(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記駆動パルス列に含まれる駆動パルスのうち、少なくとも1つは、前記第1のコイルを励磁するパルスと、前記第2のコイルを励磁するパルスを交互に繰り返して構成される請求項7に記載の電子時計。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下図面により本発明の実施の形態を詳述する。
【0041】
[各実施形態の特徴]
第1の実施形態の特徴は本発明の基本構成であり、一つの2コイルステップモータを有し、2コイルステップモータが1ステップ360度回転し、電子時計の秒針を1ステップで1秒運針する構成である。第2の実施形態の特徴は、分時針駆動用と秒針駆動用に二つの2コイルステップモータを有し、分時針駆動用の2コイルステップモータが1ステップ360度回転することで電子時計の分針が1ステップで1分運針し、秒針駆動用の2コイルステップモータが1ステップ180度回転することで電子時計の秒針が1ステップで1秒運針する構成である。第3の実施形態の特徴は、一つの2コイルステップモータと、高速駆動パルス発生回路と通常駆動パルス発生回路の二つの駆動パルス発生回路を有する構成である。
【0042】
[第1の実施形態]
[第1の実施形態の電子時計の構成説明:
図1]
第1の実施形態の電子時計の概略構成について
図1を用いて説明する。符号1は第1の実施形態のアナログ表示方式の電子時計である。電子時計1は、水晶振動子(図示せず)によって所定の基準信号P1を出力する発振回路2、基準信号P1を入力して制御信号CN1を出力する制御回路3、高速駆動パルス発生回路4、ドライバ回路10、および、2コイルステップモータ20(以下、「ステップモータ20」と略す)を有している。
【0043】
なお、電子時計1は、指針や文字板を備えた表示部、輪列、電源、操作部材等を含むが、本発明には直接係わらないので図示は省略する。
【0044】
高速駆動パルス発生回路4は、制御回路3からの制御信号CN1を入力して、ステップモータ20を駆動する複数の高速駆動パルスで構成される高速駆動パルス列SP10を生成し、ドライバ回路10に出力する。なお、高速駆動パルス列SP10は、後述するドライバ回路10の4つのバッファ回路を制御して駆動波形O1〜O4を出力するために、一例として4ビットで構成される。
【0045】
また、高速駆動パルス列SP10は、ステップモータ20を1ステップ360度単位で回転させる駆動パルスであるが、指針を動かす輪列の歯車減速比によっては、必ずしも指針を高速駆動できるものではないが、高速駆動が可能な駆動パルスであるので高速駆動パルス列と称する。
【0046】
ドライバ回路10は、高速駆動パルス列SP10を入力し、複数の駆動パルスに基づいた駆動波形O1、O2、O3、O4をステップモータ20に供給し、ステップモータ20を駆動する。なお、ドライバ回路10の詳細な構成は後述する。
【0047】
ステップモータ20は、コイルA、コイルBの二つのコイルを有している。なお、ステップモータ20の詳細は後述する。
【0048】
[ステップモータの構成説明:
図2]
次に、ステップモータ20の構成について
図2を用いて説明する。ステップモータ20は、ロータ21、ステータ22、二つのコイルA、コイルBなどによって構成される。ロータ21は2極磁化された円盤状の回転体であり、径方向にN極、S極が着磁されている。
【0049】
ステータ22は、軟磁性材によって成り、ロータ21が挿入されるロータ穴22dが設けられ、このロータ穴22dにロータ21が配置されている。ステータ22は、ロータ21に略対向して第1のステータ磁極部22a(以下、「第1磁極部22a」と略す)と第2のステータ磁極部22b(以下、「第2磁極部22b」と略す)が設けられている。また、第1磁極部22aと第2磁極部22bの間にあってロータ21に向き合う位置に第3のステータ磁極部22c(以下、「第3磁極部22c」と略す)が設けられている。
【0050】
また、第1磁極部22aと第3磁極部22cに磁気的に結合する第1のコイルとしてのコイルAと、第2磁極部22bと第3磁極部22cに磁気的に結合する第2のコイルとしてのコイルBが設けられている。
【0051】
