(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第4の工程では、前記第1〜第Nの磁石組のうち奇数の磁石組同士が前記回転軸の周方向において隣り合わず、且つ、前記第1〜第Nの磁石組のうち偶数の磁石組同士が前記回転軸の周方向において隣り合わないように、前記第1〜第Nの磁石組を前記第1〜第Nの取付部に一つずつ取り付ける、請求項5に記載の方法。
前記第3の工程では、前記第1〜第Kの永久磁石のうち奇数の永久磁石同士が前記回転軸の周方向において隣り合わず、且つ、前記第1〜第Kの永久磁石のうち偶数の永久磁石同士が前記回転軸の周方向において隣り合わないように、前記第1〜第Kの永久磁石を前記第1〜第Kの取付部に一つずつ取り付ける、請求項9に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に説明される本開示に係る実施形態は本発明を説明するための例示であるので、本発明は以下の内容に限定されるべきではない。
【0014】
≪実施形態の概要≫
[1]本実施形態の一つの例に係る回転子鉄心の製造方法は、複数の永久磁石を用意し、複数の永久磁石の重量を個々に取得する第1の工程と、第1の工程の後に、複数の永久磁石のうち相対的に重い永久磁石と相対的に軽い永久磁石とをそれぞれ少なくとも一つずつ組み合わせて一組の磁石組とすることで、第1〜第N(Nは2以上の自然数)の磁石組を得る第2の工程と、所定の回転軸周りで回転するように構成された鉄心本体であって、回転軸の周方向に並ぶ第1〜第Nの取付部を有する鉄心本体を用意する第3の工程と、第1〜第Nの磁石組を、第1〜第Nの取付部のうち任意の取付部に一つずつ取り付ける第4の工程とを含む。
【0015】
本実施形態の一つの例に係る回転子鉄心の製造方法では、第2の工程において、複数の永久磁石のうち相対的に重い永久磁石と相対的に軽い永久磁石とをそれぞれ少なくとも一つずつ組み合わせて一組の磁石組とすることで、第1〜第N(Nは2以上の自然数)の磁石組を得ている。そのため、各磁石組の重量が均等化される。従って、単に各永久磁石の重量を計測して所定の磁石組を得るという極めてシンプルな手法により、重量バランスに優れた回転子鉄心を効率的に生産することが可能となる。
【0016】
[2]上記第1項に記載の方法において、第2の工程では、複数の永久磁石のうち最も重い永久磁石と最も軽い永久磁石とを一つずつ組み合わせて一組の磁石組とすることを繰り返すことにより、第1〜第Nの磁石組を得てもよい。このように、2つの永久磁石を組み合わせて一つの磁石組とする場合、各磁石組の重量がより均等化されるので、より優れた重量バランスの回転子鉄心を得ることが可能となる。
【0017】
[3]上記第1項に記載の方法において、第2の工程では、複数の永久磁石のうち最も重い永久磁石と最も軽い永久磁石と任意の永久磁石とを一つずつ組み合わせて一組の磁石組とすることを繰り返すことにより、第1〜第Nの磁石組を得てもよい。このように、3つの永久磁石を組み合わせて一つの磁石組とする場合、各磁石組の重量がより均等化されるので、より優れた重量バランスの回転子鉄心を得ることが可能となる。
【0018】
[4]上記第1項に記載の方法において、第2の工程では、複数の永久磁石のうち最も重い永久磁石と最も軽い永久磁石と中央値を示す重さを有する永久磁石とを一つずつ組み合わせて一組の磁石組とすることを繰り返すことにより、第1〜第Nの磁石組を得てもよい。このように、3つの永久磁石を組み合わせて一つの磁石組とする場合、各磁石組の重量がさらに均等化されるので、より優れた重量バランスの回転子鉄心を得ることが可能となる。
【0019】
[5]上記第1項〜第4項のいずれか一項に記載の方法は、第2の工程の後で且つ第4の工程の前に、第1〜第Nの磁石組の重量を個々に取得する第5の工程をさらに含み、第5の工程で取得した第1〜第Nの磁石組の重量M
1,M
2,・・・M
N−1,M
Nが式4を満たす場合、第4の工程では、第1〜第Nの磁石組のうち第a(aは、2〜N−1の自然数)の磁石組が第1〜第Nの磁石組のうち第a−1の磁石組及び第1〜第Nの磁石組のうち第a+1の磁石組と回転軸の周方向において隣り合わないように、第1〜第Nの磁石組を第1〜第Nの取付部に一つずつ取り付けてもよい。
M
1≧M
2≧・・・M
N−1≧M
N ・・・ (4)
この場合、比較的重い磁石組同士又は比較的軽い磁石組同士が周方向において隣り合わなくなるので、回転子鉄心全体としての重量バランスが高まる。そのため、いっそう優れた重量バランスの回転子鉄心を得ることが可能となる。
【0020】
[6]上記第1項〜第4項のいずれか一項に記載の方法において、第2の工程の後で且つ第4の工程の前に、第1〜第Nの磁石組の重量を個々に取得する第5の工程をさらに含み、第5の工程で取得した第1〜第Nの磁石組の重量M
1,M
2,・・・M
N−1,M
Nが式5を満たす場合、第4の工程では、第1〜第Nの磁石組のうち第b(bは、1〜Nまでの奇数)の磁石組と第1〜第Nの磁石組のうち第c(cは、c=b+1を満たし且つ1〜Nまでの偶数)の磁石組とが回転軸を間において対向するように、第1〜第Nの磁石組を第1〜第Nの取付部に一つずつ取り付けてもよい。
M
1≧M
2≧・・・M
N−1≧M
N ・・・ (5)
この場合、同程度の重量を有する2つの磁石組は、回転軸を間において対向するので、取付部のうち互いに最も遠い位置に取り付けられる。そのため、比較的重い磁石組同士又は比較的軽い磁石組同士が周方向においてまとまり難くなるので、回転子鉄心全体としての重量バランスが高まる。従って、いっそう優れた重量バランスの回転子鉄心を得ることが可能となる。
【0021】
[7]上記第6項に記載の方法において、第4の工程では、第1〜第Nの磁石組のうち奇数の磁石組同士が回転軸の周方向において隣り合わず、且つ、第1〜第Nの磁石組のうち偶数の磁石組同士が回転軸の周方向において隣り合わないように、第1〜第Nの磁石組を第1〜第Nの取付部に一つずつ取り付けてもよい。ところで、第bの磁石組と第cの磁石組とは回転軸を間において対向するように対をなしており、第1〜第Nの磁石組の重量は式4よりこの順で軽くなっている。そのため、各対をなす磁石組のうち奇数の磁石組は、当該対の磁石組のうち偶数の磁石組よりも重い。このとき、第7項に記載の方法のように第1〜第Nの磁石組を第1〜第Nの取付部に一つずつ取り付けると、回転軸の周方向において重い磁石組又は軽い磁石組が一方に偏り難くなるので、回転子鉄心全体としての重量バランスが高まる。従って、いっそう優れた重量バランスの回転子鉄心を得ることが可能となる。
