特許第6901980号(P6901980)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6901980鋼角ストッパー埋込み部補強構造及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6901980
(24)【登録日】2021年6月22日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】鋼角ストッパー埋込み部補強構造及び方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 22/00 20060101AFI20210701BHJP
【FI】
   E01D22/00 B
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-37392(P2018-37392)
(22)【出願日】2018年3月2日
(65)【公開番号】特開2019-152015(P2019-152015A)
(43)【公開日】2019年9月12日
【審査請求日】2020年2月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100116207
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100089635
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 守
(74)【代理人】
【識別番号】100096426
【弁理士】
【氏名又は名称】川合 誠
(72)【発明者】
【氏名】岡本 圭太
(72)【発明者】
【氏名】轟 俊太朗
(72)【発明者】
【氏名】笠倉 亮太
(72)【発明者】
【氏名】草野 浩之
(72)【発明者】
【氏名】田所 敏弥
【審査官】 荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−044585(JP,A)
【文献】 特開2001−295222(JP,A)
【文献】 実開昭52−070728(JP,U)
【文献】 特開2016−199861(JP,A)
【文献】 特開2014−173259(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第104727232(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 1/00−24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部工であるコンクリート構造物と、
少なくとも下端が前記コンクリート構造物に埋込まれ、少なくとも上端が前記コンクリート構造物の上面から突出し、前記コンクリート構造物の上に載置された上部工に形成された上部収容空洞内に水平方向の公差をもって嵌合している鋼角ストッパーと、
前記コンクリート構造物に配設されたプレストレス付与部材とを備え、
前記コンクリート構造物の前側面から内部に向かう水平方向のプレストレスであって、前記鋼角ストッパーが上部工から受ける外力と反対向きのプレストレス、前記プレストレス付与部材によって、前記コンクリート構造物に付与されることを特徴とする鋼角ストッパー埋込み部補強構造。
【請求項2】
前記プレストレス付与部材は、少なくとも前記コンクリート構造物の上面の近傍に配設される請求項1に記載の鋼角ストッパー埋込み部補強構造。
【請求項3】
前記プレストレス付与部材は、前記鋼角ストッパーが延在する方向である上下方向に対して、及び、前記水平方向に対して直交する方向である左右方向に関して、少なくとも前記鋼角ストッパーの両側に配設される請求項1又は2に記載の鋼角ストッパー埋込み部補強構造。
【請求項4】
前記鋼角ストッパーから前記コンクリート構造物の前側面までの距離をdとすると、前記プレストレス付与部材は、前記左右方向に関して、少なくとも前記鋼角ストッパーの両側面から距離dまでの範囲内に配設される請求項3に記載の鋼角ストッパー埋込み部補強構造。
【請求項5】
前記プレストレス付与部材は、前記左右方向に関して、少なくとも前記鋼角ストッパーの両側面から距離d/2までの範囲内に配設される請求項4に記載の鋼角ストッパー埋込み部補強構造。
【請求項6】
前記コンクリート構造物はラーメン高架橋又は橋脚である請求項1〜5のいずれか1項に記載の鋼角ストッパー埋込み部補強構造。
【請求項7】
鋼角ストッパーの少なくとも下端を下部工であるコンクリート構造物に埋込み、前記鋼角ストッパーの少なくとも上端を前記コンクリート構造物の上面から突出させ、前記コンクリート構造物の上に載置された上部工に形成された上部収容空洞内に水平方向の公差をもって嵌合させることと、
