特許第6902001号(P6902001)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6902001
(24)【登録日】2021年6月22日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】燃料噴射弁
(51)【国際特許分類】
   F02M 51/08 20060101AFI20210701BHJP
   F02M 51/00 20060101ALI20210701BHJP
   F02M 51/06 20060101ALI20210701BHJP
【FI】
   F02M51/08 M
   F02M51/00 F
   F02M51/06 F
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-134991(P2018-134991)
(22)【出願日】2018年7月18日
(65)【公開番号】特開2020-12416(P2020-12416A)
(43)【公開日】2020年1月23日
【審査請求日】2020年4月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】田名田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】鎌原 本也
【審査官】 櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−130282(JP,A)
【文献】 特開2015−169126(JP,A)
【文献】 特開2000−297719(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0048379(US,A1)
【文献】 独国特許出願公開第102013112751(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 51/08
F02M 51/00
F02M 51/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向側の端部に噴射孔が設けられている弁ボディ(20)と、
前記弁ボディの内側に、前記第1方向とその反対の第2方向との両方向である軸線方向に変位可能に設けられ、前記第1方向に変位して前記噴射孔を塞ぎ、前記第2方向に変位して前記噴射孔を開くニードル弁(31)と、を備え、
前記弁ボディの内側における前記ニードル弁よりも前記第2方向側に、内部の圧力上昇により前記ニードル弁を前記第1方向に変位させ、内部の圧力低下により前記ニードル弁を前記第2方向に変位させる背圧室(36)が形成され、
前記背圧室内の圧力を制御するための第1制御弁(51)及び第2制御弁(52)を、前記弁ボディの内側に備え、且つ、前記第1制御弁を駆動する第1アクチュエータ(53)と、前記第2制御弁を駆動する第2アクチュエータ(54)と、を備える燃料噴射弁において、
前記第1制御弁及び前記第2制御弁のいずれの制御弁(51,52)も、開くと前記背圧室内の圧力を低圧通路(58)に逃がすものであり、
前記第2制御弁は、前記第1制御弁よりも前記軸線方向に長く、前記軸線方向に直交する方向を横として、前記第1制御弁の少なくとも一部の真横に前記第2制御弁の一部が配置され、且つ前記第1制御弁の前記第2方向側の端よりも前記第2方向側に前記第2制御弁の前記第2方向側の端が配置されており、
前記第1アクチュエータよりも前記第2方向側に前記第2アクチュエータが配置され、前記軸線方向にみた平面視で、前記第1アクチュエータの少なくとも一部に前記第2アクチュエータの一部が重なっている、燃料噴射弁。
【請求項2】
前記第2制御弁は、前記弁ボディに設けられている弁取付穴(49)に挿入され、前記弁取付穴の内周面と前記第2制御弁との隙間は、前記低圧通路の一部を構成している請求項1に記載の燃料噴射弁。
【請求項3】
前記第1制御弁は、前記ニードル弁よりも前記軸線方向に短い請求項1又は2に記載の燃料噴射弁。
【請求項4】
