済性に優れるとともに、波や潮流の影響を受け難く浮体の安定性に優れるという利点を有する。
【0010】
そこで本発明の主たる課題は、スパー型の浮体式洋上風力発電設備との一体化を図った浮体式洋上プラットフォーム構造を企画することにより、動揺特性に優れるスパー型浮体式洋上風力発電設備との協働作用により、浮体式洋上プラットフォームの安定性を向上させるとともに、係留構造及び浮体構造等の簡易化により製作コストの大幅な低減を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、スパー型浮体式洋上風力設備と一体化された浮体式洋上プラットフォームであって、
前記スパー型浮体式洋上風力設備は、筒状形状の浮体と、この浮体に連結された複数の係留索と、前記浮体の上端部に連結されたタワーと、このタワーの頂部に設備されたナセル及び複数のブレードからなる風車とから構成されるとともに、海面上の浮体部分又はタワー部分を基端として平面視で放射方向に延びる支持用ブラケットを備えており、
前記浮体式洋上プラットフォームは、プラットフォーム本体に上下方向の貫通孔を有し、この貫通孔を前記浮体又はタワーが貫通した状態で前記スパー型浮体式洋上風力設備が設置されるとともに、プラットフォーム本体の下面側に周方向に均等配置で複数の補助浮体を備えており、
前記浮体式洋上プラットフォームと前記スパー型浮体式洋上風力設備とは、スパー型浮体式洋上風力設備の前記支持用ブラケットの上面と前記浮体式洋上プラットフォームの貫通孔周辺の下面との間に介在された、両者の挙動差を吸収可能な支承によって連結されているとともに、前記支承は、水平方向の移動追随機構と、鉛直方向の移動追随機構と、水平軸回りの回転追随機構と、ヨー回転の追随機構とを備えていることを特徴とする浮体式洋上プラットフォームが提供される。
【0012】
上記請求項1記載の発明では、先ず、前記スパー型浮体式洋上風力設備は、海面上の浮体部分又はタワー部分を基端として平面視で放射方向に延びる支持用ブラケットを備えている。一方、前記浮体式洋上プラットフォームは、プラットフォーム本体に上下方向の貫通孔を有し、この貫通孔を前記浮体又はタワーが貫通した状態で前記スパー型浮体式洋上風力設備が設置されるとともに、プラットフォーム本体の下面側に周方向に均等配置で複数の補助浮体を備えている。
【0013】
そして、前記浮体式洋上プラットフォームと前記スパー型浮体式洋上風力設備とは、スパー型浮体式洋上風力設備の前記支持用ブラケットの上面と前記浮体式洋上プラットフォームの貫通孔周辺の下面との間に介在された、両者の挙動差を吸収可能な支承によって連結されている構造としている。
【0014】
前記スパー型浮体式洋上風力設備は、動揺特性に優れているため、これを浮体式洋上プラットフォームと組み合わせることにより、風力発電設備の設置によって全体の重心位置が上がるようなこともなく、浮体式洋上プラットフォームの安定性を向上させることが可能になるとともに、係留構造及び浮体構造が簡素化でき、製作コストの大幅な削減が可能となる。
【0015】
一方で、前記浮体式洋上プラットフォームと前記スパー型浮体式洋上風力設備とは、構造が全く異なり、それぞれ波力及び風力の受け方が異なるため、外力を受けた際の挙動が大きく異なることになる。そこで、前述した組み合わせ構造とし、両者を挙動差を前記支承で吸収するようにしているため、全体として構造が不安定に成ることも無い。
【0016】
前記支承に関して、前記浮体式洋上プラットフォームと前記スパー型浮体式洋上風力設備との挙動差の吸収機構は、水平方向の移動追随機構と、鉛直方向の移動追随機構と、水平軸回りの回転追随機構と、ヨー回転の追随機構とを備えているものとする。
【0017】
請求項2に係る本発明として、前記支承において、前記浮体式洋上プラットフォーム側からの下側方向荷重と、前記支持用ブラケット側からの上側方向荷重とが対向している荷重釣合い関係となっている請求項1記載の浮体式洋上プラットフォームが提供される。
【0018】
上記請求項2記載の発明では、前記支承において、前記浮体式洋上プラットフォーム側からの下側方向荷重と、前記支持用ブラケット側からの上側方向荷重とが対向している荷重釣合い関係となっている。換言すれば、前記浮体式洋上プラットフォームが前記支承を介して前記スパー型浮体式洋上風力発電設備によって支持されると同時に、前記スパー型浮体式洋上風力発電設備が前記支承を介して前記浮体式洋上プラットフォームによって支持されている。このように前記支承において、お互いからの力が対向し合う力の釣り合い関係とすると、前記浮体式洋上プラットフォームが前記支持用ブラケット側からの上側方向荷重を受けることにより、縦揺れや横揺れが抑制されるようになる。また、前記スパー型浮体式洋上風力設備も前記浮体式洋上プラットフォーム側からの下側方向荷重を受けることにより、縦揺れや横揺れが抑制されるようになる。すなわち、両者の協働作用により前記スパー型浮体式洋上風力設備と前記浮体式洋上プラットフォームとの揺れが共に抑制されるようになる。
