(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項6または7に記載のエレクトロスラグ溶接用ワイヤ、および請求項8に記載のエレクトロスラグ溶接用フラックスを用い、エレクトロスラグ溶接により作製される溶接継手であって、
前記溶接継手における溶接金属が、質量%で、
C :0%超、0.07%以下、
Si:0%超、0.50%以下、
Mn:0%超、1.0%以下、
Ni:6.0〜15.0%、
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
かつ、下記式(6)を満足することを特徴とする、溶接継手。
0.150≦C+Si/30+Mn/20+Ni/60≦0.300 (6)
請求項6または7に記載のエレクトロスラグ溶接用ワイヤ、および請求項8に記載のエレクトロスラグ溶接用フラックスを用い、エレクトロスラグ溶接により作製される溶接継手であって、
前記溶接継手における溶接金属が、質量%で、
C :0%超、0.07%以下、
Si:0%超、0.50%以下、
Mn:0%超、1.0%以下、
Ni:6.0〜15.0%、
を含有し、かつ
Cu、Cr、Mo、W、Nb、V、およびBからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
かつ、下記式(7)の範囲を満足することを特徴とする、溶接継手。
0.150≦C+Si/30+W/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+Nb/10+V/10+5×B≦0.300 (7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、例えば入熱量が10kJ/mm以上の高能率であって、強度および極低温特性等の機械的特性に優れた溶接金属を有する溶接継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、溶接材料においてもNi基から5.0〜10.0%Ni程度の溶接金属継手で所定の機械的特性が得られる高能率の溶接施工法を検討した。その結果、10.0kJ/mm以上の高能率な溶接が可能、かつ所定の機械的特性が得られるエレクトロスラグ溶接用ワイヤおよびフラックス、それらを用いた溶接金属化学成分系を見出した。
【0008】
すなわち、上記課題を解決し得る本発明のエレクトロスラグ溶接用ワイヤは、ワイヤ全質量あたり、質量%で、
C :0%超、0.07%以下、
Si:0%超、0.50%以下、
Mn:0%超、1.0%以下、
Ni:6.0〜15.0%、
Fe:79%以上
を含有し、
かつ、下記式(1)を満足することを特徴とする、エレクトロスラグ溶接用ワイヤである。
0.150≦C+Si/30+Mn/20+Ni/60≦0.300 (1)
【0009】
または、ワイヤ全質量あたり、
質量%で、
C :0%超、0.07%以下、
Si:0%超、0.50%以下、
Mn:0%超、1.0%以下、
Ni:6.0〜15.0%、
Fe:79%以上
を含有し、かつ、
Cu、Cr、Mo、W、Nb、V、およびBからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を含有し、
かつ、下記式(2)を満足することを特徴とする、エレクトロスラグ溶接用ワイヤである。
0.150≦C+Si/30+W/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+Nb/10+V/10+5×B≦0.300 (2)
【0010】
本発明の好ましい実施形態において、上記エレクトロスラグ溶接用ワイヤは、Ca、Mg、REM、Zr、Al、およびTiからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を含有し、
かつ、下記式(3)を満足することを特徴とする。
0.001≦1.6(Ca+Mg)+1.25(REM+Zr)+Al+0.8Ti≦0.70 (3)
【0011】
本発明の好ましい実施形態において、上記エレクトロスラグ溶接用ワイヤは、ソリッドワイヤまたはフラックス入りワイヤである。
【0012】
本発明の好ましい実施形態において、エレクトロスラグ溶接用ワイヤは、ワイヤ全質量に対し、スラグ形成剤を0%超、15%以下含み、かつ当該スラグ形成剤は、SiO
2、CaO、CaF
2、BaF
2、MgO、Al
2O
3、MnO、TiO
2、ZrO
2、FeO、Na
2O、K
2O、およびBaOからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を含有し、かつ下記式(4)を満足することを特徴とするフラックス入りワイヤである。
(CaO+CaF
2+BaF
2+MgO+BaO+Na
2O+K
2O)/(SiO
2+0.5(Al
2O
3+TiO
2+ZrO
2+MnO+FeO))≧1.00 (4)
(但し、SiO
