【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ウェブサイトの掲載日 平成28年 12月16日 ウェブサイトのアドレス http://www.hkd.mlit.go.jp/ky/ki/chousei/l−confe−room.html http://www.hkd.mlit.go.jp/ky/ki/chousei/PDF/58S1H.pdf 公開者 森雅則、大廣智則、小林智宏 開催日 平成29年 1月27日 平成28年度 第29回 ふゆトピアin函館 研究発表会 函館市民会館 公開者 森雅則、大廣智則、小林智宏
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記帯状電極のそれぞれは、側面視における端縁部から最上部までの高さが、前記凸曲面状基材の端縁部から頂面の最上部までの高さの1/3以上1/2以下である、請求項1に記載の凸曲面状透明ヒーター。
前記非通電部のそれぞれは、側面視における端縁部から最上部までの高さが、前記凸曲面状基材の端縁部から頂面の最上部までの高さの1/6以上1/2以下である、請求項1または請求項2に記載の凸曲面状透明ヒーター。
前記帯状電極および前記非通電部は、前記凸曲面状基材の頂面における曲率半径と略同一の曲率半径を有する円弧状に形成されている、請求項1から請求項3のいずれかに記載の凸曲面状透明ヒーター。
前記帯状電極および前記非通電部は、平面視において、その各中央部が前記頂面から離れる方向に向けて突出するように湾曲または屈曲されている、請求項1から請求項4のいずれかに記載の凸曲面状透明ヒーター。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る凸曲面状透明ヒーター、凸曲面状透明ヒーターを備えてなる製品および凸曲面状透明ヒーター製造方法の一実施形態について図面を用いて説明する。
【0017】
本実施形態の凸曲面状透明ヒーター1は、凸曲面状に形成される透明なヒーターであって、
図1から
図3に示すように、凸曲面状基材2の表面に成膜される透明導電膜3と、この透明導電膜3上に設けられる一対の帯状電極4,4とを有している。以下、各構成について説明する。
【0018】
なお、本実施形態では、
図1から
図3に示すように、凸曲面状透明ヒーター1を備えてなる製品10として、屋外用の監視カメラを想定している。このため、凸曲面状基材2は、
図1および
図2に示すように、略ドーム(半球)状に形成されたポリカーボネイト製の透明カバーによって構成されている。そして、凸曲面状基材2の内部には、頂面方向に向けられた全方位型のWebカメラ(図示せず)が収納されるようになっている。
【0019】
しかしながら、凸曲面状基材2は上記構成に限定されるものではなく、透明または半透明な基材によって頂面を有する凸曲面状に形成されていれば、半楕円体やその他の三次元曲面体であってもよい。また、凸曲面状透明ヒーター1を備えてなる製品10としては、監視カメラに限定されるものではなく、窓ガラス、光センサ等のハウジング、信号等の照明機器、ヘルメット、ビニールハウス、傘等のように、凸曲面状基材2を有するものであればよい。
【0020】
透明導電膜3は、凸曲面状基材2の表面に成膜され、通電することにより発熱する透明または半透明な抵抗体である。本実施形態において、透明導電膜3は、酸化インジウムスズ(ITO:Indium Tin Oxide)を主原料とし、所定の抵抗率および透過率を有している。また、本実施形態において、透明導電膜3は、真空状態におけるスパッタリング法によって凸曲面状基材2の内表面側の略全面に成膜されている。
【0021】