前記第1制御弁は、前記軸線方向に延びる第1棒状部(51b)と、前記第1棒状部の前記第2方向側の端部から前記横に突出する傘状の第1傘状部(51a)とを有し
前記第2制御弁は、前記軸線方向に延びる第2棒状部(52b)と、前記第2棒状部の前記第2方向側の端部から前記横に突出する傘状の第2傘状部(52a)とを有し、
前記第1傘状部の真横に前記第2棒状部の一部が配置され、
前記軸線方向にみた平面視で、前記第1棒状部の中心に前記第2傘状部及び前記第2アクチュエータが重なっている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料噴射弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料を噴射する燃料噴射弁に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料噴射弁の中には、弁ボディと、ニードル弁と、第1及び第2制御弁と、第1及び第2アクチュエータとを備えたものがある。弁ボディの下端部には、噴射孔が設けられている。ニードル弁は、弁ボディの内側に上下方向に変位可能に設けられており、下降して噴射孔を塞ぎ、上昇して噴射孔を開く。弁ボディの内側におけるニードル弁よりも上方には、背圧室が設けられている。背圧室は、その内部の圧力上昇によりニードル弁を下降させ、内部の圧力低下によりニードル弁を上昇させる。両制御弁は、弁ボディの内側に上下方向に変位可能に設けられており、背圧室の圧力を制御する。第1アクチュエータは、第1制御弁を駆動する。第2アクチュエータは,第2制御弁を駆動する。
【0003】
特許文献1では、このような燃料噴射弁において、第1制御弁が第2制御弁の内側に入り込む制御弁の同軸配置にすることにより、制御弁の省スペース化を図っている。さらに、第1アクチュエータが第2アクチュエータの内側に入り込むアクチュエータの同軸配置にすることにより、アクチュエータの省スペース化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−297719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、第1アクチュエータが第2アクチュエータの内側に入り込むため、第1アクチュエータの磁極面面積を外方へ拡大することが制限されると共に、第2アクチュエータの磁極面面積を内方へ拡大することが制限されてしまう。それにより、アクチュエータの駆動力も制限されてしまう。そのため、高圧燃料システムへの対応が困難になってしまう。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、第1及び第2アクチュエータの省スペース化を図りつつ、第1アクチュエータ又は第2アクチュエータの面積及び駆動力を大きくし易くすることにより、高圧燃料システムに対応し易くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の燃料噴射弁は、第1方向側の端部に噴射孔が設けられている弁ボディと、前記弁ボディの内側に、前記第1方向とその反対の第2方向との両方向である軸線方向に変位可能に設けられ、前記第1方向に変位して前記噴射孔を塞ぎ、前記第2方向に変位して前記噴射孔を開くニードル弁と、を備える。前記弁ボディの内側における前記ニードル弁よりも前記第2方向側には、内部の圧力上昇により前記ニードル弁を前記第1方向に変位させ、内部の圧力低下により前記ニードル弁を前記第2方向に変位させる背圧室が形成されている。前記燃料噴射弁は、前記背圧室内の圧力を制御するための第1制御弁及び第2制御弁を、前記弁ボディの内側に備え、且つ、前記第1制御弁を駆動する第1アクチュエータと、前記第2制御弁を駆動する第2アクチュエータとを備える。
【0008】
前記第2制御弁は、前記第1制御弁よりも前記軸線方向に長い。前記軸線方向に直交する方向を横として、前記第1制御弁の少なくとも一部の真横に前記第2制御弁の一部が配置され、且つ前記第1制御弁の前記第2方向側の端よりも前記第2方向側に前記第2制御弁の前記第2方向側の端が配置されている。前記第1アクチュエータよりも前記第2方向側に前記第2アクチュエータが配置されている。前記軸線方向にみた平面視で、前記第1アクチュエータの少なくとも一部に前記第2アクチュエータの一部が重なっている。
