(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記正孔注入層が、トリスブロモフェニルアミンヘキサクロルアンチモン、テトラシアノキノンジメタン、2,3,5,6−テトラフルオロ−テトラシアノ−1,4−ベンゾキノンジメタンおよびラジアレン誘導体から成る群より選ばれる少なくとも1種の電子アクセプターを含有する、請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の有機EL素子は、基板上に少なくとも、陽極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層および陰極がこの順に設けられた基本構造を有している。
【0028】
このような基本構造を有している限り、本発明の有機EL素子の層構造は、種々の態様を採ることができる。例えば、正孔輸送層と発光層の間に電子阻止層を設けること、発光層と電子輸送層の間に正孔阻止層を設けること、電子輸送層と陰極の間に電子注入層を設けることが可能である。更に、有機層を何層か省略あるいは兼ねることが可能である。例えば、正孔注入層と正孔輸送層を兼ねた構成とすること、電子注入層と電子輸送層を兼ねた構成とすることなどが可能である。また、同一の機能を有する有機層を2層以上積層した構成とすることが可能であり、正孔輸送層を2層積層した構成、発光層を2層積層した構成、電子輸送層を2層積層した構成なども可能である。正孔輸送層を、第一正孔輸送層と第二正孔輸送層からなる二層構成とすることは好ましい。
図1には、後述する実施例で採用された層構成が示されており、即ち、ガラス基板1上に透明陽極2、正孔注入層3、正孔輸送層4、発光層5、電子輸送層6、電子注入層7および陰極8がこの順に形成された層構成が示されている。
【0029】
各層の詳細な説明は後述するが、本発明では、正孔注入層が、下記一般式(1)で表されるアリールアミン化合物Iおよび電子アクセプターを含有する点に重要な特徴を有する。以下、アリールアミン化合物Iと電子アクセプターについて説明する。
【0030】
尚、アリールアミン化合物Iや電子アクセプターは、正孔注入層以外の層にも使用する場合があるが、このとき、かかる層の組成と正孔注入層の組成とは違っている。
【0031】
<アリールアミン化合物I>
正孔注入層に含有されているアリールアミン化合物Iは、下記一般式(1)で表される構造を有する。アリールアミン化合物Iは、2つのジアリールアミンベンゼン環を有しており、これらのベンゼン環に少なくとも一つアリール基(Ar
5)が結合している点に、構造上の特徴を有する。
【化6】
【0032】
(Ar
1〜Ar
5)
Ar
1〜Ar
5は、同一でも異なってもよく、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基を表す。
【0033】
本願明細書において、縮合多環芳香族基は、その骨格にヘテロ原子(例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子など)を有していない。
【0034】
Ar
3とAr
4は、独立して存在して環を形成していなくてもよいが、単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子又は硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。例えば、
図2の化合物1−9では、Ar
3とAr
4(いずれもフェニル基)が単結合を介して結合して環を形成している。
【0035】
Ar
3またはAr
4は、Ar
3Ar
4N−基が結合しているベンゼン環と、単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。例えば、
図1の化合物1−8では、Ar
3またはAr
4(いずれもフェニル基)が、Ar
3Ar
4N−基が結合しているベンゼン環と単結合を介して結合して環を形成している。
【0036】
Ar
1〜Ar
5で表される芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基としては、具体的に、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、フリル基、ピロリル基、チエニル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、ナフチリジニル基、フェナントロリニル基、アクリジニル基、カルボリニル基、ピリドベンゾフラニル基などを挙げることができる。
【0037】
Ar
1〜Ar
5で表される芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基は、無置換でもよいが、置換基を有していてもよい。置換基としては、重水素原子、シアノ基、ニトロ基およびトリメチルシリル基の他に、例えば以下の基を挙げることができる。
ハロゲン原子、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子
;
炭素原子数1〜6のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プ
ロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−
ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘ
キシル基;
炭素原子数1〜6のアルキルオキシ基、例えばメチルオキシ基、エチ
ルオキシ基、プロピルオキシ基;
アルケニル基、例えばビニル基、アリル基;
アリールオキシ基、例えばフェニルオキシ基、トリルオキシ基;
アリールアルキルオキシ基、例えばベンジルオキシ基、フェネチルオ
キシ基;
芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基、例えばフェニル基、ビ
フェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フ
ェナントレニル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリ
レニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、アセナフテニル
基;
芳香族複素環基、例えばピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル
基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、キノリル基、イソキノリル基
、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル
基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、
ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾ
チエニル基、カルボリニル基;
アリールビニル基、例えばスチリル基、ナフチルビニル基;
アシル基、例えばアセチル基、ベンゾイル基;
これらの置換基は、さらに前記例示した置換基で置換されていても良い。また、これらの置換基同士は、独立して存在して環を形成していなくてもよいが、単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成していてもよい。炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のアルキルオキシ基およびアルケニル基は、直鎖状でも分岐状でもよい。
【0038】
(Ar
6〜Ar
8)
Ar
6〜Ar
8は、同一でも異なってもよく、水素原子、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基を表す。
【0039】
Ar
6〜Ar
8で表される芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基としては、Ar
1〜Ar
5で表される芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基として例示した基を挙げることができる。
【0040】
Ar
6〜Ar
8で表されるこれらの基は、無置換でもよいが、置換基を有していてよい。置換基としては、Ar
1〜Ar
5で表される芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基の説明で例示した置換基を挙げることができる。置換基がとりうる態様も同じである。
【0041】
(n1)
n1は、0、1または2の整数を表す。n1が0の時、2つのジアリールアミノベンゼン環は直接(単結合で)結合している。n1が1の時、2つのジアリールアミノベンゼン環は1個のフェニレン基を介して結合している。n1が2の時、2つのジアリールアミノベンゼン環は2個のフェニレン基(ビフェニレン基)を介して結合している。
【0042】
(好適な態様)
以下、アリールアミン化合物Iの好適な態様を説明するが、かかる説明において、置換/無置換の指定がない基は、置換基を有していてもよく無置換でもよい。
【0043】
アリールアミン化合物Iにおいては、下記一般式(1a)で表されるように、フェニレン基が、Ar
3Ar
4N−基が結合しているベンゼン環において、Ar
7とAr
8の間に結合することが好ましい。
【化7】
【0044】
Ar
1〜Ar
4は、同一でも異なってもよく、芳香族炭化水素基であることが好ましく、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、フルオランテニル基またはフルオレニル基であることがより好ましい。
【0045】
Ar
5としては、芳香族炭化水素基が好ましく、フェニル基、ビフェニリル基またはナフチル基がより好ましい。
【0046】
Ar
6〜Ar
8は、同一でも異なってもよく、水素原子または芳香族炭化水素基であることが好ましく、水素原子またはフェニル基であることがより好ましい。
【0047】
Ar
1〜Ar
8で表される芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基が有してもよい置換基としては、重水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数2〜6のアルケニル基、芳香族炭化水素基または縮合多環芳香族基が好ましく、重水素原子、メチル基、フェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基またはビニル基がより好ましい。また、これらの置換基同士が単結合を介して互いに結合して縮合芳香環を形成する態様も好ましい。
【0048】
n1としては、仕事関数の観点から、0であることが好ましい。
【0049】
Ar
3またはAr
4が、Ar
3Ar
4N−基(Ar
3、Ar
4とそれらが結合する窒素原子からなるジアリールアミノ基)が結合しているベンゼン環と、単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して結合して環を形成する態様も好ましい。この場合のベンゼン環における結合位置は、Ar
3Ar
4N−基の隣が好ましい。
【0050】
アリールアミン化合物Iの好適な具体例を
図1〜7に示すが、アリールアミン化合物Iはこれらの具体例に限定されるものではない。具体例のうち一般式(1a)に該当するのは、1−1〜1−17、1−19〜1−38および1−41〜1−44である。尚、1−40は欠番である。
【0051】