コイルAは絶縁基板23a上にコイル端子O1、O2を有しており、コイルAの巻線の両端が接続されている。また、コイルBは絶縁基板23b上にコイル端子O3、O4を有しており、コイルBの巻線の両端が接続されている。この各コイル端子O1〜O4に、前述したドライバ回路20から出力される駆動波形O1〜O4がそれぞれ供給される。
【0052】
なお、説明をわかりやすくするために、各コイル端子と供給される各駆動波形の符号を共通にしている。また、一例としてコイル端子O1がコイルAの巻始めであり、コイル端子O4がコイルBの巻始めである。
【0053】
また、
図2で示すロータ21は静止状態であり、図面の上方を0度と規定し、その位置から反時計回りに90度、180度、270度と規定する。ロータ21は、N極が0度に位置するときと、180度に位置するときが静止位置(静的安定点)である。よって、
図2で示すロータ21は、N極が静止位置0度にある。
【0054】
[ドライバ回路の回路構成の説明:
図3]
次に、ステップモータ20を駆動するためのドライバ回路10の回路構成の一例について
図3を用いて説明する。ドライバ回路10は、ステップモータ20のコイルA、コイルBに高速駆動バルス列SP10による駆動波形O1〜O4を供給する4つのバッファ回路によって構成される。
【0055】
この4つのバッファ回路の構成を説明すると、まず、低ON抵抗のPチャンネルMOSトランジスタであるトランジスタP1と、低ON抵抗のNチャンネルMOSトランジスタであるトランジスタN1と、のコンプリメンタリ接続でなるバッファ回路が、駆動波形O1を出力してコイルAのコイル端子O1に供給される。
【0056】
また同様に、それぞれ低ON抵抗のトランジスタP2とトランジスタN2とのコンプリメンタリ接続でなるバッファ回路が、駆動波形O2を出力してコイルAのコイル端子O2に供給される。
【0057】
また同様に、それぞれ低ON抵抗のトランジスタP3とトランジスタN3とのコンプリメンタリ接続でなるバッファ回路が、駆動波形O3を出力してコイルBのコイル端子O3に供給される。
【0058】
また同様に、それぞれ低ON抵抗のトランジスタP4とトランジスタN4とのコンプリメンタリ接続でなるバッファ回路が、駆動波形O4を出力してコイルBのコイル端子O4に供給される。
【0059】
各トランジスタP1〜P4、N1〜N4のそれぞれゲート端子Gは、図示しないが、前述した高速駆動パルス発生回路4からの高速駆動パルス列SP10を入力し、各トランジスタは高速駆動パルス列SP10に基づいてON/OFF制御され、駆動波形O1〜O4が出力される。ここで、高速駆動パルス列SP10が前述したように4ビットで構成されれば、図示しないが、各ビットの高速駆動パルス列SP10が4つのバッファ回路のトランジスタのゲート端子Gにそれぞれ入力される。なお、各トランジスタのON/OFF動作の詳細は後述する。
【0060】
[従来の2コイルステップモータの駆動説明:
図4、
図5]
次に、2コイルステップモータを1ステップ180度単位で回転駆動する駆動波形は公知であるが、本発明を理解する上で必要であるので、
図2で示したステップモータ20と
図3のドライバ回路10を用いて、1ステップ180度回転駆動を2ステップで行って360度回転駆動する従来の駆動波形の一例と従来のステップモータの回転動作の概要を
図4と
図5を用いて説明する。
【0061】
まず、ステップモータ20のロータ21のN極を静止位置0度(
図2参照)から正転方向(反時計回り)に180度回転させる第1ステップの駆動パルスSP01とロータ21の回転動作について
図4を用いて説明する。
【0062】
図4(a)は、ステップモータ20のロータ21のN極を静止位置0度から1ステップ180度正転させるための駆動パルスSP01による駆動波形であり、ドライバ回路10の駆動波形O1〜O4を示している。ここで、駆動波形O1〜O4は、通常状態で電圧0V(VDD)に保たれ、駆動パルスによって電圧−V(VSS)となる。なお、駆動波形O1〜O4の表示形態は、後述するすべての駆動波形に共通である。
【0063】
また、
図4(b)は、ステップモータ20の第1ステップの駆動パルスSP01と、後述する第2ステップの駆動パルスSP02と、によって動作するドライバ回路10の各トランジスタの動作表(ON/OFF動作)である。また、
図4(c)と
図4(d)は、第1ステップでの駆動パルスSP01によるステップモータ20の回転動作を示している。
【0064】
