(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
コンバータと、主電動機を駆動制御するインバータと、前記コンバータと前記インバータとの間の直流中間回路に接続された蓄電池とを具備した電気車において、コンバータ電流と所与のコンバータ電流指令値とを用いて前記コンバータを制御するコンバータ制御装置であって、
架線電圧の電圧位相に基づいて、前記架線電圧に対する無効電流波形でなる無効電流指令値を生成するリプル電流制御部であって、当該無効電流波形の振幅を、前記蓄電池の電流を検出する検出器によって検出された蓄電池電流のリプル成分の実効値(以下「蓄電池リプル電流実効値」という)と、当該蓄電池リプル電流実効値の指令値である所与の指令値との差に基づいて決定するリプル電流制御部、
を具備し、所与の時間、前記コンバータ電流指令値に前記無効電流指令値を重畳させる制御を行って、前記蓄電池の充電電流にリプル成分を重畳させるコンバータ制御装置。
前記蓄電池の電圧を検出する検出器によって検出された蓄電池電圧のリプル成分の実効値と、前記蓄電池リプル電流実効値とを用いて、前記蓄電池の内部抵抗を算出する蓄電池内部抵抗算出部、
を更に備えた請求項1に記載のコンバータ制御装置。
コンバータと、主電動機を駆動制御するインバータと、前記コンバータと前記インバータとの間の直流中間回路に接続された蓄電池とを具備した電気車において、コンバータ電流と所与のコンバータ電流指令値とを用いて前記コンバータを制御するためのコンバータ制御方法であって、
架線電圧の電圧位相に基づいて、前記架線電圧に対する無効電流波形でなる無効電流指令値を生成することであって、当該無効電流波形の振幅を、前記蓄電池の電流を検出する検出器によって検出された蓄電池電流のリプル成分の実効値(以下「蓄電池リプル電流実効値」という)と、当該蓄電池リプル電流実効値の指令値である所与の指令値との差に基づいて決定して、当該無効電流指令値を生成することと、
所与の時間、前記コンバータ電流指令値に前記無効電流指令値を重畳させる制御を行って、前記蓄電池の充電電流にリプル成分を重畳させることと、
を含むコンバータ制御方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電気車における蓄電池を安全且つ長寿命に使用するためには、次の2つの課題がある、
【0005】
蓄電池には、低温下での容量低下という短所があるため、寒冷地や冬期の走行時には、蓄電池の加温が必要である。蓄電池を加温する手法としては、外部にヒータを設置する手法や、蓄電池を充電或いは放電(まとめて「通電」という)して内部発熱させる手法がある。前者の手法では、外部装置を追加設置することになり、設置スペースやコストの他、内部発熱に比較して蓄電池が充分に暖まるまでに時間を要するといった問題がある。後者の手法では、放電によって充電率が低下する問題や、満充電に近い場合には充電電流の電流値に制約が生じるといった問題がある。
【0006】
また、蓄電池の劣化の程度や寿命の目安となる蓄電池の内部抵抗を知る必要がある。内部抵抗は、通電電流を変化させて、そのときの蓄電池電圧の変化から正確に算出することができる。蓄電池の充電及び放電は一定直流電力で行われるため、内部抵抗を算出するためには、充電及び放電を一時中断する必要があるとともに、通電電流を変化させる必要がある。つまり、蓄電池充電及び放電を行いながら内部抵抗を正確に算出することは困難であるとともに、内部抵抗の測定用に通電電流を変化させる外部装置が必要となると、設置スペースやコストの問題も生じる。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、第1の目的とするところは、主回路に接続される蓄電池に対する効果的な加温を行う新たな技術を提案することである。また、第2の目的とするところは、蓄電池の内部抵抗をより正確に且つ任意のタイミングで算出可能とする新たな技術を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための第1の発明は、
