特許第6901911号(P6901911)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6901911
(24)【登録日】2021年6月22日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】無効電力補償装置の制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/18 20060101AFI20210701BHJP
   H02J 3/16 20060101ALI20210701BHJP
   H02J 3/26 20060101ALI20210701BHJP
   H02J 3/01 20060101ALI20210701BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20210701BHJP
【FI】
   H02J3/18 135
   H02J3/16
   H02J3/26
   H02J3/01
   H02M7/48 R
【請求項の数】9
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2017-114723(P2017-114723)
(22)【出願日】2017年6月9日
(65)【公開番号】特開2019-4530(P2019-4530A)
(43)【公開日】2019年1月10日
【審査請求日】2020年5月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003115
【氏名又は名称】東洋電機製造株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000102636
【氏名又は名称】エナジーサポート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100163511
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 啓太
(72)【発明者】
【氏名】大森 洋一
(72)【発明者】
【氏名】唐木 隆行
(72)【発明者】
【氏名】柳樂 和宏
(72)【発明者】
【氏名】寺澤 達矢
【審査官】 田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−034158(JP,A)
【文献】 特開平09−163605(JP,A)
【文献】 特開平03−122705(JP,A)
【文献】 特開2008−165499(JP,A)
【文献】 特開2000−350364(JP,A)
【文献】 特開2003−348755(JP,A)
【文献】 特開2008−048520(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0208517(US,A1)
【文献】 特開2000−276243(JP,A)
【文献】 特開平09−233701(JP,A)
【文献】 特開2013−090396(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/18
H02J 3/01
H02J 3/16
H02J 3/26
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統に接続される無効電力補償装置を制御する制御装置であって、
前記無効電力補償装置が出力する無効電流を指示する無効電流指令を出力する電圧大きさ制御器と、
前記無効電力補償装置の出力電流の、前記電力系統と前記無効電力補償装置との接続点の電圧である連系点電圧の方向に直交する無効電流成分が、前記無効電流指令に追従するように前記無効電力補償装置を制御する無効電流制御器と、を備え、
前記電圧大きさ制御器は、
前記連系点電圧の電圧指令と前記連系点電圧の大きさとの偏差を演算する電圧偏差演算器と、
前記偏差が所定の不感帯の上限値以上である場合には、前記偏差から前記上限値を引いた値を出力し、前記偏差が前記不感帯の下限値以下である場合には、前記偏差から前記下限値を引いた値を出力し、前記偏差が前記下限値より大きく、前記上限値より小さい場合には、0を出力する電圧不感帯検出器と、
前記電圧不感帯検出器の出力が0でない場合には、前記電圧不感帯検出器の出力を比例積分増幅して前記無効電流指令として出力し、前記電圧不感帯検出器の出力が0である場合には、前記無効電流指令を所定の時定数で0に近づける誤差増幅器と、を備えることを特徴とする制御装置。
【請求項2】
電力系統に接続される無効電力補償装置を制御する制御装置であって、
前記無効電力補償装置が出力する無効電流を指示する無効電流指令を出力する電圧大きさ制御器と、
前記無効電力補償装置の出力電流の、前記電力系統と前記無効電力補償装置との接続点の電圧である連系点電圧の方向と直交する無効電流成分が、前記無効電流指令に追従するように前記無効電力補償装置を制御する無効電流制御器と、を備え、
前記電圧大きさ制御器は、
入力された電圧指令に対して一次遅れ処理を行った電圧指令を出力する一次遅れフィルタと、
前記一次遅れフィルタから出力された電圧指令と前記連系点電圧の大きさとの偏差を比例積分増幅し、前記無効電流指令として出力する誤差増幅器と、
前記誤差増幅器により出力された無効電流指令が、前記無効電流の不感帯の上限値以上である場合には、下限の電圧指令を前記一次遅れフィルタに入力し、前記誤差増幅器により出力された無効電流指令が、前記不感帯の下限値以下である場合には、上限の電圧指令を前記一次遅れフィルタに入力し、前記誤差増幅器により出力された無効電流指令が、前記下限値より大きく、前記上限値より小さい場合には、前記一次遅れフィルタの出力を前記一次遅れフィルタに入力するフィルタ出力切替器と、を備えることを特徴とする制御装置。
【請求項3】
電力系統に接続される無効電力補償装置を制御する制御装置であって、
前記電力系統と前記無効電力補償装置との接続点の電圧である連系点電圧を、負の電圧位相で回転座標変換して、前記電力系統の周波数で順方向に回転する直交するd軸とq軸とからなるdq座標系の成分の電圧ベクトルにして出力するdq座標電圧変換器と、
前記電力系統の周波数の半周期における、前記電圧ベクトルのq軸成分の平均値が0となるような前記電圧位相を出力する位相調整器と、
前記連系点電圧を前記電圧位相で回転座標変換して得られる、前記電力系統の周波数で逆方向に回転する直交するxb軸とyb軸とからなるxyb座標系の成分の電圧ベクトルの、前記半周期における平均値である不平衡電圧ベクトルを出力する不平衡電圧検出器と、
前記不平衡電圧ベクトルの前記xyb座標系の各成分を比例積分増幅し、不平衡補償電流指令として出力する不平衡補償電流指令生成器と、
前記無効電力補償装置の出力電流の前記xyb座標系の各成分が、前記不平衡補償電流指令の各成分に追従するように前記無効電力補償装置を制御する不平衡電流制御器と、を備えることを特徴とする制御装置。
【請求項4】
電力系統に接続される無効電力補償装置を制御する制御装置であって、
前記電力系統と前記無効電力補償装置との接続点の電圧である連系点電圧を、負の電圧位相で回転座標変換して、前記電力系統の周波数で順方向に回転する直交するd軸とq軸とからなるdq座標系の成分の電圧ベクトルにして出力するdq座標電圧変換器と、
前記電力系統の周波数の半周期における、前記電圧ベクトルのq軸成分の平均値が0となるような前記電圧位相を出力する位相調整器と、
前記連系点電圧を前記電圧位相で回転座標変換して得られる、前記電力系統の周波数で逆方向に回転する直交するxb軸とyb軸とからなるxyb座標系の成分の電圧ベクトルの、前記半周期における平均値である不平衡電圧ベクトルを出力する不平衡電圧検出器と、
前記不平衡電圧ベクトルの大きさが、前記不平衡電圧の不感帯の幅未満である場合には、大きさが0の出力電圧ベクトルを出力し、前記不平衡電圧ベクトルの大きさが、前記不感帯の幅以上である場合には、前記不平衡電圧ベクトルと同じ向きで前記不平衡電圧の不感帯の幅の大きさを有するベクトルを出力電圧ベクトルとして出力する不平衡電圧不感帯検出器と、
前記出力電圧ベクトルの大きさが0でない場合には、前記出力電圧ベクトルの各成分を比例積分増幅して不平衡補償電流指令として出力し、前記出力電圧ベクトルの大きさが0である場合には、前記不平衡補償電流指令が所定の時定数で0に近づくような不平衡補償電流指令を出力する不平衡補償電流指令生成器と、
前記無効電力補償装置の出力電流の前記xyb座標系の各成分が、前記不平衡補償電流指令の各成分に追従するように前記無効電力補償装置を制御する不平衡電流制御器と、を備えることを特徴とする制御装置。
【請求項5】
電力系統に接続される無効電力補償装置を制御する制御装置であって、
前記電力系統と前記無効電力補償装置との接続点の電圧である連系点電圧を、負の電圧位相で回転座標変換して、前記電力系統の周波数で順方向に回転する直交するd軸とq軸とからなるdq座標系の成分の電圧ベクトルにして出力するdq座標電圧変換器と、
前記電力系統の周波数の半周期における、前記電圧ベクトルのq軸成分の平均値が0となるような前記電圧位相を出力する位相調整器と、
前記連系点電圧を、前記電圧位相のn(nは6の倍数±1)倍の角度で回転座標変換して得られる前記電力系統の周波数のn倍の周波数で回転する直交するxn軸とyn軸とからなるxyn座標系の成分の電圧ベクトルの、前記半周期における平均値であるn次高調波電圧ベクトルを出力する高調波電圧検出器と、
前記n次高調波電圧ベクトルの各成分を比例積分増幅して、n次高調波抑制電流指令として出力する高調波抑制電流指令生成器と、
前記無効電力補償装置の出力電流の前記xyn座標系の各成分が、前記n次高調波抑制電流指令の各成分に追従するように前記無効電力補償装置を制御する高調波電流制御器と、を備えることを特徴とする制御装置。
【請求項6】
電力系統に接続される無効電力補償装置を制御する制御装置であって、
前記電力系統と前記無効電力補償装置との接続点の電圧である連系点電圧を、負の電圧位相で回転座標変換して、前記電力系統の周波数で順方向に回転する直交するd軸とq軸とからなるdq座標系の成分の電圧ベクトルにして出力するdq座標電圧変換器と、