なお、透明導電膜3を成膜する方法は、上記に限定されるものではなく、凸曲面状基材2上に薄膜を形成できるものであれば、蒸着法やイオンプレーティング法等でもよい。また、本実施形態において、透明導電膜3は、破損や漏電等を防止するため、凸曲面状基材2の内表面側の略全面に成膜されている。しかしながら、破損や漏電等のおそれがない製品10においては、外表面側の略全面に透明導電膜3を成膜してもよい。なお、本発明において、「略全面」とは厳密な全面のみならず、本発明の作用効果を奏する範囲において、わずかに成膜されていない部分がある状態を含む概念である。
【0022】
一対の帯状電極4,4は、透明導電膜3上に設けられ、透明導電膜3に電流を流すためのものである。本実施形態において、各帯状電極4は、導電性を有する金属膜や金属テープ等によって構成されており、図示しない電源に接続されている。また、各帯状電極4は、
図3に示すように、凸曲面状基材2の頂面を介して互いに向かい合う位置に設けられている。
【0023】
具体的には、
図1から
図3に示すように、帯状電極4のそれぞれは、その両端部が透明導電膜3の端縁部に配置されているとともに、その中央部が頂面に向けて突出するように湾曲されている。これにより、透明導電膜3が発熱する領域を最大限に確保しつつ、各帯状電極4間の距離差が低減することになる。
【0024】
なお、本実施形態において、各帯状電極4は、その両端部が透明導電膜3の端縁部に配置されているが、この構成に限定されるものではなく、必要な発熱領域を確保しうる範囲において、端縁部近傍に配置されていればよい。また、本実施形態において、各帯状電極4は、その中央部が頂面に向けて突出するように円弧状に湾曲されているが、この形状に限定されるものではない。すなわち、各帯状電極4は、楕円状、三角形、台形およびその他の多角形等のように、その中央部が頂面に向けて突出するように湾曲または屈曲されていればよい。
【0025】
また、透明導電膜3には、
図1から
図3に示すように、一対の帯状電極4,4が向かい合う方向とは直交する方向において互いに向かい合う位置に、一対の非通電部5,5が形成されている。各非通電部5は、透明導電膜3上における電気の通り道を遮断し、通電させない役割を果たすものである。本実施形態において、各非通電部5は、透明導電膜3を成膜する際に、マスキングによって線状に成膜しない部分を残すことによって形成した線状溝として構成されている。
【0026】
具体的には、
図1から
図3に示すように、非通電部5のそれぞれは、その両端部が一対の帯状電極4,4の互いに向かい合う端部同士と一致する位置に配置されているとともに、その中央部が頂面に向けて突出するように湾曲されている。これにより、透明導電膜3における各非通電部5よりも端縁部側の領域は、通電しない非発熱領域となる。このため、各帯状電極4および各非通電部5によって囲まれた領域が発熱領域となり、当該発熱領域では各帯状電極4間の距離がほぼ均一化される。
【0027】
なお、本実施形態において、各非通電部5の両端部は、ホットスポットの発生を抑制するために、各帯状電極4の互いに向かい合う端部同士と一致する位置に配置されている。しかしながら、この構成に限定されるものではなく、製品10として実用上問題のない程度のホットスポットしか発生しないのであれば、各非通電部5の両端部は、各帯状電極4の互いに向かい合う端部同士と多少離れていてもよい。すなわち、各非通電部5の両端部は、各帯状電極4の互いに向かい合う端部同士と略一致する位置に配置されていればよい。
【0028】
また、本実施形態において、各非通電部5は、その中央部が頂面に向けて突出するように円弧状に湾曲されているが、この構成に限定されるものではない。すなわち、帯状電極4と同様、各非通電部5は、その中央部が頂面に向けて突出するように屈曲されていてもよい。さらに、本実施形態において、各非通電部5が向かい合う方向と、各帯状電極4が向かい合う方向とは約90度異なっているが、この構成に限定されるものではなく、凸曲面状基材2の形状に応じて、向かい合う方向が異なる方向であればよい。
【0029】
