(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
下記工程を経て、粒子径D50(メディアン径)が10nm以下のナノダイヤモンド分散液であって、Zr化合物、Al化合物、Y化合物、Fe化合物、及びHf化合物の合計含有量(Zr、Al、Y、Fe、Hf元素換算;重量)が、分散液に含まれるナノダイヤモンド(重量)の50ppm以下であるナノダイヤモンド分散液を得る、ナノダイヤモンド分散液の製造方法。
工程1:ナノダイヤモンドを粉砕機を使用した解砕処理に付す
工程2:解砕処理後のナノダイヤモンドと硫酸の混合物を加熱処理に付して、前記ナノダイヤモンドに混入したZr化合物、Al化合物、Y化合物、Fe化合物、及びHf化合物から選択される少なくとも1種の化合物を硫酸中に溶出させる
工程3:加熱処理後の混合物を水洗処理に付し、水洗処理後の分散液に、アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を、前記分散液のpHが12以上になるまで添加し、その後、更に水洗処理に付して、硫酸根を除去する
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一次粒子の粒子径が10nm以下であるナノダイヤモンドは、高い機械的強度や、高い熱伝導性、高い屈折率などを示す。しかし、ナノダイヤモンドのような微粒子は、表面原子(特に、配位的に不飽和である表面原子)の割合が大きいので、隣接粒子の表面原子間で作用し得るファンデルワールス力の総和が大きくなり、凝集(aggregation)しやすい。これに加えて、ナノダイヤモンドの場合、隣接結晶子の結晶面間クーロン相互作用が寄与して非常に強固に集成する凝着(agglutination)という現象が生じ得る。ナノダイヤモンドは、このように結晶子ないし一次粒子の間が重畳的に相互作用し得る特異な性質を有するため、ナノダイヤモンドの一次粒子間を解離させて当該一次粒子が例えば溶媒中で高分散した状態を創り出すことは、非常に困難である。
【0005】
ナノダイヤモンドは、例えば爆轟法により生成した段階において、一次粒子間が非常に強く相互作用して集成している凝着体(二次粒子)の形態をとる。そして、二次粒子から一次粒子への解砕には、ビーズミル等の粉砕機を用いた解砕処理が採用されることが多い。
【0006】
前記ビーズミルは金属ビーズを用いて粉砕及び/又は解砕する機械であり、金属ビーズとしては主にジルコニアビーズが用いられる。また、ミル容器として内壁がジルコニアコーティングされているものを使用する場合もある。このようなビーズミルを用いてナノダイヤモンドの解砕処理を行うと、金属ビーズやミル容器に由来する数10nm以下の、ナノダイヤモンドと同程度の粒子径を有するため分離・除去が非常に困難な金属微粉末がナノダイヤモンドに混入することは避けられず、金属微粉末の混入によりナノダイヤモンドの純度が低下することが問題であった。
【0007】
従って、本発明の目的は、解砕処理によりナノダイヤモンドに混入する数10nm以下の金属微粉末を簡便且つ効率よく除去する工程を経て、金属成分の混入量が極めて低い、高純度の一桁ナノダイヤモンド分散液を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は上記課題を解決するため鋭意検討した結果、ナノダイヤモンドを粉砕機を使用する解砕処理に付すことで混入した金属成分は、金属成分が混入したナノダイヤモンドを硫酸と共に加熱処理に付すことで、前記金属成分を硫酸中に溶出させることができ、金属成分が溶出した硫酸を分離・除去することで、ナノダイヤモンドから金属成分を効率よく除去することができること、前記方法によって金属成分が除去されたナノダイヤモンドは、既に一度解砕処理が施されているため、たとえ前記硫酸処理により凝着しても、分散媒と混合することで容易に再分散して、一桁ナノダイヤモンドの分散液が得られることを見いだした。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0009】
すなわち、本発明は、下記工程を経て、粒子径D50(メディアン径)が10nm以下のナノダイヤモンド分散液であって、Zr化合物、Al化合物、Y化合物、Fe化合物、及びHf化合物の合計含有量(Zr、Al、Y、Fe、Hf元素換算;重量)が、分散液に含まれるナノダイヤモンド(重量)の50ppm以下であるナノダイヤモンド分散液を得る、ナノダイヤモンド分散液の製造方法を提供する。
工程1:ナノダイヤモンドを粉砕機を使用した解砕処理に付す
工程2:解砕処理後のナノダイヤモンドと硫酸の混合物を加熱処理に付す
工程3:加熱処理後の混合物から硫酸根を除去する
【0010】
本発明は、また、工程1に付すナノダイヤモンドが、爆轟法ナノダイヤモンドである前記のナノダイヤモンド分散液の製造方法を提供する。
【0011】
本発明は、また、ナノダイヤモンドの分散液であって、分散液中のナノダイヤモンドの粒子径D50(メディアン径)が10nm以下であり、Zr化合物、Al化合物、Y化合物、Fe化合物、及びHf化合物の合計含有量(Zr、Al、Y、Fe、Hf元素換算;重量)が分散液中のナノダイヤモンド(重量)の50ppm以下である、ナノダイヤモンド分散液を提供する。