前記電力系統の周波数の半周期における、前記電圧ベクトルのq軸成分の平均値が0となるような前記電圧位相を出力する位相調整器と、
前記連系点電圧を、前記電圧位相のn(nは6の倍数±1)倍の角度で回転座標変換して得られる前記電力系統の周波数のn倍の周波数で回転する直交するxn軸とyn軸とからなるxyn座標系の成分の電圧ベクトルの、前記半周期における平均値であるn次高調波電圧ベクトルを出力する高調波電圧検出器と、
前記n次高調波電圧ベクトルの大きさが、前記n次高調波電圧の不感帯の幅未満である場合には、大きさが0の出力電圧ベクトルを生成し、前記n次高調波電圧ベクトルの大きさが、前記n次高調波電圧の不感帯の幅以上である場合には、前記n次高調波電圧ベクトルと同じ向きで前記n次高調波電圧の所定の不感帯の大きさを有するベクトルを前記n次高調波電圧ベクトルから減算して出力電圧ベクトルとして出力する不感帯付きn次高調波電圧ベクトル生成器と、
前記出力電圧ベクトルの大きさが0でない場合には、前記出力電圧ベクトルの各成分を比例積分増幅してn次高調波抑制電流指令として出力し、前記出力電圧ベクトルの大きさが0である場合には、前記n次高調波抑制電流指令が所定の時定数で0に近づくようなn次高調波抑制電流指令を出力するn次高調波抑制電流指令生成器と、
前記無効電力補償装置の出力電流の前記xyn座標系の各成分が、前記n次高調波抑制電流指令の各成分に追従するように前記無効電力補償装置を制御する高調波電流制御器と、を備えることを特徴とする制御装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の制御装置において、
前記高調波電流制御器は、
前記無効電力補償装置の出力電流の前記xyn座標系の各成分の電流ベクトルの、前記半周期における平均値であるn次高調波電流ベクトルを出力するn次高調波電流検出器と、
前記n次高調波抑制電流指令の各成分と、前記n次高調波電流ベクトルの各成分との偏差を比例積分増幅して出力するxyn座標系積分器と、
前記n次高調波抑制電流指令を前記dq座標系の成分に変換して出力するn次高調波dq座標電流変換器と、
前記xyn座標系積分器の出力を前記dq座標系の成分に変換して出力するn次高調波dq座標電圧変換器と、を備え、
前記無効電力補償装置の出力電流の前記dq座標系の各成分を検出して出力する電流検出器と、
前記n次高調波dq座標電流変換器の出力の各成分と、前記電流検出器の出力の各成分との偏差を比例積分増幅して出力するdq座標電流制御器と、
前記高調波電流制御器の出力と、前記dq座標電流制御器の出力との和を前記無効電力補償装置の出力電圧の指令値として出力する電圧指令演算器と、をさらに備えることを特徴とする制御装置。
【請求項8】
請求項5または6に記載の制御装置において、
前記無効電力補償装置は、
指令値に従った電圧を出力する三相電力変換器と、
前記三相電力変換器の出力に一端が接続された変換器側リアクトルと、
前記変換器側リアクトルの他端に接続された接続されたフィルタコンデンサと、
一端が前記フィルタコンデンサの一端に接続され、他端が前記電力系統に接続された系統側リアクトルまたは変圧器と、を備え、
前記高調波電流制御器は、
前記フィルタコンデンサの電圧であるフィルタ電圧を検出するフィルタ電圧検出器と、
前記コンデンサ電圧に基づき、前記フィルタコンデンサを流れる電流を推定するコンデンサ電流推定器と、
前記n次高調波抑制電流指令を前記電流により補正して、前記変換器側リアクトルに流れる電流であるリアクトル電流を指示するリアクトル電流指令を生成して出力する高調波電流指令補正器と、
前記リアクトル電流の前記xyn座標系の各成分の電流ベクトルの、前記半周期における平均値であるn次高調波電流ベクトルを出力するn次高調波電流検出器と、
前記n次高調波抑制電流指令の各成分と、前記n次高調波電流ベクトルの各成分との偏差を比例積分増幅して出力するxyn座標系積分器と、
前記n次高調波抑制電流指令を前記dq座標系の成分に変換して出力するn次高調波dq座標電流変換器と、
前記xyn座標系積分器の出力を前記dq座標系の成分に変換して出力するn次高調波dq座標電圧変換器と、を備え、
前記無効電力補償装置の出力電流の前記dq座標系の各成分を検出して出力する電流検出器と、
前記n次高調波dq座標電流変換器の出力の各成分と、前記電流検出器の出力の各成分との偏差を比例積分増幅して出力するdq座標電流制御器と、
前記高調波電流制御器の出力と、前記dq座標電流制御器の出力との和を前記無効電力補償装置の出力電圧の指令値として出力する電圧指令演算器と、を備えることを特徴とする制御装置。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか一項に記載の制御装置において、
前記無効電力補償装置は、
指令値に従った電圧を出力する三相電力変換器と、
前記三相電力変換器の出力に一端が接続された変換器側リアクトルと、
前記変換器側リアクトルの他端に接続された接続されたフィルタコンデンサと、
一端が前記フィルタコンデンサの一端に接続され、他端が前記電力系統に接続された系統側リアクトルまたは変圧器と、を備え、
前記フィルタコンデンサの電圧であるフィルタ電圧の大きさから、前記変圧器による電圧降下分を補正し、前記連系点電圧として出力する電圧補正器をさらに備えることを特徴とする制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力系統に接続される無効電力補償装置を制御する制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電システムなどの分散型電源が電力系統に接続された電力システムが利用されている。このような電力システムでは、適切な制御が行われなければ、電力系統の系統電圧が適正範囲から逸脱するおそれがある。そのため、任意の無効電力を電力系統に流す無効電力補償装置を電力系統に接続することで、系統電圧の適正範囲からの逸脱が抑制されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−20306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、太陽光発電による発電エネルギーの増加および電力系統に接続される負荷の増加により、無効電力補償装置には、電力系統の電圧制御および力率制御といった基本的な機能の他に、不平衡補償制御、高調波抑制制御など複数の機能を備えることが求められるようになっている。ここで、電圧制御、不平衡補償制御、高調波抑制制御といった無効電力補償装置に求められる各種制御を実現するための構成については検討の余地がある。
【0005】
本発明の目的は、上述した課題を解決し、電圧制御、不平衡補償制御、高調波抑制制御といった各種の制御を実現することができる無効電力補償装置の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る無効電力補償装置の制御装置は、電力系統に接続される無効電力補償装置を制御する制御装置であって、前記無効電力補償装置が出力する無効電流を指示する無効電流指令を出力する電圧大きさ制御器と、前記無効電力補償装置の出力電流の、前記電力系統と前記無効電力補償装置との接続点の電圧である連系点電圧の方向に直交する無効電流成分が、前記無効電流指令に追従するように前記無効電力補償装置を制御する無効電流制御器と、を備え、前記電圧大きさ制御器は、前記連系点電圧の電圧指令と前記連系点電圧の大きさとの偏差を演算する電圧偏差演算器と、前記偏差が所定の不感帯の上限値以上である場合には、前記偏差から前記上限値を引いた値を出力し、前記偏差が前記不感帯の下限値以下である場合には、前記偏差から前記下限値を引いた値を出力し、前記偏差が前記下限値より大きく、前記上限値より小さい場合には、0を出力する電圧不感帯検出器と、前記電圧不感帯検出器の出力が0でない場合には、前記電圧不感帯検出器の出力を比例積分増幅して前記無効電流指令として出力し、前記電圧不感帯検出器の出力が0である場合には、前記無効電流指令を所定の時定数で0に近づける誤差増幅器と、を備える。
【0007】
また、上記課題を解決するため、本発明に係る無効電力補償装置の制御装置は、電力系統に接続される無効電力補償装置を制御する制御装置であって、前記無効電力補償装置が出力する無効電流を指示する無効電流指令を出力する電圧大きさ制御器と、前記無効電力補償装置の出力電流の、前記電力系統と前記無効電力補償装置との接続点の電圧である連系点電圧の方向と直交する無効電流成分が、前記無効電流指令に追従するように前記無効電力補償装置を制御する無効電流制御器と、を備え、前記電圧大きさ制御器は、入力された電圧指令に対して一次遅れ処理を行った電圧指令を出力する一次遅れフィルタと、前記一次遅れフィルタから出力された電圧指令と前記連系点電圧の大きさとの偏差を比例積分増幅し、前記無効電流指令として出力する誤差増幅器と、前記誤差増幅器により出力された無効電流指令が、前記無効電流の不感帯の上限値以上である場合には、下限の電圧指令を前記一次遅れフィルタに入力し、前記誤差増幅器により出力された無効電流指令が、前記不感帯の下限値以下である場合には、上限の電圧指令を前記一次遅れフィルタに入力し、前記誤差増幅器により出力された無効電流指令が、前記下限値より大きく、前記上限値より小さい場合には、前記一次遅れフィルタの出力を前記一次遅れフィルタに入力するフィルタ出力切替器と、を備える。
【0008】
また、上記課題を解決するため、本発明に係る無効電力補償装置の制御装置は、電力系統に接続される無効電力補償装置を制御する制御装置であって、前記電力系統と前記無効電力補償装置との接続点の電圧である連系点電圧を、負の電圧位相で回転座標変換して、前記電力系統の周波数で順方向に回転する直交するd軸とq軸とからなるdq座標系の成分の電圧ベクトルにして出力するdq座標電圧変換器と、前記電力系統の周波数の半周期における、前記電圧ベクトルのq軸成分の平均値が0となるような前記電圧位相を出力する位相調整器と、前記連系点電圧を前記電圧位相で回転座標変換して得られる、前記電力系統の周波数で逆方向に回転する直交するxb軸とyb軸とからなるxyb座標系の成分の電圧ベクトルの、前記半周期における平均値である不平衡電圧ベクトルを出力する不平衡電圧検出器と、前記不平衡電圧ベクトルの前記xyb座標系の各成分を比例積分増幅し、不平衡補償電流指令として出力する不平衡補償電流指令生成器と、前記無効電力補償装置の出力電流の前記xyb座標系の各成分が、前記不平衡補償電流指令の各成分に追従するように前記無効電力補償装置を制御する不平衡電流制御器と、を備える。
