(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記燃料回収ラインには圧力調整弁が設けられており、この圧力調整弁は、当該圧力調整弁の上流側のLPGの圧力を前記エンジンの出口でのLPGの温度での飽和蒸気圧力または想定される最大温度における飽和蒸気圧力よりも高くなるように調整する、請求項1〜4の何れか一項に記載の船舶。
前記燃料タンクは、LPGが導入されるストレージタンクと、前記ストレージタンクからLPGが供給される、前記燃料供給ラインおよび前記燃料回収ラインにより前記エンジンと接続されたサービスタンクを含む、請求項1〜5の何れか一項に記載の船舶。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
LPGを燃料として用いる場合には、燃料タンクと推進用エンジンとを燃料供給ラインおよび燃料回収ラインにより接続し、燃料タンクとエンジンとの間でLPGを循環しながら必要量だけエンジンで使用することが考えられる。
【0006】
ところで、推進用エンジンの燃料としてLNGやLPGのような低沸点燃料を用いた場合には、燃料を使用しないときおよび緊急時にはエンジンルーム内の燃料用配管を不活性ガスでパージすることが一般的に必要である。しかしながら、上述したような燃料供給ラインおよび燃料回収ラインを用いた構成では、液体のLPGを、不活性ガスの供給によってエンジンルーム外へ追い出すことは困難である。
【0007】
そこで、本発明は、LPGが流れる燃料供給ラインおよび燃料回収ラインにおけるエンジンルーム内に存する部分を不活性ガスで容易にパージすることができる船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の船舶は、LPGを貯留する燃料タンクと、LPGを燃料とする、エンジンルーム内に配置された推進用エンジンと、前記燃料タンクから前記エンジンへLPGを供給する、前記エンジンルーム外に第1遮断弁が設けられた燃料供給ラインと、前記エンジンから前記燃料タンクへ未使用のLPGを回収する、前記エンジンルーム外に第2遮断弁が設けられた燃料回収ラインと、前記エンジンルームと前記第2遮断弁の間で前記燃料回収ラインに不活性ガスを供給する第1パージラインと、第3遮断弁が設けられた第2パージラインにより、前記エンジンルームと前記第1遮断弁との間で前記燃料供給ラインと接続されたパージタンクと、を備え、前記第2パージラインおよび前記パージタンクは、前記燃料供給ラインにおける前記エンジンルーム内に存する部分および前記燃料回収ラインにおける前記エンジンルーム内に存する部分よりも下方に配置されている、ことを特徴とする。
【0009】
上記の構成によれば、第2パージラインおよびパージタンクが燃料供給ラインおよび燃料回収ラインにおけるエンジンルーム内に存する部分よりも下方に配置されている。従って、燃料供給ラインおよび燃料回収ラインにおけるエンジンルーム内に存する部分を不活性ガスでパージする場合には、第1遮断弁および第2遮断弁を閉じて第3遮断弁を開くとともに、第1パージラインを通じて燃料回収ラインに不活性ガスを供給すれば、重力を利用してLPGを燃料供給ラインからパージタンク内へ追い出すことができる。よって、LPGが流れる燃料供給ラインおよび燃料回収ラインにおけるエンジンルーム内に存する部分を不活性ガスで容易にパージすることができる。
【0010】
前記燃料供給ラインにおける前記エンジンルーム内に存する部分は、前記エンジンに向かって上り勾配であり、前記燃料回収ラインにおける前記エンジンルーム内に存する部分は、前記エンジンに向かって下り勾配であってもよい。この構成によれば、燃料供給ラインおよび燃料回収ラインにおけるエンジンルーム内に存する部分を不活性ガスでさらに容易にパージすることができる。
【0011】
上記の船舶は、前記燃料タンクに供給されるLPGを0℃以上に加熱する加熱器をさらに備え、前記燃料タンクは、LPGを当該燃料タンク内の温度での飽和蒸気圧力以上の圧力で保持してもよい。この構成によれば、燃料タンクならびに燃料供給ラインおよび燃料回収ラインを構成する配管を、ニッケル基合金などの低温鋼材でなく一般的な鋼材で構成することができるので、コストを低減することができる。
【0012】
前記燃料回収ラインには、LPGを所定の温度まで冷却する冷却器が設けられていてもよい。この構成によれば、回収されたLPGが燃料タンク内でフラッシュ(急激に気化)することを抑制することができる。