前記コンクリート構造物にプレストレス付与部材を配設し、前記コンクリート構造物の前側面から内部に向かう水平方向のプレストレスであって、前記鋼角ストッパーが上部工から受ける外力と反対向きのプレストレス、前記プレストレス付与部材によって、前記コンクリート構造物に付与することと、
を含むことを特徴とする鋼角ストッパー埋込み部補強方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鋼角ストッパー埋込み部補強構造及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高架橋等の鉄道構造物として、鉄筋コンクリート製の鉄筋コンクリート構造物が広く使用されている。このような鉄道構造物においては、下部工であるラーメン高架橋又は橋脚と、下部工の上に載置される上部工である橋桁とを連結するためにストッパーが使用されている。該ストッパーに要求される機能は、地震時の振動や列車の横圧によって生じる橋桁の移動を制限すること、橋桁の落橋を防止すること等である。そして、ストッパーとしては、橋桁の移動を制限するだけの高い剛性が必要であり、地震後においても、余震を考慮して、変位を制限することができるだけの剛性を保持することが望ましいので、従来から、角型鋼管にコンクリートを充填した鋼角ストッパーが使用されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
図1は従来の鋼角ストッパーを下部工と上部工との連結部に適用した例を示す斜視図である。
【0004】
図において、21は高架橋の橋桁であって、鉄筋コンクリート製であり、その上面に鉄道の線路、すなわち、軌道25が敷設されている。また、11は高架橋の橋脚であって、鉄筋コンクリート製であり、前記橋桁21を支承している。具体的には、橋脚11の上端部に形成された桁座12の桁座上面12a上に前記橋桁21の桁端22が載置されている。また、図に示されるように、前記桁座上面12aと桁端下面22aとの間には、桁座上面12aに形成された沓座13及び該沓座13上に載置されたゴムシュー26を介在させることが望ましい。なお、図においては、説明の都合上、橋桁21の桁端22の一部の図示が省略されている。
【0005】
また、地震時の振動や列車の横圧によって生じる橋桁21の水平方向の移動を制限するために角型鋼管にコンクリートを充填した鋼角ストッパー31の下部が桁座12に埋込まれ、前記鋼角ストッパー31の上部が桁端22に隙間ばめで挿入されている。なお、前記鋼角ストッパー31は、図に示されるように、橋桁21の幅方向に並ぶように、複数本(図に示される例では、2本)配設されることが望ましい。また、桁座上面12aと桁端下面22aとの間には、後述される空隙24が存在し、鋼角ストッパー31の中間部分は前記空隙24に露出している。
【0006】
このように、高い剛性を有する鋼角ストッパー31が配設されているので、橋脚11に対する橋桁21の水平方向の移動が適切に制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017−044585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記従来の技術では、地震時のように大きな衝撃を受けた場合、鋼角ストッパー31の下端及びその近傍が埋込まれている下部工としての桁座12が損傷を受けてしまうことがある。
【0009】
図2は従来の鋼角ストッパーが埋込まれた下部工が地震によって受けた損傷を示す写真、図3は従来の鋼角ストッパーが埋込まれた下部工と上部工との連結部を示す模式側面透視図、図4は従来の鋼角ストッパーが埋込まれた下部工の損傷を説明する二面図、図5は従来の鋼角ストッパーが埋込まれた下部工に作用する応力を説明する模式側面透視図である。なお、図2において、(a)は桁座の全体を示す写真、(b)は(a)の矢示部を拡大した写真であり、図4において、(a)は模式上面透視図、(b)は模式正面透視図である。
【0010】
図2に示されるように、桁座12が損傷を受けた場合、高所作業車を使用した点検が必要であり、時間と労力が必要となる。また、復旧作業を行うための作業空間が狭隘なので、復旧に長い時間がかかるだけでなく、復旧作業自体が困難となる場合もある。
【0011】