アリールアミン化合物Iは、公知の方法により合成することができ、例えば鈴木カップリング、ブッフバルド・ハートウィッグ反応、ゴールドバーグ・アミノ化反応等のクロスカップリングにより合成することができる。
【0052】
アリールアミン化合物Iの精製は、カラムクロマトグラフによる精製、シリカゲル、活性炭、活性白土等による吸着精製、溶媒による再結晶や晶析法、昇華精製法などによって行うことができる。最終的には、昇華精製法による精製を行ってもよい。化合物の同定は、NMR分析によって行うことができる。物性値として、融点、ガラス転移点(Tg)および仕事関数の測定を行うことができる。
【0053】
融点は蒸着性の指標となる。融点は、粉体試料と高感度示走査熱量計(ブルカー・エイエックスエス製、DSC3100SA)を用いて測定することができる。
【0054】
ガラス転移点(Tg)は薄膜状態の安定性の指標となる。ガラス転移点(Tg)は、粉体試料と高感度示走査熱量計(ブルカー・エイエックスエス製、DSC3100SA)を用いて測定することができる。
【0055】
仕事関数は正孔輸送性や正孔阻止性の指標となる。仕事関数は、ITO基板の上に100nmの薄膜を作製して、イオン化ポテンシャル測定装置(住友重機械工業株式会社製、PYS−202)を用いて求めることができる。
【0056】
アリールアミン化合物I以外の本発明の有機EL素子に用いられる化合物(例えば後述するラジアレン誘導体II、アミン誘導体III、ピリミジン誘導体IVなど)についても、合成後、同様の方法により精製および各種測定をすることができる。
【0057】
<電子アクセプター>
正孔注入層3において前記アリールアミン化合物Iにドープさせる電子アクセプターとしては、トリスブロモフェニルアミンヘキサクロルアンチモン、テトラシアノキノンジメタン(TCNQ)、2,3,5,6−テトラフルオロ−テトラシアノ−1,4−ベンゾキノンジメタン(F4TCNQ)、ラジアレン誘導体(例えば、特開2011−100621号公報参照)などを挙げることができ、下記一般式(2)で表されるラジアレン誘導体IIが好ましく用いられる。
【化8】
【0058】
(Ar
9〜Ar
11)
Ar
9〜Ar
11は、同一でも異なってもよく、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基であって、電子受容体基を置換基として有する基を表す。
【0059】
Ar
9〜Ar
11に関し、電子受容体基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、シアノ基、トリフルオロメチル基、ニトロ基などを挙げることができる。
【0060】
Ar
9〜Ar
11に関し、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基としては、前記一般式(1)中のAr
1〜Ar
5で表される芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基として例示した基を挙げることができる。
【0061】
Ar
9〜Ar
11で表されるこれらの基は、電子受容体基以外にも置換基を有していてよい。置換基としては、重水素原子の他に、例えば以下の基を挙げることができる。
芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基、例えばフェニル基、ビ
フェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フ
ェナントレニル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリ
レニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基;
芳香族複素環基、例えばピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル
基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、キノリル基、イソキノリル基
、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル
基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、
ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾ
チエニル基、カルボリニル基;
これらの置換基は、さらに前記例示した置換基もしくは電子受容体基で置換されていても良い。また、これらの置換基同士は、独立して存在し、環を形成していなくてもよいが、単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成していてもよい。
【0062】
(好適な態様)
以下、ラジアレン誘導体IIの好適な態様を説明するが、かかる説明において、置換/無置換の指定がない基は、置換基を有していてもよく無置換でもよい。
【0063】
Ar
9〜Ar
11に関し、電子受容体基としては、フッ素原子、塩素原子、シアノ基またはトリフルオロメチル基が好ましい。
Ar
9〜Ar
11に関し、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基としては、芳香族炭化水素基、縮合多環芳香族基またはピリジル基が好ましく、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、フェナントレニル基、フルオレニル基またはピリジル基がより好ましい。
Ar
9〜Ar
11については、少なくとも一基が、好ましくは全ての基が受容体基を置換基として有する態様が好ましい。
Ar
9〜Ar
11としては、同一でも異なってもよく、フッ素原子、塩素原子、シアノ基またはトリフルオロメチル基で完全に置換されたフェニル基またはピリジル基が好ましく、テトラフルオロピリジル基、テトラフルオロ−(トリフルオロメチル)フェニル基、シアノ−テトラフルオロフェニル基、ジクロロ−ジフルオロ−(トリフルオロメチル)フェニル基またはペンタフルオロフェニル基がより好ましい。
【0064】
本発明の有機EL素子では、正孔注入層が上記アリールアミン化合物Iと電子アクセプターを有する限り、各層は種々の態様を採ることができる。以下、
図1を参照して、各層について詳細に説明する。
【0065】
<陽極2>
本発明の有機EL素子では、基板1の上に陽極2が設けられている。陽極2としては、ITOや金のような仕事関数の大きな電極材料が用いられる。
【0066】
<正孔注入層3>
陽極2と正孔輸送層4の間には、正孔注入層3が設けられている。正孔注入層3では、アリールアミン化合物Iに対し、電子アクセプターがPドーピングされている。アリールアミン化合物Iと電子アクセプターの他、正孔注入・輸送性の公知の材料を混合もしくは同時に使用してもよい。
【0067】
公知の材料としては、例えば、スターバースト型のトリフェニルアミン誘導体、種々のトリフェニルアミン4量体などの材料;銅フタロシアニンに代表されるポルフィリン化合物;ヘキサシアノアザトリフェニレンのようなアクセプター性の複素環化合物;塗布型の高分子材料;などを用いることができる。
【0068】
これらの材料を用いて蒸着法、スピンコート法、インクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うと、正孔注入層3を得ることができる。以下に述べる各層も同様に、蒸着法、スピンコート法、インクジェット法などの公知の方法により薄膜形成を行うことで得ることができる。
【0069】
<正孔輸送層4>
正孔注入層3の上には、正孔輸送層4が設けられている。正孔輸送層4には、前記一般式(1)で表されるアリールアミン化合物Iのほか、以下に例示される公知の材料を含有させることができる。
ベンジジン誘導体、例えば
N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(m−トリル)ベンジジン(
TPD)、
N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(α−ナフチル)ベンジジン
(NPD)、
N,N,N’,N’−テトラビフェニリルベンジジン;
分子中にトリフェニルアミン構造を2個有し、かかるトリフェニルア
ミン構造が単結合またはヘテロ原子を含まない2価基で連結しているア
リールアミン化合物、例えば
1,1−ビス[4−(ジ−4−トリルアミノ)フェニル]シクロヘ
キサン(TAPC);
分子中にトリフェニルアミン構造を4個有し、かかるトリフェニルア
ミン構造が単結合またはヘテロ原子を含まない2価基で連結しているア
リールアミン化合物;
種々のトリフェニルアミン3量体;
【0070】
また、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)/ポリ(スチレンスルフォネート)(PSS)などの塗布型の高分子材料を用い、正孔注入層3兼正孔輸送層4を形成することができる。
【0071】
正孔輸送層4には、正孔輸送性のアリールアミン化合物が好適に用いられ、前記アリールアミン化合物Iがより好適に用いられ、電子アクセプターでPドーピングされていないアリールアミン化合物Iが特に好適に用いられる。即ち、電子アクセプターを正孔注入層で選択的に使用することが特に好ましいのである。
【0072】
これらの材料は、単独で成膜に供しても良いが、他の材料とともに混合して成膜に供してもよい。以下に述べる各有機層でも、同様に成膜することができる。
【0073】
正孔輸送層4は、単独で成膜した層同士を積層した構造、混合して成膜した層同士を積層した構造または単独で成膜した層と混合して成膜した層を積層した構造を有してよい。以下に述べる各有機層も同様の構造とすることができる。
【0074】
<電子阻止層>
正孔輸送層4と発光層5の間には、電子阻止層(図示せず)を設けることができる。電子阻止層には、前記アリールアミン化合物Iが好ましく用いられる他、以下に例示される公知の電子阻止作用を有する化合物を用いることができる。
分子中にトリフェニルアミン構造を4個有し、かかるトリフェニルア
ミン構造が単結合またはヘテロ原子を含まない2価基で連結しているア
リールアミン化合物;
分子中にトリフェニルアミン構造を2個有し、かかるトリフェニルア
ミン構造が単結合またはヘテロ原子を含まない2価基で連結しているア
リールアミン化合物;
カルバゾール誘導体、例えば
4,4’,4’’−トリ(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン
(TCTA)、
9,9−ビス[4−(カルバゾール−9−イル)フェニル]フルオ
レン、
1,3−ビス(カルバゾール−9−イル)ベンゼン(mCP)、
2,2−ビス(4−カルバゾール−9−イルフェニル)アダマンタ
ン(Ad−Cz);
トリフェニルシリル基を有するトリアリールアミン化合物、例えば
9−[4−(カルバゾール−9−イル)フェニル]−9−[4−(
トリフェニルシリル)フェニル]−9H−フルオレン;
【0075】
発光層5に隣接する層(例えば正孔輸送層4、電子阻止層)において、電子アクセプターをPドーピングしないことが好ましい。
これらの層には、電子阻止性の高いアリールアミン化合物が好適に用いられ、前記アリールアミン化合物Iがより好適に用いられる。
また、これらの層の膜厚は、一般的な範囲であれば特に限定するものではなく、例えば、正孔輸送層4の膜厚は20〜100nmであり、電子阻止層の膜厚は5〜30nmである。
【0076】
<発光層5>
発光層5には、下記一般式(3)で表されるアミン誘導体IIIや公知のピレン誘導体が用いられる。また、公知の発光材料を使用してもよい。公知の発光材料としては、Alq