【0009】
また、上記課題を解決するため、本発明に係る無効電力補償装置の制御装置は、電力系統に接続される無効電力補償装置を制御する制御装置であって、前記電力系統と前記無効電力補償装置との接続点の電圧である連系点電圧を、負の電圧位相で回転座標変換して、前記電力系統の周波数で順方向に回転する直交するd軸とq軸とからなるdq座標系の成分の電圧ベクトルにして出力するdq座標電圧変換器と、前記電力系統の周波数の半周期における、前記電圧ベクトルのq軸成分の平均値が0となるような前記電圧位相を出力する位相調整器と、前記連系点電圧を前記電圧位相で回転座標変換して得られる、前記電力系統の周波数で逆方向に回転する直交するxb軸とyb軸とからなるxyb座標系の成分の電圧ベクトルの、前記半周期における平均値である不平衡電圧ベクトルを出力する不平衡電圧検出器と、前記不平衡電圧ベクトルの大きさが、前記不平衡電圧の不感帯の幅未満である場合には、大きさが0の出力電圧ベクトルを出力し、前記不平衡電圧ベクトルの大きさが、前記不感帯の幅以上である場合には、前記不平衡電圧ベクトルと同じ向きで前記不平衡電圧の不感帯の幅の大きさを有するベクトルを出力電圧ベクトルとして出力する不平衡電圧不感帯検出器と、前記出力電圧ベクトルの大きさが0でない場合には、前記出力電圧ベクトルの各成分を比例積分増幅して不平衡補償電流指令として出力し、前記出力電圧ベクトルの大きさが0である場合には、前記不平衡補償電流指令が所定の時定数で0に近づくような不平衡補償電流指令を出力する不平衡補償電流指令生成器と、前記無効電力補償装置の出力電流の前記xyb座標系の各成分が、前記不平衡補償電流指令の各成分に追従するように前記無効電力補償装置を制御する不平衡電流制御器と、を備える。
【0010】
また、上記課題を解決するため、本発明に係る無効電力補償装置の制御装置は、電力系統に接続される無効電力補償装置を制御する制御装置であって、前記電力系統と前記無効電力補償装置との接続点の電圧である連系点電圧を、負の電圧位相で回転座標変換して、前記電力系統の周波数で順方向に回転する直交するd軸とq軸とからなるdq座標系の成分の電圧ベクトルにして出力するdq座標電圧変換器と、前記電力系統の周波数の半周期における、前記電圧ベクトルのq軸成分の平均値が0となるような前記電圧位相を出力する位相調整器と、前記連系点電圧を、前記電圧位相のn(nは6の倍数±1)倍の角度で回転座標変換して得られる前記電力系統の周波数のn倍の周波数で回転する直交するxn軸とyn軸とからなるxyn座標系の成分の電圧ベクトルの、前記半周期における平均値であるn次高調波電圧ベクトルを出力する高調波電圧検出器と、前記n次高調波電圧ベクトルの各成分を比例積分増幅して、n次高調波抑制電流指令として出力する高調波抑制電流指令生成器と、前記無効電力補償装置の出力電流の前記xyn座標系の各成分が、前記n次高調波抑制電流指令の各成分に追従するように前記無効電力補償装置を制御する高調波電流制御器と、を備える。
【0011】
また、上記課題を解決するため、本発明に係る無効電力補償装置の制御装置は、電力系統に接続される無効電力補償装置を制御する制御装置であって、前記電力系統と前記無効電力補償装置との接続点の電圧である連系点電圧を、負の電圧位相で回転座標変換して、前記電力系統の周波数で順方向に回転する直交するd軸とq軸とからなるdq座標系の成分の電圧ベクトルにして出力するdq座標電圧変換器と、前記電力系統の周波数の半周期における、前記電圧ベクトルのq軸成分の平均値が0となるような前記電圧位相を出力する位相調整器と、前記連系点電圧を、前記電圧位相のn(nは6の倍数±1)倍の角度で回転座標変換して得られる前記電力系統の周波数のn倍の周波数で回転する直交するxn軸とyn軸とからなるxyn座標系の成分の電圧ベクトルの、前記半周期における平均値であるn次高調波電圧ベクトルを出力する高調波電圧検出器と、前記n次高調波電圧ベクトルの大きさが、前記n次高調波電圧の不感帯の幅未満である場合には、大きさが0の出力電圧ベクトルを生成し、前記n次高調波電圧ベクトルの大きさが、前記n次高調波電圧の不感帯の幅以上である場合には、前記n次高調波電圧ベクトルと同じ向きで前記n次高調波電圧の所定の不感帯の大きさを有するベクトルを前記n次高調波電圧ベクトルから減算して出力電圧ベクトルとして出力する不感帯付きn次高調波電圧ベクトル生成器と、前記出力電圧ベクトルの大きさが0でない場合には、前記出力電圧ベクトルの各成分を比例積分増幅してn次高調波抑制電流指令として出力し、前記出力電圧ベクトルの大きさが0である場合には、前記n次高調波抑制電流指令が所定の時定数で0に近づくようなn次高調波抑制電流指令を出力するn次高調波抑制電流指令生成器と、前記無効電力補償装置の出力電流の前記xyn座標系の各成分が、前記n次高調波抑制電流指令の各成分に追従するように前記無効電力補償装置を制御する高調波電流制御器と、を備える。
【0012】
また、本発明に係る無効電力補償装置の制御装置において、前記高調波電流制御器は、前記無効電力補償装置の出力電流の前記xyn座標系の各成分の電流ベクトルの、前記半周期における平均値であるn次高調波電流ベクトルを出力するn次高調波電流検出器と、前記n次高調波抑制電流指令の各成分と、前記n次高調波電流ベクトルの各成分との偏差を比例積分増幅して出力するxyn座標系積分器と、前記n次高調波抑制電流指令を前記dq座標系の成分に変換して出力するn次高調波dq座標電流変換器と、前記xyn座標系積分器の出力を前記dq座標系の成分に変換して出力するn次高調波dq座標電圧変換器と、を備え、前記無効電力補償装置の出力電流の前記dq座標系の各成分を検出して出力する電流検出器と、前記n次高調波dq座標電流変換器の出力の各成分と、前記電流検出器の出力の各成分との偏差を比例積分増幅して出力するdq座標電流制御器と、前記高調波電流制御器の出力と、前記dq座標電流制御器の出力との和を前記無効電力補償装置の出力電圧の指令値として出力する電圧指令演算器と、をさらに備えることが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る無効電力補償装置の制御装置において、前記無効電力補償装置は、指令値に従った電圧を出力する三相電力変換器と、前記三相電力変換器の出力に一端が接続された変換器側リアクトルと、前記変換器側リアクトルの他端に接続された接続されたフィルタコンデンサと、一端が前記フィルタコンデンサの一端に接続され、他端が前記電力系統に接続された系統側リアクトルまたは変圧器と、を備え、前記高調波電流制御器は、前記フィルタコンデンサの電圧であるフィルタ電圧を検出するフィルタ電圧検出器と、前記コンデンサ電圧に基づき、前記フィルタコンデンサを流れる電流を推定するコンデンサ電流推定器と、前記n次高調波抑制電流指令を前記電流により補正して、前記変換器側リアクトルに流れる電流であるリアクトル電流を指示するリアクトル電流指令を生成して出力する高調波電流指令補正器と、前記リアクトル電流の前記xyn座標系の各成分の電流ベクトルの、前記半周期における平均値であるn次高調波電流ベクトルを出力するn次高調波電流検出器と、前記n次高調波抑制電流指令の各成分と、前記n次高調波電流ベクトルの各成分との偏差を比例積分増幅して出力するxyn座標系積分器と、前記n次高調波抑制電流指令を前記dq座標系の成分に変換して出力するn次高調波dq座標電流変換器と、前記xyn座標系積分器の出力を前記dq座標系の成分に変換して出力するn次高調波dq座標電圧変換器と、を備え、前記無効電力補償装置の出力電流の前記dq座標系の各成分を検出して出力する電流検出器と、前記n次高調波dq座標電流変換器の出力の各成分と、前記電流検出器の出力の各成分との偏差を比例積分増幅して出力するdq座標電流制御器と、前記高調波電流制御器の出力と、前記dq座標電流制御器の出力との和を前記無効電力補償装置の出力電圧の指令値として出力する電圧指令演算器と、を備えることが好ましい。
【0014】
また、本発明に係る無効電力補償装置の制御装置において、前記無効電力補償装置は、
指令値に従った電圧を出力する三相電力変換器と、前記三相電力変換器の出力に一端が接続された変換器側リアクトルと、前記変換器側リアクトルの他端に接続された接続されたフィルタコンデンサと、一端が前記フィルタコンデンサの一端に接続され、他端が前記電力系統に接続された系統側リアクトルまたは変圧器と、を備え、前記フィルタコンデンサの電圧であるフィルタ電圧の大きさから、前記変圧器による電圧降下分を補正し、前記連系点電圧として出力する電圧補正器をさらに備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る無効電力補償装置の制御装置によれば、電圧制御、不平衡補償制御、高調波抑制制御といった各種の制御を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施形態に係る無効電力補償装置の制御装置の構成の一例を示す図である。
図2図1に示す電圧大きさ制御器の構成の一例を示す図である。
図3図2に示す誤差増幅器の構成の一例を示す図である。
図4図2に示す誤差増幅器の構成の他の一例を示す図である。
図5図2に示す誤差増幅器の構成の他の一例を示す図である。
図6図2に示す誤差増幅器の構成の他の一例を示す図である。
図7図1に示す電圧大きさ制御器の構成の他の一例を示す図である。
図8図1に示す不平衡電圧制御器の構成の一例を示す図である。
図9図1に示す不平衡電圧制御器の構成の他の一例を示す図である。
図10図1に示す高調波電圧制御器の構成の一例を示す図である。
図11図1に示す高調波電圧制御器の構成の他の一例を示す図である。
図12図1に示す高調波電流制御器の構成の他の一例を示す図である。
図13図1に示すdq座標電流制御器の構成の一例を示す図である。
図14】本発明の第2の実施形態に係る無効電力補償装置の制御装置の構成の一例を示す図である。
図15図14に示す高周波電流制御器の構成の一例を示す図である。