【0013】
前記燃料回収ラインには圧力調整弁が設けられており、この圧力調整弁は、当該圧力調整弁の上流側のLPGの圧力を前記エンジンの出口でのLPGの温度での飽和蒸気圧力または想定される最大温度における飽和蒸気圧力よりも高くなるように調整してもよい。この構成によれば、燃料回収ラインにおいてLPGがフラッシュすることを防止することができる。
【0014】
前記燃料タンクは、LPGが導入されるストレージタンクと、前記ストレージタンクからLPGが供給される、前記燃料供給ラインおよび前記燃料回収ラインにより前記エンジンと接続されたサービスタンクを含んでもよい。この構成によれば、燃料タンクをLPG導入用のストレージタンクとLPG循環用のサービスタンクとに分けることができる。
【0015】
前記サービスタンクには、不活性ガスが導入されてもよい。この構成によれば、サービスタンクの保持圧力を飽和蒸気圧力よりも高くすることができ、LPGをエンジンへ供給するポンプの必要有効吸込ヘッド(NPSHr)の確保が容易になる。
【0016】
前記パージタンクは、第4遮断弁が設けられた返送ラインにより前記燃料タンクと接続されており、上記の船舶は、前記第1遮断弁、前記第2遮断弁、前記第3遮断弁および前記第4遮断弁を制御する制御装置をさらに備え、前記制御装置は、前記燃料供給ラインおよび前記燃料回収ラインを通じて前記燃料タンクと前記エンジンとの間でLPGを循環させるときは、前記第3遮断弁を閉じるとともに前記第1遮断弁および前記第2遮断弁を開き、前記燃料供給ラインにおける前記エンジンルーム内に存する部分および前記燃料回収ラインにおける前記エンジンルーム内に存する部分を不活性ガスでパージするパージ作業を行う際は、前記第1遮断弁、前記第2遮断弁および前記第4遮断弁を閉じるとともに前記第3遮断弁を開き、前記パージ作業が完了した後に前記第4遮断弁を開いてもよい。この構成によれば、パージ作業の完了後に、不活性ガスの圧力を利用して、パージタンクに溜まったLPGを返送ラインを通じて燃料タンクへ戻すことができる。
【0017】
例えば、上記の船舶は、前記パージタンクの圧力を検出する圧力
計をさらに備え、前記制御装置は、前記圧力計で検出される前記パージタンクの圧力が所定値以上となったときに、前記パージ作業が完了したと判定してもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、LPGが流れる燃料供給ラインおよび燃料回収ラインにおけるエンジンルーム内に存する部分を不活性ガスで容易にパージすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に、本発明の一実施形態に係る船舶1を示す。この船舶1は、LPGを燃料とする推進用エンジン12と、LPGを貯留する燃料タンク2を含む。LPGは、主成分がプロパンであってもよいし(プロパンガス)、ブタンであってもよい(ブタンガス)。
【0021】
船舶1には、エンジンルーム11と、比較的に狭い第1機器ルーム14と、比較的に広い第2機器ルーム15が形成されている。推進用エンジン12は、エンジンルーム11内に配置されている。また、エンジンルーム11内には、LPGが気化したPGを燃焼させるボイラ13も配置されている。例えば、推進用エンジン12は、ディーゼルサイクルまたはオットーサイクルのレシプロエンジンである。なお、第2機器ルーム15は、必ずしも密閉空間である必要はなく、開放空間(オープンスペース)であってもよい。
【0022】
本実施形態では、燃料タンク2が、全てのルーム11,14,15の外に配置された比較的に大きな容積のストレージタンク21と、第2機器ルーム15内に配置された比較的に小さな容積のサービスタンク22とで構成されている。ストレージタンク21とサービスタンク22とは、中継ライン26によって互いに接続されている。
【0023】
ストレージタンク21内には、LPG供給源から燃料導入ライン23を通じてLPGが導入される。LPG供給源は、船舶1に搭載されるカーゴタンクであってもよいし、陸上のLPG供給設備またはLPG燃料供給船であってもよい。
【0024】