3をはじめとするキノリノール誘導体の金属錯体などの各種の金属錯体;アントラセン誘導体;ビススチリルベンゼン誘導体;オキサゾール誘導体;ポリパラフェニレンビニレン誘導体;などがある。
【0077】
発光層5は、ホスト材料とドーパント材料とで構成することが好ましい。
ホスト材料としては、ドーパント材料との組み合わせにもよるが、前記発光材料に加え、チアゾール誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ポリジアルキルフルオレン誘導体などを用いることができ、アントラセン誘導体を用いることが好ましい。
ドーパント材料としては、アミン誘導体III;ピレン誘導体;キナクリドン、クマリン、ルブレン、ペリレン、およびそれらの誘導体;ベンゾピラン誘導体;インデノフェナントレン誘導体;ローダミン誘導体;アミノスチリル誘導体;などを用いることができる。
発光層では、青色発光性ドーパントを用いることが好ましい。青色発光性ドーパントとしては、アミン誘導体IIIまたはピレン誘導体が好ましく、アミン誘導体IIIがより好ましい。
アミン誘導体III;
【化9】
【0078】
(A
1)
A
1は、芳香族炭化水素の2価基、芳香族複素環の2価基、縮合多環芳香族の2価基または単結合を表す。
【0079】
本明細書において、芳香族炭化水素の2価基、芳香族複素環の2価基または縮合多環芳香族の2価基は、芳香族炭化水素、芳香族複素環または縮合多環芳香族から水素原子を2個取り除いてできる2価基を表す。
【0080】
A
1に関し、芳香族炭化水素、芳香族複素環または縮合多環芳香族としては、例えばベンゼン、ビフェニル、ターフェニル、テトラキスフェニル、スチレン、ナフタレン、アントラセン、アセナフタレン、フルオレン、フェナントレン、インダン、ピレン、トリフェニレン、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、ピロール、フラン、チオフェン、キノリン、イソキノリン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドリン、カルバゾール、カルボリン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、キノキサリン、ベンゾイミダゾール、ピラゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、ナフチリジン、フェナントロリン、アクリジンなどを挙げることができる。
【0081】
A
1で表されるこれらの2価基は、無置換でもよいが、置換基を有していてよい。置換基としては、前記一般式(1)中のAr
1〜Ar
5で表される芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基の説明で例示した置換基を挙げることができる。とりうる態様も同じである。
【0082】
(Ar
12、Ar
13)
Ar
12とAr
13は、同一でも異なってもよく、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基を表す。
【0083】
Ar
12とAr
13は、独立して存在して環を形成していなくてもよいが、単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。Ar
12またはAr
13が置換基を有する場合、Ar
12とAr
13は、当該置換基と、単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子とを介して互いに結合してもよいが、置換基を介さず結合してもよい。
【0084】
Ar
12およびAr
13で表される芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基としては、前記一般式(1)中のAr
1〜Ar
5で表される芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基として例示した基を挙げることができる。
【0085】
Ar
12およびAr
13で表されるこれらの基は、無置換でもよいが、置換基を有していてよい。置換基としては、前記一般式(1)中のAr
1〜Ar
5で表される芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基の説明で例示した置換基を挙げることができる。とりうる態様も同じである。
【0086】
(R
1〜R
4)
R
1〜R
4は、同一でも異なってもよく、水素原子;重水素原子;フッ素原子;塩素原子;シアノ基;ニトロ基;炭素原子数1〜6のアルキル基;炭素原子数5〜10のシクロアルキル基;炭素原子数2〜6のアルケニル基;炭素原子数1〜6のアルキルオキシ基;炭素原子数5〜10のシクロアルキルオキシ基;芳香族炭化水素基;芳香族複素環基;縮合多環芳香族基;アリールオキシ基;または芳香族炭化水素基、芳香族複素環基もしくは縮合多環芳香族基から選ばれる基によって置換されたジ置換アミノ基;を表す。炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数2〜6のアルケニル基および炭素原子数1〜6のアルキルオキシ基は直鎖状でも分岐状でもよい。
【0087】
R
1〜R
4は、独立して存在して環を形成していなくてもよいが、単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。尚、R
1〜R
4がジ置換アミノ基である場合、環形成には、ジ置換アミノ基中の芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基が寄与する。
【0088】
また、R
1〜R
4が結合しているベンゼン環において、R
1〜R
4のいずれか一つの基が脱離して生じた空位に、R
1〜R
4の他の基が、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、硫黄原子または一置換アミノ基を介して結合して環を形成してもよい。尚、R
1〜R
4がジ置換アミノ基である場合、ベンゼン環との環形成には、ジ置換アミノ基中の芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基が寄与する。
【0089】
連結基の一つである一置換アミノ基が有する置換基は、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数5〜10のシクロアルキル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基である。炭素原子数1〜6のアルキル基または炭素原子数5〜10のシクロアルキル基としては、後述のR
1〜R
4で表される炭素原子数1〜6のアルキル基または炭素原子数5〜10のシクロアルキル基の説明で例示する基を挙げることができる。芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基としては、後述のR
1〜R
4で表される芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基の説明で例示する基を挙げることができる。
一置換アミノ基が有するこれらの置換基は、無置換でもよいが、更に置換基を有していてよい。一置換アミノ基が炭素原子数1〜6のアルキル基または炭素原子数5〜10のシクロアルキル基を有する場合、更に有する置換基としては、後述のR
1〜R
4で表される炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数5〜10のシクロアルキル基または炭素原子数2〜6のアルケニル基の説明で例示する置換基を挙げることができる。置換基がとりうる態様も同じである。また、一置換アミノ基が芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基を有する場合、更に有する置換基としては、後述のR
1〜R
4で表される芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基の説明で例示した置換基を挙げることができる。とりうる態様も同じである。
【0090】
R
1〜R
4で表される炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数5〜10のシクロアルキル基または炭素原子数2〜6のアルケニル基としては、具体的に、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基など;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基など;ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、2−ブテニル基など;を挙げることができる。
【0091】
R
1〜R
4で表される炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数5〜10のシクロアルキル基または炭素原子数2〜6のアルケニル基は、無置換でもよいが置換基を有していてもよい。置換基としては、重水素原子、シアノ基およびニトロ基の他に、例えば以下の基を挙げることができる。
ハロゲン原子、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子
;
炭素原子数1〜6のアルキルオキシ基、例えばメチルオキシ基、エチ
ルオキシ基、プロピルオキシ基;
アルケニル基、例えばビニル基、アリル基;
アリールオキシ基、例えばフェニルオキシ基、トリルオキシ基;
アリールアルキルオキシ基、例えばベンジルオキシ基、フェネチルオ
キシ基;
芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基、例えばフェニル基、ビ
フェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フ
ェナントレニル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリ
レニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基;
芳香族複素環基、例えばピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル
基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、キノリル基、イソキノリル基
、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル
基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、
ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾ
チエニル基、カルボリニル基;
芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基で置換されたジ置換アミ
ノ基、例えばジフェニルアミノ基、ジナフチルアミノ基;
芳香族複素環基で置換されたジ置換アミノ基、例えばジピリジルアミ
ノ基、ジチエニルアミノ基;
芳香族炭化水素基、縮合多環芳香族基もしくは芳香族複素環基で置換
されたジ置換アミノ基;
これらの置換基は、無置換でもよいが、さらに前記例示した置換基で置換されていても良い。また、これらの置換基は、独立して存在し、環を形成していなくてもよいが、単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成していてもよい。炭素原子数1〜6のアルキルオキシ基およびアルケニル基は、直鎖状でも分枝状でもよい。