2、Al
2O
3、TiO
2、ZrO
2、MnO、およびFeOのいずれも含まない場合は>100とする。)
【0013】
本発明の好ましい実施形態において、上記エレクトロスラグ溶接用ワイヤは、Cuめっきが施されたものである。
【0014】
上記課題を解決し得る本発明のフラックスは、上記のいずれかに記載のエレクトロスラグ溶接用ワイヤと共にエレクトロスラグ溶接に用いられるフラックスであって、質量%で、
SiO
2:0〜35%、
CaO:5〜60%、
CaF
2:3〜50%、
BaF
2:0〜20%、
MgO:0〜20%、
Al
2O
3:0〜65%、
MnO:0〜20%、
TiO
2:0〜10%、
ZrO
2:0〜10%、
FeO:0〜5%、
Na
2O:0〜10%、
K
2O:0〜10%、
BaO:0〜20%、
を含有し、
かつ、下記式(5)を満足することを特徴とする、エレクトロスラグ溶接用フラックスである。
(CaO+CaF
2+BaF
2+MgO+BaO+Na
2O+K
2O)/(SiO
2+0.5(Al
2O
3+TiO
2+ZrO
2+MnO+FeO))≧1.00 (5)
(但し、SiO
2、Al
2O
3、TiO
2、ZrO
2、MnO、およびFeOのいずれも含まない場合は>100とする。)
【0015】
また、上記課題を解決し得る本発明の溶接継手は、上記のいずれかに記載のエレクトロスラグ溶接用ワイヤ、および前記エレクトロスラグ溶接用フラックスを用い、エレクトロスラグ溶接により作製される溶接継手であって、
前記溶接継手における溶接金属が、質量%で、
C :0%超、0.07%以下、
Si:0%超、0.50%以下、
Mn:0%超、1.0%以下、
Ni:6.0〜15.0%、
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
かつ、下記式(6)を満足することを特徴とする、溶接継手である。
0.150≦C+Si/30+Mn/20+Ni/60≦0.300 (6)
【0016】
または、上記課題を解決し得る本発明の溶接継手は、上記のいずれかに記載のエレクトロスラグ溶接用ワイヤ、および前記エレクトロスラグ溶接用フラックスを用い、エレクトロスラグ溶接により作製される溶接継手であって、
前記溶接継手における溶接金属が、質量%で、
C :0%超、0.07%以下、
Si:0%超、0.50%以下、
Mn:0%超、1.0%以下、
Ni:6.0〜15.0%、
を含有し、かつ
Cu、Cr、Mo、W、Nb、V、およびBからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
かつ、下記式(7)の範囲を満足することを特徴とする、溶接継手である。
0.150≦C+Si/30+W/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+Nb/10+V/10+5×B≦0.300 (7)
【0017】
本発明の好ましい実施形態において、上記溶接継手は、前記溶接金属が、質量%で
O:0%超、0.025%以下
N:0%超、0.010%以下
をさらに含有することを特徴とする。
【0018】
本発明の好ましい実施形態において、前記溶接継手は、母材として5〜10%のNiを含有する鋼板を用いるものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、入熱量が例えば10kJ/mm以上の大入熱溶接時であっても強度および極低温靭性に優れた溶接金属を有する溶接継手を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明者らは、上記課題を解決するため、6.0〜15.0%Ni程度の溶接材料を用いた大入熱溶接法として、従来検討されていなかったエレクトロスラグ溶接を適用して検討を行なった。その結果、成分が適切に調整された溶接材料を用いれば、入熱量が例えば10kJ/mm以上の大入熱溶接時であっても、強度および極低温靭性に優れた溶接金属を有する溶接継手が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0022】
ここでエレクトロスラグ溶接は、溶融したスラグ浴の中に溶接ワイヤを入れ、主に溶融スラグのジュール熱を熱源として母材と溶接ワイヤとを溶融させて溶接する方法である。エレクトロスラグ溶接によれば、造船や産業機械分野などのように板厚が大きい構造物の立向き溶接を1パスで行なうことが可能である。上記構造物の立向き溶接は、これまでエレクトロガスアーク溶接で行なわれてきたが、溶接作業者にとってアーク放射熱、ヒューム、スパッタ等の作業環境上の問題があった。さらに板厚が増すとシールドが劣化し、溶接部の機械的性能が劣化するなどの問題もある。
【0023】