【0012】
すなわち、本発明は、以下に関する。
[1] 下記工程を経て、粒子径D50(メディアン径)が10nm以下のナノダイヤモンド分散液であって、Zr化合物、Al化合物、Y化合物、Fe化合物、及びHf化合物の合計含有量(Zr、Al、Y、Fe、Hf元素換算;重量)が、分散液に含まれるナノダイヤモンド(重量)の50ppm以下であるナノダイヤモンド分散液を得る、ナノダイヤモンド分散液の製造方法。
工程1:ナノダイヤモンドを粉砕機を使用した解砕処理に付す
工程2:解砕処理後のナノダイヤモンドと硫酸の混合物を加熱処理に付す
工程3:加熱処理後の混合物から硫酸根を除去する
[2] 工程1に付すナノダイヤモンドが、爆轟法ナノダイヤモンドである、[1]に記載のナノダイヤモンド分散液の製造方法。
[3] 解砕処理に付すナノダイヤモンドが、pH8以上(好ましくは8〜12、特に好ましくは9〜11、更に好ましくは9.5〜11.5)のナノダイヤモンド分散液である、[1]又は[2]に記載のナノダイヤモンド分散液の製造方法。
[4] 粉砕機としてビーズミルを使用する、[1]〜[3]の何れか1つに記載のナノダイヤモンド分散液の製造方法。
[5] 粉砕機として金属ビーズを用いたビーズミルを使用する、[1]〜[3]の何れか1つに記載のナノダイヤモンド分散液の製造方法。
[6] 粉砕機として、Zr化合物、Al化合物、Y化合物、Fe化合物、及びHf化合物から選択される少なくとも1種を含む素材で形成されたビーズミルを使用する、[1]〜[3]の何れか1つに記載のナノダイヤモンド分散液の製造方法。
[7] 粉砕機として、ジルコニアビーズを用いたビーズミル、又はミル容器内壁がジルコニアコーティングされているビーズミルを使用する、[1]〜[3]の何れか1つに記載のナノダイヤモンド分散液の製造方法。
[8] 工程2における硫酸として、50重量%以上(好ましくは55重量%以上、特に好ましくは60重量%以上)の濃度の硫酸を使用する、[1]〜[7]の何れか1つに記載のナノダイヤモンド分散液の製造方法。
[9] 硫酸の使用量が、ナノダイヤモンド(固形分換算)の2体積倍以上(好ましくは10体積倍以上、特に好ましくは20体積倍以上)である、[1]〜[8]の何れか1つに記載のナノダイヤモンド分散液の製造方法。
[10] ナノダイヤモンドと硫酸の混合物を200℃以上(好ましくは220℃以上、特に好ましくは240℃以上)の温度で加熱処理する、[1]〜[9]の何れか1つに記載のナノダイヤモンド分散液の製造方法。
[11] 硫酸根が、硫酸、硫酸イオン、及び金属の硫酸塩から選択される少なくとも1種である、[1]〜[10]の何れか1つに記載のナノダイヤモンド分散液の製造方法。
[12] 硫酸根の除去を、Zr化合物、Al化合物、Y化合物、Fe化合物、及びHf化合物から選択される少なくとも1種が溶出した硫酸を、水洗処理及び/又は中和処理により分離・除去することにより行う、[1]〜[11]の何れか1つに記載のナノダイヤモンド分散液の製造方法。
[13] 水洗処理が、ナノダイヤモンド分散液のpHが6以上となるまで繰り返し水洗する処理である、[12]に記載のナノダイヤモンド分散液の製造方法。
[14] 中和処理が、ナノダイヤモンド分散液のpHが12以上となるまで塩基性物質又はその水溶液を添加して硫酸根を塩として析出させる処理である、[12]又は[13]に記載のナノダイヤモンド分散液の製造方法。
[15] ナノダイヤモンドの分散液であって、分散液中のナノダイヤモンドの粒子径D50(メディアン径)が10nm以下であり、Zr化合物、Al化合物、Y化合物、Fe化合物、及びHf化合物の合計含有量(Zr、Al、Y、Fe、Hf元素換算;重量)が分散液中のナノダイヤモンド(重量)の50ppm以下である、ナノダイヤモンド分散液。
[16] ナノダイヤモンド分散液中のナノダイヤモンドのpH8〜12におけるゼータ電位が−60〜−20mVである、[15]に記載のナノダイヤモンド分散液。
[17] ナノダイヤモンドを分散する分散媒が、水又は水を50重量%以上含む水系分散媒である、[15]又は[16]に記載のナノダイヤモンド分散液。
【0013】
尚、本明細書では、Zr化合物、Al化合物、Y化合物、Fe化合物、Hf化合物には、それぞれ金属単体も含まれるものとする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のナノダイヤモンド分散液の製造方法は上記構成を有するため、簡便な方法により、効率よく金属成分を除去して、金属成分の混入量が極めて低く、分散性に優れたナノダイヤモンド分散液、すなわち一桁ナノダイヤモンド分散液、を製造することができる。
【0015】
また、ナノダイヤモンドは高い機械的強度、電気絶縁性、優れた熱伝導性、消臭効果、抗菌効果を有するものであり、本発明の製造方法により得られるナノダイヤモンド分散液は、前記特性を有するナノダイヤモンドを高分散した状態で含有するため、前記特性を高度に発現することができる。そのため、研磨材、導電性付与材、絶縁材料、消臭剤、抗菌剤等として好適に使用される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[ナノダイヤモンド分散液の製造方法]