【0092】
R
1〜R
4で表される炭素原子数1〜6のアルキルオキシ基または炭素原子数5〜10のシクロアルキルオキシ基としては、具体的に、メチルオキシ基、エチルオキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基など;シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基、1−アダマンチルオキシ基、2−アダマンチルオキシ基など;を挙げることができる。
【0093】
R
1〜R
4で表されるこれらの基は、無置換でもよいが、置換基を有していてよい。置換基としては、前記R
1〜R
4で表される炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数5〜10のシクロアルキル基または炭素原子数2〜6のアルケニル基の説明で例示した置換基を挙げることができる。とりうる態様も同じである。
【0094】
R
1〜R
4で表される芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基としては、前記一般式(1)中のAr
1〜Ar
5で表される芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基として例示した基を挙げることができる。
【0095】
R
1〜R
4で表される芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基は、無置換でもよいが置換基を有していてもよい。置換基としては、重水素原子、シアノ基、ニトロ基およびトリメチルシリル基の他に、例えば以下の基を挙げることができる。
ハロゲン原子、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子
;
炭素原子数1〜6のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プ
ロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−
ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘ
キシル基;
炭素原子数1〜6のアルキルオキシ基、例えばメチルオキシ基、エチ
ルオキシ基、プロピルオキシ基;
アルケニル基、例えばビニル基、アリル基;
アリールオキシ基、例えばフェニルオキシ基、トリルオキシ基;
アリールアルキルオキシ基、例えばベンジルオキシ基、フェネチルオ
キシ基;
芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基、例えばフェニル基、ビ
フェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フ
ェナントレニル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリ
レニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基;
芳香族複素環基、例えばピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル
基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、キノリル基、イソキノリル基
、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル
基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、
ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾ
チエニル基、カルボリニル基;
アリールビニル基、例えばスチリル基、ナフチルビニル基;
アシル基、例えばアセチル基、ベンゾイル基;
シリル基、例えばトリメチルシリル基、トリフェニルシリル基;
芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基で置換されたジ置換アミ
ノ基、例えばジフェニルアミノ基、ジナフチルアミノ基;
芳香族複素環基で置換されたジ置換アミノ基、例えばジピリジルアミ
ノ基、ジチエニルアミノ基;
芳香族炭化水素基、縮合多環芳香族基または芳香族複素環基から選択
される置換基で置換されたジ置換アミノ基;
これらの置換基は、無置換でもよいが、さらに前記例示した置換基で置換されていても良い。また、これらの置換基は、独立して存在して環を形成していなくてもよいが、単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成していてもよい。炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のアルキルオキシ基およびアルケニル基は、直鎖状でも分岐状でもよい。
【0096】
R
1〜R
4で表されるアリールオキシ基としては、具体的に、フェニルオキシ基、ビフェニリルオキシ基、ターフェニリルオキシ基、ナフチルオキシ基、アントラセニルオキシ基、フェナントレニルオキシ基、フルオレニルオキシ基、インデニルオキシ基、ピレニルオキシ基、ペリレニルオキシ基などを挙げることができる。
【0097】
R
1〜R
4で表されるこれらの基は、無置換でもよいが置換基を有していてよい。置換基としては、前記R
1〜R
4で表される芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基の説明で例示した置換基を挙げることができる。置換基がとりうる態様も同じである。
【0098】
R
1〜R
4で表されるジ置換アミノ基が置換基として有する芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基としては、前記一般式(1)中のAr
1〜Ar
5で表される芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基として例示した基を挙げることができる。
【0099】
ジ置換アミノ基が有するこれらの基は、無置換でもよいが更に置換基を有していてよい。この場合の置換基としては、前記R
1〜R
4で表される芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基の説明で例示した置換基を挙げることができる。置換基がとりうる態様も同じである。
【0100】
(R
5〜R
7)
R
5〜R
7は、同一でも異なってもよく、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数5〜10のシクロアルキル基、炭素原子数2〜6のアルケニル基、炭素原子数1〜6のアルキルオキシ基、炭素原子数5〜10のシクロアルキルオキシ基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、縮合多環芳香族基またはアリールオキシ基を表す。炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数2〜6のアルケニル基および炭素原子数1〜6のアルキルオキシ基は直鎖でも分岐状でもよい。
【0101】
R
5〜R
7は、独立して存在して環を形成していなくてもよいが、単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。
【0102】
また、例えば
図8〜
図10に示されている化合物3−1〜3−21のように、R
5〜R
7が結合しているベンゼン環において、R
5〜R
7のいずれか一つの基が脱離して生じた空位に、R
5〜R
7の他の基が、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、硫黄原子または一置換アミノ基を介して結合して環を形成してもよい。
【0103】
連結基の一つである一置換アミノ基が有する置換基は、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数5〜10のシクロアルキル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基である。これらの基としては、前記R
1〜R
4における一置換アミノ基の説明で例示した基を挙げることができる。一置換アミノ基が有するこれらの基は、無置換でもよいが、更に置換基を有していてよい。更に有する置換基としては、前記R
1〜R
4において一置換アミノ基が更に有する置換基として例示した基を挙げることができる。とりうる態様も同じである。
【0104】
R
5〜R
7で表される炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数5〜10のシクロアルキル基、炭素原子数2〜6のアルケニル基、炭素原子数1〜6のアルキルオキシ基または炭素原子数5〜10のシクロアルキルオキシ基としては、前記R
1〜R
4で表される炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数5〜10のシクロアルキル基、炭素原子数2〜6のアルケニル基、炭素原子数1〜6のアルキルオキシ基または炭素原子数5〜10のシクロアルキルオキシ基として例示した基を挙げることができる。
【0105】
R
5〜R
7で表されるこれらの基は、無置換でもよいが置換基を有していてよい。置換基としては、前記R
1〜R
4で表される炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数5〜10のシクロアルキル基または炭素原子数2〜6のアルケニル基の説明で例示した置換基を挙げることができる。置換基がとりうる態様も同じである。
【0106】
R
5〜R
7で表される芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、縮合多環芳香族基またはアリールオキシ基としては、前記R
1〜R
4で表される芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、縮合多環芳香族基またはアリールオキシ基として例示した基を挙げることができる。
【0107】
R
5〜R
7で表されるこれらの基は、無置換でもよいが置換基を有していてよい。置換基としては、前記R
1〜R
4で表される芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基の説明で例示した置換基を挙げることができる。置換基がとりうる態様も同じである。
【0108】
(R
8、R
9)
R
8とR
9は、同一でも異なってもよく、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数5〜10のシクロアルキル基、炭素原子数2〜6のアルケニル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、縮合多環芳香族基またはアリールオキシ基を示す。炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数2〜6のアルケニル基は直鎖状でも分岐状でもよい。
【0109】
R
8とR
9は、独立して存在して環を形成しなくてもよいが、単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、硫黄原子または一置換アミノ基を介して互いに結合して環を形成してもよい。