本実施形態では、ストレージタンク21に温度を調整する装置が設けられておらず、ストレージタンク21の温度は大気温度に追従して変化する。一方、LPG供給源から導入されるLPGは、約−42℃であることが多い。従って、燃料導入ライン23には、LPGを0℃以上に加熱する加熱器24が設けられている。そして、ストレージタンク21は、LPGを当該ストレージタンク21内の温度での飽和蒸気圧力以上の圧力で保持する。ただし、LPG供給源である陸上のLPG供給設備やLPG燃料供給船に加熱器が装備されており、船舶1に受け渡されるLPGの温度が0℃以上であれば、加熱器24は不要である。
【0025】
なお、ストレージタンク21の保持圧力とは、ストレージタンク21内の気相の圧力をいう(後述するサービスタンク22の保持圧力も同様)。もしストレージタンク21内にPG以外の気体が混在しない場合には、ストレージタンク21の保持圧力はLPGの飽和蒸気圧力と等しくなる。
【0026】
例えば、ストレージタンク21内の温度が25℃である場合は、ストレージタンク21の保持圧力(飽和蒸気圧力)は絶対圧で約1.0MPaである。以下、圧力の表示は特記する場合を除いて絶対圧である。なお、LPGの飽和蒸気圧力は、50℃で約1.8MPaであるので、ストレージタンク21は例えば1.9MPaまで耐えられるように構成される。
【0027】
ストレージタンク21の内部にはポンプ25が設置されている。ポンプ25の数は1つであっても複数であってもよい。上述した中継ライン26の上流端は、ポンプ25につながっている。また、中継ライン26の下流端は、サービスタンク22内で開口している。そして、ポンプ25により、中継ライン26を通じてストレージタンク21からサービスタンク22へLPGが供給される。ただし、ポンプ25はストレージタンク21の外で中継ライン26の途中に設けられてもよい。
【0028】
ストレージタンク21と同様に、サービスタンク22には温度を調整する装置が設けられておらず、サービスタンク22の温度は大気温度に追従して変化する。サービスタンク22は、LPGを当該サービスタンク22内の温度での飽和蒸気圧力以上の圧力で保持する。
【0029】
本実施形態では、サービスタンク22が、不活性ガス導入ライン54により図略の不活性ガス供給源と接続されている。不活性ガス供給源は、例えばエンジンルーム11内に配置される。そして、サービスタンク22内に不活性ガス導入ライン54を通じて不活性ガス(例えば、窒素)が導入された場合、サービスタンク22の保持圧力は飽和蒸気圧力よりも高くなる。ただし、サービスタンク22内に不活性ガスが存在しない場合は、サービスタンク22の保持圧力はLPGの飽和蒸気圧力と等しくなる。
【0030】
後述するようなエンジン12とサービスタンク22との間でのLPGの循環時は、サービスタンク22の温度は大気温度よりも高くてもよい。例えば、サービスタンク22内の温度が40℃である場合は、サービスタンク22の保持圧力(飽和蒸気圧力)は約1.45MPaである。なお、サービスタンク22は例えば2.0MPaまで耐えられるように構成される。
【0031】
不活性ガス導入ライン54には、上流側から順に、遮断弁55および圧力調整弁56が設けられている。例えば、上述した不活性ガス供給源の圧力は3.0MPaである。遮断弁55および圧力調整弁56は、制御装置8により制御される。ただし、
図1では、図面の簡略化のために一部の信号線のみを描いている。制御装置8は、例えば、ROMやRAMなどのメモリとCPUを有するコンピュータであり、ROMに記憶されたプログラムがCPUにより実行される。
【0032】
制御装置8は、サービスタンク22内の気相の圧力(保持圧力)を検出する圧力計91と電気的に接続されている。そして、制御装置8は、圧力計91で検出される圧力が許容範囲の下限を下回らないように、遮断弁55および圧力調整弁56を制御する。
【0033】
さらに、サービスタンク22は、燃焼ライン73により上述したボイラ13と接続されている。燃焼ライン73の上流端は、サービスタンク22の上部につながっている。燃焼ライン73には、上流側から順に、圧力調整弁74および加熱器75が設けられている。加熱器75は、気化したPGと不活性ガスの混合ガスをボイラ13での燃焼に適した温度まで加熱する。
【0034】
圧力調整弁74は、制御装置8により制御される。制御装置8は、圧力計91で検出される圧力が許容範囲の上限を上回らないように、圧力調整弁74を制御する。なお、図示は省略するが、燃焼ライン73には、ボイラ13へ供給される混合ガスを1.0MPa以下に減圧する圧力調整弁も設けられる。