【0009】
本発明によれば、第1制御弁51よりも第2制御弁を長くすることにより、第1制御弁の真横に第2制御弁を配しつつも、第1制御弁を駆動する第1アクチュエータよりも第2方向側に、第2制御弁52を駆動する第2アクチュエータを配置している。それにより、第1アクチュエータ53と第2アクチュエータ54とを干渉し合わないようにして、平面視で第1アクチュエータ53に第2アクチュエータ54の一部を重ねている。そのため、第1及び第2アクチュエータの省スペース化を図りつつも、第1アクチュエータ又は第2アクチュエータの面積を大きくし易くなり、それにより駆動力も大きくし易くなる。そのため、高圧燃料システムに対応し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態の燃料噴射弁を示す正面断面図
図2図1の燃料噴射弁の一部を拡大した正面断面図
図3図2の燃料噴射弁の平面断面図
図4図3の燃料噴射弁を図2とは異なる角度で切った断面図
図5】比較例1の制御弁及びアクチュエータの配置を示す図
図6】比較例2の制御弁及びアクチュエータの配置を示す図
図7】第1実施形態の制御弁及びアクチュエータの配置を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。但し、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実施できる。
【0012】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の燃料噴射弁93を示す正面断面図である。燃料噴射弁93は、自動車のエンジンに適用される燃料噴射システム90に搭載される。エンジンは、燃料として、軽油、ガソリン、エタノール、それらを混合した混合燃料等、液体燃料を用いることができる。
【0013】
燃料噴射システム90は、蓄圧容器91、高圧配管92、燃料噴射弁93、ECU94を備えている。蓄圧容器91には、図示しない高圧ポンプから高圧燃料が供給される。蓄圧容器91は、高圧燃料を高圧状態で内部に保持する。蓄圧容器91には、各高圧配管92を介して、各燃料噴射弁93(図1では1つのみ表示)が接続されている。
【0014】
燃料噴射弁93は、弁ボディ20と、ニードル弁31と、第1制御弁51と、第2制御弁52と、第1アクチュエータ53と、第2アクチュエータ54とを備える。なお、以下では、図面に合わせて、ニードル弁31の長手方向(軸線方向)の一方を下方といい、当該長手方向の他方を上方というが、燃料噴射弁93は、例えば、当該長手方向を上下方向に対して斜めにして設置したり、当該長手方向を水平方向にして設置したりする等、任意の方向に設置することができる。本実施形態でいう下方向は、本発明でいう第1方向に相当し、本実施形態でいう上方向は、本発明でいう第2方向に相当する。また、以下では、ニードル弁31の長手方向(上下方向)に直交する方向を横という。
【0015】
弁ボディ20は、下から順に、ノズルボディ24、制御室プレート23、オリフィスプレート22、インジェクタボディ21を有する。そして、ノズルボディ24と制御室プレート23とオリフィスプレート22とは、インジェクタボディ21の下部にリテーニングナット29により締結されている。
【0016】
ノズルボディ24は、上方に開口した筒状の部材であり、その下端部に噴射孔34が設けられている。そのノズルボディ24の内側に、ニードル弁31が上下方向に変位可能に挿入されている。ノズルボディ24の内周面の一部は、ニードル弁31の外周面に摺接することによりニードル弁31を上下方向に案内するガイド38を構成している。ニードル弁31は、下降して噴射孔34を塞ぎ、上昇して噴射孔34を開く。弁ボディ20内には、高圧通路13と、制御室46と、背圧室36と、低圧通路58とが設けられている。
【0017】