コンバータと、主電動機を駆動制御するインバータと、前記コンバータと前記インバータとの間の直流中間回路に接続された蓄電池とを具備した電気車において、コンバータ電流と所与のコンバータ電流指令値とを用いて前記コンバータを制御するコンバータ制御装置であって、
架線電圧の電圧位相に基づいて、前記架線電圧に対する無効電流波形でなる無効電流指令値を生成するリプル電流制御部、
を具備し、所与の時間、前記コンバータ電流指令値に前記無効電流指令値を重畳させる制御を行って、前記蓄電池の充電電流にリプル成分を重畳させるコンバータ制御装置である。
【0009】
他の発明として、
コンバータと、主電動機を駆動制御するインバータと、前記コンバータと前記インバータとの間の直流中間回路に接続された蓄電池とを具備した電気車において、コンバータ電流と所与のコンバータ電流指令値とを用いて前記コンバータを制御するためのコンバータ制御方法であって、
架線電圧の電圧位相に基づいて、前記架線電圧に対する無効電流波形でなる無効電流指令値を生成することと、
所与の時間、前記コンバータ電流指令値に前記無効電流指令値を重畳させる制御を行って、前記蓄電池の充電電流にリプル成分を重畳させることと、
を含むコンバータ制御方法を構成しても良い。
【0010】
この第1の発明等によれば、架線電圧に対する無効電流波形でなる無効電流指令値を生成し、コンバータ電流指令値に重畳することで、蓄電池の充電電流に含まれるリプル成分を増加することができる。蓄電池の充電電流に重畳したリプル成分を増加することによって、蓄電池の内部発熱を増大させ、蓄電池を効果的に加温することができる。充電電流に重畳するリプル電流によって、蓄電池の充電電流の平均値は変化しない。
【0011】
第2の発明として、第1の発明のコンバータ制御装置であって、
前記リプル電流制御部は、前記蓄電池の電流を検出する検出器によって検出された蓄電池電流のリプル成分の実効値(以下「蓄電池リプル電流実効値」という)と、当該蓄電池リプル電流実効値の指令値である所与の指令値との差に基づいて、前記無効電流波形の振幅を決定する、
コンバータ制御装置を構成しても良い。
【0012】
この第2の発明によれば、無効電流指令値である無効電流波形の振幅は、検出された蓄電池リプル電流実効値と、この蓄電池リプル電流実効値の指令値との差に基づいて決定される。これにより、例えば希望する加温の速さや環境温度等に応じて蓄電池リプル電流実効値の指令値を変えることで、必要に応じた蓄電池の加温が可能となる。
【0013】
第3の発明として、第2の発明のコンバータ制御装置であって、
前記蓄電池の電圧を検出する検出器によって検出された蓄電池電圧のリプル成分の実効値と、前記蓄電池リプル電流実効値とを用いて、前記蓄電池の内部抵抗を算出する蓄電池内部抵抗算出部、
を更に備えたコンバータ制御装置を構成しても良い。
【0014】
この第3の発明によれば、検出された蓄電池電圧のリプル成分の実効値と、蓄電池リプル電流実効値とを用いて、蓄電池の内部抵抗を算出することができる。これにより、蓄電池の充電及び放電を行いつつ、蓄電池の内部抵抗を算出することができる。
【0015】
第4の発明は、
第1〜第3の何れかの発明のコンバータ制御装置を備えた電気車制御装置であって、前記電気車の起動時の暖機運転中に、前記コンバータ制御装置に対して、前記コンバータ電流指令値に前記無効電流指令値を重畳させる制御を行わせる電気車制御装置である。
【0016】
この第4の発明によれば、電気車の起動時の暖機運転中に、コンバータ電流指令値に無効電流指令値を重畳させて蓄電池リプル電流を増大する制御を行い、蓄電池を内部発熱させて加温することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[回路構成]
図1は、本実施形態における電気車の主回路構成の概略図である。本実施形態の電気車は、交流電化区間を走行する電気車であり、主回路として、コンバータ12と、インバータ16と、主電動機18と、蓄電池20とを備えるとともに、電気車制御装置30を搭載している。本実施形態の電気車は、交流電化区間を走行可能であればよいため、交流電気車でも交直流電気車でもよい。
【0019】