図16図14に示すdq座標電流制御器の構成の一例を示す図である。
図17】本発明の第3の実施形態に係る無効電力補償装置の制御装置の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0018】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る制御装置10の構成の一例を示す図である。本実施形態に係る制御装置10は、電力系統1に接続され、電力系統1の系統電圧を調整する無効電力補償装置2を制御するものである。無効電力補償装置2は、例えば、入力される電圧指令に従い三相電圧を出力する三相電力変換器で構成される。
【0019】
図1に示す制御装置10は、連系点電圧検出器11と、電流検出器12と、電圧大きさ検出器13と、電圧大きさ制御器14と、dq座標電圧変換器15と、位相調整器16と、不平衡電圧検出器17と、不平衡電圧制御器18と、高調波電圧検出器19と、高調波電圧制御器20と、高調波電流制御器21と、dq座標電流制御器22と、dq座標電圧指令演算器23とを備える。
【0020】
連系点電圧検出器11は、電力系統1と無効電力補償装置2との接続点の電圧である連系点電圧を検出し、検出結果を電圧大きさ検出器13、dq座標電圧変換器15、不平衡電圧検出器17および高調波電圧検出器19に出力する。
【0021】
電流検出器12は、無効電力補償装置2の出力電流iαβを検出し、検出結果を高調波電流制御器21およびdq座標電流制御器22に出力する。
【0022】
電圧大きさ検出器13は、連系点電圧検出器11により検出された連系点電圧の大きさVlを以下の式(1)に基づき演算し、得られた連系点電圧の大きさVlを電圧大きさ制御器14に出力する。なお、式(1)において、vαは連系点電圧のα軸成分であり、vは連系点電圧のβ軸成分である。
【0023】
【数1】
【0024】
電圧大きさ制御器14は、連系点電圧の方向に直交する無効電流成分を指示する(無効電力補償装置2が出力する無効電流を指示する)無効電流指令iqfrを生成する。ここで、電圧大きさ制御器14は、電圧大きさ検出器13から出力された連系点電圧の大きさVlが所定値になるように無効電流指令iqfrを生成する。電圧大きさ制御器14は、生成した無効電流指令iqfrをdq座標電流制御器22に出力する。
【0025】
図2は、電圧大きさ制御器14の構成の一例を示す図である。
【0026】
図2に示す電圧大きさ制御器14は、電圧偏差演算器141と、電圧不感帯検出器142と、誤差増幅器143とを備える。
【0027】
電圧偏差演算器141は、連系点電圧の電圧指令である連系点電圧指令vrefから連系点電圧の大きさVlを減算して偏差verrを取得し、取得した偏差verrを電圧不感帯検出器142に出力する。
【0028】
電圧不感帯検出器142は、電圧偏差演算器141から出力された偏差verrを用いて、以下の式(2)に基づき、不感帯電圧vdzを誤差増幅器143に出力する。なお、式(2)において、vdzHは、系統電圧の電圧制御を行わない不感帯の上限値である。また、vdzLは、系統電圧の電圧制御を行わない不感帯の下限値である。
【0029】
【数2】
【0030】
式(2)から明らかなように、電圧不感帯検出器142は、偏差verrが所定の不感帯(偏差verrに応じた電圧制御を行わない偏差verrの範囲)の上限値vdzH以上である場合には、偏差verrから不感帯の上限値vdzHを引いた値を不感帯電圧vdzとして出力する。また、電圧不感帯検出器142は、偏差verrが所定の不感帯の下限値vdzL以下である場合には、偏差verrから不感帯の下限値vdzLを引いた値を不感帯電圧vdzとして出力する。また、電圧不感帯検出器142は、偏差verrが不感帯の下限値vdzLより大きく、上限値vdzHより小さいには、不感帯電圧vdzとして0を出力する。
【0031】
誤差増幅器143は、電圧不感帯検出器142の出力(不感帯電圧vdz)が0でない場合には、電圧不感帯検出器142の出力を比例積分増幅して無効電流指令iqfrとしてdq座標電流制御器22に出力する。誤差増幅器143は、電圧不感帯検出器142の出力が0である場合には、無効電流指令iqfrが所定の時定数で0に近づくような無効電流指令iqfrを生成し、dq座標電流制御器22に出力する。
【0032】
図3は、誤差増幅器143の構成の一例を示す図である。
【0033】
図3に示す誤差増幅器143は、ゲイン増幅器301と、一次遅れフィルタ302と、加算器303と、出力切替器304とを備える。
【0034】
ゲイン増幅器301は、電圧不感帯検出器142の出力(不感帯電圧vdz)をkp倍して加算器303に出力する。
【0035】
一次遅れフィルタ302は、以下の式(3)に示される伝達関数G1で表されるフィルタである。式(3)において、sはラプラス演算子であり、Tiは積分時間である。また、Aは、出力切替器304の出力に応じて切り替えられる値である。
【0036】
【数3】
【0037】
一次遅れフィルタ302は、無効電流指令iqfrに対して伝達関数G1によるフィルタ処理(一次遅れ処理)を施して、加算器303に出力する。
【0038】
加算器303は、ゲイン増幅器301の出力(kp倍された不感帯電圧vdz)と、一次遅れフィルタ302の出力との和を、無効電流指令iqfrとして出力する。
【0039】
出力切替器304は、電圧不感帯検出器142から出力された不感帯電圧vdzが0である場合には、AとしてゲインKを出力し、不感帯電圧vdzが0でない場合には、Aとして0を出力する。
【0040】
したがって、図3に示す誤差増幅器143は、不感帯電圧vdzが0でない場合には、不感帯電圧vdzを比例積分増幅して、無効電流指令iqfrとして出力する。また、誤差増幅器143は、不感帯電圧vdzが0である場合には、時定数Tl=Ti/Kで無効電流指令iqfrが0に近づくようにする。なお、時定数Tlは、無効電流指令iqfrが0に近づく際の応答速度を示す。
【0041】
誤差増幅器143の構成は、図3に示す構成に限られるものではない。図4は、誤差増幅器143の構成の他の一例を示す図である。なお、図4において、図3と同様の構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0042】
図4に示す誤差増幅器143は、ゲイン増幅器301と、一次遅れフィルタ302aと、加算器303aと、出力切替器304aと、乗算器305とを備える。
【0043】
出力切替器304aは、電圧不感帯検出器142から出力された不感帯電圧vdzが0である場合には、ゲインKを乗算器305に出力し、不感帯電圧vdzが0でない場合には、1を乗算器305に出力する。
【0044】
乗算器305は、出力切替器304aの出力(ゲインKまたは1)と、無効電流指令iqfrとを乗算した値を一次遅れフィルタ302aに出力する。
【0045】
一次遅れフィルタ302aは、伝達関数G=1/(1+sTi)で表されるフィルタである。一次遅れフィルタ302aは、無効電流指令iqfrに対して伝達関数Gによるフィルタ処理(一次遅れ処理)を施して、加算器303aに出力する。
【0046】
加算器303aは、ゲイン増幅器301の出力(kp倍された不感帯電圧vdz)と、フィルタ302aの出力との和を無効電流指令iqfrとして出力する。
【0047】
したがって、図4に示す誤差増幅器143は、不感帯電圧vdzが0でない場合には、不感帯電圧vdzを比例積分増幅して、無効電流指令iqfrとして出力する。また、誤差増幅器143は、不感帯電圧vdzが0である場合には、時定数T=Ti/(1−K)で無効電流指令iqfrが0に近づくようにする。
【0048】
図5は、誤差増幅器143の構成の他の一例を示す図である。なお、図5において、図3と同様の構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0049】
図5に示す誤差増幅器143は、ゲイン増幅器301と、一次遅れフィルタ302b−1,302b−2と、加算器303bと、出力切替器304bとを備える。
【0050】
一次遅れフィルタ302b−1は、伝達関数G=1/(1+sTi)で表されるフィルタである。一次遅れフィルタ302b−1は、無効電流指令iqfrが入力され、入力(無効電流指令iqfr)に対して伝達関数G=1/(1+sTi)によるフィルタ処理(一次遅れ処理)を施して、出力切替器304bに出力する。
【0051】
一次遅れフィルタ302b−2は、伝達関数G=1/(1+sTf)で表されるフィルタである。ここで、Tfは時定数である。一次遅れフィルタ302b−2は、0が入力され、入力に対して伝達関数G=1/(1+sTf)によるフィルタ処理(一次遅れ処理)を施して、出力切替器304bに出力する。
【0052】
出力切替器304bは、電圧不感帯検出器142から出力された不感帯電圧vdzが0でない場合には、一次遅れフィルタ302b−1の出力を加算器303bに出力する。不感帯電圧vdzが0になると、出力切替器304bの入力は、不感帯電圧vdzが0に切り替わった瞬間の無効電流指令iqfrの値にプリセットされる。その後、出力切替器304bは、一次遅れフィルタ302b−2の出力を加算器303bに出力する。その結果、出力切替器304bの出力は、プリセットされた値から時定数Tfで0に近づいていく。
【0053】
加算器303aは、ゲイン増幅器301の出力(kp倍された不感帯電圧vdz)と、出力切替器304bの出力との和を、無効電流指令iqfrとして出力する。
【0054】
したがって、図5に示す誤差増幅器143は、不感帯電圧vdzが0でない場合には、不感帯電圧vdzを比例積分増幅して、無効電流指令iqfrとして出力する。また、誤差増幅器143は、不感帯電圧vdzが0である場合には、時定数T=Tfで無効電流指令iqfrが0に近づくようにする。
【0055】
図6は、誤差増幅器143の構成の他の一例を示す図である。なお、図6において、図3と同様の構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0056】
図6に示す誤差増幅器143は、ゲイン増幅器301と、一次遅れフィルタ302cと、加算器303cと、出力切替器304cと、積分器306とを備える。