高圧通路13は、蓄圧容器91から高圧配管92を経てインジェクタボディ21内に供給される高圧燃料を、噴射孔34に送るための通路であり、インジェクタボディ21、オリフィスプレート22、制御室プレート23の内部を通ってノズルボディ24にまで延びている。また、ノズルボディ24の内周面とニードル弁31との間の隙間も、高圧通路13の一部を構成している。ニードル弁31のガイド38に摺接する部分どうしの間には、高圧通路13を確保するためのカット部37が設けられている。
【0018】
低圧通路58は、背圧室36及び制御室46内の圧力を逃がすための通路であり、インジェクタボディ21内に設けられている。
【0019】
図2は、図1の一部を拡大した図である。詳しくは、その図2に示すIII−III線の断面図が、図3であり、その図3に示すII−II線の断面図が、図2である。
【0020】
背圧室36は、ノズルボディ24の内側におけるニードル弁31よりも上方に設けられている。詳しくは、ニードル弁31の上部には、シリンダ35が外嵌されており、そのシリンダ35とニードル弁31との間には、ニードル弁31を下方に押圧すると共に、その反力でシリンダ35を上方に押圧するニードル弁スプリング32が取り付けられている。その押圧力によりシリンダ35が制御室プレート23に押し当てられる。そして、その制御室プレート23とシリンダ35とニードル弁31とに囲まれた空間が、背圧室36を構成している。背圧室36は、その内部の圧力上昇によりニードル弁31を下降させ、内部の圧力低下によりニードル弁31を上昇させる。
【0021】
制御室46は、制御室プレート23に設けられた上方に開口する凹部の開口が、オリフィスプレート22により塞がれることにより形成されている。制御室46は、制御室プレート23に設けられた接続路47を介して、背圧室36に連通している。オリフィスプレート22の下端部には、中間室26を構成する下方に開口した凹部が形成されおり、その凹部(中間室26)の天井面からオリフィスプレート22の上端面にまで貫通する形で、第1流出路25が設けられている。その第1流出路25は、中間室26と低圧通路58とを連通させている。中間室26を構成する凹部は、その開口が塞がれることにより、圧力室として機能する。また、オリフィスプレート22の下端面における中間室26の周囲には、下方に開口した環状の環状溝16が凹設されている。また、オリフィスプレート22には、第2流出路27が上下方向に貫通する形で設けられている。第2流出路27は、制御室46と低圧通路58とを連通させており、第2流出路27には、流出路オリフィス27aが設けられている。
【0022】
制御室46内には、従動弁41が上下方向に変位可能に設置されると共に、従動弁41を上方に押圧する従動弁スプリング45が設けられている。従動弁41は、制御室46の天井面に当接した際には、中間室26の開口を塞ぐと共に環状溝16の開口を塞ぐ。その従動弁41には、制御室46と中間室26とを連通させるための連通路42が設けられている。その連通路42には、連通路オリフィス42aが設けられている。他方、第1流出路25にはオリフィスが設けられていない。そのため、従動弁41が制御室46の天井面に当接し、且つ第1流出路25の上側の開口が開かれた状態では、連通路オリフィス42aを経て中間室26内に流入した高圧燃料が、オリフィスを備えない第1流出路25から素早く低圧通路58内に排出されることとなる。他方、従動弁41が制御室46の天井面に当接し、且つ第1流出路25の上側の開口が閉じられた状態では、連通路オリフィス42aを経て中間室26内に流入した高圧燃料が中間室26に蓄積することにより、中間室26内の圧力が上昇する。
【0023】
図4は、図3に示すIV−IV線の断面図である。インジェクタボディ21、オリフィスプレート22、制御室プレート23のそれぞれには、高圧通路13の一部を構成する穴が設けられている。それらの穴は、正面視で低圧通路58の後方に設けられている。
【0024】
オリフィスプレート22には、高圧通路13内の高圧燃料を制御室46に流入させるための流入路14が設けられている。その流入路14は、環状溝16に連通している。流入路14には、流入路オリフィス14aが設けられている。