図4(a)において、第1ステップでロータ21のN極を静止位置0度から正転させる場合、駆動パルスSP01によって駆動波形O3は電圧−Vとなり、他の駆動波形O1、O2、O4は電圧0Vとなる。また、駆動パルスSP01の出力が終了すると、次の駆動パルスの到来まで、すべての駆動波形O1〜O4は電圧0Vが維持される。
【0065】
次に、第1ステップの駆動パルスSP01によるドライバ回路10の各トランジスタの動作を
図4(b)の動作表で説明する。ここで、駆動パルスSP01によって駆動波形O3が電圧−Vとなるので、ドライバ回路10のトランジスタN3とトランジスタP4がON、トランジスタP3とトランジスタN4がOFFし、駆動電流がコイル端子O4からコイル端子O3に流れ、コイルBが励磁される。
【0066】
また、第1ステップの駆動パルスSP01によってドライバ回路10の駆動波形O1、O2は、共に電圧0Vとなるので、トランジスタP1、P2がON、トランジスタN1、N2がOFFして、コイルAのコイル端子O1、O2は共にVDDに接続されて電圧0Vとなり、コイルAには駆動電流が流れず、コイルAは励磁されない。
【0067】
次に、
図4(c)と
図4(d)を用いて、ステップモータ20の第1ステップの回転動作を説明する。
図4(c)において、駆動パルスSP01によって駆動波形O3が電圧−Vになると、前述したように、図示しないが駆動電流がコイル端子O4からコイル端子O3に流れ、コイルBが励磁される(コイルBの矢印は励磁方向を示す)。これにより、第2磁極部22bがN極、第3磁極部22cがS極に磁化され、また、コイルAは励磁されないので、第1磁極部22aは第3磁極部22cと同じS極となる。
【0068】
その結果、ロータ21のN極と、第1磁極部22a及び第3磁極部22cのS極が引き合い、また、ロータ21のS極と第2磁極部22bのN極が引き合い、ロータ21は静止位置0度から反時計回りに約135度回転する。
【0069】
次に、
図4(d)において、駆動パルスSP01が終了すると、コイルBの励磁が無くなり、第1〜第3磁極部22a〜22cの磁化が消えるが、ロータ21は、N極が約135度の位置から180度の静的安定点まで回転を継続し、その位置で保持される。この結果、ロータ21は、第1ステップの駆動パルスSP01によって180度回転駆動される。
【0070】
次に、ステップモータ20のロータ21のN極を静止位置180度から正転(反時計回り)させる第2ステップの駆動パルスSP02とロータ21の回転動作について
図5を用いて説明する。
図5(a)は、ステップモータ20のロータ21のN極を静止位置180度から1ステップ180度正転させるための駆動パルスSP02による駆動波形であり、ドライバ回路10の駆動波形O1〜O4を示している。また、
図5(b)〜
図5(d)は、第2ステップでの駆動パルスSP02によるステップモータ20の回転動作を示している。
【0071】
図5(a)において、第2ステップでロータ21のN極を静止位置180度から正転させる場合、駆動パルスSP02によって駆動波形O4は電圧−Vとなり、他の駆動波形O1、O2、O3は電圧0Vとなる。また、駆動パルスSP02の出力が終了すると、次の駆動パルスの到来まで、すべての駆動波形O1〜O4は電圧0Vが維持される。
【0072】
次に、第2ステップの駆動パルスSP02によるドライバ回路10の各トランジスタの動作を
図4(b)で説明する。ここで、駆動パルスSP02によって、駆動波形O4が電圧−Vとなるので、ドライバ回路10のトランジスタN4とトランジスタP3がON、トランジスタP4とトランジスタN3がOFFし、駆動電流がコイル端子O3からコイル端子O4に流れ、コイルBは第1ステップとは逆向きに励磁される。
【0073】
また、第2ステップの駆動パルスSP02によって駆動波形O1、O2は、第1ステップと同様に共に電圧0Vとなるので、トランジスタP1、P2がON、トランジスタN1、N2がOFFして、コイルAのコイル端子O1、O2は共にVDDに接続されて電圧0Vとなり、コイルAには駆動電流が流れず、コイルAは励磁されない。
【0074】
次に、
図5(b)〜
図5(d)を用いて、ステップモータ20の第2ステップの回転動作を説明する。
図5(b)は、第2ステップのロータ21の初めの位置を示し、ロータ21のN極が、静止位置180度(図面上の下向き)に位置して保持されている状態である。
【0075】
この状態から