【0110】
連結基の一つである一置換アミノ基が有する置換基は、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数5〜10のシクロアルキル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基である。これらの基としては、前記R
1〜R
4における一置換アミノ基の説明で例示した基を挙げることができる。一置換アミノ基が有するこれらの基は、無置換でもよいが、更に置換基を有していてよい。更に有する置換基としては、前記R
1〜R
4において一置換アミノ基が更に有する置換基として例示した基を挙げることができる。とりうる態様も同じである。
【0111】
R
8およびR
9で表される炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数5〜10のシクロアルキル基または炭素原子数2〜6のアルケニル基としては、前記R
1〜R
4で表される炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数5〜10のシクロアルキル基または炭素原子数2〜6のアルケニル基として例示した基を挙げることができる。
【0112】
R
8およびR
9で表されるこれらの基は、無置換でもよいが置換基を有していてよい。置換基としては、前記R
1〜R
4で表される炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数5〜10のシクロアルキル基または炭素原子数2〜6のアルケニル基の説明で例示した置換基を挙げることができる。置換基がとりうる態様も同じである。
【0113】
R
8およびR
9で表される芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基としては、前記R
1〜R
4で表される芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基として例示した基を挙げることができる。
【0114】
R
8およびR
9で表されるこれらの基は、無置換でもよいが置換基を有していてよい。置換基としては、前記一般式(1)中のAr
1〜Ar
5で表される芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基の説明で例示した置換基を挙げることができる。置換基がとりうる態様も同じである。
【0115】
R
8およびR
9で表されるアリールオキシ基としては、前記R
1〜R
4で表されるアリールオキシ基として例示した基を挙げることができる。
【0116】
R
8およびR
9で表されるアリールオキシ基は、無置換でもよいが置換基を有していてよい。置換基としては、前記R
1〜R
4で表される芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基の説明で例示した置換基を挙げることができる。置換基がとりうる態様も同じである。
【0117】
(好適な態様)
以下、アミン誘導体IIIの好適な態様を説明するが、かかる好適な態様の説明において、置換/無置換の指定がない基は、置換基を有していても無置換でもよい。
【0118】
A
1としては、芳香族炭化水素の2価基または単結合が好ましく、ベンゼン、ビフェニルもしくはナフタレンから水素原子を2個取り除いてできる2価基または単結合がより好ましく、単結合が特に好ましい。
【0119】
Ar
12およびAr
13は、同一でも異なってもよく、フェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基、フルオレニル基、インデニル基、ピリジル基、ジベンゾフラニル基またはピリドベンゾフラニル基が好ましい。
【0120】
R
1〜R
4としては、少なくともひとつがジ置換アミノ基であることが好ましい。この場合、ジ置換アミノ基が有する置換基としては、フェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基、フルオレニル基、インデニル基、ピリジル基、ジベンゾフラニル基またはピリドベンゾフラニル基が好ましい。
【0121】
R
1〜R
4に関し、例えば下記一般式(3c−a)および(3c−b)のように、隣接する2基または全てがビニル基であって、隣接する2つのビニル基が単結合を介して互いに結合して縮合環を形成する態様、すなわち、R
1〜R
4が結合しているベンゼン環と共にナフタレン環またはフェナントレン環を形成する態様も好ましい。
【0122】
例えば下記一般式(3b−a)、(3b−b)、(3b−c)および(3b−d)のように、R
1〜R
4のいずれかひとつが芳香族炭化水素基であり、かかる芳香族炭化水素基の隣の基(R
1〜R
4)がベンゼン環から脱離して生じた空位に、かかる芳香族炭化水素基が、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して結合して環を形成する態様も好ましい。この場合の芳香族炭化水素基としては、フェニル基が好ましい。ベンゼン環と形成する環としては、ジベンゾフラン環またはジベンゾチオフェン環が好ましい。
【0123】
例えば下記一般式(3a−a)、(3a−b)、(3b−a)、(3b−b)、(3b−c)、(3b−d)、(3c−a)および(3c−b)のように、R
5〜R
7のいずれかひとつが芳香族炭化水素基であり、かかる芳香族炭化水素基の隣の基(R
5〜R
7)がベンゼン環から脱離して生じた空位に、かかる芳香族炭化水素基が、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して結合して環を形成する態様も好ましい。この場合の芳香族炭化水素基としては、フェニル基が好ましい。ベンゼン環と形成する環としては、ジベンゾフラン環またはジベンゾチオフェン環が好ましい。
【0124】
以上のように、アミン誘導体IIIの中で、R
1〜R
7が互いに結合して環を形成する態様、または、R
1〜R
7のいずれかひとつがベンゼン環から脱離して空位が生じ、隣接する基(R
1〜R
7の他の基)が、かかる空位に結合して環を形成する態様として、下記一般式(3a−a)または(3a−b)で表される態様が好ましい。かかる好適な態様には、例えば下記一般式(3b−a)、(3b−b)、(3b−c)、(3b−d)、(3c−a)および(3c−b)が含まれる。
【0125】
【化10】
上記式において、XとYは、同一でも異なっていてもよく、酸素原子または硫黄原子を表す。A
1、Ar
12、Ar
13、R
1〜R
4およびR
7〜R
9は、前記一般式(3)に記載した通りの意味である。
【0126】
上記一般式(3a−a)および(3a−b)では、一般式(3)中のR
5またはR
6が脱離して空位となっている位置に、隣接しているR
6またはR
5(フェニル基)が連結基Xを介して結合して縮合環を形成している。
上記一般式(3b−a)〜(3b−d)では、更に、R
3またはR
4が脱離して空位となっている位置に、隣接しているR
4またはR
3(フェニル基)が連結基Yを介して結合して縮合環を形成している。
上記一般式(3c−a)および(3c−b)では、更に、R
3とR
4がともにビニル基であり、単結合を介して互いに結合して縮合環を形成している。
【0127】
R
1〜R
7に関し、最も好ましい態様は、R
1〜R
4が互いに独立して存在して環を形成しておらず、且つ、R
5〜R
7が互いに結合して環を形成するか、または、R
5〜R
7のいずれかひとつがベンゼン環から脱離して空位が生じ、隣接する基(R
5〜R
7の他の基)がかかる空位に結合して環を形成する態様である。
【0128】
R
8およびR
9は、同一でも異なってもよく、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基が好ましく、フェニル基、ナフチル基、フェナントレニル基、ピリジル基、キノリル基、イソキノリル基またはジベンゾフラニル基がより好ましく、フェニル基が特に好ましい。
【0129】
また、R
8とR
9が、単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子、硫黄原子または一置換アミノ基を介して互いに結合して環を形成する態様が好ましく、単結合を介して互いに結合して環を形成する態様がより好ましい。
【0130】
R
8とR
9が互いに結合して環を形成する態様としては、下記一般式(3a−a1)又は(3a−b1)で表される態様が好ましい。かかる態様には、下記一般式(3b−a1)、(3b−b1)、(3b−c1)、(3b−d1)、(3c−a1)および(3c−b1)で表される態様が含まれる。
【0131】
【化11】
上記式において、XとYは、同一でも異なっていてもよく、酸素原子または硫黄原子を表す。A
1、Ar
12、Ar
13、R
1〜R
4およびR
7は、前記一般式(3)に記載した通りの意味である。
【0132】
上記一般式(3a−a1)、(3a−b1)、(3b−a1)、(3b−b1)、(3b−c1)、(3b−d1)、(3c−a1)および(3c−b1)は、それぞれ前記一般式(3a−a)、(3a−b)、(3b−a)、(3b−b)、(3b−c)、(3b−d)、(3c−a)および(3c−b)においてR
8とR
9(いずれもフェニル基)が単結合を介して互いに結合して縮合環を形成している構造を有している。
【0133】
アミン誘導体IIIの好適な具体例を
図8〜
図10に示すが、アミン誘導体IIIはこれらの具体例に限定されるものではない。具体例として示された化合物のうち、上記一般式(3a−a)および(3a−b)に該当する化合物は以下の通りである。
3a―a:3−1〜3−3、3−5〜3−9、3−12〜3−14およ
び3−16〜3−19
3a―b:3−4および3−15
このうち、上記一般式(3b−a)、(3b−b)、(3b−c)、(3b−d)、(3c−a)または(3c−b)に該当するものは、以下の通りである。
3b―c:3−9、3−19
3c―a:3−2、3−3、3−7、3−13、3−14および3−17
また、上記一般式(3a−a1)または(3a−b1)に該当する化合物は以下のとおりである。
3a―a1:3−1〜3−3および3−7〜3−9
3a―b1:3−4
このうち上記一般式(3b−a1)、(3b−b1)、(3b−c1)、(3b−d1)、(3c−a1)または(3c−b1)に該当する化合物は以下の通りである。
3b―c1:3−9
3c―a1:3−2、3−3および3−7
【0134】
アミン誘導体IIIは、それ自体公知の方法に準じて合成することができる(例えば、特許文献7参照)。
【0135】
また、発光層では、発光材料として燐光発光体を使用することできる。燐光発光体としては、イリジウムや白金などの金属錯体の燐光発光体を使用することができる。具体的には、Ir(ppy)
3などの緑色の燐光発光体;FIrpic、FIr6などの青色の燐光発光体;Btp
2Ir(acac)などの赤色の燐光発光体;などを用いることができる。
【0136】
このときのホスト材料としては、例えば以下の正孔注入・輸送性のホスト材料を用いることができる。
カルバゾール誘導体、例えば4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフ
ェニル(CBP)、TCTA、mCP;
また、例えば以下の電子輸送性のホスト材料を用いることができる。
p−ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン(UGH2)、
2,2’,2’’−(1,3,5−フェニレン)−トリス(1−フェニ
ル−1H−ベンズイミダゾール)(TPBI);
このようなホスト材料を用いると、高性能の有機EL素子を作製することができる。