【0035】
また、サービスタンク22は、燃料供給ライン31および燃料回収ライン41により推進用エンジン12と接続されている。つまり、燃料供給ライン31を通じてサービスタンク22からエンジン12へLPGが供給され、燃料回収ライン41を通じてエンジン12からサービスタンク22へ未使用のLPGが回収される。換言すれば、サービスタンク22とエンジン12との間で、燃料供給ライン31および燃料回収ライン41を通じてLPGが循環する。
【0036】
燃料供給ライン31の上流端は、サービスタンク22の下部につながっている。一方、燃料供給ライン31におけるエンジンルーム11内に存する部分(以下、エンジンルーム内延在部という)31aは、エンジン12に向かって上り勾配となっている。
【0037】
燃料供給ライン31には、上流側から順に、ポンプ32、加熱器33および遮断弁34(本発明の第1遮断弁に相当)が設けられている。これらの機器32〜34は、エンジンルーム11の外に配置されている。より詳しくは、ポンプ32および加熱器33は第2機器ルーム15内に配置され、遮断弁34は第1機器ルーム14内に配置されている。加熱器33は、LPGをエンジン12の要求温度(例えば、45℃)まで加熱する。
【0038】
遮断弁34は、制御装置8により制御される。遮断弁34の制御については、後述にて詳細に説明する。
【0039】
燃料回収ライン41の下流端は、サービスタンク22内で開口している。一方、燃料回収ライン41におけるエンジンルーム11内に存する部分(以下、エンジンルーム内延在部という)41aは、エンジン12に向かって下り勾配となっている。
【0040】
燃料回収ライン41には、上流側から順に、第1圧力調整弁42、遮断弁43(本発明の第2遮断弁に相当)、冷却器44および第2圧力調整弁45(本発明の圧力調整弁に相当)が設けられている。これらの機器42〜45は、エンジンルーム11の外に配置されている。より詳しくは、第1圧力調整弁42および遮断弁43は第1機器ルーム14内に配置され、冷却器44および第2圧力調整弁45は第2機器ルーム15内に配置されている。冷却器44は、LPGを所定の温度(例えば、40℃)まで冷却する。
【0041】
第1圧力調整弁42、遮断弁43および第2圧力調整弁45は、制御装置8により制御される。なお、遮断弁43の制御については、後述にて詳細に説明する。制御装置8は、エンジン12の入口でのLPGの圧力を検出する圧力計92、および第2圧力調整弁45の上流側のLPGの圧力を検出する圧力計93と電気的に接続されている。本実施形態では、圧力計93が冷却器44の下流側に位置しているが、圧力計93は冷却器44の上流側に位置してもよい。
【0042】
第1圧力調整弁42に関しては、制御装置8は、圧力計92で検出される圧力がエンジン12の要求圧力となるように第1圧力調整弁42を制御する。一方、第2圧力調整弁45に関しては、LPGの温度はLPGがエンジン12を通過することによって少し高くなる(例えば、55℃)。従って、第2圧力調整弁45の制御用の設定値として、想定される最大温度における飽和蒸気圧力となるような設定値を決定し(例えば、2.0MPa)、制御装置8は、圧力計93で検出される圧力がその設定値よりも高くなるように第2圧力調整弁45を制御する。
【0043】
あるいは、制御装置8は、エンジン12の出口でのLPGの温度を検出する温度計81と電気的に接続されており、圧力計93で検出される圧力が、温度計81で検出される温度での飽和蒸気圧力よりも高くなるように第2圧力調整弁45を制御してもよい。
【0044】
なお、本実施形態では、燃料供給ライン31における加熱器33と第1遮断弁34の間の部分が、バイパスライン16により燃料回収ライン41における遮断弁43と冷却器44の間の部分と接続されている。バイパスライン16には、流量制御弁17が設けられている。流量制御弁17は、エンジン12を通過するLPGが所定の流量となるように制御装置8により制御される。
【0045】
さらに、船舶1には、燃料供給ライン31のエンジンルーム内延在部31aおよび燃料回収ライン41のエンジンルーム内延在部41aを不活性ガスでパージするための構成として、第1パージライン51、第2パージライン61およびパージタンク6が設けられている。
【0046】