また、本実施形態において、各非通電部5は、マスキングによって形成された線状溝によって構成されているが、この構成に限定されるものではない。すなわち、非通電部5を形成する方法はマスキングに限らず、鋭利な刃物等によって所望の形状に切り欠いて非通電部5としてもよい。また、非通電部5の形状も線状溝に限らず、線状溝の端縁部側の領域を全て成膜しないようにマスキングし、非通電部5としてもよい。なお、各帯状電極4の端縁部側の領域についても、マスキングによって成膜しないように構成すれば、透明導電膜3の原材料費を削減することが可能となる。
【0030】
また、後述する実施例の結果から、帯状電極4のそれぞれは、側面視における端縁部から最上部までの高さが、凸曲面状基材2の端縁部から頂面の最上部までの高さの1/3以上1/2以下であることが好ましい。1/3以上とすることで、各帯状電極4間の距離がほぼ均一化される。また、1/2以下とすることで、実用上問題ない程度に発熱領域が確保される。
【0031】
さらに、後述する実施例の結果から、非通電部5のそれぞれは、側面視における端縁部から最上部までの高さが、凸曲面状基材2の端縁部から頂面の最上部までの高さの1/6以上1/2以下であることが好ましい。1/6以上とすることで、各帯状電極4の向かい合う端部同士間を流れる電流の通り道が長くなり、ホットスポットを発生させない程度の電極間距離を確保する。また、1/2以下とすることで、実用上問題ない程度に発熱領域が確保される。
【0032】
また、本実施形態において、各帯状電極4および各非通電部5は、
図1および
図2に示すように、凸曲面状基材2の頂面における曲率半径と略同一の曲率半径を有する円弧状に形成されている。これにより、各帯状電極4間の距離が、より一層均一化された状態となる。なお、本発明において、略同一とは、正確に同一の場合のみならず、本発明の作用効果を奏しうる範囲で曲率半径とわずかに異なる寸法も含むものである。
【0033】
さらに、本実施形態において、各帯状電極4および各非通電部5は、
図2に示すように、平面視において、その各中央部が頂面から離れる方向に向けて突出するように湾曲されている。すなわち、各帯状電極4および各非通電部5は、
図1および
図3に示すように、側面視においては、上方に向けて拡開するように傾斜されている。これにより、帯状電極4間の距離を均一化しつつ、より多くの発熱領域が確保されるようになっている。
【0034】
つぎに、本実施形態の凸曲面状透明ヒーター1および凸曲面状透明ヒーター1を備えてなる製品10の作用、および凸曲面状透明ヒーター1の製造方法について説明する。
【0035】
本実施形態の凸曲面状透明ヒーター1を製造する場合、まず、凸曲面状基材2の略全面に透明導電膜3を成膜する(透明導電膜成膜工程)。これにより、複雑な三次元形状を有する凸曲面状基材2であっても、簡単かつ迅速に均質な透明導電膜3が凸曲面状基材2の表面に成膜される。
【0036】
つぎに、本実施形態では、上記透明導電膜成膜工程において、マスキング技術を使用することによって、透明導電膜3上において、頂面を介して互いに向かい合う位置に一対の非通電部5,5を形成する(非通電部形成工程)。このとき、各非通電部5は、その両端部が各帯状電極4の互いに向かい合う端部同士に略一致する位置に配置される。このため、各非通電部5は、ホットスポットの発生を抑制しつつ、透明導電膜3における通電を遮断し、各帯状電極4および各非通電部5によって囲まれる領域を発熱領域とする。
【0037】
なお、本実施形態では、マスキングによって非通電部5を形成するため、透明導電膜成膜工程と非通電部形成工程とが同時に行われている。しかしながら、この順序に限定されるものではなく、透明導電膜3の成膜後に、非通電部5を切り欠いて形成する場合、非通電部形成工程は、透明導電膜成膜工程の後に行われることとなる。この場合、非通電部形成工程は、つづいての帯状電極設置工程の後に行われてもよい。