【0057】
積分器306は、電圧不感帯検出器142から出力された不感帯電圧vdzを積分して出力切替器304cに出力する。
【0058】
一次遅れフィルタ302cは、伝達関数G=1/(1+sTf)で表されるフィルタである。一次遅れフィルタ302cは、入力として0が入力され、入力に対して伝達関数G=1/(1+Tfs)によるフィルタ処理(一次遅れ処理)を施して、出力切替器304cに出力する。
【0059】
出力切替器304cは、電圧不感帯検出器142から出力された不感帯電圧vdzが0でない場合には、積分器306の出力を加算器303cに出力する。不感帯電圧vdzが0になると、出力切替器304cの入力は、不感帯電圧vdzが0に切り替わった瞬間の無効電流指令iqfrの値にプリセットされる。その後、出力切替器304cは、一次遅れフィルタ302cの出力を加算器303cに出力する。その結果、出力切替器304cの出力は、プリセットされた値から時定数Tfで0に近づいていく。
【0060】
加算器303cは、ゲイン増幅器301の出力(kp倍された不感帯電圧vdz)と、出力切替器304cの出力との和を無効電流指令iqfrとして出力する。
【0061】
したがって、図6に示す誤差増幅器143は、不感帯電圧vdzが0でない場合には、不感帯電圧vdzを比例積分増幅して、無効電流指令iqfrとして出力する。また、誤差増幅器143は、不感帯電圧vdzが0である場合には、時定数T=Tfで無効電流指令iqfrが0に近づくようにする。
【0062】
なお、図4に示す誤差増幅器143においては、連系点電圧が定常的に、不感帯の上限値vdzH以上、あるいは、下限値vdzL以下である場合には、補償容量が残っている限り補償を行ってしまい、残補償容量が0もしくは少なくなってしまう。この場合、連系点電圧に瞬時的な変動がさらに生じた場合、補償を行うことができなくなってしまうという問題がある。
【0063】
このような問題を回避するために、定常的な電力系統1の電圧変動は、電力系統1に直列に接続され、自動的に変圧器のタップを切り替えて電圧を調整する電圧調整装置(SVR:Step Voltage Regulator)で補償し、無効電力補償装置2は、瞬時的な電力系統1の電圧変動の補償に特化するような協調制御が必要である。
【0064】
図7は、電圧大きさ制御器14の構成の他の一例を示す図である。図7に示す電圧大きさ制御器14は、上述した協調制御に適したものである。
【0065】
図7に示す電圧大きさ制御器14は、電流不感帯検出器144と、フィルタ出力切替器145と、一次遅れフィルタ146と、減算器147と、誤差増幅器148とを備える。
【0066】
電流不感帯検出器144は、無効電流指令iqfrが入力され、入力された無効電流指令iqfrが無効電流の不感帯の上限値IqH以上である場合には、−1をフィルタ出力切替器145に出力する。また、電流不感帯検出器144は、無効電流指令iqfrが無効電流の不感帯の下限値IqL以下である場合には、1をフィルタ出力切替器145に出力する。また、電流不感帯検出器144は、無効電流指令iqfrが無効電流の不感帯の下限値IqLより大きく、上限値IqHより小さい場合には、0をフィルタ出力切替器145に出力する。
【0067】
フィルタ出力切替器145は、電流不感帯検出器144の出力が1である場合には、上限の電圧指令VHを一次遅れフィルタ146に出力する。また、フィルタ出力切替器145は、電流不感帯検出器144の出力が−1である場合には、下限の電圧指令VLを一次遅れフィルタ146に出力する。また、フィルタ出力切替器145は、電流不感帯検出器144の出力が0である場合には、一次遅れフィルタ146の出力を一次遅れフィルタ146に入力する。すなわち、フィルタ出力切替器145は、無効電流指令iqfrが、無効電流の不感帯の上限値IqH以上である場合には、下限の電圧指令VLを一次遅れフィルタ146に入力する。また、フィルタ出力切替器145は、無効電流指令iqfrが、無効電流の不感帯の下限値IqL以下である場合には、上限の電圧指令VHを一次遅れフィルタ146に入力する。また、フィルタ出力切替器145は、無効電流指令iqfrが、不感帯の上限値IqHより小さく、不感帯の下限値IqLより大きい場合には、一次遅れフィルタ146の出力を一次遅れフィルタ146に入力する。
【0068】
一次遅れフィルタ146は、伝達関数G=1/(1+sTv)で表されるフィルタである。ここで、Tvは時定数である。一次遅れフィルタ146は、フィルタ出力切替器145から電圧指令が入力され、入力された電圧指令に対して伝達関数Gによるフィルタ処理(一次遅れ処理)を施して電圧指令を生成する。一次遅れフィルタ146は、生成した電圧指令をフィルタ出力切替器145および減算器147に出力する。すなわち、一次遅れフィルタ146は、入力された電圧指令に対して一次遅れ処理を行った電圧指令を出力する。
【0069】
減算器147は、一次遅れフィルタ146から出力された電圧指令から連系点電圧の大きさvlを減算した偏差を演算し、演算した偏差を誤差増幅器148に出力する。
【0070】
誤差増幅器148は、減算器147から出力された偏差を比例積分増幅し、無効電流指令iqfrとして電流不感帯検出器144およびdq座標電流制御器22に出力する。すなわち、誤差増幅器148は、一次遅れフィルタ146から出力された電圧指令と連系点電圧の大きさvlとの偏差を比例積分増幅し、無効電流指令iqfrとして出力する。
【0071】
図7に示す電圧大きさ制御器14によれば、無効電流指令iqfrが、無効電流の不感帯の上限値IqH以上である場合には、下限の電圧指令VL(電圧指令として設定可能な下限値)に応じた無効電流指令iqfrが生成される。また、無効電流指令iqfrが、無効電流の不感帯の下限値IqL以下である場合には、上限の電圧指令VH(電圧指令として設定可能な上限値)に応じた無効電流指令iqfrが生成される。そのため、無効電流指令iqfrが無効電流の不感帯を逸脱したときに、無効電流指令iqfrを時定数Tvによって所定の時間で不感帯の範囲内に戻すことができる。つまり、瞬時的な電力系統1の電圧変動を補償することができる。そのため、図7に示す電圧大きさ制御器14は、上述した協調制御に適したものである。
【0072】
図1を再び参照すると、dq座標電圧変換器15は、連系点電圧を電圧位相θで負方向に回転座標変換し(負の電圧位相(−θ)で回転座標変換し)、dq座標系の成分の電圧ベクトルVdqとして位相調整器16に出力する。ここで、dq座標系は、電力系統1の周波数で順方向に回転する直交するd軸とq軸とからなる座標系である。すなわち、dq座標電圧変換器15は、連系点電圧を、負の電圧位相(−θ)で回転座標変換して、電力系統1の周波数で順方向に回転する直交するd軸とq軸とからなるdq座標系の成分の電圧ベクトルVdqとして出力する。
【0073】
位相調整器16は、電力系統1の周波数の半周期における、dq座標電圧変換器15から出力された電圧ベクトルVdqのq軸成分の平均値が0となるような電圧位相θを決定する。位相調整器16は、決定した電圧位相θをdq座標電圧変換器15、不平衡電圧検出器17、高調波電圧検出器19、高調波電流制御器21およびdq座標電流制御器22に出力する。
【0074】
不平衡電圧検出器17は、連系点電圧を電圧位相θで回転座標変換して得られるxyb座標系の成分の電圧ベクトルの、電力系統1の周波数の半周期における平均値である不平衡電圧ベクトルVxybを検出する。ここで、xyb座標系は、電力系統1の周波数で逆方向に回転する直交するxb軸とyb軸とからなる座標系である。不平衡電圧検出器17は、検出した不平衡電圧ベクトルVxybを不平衡電圧制御器18に出力する。
【0075】
不平衡電圧制御器18は、不平衡電圧検出器17から出力された不平衡電圧ベクトルVxybの各成分を比例積分増幅し、不平衡補償電流指令ベクトルixybr(不平衡補償電流指令)としてdq座標電流制御器22に出力する。
【0076】
図8は、不平衡電圧制御器18の構成の一例を示す図である。
【0077】
図8に示す不平衡電圧制御器18は、不平衡補償電流指令生成器181を備える。
【0078】
不平衡補償電流指令生成器181は、不平衡電圧検出器17から出力された不平衡電圧ベクトルVxybの各成分を比例積分増幅し、不平衡電圧ベクトルVxybの各成分が0となるような不平衡補償電流指令ベクトルixybrをdq座標電流制御器22に出力する。すなわち、不平衡補償電流指令生成器181は、不平衡電圧ベクトルVxybのxyb座標系の各成分を比例積分増幅し、不平衡補償電流指令ベクトルixybr(不平衡補償電流指令)として出力する。
【0079】
図8においては、不平衡電圧の不感帯を設けない場合の不平衡電圧制御器18の構成例を説明したが、これに限られるものではない。
【0080】
図9は、不平衡電圧の不感帯を設けた場合の不平衡電圧制御器18の構成の他の一例を示す図である。
【0081】
図9に示す不平衡電圧制御器18は、不感帯付き不平衡電圧ベクトル生成器182と、不平衡補償電流指令生成器185とを備える。
【0082】
不感帯付き不平衡電圧ベクトル生成器182は、不平衡電圧検出器17から出力された不平衡電圧ベクトルVxybの大きさが、不平衡電圧の不感帯の幅未満である場合には、大きさが0の不感帯不平衡電圧ベクトルvdzxyb(出力電圧ベクトル)を不平衡補償電流指令生成器185に出力する。また、不感帯付き不平衡電圧ベクトル生成器182は、不平衡電圧ベクトルVxybの大きさが、不平衡電圧の不感帯の幅以上である場合には、不平衡電圧ベクトルVxybと同じ向きで、不平衡電圧の不感帯の幅の大きさを有する不感帯不平衡電圧ベクトルvdzxyb(出力電圧ベクトル)を不平衡補償電流指令生成器185に出力する。
【0083】
不感帯付き不平衡電圧ベクトル生成器182は、不平衡電圧大きさ演算器183と、不平衡電圧不感帯検出器184とを備える。
【0084】
不平衡電圧大きさ演算器183は、以下の式(4)に基づき、不平衡電圧ベクトルVxybの大きさvbvlを演算し、不平衡電圧不感帯検出器184に出力する。
【0085】
【数4】
【0086】
不平衡電圧不感帯検出器184は、不平衡電圧ベクトルVxybと、不平衡電圧大きさ演算器183から出力された不平衡電圧ベクトルVxybの大きさvbvlとを用いて、以下の式(5)に基づき、不感帯不平衡電圧ベクトルvdzxybを生成する。