本発明のナノダイヤモンド分散液の製造方法は、下記工程を経て、粒子径D50(メディアン径)が10nm以下のナノダイヤモンド分散液であって、Zr化合物、Al化合物、Y化合物、Fe化合物、及びHf化合物の合計含有量(Zr、Al、Y、Fe、Hf元素換算;重量)が、分散液に含まれるナノダイヤモンド(重量)の50ppm以下であるナノダイヤモンド分散液を得るものである。
工程1:ナノダイヤモンドを粉砕機を使用した解砕処理に付す(以後、「解砕処理工程」と称する場合がある)
工程2:解砕処理後のナノダイヤモンドと硫酸の混合物を加熱処理に付す(以後、「硫酸処理工程」と称する場合がある)
工程3:加熱処理後の混合物から硫酸根を除去する(以後、「硫酸根除去工程」と称する場合がある)
【0017】
工程1(解砕処理工程)に付すナノダイヤモンドは、例えば、下記生成工程及び精製工程(酸処理工程、酸化処理工程、解砕前処理工程等を含む)を経て製造される。
【0018】
(生成工程)
ナノダイヤモンドは、例えば爆轟法によって製造することができる。前記爆轟法には、空冷式爆轟法と水冷式爆轟法が含まれる。本発明においては、なかでも、空冷式爆轟法が水冷式爆轟法よりも一次粒子が小さいナノダイヤモンドを得ることができるうえで好ましい。尚、爆轟は大気雰囲気下で行っても良く、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等の不活性ガス雰囲気下で行っても良い。従って、上記工程1の解砕処理に付すナノダイヤモンドは、爆轟法ナノダイヤモンド、すなわち爆轟法によって生成したナノダイヤモンドが好ましく、より好ましくは空冷式爆轟法ナノダイヤモンド、すなわち空冷式爆轟法によって生成したナノダイヤモンドである。
【0019】
爆轟法では、まず、成形された爆薬に電気雷管が装着されたものを爆轟用の耐圧性容器の内部に設置する。容器としては、例えば鉄製等の金属製容器が使用される。容器の容積は、例えば0.5〜40m
3であり、好ましくは2〜30m
3である。爆薬としては、トリニトロトルエン(TNT)とシクロトリメチレントリニトロアミンすなわちヘキソーゲン(RDX)との混合物を使用することができる。TNTとRDXの重量比(TNT/RDX)は、例えば40/60〜60/40の範囲である。
【0020】
生成工程では、次に、電気雷管を起爆させ、容器内で爆薬を爆轟させる。爆轟とは、化学反応に伴う爆発のうち反応の生じる火炎面が音速を超えた高速で移動するものをいう。爆轟の際、使用爆薬が部分的に不完全燃焼を起こして遊離した炭素を原料として、爆発で生じた衝撃波の圧力とエネルギーの作用によって粗ナノダイヤモンドが生成する。
【0021】
(精製工程)
生成工程を経て得られた粗ナノダイヤモンドには、生成反応に用いた容器等に含まれるAl、Fe、Co、Cr、Ni等の金属の酸化物(例えば、Fe
2O
3、Fe
3O
4、Co
2O
3、Co
3O
4、NiO、Ni
2O
3等)が金属性不純物として含まれ、前記金属性不純物はナノダイヤモンドの凝着の原因となる。また、グラファイト等の副生物が含まれる場合もあり、このグラファイトは使用爆薬が部分的に不完全燃焼を起こして遊離した炭素のうちナノダイヤモンド結晶を形成しなかった炭素に由来するものであるが、これもナノダイヤモンドの凝着の原因となる。精製工程は、これらの不純物を除去する工程である。
【0022】
(精製工程;酸処理工程)
酸処理工程は、生成工程を経て得られた粗ナノダイヤモンドに混入する前記金属性不純物を除去する工程であり、前記粗ナノダイヤモンドを水中に分散して得られる粗ナノダイヤモンド分散液に、酸を添加して前記金属性不純物を酸に溶出させ、その後、金属性不純物が溶出した酸を分離・除去することで、金属性不純物を除去する。この酸処理に用いられる酸(特に、強酸)としては鉱酸が好ましく、例えば、塩酸、フッ化水素酸、硫酸、硝酸、王水等が挙げられる。これらは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。酸処理に使用される酸の濃度は例えば1〜50重量%である。酸処理温度は例えば70〜150℃である。酸処理時間は例えば0.1〜24時間である。また、酸処理は、減圧下、常圧下、または加圧下で行うことが可能である。金属性不純物が溶出した酸を分離・除去する方法としては、例えばデカンテーションにより行うことが好ましい。また、デカンテーションの際には、固形分(ナノダイヤモンドを含む)の水洗を行うことが好ましく、特に、沈殿液のpHが例えば2〜3に至るまで、水洗を反復して行うことが好ましい。
【0023】
(精製工程;酸化処理工程)