これに対し、エレクトロスラグ溶接では、エレクトロガスアーク溶接のように露出したアークではなく溶融スラグ内で熱が発生してワイヤおよび母材を溶融するので、アーク放射熱が発生せず、またヒューム、スパッタの発生も少なく、作業環境が改善される。また溶融スラグで溶接金属を大気から遮蔽するのでシールドガスが不要であり、板厚が大きくなってもシールド効果が劣化することがなく、大気に存在する窒素などの溶融金属内への侵入を板厚に関係なく効果的に防止できるので、溶接金属の機械的な劣化も発生しにくい。
【0024】
本明細書では、エレクトロスラグ溶接用ワイヤを単にワイヤと呼ぶ場合がある。
【0025】
以下、本発明について詳しく説明する。以下、%は特に断りのない限り、質量%を意味する。また、「〜」とはその下限の値以上、その上限の値以下であることを意味する。
【0026】
(エレクトロスラグ溶接用ワイヤ)
本発明に係るエレクトロスラグ溶接用ワイヤの成分は以下のとおりである。なお、本発明では、後述するようにフラックス入りワイヤが好ましく用いられるが、その場合におけるエレクトロスラグ溶接用ワイヤの成分は、フラックス入りワイヤに含まれる各成分の質量%を当該フラックス入りワイヤの全質量に対する割合で規定したものである。なお、フラックス入りワイヤの全質量とはフープとフラックスとの全質量を合わせたものをいう。
【0027】
C:0%超、0.07%以下
Cは、固溶強化および化合物を形成して強度確保に寄与する元素である。上記作用を有効に発揮させるため、C量は0.003%以上であることが好ましい。但し、C量を過剰に添加すると化合物粒子数の増加を招き、当該化合物粒子がシャルピー試験時のボイド形成の起点として作用して極低温靭性が低下するため、C量を0.07%以下とする。C量は、0.05%以下であることが好ましい。
【0028】
Si:0%超、0.50%以下
Siは脱酸元素であり、溶接金属中の酸素濃度を低下させることで極低温靭性の向上作用を有する。上記作用を有効に発揮させるため、Si量は0.003%以上であることが好ましい。但し、Siの過剰添加は強度の過大な上昇を招き、極低温靭性が低下するため、Si量を0.50%以下とする。Si量は、0.40%以下であることが好ましい。
【0029】
Mn:0%超、1.0%以下
Mnは、固溶強化により強度確保に寄与する元素である。Mn量が不足すると、所定の強度が得られないため、Mn量は0.01%以上であることが好ましい。但し、Mnの過剰添加は強度の過大な上昇を招き、極低温靭性が低下するため、Mn量を1.0%以下とする。Mn量は、0.9%以下であることが好ましい。
【0030】
Ni:6.0〜15.0%、
Niは、低温靭性の確保に必須の元素であり、Ni量を6.0%以上とする。Ni量は7.0%以上であることが好ましい。但し、Niの過剰添加は強度の上昇を招き、極低温靭性が低下するため、Ni量を15.0%以下とする。Ni量は、14.0%以下であることが好ましい。
【0031】
Fe:79%以上
Feは対象母材と同様、基本成分であり、母材と溶接金属とからなる継手の成分的連続性を確保するため、79%以上とする。79%未満の場合、他の合金成分あるいはスラグ形成剤を規定以上添加する必要が生じ、結果として溶接金属の強度が過大となり、極低温靭性が低下する。Fe量は、82%以上であることが好ましい。
【0032】
前述のとおり、各成分の作用については述べたが、規定の成分範囲であっても必要とする機械的性質を満足しない場合があった。そこで発明者らがさらに鋭意検討・試験を行った結果、大入熱のエレクトロスラグ溶接において、溶接金属の組織粗大化を抑え、微細な組織が得られ、結果機械的性質を満足する合金成分の関係式(1)を見出した。なお、式(1)中のC、Si等は、ワイヤ全質量あたりのそれぞれの含有量(質量%)であるが、単位を省略している。後述する式(2)〜(3)においても同様である。
0.150≦C+Si/30+Mn/20+Ni/60≦0.300 (1)
式(1)のパラメータが0.150未満の場合、所定の強度が得られない。式(1)のパラメータは、0.160以上が好ましく、0.170以上がより好ましい。一方、式(1)のパラメータが0.300を超えると溶接金属の強度が過大となり、極低温靭性が低下する。式(1)のパラメータは、0.290以下が好ましく、0.280以下がより好ましい。
【0033】
同様に、規定の成分範囲であっても必要とする機械的性質を満足しない場合があった。そこで発明者らがさらに鋭意検討・試験を行った結果、大入熱のエレクトロスラグ溶接において、さらに、Cu、Cr、Mo、W、Nb、V、およびBからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を含有し、溶接金属の組織粗大化を抑え、微細な組織が得られ、結果機械的性質を満足する合金成分の関係式(2)を見出した。
0.150≦C+Si/30+W/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+Nb/10+V/10+5×B≦0.300 (2)