図5(c)において、駆動パルスSP02によって駆動波形O4が電圧−Vになると、前述したように、図示しないが駆動電流がコイル端子O3からコイル端子O4に流れ、コイルBが励磁される(コイルBの矢印は励磁方向を示す)。これにより、第2磁極部22bがS極、第3磁極部22cがN極に磁化され、また、コイルAは励磁されないので、第1磁極部22aは第3磁極部22cと同じN極となる。
【0076】
その結果、ロータ21のS極と、第1磁極部22a及び第3磁極部22cのN極が引き合い、また、ロータ21のN極と第2磁極部22bのS極が引き合い、ロータ21は静止位置180度から反時計回りに回転し、ロータ21のN極は0度を起点にして約315度の位置まで回転する。
【0077】
次に、
図5(d)において、駆動パルスSP02が終了すると、コイルBの励磁が無くなり、第1〜第3磁極部22a〜22cの磁化が消えるが、ロータ21は、N極が約315度の位置から0度の静的安定点まで回転を継続し、その位置で保持される。この結果、ロータ21は、第2ステップの駆動パルスSP02によって180度回転駆動される。
【0078】
このように、従来の2コイルステップモータは、通常、単発の駆動パルスによって1ステップ180度単位で回転駆動され、従って、2ステップによって360度回転駆動されるのである。この従来の2ステップによる360度回転駆動では、第1ステップの駆動パルスSP01と第2ステップの駆動パルスSP02との間に時間的な間隔があり、2コイルステップモータであっても、前述したように、ロータ21の動きに減速、振動、停止、再加速等が生じ、指針の動きがぎこちなく不自然であり、滑らかさがなく、見栄えの悪い動きとなって問題である。
【0079】
[第1の実施形態の高速駆動パルスとドライバ回路の各トランジスタの動作説明:
図6]
次に、第1の実施形態のステップモータを1ステップ360度単位で回転駆動する高速駆動パルスの駆動波形の一例とドライバ回路の各トランジスタの動作について
図6を用いて説明する。
【0080】
まず、ステップモータ20のロータ21のN極を静止位置0度(
図2参照)から正転方向(反時計回り)に360度単位で回転駆動する高速駆動パルス列SP10の駆動波形について
図6(a)を用いて説明する。
図6(a)は、ステップモータ20のロータ21を1ステップ360度単位で回転させるための高速駆動パルス列SP10による駆動波形であり、ドライバ回路10から出力される4つの駆動波形O1〜O4の一例を示している。
【0081】
図6(a)において、高速駆動パルス列SP10は、第1駆動パルスSP11、第2駆動パルスSP12、第3駆動パルスSP13の3個の駆動パルスが順次出力される構成である。
【0082】
第1駆動パルスSP11は、駆動波形O3が電圧−Vであり、他の駆動波形O1、O2、O4は電圧0Vである。これにより、駆動波形O3とO4に接続されるステップモータ20のコイルBに駆動電流が流れて励磁される。
【0083】
また、第2駆動パルスSP12は、駆動波形O2、O4が電圧−Vであり、駆動波形O1、O3が電圧0Vである。これにより、ステップモータ20のコイルA、コイルBの両方に駆動電流が流れて、両方のコイルA、コイルBが励磁される。
【0084】
また、第3駆動パルスSP13は、駆動波形O4が電圧−Vであり、他の駆動波形O1、O2、O3は電圧0Vである。これにより、ステップモータ20のコイルBが第2駆動パルスSP12と同じ方向に励磁される。
【0085】
なお、高速駆動パルス列SP10の周期、すなわち、第1〜第3駆動パルスSP11〜SP13の合計のパルス幅は任意である。また、駆動波形O1〜O4は、連続するフルパルスとして図示しているが、複数の細かいパルス群によるチョッパ形の駆動パルスでもよい。
【0086】
次に、高速駆動パルス列SP10によるドライバ回路10の各トランジスタの動作を
図6(b)の動作表を用いて説明する。なお、ドライバ回路10は
図3を参照する。
図6(b)において、第1駆動パルスSP11は、駆動波形O3が電圧−V、駆動波形O4が電圧0Vとなるので、トランジスタN3とトランジスタP4がON、トランジスタP3とトランジスタN4がOFFし、駆動電流がコイルBのコイル端子O4からコイル端子O3に流れ、コイルBが励磁される。
【0087】
また、駆動波形O1、O2は、共に電圧0Vとなるので、トランジスタP1、P2がON、トランジスタN1、N2がOFFし、コイルAには駆動電流が流れず、コイルAは励磁されない。