【0025】
図2に示すように、インジェクタボディ21の下端部には、下方に開口した円筒状の第1収納凹部44が設けられている。その第1収納凹部44に、第1制御弁51と第1アクチュエータ53とが収納されている。
【0026】
第1制御弁51は、第1流出路25の上側の開口を開閉するための弁であり、上昇して第1流出路25の上側の開口を開き、下降して当該開口を塞ぐ。第1制御弁51は、上下方向に延びる棒状部51bと、棒状部51bの上端部に設けられた傘状の傘状部51aと、棒状部51bの下端部に取り付けられた弁部51cと、を有する。第1制御弁51は、ニードル弁31よりも上下方向に短い。第1収納凹部44には、棒状部51bを上下方向に摺動可能に支持する第1支持部材61が設置されている。詳しくは、第1支持部材61は筒状の部材であって、その内側に棒状部51bが上下方向に摺動可能に挿入されている。第1収納凹部44の内側における各部材どうしの間の隙間等は、低圧通路58の一部を構成している。
【0027】
弁部51cは、上部が半球状の形状をしており、その半球状の上部が、棒状部51bの下端面に凹設された半球状の凹部内に収納されている。それにより、棒状部51bの下端部に対して、弁部51cが回動可能に係合している。そのため、例えば、寸法精度の誤差や熱膨張や外乱等により棒状部51bが所望の状態から僅かに傾いた場合にも、その傾きを棒状部51bと弁部51cとの間で吸収することができる。そのため、弁部51cで第1流出路25の上側の開口を確実に塞ぐことができる。棒状部51bと弁部51cとは、一緒に上下方向に変位する。第1制御弁51が上下方向に変位するストロークは、ニードル弁31が上下方向に変位するストロークよりも短い。
【0028】
第1アクチュエータ53は、第1制御弁51の上端部(傘状部51a)に作用することにより、第1制御弁51を上下方向に駆動する。詳しくは、第1制御弁51の上方には、第1制御弁51を下方に押圧する第1制御弁スプリング55が設けられている。その周囲に筒状の第1アクチュエータ53が設けられている。本実施形態では、第1アクチュエータ53は、ソレノイドであり、通電されると第1制御弁51の上端部を磁力で引き寄せることにより、第1制御弁51を上昇させる。それにより、第1流出路25の上側の開口を開く。他方、当該通電が解除されると、当該引き寄せを行わなくなることにより、第1制御弁51が第1制御弁スプリング55の押圧力により下降する。それにより、第1流出路25の上側の開口が閉じられる。第1アクチュエータ53の通電は、ECU94により制御される。
【0029】
図1に示すように、インジェクタボディ21の上端部には、上方に開口した円筒状の第2収納凹部48が設けられている。平面視で、第2収納凹部48の中心線は、第1収納凹部44の中心線から偏心している。インジェクタボディ21には、第2収納凹部48の底面からインジェクタボディ21の下端面にまで貫通した弁取付穴49が設けられている。
【0030】
第2制御弁52は、第2流出路27の上側の開口を開閉するための弁であり、上昇して第2流出路27の上側の開口を開き、下降して当該開口を塞ぐ。第2制御弁52は、上下方向に延びる棒状部52bと、棒状部52bの上端部に設けられた傘状の傘状部52aと、棒状部52bの下端部に取り付けられた弁部52cと、弁部52cに外嵌めされたリング52dとを有する。本実施形態では、第2制御弁52は、傘状部52aと棒状部52bとが一体形成され、弁部52c及びリング52dがそれらと別体で形成されている。但し、傘状部52aと棒状部52bとを別体で形成して、それらを結合させもよい。また、棒状部52bを上下方向に複数の部材に分割形成して、それらを結合させてもよい。
【0031】
第2制御弁52は、その棒状部52bと弁部52cとリング52dとが弁取付穴49に挿入されると共に、傘状部52aが第2収納凹部48に収納されることにより、インジェクタボディ21内に上下方向に摺動可能に設置されている。第2制御弁52は、ニードル弁31よりも上下方向に長い。第2制御弁52が上下方向に変位するストロークは、ニードル弁31が上下方向に変位するストロークよりも短い。第2収納凹部48の内側には、棒状部52bの上部を上下方向に摺動可能に支持する第2支持部材62が設置されている。詳しくは、第2支持部材62は、筒状の部材であり、その内側に棒状部52bの上部が摺動可能に挿入されている。第2収納凹部48における第2支持部材62よりも下方は、低圧通路58の一部を構成している。弁部52cは、第1制御弁51の弁部51cと同様の形状及び機能を有する。