【0022】
[8]上記第1項〜第4項のいずれか一項に記載の方法は、第2の工程の後で且つ第4の工程の前に、第1〜第Nの磁石組の重量を個々に取得する第5の工程をさらに含み、第2の工程では、複数の永久磁石のうち相対的に重い永久磁石と相対的に軽い永久磁石とをそれぞれ少なくとも一つずつ組み合わせて一組の磁石組とすることで、第1〜第N(Nは6以上の自然数)の磁石組を得て、第4の工程では、第5の工程で取得した第1〜第Nの磁石組の重量M
1,M
2,・・・M
N−1,M
Nが式6を満たす場合、第1〜第Nの磁石組のうちから任意の磁石組を2つずつ選択してN/2個の対をなし、当該各対のうち相対的に重い磁石組同士が回転軸の周方向において隣り合わず、当該対のうち相対的に軽い磁石組同士が回転軸の周方向において隣り合わず、且つ、当該各対をなす磁石組が回転軸を間において対向するように、第1〜第Nの磁石組を第1〜第Nの取付部に一つずつ取り付けてもよい。
M
1≧M
2≧・・・M
N−1≧M
N ・・・ (6)
この場合、各対をなす磁石組のうち相対的に重い磁石組同士又は相対的に軽い磁石組同士が回転軸の周方向において隣り合わないので、磁石組の重量が当該周方向において一方に偏り難くなる。そのため、回転子鉄心全体としての重量バランスが高まる。従って、いっそう優れた重量バランスの回転子鉄心を得ることが可能となる。
【0023】
[9]本実施形態の他の例に係る回転子鉄心の製造方法は、第1〜第L(Lは5以上の自然数)の永久磁石を用意し、第1〜第Lの永久磁石の重量を個々に取得する第1の工程と、所定の回転軸周りで回転するように構成された鉄心本体であって、回転軸の周方向に並ぶ第1〜第Lの取付部を有する鉄心本体を用意する第2の工程と、第1の工程で取得した第1〜第Lの永久磁石の重量m
1,m
2,・・・m
L−1,m
Lが式7を満たす場合、第1〜第Lの永久磁石のうち第d(dは、2〜L−1の自然数)の永久磁石が第1〜第Lの永久磁石のうち第d−1の永久磁石及び第1〜第Lの永久磁石のうち第d+1の永久磁石と回転軸の周方向において隣り合わないように、第1〜第Lの永久磁石を第1〜第Lの取付部に一つずつ取り付ける第3の工程とを含む。
m
1≧m
2≧・・・m
L−1≧m
L ・・・ (7)
【0024】
本実施形態の他の例に係る回転子鉄心の製造方法では、第1の工程において取得された個々の永久磁石の重量に応じて、第3の工程において各永久磁石を各取付部に一つずつ取り付けている。具体的には、第3の工程では、比較的重い永久磁石同士又は比較的軽い永久磁石同士が周方向において隣り合わなくなる。そのため、回転子鉄心全体としての重量バランスが高まる。従って、単に各永久磁石の重量を計測して、所定の取付部に取り付けるという極めてシンプルな手法により、重量バランスに優れた回転子鉄心を効率的に生産することが可能となる。
【0025】
[10]本実施形態の他の例に係る回転子鉄心の製造方法は、第1〜第K(Kは4以上の偶数)の永久磁石を用意し、第1〜第Kの永久磁石の重量を個々に取得する第1の工程と、所定の回転軸周りで回転するように構成された鉄心本体であって、回転軸の周方向に並ぶ第1〜第Kの取付部を有する鉄心本体を用意する第2の工程と、第1の工程で取得した第1〜第Kの永久磁石の重量m
1,m
2,・・・m
K−1,m
Kが式8を満たす場合、第1〜第Kの永久磁石のうち第e(eは、1〜Kまでの奇数)の永久磁石と第1〜第Kの永久磁石のうち第f(fは、f=e+1を満たし且つ1〜Kまでの偶数)の永久磁石とが回転軸を間において対向するように、第1〜第Kの永久磁石を第1〜第Kの取付部に一つずつ取り付ける第3の工程とを含む。
m
1≧m
2≧・・・m
K−1≧m
K ・・・ (8)
【0026】
本実施形態の他の例に係る回転子鉄心の製造方法では、第1の工程において取得された個々の永久磁石の重量に応じて、第3の工程において各永久磁石を各取付部に一つずつ取り付けている。具体的には、第3の工程では、同程度の重量を有する2つの永久磁石が、回転軸を間において対向するので、取付部のうち互いに最も遠い位置に取り付けられる。そのため、比較的重い永久磁石同士又は比較的軽い永久磁石同士が周方向においてまとまり難くなるので、回転子鉄心全体としての重量バランスが高まる。従って、単に各永久磁石の重量を計測して、所定の取付部に取り付けるという極めてシンプルな手法により、重量バランスに優れた回転子鉄心を効率的に生産することが可能となる。
【0027】
[11]上記第10項に記載の方法において、第3の工程では、第1〜第Kの永久磁石のうち奇数の永久磁石同士が回転軸の周方向において隣り合わず、且つ、第1〜第Kの永久磁石のうち偶数の永久磁石同士が回転軸の周方向において隣り合わないように、第1〜第Kの永久磁石を第1〜第Kの取付部に一つずつ取り付けてもよい。ところで、第eの永久磁石と第fの永久磁石とは回転軸を間において対向するように対をなしており、第1〜第Kの永久磁石の重量は式6よりこの順で軽くなっている。そのため、各対をなす永久磁石のうち奇数の永久磁石は、当該対の永久磁石のうち偶数の永久磁石よりも重い。このとき、第9項に記載の方法のように第1〜第Kの永久磁石を第1〜第Nの取付部に一つずつ取り付けると、回転軸の周方向において重い永久磁石又は軽い永久磁石が一方に偏り難くなるので、回転子鉄心全体としての重量バランスが高まる。従って、いっそう優れた重量バランスの回転子鉄心を得ることが可能となる。
【0028】
[12]本実施形態の他の例に係る回転子鉄心の製造方法は、第1〜第J(Jは6以上の偶数)の永久磁石を用意し、第1〜第Jの永久磁石の重量を個々に取得する第1の工程と、所定の回転軸周りで回転するように構成された鉄心本体であって、回転軸の周方向に並ぶ第1〜第Jの取付部を有する鉄心本体を用意する第2の工程と、第1の工程で取得した第1〜第Jの永久磁石の重量m
1,m
2,・・・m
J−1,m