【0038】
最後に、透明導電膜3上において、一対の非通電部5,5が向かい合う方向とは異なる方向において互いに向かい合う位置に、一対の帯状電極4,4を設置する(帯状電極設置工程)。このとき、各帯状電極4は、その両端部が透明導電膜3の端縁部ないしその近傍に配置されるため、透明導電膜3の発熱領域が最大限に確保される。また、各帯状電極4の中央部が頂面に向けて突出するように湾曲されるため、各帯状電極4間の中央部同士を繋ぐ通電経路と、互いに向かい合う端部同士を繋ぐ通電経路との距離差が低減し、各帯状電極4間の距離が均一化する。
【0039】
また、本実施形態では、各非通電部5の中央部が頂面に向けて突出するように湾曲されている。このため、各帯状電極4の互いに向かい合う端部同士を繋ぐ通電経路が、各非通電部5に沿って円弧状をなし、発熱領域における帯状電極4間の距離をほぼ均一化する。これにより、発熱領域内の場所による温度差が低減し、温度制御がし易くなる。したがって、局所的な温度の急上昇が抑制され、透明導電膜3や凸曲面状基材2の破損が防止される。
【0040】
また、本実施形態において、各帯状電極4および各非通電部5は、凸曲面状基材2の頂面における曲率半径と略同一の曲率半径を有する円弧状に形成されている。これにより、各帯状電極4間の距離がより一層均一化されるため、発熱領域における温度分布の均一さ、および温度制御のし易さが向上する。よって、局所的な温度の急上昇に起因する透明導電膜3や凸曲面状基材2の破損がより一層防止される。
【0041】
さらに、本実施形態において、各帯状電極4および各非通電部5は、平面視において、その各中央部が頂面から離れる方向に向けて突出するように湾曲されている。これにより、帯状電極4間の距離がさらに均一化されるとともに、より多くの発熱領域が確保される。このため、製品10として理想的な設計が実現される。
【0042】
以上の工程を経て、本発明に係る凸曲面状透明ヒーター1が製造される。そして、当該凸曲面状透明ヒーター1が設けられた凸曲面状基材2を保護カバーやガラス面等として組み込むことにより、本発明に係る凸曲面状透明ヒーター1を備えてなる製品10が完成する。当該製品10において、各帯状電極4間に電圧が印加されると、透明導電膜3が発熱する。
【0043】
以上のような本発明に係る凸曲面状透明ヒーター1、凸曲面状透明ヒーター1を備えてなる製品10および凸曲面状透明ヒーター1の製造方法によれば、以下のような効果を奏する。
1.凸曲面状基材2に対して簡単に成膜される透明導電膜3を有する構成でありながら、ホットスポットの発生を抑制でき、頂面を含む多くの領域を発熱領域として確保することができる。
2.凸曲面状基材2の一部分に透明導電膜3を設ける場合と比較して、簡単かつ迅速に高品質な透明導電膜3を成膜することができる。
3.ホットスポットの発生を抑制することで、透明導電膜3や凸曲面状基材2が破損するのを防止でき、製品10の耐久性を向上することができる。
4.頂面を含む多くの領域を発熱領域とすることで、製品10として最も視野角や透過光量を確保したい頂面周辺を発熱させることができ、着雪や結露等を抑制することができる。
5.発熱領域における温度分布を均一化することができ、消費電力を抑えることができる。
6.透明導電膜3および各帯状電極4が、凸曲面状基材2の内表面側に設けられるため、異物の衝突による破損や、雨雪の付着による漏電等を防止することができる。
7.各帯状電極4の高さを所定の範囲内に設定することで、各帯状電極4間の距離差を低減して温度分布をほぼ均一化でき、実用上問題ない程度に発熱領域を確保することができる。
8.各非通電部5の高さを所定の範囲内に設定することで、ホットスポットの発生を抑制するとともに、実用上問題ない程度に発熱領域を確保することができる。