Cu、Cr、Mo、W、Nb、V、およびBは強度確保に寄与する元素である。式(2)のパラメータが0.150未満の場合、所定の強度が得られない。式(2)のパラメータは、0.160以上が好ましく、0.170以上がより好ましい。一方、式(2)のパラメータが0.300を超えると溶接金属の強度が過大となり、極低温靭性が低下する。式(2)のパラメータは、0.290以下が好ましく、0.280以下がより好ましい。
【0034】
上述したCu、Cr、Mo、W、Nb、V、およびBの含有量のより好ましい範囲は、以下に示す通りである。
より好ましい範囲
Cu:0.45%以下
Cr:0.50%以下
Mo:0.55%以下
W :0.50%以下
Nb:0.20%以下
V :0.20%以下
B :0.01%以下
【0035】
また、Ca、Mg、REM、Zr、Al、およびTiからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を含有し、
0.001≦1.6(Ca+Mg)+1.25(REM+Zr)+Al+0.8Ti≦0.70 (3)
を満足することが好ましい。
【0036】
Ca、Mg、REM、Zr、Al、およびTiは脱酸元素であり、溶接金属中の酸素濃度を低下させて極低温靭性の改善作用を有する。このような作用を有効に発揮させるため、式(3)のパラメータが0.001以上であることが好ましい。しかしながら、本発明のように入熱量の大きい大入熱施工を対象とする場合、前述したように溶接後の冷却速度が低いため、酸化物の凝集・合体による粗大化が進行しやすい。そのため、過剰に添加すると粗大酸化物が増加し、極低温靭性確保の観点から、式(3)のパラメータは0.70以下が好ましい。また、式(3)のパラメータは0.10以上であることがより好ましい。
【0037】
上述したCa、Mg、REM、Zr、Al、およびTiの含有量のより好ましい範囲は、以下に示す通りである。
より好ましい範囲
Ca:0.0005〜0.20%
Mg:0.0005〜0.20%
REM:0.001〜0.20%
Zr:0.001〜0.15%
Al:0.001〜0.20%
Ti:0.001〜0.10%
【0038】
本発明に係るエレクトロスラグ溶接用ワイヤの組成は上記のとおりであり、残部は不可避的不純物である。不可避的不純物として、例えばP、S、As、Sb、Sn、Bi、O、Nなどが挙げられる。
【0039】
本発明のエレクトロスラグ溶接用ワイヤは、通電性を高めるため、表面にCuめっきが施されていることが好ましい。そのCuめっき量は、0.10%以上0.30%以下であることが好ましい。
【0040】
本発明のエレクトロスラグ溶接用ワイヤには、ソリッドワイヤ及びフラックス入りワイヤの両方が含まれる。このうちフラックス入りワイヤは、外皮(以下、フープともいう)の内側にフラックスが充填されたものであり、成分設計がし易く、また溶着速度および溶着効率などにも優れている。
【0041】
上記フープの組成は、フラックス入りワイヤの組成が上記範囲であれば特に限定されない。
【0042】
フラックス入りワイヤのフラックスは酸化物・フッ化物系および金属系に大別されるが、金属系フラックス入りワイヤは特に、メタルコアドワイヤ(MCW:Metal Cored Wire)と呼ばれることがある。
【0043】
フラックス入りワイヤのフラックス充填率は、5〜25%であることが好ましい。これらの範囲を外れると、作業性が劣化するなどの問題がある。ここで上記フラックス充填率は、フープ内に充填されるフラックスの充填率を、ワイヤの全質量に対する割合で規定したものである。なお、ワイヤの全質量とはフープとフラックスの全質量を合わせたものをいう。
【0044】
上記フラックス入りワイヤのフラックスは、酸化物・フッ化物系および金属系に大別され、金属系は上述したワイヤ組成の範囲を満足し、酸化物・フッ化物(スラグ形成剤)は、ワイヤ全質量に対し、0%超、15%以下含まれ、かつSiO
2、CaO、CaF
2、BaF
2、MgO、Al
2O
3、MnO、TiO
2、ZrO
2、FeO、Na
2O、K
2O、およびBaOからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を含有し、かつ下記式(4)を満足することを特徴とする。なお、式(4)中のCaO、CaF
2等の各成分の表記は、ワイヤ全質量あたりのそれぞれの含有量(質量%)である。
(CaO+CaF
2+BaF
2+MgO+BaO+Na
2O+K
2O)/(SiO
2+0.5(Al
2O
3+TiO
2+ZrO
2+MnO+FeO))≧1.00 (4)
(但し、SiO
2、Al
2O
3、TiO
2、ZrO
2、MnO、およびFeOのいずれも含まない場合は>100とする。)
【0045】
スラグ形成剤の使用により、エレクトロスラグ溶接時に当該スラグ形成剤が溶融してスラグ化し、スラグが溶融金属を保護し、大気からの窒素および酸素の混入を防止する。さらに、そのスラグ形成剤の組成式(4)の範囲に規定することにより、溶接金属の酸素量が低減し、極低温靭性が向上する。式(4)のパラメータが1.00以上であることが好ましく、1.30以上であることがより好ましい。また、スラグ形成剤にはCaCO