Jが式9を満たす場合、第1〜第Jの永久磁石のうちから任意の永久磁石を2つずつ選択してJ/2個の対をなし、当該各対のうち相対的に重い永久磁石同士が回転軸の周方向において隣り合わず、当該対のうち相対的に軽い永久磁石同士が回転軸の周方向において隣り合わず、且つ、当該各対をなす永久磁石が回転軸を間において対向するように、第1〜第Jの永久磁石を第1〜第Jの取付部に一つずつ取り付ける第3の工程とを含む。
m
1≧m
2≧・・・m
J−1≧m
J ・・・ (9)
【0029】
本実施形態の他の例に係る回転子鉄心の製造方法では、第3の工程において、第1の工程において取得された個々の永久磁石の重量に応じて、第3の工程において各永久磁石を各取付部に一つずつ取り付けている。具体的には、第3の工程では、各対をなす磁石組のうち相対的に重い永久磁石同士又は相対的に軽い永久磁石同士が回転軸の周方向において隣り合わないように、各永久磁石が各取付部に一つずつ取り付けられる。そのため、永久磁石の重量が当該周方向において一方に偏り難くなるので、回転子鉄心全体としての重量バランスが高まる。従って、単に各永久磁石の重量を計測して、所定の取付部に取り付けるという極めてシンプルな手法により、重量バランスに優れた回転子鉄心を効率的に生産することが可能となる。
【0030】
≪実施形態の例示≫
以下に、本開示に係る実施形態の一例について、図面を参照しつつより詳細に説明する。以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0031】
[回転子積層鉄心の構成]
まず、
図1〜
図3を参照して、回転子積層鉄心1(回転子鉄心)の構成について説明する。回転子積層鉄心1は、回転子(ロータ)の一部である。回転子積層鉄心1に端面板及びシャフトが取り付けられることにより、回転子が構成される。回転子が固定子(ステータ)と組み合わせられることにより、電動機(モータ)が構成される。本実施形態における回転子積層鉄心1は、埋込磁石型(IPM)モータに用いられる。回転子積層鉄心1は、
図1に示されるように、積層体10(鉄心本体)と、複数の永久磁石12と、複数の樹脂材料14とを備える。
【0032】
積層体10は、
図1に示されるように、円筒状を呈している。すなわち、積層体10の中央部には、中心軸Axに沿って延びるように積層体10を貫通する軸孔10aが設けられている。すなわち、軸孔10aは、積層体10の積層方向(以下、単に「積層方向」という。)に延びている。積層方向は、中心軸Axの延在方向でもある。本実施形態において積層体10は中心軸Ax周りに回転するので、中心軸Axは回転軸でもある。軸孔10a内には、シャフトが挿通される。
【0033】
積層体10には、複数の磁石挿入孔16(取付部)が形成されている。磁石挿入孔16は、
図1及び
図3に示されるように、積層体10の外周縁に沿って所定間隔で並んでいる。磁石挿入孔16は、
図2に示されるように、中心軸Axに沿って延びるように積層体10を貫通している。すなわち、磁石挿入孔16は積層方向に延びている。
【0034】
磁石挿入孔16の形状は、本実施形態では、積層体10の外周縁に沿って延びる長孔である。磁石挿入孔16の数は、本実施形態では6個である。以下では、これらの磁石挿入孔16をそれぞれ磁石挿入孔16
1〜16
6と表記することがある。磁石挿入孔16
1〜16
6は、上方から見て時計回りにこの順に並んでいる。磁石挿入孔16の位置、形状及び数は、モータの用途、要求される性能などに応じて変更してもよい。
【0035】
積層体10は、複数の打抜部材Wが積み重ねられて構成されている。打抜部材Wは、後述する電磁鋼板ESが所定形状に打ち抜かれた板状体であり、積層体10に対応する形状を呈している。積層体10は、いわゆる転積によって構成されていてもよい。「転積」とは、打抜部材W同士の角度を相対的にずらしつつ、複数の打抜部材Wを積層することをいう。転積は、主に積層体10の板厚偏差を相殺することを目的に実施される。転積の角度は、任意の大きさに設定してもよい。
【0036】
積層方向において隣り合う打抜部材W同士は、
図1〜
図3に示されるように、カシメ部18によって締結されていてもよい。これらの打抜部材W同士は、カシメ部18に代えて、種々の公知の方法にて締結されてもよい。例えば、複数の打抜部材W同士は、接着剤又は樹脂材料を用いて互いに接合されてもよいし、溶接によって互いに接合されてもよい。あるいは、打抜部材Wに仮カシメを設け、仮カシメを介して複数の打抜部材Wを締結して積層体10を得た後、仮カシメを当該積層体から除去してもよい。なお、「仮カシメ」とは、複数の打抜部材Wを一時的に一体化させるのに使用され且つ製品(回転子積層鉄心1)を製造する過程において取り除かれるカシメを意味する。
【0037】
永久磁石12は、
図1〜
図3に示されるように、磁石挿入孔16に挿入されている。具体的には、本実施形態では、2つの永久磁石12が組み合わされた一組の磁石組20が、一つの磁石挿入孔16内にそれぞれ挿入されている。本実施形態では、12個の永久磁石12が2つずつ組み合わされて6組の磁石組20
1〜20
6をなしており、6つの磁石挿入孔16
1〜16
6内にそれぞれ磁石組20
1〜20
6が一組ずつ挿入されている。磁石挿入孔16内において、2つの永久磁石12は、磁石挿入孔16の長手方向(積層体10の周方向)において隣り合うように並んでいる。永久磁石12の形状は、特に限定されないが、本実施形態では直方体形状を呈している。永久磁石12の種類は、モータの用途、要求される性能などに応じて決定すればよく、例えば、焼結磁石であってもよいし、ボンド磁石であってもよい。なお、永久磁石12の重さは、製造誤差により例えば数グラム程度ばらついている。
【0038】
樹脂材料14は、永久磁石12(磁石組20)が挿入された後の磁石挿入孔16内に充填されている。樹脂材料14は、永久磁石12(磁石組20)を磁石挿入孔16内に固定する機能を有する。樹脂材料14としては、例えば熱硬化性樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂の具体例としては、例えば、エポキシ樹脂と、硬化開始剤と、添加剤とを含む樹脂組成物が挙げられる。添加剤としては、フィラー、難燃剤、応力低下剤などが挙げられる。樹脂材料14は、上下方向で隣り合う打抜部材W同士を接合する機能も有する。なお、樹脂材料14として熱可塑性樹脂を使用してもよい。
