特許第6902008号(P6902008)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 矢崎総業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6902008-シート付ハーネス 図000002
  • 特許6902008-シート付ハーネス 図000003
  • 特許6902008-シート付ハーネス 図000004
  • 特許6902008-シート付ハーネス 図000005
  • 特許6902008-シート付ハーネス 図000006
  • 特許6902008-シート付ハーネス 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6902008
(24)【登録日】2021年6月22日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】シート付ハーネス
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/00 20060101AFI20210701BHJP
   B60R 13/02 20060101ALI20210701BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20210701BHJP
【FI】
   H01B7/00 301
   B60R13/02 A
   B60R16/02 620Z
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-200108(P2018-200108)
(22)【出願日】2018年10月24日
(65)【公開番号】特開2020-68119(P2020-68119A)
(43)【公開日】2020年4月30日
【審査請求日】2019年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】木須 直己
(72)【発明者】
【氏名】山口 敦吉
(72)【発明者】
【氏名】近藤 浩一
(72)【発明者】
【氏名】竹田 準
【審査官】 神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭53−013716(JP,U)
【文献】 実開昭61−035318(JP,U)
【文献】 特開2017−188253(JP,A)
【文献】 特開2002−249004(JP,A)
【文献】 特開2001−130339(JP,A)
【文献】 特開昭63−046945(JP,A)
【文献】 特開2014−231272(JP,A)
【文献】 特開平01−307180(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/00
B60R 13/02
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟性を有する折り畳み可能な1枚のシート部材と、
前記シート部材上に配索される複数本の電線と、を備え、
前記シート部材は、前記複数本の電線の一側のみに設けられ、
前記複数本の電線は、折り畳み可能な前記シート部材の端部では、束ねられて束ね部分を形成し、折り畳み可能な前記シート部材の端部よりも中央側では、前記束ね部分以外で分岐部を有さないように且つ収束された状態にならないようにバラバラに単一の電線の状態で折り畳み可能な前記シート部材に取り付けられて配索されている、
ことを特徴とするシート付ハーネス。
【請求項2】
柔軟性を有する折り畳み可能な1枚のシート部材と、
前記シート部材上に配索される複数本の電線と、を備え、
前記シート部材は、前記複数本の電線の一側のみに設けられ、
前記複数本の電線は、折り畳み可能な前記シート部材の外側では、束ねられて束ね部分を形成し、折り畳み可能な前記シート部材の内側では、前記束ね部分以外で分岐部を有さないように且つ収束された状態にならないようにバラバラに単一の電線の状態で折り畳み可能な前記シート部材に取り付けられて配索されている、
ことを特徴とするシート付ハーネス。
【請求項3】
車室の天井部となるルーフライナーと前記ルーフライナーよりも上部の車体パネルとの間に設けられると共に、
前記複数本の電線が前記ルーフライナー側となり前記シート部材が前記車体パネル側となるように配置され、
前記シート部材の厚みは、前記車体パネルと前記複数本の電線との間の間隔の半分以上である、
ことを特徴とする請求項1又は請求項に記載のシート付ハーネス。
【請求項4】