【0088】
また、第2駆動パルスSP12は、駆動波形O1が電圧0V、駆動波形O2が電圧−Vとなるので、トランジスタP1とトランジスタN2がON、トランジスタN1とトランジスタP2がOFFし、駆動電流がコイル端子O1からコイル端子O2に流れ、コイルAが励磁される。また、駆動波形O3が電圧0V、駆動波形O4が電圧−Vとなるので、トランジスタP3とトランジスタN4がON、トランジスタN3とトランジスタP4がOFFし、駆動電流がコイル端子O3からコイル端子O4に流れ、コイルBが励磁される。
【0089】
また、第3駆動パルスSP13は、駆動波形O3が電圧0V、駆動波形O4が電圧−Vとなるので、トランジスタP3とトランジスタN4がON、トランジスタN3とトランジスタP4がOFFし、駆動電流がコイル端子O3からコイル端子O4に流れ、コイルBが励磁される。また、駆動波形O1、O2は、共に電圧0Vとなるので、トランジスタP1、P2がON、トランジスタN1、N2がOFFし、コイルAには駆動電流が流れず、コイルAは励磁されない。
【0090】
このように、高速駆動パルス列SP10の3個の第1〜第3駆動パルスSP11〜SP13によって、ドライバ回路10の各トランジスタがON/OFF制御され、ステップモータ20のコイルA、Bを励磁するのである。
【0091】
[第1の実施形態の1ステップ360度回転駆動の説明:
図7]
次に、第1の実施形態のステップモータ20の1ステップ360度単位の高速回転駆動について
図7を用いて説明する。なお、説明の条件として、駆動パルスは、
図6に示した高速駆動パルス列SP10であり、ステップモータ20の最初の状態は、前述した
図2に示すように、ロータ21のN極が静止位置0度にあるとする。また、ステップモータ20の各部材の符号は、
図7(a)にのみ記して他は省略する。
【0092】
図7(a)は、高速駆動パルス列SP10の第1駆動パルスSP11がステップモータ20に供給された状態であり、この場合、前述したように、駆動電流(図示せず)がコイル端子O4からコイル端子O3に流れ、コイルBが矢印の方向に励磁される。これにより、第2磁極部22bがN極、第3磁極部22cがS極に磁化され、また、コイルAは励磁されないので、第1磁極部22aは第3磁極部22cと同じS極となる。
【0093】
その結果、ロータ21のN極と、第1磁極部22a及び第3磁極部22cのS極が引き合い、また、ロータ21のS極と第2磁極部22bのN極が引き合い、ロータ21は反時計回りに回転し、ロータ21のN極は静止位置0度から約135度の位置まで回転する。
【0094】
次に、
図7(b)において、第2駆動パルスSP12が供給されると、前述したように、駆動電流(図示せず)がコイル端子O1からコイル端子O2に流れ、コイルAが矢印の方向に励磁される。また同様に駆動電流(図示せず)がコイル端子O3からコイル端子O4に流れ、コイルBが矢印の方向(コイルAと反対方向)に励磁される。
【0095】
これにより、第1磁極部22aがN極に磁化され、第2磁極部22bがS極に磁化され、第3磁極部22cは磁化が打ち消し合って磁化されない。その結果、ロータ21のN極と第2磁極部22bのS極が引き合い、また、ロータ21のS極と第1磁極部22aのN極が引き合い、ロータ21は停止することなく更に反時計回りに回転し、ロータ21のN極は約270度の位置まで回転する。
【0096】
次に、
図7(c)において、第3駆動パルスSP13が供給されると、前述したように、駆動電流(図示せず)がコイル端子O3からコイル端子O4に流れ、コイルBが矢印の方向に励磁される。これにより、第2磁極部22bがS極、第3磁極部22cがN極に磁化され、また、コイルAは励磁されないので、第1磁極部22aは第3磁極部22cと同じN極となる。その結果、ロータ21のS極と、第1磁極部22a及び第3磁極部22cのN極が引き合い、ロータ21は停止することなく更に反時計回りに回転し、ロータ21のN極は約315度の位置まで回転する。
【0097】
次に、
図7(d)において、高速駆動パルス列SP10の供給が終了すると、駆動波形O1〜O4はすべて電圧0Vとなるので、ステップモータ20のコイルA、コイルBの励磁が無くなり、第1〜第3磁極部22a〜22cの磁化が消えるが、ロータ21は、N極が約315度の位置から停止することなく360度(0度)の静的安定点まで回転を継続し、その位置で保持される。このように、ステップモータ20は、3個の駆動パルスSP11〜SP13で構成される高速駆動パルス列SP10による1ステップ駆動で360度回転駆動される。すなわち、1ステップ360度単位の回転駆動が実現できる。