【0019】
請求項3に係る本発明として、前記支持用ブラケットは、周方向に均等角度で分割された方向に延びる3本以上のアーム状部材とする請求項1、2いずれかに記載の浮体式洋上プラットフォームが提供される。
【0020】
上記請求項3記載の発明は、前記支持用ブラケットの具体例を規定したものである。具体的に、前記支持用ブラケットは、周方向に均等角度で分割された方向に延びる3本以上のアーム状部材とすることができる。
【0021】
請求項4に係る本発明として、前記支持用ブラケットは、全周方向に亘る平板状部材とする請求項1,2いずれかに記載の浮体式洋上プラットフォームが提供される。
【0022】
上記請求項4記載の発明は、前記支持用ブラケットの具体例を規定したものである。具体的に、前記支持用ブラケットは、全周方向に亘る平板状部材とすることができる。
【発明の効果】
【0023】
以上詳説のとおり本発明によれば、スパー型の浮体式洋上風力発電設備との一体化を図った浮体式洋上プラットフォーム構造としたことにより、動揺特性に優れるスパー型浮体式洋上風力発電設備との協働作用により、浮体式洋上プラットフォームの安定性を向上させるとともに、係留構造及び浮体構造等の簡易化により製作コストの大幅な低減を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係る浮体式洋上プラットフォーム1の正面図である。
図2】その側面図である。
図3】本発明に係る浮体式洋上プラットフォーム1の鳥瞰図である。
図4】スパー型浮体式洋上風力設備2の正面図である。
図5】浮体4の縦断面図である。
図6】プレキャスト筒状体15(16)を示す、(A)は縦断面図、(B)は平面図(B-B線矢視図)、(C)は底面図(C-C線矢視図)である。
図7】プレキャスト筒状体15(16)同士の緊結要領図(A)(B)である。
図8】下側コンクリート製浮体構造部4Aと上側鋼製浮体構造部4Bとの境界部を示す縦断面図である。
図9】前記浮体式洋上プラットフォーム1と前記スパー型浮体式洋上風力設備2との連結部(支承12部分)を示す要部拡大図である。
図10】支持用ブラケット10の形態例を示す要部平面図である。
図11】支持用ブラケット10の他の形態例を示す要部平面図である。
図12】支承12の第1形態例を示す断面図である。
図13】支承12の第2形態例を示す断面図である。
図14】支承12の第3形態例を示す、(A)は平面図、(B)は断面図((A)のB-B線矢視図)である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0026】
本発明に係る浮体式洋上プラットフォーム1は、図1図3に示されるように、スパー型浮体式洋上風力設備2と一体化された浮体式洋上プラットフォームである。具体的には、前記スパー型浮体式洋上風力設備2は、筒状形状の浮体4と、この浮体4に連結された複数の係留索5,5…と、前記浮体4の上端部に連結されたタワー6と、このタワー6の頂部に設備されたナセル8及び複数のブレード9,9…からなる風車7とから構成されるとともに、海面上の浮体4部分又はタワー6部分を基端として平面視で放射方向に延びる支持用ブラケット10を備えている。
【0027】
一方、前記浮体式洋上プラットフォーム1は、プラットフォーム本体3の中央部に上下方向の貫通孔3aを有し、この貫通孔3aを前記浮体4又はタワー6が貫通した状態で前記スパー型浮体式洋上風力設備2が設置されるとともに、プラットフォーム本体3の端部に周方向に均等配置で複数の補助浮体11、11…を備えている。
【0028】
前記浮体式洋上プラットフォーム3と前記スパー型浮体式洋上風力設備2とは、スパー型浮体式洋上風力設備2の前記支持用ブラケット10の上面と前記浮体式洋上プラットフォーム3の貫通孔3a周辺の下面との間に介在された、両者の挙動差を吸収可能な支承12,12…によって連結されている。
【0029】
以下、更に図面に基づきながら詳述する。
【0030】
〔スパー型浮体式洋上風力設備2〕