コンバータ12は、PWMコンバータであり、入力側が主変圧器10の二次巻線に接続され、出力側が直流中間回路14に接続されている。直流中間回路14は、直流ステージとも呼ばれ、コンバータ12とインバータ16との間の直流に係る回路部分である。コンバータ12は、主変圧器10を介して架線1から供給される単相交流電力を直流電力に変換する。コンバータ12の動作は、電気車制御装置30からのコンバータ電圧指令値v
c_refに従ったPWM制御によって実現される。
【0020】
なお、本実施形態では、説明の簡明化のため、電気車制御装置30のコンバータ制御装置32がコンバータ電圧指令値v
c_refを生成・出力して、コンバータ12がゲートパルス信号を内部で生成することとして説明するが、コンバータ制御装置32がコンバータ電圧指令値v
c_refを生成するとともに、このコンバータ電圧指令値v
c_refを三角波キャリアと比較してゲートパルス信号を生成し、ゲートパルス信号をコンバータ12に出力する構成としてもよいことは勿論である。
【0021】
直流中間回路14にはフィルタコンデンサC
dcが設けられている。インバータ16は、入力側が直流中間回路14に接続され、出力側が主電動機18に接続されている。インバータ16は、フィルタコンデンサC
dcを介して直流中間回路14の電圧である直流ステージ電圧v
dcを入力し、三相交流電圧に変換して、駆動電力として主電動機18に供給する。
【0022】
蓄電池20は、直列接続されたフィルタリアクトルL
fを介して直流中間回路14に接続されており、直流ステージ電圧v
dcとの相対電位差によって充電或いは放電を行う。
【0023】
電気車制御装置30は、コンバータ12を制御するコンバータ制御装置32と、充電制御部34と、無効電流制御部36とを有する。
【0024】
図2は、コンバータ制御装置32の制御ブロック図である。コンバータ制御装置32は、コンバータ制御部100と、リプル電流制御部120と、内部抵抗算出部140と、を有する。
【0025】
コンバータ制御部100は、蓄電池電流i
bと、直流ステージ電圧v
dcと、架線電圧v
pと、コンバータ電流i
cと、蓄電池電流指令値i
b_refと、無効電流指令値i
c_refqとを入力し、コンバータ12に対するコンバータ電圧指令値v
c_refを生成してコンバータ12を制御する。蓄電池電流i
bは、蓄電池20に直列接続された電流計による計測値であり、直流ステージ電圧v
dcは、フィルタコンデンサC
dcに並列接続された電圧計による計測値であり、架線電圧v
pは、主変圧器10の一次巻線に並列接続された計器用変圧器を介した電圧計による計測値または他の巻線電圧に基づく推定値であり、コンバータ電流i
cは、コンバータ12の入力側(交流側)に直列接続された電流計による計測値である。また、蓄電池電流指令値i
b_refは、充電制御部34から入力され、無効電流指令値i
c_refqは、リプル電流制御部120から入力される。
【0026】
コンバータ制御部100の各演算ブロックの構成を、演算順序を追って説明する。すなわち、先ず、蓄電池平均電流制御部104が、蓄電池電流指令値i
b_refと、LPF(Low Pass Filter)102によって抽出された蓄電池電流i
bの蓄電池平均電流i
baとに基づき、直流ステージ電圧指令値v
dc_refを生成する。蓄電池平均電流制御部104は、例えば、蓄電池電流指令値i
b_refと、蓄電池平均電流i
baとの差分Δi
bに対するPI制御によって、蓄電池平均電流i
baが蓄電池電流指令値i
b_refに追従するように、直流ステージ電圧指令値v
dc_refを生成する。
【0027】
次いで、直流ステージ電圧制御部106が、直流ステージ電圧指令値v
dc_refと、直流ステージ電圧v
dcとに基づき、コンバータ電流i
cのd軸電流指令値i
cd_refを生成する。直流ステージ電圧制御部106は、例えば、直流ステージ電圧指令値v
dc_refと、直流ステージ電圧v
dcとの差分Δv
dcに対するPI制御によって、直流ステージ電圧v
dcが直流ステージ電圧指令値v
dc_refに追従するように、コンバータ電流i
cのd軸電流指令値i
cd_refを生成する。
【0028】
また、PLL(Phase Locked Loop)108が、架線電圧v