【0039】
[磁石組の詳細]
ここで、磁石組20の詳細について説明する。本実施形態では、磁石組20は任意の2つの永久磁石12の組み合わせではなく、所定の条件を満たす2つの永久磁石12の組み合わせにより構成されている。具体的には、12個の永久磁石12
1〜12
12の重量m
1〜m
12が式10を満たす場合、相対的に重い永久磁石12
1〜12
6と相対的に軽い永久磁石12
7〜12
12とがそれぞれ一つずつ組み合わされて一組の磁石組20とされてもよい(条件1)。
m
1≧m
2≧・・・≧m
11≧m
12 ・・・ (10)
【0040】
あるいは、12個の永久磁石12
1〜12
12の重量m
1〜m
12が式10を満たす場合、磁石組20
1〜20
6はそれぞれ下記のように組み合わされていてもよい(条件2)。
磁石組20
1:永久磁石12
1(重量m
1)と永久磁石12
12(重量m
12)との組み合わせ
磁石組20
2:永久磁石12
2(重量m
2)と永久磁石12
11(重量m
11)との組み合わせ
磁石組20
3:永久磁石12
3(重量m
3)と永久磁石12
10(重量m
10)との組み合わせ
磁石組20
4:永久磁石12
4(重量m
4)と永久磁石12
9(重量m
9)との組み合わせ
磁石組20
5:永久磁石12
5(重量m
5)と永久磁石12
8(重量m
8)との組み合わせ
磁石組20
6:永久磁石12
6(重量m
6)と永久磁石12
7(重量m
7)との組み合わせ
すなわち、12個の永久磁石12
1〜12
12のうち最も重い永久磁石12
1と最も軽い永久磁石12
12とを一つずつ組み合わせて一組の磁石組20
1を得て、残余の10個の永久磁石12
2〜12
11のうち最も重い永久磁石12
2と最も軽い永久磁石12
11とを一つずつ組み合わせて一組の磁石組20
2を得るという手順を繰り返して、磁石組20
1〜20
6を得てもよい。
【0041】
磁石組20
1〜20
6の重量M
1〜M
6が式11を満たす場合、これらの磁石組20
1〜20
6が任意の磁石挿入孔16
1〜16
6内に一つずつ挿入されていてもよい(条件3)。
M
1≧M
2≧M
3≧M
4≧M
5≧M
6 ・・・ (11)
【0042】
あるいは、磁石組20
1〜20
6の重量M
1〜M
6が式11を満たす場合、磁石組20
a(aは、2〜5の自然数)が磁石組20
a−1及び磁石組20
a+1と中心軸Axの周方向において隣り合わないように、磁石組20
1〜20
6が磁石挿入孔16
1〜16
6内に一つずつ挿入されていてもよい(条件4)。この条件4を満たすことのできる6つの磁石挿入孔16
1〜16
6と6つの磁石組20
1〜20
6との組み合わせは、回転子積層鉄心1の上下をひっくり返したときに同一となる組み合わせを除外すると、
図4及び表1に示されるように、5通り存在する。
【表1】
【0043】
あるいは、磁石組20
1〜20
6の重量M
1〜M
6が式11を満たす場合、磁石組20
b(bは、1〜6の奇数)と磁石組20
c(cは、c=b+1を満たし且つ1〜6の偶数)とが中心軸Axを間において対向するように、磁石組20
1〜20
6が磁石挿入孔16
1〜16
6内に一つずつ挿入されていてもよい(条件5)。すなわち、磁石組20
bと磁石組20
cとは中心軸Axを間において対向するように対をなしており、磁石組20
1〜20
6の重量M
1,M
2,・・・M
5,M
6はこの順で軽くなっていてもよい。そのため、各対をなす磁石組20のうち奇数の磁石組20は、当該対の磁石組20のうち偶数の磁石組20よりも重い。この条件5を満たすことのできる6つの磁石挿入孔16
1〜16
6と6つの磁石組20
1〜20
6との組み合わせは、回転子積層鉄心1の上下をひっくり返したときに同一となる組み合わせを除外すると、
図5及び表2に示されるように、4通り存在する。
【表2】
【0044】
あるいは、条件5を満たすと共に、磁石組20
1〜20
6のうち奇数の磁石組20同士が中心軸Axの周方向において隣り合わず、且つ、磁石組20
1〜20
6のうち偶数の磁石組20同士が中心軸Axの周方向において隣り合っていなくてもよい(条件6)。この条件6を満たすことのできる6つの磁石挿入孔16
1〜16
6と6つの磁石組20
1〜20
6との組み合わせは、回転子積層鉄心1の上下をひっくり返したときに同一となる組み合わせを除外すると、
図5(c)及び表2に示されるように、1通り存在する。
【0045】
あるいは、磁石組20
1〜20
6の重量M
1〜M
6が式11を満たす場合、磁石組20
1〜20
6のうちから任意の磁石組20を2つずつ選択して3つの対をなし、各対のうち相対的に重い磁石組20同士が中心軸Axの周方向において隣り合わず、各対のうち相対的に軽い磁石組20同士が中心軸Axの周方向において隣り合わず、且つ、各対をなす磁石組20が中心軸Axを間において対向するように、磁石組20
1〜20
6が磁石挿入孔16
1〜16
6内に一つずつ挿入されていてもよい(条件7)。すなわち、各対のうち相対的に重い磁石組20は磁石挿入孔16
1,16
3,16
5内に挿入されており、各対のうち相対的に軽い磁石組20は磁石挿入孔16
2,16
4,16
6内に挿入されていてもよい。磁石組20
1〜20
6から任意の磁石組20を2つずつ選択して3つの対をなす場合の組み合わせは、以下に示されるように、15通り存在する。なお、以下では、記号「/」によって磁石組20の各対を区切っている。
1:磁石組20
1,20
2/磁石組20
3,20
4/磁石組20
5,20
6
2:磁石組20
1,20
2/磁石組20
3,20
5/磁石組20
4,20
6
3:磁石組20
1,20
2/磁石組20
3,20
6/磁石組20
4,20
5
4:磁石組20
1,20
3/磁石組20
2,20
4/磁石組20
5,20
6
5:磁石組20
1,20
3/磁石組20
2,20
5/磁石組20
4,20
6
6:磁石組20
1,20
3/磁石組20
2,20
6/磁石組20
4,20
5
7:磁石組20
1,20
4/磁石組20
2,20
3/磁石組20
5,20
6
8:磁石組20
1,20