酸化処理工程は、生成工程を経て得られた粗ナノダイヤモンドに混入するグラファイト(黒鉛)を除去する工程であり、前記粗ナノダイヤモンドを水中に分散して得られる粗ナノダイヤモンド分散液(好ましくは、上記酸処理工程を経て得られるナノダイヤモンド分散液)に酸化剤を作用させることによりグラファイトを除去する。前記酸化剤としては、例えば、クロム酸、無水クロム酸、二クロム酸、過マンガン酸、過塩素酸、及びこれらの塩が挙げられる。これらは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。酸化処理で使用される酸化剤の濃度は例えば3〜50重量%である。酸化処理における酸化剤の使用量は、酸化処理に付される粗ナノダイヤモンド100重量部に対して例えば300〜500重量部である。酸化処理温度は、例えば100〜200℃である。酸化処理時間は例えば1〜24時間である。酸化処理は、減圧下、常圧下、または加圧下で行うことが可能である。また、酸化処理は、グラファイトの除去効率向上の観点から、酸(特に、鉱酸。酸処理工程で使用の鉱酸と同様の例を挙げることができる)の共存下で行うことが好ましい。酸化処理に酸を用いる場合、酸の濃度は例えば5〜80重量%である。このような酸化処理の後、例えばデカンテーションにより上澄みを除去することが好ましい。また、デカンテーションの際には、固形分(ナノダイヤモンド凝着体を含む)の水洗を行うことが好ましい。水洗当初の上澄み液は着色しているが、上澄み液が目視で透明になるまで、当該固形分の水洗を反復して行うことが好ましい。
【0024】
(精製工程;解砕前処理工程)
酸化処理工程を経て得られたナノダイヤモンド凝着体を含有する溶液に、アルカリおよび過酸化水素を反応させる工程である。前記アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、アンモニア、水酸化カリウム等が挙げられる。アルカリの濃度は、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.2〜8重量%、更に好ましくは0.5〜5重量%である。過酸化水素の濃度は、好ましくは1〜15重量%、より好ましくは2〜10重量%、更に好ましくは4〜8重量%である。前記反応を行う際の温度は例えば40〜95℃であり、反応時間は例えば0.5〜5時間である。また、前記反応は、減圧下、常圧下、または加圧下で行うことが可能である。反応後は、デカンテーションによって上澄みを除去することが好ましい。
【0025】
解砕前処理工程では、次に、上述のデカンテーションによって得られた沈殿液のpH調整を行うことが好ましく、例えば酸(例えば、塩酸)を添加してpHを例えば2〜3に調整することが好ましい。
【0026】
解砕前処理工程では、次に、沈殿液中の固形分(ナノダイヤモンド凝着体を含む)について遠心沈降法による水洗を行うことが好ましい。より詳細には、遠心分離装置を使用して当該沈殿液ないし懸濁液について固液分離を行う操作、その後に沈殿物と上清液とを分ける操作、および、その後に沈殿物に超純水を加えて懸濁する操作を含む一連の過程を、例えば反復して、行うことが好ましい。この水洗は、分散液の固形分濃度1重量%あたりの電気伝導度が例えば20μS/cm以下(好ましくは、15μS/cm以下)となるまで行うことが好ましい。また、水洗後の分散液は酸性であることが好ましく、そのpHは例えば3.5〜6.5の範囲、好ましくは4〜6の範囲である。分散液の電気伝導度の値およびpHの値が上記範囲となるまで水洗することは、次の工程1におけるナノダイヤモンドの解砕(二次粒子から一次粒子の分離)が容易となる点で好ましい。
【0027】
解砕前処理工程では、次に、ナノダイヤモンド凝着体含有分散液のpHを調整することが好ましく、分散安定性の点から、ナノダイヤモンド凝着体含有分散液のpHを例えば8以上(例えば、8〜12)、好ましくは9以上(例えば、9〜11)、さらに好ましくは9.5〜10.5に調整することが好ましい。また、固形分濃度(ナノダイヤモンドの濃度)は、高濃度のナノダイヤモンド一桁ナノ分散液を得るという観点から、2重量%以上(例えば、2〜15重量%)が好ましく、より好ましくは4重量%以上(例えば、4〜10重量%)である。
【0028】
[工程1:解砕処理工程]
工程1は、例えば、上記方法により得られたナノダイヤモンド(例えば、ナノダイヤモンド凝着体含有分散液中のナノダイヤモンド)を、粉砕機を使用した解砕処理に付す工程である。上述の精製工程を経て精製された後であっても、例えば爆轟法ナノダイヤモンドは、一次粒子間が非常に強く相互作用して集成している凝着体(二次粒子)の形態をとるものであるが、解砕処理に付すことによりナノダイヤモンド凝着体(二次粒子)からナノダイヤモンドの一次粒子を分離することができる。
【0029】
前記粉砕機としては、例えば、ビーズミル、ボールミル、ジェットミル、超音波ホモジナイザー等を挙げることができる。本発明においては、なかでも、ナノダイヤモンドを、例えば粒子径D50(メディアン径)が10nm以下になるまで、微粉砕することができる点でビーズミルを使用することが好ましい。
【0030】
ビーズミルは、中央に回転軸を備えたミル容器(若しくは、粉砕室)の中にビーズが充填された構成を有する装置であり、前記回転軸を回転させることによりビーズに運動が与えられ、ビーズの運動により生じる強力な剪断力により対象物が解砕される。前記ビーズとしては、種々の素材のもの(例えば、ジルコニア、ジルコニア・シリカ系セラミックス、ガラス、アルミナ、スチール等)が知られているが、解砕処理に伴う摩耗が極めて少ない点で、ジルコニア製のビーズ(ジルコニアビーズ)が好適に用いられる。また、ビーズミルとして、ミル容器の内壁がジルコニアコーティングされているものを使用することもできる。尚、ジルコニアビーズやジルコニアコーティングには、Zr化合物、Al化合物、Y化合物、Fe化合物、及びHf化合物から選択される少なくとも1種(主に、ZrO