【0087】
【数5】
【0088】
すなわち、不平衡電圧不感帯検出器184は、不平衡電圧ベクトルVxybの大きさvbvlが、不平衡電圧の不感帯(不平衡電圧に応じた不平衡補償制御を行わない不平衡電圧の範囲)の幅未満である場合には、大きさがゼロの不感帯不平衡電圧ベクトルvdzxyb(出力電圧ベクトル)を生成する。また、不平衡電圧不感帯検出器184は、不平衡電圧ベクトルVxybの大きさvbvlが、不平衡電圧の不感帯の幅以上である場合には、不平衡電圧ベクトルVxybと同じ向きで不平衡電圧の不感帯の幅vbwの大きさを有する不感帯不平衡電圧ベクトルvdzxyb(出力電圧ベクトル)を生成する。
【0089】
不平衡電圧不感帯検出器184は、生成した不感帯不平衡電圧ベクトルvdzxybを不平衡補償電流指令生成器185に出力する。
【0090】
不平衡補償電流指令生成器185は、例えば、図3図6を参照して説明した誤差増幅器143と同様の構成を有する。ただし、ゲインの値は異なる。不平衡補償電流指令生成器185は、不感帯付き不平衡電圧ベクトル生成器182から出力された不感帯不平衡電圧ベクトルvdzxyb(出力電圧ベクトル)の大きさが0でない場合には、不感帯不平衡電圧ベクトルvdzxybの各成分を比例積分増幅して、不平衡補償電流指令ベクトルixybrとしてdq座標電流制御器22に出力する。また、不平衡補償電流指令生成器185は、不感帯不平衡電圧ベクトルvdzxybの大きさが0である場合には、不平衡補償電流指令ベクトルixybrの各成分が、図3〜6を参照して説明した誤差増幅器143それぞれの時定数でゼロに近づくような不平衡補償電流指令ベクトルixybrをdq座標電流制御器22に出力する。
【0091】
図1を再び参照すると、高調波電圧検出器19は、連系点電圧を電圧位相θのn倍の角度(nθ)で回転座標変換して得られるxyn座標系の成分の電圧ベクトルの、電力系統1の周波数の半周期における平均であるn次高調波電圧ベクトルVxynを生成する。ここで、xyn座標系は、電力系統1のn倍の周波数で回転する直交するxn軸とyn軸とからなる座標系である。nは、例えば、5,7,11,13である(n=6m±1(mは1以上の自然数))である。したがって、高調波電圧検出器19は、電力系統1の周波数を1次としたときに、連系点電圧の5次、7次、11次、13次高調波電圧を直流分に変換して抽出し、高調波電圧制御器20に出力する。なお、図1においては、5次、7次、11次、13次高調波電圧を纏めて、n次高調波電圧ベクトルVxynとして示している。
【0092】
高調波電圧制御器20は、高調波電圧検出器19から出力されたn次高調波電圧ベクトルVxynを比例積分増幅して、n次高調波電圧ベクトルVxynの各成分が0となるようなn次高調波補償電流指令ベクトルixynr(n次高調波電流指令)を生成する。すなわち、高調波電圧制御器20は、無効電力補償装置2の出力電流iαβのxyn座標系の各成分が、n次高調波抑制電流指令の各成分に追従するように無効電力補償装置2を制御する。
【0093】
図10は、高調波電圧制御器20の構成の一例を示す図である。高調波電圧制御器20は、図10に示す構成を、各次数の高調波に対応して備えている。
【0094】
図10に示す高調波電圧制御器20は、n次高調波抑圧電流指令生成器201を備える。
【0095】
n次高調波抑圧電流指令生成器201は、n次高調波電圧ベクトルVxynの各成分を比例積分増幅し、n次高調波電圧ベクトルVxynの各成分が0となるようなn次高調波補償電流指令ベクトルixynrを高調波電流制御器21に出力する。
【0096】
図10においては、高調波電圧の不感帯を設けない場合の高調波電圧制御器20の構成例を説明したが、これに限られるものではない。
【0097】
図11は、高調波電圧の不感帯を設けた場合の高調波電圧制御器20の構成の一例を示す図である。なお、図11においても、高調波電圧制御器20は、図11に示す構成を、各次数の高調波に対応して備えている。
【0098】
図11に示す高調波電圧制御器20は、不感帯付きn次高調波電圧ベクトル生成器202と、n次高調波抑制電流指令生成器205とを備える。
【0099】
不感帯付きn次高調波電圧ベクトル生成器202は、高調波電圧検出器19から出力されたn次高調波電圧ベクトルVxynの大きさが、n次高調波電圧の不感帯の幅未満である場合には、大きさが0の不感帯付きn次高調波電圧ベクトルVdzxyn(出力電圧ベクトル)をn次高調波抑制電流指令生成器205に出力する。また、不感帯付きn次高調波電圧ベクトル生成器202は、n次高調波電圧ベクトルVxynの大きさが、n次高調波電圧の不感帯の幅以上である場合には、n次高調波電圧ベクトルVxynと同じ向きで、n次高調波電圧の不感帯の幅の大きさを有する不感帯付きn次高調波電圧ベクトルVdzxyn(出力電圧ベクトル)をn次高調波抑制電流指令生成器205に出力する。
【0100】
不感帯付きn次高調波電圧ベクトル生成器202は、n次高調波電圧大きさ演算器203と、n次高調波電圧不感帯検出器204とを備える。
【0101】
n次高調波電圧大きさ演算器203は、以下の式(6)に基づき、高調波電圧検出器19から出力されたn次高調波電圧ベクトルVxynの大きさvnvlを演算し、n次高調波電圧不感帯検出器204に出力する。
【0102】
【数6】
【0103】
n次高調波電圧不感帯検出器204は、n次高調波電圧ベクトルVxynと、n次高調波電圧大きさ演算器203から出力されたn次高調波電圧ベクトルVxynの大きさvnvlとを用いて、以下の式(7)に基づき、不感帯付きn次高調波電圧ベクトルVdzxynを生成する。
【0104】
【数7】
【0105】
n次高調波抑制電流指令生成器205は、例えば、図3図6を参照して説明した誤差増幅器143と、同様の構成を有する。ただし、ゲインの値は異なる。n次高調波抑制電流指令生成器205は、不感帯付きn次高調波電圧ベクトル生成器202から出力された不感帯付きn次高調波電圧ベクトルVdzxyn(出力電圧ベクトル)の大きさが0でない場合には、不感帯付きn次高調波電圧ベクトルVdzxynの各成分を比例積分増幅して、n次高調波補償電流指令ベクトルixynrとして高調波電流制御器21に出力する。また、n次高調波抑制電流指令生成器205は、不感帯付きn次高調波電圧ベクトルVdzxynの大きさが0である場合には、不感帯付きn次高調波電圧ベクトルVdzxynが、図3図6を参照して説明した誤差増幅器143の時定数でゼロに近づくようなn次高調波補償電流指令ベクトルixynrを高調波電流制御器21に出力する。
【0106】
図1を再び参照すると、高調波電圧制御器20は、5次、7次、11次、13次高調波電圧それぞれについて生成した高調波補償電流指令ベクトルを高調波電流制御器21に出力する。図1においては、5次、7次、11次、13次高調波電圧それぞれについて生成された高調波補償電流指令ベクトルを纏めて、n次高調波補償電流指令ベクトルixynrとして示している。
【0107】
高調波電流制御器21は、無効電力補償装置2の出力電流iαβのxyb座標系の各成分が、高調波電圧制御器20から出力されたn次高調波補償電流指令ベクトルixynr(n次高調波電流指令)の各成分に追従するように無効電力補償装置2を制御する。
【0108】
図12は、高調波電流制御器21の構成の一例を示す図である。高調波電流制御器21は、図12に示す構成を、各次数の高調波に対応して備えている。
【0109】
図12に示す高調波電流制御器21は、n次高調波電流検出器211と、n次高調波電流偏差演算器212と、xyn座標系積分器213と、n次高調波dq座標電圧変換器214と、n次高調波dq座標電流変換器215とを備える。
【0110】
n次高調波電流検出器211は、電流検出器12により検出された無効電力補償装置2の出力電流iαβをnθで回転座標変換した電流ベクトルであるn次高調波電流ベクトルIxynを生成し、n次高調波電流偏差演算器212に出力する。すなわち、n次高調波電流検出器211は、無効電力補償装置2の出力電流iαβのxyn座標系の各成分の電流ベクトルの、電力系統1の周波数の半周期における平均値であるn次高調波電流ベクトルIxynを出力する。
【0111】
n次高調波電流偏差演算器212は、高調波電圧制御器20から出力されたn次高調波補償電流指令ベクトルixynrと、n次高調波電流検出器211から出力されたn次高調波電流ベクトルIxynとの各成分の偏差を演算し、xyn座標系積分器213に出力する。
【0112】
xyn座標系積分器213は、n次高調波電流偏差演算器212から出力された偏差を積分して、n次高調波dq座標電圧変換器214に出力する。
【0113】
n次高調波dq座標電圧変換器214は、xyn座標系積分器213の出力を、−(n+1)θで回転座標変換して、n次高調波dq座標電圧指令ベクトルvdqnrを生成する。n次高調波dq座標電圧変換器214は、生成したn次高調波dq座標電圧指令ベクトルvdqnrをdq座標電圧指令演算器23に出力する。
【0114】
n次高調波dq座標電流変換器215は、高調波電圧制御器20から出力されたn次高調波補償電流指令ベクトルixynrを、−(n+1)θで回転座標変換して、n次高調波dq座標電流指令ベクトルidqnrを生成する。n次高調波dq座標電流変換器215は、生成したn次高調波dq座標電流指令ベクトルidqnrをdq座標電流制御器22に出力する。
【0115】
図1を再び参照して説明すると、高調波電流制御器21は、n次(5次、7次、11次、13次)高調波dq座標電流指令ベクトルidqnrをdq座標電流制御器22に出力する。また、高調波電流制御器21は、n次(5次、7次、11次、13次)高調波dq座標電圧指令ベクトルvdqnrをdq座標電圧指令演算器23に出力する。
【0116】
dq座標電流制御器22は、各制御(電圧制御、不平衡補償制御、高調波抑制制御)により求められた電流指令をdq座標系に変換したdq座標系電流指令が、無効電力補償装置2の出力電流iαβをdq座標に変換したものに一致するような電圧指令である無効電圧指令vqfbrおよび有効電圧指令vdfbrを生成するように動作する。dq座標電流制御器22は、生成した無効電圧指令vqfbrと有効電圧指令vdfbrとをdq座標電圧指令演算器23に出力する。