前記複数本の電線の前記束ね部分以外の部位は、前記シート部材に1又は複数のテープによって貼り付けられて配索されている、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のシート付ハーネス。
【請求項5】
前記シート部材は、消臭剤を含有している、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のシート付ハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート付ハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一対のシートの間に所定の経路でハーネスを保持したシート付ハーネスが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−74954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載のシート付ハーネスは、一対のシートを要することから、コスト面で不利である。さらに、特許文献1に記載のシート付ハーネスにおいて、一対のシートに挟み込まれるハーネスはテープ巻き等によって収束されたものであることから剛性が高まっている。また、特許文献1に記載のシート付ハーネスは、一対のシート同士を接着させることによっても剛性が高まってしまう。このため、例えば車両ルーフ部にシート付ハーネスを設置する場合にルーフ曲面に添わせ難くなると共に、シート付ハーネスを梱包する際にも折り畳み難く使い勝手が良いとはいえない。
【0005】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、低コスト化を図ると共に、剛性を低下させることが可能なシート付ハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、柔軟性を有する折り畳み可能な1枚のシート部材とシート部材上に配索される複数本の電線とを備えている。シート部材は複数本の電線の一側のみに設けられている。複数本の電線は、折り畳み可能なシート部材の端部では、束ねられて束ね部分を形成し、折り畳み可能なシート部材の端部よりも中央側では、前記束ね部分以外で分岐部を有さないように且つ収束された状態にならないようにバラバラに単一の電線の状態で折り畳み可能なシート部材に取り付けられて配索されている。
また、別の本発明は、柔軟性を有する折り畳み可能な1枚のシート部材とシート部材上に配索される複数本の電線とを備えている。シート部材は複数本の電線の一側のみに設けられている。複数本の電線は、折り畳み可能なシート部材の外側では、束ねられて束ね部分を形成し、折り畳み可能なシート部材の内側では、前記束ね部分以外で分岐部を有さないように且つ収束された状態にならないようにバラバラに単一の電線の状態で折り畳み可能なシート部材に取り付けられて配索されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、シート部材は複数本の電線の一側のみに設けられているため、他側にはシート部材が存在せず、低コスト化を図ることができると共に、一対のシートを用いたときのように剛性が高まってしまうことがない。さらに、単一の電線の状態でシート部材に取り付けられていることから、複数本の電線が束ねられた状態でシート部材に取り付けられることなく、剛性の高まりが抑えられている。従って、低コスト化を図ると共に、剛性を低下させることが可能なシート付ハーネスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係るシート付ハーネスの一例を示す斜視図である。
図2図1に示したシート付ハーネスの裏面側を示す斜視図である。
図3図1及び図2に示したシート付ハーネスの概略断面図である。
図4図2に示した複数本の電線周辺の一部拡大図である。
図5図1及び図2に示したシート付ハーネスの折り畳み及び展開の様子を示す斜視図である。
図6】本実施形態の変形例に係るシート付ハーネスの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用されていることはいうまでもない。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係るシート付ハーネスの一例を示す斜視図であり、図2は、図1に示したシート付ハーネスの裏面側を示す斜視図である。図1に示すように、シート付ハーネス1は、例えば車室の天井部となるルーフライナーRとルーフライナーRよりも上部の車体パネル(図3等参照)Pとの間のような狭小部位に設けられるものである。