3、BaCO
3、MgCO
3などの炭酸塩をフープ内に充填されるフラックス充填剤として用いてもよいが、溶接時に炭酸塩が熱により分解し、CO
2ガスを発生し、溶接金属中の酸素量が増加し、極低温靭性に影響を及ぼす。従って、好ましくは、炭酸塩をフラックス充填剤に使用しない。なお、炭酸塩を用いる場合、上記式(4)のパラメータの算出には炭酸塩が熱で分解することを考慮し、実際の炭酸塩重量からCO
2分を除き、それぞれCaCO
3をCaO量に、BaCO
3をBaO量に、MgCO
3をMgO量に換算する。
【0046】
フラックス入り溶接ワイヤの製造方法は特に限定されず、一般的な工程で製造すればよい。例えば、軟鋼のフープをU字状に成型し、U字状成型フープにフラックスを充填した後、フラックスを内部に充填した筒状型に成型し、目的の径まで伸線して製造される。
【0047】
(フラックス)
エレクトロスラグ溶接では、溶接が進むにつれて減少する溶融スラグを補うためにフラックスが追加投入されるが、このフラックスを本明細書では単にフラックスという。エレクトロスラグ溶接では、溶接が進行するにつれて溶融金属は冷却されて溶接金属となり、溶融スラグ浴の一部は溶融スラグ層となるが、溶接の進行につれて溶融スラグ層が冷却されて固化スラグとなり、溶融スラグが消費される。この溶融スラグ浴の減少を補うため、フラックスが用いられる。フラックスは、溶融型フラックスとボンド型(焼成型)フラックスとに大別される。溶融型フラックスは、種々の原料を電気炉などで溶解し、粉砕することにより製造される。一方、焼成型フラックスは、種々の原料をケイ酸アルカリなどのバインダーにより結合し、造粒した後、焼成することにより製造される。焼成型フラックスは前述の炭酸塩を原料として用いる場合があるが、溶接時に炭酸塩が熱により分解し、CO
2ガスを発生し、溶接金属中の酸素量が増加し、極低温靭性に影響を及ぼす。従って、好ましくは溶融型フラックスを用いる。
【0048】
本発明に用いられるフラックスの組成は以下のとおりである。
【0049】
SiO
2:0〜35%
SiO
2は酸性成分であり、溶融スラグの粘性および融点を調整する成分である。本発明では、他成分で粘性および融点の調整が可能であり、SiO
2を含まなくてもよい。一方、含有する場合は、SiO
2量が35%を超えると、溶融スラグの粘性が高くなり、溶込み不良が生じるため、SiO
2量は35%以下が好ましく、30%以下がより好ましい。
【0050】
CaO:5〜60%
CaOは塩基性成分であり、溶融スラグの粘性および融点を調節するために有効な成分であると共に、溶接金属の酸素量を低減させる効果が高い。CaO量が5%未満の場合、溶接金属の酸素量が増加するため、CaO量は5%以上であることが好ましく、10%以上がより好ましい。但し、CaO量が60%を超えると、アンダーカットおよびスラグ巻き込みが発生するため、CaO量は60%以下が好ましく、55%以下がより好ましい。
【0051】
CaF
2:3〜50%
CaF
2も塩基性成分であり、溶融スラグの粘性および融点を調節するために有効な成分であると共に、溶接金属の酸素量を低減させる効果が高い。CaF
2量が3%未満の場合、溶接金属の酸素量が増加するため、CaF
2量は3%以上が好ましく、5%以上がより好ましい。但し、CaF
2量が50%を超えると、アンダーカットおよびスラグ巻き込みが発生し易くなると共に、溶接時にフッ化ガスが発生して溶接が安定しないため、CaF
2量は50%以下が好ましく、45%以下がより好ましい。
【0052】
BaF
2:0〜20%
BaF
2も塩基性成分であり、溶融スラグの粘性および融点を調節するために有効な成分であると共に、溶接金属の酸素量を低減させる効果が高い。本発明では、他成分で粘性および融点、さらには溶接金属酸素量の調整が可能であり、BaF
2を含まなくてもよい。一方、含有する場合は、BaF
2量が20%を超えると溶融スラグの融点が低くなり過ぎて粘性が不足し、摺動式銅当て金と溶接金属との間から溶融スラグが排出しやすくなり過ぎ、溶融スラグによる溶融金属の抑えが効かなくなり溶落する。このため、BaF
2量は20%以下が好ましく、15%以下がより好ましい。
【0053】
MgO:0〜20%
MgOも塩基性成分であり、溶融スラグの粘性および融点を調整するために有効な成分である。本発明では、他成分で粘性および融点の調整が可能であり、MgOを含まなくてもよい。一方、含有する場合は、MgO量が20%を超えると溶融スラグの融点が高くなり過ぎ粘性も高くなる結果、溶込み不良が生じるため、MgO量は20%以下であることが好ましく、15%以下がより好ましい。
【0054】
Al
2O
3:0〜65%
Al
2O
3は溶融スラグの粘性および融点を調整するために有効な成分である。本発明では、他成分で粘性および融点の調整が可能であり、Al
2O
3を含まなくてもよい。一方、含有する場合は、Al