【0032】
図2に示すように、弁取付穴49の内周面と棒状部52bとの間の隙間は、低圧通路58の一部を構成している。詳しくは、弁取付穴49の内径が、第2制御弁52の外径よりも一回り大きくなっている。そして、リング52dが、弁取付穴49の内周面に摺接することにより、第2制御弁52の下端部を横方向にずれにくくしている。
【0033】
図1に示すように、第2制御弁52は、その下端が弁ボディ20の上下中央部C1よりも下方に配置され、上端が弁ボディ20の上下中央部C1よりも上方に配置されている。弁ボディ20の上下中央部C1は、ノズルボディ24の下端の高さからインジェクタボディ21の上端の高さにまで上下方向に延びる線分の二等分線である。具体的には、第2制御弁52は、その下端がインジェクタボディ21の上下中央部C2よりも下方に配置され、上端がインジェクタボディ21の上下中央部C2よりも上方に配置されている。インジェクタボディ21の上下中央部C2は、インジェクタボディ21の下端の高さからインジェクタボディ21の上端の高さにまで上下方向に延びる線分の二等分線である。より具体的には、本実施形態では、第2制御弁52は、その下端がインジェクタボディ21の下端部に配置され、上端がインジェクタボディ21の上端部に配置されている。
【0034】
第2アクチュエータ54は、第2制御弁52の上端部(傘状部52a)に作用することにより、第2制御弁52を上下方向に駆動する。詳しくは、第2制御弁52の上方には、第2制御弁52を下方に付勢する第2制御弁スプリング56が設けられている。その周囲に筒状の第2アクチュエータ54が設けられている。本実施形態では、第2アクチュエータ54は、ソレノイドであり、通電されると第2制御弁52の上端部を磁力で引き寄せることにより、第2制御弁52を上昇させる。それにより、第2流出路27の上側の開口を開く。他方、当該通電が解除されると、当該引き寄せを行わなくなることにより、第2制御弁52が第2制御弁スプリング56の押圧力により下降する。それにより、第2流出路27の上側の開口が閉じられる。第2アクチュエータ54は、締結部材57によって、インジェクタボディ21の上部に取り付けられている。第2アクチュエータ54の通電は、ECU94により制御される。
【0035】
次に、図2を参照しつつ、本実施形態の燃料噴射弁93の機能について、説明する。基本的には、第2制御弁52の開閉に関係なく、第1制御弁51を開くと、制御室46内及び背圧室36内が低圧になりニードル弁31が上昇する。但し、第2制御弁52を開きつつ第1制御弁51を開くと、相対的に速く制御室46内及び背圧室36内が低圧になり、第2制御弁52を閉じつつ第1制御弁51を開くと、相対的に遅く制御室46内及び背圧室36内が低圧になる。また、基本的には、第2制御弁52の開閉に関係なく、第1制御弁51を閉じると、制御室46内及び背圧室36内が高圧になりニードル弁31が下降する。但し、第2制御弁52を閉じつつ第1制御弁51を閉じると、相対的に速く制御室46内及び背圧室36内が高圧になり、第2制御弁52を開きつつ第1制御弁51を閉じると、相対的に遅く制御室46内及び背圧室36内が高圧になる。詳しくは、次のとおりである。
【0036】
少なくとも第1制御弁51が閉じることにより、制御室46内及び背圧室36内が高圧になってニードル弁31が下がった状態から、第1制御弁51及び第2制御弁52の両方が開いた状態になると、制御室46内の圧力は、連通路42、中間室26及び第1流出路25を経て低圧通路58に流出すると共に、第2流出路27からも低圧通路58に流出する。そのため、制御室46内及び背圧室36内が相対的に速く低圧になり、ニードル弁31が相対的に速く上昇する。
【0037】