pの位相θを検出して出力し、sin演算器110が、この架線電圧v
pの位相θと一致した同相波形値を生成する。そして、乗算器112が、直流ステージ電圧制御部106によって生成されたコンバータ電流i
cのd軸電流指令値i
cd_refに、sin演算器110によって生成された同相波形値を乗算してコンバータ電流指令値i
c_refdを生成する。続いて、加算器114が、コンバータ電流指令値i
c_refdに、リプル電流制御部120から入力される無効電流指令値i
c_refqを加算してコンバータ電流指令値i
c_refを生成する。
【0029】
そして、コンバータ電流制御部116が、コンバータ電流指令値i
c_refと、コンバータ電流i
cとに基づき、コンバータ電圧指令v
c_refを生成する。コンバータ電流制御部116は、例えば、コンバータ電流指令値i
c_refとコンバータ電流i
cとの差分Δi
cに対するPI制御によって、コンバータ電流i
cがコンバータ電流指令値i
c_refに追従するように、コンバータ電圧指令値v
c_refを生成する。
【0030】
リプル電流制御部120は、蓄電池電流i
bと、蓄電池リプル電流実効値指令値I
br_refと、実行選択信号S1と、位相選択信号S2とを入力して、無効電流指令値i
c_refqを生成し、この無効電流指令値i
c_refqをコンバータ制御部100のコンバータ電流指令値i
c_refに重畳させて、蓄電池電流i
bのリプル成分を制御する。蓄電池リプル電流実効値指令値I
br_refと、実行選択信号S1と、位相選択信号S2とは、無効電流制御部36から入力される。
【0031】
リプル電流制御部120の各演算ブロックの構成を、演算順序を追って説明する。すなわち、先ず、周波数フィルタであるBPF(Band Pass Filter)122が、蓄電池電流i
bから架線電圧v
pの周波数f
pの2倍の周波数2f
pの周波数成分をリプル成分i
brとして抽出する。そして、抽出したリプル成分i
brの実効値を実効値演算器124が蓄電池リプル電流実効値I
brとして算出する。次いで、加算器126が、蓄電池リプル電流実効値指令値I
br_refから蓄電池リプル電流実効値I
brを差し引いて差分ΔI
bを算出する。続いて、PI制御器128が、この差分ΔI
bに対するPI制御を行って、蓄電池リプル電流実効値I
brが蓄電池リプル電流実効値指令値I
br_refに追従するように、指令値I
qを生成する。更に、リミッタ130が、指令値I
qが、上限値I
qmaxを超えないように制限して、セレクタ132の一方の入力端子に出力する。
【0032】
セレクタ132は、一方の入力端子にリミッタ130の出力値が入力され、他方の入力端子に固定値「0」が入力されており、実行選択信号S1に従って、入力端子の何れかを選択的に出力端子に接続する。実行選択信号S1は、無効電流制御を実行するか否かを指示する信号である。実行選択信号S1によって「実行」が指示されると、セレクタ132は、一方の入力端子を出力端子に接続することで、指令値I
qを係数演算器134に出力させる。「非実行」が指示されると、他方の入力端子を出力端子に接続することで、「0」を係数演算器134に出力させる。
【0033】
係数演算器134は、セレクタ132からの出力値に所定の係数Kを乗算してコンバータ電流i
cのq軸電流指令値i
cq_refを生成する。係数Kは、位相選択信号S2に従って「−1」或いは「1」が選択される。位相選択信号S2は、無効電流指令値i
c_refqを遅れの無効電流とするか進みの無効電流とするかを指示する信号である。係数演算器134は、位相選択信号S2が「遅れ」の無効電流を指示する場合には「−1」を選択し、「進み」の無効電流を指示する場合には「1」を選択して、セレクタ132からの出力値に乗算する。
【0034】
また、cos演算器136は、コンバータ制御部100のPLL108によって検出された架線電圧v
pの位相θを90度進ませた進み波形値を生成する。そして、乗算器138が、進み波形値にコンバータ電流i
cのq軸電流指令値i
cq_refを乗算することで無効電流指令値i
c_refqを生成する。
【0035】
つまり、無効電流指令値i
c_refqは、架線電圧v