【0011】
このシート付ハーネス1は、1枚のシート部材Sと、複数本の電線Wとを備えている。1枚のシート部材Sは柔軟性を有して折り畳み可能な絶縁性のシートによって構成されている。このシート部材Sは、一面側から他面側が透過視認可能なものによって構成されており、例えば有色又は無色の透明性プラスチックシートや、不織布のように繊維の隙間から他面側が視認可能なものによって構成されている。なお、このシート部材Sは1つの層によって構成されていてもよいし、2以上の層を有するもので構成されていてもよい。
【0012】
さらに、1枚のシート部材Sは、吸音、吸振、遮熱、及び消臭の少なくとも1つの機能を有することが好ましい。すなわち、シート部材Sは不織布のように内部に空気層を有し、空気層により吸音及び吸振を行うようになっていてもよいし、内部に断熱層(空気層や断熱部材)を有し、断熱層により遮熱するようになっていてもよい。加えて、シート部材Sは、消臭剤が含有等されて消臭するようになっていてもよい。
【0013】
複数本の電線Wは、ルーフ部において補器に電力を供給したり信号伝達したりする電線である。これらの複数本の電線Wはシート部材Sに取り付けられて配索されている。本実施形態において電線Wは、テープTの貼り付けによってシート部材Sに取り付けられている。なお、電線Wは、シート部材Sに対して固定可能であればテープTの貼り付けに限られるものではなく、接着や溶着等によってシート部材Sに取り付けられていてもよい。
【0014】
図3は、図1及び図2に示したシート付ハーネス1の概略断面図である。図3に示すように、本実施形態においてシート部材Sは、複数本の電線Wの一側のみに設けられ、他側には設けられないようになっている。また、本実施形態においてシート付ハーネス1は、複数本の電線WがルーフライナーR側となり、シート部材Sが車体パネルP側となるように配置されている。
【0015】
図4は、図2に示した複数本の電線W周辺の一部拡大図である。本実施形態において複数本の電線Wはそれぞれが束ねられることなく単一の電線Wの状態でシート部材Sに貼り付けられている。すなわち、図4に示すように、複数本の電線Wはテープ巻き等によって収束されていない状態でシート部材Sに取り付けられることとなる。
【0016】
なお、図1及び図2に示すように、本実施形態に係るシート付ハーネス1は、複数本の電線Wがシート部材S上の端部(後述の中央部以外の部分)及びシート部材S外においてテープ巻きされて束ねられており、束ね部分BPが形成されている。よって、シート付ハーネス1は、梱包・運搬時において複数本の電線Wが絡まり難くされると共に、ピラー内に配索し易くされている。
【0017】
特に、本実施形態に係るシート付ハーネス1は、シート部材Sの中央部(例えばシート部材Sの全体面積のうち中央側90%の面積部分)において分岐部を有しない構造となっている。すなわち、本実施形態においては複数の電線Wは束ね部分BPから分岐するのみであり、他の箇所において分岐部が存在しないことから、少なくともシート部材Sの中央部には分岐部が存在しない。ここで、分岐部が存在する場合は、分岐する前において多くの電線Wがまとまって存在することとなる。まとまった電線Wはたとえテープ巻き等によって束ねられていなくとも剛性を高める要因となり得る。よって、本実施形態のようにシート部材Sの中央部において分岐部を有しない構成とすることで、まとまった電線Wによって剛性が高まってしまう事態を抑えることができる。
【0018】
次に、本実施形態に係るシート付ハーネス1の取付方法を説明する。図5は、図1及び図2に示したシート付ハーネス1の折り畳み及び展開の様子を示す斜視図である。なお、図5においては複数本の電線W等の図示を省略する。
【0019】
図5に示すようにシート付ハーネス1はシート部材Sが柔軟性を有したシートとなっており、折り畳み可能となっている(符号A参照)。このため梱包・運搬時には、図5の符号Aに示す折り畳み状態とされることとなる。
【0020】
シート付ハーネス1をルーフ部に設置する場合、まずシート付ハーネス1が符号B,Cに示すように順次展開させられる(広げられる)。シート付ハーネス1が完全に展開された状態(図2に示す状態)とされると、作業者は、複数本の電線WがルーフライナーR側となるように、且つ、シート部材Sが車体パネルP側となるようにして、シート付ハーネス1をルーフライナーR上に配置する。その後、ルーフライナーRごと車体パネルPに対してシート付ハーネス1が取り付けられる。
【0021】
なお、複数本の電線Wはシート部材S上の端部及びシート部材S外においてテープ巻き等されて束ねられており、この束ね部分BPは、車両ピラーの内部に配索されて、インパネ側の車両機器に接続されることとなる。