4/磁石組20
2,20
5/磁石組20
3,20
6
9:磁石組20
1,20
4/磁石組20
2,20
6/磁石組20
3,20
5
10:磁石組20
1,20
5/磁石組20
2,20
3/磁石組20
4,20
6
11:磁石組20
1,20
5/磁石組20
2,20
4/磁石組20
3,20
6
12:磁石組20
1,20
5/磁石組20
2,20
6/磁石組20
3,20
4
13:磁石組20
1,20
6/磁石組20
2,20
3/磁石組20
4,20
5
14:磁石組20
1,20
6/磁石組20
2,20
4/磁石組20
3,20
5
15:磁石組20
1,20
6/磁石組20
2,20
5/磁石組20
3,20
4
そして、この条件7を満たすことのできる6つの磁石挿入孔16
1〜16
6と6つの磁石組20
1〜20
6との組み合わせも、回転子積層鉄心1の上下をひっくり返したときに同一となる組み合わせを除外すると、表3に示されるように、15通り存在する。
【表3】
【0046】
あるいは、条件7を満たすと共に、磁石組20
bと磁石組20
cとが中心軸Axを間において対向するように、磁石組20
1〜20
6が磁石挿入孔16
1〜16
6内に一つずつ挿入されていてもよい(条件8)。この条件8を満たすことのできる6つの磁石挿入孔16
1〜16
6と6つの磁石組20
1〜20
6との組み合わせは、回転子積層鉄心1の上下をひっくり返したときに同一となる組み合わせを除外すると、表3の第1項に示されるように、1通り存在する(
図5(c)に示される回転子積層鉄心1の上下をひっくり返したものと同じ)。
【0047】
[回転子積層鉄心の製造装置]
続いて、
図6を参照して、回転子積層鉄心1の製造装置100について説明する。
【0048】
製造装置100は、帯状の金属板である電磁鋼板ES(被加工板)から回転子積層鉄心1を製造するための装置である。製造装置100は、アンコイラー110と、送出装置120と、打抜装置130と、磁石取付装置140と、磁石選別装置150と、コントローラ160(制御部)とを備える。
【0049】
アンコイラー110は、コイル状に巻回された帯状の電磁鋼板ESであるコイル材111が装着された状態で、コイル材111を回転自在に保持する。送出装置120は、電磁鋼板ESを上下から挟み込む一対のローラ121,122を有する。一対のローラ121,122は、コントローラ160からの指示信号に基づいて回転及び停止し、電磁鋼板ESを打抜装置130に向けて間欠的に順次送り出す。
【0050】
コイル材111を構成する電磁鋼板ESの長さは、例えば500m〜10000m程度であってもよい。電磁鋼板ESの厚さは、例えば0.1mm〜0.5mm程度であってもよい。電磁鋼板ESの厚さは、より優れた磁気的特性を有する回転子積層鉄心1を得る観点から、例えば0.1mm〜0.3mm程度であってもよい。電磁鋼板ESの幅は、例えば50mm〜500mm程度であってもよい。
【0051】
打抜装置130は、コントローラ160からの指示信号に基づいて動作する。打抜装置130は、送出装置120によって間欠的に送り出される電磁鋼板ESを順次打ち抜き加工して打抜部材Wを形成する機能と、打ち抜き加工によって得られた打抜部材Wを順次積層して積層体10を製造する機能とを有する。
【0052】
積層体10は、打抜装置130から排出されると、打抜装置130と磁石取付装置140との間を延びるように設けられたコンベアCvに載置される。コンベアCvは、コントローラ160からの指示に基づいて動作し、積層体10を磁石取付装置140に送り出す。なお、打抜装置130と磁石取付装置140との間において、積層体10はコンベアCv以外によって搬送されてもよい。例えば、積層体10は、コンテナに載置された状態で、人手によって搬送されてもよい。
【0053】
磁石取付装置140は、コントローラ160からの指示信号に基づいて動作する。磁石取付装置140は、磁石選別装置150において得られた磁石組20
1〜20
6を条件3〜8のいずれかに従ってそれぞれ磁石挿入孔16
1〜16
6内に挿通する作業を行う機能と、磁石組20
1〜20
6が挿通された磁石挿入孔16
1〜16
6内に樹脂材料14を充填する作業を行う機能とを有する。
【0054】
磁石選別装置150は、コントローラ160からの指示信号に基づいて動作する。磁石選別装置150は、図示しない重量計測器及びロボットハンドを有する。磁石選別装置150は、ロボットハンドによって永久磁石12
1〜12
12を一つずつ重量測定器に載置することで、永久磁石12
1〜12
12の個々の重量をコントローラ160が取得する機能と、取得した永久磁石12
1〜12
12の重量に基づいて条件1又は2に従って永久磁石12
1〜12
12の組み合わせをコントローラ160が決定する機能と、決定した組み合わせに基づいてロボットハンドが永久磁石12
1〜12
12を2つずつ組み合わせて磁石組20
1〜20
6をなす機能とを有する。
【0055】
コントローラ160は、例えば、記録媒体(図示せず)に記録されているプログラム又はオペレータからの操作入力等に基づいて、送出装置120、打抜装置130、磁石取付装置140及び磁石選別装置150をそれぞれ動作させるための指示信号を生成し、送出装置120、打抜装置130、磁石取付装置140及び磁石選別装置150に当該指示信号をそれぞれ送信する。
【0056】
[回転子積層鉄心の製造方法]
続いて、回転子積層鉄心1の製造方法について説明する。まず、積層体10を形成する(第3の工程)。具体的には、コントローラ160の指示に基づいて、送出装置120によって電磁鋼板ESを打抜装置130に送り出し、打抜装置130によって電磁鋼板ESの被加工部位を所定形状に打ち抜く。これにより、打抜部材Wが形成される。この打ち抜き加工を繰り返すことにより、複数の打抜部材Wが互いにカシメ部18によって締結されながら所定枚数積層されて、一つの積層体10が製造される。
【0057】
次に、コントローラ160の指示に基づいて、打抜装置130から排出された積層体10をコンベアCvが磁石取付装置140まで搬送する。
【0058】
一方、積層体10が磁石取付装置140までに到達するまでの間に、コントローラ160の指示に基づいて、磁石選別装置150によって各作業を実行させる。すなわち、コントローラ160は、ロボットハンドを制御して永久磁石12