前記スパー型洋上風力発電設備2は、詳細には図4に示されるように、筒状形状の浮体4と、係留索5と、タワー6と、タワー6の頂部に設備されるナセル8及び複数のブレード9,9…からなる風車7とから構成されるものである。
【0031】
前記浮体4は、図5に示されるように、コンクリート製のプレキャスト筒状体15〜16を高さ方向に複数段積み上げ、各プレキャスト筒状体15〜16をPC鋼材19により緊結し一体化を図った下側コンクリート製浮体構造部4Aと、この下側コンクリート浮体構造部4Aの上側に連設された上側鋼製浮体構造部4Bとからなる。前記浮体4の中空部内には、水、砂利、細骨材又は粗骨材、金属粒などのバラスト材が投入又は排出可能とされ、浮力(喫水)が調整可能とされる。バラスト材の投入/排出は、本出願人が先に、特開2012−201217号公報において提案した流体輸送方法を採用することによって可能である。
【0032】
前記下側コンクリート浮体構造部4Aは、コンクリート製のプレキャスト筒状体15、15…と、合成プレキャスト部材16の下半部分とで構成されている。前記プレキャスト筒状体15は、図6に示されるように、軸方向に同一断面とされる円形筒状のプレキャスト部材であり、それぞれが同一の型枠を用いて製作されるか、遠心成形により製造された中空プレキャスト部材が用いられる。
【0033】
壁面内には鉄筋20の他、周方向に適宜の間隔でPC鋼棒19を挿通するためのシース21、21…が埋設されている。このシース21、21…の下端部にはPC鋼棒19同士を連結するためのカップラーを挿入可能とするためにシース拡径部21aが形成されているとともに、上部には定着用アンカープレートを嵌設するための箱抜き部22が形成されている。また、上面には吊り金具23が複数設けられている。
【0034】
プレキャスト筒状体15同士の緊結は、図7(A)に示されるように、下段側プレキャスト筒状体15から上方に延長されたPC鋼棒19、19…をシース21、21…に挿通させながらプレキャスト筒状体12,12を積み重ねたならば、アンカープレート24を箱抜き部22に嵌設し、ナット部材25によりPC鋼棒19に張力を導入し一体化を図る。また、グラウト注入孔27からグラウト材をシース21内に注入する。なお、前記アンカープレート24に形成された孔24aはグラウト注入確認孔であり、該確認孔からグラウト材が吐出されたことをもってグラウト材の充填を終了する。
【0035】
次に、図7(B)に示されるように、PC鋼棒19の突出部に対してカップラー26を螺合し、上段側のPC鋼棒19、19…を連結したならば、上段となるプレキャスト筒状体15のシース21、21…に前記PC鋼棒19、19…を挿通させながら積み重ね、前記要領によりPC鋼棒19の定着を図る手順を順次繰り返すことにより高さ方向に積み上げられる。この際、下段側プレキャスト筒状体15と上段側プレキャスト筒状体15との接合面には止水性確保及び合わせ面の接合のためにエポキシ樹脂系などの接着剤28やシール材が塗布される。
【0036】
次いで、前記合成プレキャスト部材16は、図8にも示されるように、コンクリート製のプレキャスト筒状体27と鋼製筒状体28との合成構造である。これらは一体的に製作される。前記プレキャスト筒状体27は、前記鋼製筒状体28の肉厚分の厚さを減じた外径寸法とされ、この外周に前記鋼製筒状体28の下半部分が外嵌された構造とし、前記プレキャスト筒状体27の上端面がPC鋼棒19の締結面とされる。
【0037】
前記上側鋼製浮体構造部4Bは、前記合成プレキャスト部材16の上半部分と、鋼製筒状体17,18とで構成されている。下段側の鋼製筒状体17は、下側部分は合成プレキャスト部材16と同一の外径寸法とされ、合成プレキャスト部材16に対して、ボルト又は溶接等(図示例はボルト締結)によって連結される。鋼製筒状体17の上部は漸次直径を窄めた截頭円錐台形状を成している。
【0038】
上段側の鋼製筒状体18は、前記下段側の鋼製筒状体17の上部外径に連続する外径寸法とされる筒状体とされ、下段側の鋼製筒状体17に対してボルト又は溶接等(図示例はボルト締結)によって連結される。
【0039】
一方、前記タワー6は、鋼材、コンクリート又はPRC(プレストレスト鉄筋コンクリート)から構成されるものが使用されるが、好ましいのは総重量が小さくなるように鋼材によって製作されたものを用いるのが望ましい。タワー6の外径と前記上段側鋼製筒状体18の外径とはほぼ一致しており、外形状は段差等が無く上下方向に連続している。図示例では、上段側鋼製筒状体18の上部に梯子13が設けられ、タワー6と上段側鋼製筒状体18とのほぼ境界部に周方向に歩廊足場14が設けられている。