【0137】
燐光発光体のホスト材料へのドープは濃度消光を避けるため、発光層全体に対して1〜30重量パーセントの範囲で、共蒸着によって行うことが好ましい。
【0138】
発光材料としてPIC−TRZ、CC2TA、PXZ−TRZ、4CzIPNなどのCDCB誘導体などの遅延蛍光を放射する材料を使用することも可能である。
【0139】
<正孔阻止層>
発光層5の上には、正孔阻止層(図示せず)を設けることができる。正孔阻止層には、公知の正孔阻止作用を有する化合物を用いることができ、例えばバソクプロイン(BCP)などのフェナントロリン誘導体;、アルミニウム(III)ビス(2−メチル−8−キノリナート)−4−フェニルフェノレート(BAlq)などのキノリノール誘導体の金属錯体;各種の希土類錯体;トリアゾール誘導体;トリアジン誘導体;オキサジアゾール誘導体;等を用いることができる。これらの材料は電子輸送層の材料を兼ねてもよい。
【0140】
<電子輸送層6>
電子輸送層6には、下記一般式(4)で表されるピリミジン誘導体IVを用いることが好ましい。
ピリミジン誘導体IV;
【化12】
ピリミジン誘導体IVには、例えば以下の2態様がある。
【化13】
上記一般式(4a)では、Ar
15の隣にAr
16が位置している。上記一般式(4b)では、Ar
15の隣に、R
10〜R
13およびAr
17が結合したベンゼン環が位置している。
【0141】
(Ar
14)
Ar
14は、芳香族炭化水素基または縮合多環芳香族基を表す。
【0142】
Ar
14で表される芳香族炭化水素基または縮合多環芳香族基としては、具体的に、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、テトラキスフェニル基、スチリル基、ナフチル基、アントラセニル基、アセナフテニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基などを挙げることができる。
【0143】
Ar
14で表されるこれらの基は、無置換でもよいが置換基を有していてよい。置換基としては、前記一般式(1)中のAr
1〜Ar
5で表される芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基の説明で例示した置換基を挙げることができる。置換基がとりうる態様も同じである。
【0144】
(Ar
15、Ar
16)
Ar
15およびAr
16は、同一でも異なってもよく、水素原子、芳香族炭化水素基または縮合多環芳香族基を表す。ただし、Ar
15とAr
16は同時に水素原子となることはない。
【0145】
Ar
15およびAr
16で表される芳香族炭化水素基または縮合多環芳香族基としては、前記Ar
14として例示した基を挙げることができる。
【0146】
Ar
15およびAr
16で表されるこれらの基は、無置換でもよいが置換基を有していてよい。置換基としては、前記一般式(1)中のAr
1〜Ar
5で表される芳香族炭化水素基、芳香族複素環基又は縮合多環芳香族基の説明で例示した置換基を挙げることができる。置換基がとりうる態様も同じである。
【0147】
(Ar
17)
Ar
17は、芳香族複素環基を表す。Ar
17で表される芳香族複素環基としては、具体的に、トリアジニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、フリル基、ピロリル基、チエニル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、ナフチリジニル基、フェナントロリニル基、アクリジニル基、カルボリニル基などを挙げることができる。
【0148】
Ar
17で表されるこれらの基は、無置換でもよいが置換基を有していてよい。置換基としては、前記一般式(1)中のAr
1〜Ar
5で表される芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基の説明で例示した置換基を挙げることができる。置換基がとりうる態様も同じである。
【0149】
(R
10〜R
13)
R
10〜R
13は、同一でも異なってもよく、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、トリフルオロメチル基、炭素原子数1〜6のアルキル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基を表す。炭素原子数1〜6のアルキル基は直鎖状でも分岐状でもよい。
【0150】
R
10〜R
13で表される炭素原子数1〜6のアルキル基としては、具体的に、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、3−メチルブチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、iso−ヘキシル基、tert−ヘキシル基などを挙げることができる。
【0151】
R
10〜R
13で表される芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基としては、具体的に、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、テトラキスフェニル基、スチリル基、ナフチル基、アントラセニル基、アセナフテニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、トリアジニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、フリル基、ピロリル基、チエニル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、ナフチリジニル基、フェナントロリニル基、アクリジニル基、カルボリニル基などを挙げることができる。
【0152】
R
10〜R
13で表されるこれらの基は、無置換でもよいが置換基を有していてよい。置換基としては、前記一般式(1)中のAr
1〜Ar
5で表される芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基の説明で例示した置換基を挙げることができる。置換基がとりうる態様も同じである。
【0153】
(好適な態様)
以下、ピリミジン誘導体IVの好適な態様を説明するが、かかる説明において、置換/無置換の指定がない基は、置換基を有していてもよく無置換でもよい。
【0154】
ピリミジン誘導体IVは、上記一般式(4a)で表される構造を有することが好ましい。
【0155】
Ar
14としては、フェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基、アセナフテニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基またはトリフェニレニル基が好ましく、フェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ピレニル基、フルオランテニル基またはトリフェニレニル基がより好ましい。ここで、フェニル基は縮合多環芳香族基を置換基として有していることが好ましい。この場合の縮合多環芳香族基としては、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ピレニル基、フルオランテニル基またはトリフェニレニル基が好ましい。
【0156】
Ar
15としては、置換基を有するフェニル基が好ましい。この場合の置換基としては、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基などの芳香族炭化水素基;またはナフチル基、アントラセニル基、アセナフテニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基などの縮合多環芳香族基;が好ましく、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ピレニル基、フルオランテニル基またはトリフェニレニル基がより好ましい。
【0157】
Ar
16としては、置換基を有するフェニル基が好ましい。この場合の置換基としては、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基などの芳香族炭化水素基;またはナフチル基、アントラセニル基、アセナフテニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基などの縮合多環芳香族基;が好ましく、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ピレニル基、フルオランテニル基またはトリフェニレニル基がより好ましい。
【0158】
Ar
14とAr
15は、同一ではないことが、薄膜の安定性の観点から好ましい。ここで、「同一」とは、骨格だけでなく、置換基の種類、数および位置が同じ場合を意味する。よって、Ar
14とAr
15が同一ではない場合とは、骨格が違う場合は勿論、骨格が同じであるが置換基の種類、数または位置が違う場合も意味する。
【0159】
Ar
15とAr
16に関しては、薄膜の安定性の観点から、異なる基であることが好ましい。Ar
15とAr
16が同一の場合、分子全体の対称性がよくなることによって結晶化し易くなる虞があるからである。Ar
15とAr
16としては、一方が水素原子であることが好ましい。
【0160】
Ar
17としては、含窒素芳香族複素環基が好ましい。含窒素芳香族複素環基としては、トリアジニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピロリル基、キノリル基、イソキノリル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ナフチリジニル基、フェナントロリニル基、アクリジニル基またはカルボリニル基が好ましく、トリアジニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、キノリル基、イソキノリル基、インドリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ナフチリジニル基、フェナントロリニル基またはアクリジニル基がより好ましく、ピリジル基、ピリミジニル基、キノリル基、イソキノリル基、インドリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、フェナントロリニル基またはアクリジニル基が特に好ましい。
ベンゼン環におけるAr
17の結合位置は、ピリミジン環との結合位置に対し、メタ位であることが、薄膜の安定性の観点から好ましい。
【0161】
R
10〜R
13としては、水素原子が好ましい。
【0162】
ピリミジン誘導体IVの好適な具体例を
図11〜
図28に示すが、ピリミジン誘導体IVは、これらの具体例に限定されるものではない。Dは重水素原子を表す。具体例において、化合物4−1〜4−49および4−66〜4−126は上記一般式(4a)に該当する。化合物4−50〜4−65は上記一般式(4b)に該当する。
【0163】
ピリミジン誘導体IVは、それ自体公知の方法に準じて合成することができる(例えば、特許文献8参照)。
【0164】
電子輸送層6では、本発明の効果を損なわない限りにおいて、公知の電子輸送性の材料をピリミジン誘導体IVと混合もしくは同時に使用してもよい。公知の電子輸送性の材料としては、Alq