他方、同じくニードル弁31が下がった状態から、第1制御弁51が開き且つ第2制御弁52が閉じた状態になると、制御室46内の圧力は、連通路42、中間室26及び第1流出路25を経て低圧通路58に流出するが、第2流出路27からは低圧通路58に流出しない。そのため、制御室46内及び背圧室36内が相対的に遅く低圧になり、ニードル弁31が相対的に遅く上昇する。
【0038】
また、少なくとも第1制御弁51が開くことにより制御室46内及び背圧室36内が低圧になってニードル弁31が上がった状態から、第1制御弁51及び第2制御弁52の両方が閉じた状態になると、制御室46内から連通路オリフィス42aを経て中間室26内に流入する圧力が第1流出路25から低圧通路58に抜けなくなることにより、中間室26内の圧力が上昇する。その中間室26内の圧力上昇により、従動弁41が下方に押し下げられて、従動弁41が、制御室46の天井面から離間する。そのため、環状溝16が開いて、高圧通路13内の高圧燃料が、流入路14及び環状溝16を経て制御室46内に流入する。このとき、両制御弁51,52は閉じているので、その流入した高圧燃料は、そのまま制御室46内及び背圧室36内に蓄積する。それにより、制御室46内及び背圧室36内が相対的に速く高圧になり、ニードル弁31が相対的に速く下降する。
【0039】
他方、同じくニードル弁31が上がった状態から、第1制御弁51が閉じ且つ第2制御弁52が開いた状態になった場合にも、上記と同様のメカニズムで、従動弁41が制御室46の天井面から離間して、高圧通路13内の高圧燃料が制御室46内に流入する。そのため、制御室46内の圧力が上昇する。但しこのとき、第2制御弁52は開いているので、その流入した高圧燃料の一部は、第2流出路27を経て低圧通路58に流出する。そのため、制御室46内及び背圧室36内が相対的に遅く高圧になり、ニードル弁31が相対的に遅く下降する。
【0040】
図5(a)は、比較例1の両アクチュエータ53,54の位置関係を示す平面図であり、図5(b)は、そのVb−Vb線の断面図である。比較例1は、第1制御弁51及び第1アクチュエータ53の真横に、それらと同じサイズの第2制御弁52及び第2アクチュエータ54を並べて配置した場合の例である。この比較例1では、両アクチュエータ53,54の外径の和が、弁ボディ20の内径よりも小さくなるようにしなければならない。
【0041】
図6(a)は、比較例2の両アクチュエータ53,54の位置関係を示す平面図であり、図6(b)は、そのVIb−VIb線の断面図である。比較例2は、第2制御弁52の内側に第1制御弁51を配置すると共に、第2アクチュエータ54の内側に第1アクチュエータ53を配置した場合の例である。この比較例2では、第1アクチュエータ53を外方へ拡大することが第2アクチュエータ54により制限されると共に、第2アクチュエータ54を内方へ拡大することが第1アクチュエータ53により制限される。
【0042】
図7(a)は、本実施形態の両アクチュエータ53,54の位置関係を示す平面図であり、図7(b)は、そのVIIb−VIIb線の断面図である。上記のとおり、平面視で、第1収納凹部44の中心線と第2収納凹部48の中心線とは偏心している。そのため、第1収納凹部44に収納されている第1制御弁51及び第1アクチュエータ53の中心線は、第2収納凹部48に収納されている第2制御弁52及び第2アクチュエータ54の中心線から偏心している。
【0043】
このように、第1制御弁51よりも第2制御弁52を長くすることにより、第1制御弁51の真横に第2制御弁52の下部を配置しつつも、第1制御弁51を駆動する第1アクチュエータ53よりも上方に、第2制御弁52を駆動する第2アクチュエータ54を配置している。それにより、第1アクチュエータ53と第2アクチュエータ54とを干渉し合わないようにして、平面視で第1アクチュエータ53に第2アクチュエータ54の一部を重ねている。
【0044】
本実施形態によれば、次の効果を得ることができる。第1流出路25及び第2流出路27、第1制御弁51及び第2制御弁52、並びに第1アクチュエータ53及び第2アクチュエータ54等を備えた構成にすることにより、ニードル弁31の上昇速度及び下降速度を制御することができる。