【0040】
前記係留索5の浮体4への係留点Pは、図1に示されるように、海面下であってかつ浮体4の重心Gよりも高い位置に設定してある。従って、船舶が係留索5に接触するのを防止できるようになる。また、浮体4の倒れ過ぎを抑えるように係留点Pに浮体4の重心Gを中心とする抵抗モーメントを発生させるため、タワー6の傾動姿勢状態を適性に保持し得るようになる。
【0041】
一方、前記ナセル8は、風車7の回転を電気に変換する発電機やブレードの角度を自動的に変えることができる制御器などが搭載された装置である。
【0042】
前記ブレード9,9…は、図2に示されるように、タワー6との接触を避けるため、回転軸は所定角度の上向き角θを付けている。従って、ブレード回転面Sは上向き角θだけ傾いて設定される。前記上向き角θは概ね5〜10°の範囲である。
【0043】
〔浮体式洋上プラットフォーム1〕
図1図3に示されるように、浮体式洋上プラットフォーム1は、プラットフォーム本体3の中央部に上下方向の貫通孔3aを有する。前記プラットフォーム本体3の平面形状は、図3では正方形状を図示したが、円形状や多角形状であってもよい。材質は、鋼製又はコンクリート製或いは鋼材とコンクリートとのハイブリッド構造とすることができる。コンクリート製の場合は、PC鋼材により予め緊張力を導入したプレストレストコンクリート版とするのが望ましい。前記貫通孔3aの平面形状は、図3では正方形を図示したが、円形や多角形であってもよい。
【0044】
前記プラットフォーム本体3の下面側の端部には、周方向に均等配置で複数の補助浮体11,11…が備えられている。図示の例では、前記プラットフォーム本体3の平面形状を正方形としてあるため、4つの隅部のそれぞれに補助浮体11を設けている。仮に、前記プラットフォーム本体3の平面形状を円形した場合には、中心(360度)を均等に分割した半径方向位置にそれぞれ補助浮体11を設けるようにすることもできる。
【0045】
前記補助浮体11の材質は、鋼製又はコンクリート製或いは鋼材とコンクリートとのハイブリッド構造とすることができる。これら補助浮体11の内部には、前記浮体4と動揺に、水、砂利、細骨材又は粗骨材、金属粒などのバラスト材が投入又は排出可能とされ、浮力(喫水)が調整可能とされる。
【0046】
〔両者を組み合わせた構造〕
前記スパー型浮体式洋上風力設備2と前記浮体式洋上プラットフォーム1とは、図1図3に示されるように、前記浮体式洋上プラットフォーム1の貫通孔3aを前記浮体4又はタワー6が貫通した状態で前記スパー型浮体式洋上風力設備2が設置される。なお、前記貫通孔3aを貫通するスパー型浮体式洋上風力設備2の部分が、浮体4又はタワー6としたのは、浮体4とタワー6との境界部の設定は任意であり、かつ浮いた状態での喫水調整は任意であることから、現実的に貫通孔3aを貫通する部分が浮体4の場合であったり、タワー6の場合であったりするためである。
【0047】
そして、前記スパー型浮体式洋上風力設備2の前記支持用ブラケット10の上面と前記浮体式洋上プラットフォーム1の貫通孔3a周辺の下面との間に介在された、両者の挙動差を吸収可能な支承12、12…によって連結されている。
【0048】
前記スパー型浮体式洋上風力設備2は、動揺特性に優れているため、これを浮体式洋上プラットフォーム1と前述の構造で組み合わせることにより、風力発電設備の設置により全体の重心位置が上がるようなこともなく、浮体式洋上プラットフォーム1の安定性を向上させることが可能になるとともに、係留構造及び浮体構造が簡素化でき、製作コストの大幅な削減が可能となる。
【0049】
一方で、前記浮体式洋上プラットフォーム1と前記スパー型浮体式洋上風力設備2とは、構造が全く異なり、それぞれ波力及び風力の受け方が異なるため、外力を受けた際の挙動が大きく異なることになる。そこで、前述した組み合わせ構造とした上で、両者の挙動差を前記支承12で吸収するようにしたことにより、全体として構造が不安定に成ることも無くなる。
【0050】