2、Y
2O
3、Al
2O
3、HfO
2等)が含まれる。また、ジルコニア・シリカ系セラミックスビーズには、主にZrO
2、Y
2O
3、SiO
2、Al
2O
3が含まれる。
【0031】
工程1終了後、工程2に付す前に分級処理を行って、ナノダイヤモンド粗大粒子等を除去してもよい。分級処理は、例えば、遠心分離器等を用いて行うことができる。分級処理を施すことにより、より均一な粒度分布を有するナノダイヤモンド分散液が得られる。
【0032】
上記工程を経て得られるナノダイヤモンド分散液中のナノダイヤモンドのいわゆるゼータ電位は、好ましくは−60〜−20mVであり、より好ましくは−50〜−30mVである。また、粒子径D50(メディアン径)は、例えば10nm以下(好ましくは8nm以下、特に好ましくは6nm以下)である。
【0033】
[工程2:硫酸処理工程]
工程2は、工程1を経て得られた解砕処理後のナノダイヤモンドと硫酸の混合物を加熱処理に付す工程である。工程1において、粉砕機を使用した解砕処理に付すことにより、ナノダイヤモンドに粉砕機由来の成分(粒子径D50(メディアン径)が、例えば50nm以下の微粉末)が混入することは避けられない。工程1を経て得られた解砕処理後のナノダイヤモンドに含まれるZr化合物、Al化合物、Y化合物、Fe化合物、及びHf化合物の合計含有量(Zr、Al、Y、Fe、Hf元素換算;重量)は、ナノダイヤモンド(重量)の例えば3,000ppm以上(例えば3,000〜15,000ppm)である。そこで、工程2、3において、工程1で混入した粉砕機由来の成分の除去を行う。
【0034】
硫酸処理工程に付すナノダイヤモンドは、ナノダイヤモンド分散液であっても、ナノダイヤモンド乾燥粉体であっても良い。ナノダイヤモンド分散液を本工程に付す場合は、工程1を経て得られたナノダイヤモンド分散液をそのまま使用することができ、ナノダイヤモンド乾燥粉体を本工程に付す場合は、工程1を経て得られたナノダイヤモンド分散液を、乾燥処理(例えば、噴霧乾燥装置を使用して行う噴霧乾燥や、エバポレーターを使用して行う蒸発乾固)に付して乾燥粉体を調製し、それを使用することができる。
【0035】
前記硫酸としては、濃度が例えば50重量%以上(好ましくは55重量%以上、特に好ましくは60重量%以上)のものを使用することが好ましい。
【0036】
硫酸の使用量は、ナノダイヤモンド(固形分換算)の、例えば2体積倍以上、好ましくは10体積倍以上、特に好ましくは20体積倍以上である。硫酸を上記範囲で使用すると、効率よく粉砕機由来の成分を除去することができる点で好ましい。
【0037】
ナノダイヤモンドと硫酸の混合物の加熱処理温度は、例えば200℃以上(好ましくは220℃以上、特に好ましくは240℃以上)である。また、加熱処理時間は、例えば5分以上(好ましくは15分以上、特に好ましくは30分以上)である。本発明においては、特に、還流法による加熱処理を行うことが、硫酸濃度を一定に保持することができ、より効率よく粉砕機由来の成分を除去することができる点で好ましい。
【0038】
加熱処理は、例えば、サンドバス、熱風乾燥機、マイクロウェーブ反応装置等を使用して行うことができる。また、加熱処理は、常圧下、または加圧下で行うことが可能である。ナノダイヤモンドと硫酸の混合物を加熱処理に付すことにより、ナノダイヤモンドに混入した前記粉砕機由来の成分を硫酸中に溶出させることができる。例えば、粉砕機としてジルコニアビーズを用いたビーズミル、又はミル容器の内壁がジルコニアコーティングされているビーズミルを使用した場合の粉砕機由来の成分は、例えば、Zr化合物、Al化合物、Y化合物、Fe化合物、及びHf化合物から選択される少なくとも1種(主に、ZrO
2、Y
2O
3、Al
2O
3、HfO
2)である。また、粉砕機としてジルコニア・シリカ系セラミックスビーズを用いたビーズミルを使用した場合の粉砕機由来の成分は、主にZrO
2、Y
2O
3、SiO
2、Al
2O
3である。
【0039】
[工程3:硫酸根除去工程]
工程3は、硫酸処理後の混合物から硫酸根を除去する工程である。より詳細には、工程2における硫酸処理において、硫酸中に粉砕機由来の成分が溶出することにより生成した硫酸根を分離・除去する工程である。尚、前記硫酸根には、硫酸処理工程で使用した硫酸の未反応分、硫酸イオン、金属の硫酸塩等が含まれる。
【0040】
硫酸根を分離・除去する方法としては、特に制限されることはないが、例えば、水洗、中和等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて行うことができる。本発明の好ましい一例としては、水洗−中和−水洗の順に処理を施す方法が挙げられる。
【0041】