3、BAlqをはじめとするキノリノール誘導体の金属錯体;各種金属錯体;トリアゾール誘導体;トリアジン誘導体;オキサジアゾール誘導体;ピリジン誘導体;ピリミジン誘導体;ベンズイミダゾール誘導体;チアジアゾール誘導体;アントラセン誘導体;カルボジイミド誘導体;キノキサリン誘導体;ピリドインドール誘導体;フェナントロリン誘導体;シロール誘導体;などを用いることができる。
【0165】
<電子注入層7>
電子注入層7としては、フッ化リチウム、フッ化セシウムなどのアルカリ金属塩;フッ化マグネシウムなどのアルカリ土類金属塩;酸化アルミニウムなどの金属酸化物;などを用いることができるが、電子輸送層と陰極の好ましい選択においては、これを省略することができる。
【0166】
<陰極8>
陰極8には、アルミニウムのような仕事関数の低い金属や、マグネシウム銀合金、マグネシウムインジウム合金、アルミニウムマグネシウム合金のような、より仕事関数の低い合金が電極材料として用いられる。
【実施例】
【0167】
以下、本発明の実施形態を、実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0168】
<合成例1:化合物1−1>
4−ビス(ビフェニル−4−イル)アミノ−4’−{(ビフェニル−4−イル)−フェニルアミノ}−2−フェニル−ビフェニルの合成:
窒素置換した反応容器に、
ビス(ビフェニル−4−イル)−(6−ブロモビフェニル−3−イ
ル)アミン 10.0g、
4−{(ビフェニル−4−イル)−フェニルアミノ}フェニルボロ
ン酸 7.9g、
テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)
0.60g、
炭酸カリウム 5.0g、
トルエン 80ml、
エタノール 40mlおよび
水 30ml
を加えて加熱し、100℃で一晩撹拌して反応液を得た。反応液を冷却し、分液操作により有機層を採取した。採取した有機層を濃縮し、粗製物を得た。粗製物をカラムクロマトグラフ(担体:シリカゲル、溶離液:ジクロロメタン/ヘプタン)によって精製した。その結果、化合物1−1の白色粉体5.30g(収率37%)を得た。
【0169】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H−NMR(CDCl
3)で以下の44個の水素のシグナルを検出した。
δ(ppm)=7.65−7.60(5H)
7.59−7.53(5H)
7.52−7.40(9H)
7.39−7.21(15H)
7.20−7.10(5H)
7.09−6.91(5H)
【化14】
【0170】
<合成例2:化合物1−3>
4−{(ビフェニル−4−イル)−(4−ナフタレン−1−イル−フェニル)アミノ}−4’−{(ビフェニル−4−イル)−フェニルアミノ}−2−フェニル−ビフェニルの合成:
合成例1において、
ビス(ビフェニル−4−イル)−(6−ブロモビフェニル−3−イ
ル)アミン
に代えて、
(ビフェニル−4−イル)−(6−ブロモビフェニル−3−イル)
−(4−ナフタレン−1−イル−フェニル)アミン
を用い、同様の条件で反応を行った。その結果、化合物1−3の類白色粉体9.70g(収率69%)を得た。
【0171】
得られた類白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H−NMR(CDCl
3)で以下の46個の水素のシグナルを検出した。
δ(ppm)=8.07(1H)
7.93(1H)
7.87(1H)
7.67−7.54(7H)
7.54−7.11(31H)
7.69−6.92(5H)
【化15】
【0172】
<合成例3:化合物1−5>
4−{(ビフェニル−4−イル)−(p−ターフェニル−4−イル)アミノ}−4’−{(ビフェニル−4−イル)−フェニルアミノ}−2−フェニル−ビフェニルの合成:
合成例1において、
ビス(ビフェニル−4−イル)−(6−ブロモビフェニル−3−イ
ル)アミン
に代えて、
(ビフェニル−4−イル)−(6−ブロモビフェニル−3−イル)
−(p−ターフェニル−4−イル)アミン
を用い、同様の条件で反応を行った。その結果、化合物1−5の白色粉体6.76g(収率57%)を得た。
【0173】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H−NMR(CDCl
3)で以下の48個の水素のシグナルを検出した。
δ(ppm)=7.71−7.10(43H)
7.08−6.93(5H)
【化16】
【0174】
<合成例4:化合物1−6>
4−{(ビフェニル−4−イル)−フェニルアミノ}−4’−{ビス(4−ナフタレン−1−イル−フェニル)アミノ}−2’−フェニル−ビフェニルの合成:
合成例1において、
ビス(ビフェニル−4−イル)−(6−ブロモビフェニル−3−イ
ル)アミン
に代えて、
ビス(4−ナフタレン−1−イル−フェニル)−(6−ブロモ−ビ
フェニル−3−イル)アミン
を用い、同様の条件で反応を行った。その結果、化合物1−6の黄白色粉体10.0g(収率73%)を得た。
【0175】
得られた黄白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H−NMR(CDCl
3)で以下の48個の水素のシグナルを検出した。
δ(ppm)=8.08(1H)
7.94(1H)
7.88(1H)
7.63−7.20(40H)
7.19−6.92(5H)
【化17】
【0176】
<合成例5:化合物1−7>
4−{(9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)−(ビフェニル−4−イル)アミノ}−4’−(ビフェニル−4−イル−フェニルアミノ)−2−フェニル−ビフェニルの合成:
合成例1において、
ビス(ビフェニル−4−イル)−(6−ブロモビフェニル−3−イ
ル)アミン
に代えて、
(9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)−(ビフェニル−4−
イル)−(6−ブロモビフェニル−3−イル)アミン
を用い、同様の条件で反応を行った。その結果、化合物1−7の白色粉体8.30g(収率49%)を得た。
【0177】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H−NMR(CDCl
3)で以下の48個の水素のシグナルを検出した。
δ(ppm)=7.72−7.60(2H)
7.59−7.52(2H)
7.51−7.10(35H)
7.09−6.90(3H)
1.56(6H)
【化18】
【0178】
<合成例6:化合物1−8>
4−{(9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)−(ビフェニル−4−イル)アミノ}−1−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−2−フェニル−ベンゼンの合成:
合成例1において、
ビス(ビフェニル−4−イル)−(6−ブロモビフェニル−3−イ
ル)アミン
に代えて、
(9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)−(ビフェニル−4−
イル)−(6−ブロモビフェニル−3−イル)アミン
を用い、
4−{(ビフェニル−4−イル)−フェニルアミノ}フェニルボロ
ン酸
に代えて
(9−フェニルカルバゾール−3−イル)ボロン酸
を用い同様の条件で反応を行った。その結果、化合物1−8の白色粉体17.4g(収率85%)を得た。
【0179】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H−NMR(CDCl
3)で以下の42個の水素のシグナルを検出した。
δ(ppm)=8.05(2H)
7.72−7.10(34H)
1.52(6H)
【化19】
【0180】
<合成例7:化合物1−4>
4−{4−(ナフタレン−2−イル)フェニル}(ビフェニル−4−イル)アミノ−4’−{(ビフェニル−4−イル)−フェニルアミノ)}−2−フェニル−1,1’−ビフェニルの合成:
合成例1において、
ビス(ビフェニル−4−イル)−(6−ブロモビフェニル−3−イ
ル)アミン
に代えて、
(6−ブロモ−1,1’−ビフェニル−3−イル)−{4−(ナフ
タレン−2−イル)フェニル}(ビフェニル−4−イル)アミン
を用い、同様の条件で反応を行った。その結果、化合物1−4の白色粉体6.1g(収率58%)を得た。
【0181】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H−NMR(CDCl
3)で以下の46個の水素のシグナルを検出した。
δ(ppm)=8.07(1H)
7.95−7.76(4H)
7.68−6.98(41H)
【化20】
【0182】
<合成例8:化合物1−19>
4,4’’−ビス{(ビフェニル−4−イル)−フェニルアミノ}−2−フェニル−1,1’:4’,1’’−ターフェニルの合成:
合成例1において、
ビス(ビフェニル−4−イル)−(6−ブロモビフェニル−3−イ
ル)アミン
に代えて、
(6−ブロモ−1,1’−ビフェニル−3−イル)−(1,1’−
ビフェニル−4−イル)フェニルアミン
を用い、同様の条件で反応を行った。その結果、化合物1−19の白色粉体12.9g(収率43%)を得た。
【0183】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H−NMR(CDCl
3)で以下の44個の水素のシグナルを検出した。
δ(ppm)=7.65−7.61(4H)
7.57−7.07(40H)
【化21】
【0184】
<合成例9:化合物1−27>
4,4’’−ビス{(ビフェニル−4−イル)−フェニルアミノ}−2、2’’−ジフェニル−1,1’:4’,1’’−ターフェニルの合成:
窒素置換した反応容器に、
4,4’’−ビス{(ビフェニル−4−イル)−アミノ}−2、2’
’−ジフェニル−1,1’:4’,1’’−ターフェニル
16.3g、
ヨードベンゼン 18.6g、
銅粉 0.29g、
炭酸カリウム 9.61g、
3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸 1.85g、
亜硫酸水素ナトリウム 0.47gおよび
ドデシルベンゼン 20ml
を加えて加熱し、190〜200℃で17時間撹拌した。撹拌後の反応液を冷却し、トルエン1500ml、シリカゲル40gおよび活性白土20gを添加した後、撹拌した。撹拌後の混合液からろ過によって不溶物を除いた後、濃縮を行った。クロロベンゼンを用いた再結晶を繰り返した。その結果、化合物1−27の白色粉体9.65g(収率49%)を得た。
【0185】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H−NMR(CDCl
3)で以下の48個の水素のシグナルを検出した。
δ(ppm)=7.62(4H)
7.52(4H)
7.45(4H)
7.36−7.04(32H)
6.99(4H)
【化22】
【0186】
<合成例10:化合物1−30>
4,4’’−ビス{(ビフェニル−4−イル)−フェニルアミノ}−2−フェニル−1,1’:3’,1’’−ターフェニルの合成:
窒素置換した反応容器に、
4−{(ビフェニル−4−イル)−フェニルアミノ}−4’’−{(
ビフェニル−4−イル)−アミノ}−2−フェニル−1,1’:3’
,1’’−ターフェニル 17.0g、
ブロモベンゼン 4.12g、
酢酸パラジウム 0.13g、
トリ−tert−ブチルホスフィンの50%(w/v)トルエン溶液
0.33ml、
tert−ブトキシナトリウム 2.73gおよび
トルエン 190ml
を加えて加熱し、80℃で3時間撹拌した。撹拌後の反応液を冷却し、ろ過によって不溶物を除いた後、濃縮を行い、カラムクロマトグラフ(担体:シリカゲル、溶離液:トルエン/n−ヘキサン)によって精製した。アセトンを加えることによって析出する固体を集めた。その結果、化合物1−30の白色粉体13.29g(収率71%)を得た。