【0045】
また、平面視で第1アクチュエータ53に第2アクチュエータ54の一部を重ねているため、第1アクチュエータ53又は第2アクチュエータ54の面積(特に第2アクチュエータ54の面積)を大きくし易くなる。そのため、第1アクチュエータ53及び第2アクチュエータ54の省スペース化を図りつつも、第1アクチュエータ53又は第2アクチュエータ54の磁極面面積を大きくし易くなり、それにより駆動力を大きくし易くなる。そのため、例えば、アクチュエータを1つのみ備える燃料噴射弁と同等の体格で、高圧燃料システムに対応し易くなる。
【0046】
また、第2制御弁52がニードル弁31よりも長く、それにより第2制御弁52がインジェクタボディ21の上部にまで延びているため、第2制御弁52を駆動する第2アクチュエータ54を、インジェクタボディ21の上部又は上方に配置し易くなる。そのインジェクタボディ21の上部又は上方では、下部に比べて第2アクチュエータ54の設置スペースを大きく確保し易いため、これによっても、第2アクチュエータ54の面積を大きくし易くなる。
【0047】
また、第1制御弁51については、ニードル弁31よりも短いため、質量も小さい。そのため、比較的小さい第1アクチュエータ53でも、充分高応答に制御することができる。
【0048】
また、弁取付穴49の内周面と第2制御弁52との間の隙間が低圧通路58の一部を兼ねることにより、弁ボディ20の構造をシンプルにすることができる。
【0049】
[他の実施形態]
なお、本実施形態は、次のように変更して実施することもできる。例えば、第1アクチュエータ53又は第2アクチュエータ54を、ピエゾアクチュエータ等のソレノイド以外のアクチュエータにしてもよい。また、例えば、第2アクチュエータ54を、インジェクタボディ21の上端部又は上方に設ける代わりに、それ以外の位置に設けてもよい。
【0050】
また、例えば、各オリフィス14a,27a,42aを形成する代わりに、それらを備える流路14,27,42自体の径を小さくすることにより、当該流路14,27,42自体をオリフィスとして機能させてもよい。
【0051】
また、例えば、第2制御弁52の長手方向をニードル弁31の長手方向(上下方向)にして設置するのに代えて、第2制御弁52の長手方向をニードル弁31の長手方向に対して若干斜めにして設置してもよい。また、例えば、第2制御弁52が第2流出路27を開閉する構成に代えて、第2制御弁52が流入路14を開閉する構成にしてもよい。
【0052】
また、例えば、弁取付穴49の内径を第2制御弁52の外径よりも一回り大きくするのに代えて、弁取付穴49又は第2制御弁52に上下方向に延びる溝を設けて、その溝により低圧通路58を確保してもよい。また、例えば、弁取付穴49の内周面と棒状部52bとの間の隙間を低圧通路58の一部にするのに代えて、弁取付穴49の横にそれと平行に延びる穴を設けて、その穴を低圧通路58の一部にしてもよい。
【0053】
また、例えば、従動弁41をなくしてもよい。その場合には、第1制御弁51及び第2制御弁52の両方を閉じれば、制御室46内及び背圧室36内が高圧になり、その状態から、第1制御弁51及び第2制御弁52の両方を開けば、相対的に速く低圧になり、一方のみを開けば、相対的に遅く低圧になることとなる。
【0054】
また、例えば、図7(a)では、平面視で、第1アクチュエータ53の一部に、第2アクチュエータ54の一部が重なっているが、平面視で、第1アクチュエータ53の全部に、第2アクチュエータ54の一部が重なるようにしてよい。また、例えば、図7(b)では、第1制御弁51の全体の真横に第2制御弁52の下部を配置しているが、第1制御弁51の上部のみの真横に第2制御弁52の下部を配置してもよい。
【符号の説明】
【0055】
20…弁ボディ、31…ニードル弁、34…噴射孔、36…背圧室、51…第1制御弁、52…第2制御弁、53…第1アクチュエータ、54…第2アクチュエータ、93…燃料噴射弁。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7