【0117】
図13は、dq座標電流制御器22の構成の一例を示す図である。
【0118】
図13に示すdq座標電流制御器22は、不平衡dq座標変換器221と、総和電流指令演算器222と、dq座標変換器223と、dq座標電流偏差演算器224と、無効電流制御器225と、有効電流制御器226とを備える。
【0119】
不平衡dq座標変換器221は、不平衡電圧制御器18から出力された不平衡補償電流指令ベクトルixybrを、電圧位相θで回転座標変換することでdq座標系のベクトルである不平衡dq座標電流指令ベクトルIdqbrを生成し、総和電流指令演算器222に出力する。
【0120】
総和電流指令演算器222は、式(8)で表されるように、入力される各dq座標の電流指令のq軸成分を加算して、総和無効電流指令iqrとしてdq座標電流偏差演算器224に出力する。また、総和電流指令演算器222は、入力される各dq座標の電流指令のd軸成分を加算して、総和有効電流指令idrとしてdq座標電流偏差演算器224に出力する。なお、式(8)において、iq5rは5次高調波dq座標電流指令ベクトルidq5rのq軸成分である。iq7rは7次高調波dq座標電流指令ベクトルidq7rのq軸成分である。iq11rは11次高調波dq座標電流指令ベクトルidq11rのq軸成分である。iq13rは13次高調波dq座標電流指令ベクトルidq13rのq軸成分である。id5rは5次高調波dq座標電流指令ベクトルidq5rのd軸成分である。id7rは7次高調波dq座標電流指令ベクトルidq7rのd軸成分である。id11rは11次高調波dq座標電流指令ベクトルidq11rのd軸成分である。id13rは13次高調波dq座標電流指令ベクトルidq13rのq軸成分である。
【0121】
【数8】
【0122】
dq座標変換器223は、無効電力補償装置2の出力電流iαβを電圧位相θで負方向に回転座標変換することで、dq座標系のベクトルであるdq座標電流ベクトルIdqに変換する。dq座標変換器223は、dq座標電流ベクトルIdqのq軸成分iqおよびd軸成分idをdq座標電流偏差演算器224に出力する。
【0123】
dq座標電流偏差演算器224は、総和電流指令演算器222から出力された総和無効電流指令iqrと、dq座標変換器223から出力されたdq座標電流ベクトルIdqのq軸成分iqとの偏差を無効電流制御器225に出力する。また、dq座標電流偏差演算器224は、総和電流指令演算器222から出力された総和有効電流指令idrと、dq座標変換器223から出力されたdq座標電流ベクトルIdqのd軸成分idとの偏差を有効電流制御器226に出力する。
【0124】
無効電流制御器225は、dq座標電流偏差演算器224から出力されたq軸成分の偏差を比例積分増幅し、当該偏差が0になるような無効電圧指令vqfbrをdq座標電圧指令演算器23に出力する。すなわち、無効電流制御器225は、無効電力補償装置2の出力電流iαβの連系点電圧の方向と直交する方向の無効電流成分が、無効電流指令iqfrに追従するように、無効電力補償装置2を制御する。
【0125】
有効電流制御器226は、dq座標電流偏差演算器224から出力されたd軸成分の偏差を比例積分増幅し、当該偏差が0になるような有効電圧指令vdfbrをdq座標電圧指令演算器23に出力する。
【0126】
なお、不平衡電圧の補償に着目すると、不平衡dq座標変換器221により不平衡補償電流指令ベクトルixybrを不平衡dq座標電流指令ベクトルIdqbrに変換し、dq座標電流偏差演算器224により不平衡dq座標電流指令ベクトルIdqbrとdq座標電流ベクトルIdqとの偏差を無効電流制御器225と有効電流制御器226に出力し、無効電流制御器225および有効電流制御器226により、無効電力補償装置2の出力電流iαβのxyb座標系の各成分が、不平衡補償電流指令ベクトルixybr(不平衡補償電流指令)の各成分に追従するように無効電力補償装置2を制御している。したがって、不平衡dq座標変換器221、dq座標変換器223、dq座標電流偏差演算器224、無効電流制御器225および有効電流制御器226は、無効電力補償装置2の出力電流iαβのxyb座標系の各成分が、不平衡補償電流指令ベクトルixybr(不平衡補償電流指令)の各成分に追従するように無効電力補償装置2を制御する不平衡電流制御器232を構成する。
【0127】
また、高調波電圧の抑制に着目すると、dq座標電流制御器22は、n次高調波dq座標電流変換器215の出力の各成分と、電流検出器12の出力の各成分との偏差を比例積分増幅して出力する。しかしながら、電力系統1の周波数で順方向に回転するdq座標系において比例積分増幅しても積分項に対応するゲインは、dq座標系に対応したゲインに設計しているため、ゲインの低下や位相遅れを生じてしまう。そのため、高調波電流制御器21で、対応するxyn座標系で適切な積分ゲインによって積分増幅している。
【0128】
すなわち、dq座標系では比例増幅、xyn座標系では積分増幅を行うことで、無効電力補償装置2の出力電流をn次高調波補償電流指令ベクトルixynrに速やかに一致させることが出来る。
【0129】
図1を再び参照すると、dq座標電圧指令演算器23(電圧指令演算器)は、式(9)に示す、無効電流制御器225から出力された無効電圧指令vqfbrの各成分の総和である総和q軸電圧指令vqrを無効電力補償装置2に出力する。また、dq座標電圧指令演算器23は、有効電流制御器226から出力された有効電圧指令vdfbrの各成分の総和である総和d軸電圧指令vdrを無効電力補償装置2に出力する。なお、式(9)において、vq5rは5次高調波dq座標電圧指令ベクトルvdq5rのq軸成分である。vq7rは7次高調波dq座標電圧指令ベクトルvdq7rのq軸成分である。vq11rは11次高調波dq座標電圧指令ベクトルvdq11rのq軸成分である。vq13rは13次高調波dq座標電圧指令ベクトルvdq13rのq軸成分である。vd5rは5次高調波dq座標電圧指令ベクトルvdq5rのd軸成分である。vd7rは7次高調波dq座標電圧指令ベクトルvdq7rのd軸成分である。vd11rは11次高調波dq座標電圧指令ベクトルvdq11rのd軸成分である。vd13rは13次高調波dq座標電圧指令ベクトルvdq13rのd軸成分である。
【0130】
【数9】
【0131】
このように、本実施形態に係る無効電力補償装置2の制御装置10によれば、電圧制御、不平衡補償制御、高調波抑制制御といった各種の制御を実現することができる。
【0132】
(第2の実施形態)
図14は、本発明の第2の実施形態に係る無効電力補償装置2の制御装置10Aの構成の一例を示す図である。なお、図14において、図1と同様の構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0133】
図14においては、無効電力補償装置2は、三相電力変換器3と、変換器側リアクトル4と、フィルタコンデンサ5と、変圧器6と、変換器電流検出器7と、フィルタ電圧検出器8とを備える例を示している。
【0134】
三相電力変換器3は、dq座標電圧指令演算器23から出力される指令値(総和q軸電圧指令vqrおよび総和d軸電圧指令vdr)に従った三相電圧を出力する。
【0135】
変換器側リアクトル4は、一端が三相電力変換器3の出力に接続されている。変換器側リアクトル4は、三相電力変換器3の三相の出力それぞれに対応して設けられている。
【0136】
フィルタコンデンサ5は、三相電力変換器3の三相の出力それぞれに対応して設けられ、一端が変換器側リアクトル4の他端に接続されている。また、フィルタコンデンサ5は、他端が互いに接続されている。
【0137】
変圧器6は、一端がフィルタコンデンサ5の一端に接続され、他端が電力系統1に接続されている。なお、変圧器6は、リアクトル(系統側リアクトル)としてもよい。
【0138】
変換器電流検出器7は、三相電力変換器3から出力され、変換器側リアクトル4に流れる電流iαβを検出し、検出結果を後述する高調波電流制御器21Aおよびdq座標電流制御器22Aに出力する。
【0139】
フィルタ電圧検出器8は、フィルタコンデンサ5の電圧(フィルタ電圧Vcαβ)を検出し、検出結果を高調波電流制御器21Aおよびdq座標電流制御器22Aに出力する。
【0140】
三相インバータなどで構成される三相電力変換器3の出力電圧に含まれるスイッチング周波数倍の成分を除去する必要がある。そのため、図14に示す無効電力補償装置2においては、フィルタコンデンサ5が設けられている。しかしながら、フィルタコンデンサ5を含み、かつ、変換器電流検出器7が変換器側リアクトル4を流れる電流iαβを検出する場合、無効電力補償装置2の出力電流iαβを制御するのではなく、三相電力変換器3の出力電流を制御することとなってしまう。そのため、電圧大きさ制御器14、不平衡電圧制御器18および高調波電圧制御器20から出力される各電流指令を、対応する回転座標系でのフィルタコンデンサ5の電流の推定値で補正する必要がある。本実施形態に係る無効電力補償装置2の制御装置10Aは、上述した各電流指令の補正を行うものである。
【0141】
図14に示す制御装置10Aは、図1に示す制御装置10と比較して、高調波電流制御器21を高調波電流制御器21Aに変更した点と、dq座標電流制御器22をdq座標電流制御器22Aに変更した点とが異なる。
【0142】
図15は、高調波電流制御器21Aの構成の一例を示す図である。高調波電流制御器21Aは、図15に示す構成を、各次数の高調波に対応して備えている。なお、図15において、図12と同様の構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0143】
図15に示す高調波電流制御器21Aは、図12に示す高調波電流制御器21と比較して、フィルタn次高調波電圧検出器216と、コンデンサn次高調波電流推定器217(コンデンサ電流推定器)と、n次高調波電流指令補正器218とを追加で備える。
【0144】
フィルタn次高調波電圧検出器216は、フィルタ電圧検出器8により検出されたフィルタ電圧Vcαβを電圧位相θのn倍(nθ)で回転座標変換し、電力系統1の半周期で移動平均を演算することで、フィルタn次高調波電圧ベクトルVcxyn(コンデンサ電圧)を取得する。フィルタn次高調波電圧検出器216は、取得したフィルタn次高調波電圧ベクトルVcxynをコンデンサn次高調波電流推定器217に出力する。