水洗処理では、硫酸処理後の混合物中の固形分(ナノダイヤモンドを含む)の水洗を行う。また、水洗処理は、デカンテーション又は遠心分離等により、上清液を除去しつつ行うことが好ましく、硫酸処理後の混合物の上清液のpHが、例えば6以上(例えば、6〜7)、好ましくは6.5以上になるまで水洗処理を繰り返し行うことが好ましい。
【0042】
中和処理は、塩基性物質又はその水溶液を添加することにより行われる。塩基性物質又はその水溶液を添加することで、硫酸根を塩として析出させることができる。前記塩基性物質としては、例えば、アルカリ金属化合物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩;炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属炭酸水素塩;酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなどのアルカリ金属カルボン酸塩;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドなどのナトリウムアルコキシドなど)、アルカリ土類金属化合物(例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属水酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなどのアルカリ土類金属炭酸塩;酢酸マグネシウム、酢酸カルシウムなどのアルカリ土類金属カルボン酸塩;マグネシウムエトキシドなどのアルカリ土類金属アルコキシドなど)などを使用できる。
【0043】
本発明においては、水洗処理を経て得られた沈殿物を水に分散して得られる分散液に、前記塩基性物質又はその水溶液を、分散液のpHが12以上になるまで添加することが好ましい。
【0044】
中和処理後は、再び水洗処理を施すことが好ましく、水洗処理はデカンテーション又は遠心分離等により上清液を除去しつつ行うことが好ましい。本発明では、中和処理を経て得られたpHが12以上の分散液を、上清液のpHが例えば11〜12(好ましくは10〜11)になるまで、水洗処理を繰り返し行うことが好ましい。
【0045】
前記水洗−中和−水洗処理を経て得られた沈殿物(ナノダイヤモンドスラリー)は再分散性に優れ、分散媒と混合することで、あたかも溶解するかのように一次粒子にまで分散して、含有するナノダイヤモンドの粒子径D50(メディアン径)が10nm以下(好ましくは8nm以下、特に好ましくは6nm以下)であるナノダイヤモンド分散液(好ましくは、ナノダイヤモンドの一次粒子がコロイド粒子として分散する黒色透明の分散液)が得られる。尚、本明細書において「粒子径D50」は、いわゆる動的光散乱法によって測定できる値である。
【0046】
例えば、粉砕機としてジルコニアビーズを使用したビーズミル、若しくは内壁がジルコニアコーティングされたミル容器を備えたビーズミルを使用して解砕処理を施して得られたナノダイヤモンドには、粉砕機由来の成分の混入が避けられないが、上記工程1〜3に付すことにより粉砕機由来の成分を除去することができる。そのため、上記工程1〜3を経て得られた沈殿物を分散媒と混合して得られるナノダイヤモンド分散液中における、Zr化合物、Al化合物、Y化合物、Fe化合物、及びHf化合物の合計含有量(Zr、Al、Y、Fe、Hf元素換算;重量)は、分散液に含まれるナノダイヤモンド(重量)の50ppm以下である、すなわち、本発明の製造方法によれば、粉砕機由来の成分の含有量が検出限界以下である、ナノダイヤモンド分散液が得られる。
【0047】
[ナノダイヤモンド分散液]
本発明のナノダイヤモンド分散液は、ナノダイヤモンドの分散液であって、分散液中のナノダイヤモンドの粒子径D50(メディアン径)が10nm以下であり、Zr化合物、Al化合物、Y化合物、Fe化合物、及びHf化合物の合計含有量(Zr、Al、Y、Fe、Hf元素換算;重量)が分散液中のナノダイヤモンド(重量)の例えば200ppm以下(好ましくは100ppm以下、特に好ましくは50ppm以下)である。本発明のナノダイヤモンド分散液は、例えば、上記ナノダイヤモンド分散液の製造方法により製造できる。
【0048】
ナノダイヤモンド分散液に含まれるナノダイヤモンドは、例えば爆轟法ナノダイヤモンド(爆轟法によって生成したナノダイヤモンド)であり、好ましくは空冷式爆轟法ナノダイヤモンド(空冷式爆轟法によって生成したナノダイヤモンド)である。空冷式爆轟法ナノダイヤモンドは、水冷式爆轟法ナノダイヤモンドよりも、一次粒子が小さい傾向にあるので、より小さな粒子径D50(メディアン径)を有するナノダイヤモンド分散液が得られる点で好ましい。
【0049】
ナノダイヤモンド分散液に含まれる分散媒は、ナノダイヤモンドを適切に分散させるための媒体である。分散媒としては、ナノダイヤモンドが易分散性を示し得る溶媒を使用することが好ましく、例えば、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。本発明においては、なかでも、ナノダイヤモンドの分散性に特に優れる点で、水、または、水を50重量%以上含む水系分散媒を使用することが好ましい。
【0050】