一般に、鋼角ストッパー31は、図3及び4に示されるように、取付けられている。図3に示されるように、前記鋼角ストッパー31の下端及びその近傍が桁座12に埋込まれ、桁座上面12aから上方に突出する鋼角ストッパー31の上端及びその近傍は桁端下面22aに開口するように桁端22に形成された上下方向に延在する空洞である上部収容空洞23内に隙間ばめで挿入されて収容されている。すなわち、前記鋼角ストッパー31の上端及びその近傍は、上部収容空洞23に対して水平方向の公差をもって嵌合している。また、鉄筋コンクリート製の桁座12の内部には、鋼角ストッパー31における桁座前面12bに対向する側を覆うように、複数の補強鉄筋33が埋込まれている。該補強鉄筋33は、図4に示されるように、桁座上面12aから観た形状が概略コ字状の第1補強鉄筋33aと、桁座上面12aから観た形状が概略へ字状の第2補強鉄筋33bとを含んでいる。そして、前記補強鉄筋33は、複数の層(図に示される例において、7層)を形成するように、上下方向に並んで配設されている。
【0012】
しかし、地震時のように大きな力Gが橋桁21に作用した際には、桁端22に形成された上部収容空洞23内に収容された鋼角ストッパー31の部分は、橋桁21の慣性力Fを受けることとなる。そして、該慣性力Fが大きいと、鋼角ストッパー31の下端及びその近傍が埋込まれた桁座12にせん断破壊が発生し、図3及び4において点線で示されるようなせん断破壊面14が生じてしまうことがある。
【0013】
桁座12に埋込まれた鋼角ストッパー31に慣性力Fが作用すると、桁座12の内部には、慣性力Fに釣合う反力として、図5において、点線の矢印で示されるような水平方向の応力分布σが生じる(例えば、非特許文献1参照。)。そして、鋼角ストッパー31における桁座前面12b側には水平方向の合力f1が作用し、桁座後面12c側には水平方向の合力f2が作用し、前記合力f1は、せん断破壊面14と交差する補強鉄筋33及びせん断破壊面14のコンクリートが負担する。
【非特許文献1】岡本大、佐藤勉、田所敏弥、松枝修平、「鋼角ストッパーの耐力に埋込み長さが及ぼす影響について」、土木学会第64回年次学術講演会概要集、CS2−021、2009.9
【0014】
ここでは、前記従来の技術の問題点を解決して、鋼角ストッパーが埋込まれたコンクリート構造物にプレストレスを付与することによって、コンクリート構造物内に生じる水平方向の応力を低減し、コンクリート構造物の耐久性を向上させることができる鋼角ストッパー埋込み部補強構造及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
そのために、鋼角ストッパー埋込み部補強構造においては、下部工であるコンクリート構造物と、少なくとも下端が前記コンクリート構造物に埋込まれ、少なくとも上端が前記コンクリート構造物の上面から突出し、前記コンクリート構造物の上に載置された上部工に形成された上部収容空洞内に水平方向の公差をもって嵌合している鋼角ストッパーと、前記コンクリート構造物に配設されたプレストレス付与部材とを備え、前記コンクリート構造物の前側面から内部に向かう水平方向のプレストレスであって、前記鋼角ストッパーが上部工から受ける外力と反対向きのプレストレス、前記プレストレス付与部材によって、前記コンクリート構造物に付与される。
【0016】
他の鋼角ストッパー埋込み部補強構造においては、さらに、前記プレストレス付与部材は、少なくとも前記コンクリート構造物の上面の近傍に配設される。
【0017】
更に他の鋼角ストッパー埋込み部補強構造においては、さらに、前記プレストレス付与部材は、前記鋼角ストッパーが延在する方向である上下方向に対して、及び、前記水平方向に対して直交する方向である左右方向に関して、少なくとも前記鋼角ストッパーの両側に配設される。
【0018】
更に他の鋼角ストッパー埋込み部補強構造においては、さらに、前記鋼角ストッパーから前記コンクリート構造物の前側面までの距離をdとすると、前記プレストレス付与部材は、前記左右方向に関して、少なくとも前記鋼角ストッパーの両側面から距離dまでの範囲内に配設される。
【0019】
更に他の鋼角ストッパー埋込み部補強構造においては、さらに、前記プレストレス付与部材は、前記左右方向に関して、少なくとも前記鋼角ストッパーの両側面から距離d/2までの範囲内に配設される。
【0020】
更に他の鋼角ストッパー埋込み部補強構造においては、さらに、前記コンクリート構造物はラーメン高架橋又は橋脚である。
【0021】
鋼角ストッパー埋込み部補強方法においては、鋼角ストッパーの少なくとも下端を下部工であるコンクリート構造物に埋込み、前記鋼角ストッパーの少なくとも上端を前記コンクリート構造物の上面から突出させ、前記コンクリート構造物の上に載置された上部工に形成された上部収容空洞内に水平方向の公差をもって嵌合させることと、前記コンクリート構造物にプレストレス付与部材を配設し、前記コンクリート構造物の前側面から内部に向かう水平方向のプレストレスであって、前記鋼角ストッパーが上部工から受ける外力と反対向きのプレストレス、前記プレストレス付与部材によって、前記コンクリート構造物に付与することと、を含む。