第1パージライン51は、燃料回収ライン41におけるエンジンルーム11と第1圧力調整弁42の間の部分を上述した図略の不活性ガス供給源と接続する。つまり、第1パージライン51を通じて、エンジンルーム11と第1圧力調整弁42の間で燃料回収ライン41に不活性ガスが供給される。第1パージライン51には、上流側から順に、遮断弁52および流量制御装置が設けられている。流量制御装置は、本実施形態では流量制御弁53であるが、オリフィスなどであってもよい。
【0047】
第2パージライン61は、燃料供給ライン31における遮断弁34とエンジンルーム11の間の部分をパージタンク6と接続する。第2パージライン61の下流端は、パージタンク6内で開口している。第2パージライン61には、遮断弁62(本発明の第3遮断弁に相当)が設けられている。
【0048】
第2パージライン61およびパージタンク6は、第1機器ルーム14内で、燃料供給ライン31のエンジンルーム内延在部31aおよび燃料回収ライン41のエンジンルーム内延在部41aよりも下方に配置されている。
【0049】
さらに、パージタンク6は、返送ライン63によりサービスタンク22と接続されているとともに、燃焼ライン71により上述したボイラ13と接続されている。返送ライン63は、液体のLPGをサービスタンク22へ戻すためのものであり、燃焼ライン71は、気化したPGと不活性ガスの混合ガスをボイラ13へ導くためのものである。
【0050】
返送ライン63の上流端は、パージタンク6内で開口しており、返送ライン63の下流端は、サービスタンク22内で開口している。返送ライン63には、遮断弁64(本発明の第4遮断弁に相当)が設けられている。
【0051】
燃焼ライン71の上流端は、パージタンク6の上部につながっている。燃焼ライン71には、遮断弁72が設けられている。なお、図示は省略するが、燃焼ライン71には、ボイラ13へ供給される混合ガスを1.0MPa以下に減圧する圧力調整弁も設けられる。
【0052】
上述した遮断弁52,62,64,72および流量制御弁53は、制御装置8により制御される。以下、これらの弁の制御を、燃料供給ライン31の遮断弁34および燃料回収ライン41の遮断弁43の制御を含めて説明する。
【0053】
燃料供給ライン31および燃料回収ライン41を通じてサービスタンク22とエンジン12との間でLPGを循環させるときは、制御装置8は、第1パージライン51の遮断弁52と、第2パージライン61の遮断弁62と、返送ライン63の遮断弁64と、燃焼ライン71の遮断弁72を閉じるとともに、燃料供給ライン31の遮断弁34と、燃料回収ライン41の遮断弁43を開く。これにより、燃料供給ライン31および燃料回収ライン41を通じてLPGが循環する。
【0054】
一方、燃料供給ライン31のエンジンルーム内延在部31aおよび燃料回収ライン41のエンジンルーム内延在部41aを不活性ガスでパージするパージ作業を行う際は、制御装置8は、燃料供給ライン31の第1遮断弁34と、燃料回収ライン41の遮断弁43を閉じるとともに、第1パージライン51の遮断弁52と、第2パージライン61の遮断弁62を開く。このとき、返送ライン63の遮断弁64および燃焼ライン71の遮断弁72は閉じたままである。
【0055】
これにより、不活性ガスが燃料回収ライン41に供給されながら、燃料回収ライン41のエンジンルーム内延在部41aを含む上流側部分および燃料供給ライン31のエンジンルーム内延在部31aを含む下流側部分内に存在するLPGがパージタンク6内に追い出される。これに伴い、パージタンク6の圧力が徐々に上昇する。このとき、制御装置8は、流量制御弁53を制御して不活性ガスの流量を調整する。
【0056】
パージタンク6の圧力は、燃料回収ライン41のエンジンルーム内延在部41aおよび燃料供給ライン31のエンジンルーム内延在部31aの不活性ガスの通過量に依存する。
【0057】
そこで、制御装置8は、圧力計94で検出される圧力が、不活性ガスを流すべき量に対応する所定値(パージ完了圧力:例えば、1.9MPa)以上となったときに、パージ作業が完了したと判定する。また、パージタンク6からサービスタンク22にLPGを返送するために必要な圧力(LPG返送必要圧力:例えば、ゲージ圧で2.0MPa)がパージ完了圧力よりも高い場合は、制御装置8は、さらに継続してパージタンク6が加圧されるように、第1パージライン51の遮断弁52および第2パージライン61の遮断弁62を開いたままとする。そして、パージタンク6の圧力がLPG返送必要圧力以上となったときに、制御装置8は、第1パージライン51の遮断弁52および第2パージライン61の遮断弁62を閉じ、その後に返送ライン63の遮断弁64を開く。これにより、パージ作業の完了後に、不活性ガスの圧力を利用して、パージタンク6に溜まったLPGを返送ライン63を通じてサービスタンク22へ戻すことができる。