9.帯状電極4および非通電部5の曲率半径を凸曲面状基材2の頂面における曲率半径と略同一にすることで、温度分布を均一化して簡単に温度制御でき、局所的な温度の急上昇に起因する透明導電膜3や凸曲面状基材2の破損をより一層防止することができる。
10.帯状電極4および非通電部5の各中央部を、平面視で頂面から離れる方向に向けて突出するように湾曲させることで、帯状電極4間の距離がさらに均一化されるとともに、より多くの発熱領域が確保され、理想的な製品10を設計することができる。
【0044】
つぎに、本発明に係る凸曲面状透明ヒーター1、凸曲面状透明ヒーター1を備えてなる製品10および凸曲面状透明ヒーター1の製造方法の具体的な実施例について説明する。
【0045】
本実施例では、
図4および
図5に示すように、帯状電極4および非通電部5の形状や高さが異なる様々な凸曲面状透明ヒーター1を試作した。そして、各試作品に通電し、透明導電膜3上の温度分布を測定することにより、実用上問題がないか否かを確認する実験を行った。
【0046】
なお、以下の比較例および実施例において、使用した材料や実験条件は全て同一とした。具体的には、凸曲面状基材2としては、ポリカーボネイト製でドーム形状の透明カバーを使用した。当該透明カバーは曲率半径が95mmであり、端縁部から最上部までの高さが97mmであった。また、透明導電膜3は、酸化インジウムスズ(ITO)を主原料とし、透明カバーの内表面全体に真空状態でスパッタリング法によって成膜した。さらに、帯状電極4としては、導電性を有する金属テープを透明導電膜3上に貼り付けた。また、非通電部5は、鋭利な刃物によって透明導電膜3を切り欠いて線状溝を形成した。
【0047】
また、実験に際しては、凸曲面状透明ヒーター1に出力される電力が30Wになるように電圧を調整して帯状電極4間を通電した。当該通電している間、透明カバー上の複数点における表面温度をデータロガーによって測定した。そして、通電開始から30分経過後における最高温度と最低温度に基づいて最大温度差を算出し、温度分布の均一性を評価した。
【0048】
具体的には、温度分布の均一性は三段階で評価し、最大温度差が10℃未満であれば、実用上好適なレベル(○)とした。また、最大温度差が10℃以上15℃未満であれば、実用上問題ないレベル(△)とした。一方、最大温度差が15℃以上であれば、実用には向かないレベル(×)とした。
<比較例1>
【0049】
まず、比較例1として、非通電部5がない凸曲面状透明ヒーターについて実験を行った。具体的には、
図4および
図6に示すように、各帯状電極4は、透明カバーと略同一の曲率半径を有する略円弧状に形成し、その側面視における端縁部から最上部までの最大高さを85mmとした。
【0050】
本比較例1の凸曲面状透明ヒーターに通電した結果、
図7に示すように、最低温度は帯状電極4の端部近傍で44℃を示す一方、最高温度は透明カバーの頂点近傍で70℃を示し、その最大温度差は26℃であった。この大きな温度差の原因は、各帯状電極4の電極間距離が近すぎて、電流が透明カバーの頂面近傍に集中したためと考えられる。
【0051】
以上の本比較例1によれば、各帯状電極4の電極間距離が近ければ、頂面近傍の温度は向上する。しかしながら、各帯状電極4の両端部では温度が上昇せず、温度分布が均一化されない上、発熱領域が大きく狭められるため、本比較例1の構成は、実用には向かないレベル(×)であることが示された。
<比較例2>
【0052】
つぎに、比較例2として、上述した実施例1とほぼ同様の構成であるが、
図4および
図6に示すように、発熱領域を確保する目的で、各帯状電極4の最大高さを85mmから35mmに変更した凸曲面状透明ヒーターについて実験を行った。
【0053】
本比較例2の凸曲面状透明ヒーターに通電した結果、
図7に示すように、最低温度は帯状電極4の中央部近傍で45℃を示す一方、最高温度は帯状電極4の端部近傍で68℃を示し、その最大温度差は23℃であった。この大きな温度差の原因は、各帯状電極4の両端部における電極間距離が相対的に短く、その両端部近傍にホットスポットが発生したためと考えられる。