【0022】
次に、本実施形態に係るシート付ハーネス1の製造方法の一例について説明する。まず、作業者は、配索経路が描かれた配線板上にシート部材Sを配置する。次に、作業者は、束ね部分BPを例えばシート部材Sの角部に配置する。
【0023】
ここで、本実施形態においてシート部材Sは一面側から他面側が透過視認可能であることから、作業者には、配線板上の配索経路が視認されることとなる。よって、作業者は、配線板に描かれる配索経路に沿って電線Wを配索すると共に、テープT等によって電線Wをシート部材S上に取り付けていく。これにより、シート付ハーネス1が製造される。
【0024】
このようにして、本実施形態に係るシート付ハーネス1によれば、シート部材Sは複数本の電線Wの一側のみに設けられているため、他側にはシート部材Sが存在せず、低コスト化を図ることができると共に、一対のシートを用いたときのように剛性が高まってしまうことがない。さらに、複数の電線Wは、単一の電線Wの状態でシート部材Sに取り付けられていることから、複数本の電線Wが束ねられた状態でシート部材Sに取り付けられることなく、剛性の高まりが抑えられている。従って、低コスト化を図ると共に、剛性を低下させることが可能なシート付ハーネス1を提供することができる。
【0025】
また、シート部材Sの中央部において分岐部を有しない構造となっているため、シート部材Sの中央部には多くの電線Wがまとまって存在することがなく、まとまった電線Wによって剛性が高まってしまう事態を抑えることができる。
【0026】
また、シート部材Sが一面側から他面側へ透過視認可能であるため、配索経路が描かれた配線板等の上にシート部材Sを配置してシート付ハーネス1を作成することが可能となり、シート部材Sに対して電線Wを取り付ける作業時に誤りが生じ難く、比較的容易に作業を行うことができる。
【0027】
また、複数本の電線Wはシート部材S上の端部及びシート部材S外において束ねられているため、シート部材S側において複数本の電線Wがバラバラとなって、梱包時に絡まってしまう等の事態を防止することができる。
【0028】
また、ルーフライナーRと車体パネルPとの間に設けられ、複数本の電線WがルーフライナーR側となりシート部材Sが車体パネルP側となるように配置されているため、シート部材Sが電線Wの保護部材として機能することとなり、保護用の外装部品を不要とすることに貢献することができる。
【0029】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、適宜公知又は周知の技術を組み合わせてもよい。
【0030】
例えば、本実施形態に係るシート付ハーネス1は、例えばルーフライナーRに貼り付け等されるようになっていることが好ましい。この場合において、シート付ハーネス1は例えば両面テープによってルーフライナーRに取り付けられてもよいし、ホットメルト及び接着剤による接着によってルーフライナーRに取り付けられてもよい。さらに、シート付ハーネス1は、シート部材Sが熱溶着可能な素材によって構成され、熱溶着によってルーフライナーRに取り付けられてもよい。
【0031】
加えて、上記実施形態に係るシート付ハーネス1は、シート部材Sの厚みについて言及していないが、好適には所定の厚みを有することが好ましい。図6は、本実施形態の変形例に係るシート付ハーネス1の概略断面図である。図6に示すように、変形例に係るシート付ハーネス1は、シート部材Sが厚く形成され、例えばルーフライナーRと車体パネルPとの距離L1の半分以上の厚みL2を有している。これにより、ルーフライナーRと車体パネルPとの隙間を埋めるようにシート部材Sが配置されて、異音防止効果や断熱効果を得易くすることができるからである。
【0032】
さらに、本実施形態において複数本の電線Wはシート部材S上の端部及びシート部材S外において束ねられているが、これに限らず、シート部材S上の端部のみで束ねられていてもよいし、シート部材S外のみで束ねられていてもよい。
【0033】
加えて、本実施形態においてシート付ハーネス1は、複数本の電線WがルーフライナーR側となり、シート部材Sが車体パネルP側となるように配置されているが、これに限らず、複数本の電線Wが車体パネルP側となり、シート部材SがルーフライナーR側となるように配置されていてもよい。なお、この場合には、シート部材Sに開口部を形成してルーフ部の機器類とコネクタ接続するようにすればよい。
【符号の説明】
【0034】
1 :シート付ハーネス
BP :束ね部分
P :車体パネル
R :ルーフライナー
S :シート部材
T :テープ
W :電線
図1
図2
図3
図4
図5
図6