ナノダイヤモンドのゼータ電位は、分散媒中でのナノダイヤモンドの分散安定性に影響を与えるものである。本発明のナノダイヤモンド分散液に含まれるナノダイヤモンドのpH8〜12におけるゼータ電位は、好ましくは−60〜−20mVであり、より好ましくは−50〜−30mVである。そのため、分散性、及び経時分散安定性に優れる。尚、本明細書では、ナノダイヤモンド分散液に含まれるナノダイヤモンドのゼータ電位は、25℃において、ナノダイヤモンド濃度が0.2重量%のナノダイヤモンド分散液におけるナノダイヤモンドについて測定される値とする。ナノダイヤモンド濃度0.2重量%のナノダイヤモンド分散液の調製のためにナノダイヤモンド分散液の原液を希釈する必要がある場合には、希釈液として超純水を用いる。
【0051】
本発明のナノダイヤモンド分散液は、上述の通り、粉砕機由来の成分の含有量が極めて低く、分散安定性に優れた一桁ナノダイヤモンド分散液であるため、ナノダイヤモンドの特性(高い機械的強度、電気絶縁性、優れた熱伝導性、消臭効果、抗菌効果)を高度に発現することができ、研磨材、導電性付与材、絶縁材料、消臭剤、抗菌剤等として好適に使用することができる。例えば、本発明のナノダイヤモンド分散液を樹脂に添加して使用する場合は、少量の添加により前記の優れた特性を樹脂に付与することができる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。尚、pHは、pH計(商品名「ラコムテスター PH110」、ニッコー・ハンセン(株)製)を使用して測定した。
【0053】
実施例1
<精製工程>
(酸処理工程)
ナノダイヤモンドの一次粒子径が4〜6nmである空冷式爆轟法ナノダイヤモンド煤((株)ダイセル製)を200g秤量し、10重量%塩酸水溶液を2L加えた後、還流下で1時間加熱処理を行った。冷却後、デカンテーションにより、沈殿液のpHが2になるまで水洗を行い、上澄みをできるだけ除いた。
【0054】
(酸化処理工程)
デカンテーションによって得られた沈殿液に、60重量%硫酸水溶液2L、及び50重量%クロム酸水溶液2Lを加えた後、還流下で5時間加熱処理を行った。冷却後、デカンテーションにより、上澄みの着色が消えるまで洗水洗を行い、上澄みをできるだけ除いた。得られた沈殿液中のナノダイヤモンド凝着体の粒子径D50(メディアン径)は2μmであった。
【0055】
(解砕前処理工程)
次に、解砕前処理を行った。具体的には、まず、上述の酸化処理工程におけるデカンテーションによって得られた沈殿液に、10重量%水酸化ナトリウム水溶液1Lと30重量%過酸化水素水溶液1Lとを加えてスラリーとした後、このスラリーに対し、常圧条件での還流下で1時間の加熱処理を行った。この加熱処理温度は50〜105℃であった。冷却後、デカンテーションによって上澄みを除いた。次に、このデカンテーションによって得られた沈殿液に塩酸を加えて沈殿液のpHを2.5に調整した後、この沈殿液中の固形分(ナノダイヤモンド凝着体を含む)について遠心沈降法による水洗を行った。具体的には、遠心分離装置を使用して当該沈殿液ないし懸濁液について固液分離を行う操作、その後に沈殿物と上清液とを分ける操作、及び、その後に沈殿物に超純水を加えて懸濁する操作を含む一連の過程を、固形分濃度(ナノダイヤモンド濃度)を6重量%に調整したときの懸濁液の電気伝導度が56μS/cmとなるまで、反復して行った。このような水洗後の溶液のpHは4.3であった。
【0056】
<解砕処理工程>
次に、解砕処理を行った。具体的には、解砕前処理工程を経て得られたスラリー(ナノダイヤモンド凝着体含有分散液)300mLに水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを10に調整した後、当該スラリーについて、ビーズミル分散を行った。装置は、アイメックス株式会社製ビーズミルRMBを使用した。解砕メディアである直径0.03mmのジルコニアビーズを300mL充填した後、pHを10に調整したスラリー300mLを加え、周速を8m/sに設定して120分間の解砕を行った。
【0057】
<分級処理工程>
解砕液を回収し、遠心分離による分級操作で粗大粒子を除去して、ナノダイヤモンド分散液を得た。得られたナノダイヤモンド分散液の固形分濃度は5.8%、粒子径D50(メディアン径)は4.3nm、電気伝導度は680μS/cm、pHは9.34、ナノダイヤモンドのゼータ電位は−48mVであった。
【0058】
次に、このナノダイヤモンド分散液の粉末化を行った。具体的には、ナノダイヤモンド分散液100mLを噴霧乾燥した。装置は、日本ビュッヒ株式会社製スプレードライヤー B−290型を使用した。これにより、ナノダイヤモンド粉体(1)を得た。得られたナノダイヤモンド粉体(1)中に含まれる金属成分についてICP発光分光分析を行った。その結果を表1に示す。
【0059】
<硫酸処理工程>
ナノダイヤモンド粉体(1)を300mg秤量し、そこに、64重量%硫酸を10mL加えて混合物(1)を得、得られた混合物(1)について250℃に設定したサンドバス上で還流処理を40分間行った。
【0060】
<硫酸根除去工程>