【0054】
以上の本比較例2によれば、各帯状電極4の高さを低くすれば発熱領域を確保できるが、各帯状電極4の両端部近傍にホットスポットが発生するため、本比較例2の構成は、実用には向かないレベル(×)であることが示された。
<比較例3>
【0055】
つぎに、比較例3として、非通電部5を設けた凸曲面状透明ヒーター1について実験を行った。具体的には、
図4および
図6に示すように、各帯状電極4は、側面視において直線状(透明カバーの端縁部に沿って円弧状)に形成し、各帯状電極4の互いに向かい合う端部同士を連結するように略アーチ形状の非通電部5を設けた。具体的には、
図4の破線で示すとおり、当該非通電部5は、端縁部から略直線状に20mm立ち上げてから略円弧状に形成し、最上部までの高さを40mmとした。
【0056】
本比較例3の凸曲面状透明ヒーター1に通電した結果、
図7に示すように、最低温度は透明カバーの頂点近傍で52℃を示す一方、最高温度は帯状電極4の端部近傍で80℃を示し、その最大温度差は28℃であった。この大きな温度差の原因は、各帯状電極4の互いに向かい合う端部同士を繋ぐ通電経路は、非通電部5に沿って長くなったものの、各帯状電極4間の略中央部における通電経路はさらに長かったため、各帯状電極4の両端部にホットスポットが発生したためと考えられる。
【0057】
以上の本比較例3によれば、非通電部5によって各帯状電極4間の両端部における通電経路を延長できるが、各帯状電極4間の略中央部における通電経路が長いままでは、温度分布が均一化されないため、本比較例3の構成は、実用には向かないレベル(×)であることが示された。
<比較例4>
【0058】
つぎに、比較例4として、上述した実施例3とほぼ同様の構成であるが、
図4および
図6に示すように、各帯状電極4の両端部における通電経路をさらに延長する目的で、非通電部5の最大高さを40mmから50mmに変更した。
【0059】
本比較例4の凸曲面状透明ヒーター1に通電した結果、
図7に示すように、最低温度は透明カバーの頂点近傍で55℃を示す一方、最高温度は帯状電極4の端部近傍で72℃を示し、その最大温度差は17℃であった。この大きな温度差の原因は、上述した比較例3と同様と考えられる。
【0060】
以上の本比較例4によれば、各帯状電極4が側面視で直線状のままでは、各非通電部5の高さを高くしても温度分布は均一化されない上、発熱領域も狭められるため、本比較例4の構成は、実用には向かないレベル(×)であることが示された。
【実施例1】
【0061】
つぎに、実施例1として、帯状電極4および非通電部5のそれぞれを湾曲ないし屈曲させた凸曲面状透明ヒーター1について実験を行った。具体的には、
図5および
図6に示すように、各帯状電極4は、側面視で略三角形状に形成し、その側面視における端縁部から最上部までの高さを40mmとした。また、各非通電部5については、上述した比較例3と同様のアーチ形状とした。
【0062】
本実施例1の凸曲面状透明ヒーター1に通電した結果、
図7に示すように、最低温度は透明カバーの頂点近傍で67℃を示す一方、最高温度は帯状電極4の頂点近傍で78℃を示し、その最大温度差は11℃であった。この温度差が減少した原因は、各帯状電極4の中央部近傍では、各帯状電極4自体の屈曲により電極間距離が短縮された一方、各帯状電極4の両端部近傍では、各非通電部5の湾曲により電極間距離が延長され、全体として、電極間距離が均一化された状態に近くなったためと考えられる。
【0063】
以上の本実施例1によれば、中央部が頂面に向けて突出するように湾曲または屈曲された帯状電極4および非通電部5を組み合わせることにより、透明導電膜3上の温度差が15℃以下に抑制されたため、本実施例1の構成は、実用上問題ないレベル(△)であることが示された。
【実施例2】
【0064】