2O
3量が65%を超えると溶融スラグの粘性が高くなり、溶込み不良が生じるため、65%以下であることが好ましく、60%以下がより好ましい。また、Al
2O
3量は、3%以上が好ましい。
【0055】
MnO:0〜20%
MnOは、溶融スラグの粘性および融点を調整するために有効な成分である。本発明では、他成分で粘性および融点の調整が可能であり、MnOを含まなくてもよい。一方、含有する場合は、MnO量が20%を超えると、溶融スラグの融点が低くなり過ぎて粘性が不足し、摺動式銅当て金と溶接金属との間から溶融スラグが排出しやすくなり過ぎ、溶融スラグによる溶融金属の抑えが効かなくなり溶落する。このため、MnO量は20%以下が好ましく、15%以下がより好ましい。
【0056】
TiO
2:0〜10%およびZrO
2:0〜10%
TiO
2およびZrO
2は、溶融スラグの融点を調整するために有効な成分である。本発明では、他成分で融点の調整が可能であり、TiO
2およびZrO
2を含まなくてもよい。一方、含有する場合、TiO
2およびZrO
2がそれぞれ10%を超えると、融点付近で粘度が急激に高くなるため、スラグ巻込みが発生しやすくなる。そのため、TiO
2およびZrO
2量はそれぞれ10%以下が好ましく、5%以下がより好ましい。
【0057】
FeO:0〜5%
FeOは、溶融スラグの粘性および融点を調整するために有効な成分であると共に、溶接金属の酸素量を低減させる効果が高い。本発明では、他成分で粘性および融点の調整が可能であり、FeOを含まなくてもよい。一方、含有する場合は、FeO量が5%を超えると、ビード表面にスラグが生成して焼付きやすくなるため、5%以下が好ましく、3%以下がより好ましい。
【0058】
Na
2O:0〜10%
Na
2Oは、溶融スラグの粘性を調整するために非常に有効な成分である。ただし、本発明では、他成分で粘性および融点の調整が可能であり、Na
2Oを含まなくてもよい。一方、含有する場合は、Na
2O量が10%を超えると、溶融スラグの融点が低くなり過ぎて粘性が不足し、摺動式銅当て金と溶接金属との間から溶融スラグが排出しやすくなり過ぎ、溶融スラグによる溶融金属の抑えが効かなくなり溶落するため、10%以下が好ましく、より好ましくは7%以下である。
【0059】
K
2O:0〜10%
K
2Oは、溶融スラグの粘性を調整するために非常に有効な成分である。ただし、本発明では、他成分で粘性および融点の調整が可能であり、K
2Oを含まなくてもよい。一方、含有する場合は、K
2O量が10%を超えると、溶融スラグの融点が低くなり過ぎて粘性が不足し、摺動式銅当て金と溶接金属との間から溶融スラグが排出しやすくなり過ぎ、溶融スラグによる溶融金属の抑えが効かなくなり溶落する。このため、K
2O量は、10%以下が好ましく、7%以下がより好ましい。
【0060】
BaO:0〜20%
BaOは、塩基性成分であり、溶融スラグの粘性および融点を調節するために有効な成分であると共に、溶接金属の酸素量を低減させる効果が高い。ただし、本発明では、他成分で粘性および融点の調整が可能であり、BaOを含まなくてもよい。一方、含有する場合は、BaO量が20%を超えると、溶融スラグの融点が低くなり過ぎて粘性が不足し、摺動式銅当て金と溶接金属との間から溶融スラグが排出しやすくなり過ぎ、溶融スラグによる溶融金属の抑えが効かなくなり溶落する。このため、BaO量は、20%以下が好ましく、15%以下がより好ましい。
【0061】
フラックスの組成は、溶接金属の酸素量低減に効果的であり、溶接金属部の靭性向上に繋がるため、各成分量の限定範囲内かつ式(5)を満足することが好ましい。なお、式(5)中のCaO、CaF
2等の各成分の表記は、フラックス全質量あたりのそれぞれの含有量(質量%)である。
(CaO+CaF
2+BaF
2+MgO+BaO+Na
2O+K
2O)/(SiO
2+0.5(Al
2O
3+TiO
2+ZrO
2+MnO+FeO))≧1.00 (5)
(但し、SiO
2、Al
2O
3、TiO
2、ZrO
2、MnO、およびFeOのいずれも含まない場合は>100とする。)
【0062】
本発明に係るフラックスの組成は上記のとおりであり、残部はP、S、As、Sb、Sn、Bi等の不可避的不純物である。
【0063】
(溶接継手)
本発明の溶接継手は、上記エレクトロスラグ溶接用ワイヤおよびフラックスを用い、エレクトロスラグ溶接により作製される。上記溶接継手における溶接金属の組成(各成分量)は、残部がFeおよび不可避的不純物である点を除き、エレクトロスラグ溶接用ワイヤの組成と同じであって、各成分の作用効果も同一である。したがって、以下の記載において、前述したエレクトロガス溶接用ワイヤと重複する成分の作用効果は、説明の重複を避けるため省略して、好ましい範囲のみ記載する。
【0064】
C:0%超、0.07%以下
好ましい上限:0.06%
【0065】
Si:0%超、0.50%以下
好ましい上限:0.40%、より好ましくは0.30%