【0058】
LPGのサービスタンク22への返送が完了すると、制御装置8は、返送ライン63の遮断弁64を閉じるとともに、燃焼ライン71の遮断弁72を開き、パージタンク6内に残存するPGと不活性ガスの混合ガスをボイラ13へ供給する。
【0059】
以上説明したように、本実施形態の船舶1では、第2パージライン61およびパージタンク6が燃料供給ライン31のエンジンルーム内延在部31aおよび燃料回収ライン41におけるエンジンルーム内延在部41aよりも下方に配置されている。従って、燃料回収ライン41のエンジンルーム内延在部41aおよび燃料供給ライン31のエンジンルーム内延在部31aを不活性ガスでパージする場合には、重力を利用してLPGを燃料供給ライン31からパージタンク6内へ追い出すことができる。よって、燃料回収ライン41のエンジンルーム内延在部41aおよび燃料供給ライン31のエンジンルーム内延在部31aを不活性ガスで容易にパージすることができる。
【0060】
また、本実施形態では、ストレージタンク21内に導入されるLPGが加熱器24により0℃以上に加熱されるので、ストレージタンク21およびサービスタンク22ならびに燃料供給ライン31および燃料回収ライン41を構成する配管を、ニッケル基合金などの低温鋼材でなく一般的な鋼材で構成することができる。従って、コストを低減することができる。
【0061】
さらに、本実施形態では、燃料回収ライン41に冷却器44が設けられているので、回収されたLPGがサービスタンク22内でフラッシュ(急激に気化)することを抑制することができる。
【0062】
また、本実施形態では、燃料回収ライン41の第2圧力調整弁45によって当該第2圧力調整弁45の上流側のLPGの圧力が想定される最大温度における飽和蒸気圧力よりも高くなるように調整されるので、燃料回収ライン41において(本実施形態では、LPGが冷却器44で冷却される前に)LPGがフラッシュすることを防止することができる。
【0063】
(変形例)
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0064】
例えば、返送ライン63に逆止弁が設けられていれば、サービスタンク22とエンジン12との間でLPGを循環させるときに、遮断弁64が閉じられなくてもよい。
【0065】
また、前記実施形態では、燃料タンク2がストレージタンク21とサービスタンク22で構成されていたが、ストレージタンク21が省略され、燃料タンク2がサービスタンク22のみで構成されてもよい。しかし、前記実施形態のような構成であれば、燃料タンク2をLPG導入用のストレージタンク21とLPG循環用のサービスタンク22とに分けることができる。
【0066】
また、燃料供給ライン31のエンジンルーム内延在部31aは、必ずしもエンジン12に向かって上り勾配である必要はなく、水平面上で配索されてもよい。同様に、燃料回収ライン41のエンジンルーム内延在部41aは、必ずしもエンジン12に向かって下り勾配である必要はなく、水平面上で配索されてもよい。しかし、前記実施形態のような構成であれば、燃料回収ライン41におけるエンジンルーム内延在部41aおよび燃料供給ライン31のエンジンルーム内延在部31aを不活性ガスでさらに容易にパージすることができる。
【0067】
また、サービスタンク22には、必ずしも不活性ガスが導入される必要はなく、サービスタンク22の保持圧力がLPGの飽和蒸気圧力と等しくてもよい。しかし、前記実施形態のような構成であれば、サービスタンク22の保持圧力を飽和蒸気圧力よりも高くすることができ、LPGをエンジン12へ供給するポンプ32の必要有効吸込ヘッド(NPSHr)の確保が容易になる。
【0068】
また、燃焼ライン71の遮断弁72を省略し、パージタンク6からサービスタンク22へのLPGの返送が完了するまでは燃焼ライン71の図略の圧力調整弁が全閉とされてもよい。
【0069】
また、返送ライン63を省略し、パージ作業完了後に、パージタンク6に溜まったLPGの全量を気化させながら燃焼ライン71を通じてボイラ13へ供給してもよい。