つぎに、実施例2では、上述した実施例1において、帯状電極4の頂点近傍で観察された軽微なホットスポットを解消すべく考案した凸曲面状透明ヒーター1について実験を行った。具体的には、
図5および
図6に示すように、各帯状電極4は、上述した比較例2と略同じ円弧状に形成し、その側面視における端縁部から最上部までの最大高さを36mmとした。また、各帯状電極4の互いに向かい合う端部同士を連結するように略円弧状の非通電部5を設け、その最大高さを17mmとした。
【0065】
本実施例2の凸曲面状透明ヒーター1に通電した結果、
図7に示すように、最低温度は透明カバーの頂点近傍で56℃を示す一方、最高温度は帯状電極4の端部近傍で66℃を示し、その最大温度差は10℃であった。この温度差が減少した原因は、各帯状電極4を透明カバーと略同一の曲率半径を有する円弧状に形成することによって、電極間距離が均一化されるとともに、各非通電部5の湾曲によって各帯状電極4の両端部における電極間距離が延長され、全体としてホットスポットの発生が抑制されたためと考えられる。
【0066】
以上の本実施例2によれば、透明カバーと略同一の曲率半径を有する円弧状に形成された帯状電極4と、円弧状の非通電部5とを組み合わせることにより、透明導電膜3上の温度差が10℃に抑制されたため、本実施例2の構成は、実用上問題ないレベル(△)であることが示された。
【実施例3】
【0067】
つづいて、実施例3では、上述した実施例2における温度差をさらに低減すべく考案した凸曲面状透明ヒーター1について実験を行った。具体的には、
図5および
図6に示すように、上述した実施例2とほぼ同様の構成であるが、各帯状電極4の両端部における通電経路をさらに延長する目的で、非通電部5の最大高さを17mmから35mmに変更した。
【0068】
本実施例3の凸曲面状透明ヒーター1に通電した結果、
図7に示すように、最低温度は透明カバーの頂点近傍で57℃を示す一方、最高温度は帯状電極4の端部近傍で64℃を示し、その最大温度差は7℃であった。この温度差が減少した原因は、帯状電極4および非通電部5のそれぞれが、透明カバーと略同一の曲率半径を有する円弧状に形成されることによって、電極間距離が全体的に均一化され、発熱領域の全域に渡って温度分布が均一化されたためと考えられる。
【0069】
以上の本実施例3によれば、透明カバーと略同一の曲率半径を有する円弧状に形成された帯状電極4および非通電部5を用いることにより、透明導電膜3上の温度差が一桁にまで抑制されたため、実用上好適なレベル(○)であることが示された。
【0070】
また、
図6に示すように、上述した実施例1から実施例3において、帯状電極4の側面視における端縁部から最上部までの高さは、凸曲面状基材2(透明カバー)の端縁部から頂面の最上部までの高さに対する比率で表すと、それぞれ0.41,0.37および0.37あった。よって、上記比率が1/3以上1/2以下である場合、実用上問題ないレベルか、実用上好適なレベルとなることが推察される。
【0071】
さらに、
図6に示すように、上述した実施例1から実施例3において、非通電部5の側面視における端縁部から最上部までの高さは、凸曲面状基材2(透明カバー)の端縁部から頂面の最上部までの高さに対する比率で表すと、それぞれ0.41,0.18および0.36であった。よって、上記比率が1/6以上1/2以下である場合、実用上問題ないレベルか、実用上好適なレベルとなることが推察される。
【0072】
なお、本発明に係る凸曲面状透明ヒーター1は、前述した実施形態および実施例に限定されるものではなく、適宜変更することができる。例えば、上述した本実施形態および各実施例では、一対の帯状電極4,4および一対の非通電部5,5は、それぞれを同一形状に形成されている。しかしながら、必ずしも同一形状である必要はなく、本発明の作用効果を奏する範囲において、互いに異なる形状であってもよい。