【発明の効果】
【0022】
本開示によれば、鋼角ストッパーが埋込まれたコンクリート構造物にプレストレスを付与する。これにより、コンクリート構造物内に生じる水平方向の応力を低減し、コンクリート構造物の耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】従来の鋼角ストッパーを下部工と上部工との連結部に適用した例を示す斜視図である。
図2】従来の鋼角ストッパーが埋込まれた下部工が地震によって受けた損傷を示す写真である。
図3】従来の鋼角ストッパーが埋込まれた下部工と上部工との連結部を示す模式側面透視図である。
図4】従来の鋼角ストッパーが埋込まれた下部工の損傷を説明する二面図である。
図5】従来の鋼角ストッパーが埋込まれた下部工に作用する応力を説明する模式側面透視図である。
図6】本実施の形態における鋼角ストッパー及びプレストレス付与部材が埋込まれた下部工と上部工との連結部を示す模式側面透視図である。
図7】本実施の形態における鋼角ストッパー及びプレストレス付与部材が埋込まれた下部工と上部工との連結部を示す模式正面透視図である。
図8】本実施の形態におけるプレストレスの付与位置を示す模式平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0025】
図6は本実施の形態における鋼角ストッパー及びプレストレス付与部材が埋込まれた下部工と上部工との連結部を示す模式側面透視図、図7は本実施の形態における鋼角ストッパー及びプレストレス付与部材が埋込まれた下部工と上部工との連結部を示す模式正面透視図、図8は本実施の形態におけるプレストレスの付与位置を示す模式平面図である。
【0026】
図において、22は、本実施の形態における上部工としての高架橋の橋桁の桁端であって、鉄筋コンクリート製である。なお、前記高架橋の橋桁は、鉄道用のものであってもよいし、道路用のものであってもよいし、いかなる用途のものであってもよいが、ここでは、説明の都合上、鉄道用のものであって、その上面に軌道25が敷設されるものとして説明する。また、12は、本実施の形態におけるコンクリート構造物である下部工としての橋脚の桁座であって、コンクリート構造物の上面としての桁座上面12a上に前記桁端22が載置されている。
【0027】
なお、本実施の形態においては、「背景技術」及び「発明が解決しようとする課題」の項における説明を援用し、下部工と上部工との連結部における各部の構造、動作及び効果であって、「背景技術」及び「発明が解決しようとする課題」の項において説明したものと同じものについては、図1〜5に示される符号と同じ符号を付与することによって、適宜、説明を省略する。
【0028】
また、本実施の形態において、下部工と上部工との連結部の各部及びその他の部材の構成及び動作を説明するために使用される上、下、左、右、前、後等の方向を示す表現は、絶対的なものでなく相対的なものであり、下部工と上部工との連結部の各部及びその他の部材が図に示される姿勢である場合に適切であるが、その姿勢が変化した場合には姿勢の変化に応じて変更して解釈されるべきものである。
【0029】
図6に示されるように、本実施の形態においては、鋼角ストッパー31の下端及びその近傍が埋込まれた桁座12のコンクリートにプレストレス付与部材35を配設することによって、前記コンクリートに矢印で示されるような水平方向のプレストレスPSを付与する。前記プレストレス付与部材35は、例えば、アンカーボルト等の細長い線状部材35aと、ボルトヘッドのような前記線状部材35aの頭部に係合するワッシャのような板部材35bとを含んでいる。なお、前記線状部材35aの少なくとも先端近傍には、ねじ山のように周囲のコンクリートと係合する定着手段が形成されている。そして、前記線状部材35aを、コンクリート構造物の側面の1つであって鋼角ストッパー31の前側に位置する桁座前面12bからその内部に向けて、すなわち、桁座後面12cに向けて水平に桁座12のコンクリート内に押込むと、板部材35bを介して、前側面としての桁座前面12bから内部に向かう水平方向のプレストレスPSが桁座12のコンクリートに付与される。
【0030】
図6に示されるような鋼角ストッパー31の下端回りのモーメントMの釣合いを考慮すると、プレストレスPSを付与する位置が桁座上面12aに近いほど、回転中心である鋼角ストッパー31の下端からの回転アーム長である距離hが長くなるので、プレストレスPSが有効に橋桁21の慣性力Fに抵抗することとなる。したがって、上下方向に関しての、プレストレス付与部材35を配設する位置、すなわち、プレストレスPSを付与する位置は、桁座上面12aの近傍であることが望ましい。