還流処理後の混合物(1)について、遠心分離装置を使用して遠心分離処理(遠心力;4,000×g、遠心時間;10分)を行い沈殿物(1)と上清液(1)に分け、上清液(1)中に含まれる金属成分についてICP発光分光分析を行った。その結果を表1に示す。なお、上清液(1)の分析結果は、ナノダイヤモンド粉体中の金属成分含有量へ換算した値を記載した。
【0061】
次いで、得られた沈殿物(1)に30mLの超純水を加えて懸濁し、遠心分離装置を使用して2回目の遠心分離処理を行って固液分離を図った。遠心分離による固液分離後の沈殿物と上清液との分離、沈殿物に超純水を加えての懸濁、および更なる遠心分離処理という一連の過程を、遠心分離処理の上清液のpHが7になるまで反復して行って、ナノダイヤモンドが凝着した灰色の沈殿物を得た。
【0062】
得られた灰色の沈殿物に、3Nの水酸化ナトリウムを30mL加え、室温で1時間放置した後、遠心分離装置を使用して遠心分離処理(遠心力;4,000×g、遠心時間;10分)を行い沈殿物と上清液とを分けた後、得られた沈殿物に30mLの超純水を加えて懸濁し、遠心分離装置を使用して2回目の遠心分離処理を行って固液分離を図った。遠心分離による固液分離後の沈殿物と上清液との分離、沈殿物に超純水を加えての懸濁、および更なる遠心分離処理という一連の過程を、遠心分離処理の上清液のpHが10になるまで反復して行った。上清液を除去してナノダイヤモンドが凝着した黒色の沈殿物を得た。前記黒色の沈殿物に超純水を30mL加えたところ、溶解するようにナノダイヤモンドが分散して、ナノダイヤモンド分散液(ナノダイヤモンド濃度:1重量%)が得られた。ナノダイヤモンド分散液中のナノダイヤモンドの粒子径D50(メディアン径)は5.3nmであった。また、ナノダイヤモンド分散液の水分を蒸発乾固させて得られたナノダイヤモンド粉体(2)に含まれる金属成分についてICP発光分光分析を行った。その結果を表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
表1より、上清液(1)中のZr元素、Al元素、Y元素、Hf元素、及びFe元素含有量は、何れもナノダイヤモンド粉体(1)中のZr元素、Al元素、Y元素、Hf元素、及びFe元素含有量とほぼ同じ値であり、ナノダイヤモンド粉体(2)からはZr元素、Al元素、Y元素、Hf元素、及びFe元素は検出されなかったことから、上記硫酸処理により、ナノダイヤモンド粉体(1)中に含まれていたジルコニアビーズを用いたビーズミルに由来する金属成分(特に、Zr化合物、Al化合物、Y化合物、Hf化合物、及びFe化合物)が除かれたことがわかった。
【0065】
〈ナノダイヤモンド濃度〉
ナノダイヤモンド分散液中のナノダイヤモンド含有量は、秤量した分散液3〜5gの当該秤量値と、当該秤量分散液から加熱によって水分を蒸発させた後に残留する乾燥物(粉体)について精密天秤によって秤量した値とに基づき、算出した。
【0066】
〈メディアン径〉
ナノダイヤモンド分散液に含まれるナノダイヤモンドの粒子径D50(メディアン径)は、スペクトリス社製の装置(商品名「ゼータサイザー ナノZS」)を使用して、動的光散乱法(非接触後方散乱法)によって測定した。測定試料には、ナノダイヤモンド濃度が0.5〜2.0重量%となるように超純水で希釈した後に、超音波洗浄機による超音波照射を行って得られたナノダイヤモンド分散液を使用した。
【0067】
〈ゼータ電位〉
ナノダイヤモンド分散液に含まれるナノダイヤモンドのゼータ電位は、スペクトリス社製の装置(商品名「ゼータサイザー ナノZS」)を使用して、レーザードップラー式電気泳動法によって測定した。測定試料には、ナノダイヤモンド濃度が0.2重量%となるように超純水で希釈した後に超音波洗浄機による超音波照射を行って得られたナノダイヤモンド分散液を使用した。また、測定に付されたナノダイヤモンド分散液のpHは、pH試験紙(商品名「スリーバンドpH試験紙」、アズワン株式会社製)を使用して確認した。
【0068】
〈ICP発光分光分析法〉
ナノダイヤモンド粉体(1)、(2)の場合は粉体100mgを測定試料として使用し、上清液(1)の場合は上清液1mLを超純水にて10mLに希釈したものを測定試料として使用した。
前記測定試料を磁性るつぼに入れ、電気炉内にて乾式分解を行った。この乾式分解は、450℃で1時間の条件、これに続く550℃で1時間の条件、及びこれに続く650℃で1時間の条件の3段階で行った。このような乾式分解の後、磁性るつぼ内の残留物について、磁性るつぼに濃硫酸0.5mLを加えて蒸発乾固させた。そして、得られた乾固物を最終的に20mLの超純水に溶解させた。このようにして分析サンプルを調製した。
この分析サンプルを、ICP発光分光分析装置(商品名「CIROS120」,リガク社製)によるICP発光分光分析に供した。本分析の検出下限値が50重量ppmとなるように前記分析サンプルを調製した。また、本分析では、検量線用標準溶液として、SPEX社製標準液(XSTC-22;混合標準液)、及び関東化学株式会社製原子吸光用標準液(Hf1000、Y1000、Zr1000)を使用し、分析サンプルの硫酸濃度と同濃度の硫酸水溶液にて適宜希釈調製して用いた。そして、本分析では、空のるつぼで同様に操作および分析して得られた測定値を、測定試料についての測定値から差し引き、測定試料中の金属成分濃度を求めた。