1〜12
12を個々に重量測定器に載置し、測定された永久磁石12
1〜12
12の個々の重量m
1〜m
12のデータを重量測定器から受信する(第1の工程)。続いて、コントローラ160は、取得した個々の重量m
1〜m
12に基づいて、条件1又は2に従って永久磁石12
1〜12
12の組み合わせを決定する。続いて、コントローラ160は、ロボットハンドを制御して、決定した組み合わせに基づいて永久磁石12
1〜12
12を2つずつ組み合わせ、これにより磁石組20
1〜20
6を構成する(第2の工程)。
【0059】
ここで、コントローラ160は、既に測定された永久磁石12
1〜12
12の個々の重量m
1〜m
12のデータに基づいて、磁石組20
1〜20
6の重量M
1〜M
6を計算してもよい(第5の工程)。あるいは、コントローラ160は、ロボットハンドを制御して磁石組20
1〜20
6を個々に重量測定器に載置し、測定された磁石組20
1〜20
6の個々の重量M
1〜M
6のデータを重量測定器から受信してもよい(第5の工程)。その後、コントローラ160は、ロボットハンドを制御して、これらの磁石組20
1〜20
6を磁石取付装置140へと搬送する。
【0060】
次に、コントローラ160は、磁石取付装置140を制御して、条件3〜8のいずれかに従って、磁石組20
1〜20
6を磁石挿入孔16
1〜16
6内に一つずつ挿入させる。次に、コントローラ160が磁石取付装置140に指示して、各磁石挿入孔16内に溶融状態の樹脂材料14を充填及び固化させる。こうして、固化した樹脂材料14によって、各磁石組20が各磁石挿入孔16内に固定されると共に、積層方向において隣り合う打抜部材Wが一体化される。以上により、回転子積層鉄心1が得られる。
【0061】
その後、軸孔10aにシャフトを挿通し、キー等によりシャフトを回転子積層鉄心1に固定するシャフト取付工程、回転子積層鉄心1の両端面に対して端面板をそれぞれ配置する端面板取付工程等を経る。端面板は、例えば、回転子積層鉄心1の端面とカシメ、溶接、接着、樹脂封止等により固定されてもよいし、ナットをシャフトに螺合することにより回転子積層鉄心1に対して固定されてもよいし、キー等によりシャフトに対して固定されてもよい。こうして、回転子積層鉄心1と、シャフトと、端面板とを備える回転子が得られる。
【0062】
[作用]
以上のような本実施形態では、条件1又は2に従って永久磁石12
1〜12
12を2つずつ組み合わせ、これにより磁石組20
1〜20
6を構成している。すなわち、条件1においては、12個の永久磁石12
1〜12
12のうち相対的に重い永久磁石12と相対的に軽い永久磁石12とをそれぞれ一つずつ組み合わせて一組の磁石組20とすることで、磁石組20
1〜20
6が得られる。そのため、各磁石組20
1〜20
6の重量が均等化される。従って、単に各永久磁石12の重量を計測して所定の磁石組20を得るという極めてシンプルな手法により、重量バランスに優れた回転子積層鉄心1を効率的に生産することが可能となる。
【0063】
一方、条件2においては、12個の永久磁石12
1〜12
12のうち最も重い永久磁石12と最も軽い永久磁石12とを一つずつ組み合わせて一組の磁石組20とすることを繰り返すことにより、磁石組20
1〜20
6が得られる。このように、2つの永久磁石12を組み合わせて一つの磁石組20とする場合、各磁石組20の重量がより均等化されるので、より優れた重量バランスの回転子積層鉄心1を得ることが可能となる。
【0064】
本実施形態では、条件3〜8のいずれかに従って、磁石組20
1〜20
6をそれぞれ磁石挿入孔16
1〜16
6内に一つずつ取り付けている。すなわち、条件3においては、磁石組20
1〜20
6を任意の磁石挿入孔16
1〜16
6内に一つずつ挿入している。
【0065】
一方、条件4においては、磁石組20
1〜20
6の重量M
1〜M
6が式11を満たす場合、磁石組20
a(aは、2〜5の自然数)が磁石組20
a−1及び磁石組20
a+1と中心軸Axの周方向において隣り合わないように、磁石組20
1〜20
6を磁石挿入孔16
1〜16
6内に一つずつ挿入している。この場合、比較的重い磁石組20同士又は比較的軽い磁石組20同士が周方向において隣り合わなくなるので、回転子積層鉄心1全体としての重量バランスが高まる。そのため、いっそう優れた重量バランスの回転子積層鉄心1を得ることが可能となる。
【0066】
さらに、条件5においては、磁石組20
1〜20
6の重量M
1〜M
6が式11を満たす場合、磁石組20
b(bは、1〜6の奇数)と磁石組20
c(cは、c=b+1を満たし且つ1〜6の偶数)とが中心軸Axを間において対向するように、磁石組20
1〜20
6を磁石挿入孔16
1〜16
6内に一つずつ挿入している。この場合、同程度の重量を有する2つの磁石組20は、中心軸Axを間において対向するので、磁石挿入孔16のうち互いに最も遠い位置に取り付けられる。そのため、比較的重い磁石組20同士又は比較的軽い磁石組20同士が周方向においてまとまり難くなるので、回転子積層鉄心1としての重量バランスが高まる。従って、いっそう優れた重量バランスの回転子積層鉄心1を得ることが可能となる。
【0067】
さらに、条件7においては、磁石組20
1〜20
6の重量M
1〜M
6が式11を満たす場合、磁石組20
1〜20
6のうちから任意の磁石組20を2つずつ選択して3つの対をなし、各対のうち相対的に重い磁石組20同士が中心軸Axの周方向において隣り合わず、各対のうち相対的に軽い磁石組20同士が中心軸Axの周方向において隣り合わず、且つ、各対をなす磁石組20が中心軸Axを間において対向するように、磁石組20
1〜20
6が磁石挿入孔16
1〜16
6内に一つずつ挿入している。この場合、各対をなす磁石組20のうち相対的に重い磁石組20同士又は相対的に軽い磁石組20同士が中心軸Axの周方向において隣り合わないので、磁石組20の重量が当該周方向において一方に偏り難くなる。そのため、回転子積層鉄心1としての重量バランスが高まる。従って、いっそう優れた重量バランスの回転子積層鉄心1を得ることが可能となる。