pに対する遅れの無効電流波形、或いは、進みの無効電流波形であり、その振幅が、蓄電池リプル電流実効値I
brと、蓄電池リプル電流実効値指令値I
br_refとの差分に応じた値となっている。
【0036】
内部抵抗算出部140は、蓄電池電圧v
bを入力し、蓄電池20の内部抵抗値Z
bを算出する。内部抵抗算出部140の各演算ブロックの構成を、演算順序を追って説明する。すなわち、BPF142が、蓄電池電圧v
bから架線電圧v
pの周波数f
pの2倍の周波数2f
pの周波数成分をリプル成分v
brとして抽出する。次いで、抽出したリプル成分v
brの実効値を実効値演算器144が蓄電池リプル電圧実効値V
brとして算出する。そして、乗除算器146が、蓄電池リプル電圧実効値V
brを、蓄電池リプル電流実効値I
brで除算することで蓄電池20の内部抵抗値Z
bを算出する。
【0037】
図1に戻り、充電制御部34は、蓄電池電流指令値I
c_refをコンバータ制御装置32に出力して、コンバータ制御装置32による蓄電池20の充電を制御する。
【0038】
無効電流制御部36は、蓄電池リプル電流実効値指令値I
br_refと、実行選択信号S1と、位相選択信号S2とをコンバータ制御装置32に出力することで、コンバータ制御装置32による、蓄電池電流i
bにリプル成分を重畳させる無効電流制御の実行を制御する。具体的には、実行選択信号S1を「実行」とすることで、無効電流制御を実行させ、実行選択信号S1を「非実行」とすることで、無効電流制御を実行させないようにすることができる。無効電流制御を実行させるときには、位相選択信号S2によって、無効電流指令値i
c_refqを、「遅れ」の電流指令値とするか、「進み」の電流指令値とするかを指示することができる。また、蓄電池リプル電流実効値指令値I
br_refは、所望する蓄電池電流i
bのリプル成分の実効値の大きさに応じて設定することができる。無効電流制御を実行させると、無効電流指令値i
c_refqがコンバータ電流指令値i
c_refに重畳されることで、直流ステージ電圧v
dcにリプル成分が重畳・増加されることとなる。この結果、蓄電池電流i
bにリプル成分が重畳・増加する。そして、蓄電池電流i
bのリプル成分によって蓄電池20が内部発熱し、これによって蓄電池20を加温することができる。
【0039】
また、蓄電池電流i
bのリプル成分によって蓄電池電圧v
bにもリプル成分が生じるため、内部抵抗算出部140による蓄電池20の内部抵抗値Z
bの算出が可能となる。無効電流制御が実行されていない場合、直流ステージ電圧v
dcは直流電圧であるため、蓄電池電流i
b、及び、蓄電池電圧v
bそれぞれのリプル成分は無い又は非常に小さく、内部抵抗算出部140による除乗算器146を用いた内部抵抗値Z
bの算出は精度が低いものとなる。
【0040】
これらのことから、無効電流制御部36は、例えば、電気車の起動時の暖機運転中などの蓄電池20の加温が必要なときに無効電流制御を実行させることで、追加装置の必要が無く、蓄電池20を加温することができる。また、電気車の起動時の暖機運転中の他、所定時間(例えば、数時間)毎などの定期あるいは不定期に無効電流制御を実行させて蓄電池20の内部抵抗値Z
bを算出することで、例えば、蓄電池20の劣化状態の把握などをすることができる。
【0041】
[動作]
図3は、無効電流制御における動作を説明するための図であり、回路シミュレーションによって求めたコンバータ制御装置32における架線電圧v
p、コンバータ電流i
c、及び、蓄電池電流i
bそれぞれの波形例を示している。
図3(a)〜(c)は、蓄電池20を、比較的小さな蓄電池電流i
bで充電(小電流充電)する場合の波形例であり、
図3(d)〜(f)は、蓄電池20を、比較的大きな蓄電池電流i
bで充電(大電流充電)する場合の波形例である。また、
図3(a),(d)は、無効電流制御を行わない場合、すなわち、実行選択信号S1を「非実行」とした場合の波形例である。
図3(b),(e)は、無効電流制御を行うとともに、遅れの無効電流指令値i
c_refqとした場合、すなわち、実行選択信号S1を「実行」とし、位相選択信号S2を「遅れ」とした場合の波形例である。