【0066】
Mn:0%超、1.0%以下
好ましい上限:0.8%
【0067】
Ni:6.0〜15.0%、
好ましい下限:7.0%、
好ましい上限:14.0%、より好ましくは12.0%
【0068】
また、上記溶接継手における溶接金属は、下記式(6)を満足する。なお、式(6)中のC、Si等は、溶接金属全質量あたりのそれぞれの含有量(質量%)であるが、単位を省略している。
0.150≦C+Si/30+Mn/20+Ni/60≦0.300 (6)
発明者らは、上記ワイヤにおける式(1)と同様の観点から、溶接金属において式(6)を満たすことの技術的意義を見出した。式(6)のパラメータが0.150未満の場合、所定の強度が得られない。式(6)のパラメータは、0.160以上が好ましく、0.170以上がより好ましい。一方、式(6)のパラメータが0.300を超えると溶接金属の強度が過大となり、極低温靭性が低下する。式(6)のパラメータは、0.290以下が好ましく、0.280以下がより好ましい。
【0069】
また、上記溶接継手における溶接金属は、さらに、Cu、Cr、Mo、W、Nb、V、およびBからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を含有する場合には、下記式(7)を満足する。なお、式(7)中のC、Si等は、溶接金属全質量あたりのそれぞれの含有量(質量%)であるが、単位を省略している。
0.150≦C+Si/30+W/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+Nb/10+V/10+5×B≦0.300 (7)
Cu、Cr、Mo、W、Nb、V、およびBは強度確保に寄与する元素である。発明者らは、上記ワイヤにおける式(2)と同様の観点から、溶接金属において式(7)を満たすことの技術的意義を見出した。式(7)のパラメータが0.150未満の場合、所定の強度が得られない。式(7)のパラメータは、0.160以上が好ましく、0.170以上がより好ましい。一方、式(7)のパラメータが0.300を超えると溶接金属の強度が過大となり、極低温靭性が低下する。式(7)のパラメータは、0.290以下が好ましく、0.280以下がより好ましい。
なお、溶接金属中におけるCu、Cr、Mo、W、Nb、V、およびBのそれぞれの好ましい含有量は、上記ワイヤにおける好ましい含有量と同じである。
【0070】
O :0%超、0.025%以下
Oは酸化物を形成し、当該酸化物がシャルピー試験時のボイド形成の起点として作用するため、極低温靭性が低下する。したがって、O量は、0.025%以下とすることが好ましく、望ましくは含有しない。
【0071】
N :0%超、0.010%以下
Nは固溶元素として溶接金属部のマトリックスを強化する一方、脆性破壊を誘発する元素でもあり、極低温靭性が低下する。したがって、N量は、0.010%以下とすることが好ましく、望ましくは含有しない。
【0072】
本発明に係る溶接金属の基本組成は上記のとおりであり、残部は、鉄およびワイヤから添加した、Cu、Cr、Mo、W、Nb、V、B、および脱酸剤として添加したCa、Mg、REM、Al、Zr、Tiの一部がスラグとして排出されず溶接金属中に残ったもの、さらには不可避的不純物である。不可避的不純物として、例えばP、S、As、Sb、Sn、Bi等が挙げられる。
【0073】
上記溶接継手の作製に用いられる母材は、5〜10%のNiを含有する鋼板を用いることが好ましい。Ni量が5%未満では、極低温靭性が確保できないなどの問題がある。Ni量は、より好ましくは5.2%以上であり、更に好ましくは6.5%以上である。但し、Ni量が10%を超えると鋼材コストが上昇するため、Ni量は10%以下であることが好ましい。Ni量は、より好ましくは9.5%以下である。
【実施例】
【0074】
本実施例では、母材として表1に示す組成(残部は不可避的不純物である)を有する鋼板、表2〜5に示す組成を有するエレクトロスラグ溶接用ワイヤ、および表6に示す組成を有するフラックスを用いて下記の溶接条件にて溶接金属を作製した。なお、表1〜6および以下に示す表7〜10において、各成分組成における“0”なる表記は、組成分析における検出限界値未満であることを意味する。
【0075】
また、表2〜5に示すスラグ量は、ワイヤ中に含まれるスラグ形成剤の量であり、その組成から式(4)にて算出した値を記載している。試験したワイヤは、フラックス入りワイヤ、MCW、ソリッドワイヤがあり、MCWおよびソリッドワイヤの場合は備考欄に示し、フラックス入りワイヤの場合は空欄とした。また、Cuめっきの有無は備考欄に示した。Cuめっき量は、0.10〜0.30%の範囲とし、表2〜5のワイヤCu量は、Cuめっき量とめっき以外にワイヤに合金として含有する量の総和を示している。