【0145】
コンデンサn次高調波電流推定器217は、フィルタn次高調波電圧検出器216から出力されたフィルタn次高調波電圧ベクトルVcxynを用いて、以下の式(10)に基づき、フィルタコンデンサ5を流れる電流であるn次高調波コンデンサ電流ベクトルicxyn(xn軸成分icxnおよびyn軸成分icyn)を推定する。なお、式(10)において、ωは電力系統1の角周波数であり、Cfはフィルタコンデンサ5の容量である。
【0146】
【数10】
【0147】
コンデンサn次高調波電流推定器217は、推定したn次高調波コンデンサ電流ベクトルicxynをn次高調波電流指令補正器218に出力する。
【0148】
n次高調波電流指令補正器218(高調波電流指令補正器)は、n次高調波補償電流指令ベクトルixynrを、コンデンサn次高調波電流推定器217から出力されたn次高調波コンデンサ電流ベクトルicxynを用いて、以下の式(11)に基づき補正する。補正後のn次高調波補償電流指令ベクトルi’xynrは、変換器側リアクトル4に流れる電流であるリアクトル電流を指示するリアクトル電流指令である。n次高調波電流指令補正器218は、n次高調波補償電流指令ベクトルi’xynr(xn軸成分i’xnrおよびyn軸成分iynr)をn次高調波電流偏差演算器212に出力する。
【0149】
【数11】
【0150】
図16は、dq座標電流制御器22Aの構成の一例を示す図である。図16において、図13と同様の構成には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0151】
図16に示すdq座標電流制御器22Aは、図13に示すdq座標電流制御器22と比較して、フィルタdq座標電圧検出器227、コンデンサdq座標電流推定器228、フィルタ不平衡電圧検出器229、コンデンサ不平衡電流推定器230および不平衡電流指令推定器231を追加した点と、不平衡dq座標変換器221を不平衡dq座標変換器221Aに変更した点と、総和電流指令演算器222を総和電流指令演算器222Aに変更した点とが異なる。
【0152】
フィルタdq座標電圧検出器227は、フィルタ電圧検出器8により検出されたフィルタ電圧Vcαβを負方向の電圧位相θで回転座標変換し、電力系統1の半周期で移動平均することで、フィルタdq座標電圧ベクトルVcdqを取得する。フィルタdq座標電圧検出器227は、取得したフィルタdq座標電圧ベクトルVcdqをコンデンサdq座標電流推定器228に出力する。
【0153】
コンデンサdq座標電流推定器228は、フィルタdq座標電圧検出器227から出力されたフィルタdq座標電圧ベクトルVcdqを用いて、以下の式(12)に基づき、dq座標補償電流ベクトルIcdq(q軸成分icqおよびd軸成分icd)する。
【0154】
【数12】
【0155】
コンデンサdq座標電流推定器228は、推定したdq座標補償電流ベクトルIcdqを総和電流指令演算器222Aに出力する。
【0156】
フィルタ不平衡電圧検出器229は、フィルタ電圧検出器8により検出されたフィルタ電圧Vcαβを電圧位相θで回転座標変換し、電力系統1の半周期で移動平均することで、フィルタ不平衡電圧ベクトルVcxybを取得する。フィルタ不平衡電圧検出器229は、取得したフィルタ不平衡電圧ベクトルVcxybをコンデンサ不平衡電流推定器230に出力する。
【0157】
コンデンサ不平衡電流推定器230は、フィルタ不平衡電圧検出器229から出力されたフィルタ不平衡電圧ベクトルVcxybを用いて、以下の式(13)に基づき、不平衡コンデンサ電流ベクトルIcxyb(x軸成分icxbおよびy軸成分icyb)を推定する。
【0158】
【数13】
【0159】
コンデンサ不平衡電流推定器230は、推定した不平衡コンデンサ電流ベクトルIcxybを不平衡電流指令推定器231に出力する。
【0160】
不平衡電流指令推定器231は、不平衡補償電流指令ベクトルixybrの各成分と、コンデンサ不平衡電流推定器230から出力された不平衡コンデンサ電流ベクトルIcxybの各成分とを用いて、以下の式(14)に基づき、不平衡補償電流指令ベクトルI’xybrを生成する。不平衡電流指令推定器231は、生成した不平衡補償電流指令ベクトルI’xybr(x軸成分i’xbrおよびy軸成分i’ybr)を不平衡dq座標変換器221Aに出力する。
【0161】
【数14】
【0162】
不平衡dq座標変換器221Aは、不平衡電流指令推定器231から出力された不平衡補償電流指令ベクトルI’xybrを、電圧位相θで回転座標変換することでdq座標系のベクトルである不平衡dq座標電流指令ベクトルIdqbrを生成し、総和電流指令演算器222Aに出力する。
【0163】
総和電流指令演算器222Aは、式(15)で表されるように、入力される各dq座標の電流指令のq軸成分およびdq座標補償電流ベクトルIcdqのd軸成分を加算して、総和無効電流指令iqrとしてdq座標電流偏差演算器224に出力する。また、総和電流指令演算器92は、入力される各dq座標の電流指令のd軸成分の和からdq座標補償電流ベクトルのq軸成分を減算して、総和有効電流指令idrとしてdq座標電流偏差演算器224に出力する。
【0164】
【数15】
【0165】
このように、本実施形態に係る無効電力補償装置2の制御装置10Aによれば、電圧制御、不平衡補償制御、高調波抑制制御といった各種の制御をより高精度に実現することができる。
【0166】
(第3の実施形態)
図17は、本発明の第3の実施形態に係る無効電力補償装置2の制御装置10Bの構成の一例を示す図である。なお、図17において、図14と同様の構成には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0167】
図17に示す制御装置10Bは、図14に示す制御装置10Aと比較して、連系点電圧検出器11を削除した点と、電圧補正器24を追加した点とが異なる。
【0168】
電圧補正器24は、フィルタ電圧検出器8により検出されたフィルタ電圧Vcαβと、電圧大きさ制御器14の出力である無効電流指令iqfrをdq座標ベクトルとしたidqfr(d軸成分は0である)と、不平衡電圧制御器18の出力である不平衡補償電流指令ベクトルixybrと、高調波電圧制御器20の出力であるn次高調波補償電流指令ベクトルixynrとを用いて、変圧器6の低圧側漏れインダクタンスL1による電圧降下分および変圧比N分を補正するように、以下の式(16)に基づき、連系点電圧V’αβ(α軸成分v’αおよびβ軸成分v’β)を推定する。つまり、式16の第2項以降が高圧側から見た変圧器6の高圧側と低圧側の合成漏れインダクタンスL1による電圧降下分となる。
【0169】
【数16】
【0170】
電圧補正器24は、推定した連系点電圧V’αβを電圧大きさ検出器13、dq座標電圧変換器15、不平衡電圧検出器17および高調波電圧検出器19に出力する。
【0171】
本実施形態においては、連系点電圧検出器11を設けることなく、電圧制御、不平衡補償制御、高調波抑制制御といった各種の制御を実現することができる。
【0172】
本発明を図面および実施形態に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形または修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形または修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各ブロックなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数のブロックを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0173】
1 電力系統
2 無効電力補償装置
3 三相電力変換器
4 変換器側リアクトル
5 フィルタコンデンサ
6 変圧器
7 変換器電流検出器
8 フィルタ電圧検出器
10 制御装置
11 連系点電圧検出器
12 電流検出器
13 電圧大きさ検出器
14 電圧大きさ制御器
15 dq座標電圧変換器
16 位相調整器
17 不平衡電圧検出器
18 不平衡電圧制御器
19 高調波電圧検出器
20 高調波電圧制御器
21,21A 高調波電流制御器
22,22A dq座標電流制御器
23 dq座標電圧指令演算器
24 電圧補正器
141 電圧偏差演算器
142 電圧不感帯検出器
143 誤差演算器
144 電流不感帯検出器
145 フィルタ出力切替器
146 一次遅れフィルタ
147 減算器
148 誤差増幅器
181 不平衡補償電流指令生成器
182 不感帯付き不平衡電圧ベクトル生成器
183 不平衡電圧大きさ演算器
184 不平衡電圧不感帯検出器
185 不平衡補償電流指令生成器
201 n次高調波抑制電流指令生成器
202 不感帯付きn次高調波電圧ベクトル生成器
203 n次高調波電圧大きさ演算器
204 n次高調波電圧不感帯検出器
205 n次高調波抑制電流指令生成器
211 n次高調波電流検出器
212 n次高調波電流偏差演算器
213 xyn座標系積分器
214 n次高調波dq座標電圧変換器
215 n次高調波dq座標電流変換器
216 フィルタn次高調波電圧検出器
217 コンデンサn次高調波電圧推定器
218 n次高調波電流指令補正器
221,221A 不平衡dq座標変換器
222,222A 総和電流指令演算器
223 dq座標電流偏差演算器
224 dq座標変換器
225 無効電流制御器
226 有効電流制御器
227 フィルタdq座標電圧検出器
228 コンデンサdq座標電流推定器
229 フィルタ不平衡電圧検出器
230 コンデンサ不平衡電流推定器
231 不平衡電流指令推定器
301 ゲイン増幅器
302,302a,302b−1,302b−2,302c 一次遅れフィルタ
303,303a,303c 加算器
304,304a,304b,304c 出力切替器
305 乗算器
306 積分器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17