【0068】
さらに、条件6においては、条件5に加えて、磁石組20
1〜20
6のうち奇数の磁石組20同士が中心軸Axの周方向において隣り合わず、且つ、磁石組20
1〜20
6のうち偶数の磁石組20同士が中心軸Axの周方向において隣り合っていない。また、条件8においては、条件7に加えて、磁石組20
bと磁石組20
cとが中心軸Axを間において対向している。これらの場合、中心軸Axの周方向において重い永久磁石12又は軽い永久磁石12が一方に偏り難くなるので、回転子積層鉄心1全体としての重量バランスが高まる。従って、いっそう優れた重量バランスの回転子積層鉄心1を得ることが可能となる。
【0069】
[他の実施形態]
以上、本開示に係る実施形態について詳細に説明したが、本発明の要旨の範囲内で種々の変形を上記の実施形態に加えてもよい。例えば、上記の実施形態では、2つの永久磁石12を組み合わせて一組の磁石組20を構成していたが、一組の磁石組20が3つ以上の永久磁石12の組み合わせによって構成されていてもよい。
【0070】
例えば、一組の磁石組20が3つの永久磁石12によって構成されている場合には、複数の永久磁石12のうち相対的に重い永久磁石12と相対的に軽い永久磁石12と任意の永久磁石12とを一つずつ組み合わせて一組の磁石組20とすることを繰り返すことにより、複数の磁石組20を得てもよい。または、複数の永久磁石12のうち最も重い永久磁石12と最も軽い永久磁石12と任意の永久磁石12とを一つずつ組み合わせて一組の磁石組20とすることを繰り返すことにより、複数の磁石組20を得てもよい。この場合、各磁石組20の重量がより均等化されるので、より優れた重量バランスの回転子積層鉄心1を得ることが可能となる。5つ以上で且つ奇数個の永久磁石12によって一組の磁石組20を構成する場合も、上記と同様の手法によって永久磁石12を組み合わせてもよい。
【0071】
あるいは、複数の永久磁石12のうち相対的に重い永久磁石12と相対的に軽い永久磁石12と中央値を示す重さを有する永久磁石12とを一つずつ組み合わせて一組の磁石組20とすることを繰り返すことにより、複数の磁石組20を得てもよい。または、複数の永久磁石12のうち最も重い永久磁石12と最も軽い永久磁石12と中央値を示す重さを有する永久磁石12とを一つずつ組み合わせて一組の磁石組20とすることを繰り返すことにより、複数の磁石組20を得てもよい。この場合、各磁石組20の重量がさらに均等化されるので、より優れた重量バランスの回転子鉄心を得ることが可能となる。5つ以上で且つ奇数個の永久磁石12によって一組の磁石組20を構成する場合も、上記と同様の手法によって永久磁石12を組み合わせてもよい。
【0072】
一方、一組の磁石組20が4つの永久磁石12によって構成されている場合には、複数の永久磁石12のうち相対的に重い永久磁石12と相対的に軽い永久磁石12とを二つずつ組み合わせて一組の磁石組20とすることを繰り返すことにより、複数の磁石組20を得てもよい。6つ以上で且つ偶数個の永久磁石12によって一組の磁石組20を構成する場合も、上記と同様の手法によって永久磁石12を組み合わせてもよい。
【0073】
上記の実施形態では、積層体10に6つの磁石挿入孔16が形成されている場合について主として説明したが、積層体10に複数の磁石挿入孔16が形成されていてもよい。後述するが、一つの磁石挿入孔16に一つの永久磁石12を挿入する場合も同様に、積層体10に複数の磁石組20が形成されていてもよい。
【0074】
ところで、一対の磁石組20が「中心軸Axを間において対向する」の本明細書における定義について、積層体10に8個の磁石挿入孔16
1〜16
8が形成されている積層体10を例示しつつ説明する。すなわち、本明細書において、一対の磁石組20が「中心軸Axを間において対向する」とは、
図7(a)に示されるように、一対の磁石組20が中心軸Axを通る直線上において並ぶことのみならず、
図7(b)に示されるように、一対の磁石組20が中心軸Axを通る直線上において並ばずとも一対の磁石組20及び中心軸Axがある程度直線状に並んでいることも含むものとする。従って、前者のように解して、相対的に重い磁石組20
Heavyと相対的に軽い磁石組20
Lightとの対が「中心軸Axを間において対向する」場合には、
図7(a)に示されるように、相対的に重い磁石組20
Heavy同士又は相対的に軽い磁石組20
Light同士が周方向において隣り合う。一方、後者のように解して、相対的に重い磁石組20
Heavyと相対的に軽い磁石組20
Lightとの対が「中心軸Axを間において対向する」場合には、
図7(b)に示されるように、相対的に重い磁石組20
Heavyと相対的に軽い磁石組20
Lightとが周方向において交互に並ぶ(相対的に重い磁石組20
Heavy同士又は相対的に軽い磁石組20
Light同士が周方向において隣り合わない)。
【0075】
上記の実施形態のような磁石組20を構成せず、永久磁石12を磁石挿入孔16に一つずつ挿入してもよい。具体的には、6個の永久磁石12
1〜12
6の重量m
1〜m
6を磁石選別装置150において個々に取得する工程と、取得された6個の永久磁石12
1〜12
6の重量m
1〜m
6が式12を満たす場合に、第d(dは、2〜5の自然数)の永久磁石12
dが第d−1の永久磁石12
d−1及び第d+1の永久磁石12
d+1と中心軸Axの周方向において隣り合わないように、これらの6個の永久磁石12
1〜12
6を6つの磁石挿入孔16
1〜16
6に磁石取付装置140により一つずつ挿入する工程とを経て、回転子積層鉄心1を構成してもよい(条件9)。
m
1≧m
2≧・・・m
5≧m
6 ・・・ (12)
【0076】
この場合、比較的重い永久磁石12同士又は比較的軽い永久磁石12同士が周方向において隣り合わなくなる。そのため、回転子積層鉄心1全体としての重量バランスが高まる。従って、単に各永久磁石12の重量を計測して、所定の磁石挿入孔16に取り付けるという極めてシンプルな手法により、重量バランスに優れた回転子積層鉄心1を効率的に生産することが可能となる。
【0077】
なお、第1〜第L(Lは5以上の自然数)の永久磁石12が存在する場合にも同様に、第1〜第Lの永久磁石12の重量m