【0031】
また、図7に示されるように、左右方向、すなわち、横方向に関して、プレストレス付与部材35は、鋼角ストッパー31の左右両側に配設される。すなわち、鋼角ストッパー31の左右両側の位置にプレストレスPSが付与される。
【0032】
より具体的には、図8に示されるように、平面視において、プレストレスPSは、鋼角ストッパー31の左右両側面から距離dまでの範囲内に付与されることが望ましい。なお、距離dは、鋼角ストッパー31から桁座前面12bまでの距離である。
【0033】
過去の経験より、鋼角ストッパー31の前側のコンクリートに生じるひび割れ、すなわち、せん断破壊面14は、図8に示されるように、鋼角ストッパー31の前面の隅角部から45度の角度範囲内に集中することが分かっている。つまり、鋼角ストッパー31の前面に生じるせん断破壊面14は、水平方向に関して、鋼角ストッパー31の前面から、桁座前面12bにおける鋼角ストッパー31の左右両側面から距離dまでの範囲内に発生する可能性が高い、と言える。そして、せん断破壊面14の発生を確実に防止するためには、発生するであろうせん断破壊面14内にプレストレスPSを付与することが求められる。したがって、せん断破壊面14の発生を確実に防止するためには、せん断破壊面14が発生する確率の高い鋼角ストッパー31の左右両側面から距離dまでの範囲内にプレストレスPSを付与することが望ましく、さらに、鋼角ストッパー31の左右両側面から距離d/2までの範囲内にプレストレスPSを付与することが、より望ましい。
【0034】
なお、ここでは、鋼角ストッパー31の左右両側に、プレストレス付与部材35を1つずつ配設した例についてのみ説明したが、必要に応じて、2つずつ以上配設することもできる。また、上下方向に関して、桁座上面12aの近傍の1箇所のみにプレストレス付与部材35を配設した例についてのみ説明したが、必要に応じて、2箇所以上に配設することもできる。
【0035】
このように、本実施の形態における鋼角ストッパー埋込み部補強構造は、橋脚11の桁座12と、少なくとも下端が桁座12に埋込まれ、少なくとも上端が桁座上面12aから突出する鋼角ストッパー31と、桁座12に配設されたプレストレス付与部材35とを備え、桁座前面12bから内部に向かう水平方向のプレストレスPSが桁座12に付与される。これにより、プレストレスPSが、鋼角ストッパー31の桁座上面12aから突出する部分が受ける外力である慣性力Fに抵抗する。したがって、慣性力Fによって桁座12のコンクリート内に生じる応力が低減され、コンクリートの耐久性が向上する。
【0036】
また、プレストレス付与部材35は、少なくとも桁座上面12aの近傍に配設される。これにより、回転中心である鋼角ストッパー31の下端からの回転アーム長が長い位置にプレストレスPSが付与されるので、慣性力Fに有効に抵抗することができる。
【0037】
さらに、プレストレス付与部材35は、少なくとも鋼角ストッパー31の左右両側に配設される。これにより、鋼角ストッパー31の左右両側におけるせん断破壊面14の発生を防止することができる。
【0038】
さらに、鋼角ストッパー31から桁座前面12bまでの距離をdとすると、プレストレス付与部材35は、鋼角ストッパー31の左右方向に関して、少なくとも鋼角ストッパー31の左右両側面から距離dまでの範囲内に配設される。これにより、鋼角ストッパー31の前面にせん断破壊面14が発生することを確実に防止することができる。
【0039】
さらに、プレストレス付与部材35は、鋼角ストッパー31の左右方向に関して、少なくとも鋼角ストッパー31の左右両側面から距離d/2までの範囲内に配設される。これにより、鋼角ストッパー31の前面にせん断破壊面14が発生することを更に確実に防止することができる。
【0040】
なお、本明細書の開示は、好適で例示的な実施の形態に関する特徴を述べたものである。ここに添付された特許請求の範囲内及びその趣旨内における種々の他の実施の形態、修正及び変形は、当業者であれば、本明細書の開示を総覧することにより、当然に考え付くことである。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本開示は、鋼角ストッパー埋込み部補強構造及び方法に適用することができる。
【符号の説明】
【0042】
11 橋脚
12 桁座
12a 桁座上面
12b 桁座前面
31 鋼角ストッパー
35 プレストレス付与部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8