前記支承12においては、図9に示されるように、前記浮体式洋上プラットフォーム1側からの下側方向荷重P1と、前記支持用ブラケット10側からの上側方向荷重P2とが対向している荷重釣合い関係となっていることが望ましい。前記スパー型浮体式洋上風力設備2と前記浮体式洋上プラットフォーム1とは共に、バラスト材の投入と排出とによって喫水(浮いた状態での上下方向位置)の調整が可能となっている。従って、前記スパー型浮体式洋上風力設備2と前記浮体式洋上プラットフォーム1とのそれぞれの喫水調整を行うことにより前記支承12において、お互いからの力が対向し合う力の釣り合い関係とすると、前記浮体式洋上プラットフォーム1が前記支持用ブラケット10側からの上側方向荷重P2を常時受けることにより、縦揺れや横揺れが抑制されると同時に、前記スパー型浮体式洋上風力設備2も前記浮体式洋上プラットフォーム1側からの下側方向荷重P1を常時受けることにより、縦揺れや横揺れが抑制されるようになる。すなわち、両者の協働作用により前記スパー型浮体式洋上風力設備2と前記浮体式洋上プラットフォーム1との揺れが共に抑制されるようになる。
【0051】
前記支持用ブラケット10の構造は、図10に示されるように、タワー6(又は浮体4)から周方向に均等角度で分割された方向、図示例の場合は90度方向にそれぞれ延びる3本以上のアーム状部材によって構成することでもよいし、図11に示されるように、全周方向に亘る平板状部材、図示例の場合タワー6(又は浮体4)の全周方向に亘る円板又は角板などの平板状部材によって構成とすることでもよい。また、支承12の数についても、図示例の場合は90度方向にそれぞれ、計4つ設けるようにしたが、中心で周方向に均等角度で分割された方向位置であればそれ以上の数で設けるようにしてもよい。
【0052】
前記支承12は、水平方向の移動追随機構と、鉛直方向の移動追随機構、水平軸回りの回転追随機構及びヨー回転の追随機構の内の一つ又は複数の機構を備えていることが望ましい。
【0053】
具体例を示すと、図12に示された第1形態例は、ゴム沓で構成することによって簡易的構造とした例である。具体的には、前記スパー型浮体式洋上風力設備2の前記支持用ブラケット10の上面と前記浮体式洋上プラットフォーム1の貫通孔3a周辺の下面との間に積層ゴム31を介在させる。隣接位置にはプラットフォーム本体3側にストッパー30が固設され、支持用ブラケット10側にストッパー32が固設され、前記積層ゴム31を挟み込んでいる。ゴム沓であるため変形量は多くはないが、x、y、zそれぞれの方向に変形が可能であるとともに、回転方向rの変形も可能である。なお、貫通孔3a部位には、第2ストッパー33を配設し、両者の係合構造が外れないように保持している。この第2ストッパー33は他の支承構造例に対しても同様に設けることができる。
【0054】
次いで、図13に示された第2形態例は、ピボットローラー支承構造とした例である。具体的には、下沓34と上沓35とは凸面と凹面との係合により回転rを許容できるようにしている。また、下沓34が周方向に沿って配置されたローラ36,36…によってタワー6に対して放射方向に移動可能となっているとともに、上沓35が半径方向に沿って配置されたローラ37、37…によってタワー6に対して円周方向に移動可能となっている。また、下沓34及び上沓35はそれぞれ緩衝材38を介してストッパー39により支持されている。また、下沓34と支持用ブラケット10との間には、鉛直スプリング又はダンパーを内在した鉛直方向の移動追随機構40が設けられている。
【0055】
更に、図14に示された第3形態例は、スパー型浮体式洋上風力発電設備2及び前記浮体式洋上プラットフォーム1に生じるヨー回転に追随し得る支承構造とした例である。具体的には、前記スパー型浮体式洋上風力設備2の前記支持用ブラケット10の上面と前記浮体式洋上プラットフォーム1の貫通孔3a周辺の下面との間の空間に、ゴム層40を介してスラスト軸受構造の支承12を配設している。波浪によって、スパー型浮体式洋上風力発電設備2及び前記浮体式洋上プラットフォーム1には、挙動差の違いによってヨーイング方向の回転差が生じるため、この回転差を吸収することにより他部材に過大な荷重が作用しないようにできる。この際、ゴム層40を介在させることにより、第1形態例よりも僅かであるが、x、y、z方向のスライドと回転方向rへの追随が可能である。
【符号の説明】
【0056】
1…浮体式洋上プラットフォーム、2…スパー型浮体式洋上風力設備、3…プラットフォーム本体、3a…貫通孔、4…浮体、5…係留索、6…タワー、7…風車、8…ナセル、9…ブレード、10…支持用ブラケット、11…補助浮体、12…支承、13…梯子、14…歩廊足場、15…プレキャスト筒状体、16…合成プレキャスト部材、17・18…鋼製筒状体、19…PC鋼棒
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