1,m
2,・・・m
L−1,m
Lが式13を満たす場合、第d(dは、2〜L−1の自然数)の永久磁石12が第d−1の永久磁石12
d−1及び第d+1の永久磁石12
d+1と中心軸Axの周方向において隣り合わないように、第1〜第Lの永久磁石12
1〜12
Lを第1〜第Lの磁石挿入孔16
1〜16
Lに一つずつ挿入してもよい。
m
1≧m
2≧・・・m
L−1≧m
L ・・・ (13)
【0078】
あるいは、6個の永久磁石12
1〜12
6の重量m
1〜m
6を磁石選別装置150において個々に取得する工程と、取得された6個の永久磁石12
1〜12
6の重量m
1〜m
6が式12を満たす場合に、第e(eは、1〜6までの奇数)の永久磁石と第f(fは、f=e+1を満たし且つ1〜6までの偶数)の永久磁石とが回転軸を間において対向するように、これらの6個の永久磁石12
1〜12
6を6つの磁石挿入孔16
1〜16
6に磁石取付装置140により一つずつ挿入する工程とを経て、回転子積層鉄心1を構成してもよい(条件10)。
【0079】
この場合、同程度の重量を有する2つの永久磁石12が、中心軸Axを間において対向するので、磁石挿入孔16のうち互いに最も遠い位置に取り付けられる。そのため、比較的重い永久磁石12同士又は比較的軽い永久磁石12同士が周方向においてまとまり難くなるので、回転子積層鉄心1全体としての重量バランスが高まる。従って、単に各永久磁石12の重量を計測して、所定の磁石挿入孔16に取り付けるという極めてシンプルな手法により、重量バランスに優れた回転子積層鉄心1を効率的に生産することが可能となる。
【0080】
なお、第1〜第K(Kは4以上の偶数)の永久磁石12が存在する場合にも同様に、第1〜第Kの永久磁石12の重量m
1,m
2,・・・m
K−1,m
Kが式14を満たす場合、第e(eは、1〜Kまでの奇数)の永久磁石12
eと第f(fは、f=e+1を満たし且つ1〜Kまでの偶数)の永久磁石12
fとが中心軸Axを間において対向するように、第1〜第Kの永久磁石12
1〜12
Kを第1〜第Kの磁石挿入孔16
1〜16
Kに一つずつ挿入してもよい。すなわち、第eの永久磁石12
eと第fの永久磁石12
fとは中心軸Axを間において対向するように対をなしており、第1〜第Kの永久磁石12
1〜12
Kの重量m
1,m
2,・・・m
K−1,m
Kはこの順で軽くなっていてもよい。そのため、各対をなす永久磁石12のうち奇数の永久磁石12は、当該対の永久磁石12のうち偶数の永久磁石12よりも重い。
m
1≧m
2≧・・・m
K−1≧m
K ・・・ (14)
【0081】
この場合、第1〜第Kの永久磁石12
1〜12
Kのうち奇数の永久磁石12同士が中心軸Axの周方向において隣り合わず、且つ、第1〜第Kの永久磁石12
1〜12
Kのうち偶数の永久磁石12同士が中心軸Axの周方向において隣り合っていなくてもよい。このようにすると、中心軸Axの周方向において重い永久磁石12又は軽い永久磁石12が一方に偏り難くなるので、回転子積層鉄心1全体としての重量バランスが高まる。従って、いっそう優れた重量バランスの回転子積層鉄心1を得ることが可能となる。
【0082】
あるいは、6個の永久磁石12
1〜12
6の重量m
1〜m
6を磁石選別装置150において個々に取得する工程と、取得された6個の永久磁石12
1〜12
6の重量m
1〜m
6が式12を満たす場合に、永久磁石12
1〜12
6のうちから任意の永久磁石12を2つずつ選択して3個の対をなし、当該各対のうち相対的に重い永久磁石12同士が中心軸Axの周方向において隣り合わず、当該対のうち相対的に軽い永久磁石12同士が中心軸Axの周方向において隣り合わず、且つ、当該各対をなす永久磁石12が中心軸Axを間において対向するように、これらの6個の永久磁石12
1〜12
6を6つの磁石挿入孔16
1〜16
6に磁石取付装置140により一つずつ挿入する工程とを経て、回転子積層鉄心1を構成してもよい(条件11)。
【0083】
この場合、永久磁石12の重量が中心軸Axの周方向において一方に偏り難くなるので、回転子積層鉄心1全体としての重量バランスが高まる。従って、単に各永久磁石12の重量を計測して、所定の磁石挿入孔16に取り付けるという極めてシンプルな手法により、重量バランスに優れた回転子積層鉄心1を効率的に生産することが可能となる。
【0084】
なお、第1〜第J(Jは6以上の偶数)の永久磁石12が存在する場合にも同様に、第1〜第Jの永久磁石12の重量m
1,m
2,・・・m
J−1,m
Jが式15を満たす場合、第1〜第Jの永久磁石のうちから任意の永久磁石を2つずつ選択してJ/2個の対をなし、当該各対のうち相対的に重い永久磁石同士が回転軸の周方向において隣り合わず、当該対のうち相対的に軽い永久磁石同士が回転軸の周方向において隣り合わず、且つ、当該各対をなす永久磁石が回転軸を間において対向するように、第1〜第Jの永久磁石を第1〜第Jの磁石挿入孔16
1〜16
Jに一つずつ挿入してもよい。
m
1≧m
2≧・・・m
J−1≧m
J ・・・ (15)
【0085】
図8に示されるように、複数の永久磁石12は、一つの磁石挿入孔16内において、その延在方向(積層方向)に沿って隣り合うように並んでいてもよい。あるいは、一つの磁石挿入孔16において、複数の永久磁石12が磁石挿入孔16の長手方向に並ぶと共に複数の永久磁石12が磁石挿入孔16の延在方向(積層方向)に並んでいてもよい。
【0086】
図9に示されるように、表面磁石型(SPM)モータに用いられる回転子積層鉄心1に本発明を適用してもよい。この場合、積層体10の外周面には中心軸Ax方向に延びる凹溝22(取付部)が設けられており、各凹溝22内に磁石組20が一つずつ取り付けられている。
【0087】
上記の実施形態では、複数の打抜部材Wが積層されてなる積層体10が、永久磁石12が取り付けられる鉄心本体として機能していたが、鉄心本体が積層体10以外で構成されていてもよい。具体的には、鉄心本体は、例えば、強磁性体粉末が圧縮成形されたものであってもよいし、強磁性体粉末を含有する樹脂材料が射出成形されたものであってもよい。
【0088】
磁石取付装置140又は磁石選別装置150における各作業は、作業者によって人手で行われてもよい。