【0187】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H−NMR(CDCl
3)で以下の44個の水素のシグナルを検出した。
δ(ppm)=7.62−7.58(4H)
7.55−7.49(4H)
7.48−7.38(6H)
7.37−7.05(30H)
【化23】
【0188】
<合成例11:化合物1−41>
4−ビス(ビフェニル−4−イル)アミノ−4’−{(ビフェニル−4−イル)−フェニルアミノ)}−2,6−ジフェニル−ビフェニルの合成:
合成例1において、
ビス(ビフェニル−4−イル)−(6−ブロモビフェニル−3−イ
ル)アミン
に代えて、
4−ビス(ビフェニル−4−イル)アミノ−2,6−ジフェニル−
ブロモベンゼン
を用い、同様の条件で反応を行った。その結果、化合物1−41の白色粉体12.7g(収率57%)を得た。
【0189】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H−NMR(CDCl
3)で以下の48個の水素のシグナルを検出した。
δ(ppm)=7.65−7.53(8H)
7.48−6.97(36H)
6.79−6.73(4H)
【化24】
【0190】
<合成例12:化合物1−14>
4−{(9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)−フェニルアミノ}−4’−(ビフェニル−4−イル−フェニルアミノ)−2−フェニル−ビフェニルの合成:
合成例1において、
ビス(ビフェニル−4−イル)−(6−ブロモビフェニル−3−イ
ル)アミン
に代えて、
(9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)−フェニル−(6−ブ
ロモビフェニル−3−イル)アミン
を用い、同様の条件で反応を行った。その結果、化合物1−14の白色粉体10.2g(収率69%)を得た。
【0191】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H−NMR(CDCl
3)で以下の44個の水素のシグナルを検出した。
δ(ppm)=7.69−7.59(4H)
7.48−7.42(4H)
7.37−6.98(30H)
1.49(6H)
【化25】
【0192】
<合成例13:化合物1−11>
4−{(9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)−(ビフェニル−4−イル)アミノ}−4’−(ジフェニルアミノ)−2−フェニル−ビフェニルの合成:
合成例1において、
ビス(ビフェニル−4−イル)−(6−ブロモビフェニル−3−イ
ル)アミン
に代えて、
(9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)−(ビフェニル−4−
イル)−(6−ブロモビフェニル−3−イル)アミン
を用い、
4−{(ビフェニル−4−イル)−フェニルアミノ}フェニルボロ
ン酸
に代えて、
4−(ジフェニルアミノ)フェニルボロン酸
を用い、同様の条件で反応を行った。その結果、化合物1−11の白色粉体11.5g(収率75%)を得た。
【0193】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H−NMR(CDCl
3)で以下の44個の水素のシグナルを検出した。
δ(ppm)=7.71−7.64(4H)
7.58−7.56(2H)
7.49−6.94(32H)
1.51(6H)
【化26】
【0194】
高感度示差走査熱量計(ブルカー・エイエックスエス製、DSC3100SA)を用いて、各合成例で得られた化合物の融点とガラス転移点を測定した。
化合物 融点(℃) ガラス転移点(℃)
1−1(合成例1) 観測されず 118
1−3(合成例2) 観測されず 121
1−5(合成例3) 観測されず 125
1−6(合成例4) 観測されず 125
1−7(合成例5) 観測されず 125
1−8(合成例6) 観測されず 139
1−4(合成例7) 観測されず 121
1−19(合成例8) 観測されず 120
1−27(合成例9) 263 124
1−30(合成例10) 観測されず 117
1−41(合成例11) 238 126
1−14(合成例12) 観測されず 114
1−11(合成例13) 観測されず 117
アリールアミン化合物Iは100℃以上のガラス転移点を有しており、薄膜状態が安定であった。
【0195】
各合成例で得られた化合物を用いて、ITO基板の上に膜厚100nmの蒸着膜を作製して、イオン化ポテンシャル測定装置(住友重機械工業株式会社製、PYS−202)によって仕事関数を測定した。
化合物 仕事関数(eV)
1−1(合成例1) 5.63
1−3(合成例2) 5.62
1−5(合成例3) 5.62
1−6(合成例4) 5.65
1−7(合成例5) 5.57
1−8(合成例6) 5.56
1−4(合成例7) 5.60
1−19(合成例8) 5.70
1−27(合成例9) 5.74
1−30(合成例10) 5.79
1−41(合成例11) 5.67
1−14(合成例12) 5.59
1−11(合成例13) 5.62
アリールアミン化合物IはNPD、TPDなどの一般的な正孔輸送材料がもつ仕事関数5.4eVと比較して、好適なエネルギー準位を示しており、良好な正孔輸送能力を有していた。
【0196】
<素子実施例1>
ガラス基板1上に透明陽極2としてITO電極をあらかじめ形成した。蒸着により、
図1に示すように、透明陽極2の上に、正孔注入層3、正孔輸送層4、発光層5、電子輸送層6、電子注入層7および陰極(アルミニウム電極)8をこの順で形成し、有機EL素子を作成した。
【0197】
具体的には、膜厚150nmのITOを成膜したガラス基板1をイソプロピルアルコール中にて20分間超音波洗浄した後、200℃に加熱したホットプレート上にて10分間乾燥した。その後、UVオゾン処理を15分間行った。ITO付きガラス基板を真空蒸着機内に取り付け、0.001Pa以下まで減圧した。
続いて、透明陽極2を覆うように下記構造式の電子アクセプター(Acceptor−1)と合成例5の化合物1−7を、蒸着速度比がAcceptor−1:化合物1−7=3:97となる蒸着速度で二元蒸着し、膜厚30nmの正孔注入層3を形成した。
【化27】
正孔注入層3の上に、合成例5の化合物1−7を蒸着し、膜厚40nmの正孔輸送層4を形成した。
正孔輸送層4の上に、下記構造式の化合物EMD−1と下記構造式の化合物EMH−1を、蒸着速度比がEMD−1:EMH−1=5:95となる蒸着速度で二元蒸着し、膜厚20nmの発光層5を形成した。
【化28】
発光層5の上に、下記構造式の化合物4−125と下記構造式の化合物ETM−1を、蒸着速度比が4−125:ETM−1=50:50となる蒸着速度で二元蒸着し、膜厚30nmの電子輸送層6を形成した。
【化29】
電子輸送層6の上に、フッ化リチウムを蒸着し、膜厚1nmの電子注入層7を形成した。
最後に、アルミニウムを100nm蒸着して陰極8を形成した。
【0198】
<素子実施例2>
素子実施例1において、発光層5の材料として前記化合物EMD−1に代えてアミン誘導体3−1を用い、アミン誘導体3−1と前記化合物EMH−1を、蒸着速度比がアミン誘導体3−1:EMH−1=5:95となる蒸着速度で二元蒸着した以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。
【化30】
【0199】
<素子実施例3>
素子実施例1において、正孔注入層3及び正孔輸送層4の材料として合成例5の化合物1−7代えて合成例12の化合物1−14を用いた以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。
【化31】
【0200】
<素子実施例4>
素子実施例2において、正孔注入層3及び正孔輸送層4の材料として合成例5の化合物1−7に代えて合成例12の化合物1−14を用いた以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。
【0201】
<素子実施例5>
素子実施例1において、正孔注入層3及び正孔輸送層4の材料として合成例5の化合物1−7に代えて合成例13の化合物1−11を用いた以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。
【化32】
【0202】
<素子実施例6>
素子実施例2において、正孔注入層3及び正孔輸送層4の材料として合成例5の化合物1−7に代えて合成例13の化合物1−11を用いた以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。
【0203】
<素子比較例1>
素子実施例1において、正孔注入層3及び正孔輸送層4の材料として合成例5の化合物1−7に代えて下記構造式のHTM−1を用いた以外は同様の条件で有機EL素子を作製した。
【化33】
【0204】
<素子比較例2>
素子実施例2において、正孔注入層3及び正孔輸送層4の材料として合成例5の化合物1−7に代えて上記構造式のHTM−1を用いた以外は同様の条件で有機EL素子を作製した。
【0205】
素子実施例1〜6および素子比較例1〜2で作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行った。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性を測定した。結果を表1に示した。
【0206】
素子実施例1〜6および素子比較例1〜2で作製した有機EL素子を用いて、素子寿命を測定した。具体的には、発光開始時の発光輝度(初期輝度)を2000cd/m
2として定電流駆動を行った時、発光輝度が1900cd/m
2(初期輝度を100%とした時の95%に相当:95%減衰)に減衰するまでの時間を測定した。結果を表1に示した。
【表1】
発光層の材料が同じ組合せである素子実施例1、3および5と素子比較例1を比べると、電流密度10mA/cm
2の電流を流したときの発光効率は、素子比較例1で7.74cd/Aであったのに対し、素子実施例1、3および5では8.36〜8.86cd/Aと高効率であった。
電力効率については、素子比較例1で6.37lm/Wであったのに対し、素子実施例1、3および5では6.84〜7.44lm/Wと高効率であった。
素子寿命については、素子比較例1で54時間であったのに対し、素子実施例1、3および5では108〜131時間と長寿命であった。
【0207】
同様に、発光層の材料が同じ組合せである素子実施例2、4および6と素子比較例2を比べると、発光効率は、素子比較例2で8.27cd/Aであったのに対し、素子実施例2、4および6では9.00〜9.43cd/Aと高効率であった。
電力効率については、素子比較例2で6.71lm/Wであったのに対し、素子実施例2、4および6では7.31〜7.84lm/Wと高効率であった。
素子寿命については、素子比較例2で78時間であったのに対し、素子実施例2、4および6では128〜155時間と長寿命であった。
【0208】
以上の結果から明らかなように、電子アクセプターによってPドープされたアリールアミン化合物Iを正孔注入層の材料に用いた有機EL素子では、電極から正孔輸送層へ正孔を効率良く注入・輸送できた。アリールアミン化合物IをPドーピングしないで、正孔輸送層の材料に選択することによって、素子内部のキャリアバランスが改善された。そのため、本発明の有機EL素子は、従来と比較して、高発光効率且つ長寿命を実現することができた。