また、表2〜5に示す各ワイヤにおいて、Cu、Cr、Mo、W、Nb、V、およびBのいずれも含有しないワイヤについては、式(1)のパラメータ値のみを記載し、式(2)のパラメータ値は空欄としている。一方、Cu、Cr、Mo、W、Nb、V、およびBからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を含有するワイヤについては、式(2)のパラメータ値のみを記載し、式(1)のパラメータ値は空欄としている。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
【表3】
【0079】
【表4】
【0080】
【表5】
【0081】
【表6】
【0082】
また、
図1に示すように、銅当て金1(開先の裏側)および摺動式銅当て金2(開先の表側)に囲まれた開先の幅は10mmであり、20°V開先溶接を行った。なお、銅当て金1および摺動式銅当て金2はいずれも、水冷されたものを用いた。
【0083】
溶接方法:エレクトロスラグ溶接
溶接条件:
母材の板厚:30mm
開先形状:
図1を参照
スラグ浴深さ25mmで溶接を開始
ワイヤ:表2〜5を参照
ワイヤ径=1.6mm
入熱条件:約12〜19kJ/mm(溶接電流340〜380A−溶接電圧40〜44V)
溶接姿勢:立向き1パス
【0084】
このようにして得られた溶接金属の組成(残部は不可避的不純物である)を表7〜10に示す。なお、表7〜10に示される各溶接金属において、Cu、Cr、Mo、W、Nb、V、およびBのいずれも含有しない溶接金属については、式(6)のパラメータ値のみを記載し、式(7)のパラメータ値は空欄としている。一方、Cu、Cr、Mo、W、Nb、V、およびBからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を含有する溶接金属については、式(7)のパラメータ値のみを記載し、式(6)のパラメータ値は空欄としている。また、上記溶接金属について、以下の特性を評価した。
【0085】
(強度)
溶接金属の中央部より、溶接線方向に平行にJIS Z2202記載の方法で引張試験片を採取して、JIS Z2241に記載の方法で引張り試験を行った。本実施例では、引張強度TS>690MPaの溶接金属を合格とした。
【0086】
(極低温靭性)
得られた溶接金属の板厚中央部より、溶接線方向に垂直にシャルピー衝撃試験片(JIS Z3111 4号Vノッチ試験片)を採取し、JIS Z 2242に記載の方法で−196℃でのシャルピー衝撃試験を実施した。同様の試験を3回行い、その平均値を算出したとき、吸収エネルギーIVが40J以上の溶接金属を極低温靭性に優れると評価した。
【0087】
(ビード外観)
ビード外観は目視にて行い、下記基準で評価した。
合格:ビードの際が揃って直線性に優れているもの
不合格:ビードが大きく蛇行しているもの、またはアンダーカットが発生したもの
【0088】
【表7】
【0089】
【表8】
【0090】
【表9】
【0091】
【表10】
【0092】
表7〜10の結果より、以下のように考察することができる。
【0093】
まず、表7〜10のNo.1〜90は、本発明の要件を満足する表2〜5のNo.1〜90のワイヤを用いた例であり、10.0kJ/mm以上の大入熱溶接を施したにもかかわらず、極低温靭性IV(吸収エネルギー)および強度TS(引張強度)の両方に優れた溶接金属が得られた。
【0094】
これらのうち、フラックスとして本発明の組成を満足する表6のA〜Lを用いた結果、ビード外観は良好であった。
【0095】
これに対し、表10のNo.91〜100は、本発明の要件を満足しない表5のNo.91〜100のワイヤを用いた例であり、以下の不具合を有している。
【0096】
No.91は、ワイヤおよび溶接金属中のC量が多く、靭性が劣化した。
No.92は、ワイヤおよび溶接金属中のSi量が多く、靭性が劣化した。
No.93は、ワイヤおよび溶接金属中のMn量が多く、靭性が劣化した。
No.94は、ワイヤおよび溶接金属中のNi量が少なく、強度が低下したうえ、靭性が劣化した。
No.95は、ワイヤおよび溶接金属中のNi量が多く、靭性が劣化した。
No.96は、ワイヤのFe量が少なくなった結果、合金成分が過大となり、溶接金属の式(6)のパラメータが大きく、靭性が劣化した。
No.97は、ワイヤの式(1)のパラメータが小さく、強度が低下した上、靭性が劣化した。
No.98は、ワイヤの式(1)のパラメータおよび溶接金属の式(6)のパラメータが大きく、靭性が劣化した。
No.99は、ワイヤの式(2)のパラメータが小さく、強度が低下した上、靭性が劣化した。
No.100は、ワイヤの式(2)のパラメータおよび溶接金属の式(7)のパラメータが大きく、靭性が劣化した。
【0097】
以上、本発明を上記具体例に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記具体例に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいて、あらゆる変形や変更が可能である。