図3(c),(f)は、無効電流制御を行うとともに、進みの無効電流指令値i
c_refqとした場合、すなわち、実行選択信号S1を「実行」とし、位相選択信号S2を「進み」とした場合の波形例である。また、
図3(a)〜(f)は、何れも、蓄電池電流i
bの平均値I
baが蓄電池電流指令値i
b_refに一致するよう蓄電池平均電流制御を行っているとともに、
図3(b),(c),(e),(f)は、蓄電池電流i
bのリプル成分の実効値I
brが蓄電池リプル電流実効値指令値I
br_refと一致するよう無効電流制御を行っている。
【0042】
図3(a),(d)は、ともに無効電流制御を行わない場合であり、
図3(a)の小電流充電の場合より、
図3(d)の大電流充電の場合のほうが、蓄電池平均電流i
baが大きい。また、
図3(a)が小電流充電であり、
図3(d)が大電流充電であるため、コンバータ電流i
c及び蓄電池電流i
bの振幅は、
図3(d)の大電流充電のほうが大きい。また、架線電圧v
pと、コンバータ電流i
cとは同位相である。また、蓄電池電流i
bに含まれるリプル成分は、
図3(a)の小電流充電の場合には僅かであるが、
図3(d)の大電流充電の場合には、蓄電池平均電流i
baが大きいため、含まれるリプル成分も大きくなっている。
【0043】
図3(a),(b)を比較すると、無効電流制御を行うことで、蓄電池電流i
bのリプル成分が増加していることがわかる。但し、蓄電池平均電流i
baは、無効電流制御を行う場合も行わない場合も同じであり、無効電流制御を行っても、蓄電池20の充電電流の実効値は変化しない。また、
図3(b)では、遅れの無効電流指令値i
c_refqがコンバータ電流指令値i
c_refに重畳されるため、コンバータ電流i
cの振幅が増加するととともに、架線電圧v
pに対してコンバータ電流i
cの位相が遅れている。そして、コンバータ電流i
cが遅れ電流となることで、架線電圧v
pの振幅が僅かに低下している。
【0044】
図3(a),(c)を比較すると、同様に、無効電流制御を行うことで、蓄電池電流i
bのリプル成分が増加している。但し、蓄電池平均電流i
baは、無効電流制御を行う場合も行わない場合も同じである。また、
図3(c)では、進みの無効電流指令値i
c_refqがコンバータ電流指令値i
c_refqに重畳されるため、コンバータ電流i
cの振幅が増加するとともに、架線電圧v
pに対してコンバータ電流i
cの位相が進んでいる。そして、コンバータ電流i
cが進み電流となることで、架線電圧v
pの振幅が僅かに上昇している。
【0045】
また、
図3(d)〜(f)の大電流充電時においても、
図3(d),(e)の比較、
図3(d),(f)の比較は同様である。すなわち、無効電流制御を行うことで、蓄電池電流i
bのリプル成分が増加する。遅れの無効電流指令値i
c_refqとすることで、コンバータ電流i
cが架線電圧v
pに対して遅れ、架線電圧v
pの振幅が僅かに減少する。一方、進みの無効電流指令値i
c_refqとすることで、コンバータ電流i
cが架線電圧v
pに対して進み、架線電圧v
pの振幅が僅かに上昇する。
【0046】
[作用効果]
このように、本実施形態によれば、架線電圧v
pに対する無効電流波形でなる無効電流指令値i
c_refqを生成しコンバータ電流指令値i
c_refに重畳することで、蓄電池電流i
bに含まれるリプル成分を増加させ、蓄電池20に生じる内部発熱を増大させて蓄電池20を効果的に加温することができる。蓄電池電流i
bに重畳するリプル電流は、架線電圧v
pに対する無効電流であるので、リプル成分の重畳によって蓄電池電流i
bの実効値i
baは変化しない。また、蓄電池電流i
bにリプル成分を重畳することで、蓄電池電圧v
bのリプル成分の実効値V
brと、蓄電池リプル電流実効値I
brとを用いて、蓄電池20の内部抵抗を算出することができる。つまり、蓄電池20の充電及び放電を行いつつ、蓄電池20の内部抵抗を算出することができる。また、これらの作用効果は、蓄電池20を小電流充電するときも、大電流充電するときも同様に奏される。したがって、任意のタイミングで蓄電池20の加温や、内部抵抗の算出を行うことができる。