【0098】
以上のように、第1の実施形態の電子時計によれば、ステップモータ20に3個の駆動パルスSP11〜SP13で構成される高速駆動パルス列SP10を供給することで、1ステップで360度単位の回転駆動ができる。これにより、従来は、1ステップ180度回転で輪列の歯車減速比を1/30として1秒運針していたが、本実施形態では、ステップモータが1ステップ360度回転で駆動されるので、歯車減速比を2倍の1/60に増やして1秒運針することが可能となり、指針のトルクアップを実現でき、指針の耐衝撃性が大きく向上する。
【0099】
また、ロータ21が回転途中に停止することなく360度単位で回転するので、指針の動きが滑らかになり、ぎこちなさがなく、見栄えの良い電子時計を提供できる。また、ステップモータが1ステップ360度回転することで、輪列のバックラッシュなどによる指針の表示位置ずれを改善することができる。
【0100】
なお、ステップモータ20のロータ21のN極が静止位置0度にあるとき(
図2参照)、ロータ21を1ステップ360度回転で逆転(時計回り)させる場合は、図示しないが、
図6(a)で示した駆動波形O1〜O4において、駆動波形O1とO4を入れ替え、且つ、駆動波形O2とO3を入れ替えてステップモータ20を駆動することで、ロータ21を逆転させることができる。この逆転駆動においても、ロータ21を1ステップ360度単位で回転できるので、同様の効果を得ることができる。
【0101】
また、ステップモータ20のロータ21のN極が静止位置180度(S極が0度)にある場合は、
図6(a)で示した駆動波形O1〜O4において、駆動波形O1とO2を入れ替え、且つ、駆動波形O3とO4を入れ替えることで、ロータ21を1ステップ360度単位で同様に駆動することができる。
【0102】
[第2の実施形態]
[第2の実施形態の電子時計の構成説明:
図8]
次に、第2の実施形態の電子時計の概略構成について
図8を用いて説明する。符号30は第2の実施形態のアナログ表示方式の電子時計である。電子時計30は、水晶振動子(図示せず)によって所定の基準信号P1を出力する発振回路32、基準信号P1を入力して制御信号CN1、CN2、CN3を出力する制御回路33、高速駆動パルス発生回路34、分時針駆動タイミング回路35、秒針駆動タイミング回路36、セレクタ37、ドライバ回路40、第1の2コイルステップモータ41(以下、「ステップモータ41」と略す)と、第2の2コイルステップモータ42(以下、「ステップモータ42」と略す)を有している。
【0103】
なお、電子時計30は、指針等による表示部、輪列、電源、操作部材等を含むが、本発明には直接係わらないので図示は省略する。
【0104】
高速駆動パルス発生回路34は、制御信号CN1を入力して、ステップモータ41、42を駆動するための複数の駆動パルスで構成される高速駆動パルス列SPを生成し出力する。
【0105】
分時針駆動タイミング回路35は、制御信号CN2を入力して、分時針を駆動のための高速駆動パルスを選択する高速駆動タイミング信号P2を生成し出力する。
【0106】
秒針駆動タイミング回路36は、制御信号CN3を入力して、秒針を駆動のための通常駆動パルスを選択する通常駆動タイミング信号P3を生成し出力する。
【0107】
セレクタ37は、高速駆動パルス列SPを入力し、高速駆動タイミング信号P2に基づいて高速駆動パルス列SPをそのまま通過させて高速駆動パルス列SP10として出力する。また、セレクタ37は、通常駆動タイミング信号P3に基づいて高速駆動パルス列SPの特定の駆動パルスを選択し、通常駆動パルスSP00として出力する。なお、高速駆動パルス列SP10が出力される場合を高速駆動モードと称し、通常駆動パルスSP00が出力される場合を通常駆動モードと称する。
【0108】
ドライバ回路40は、セレクタ37からの高速駆動パルス列SP10または通常駆動パルスSP00を入力し、各駆動パルスに基づいた駆動波形O1〜O8を二つのステップモータ41、42のそれぞれのコイルA、コイルBに供給し、ステップモータ41、42を駆動する。なお、ドライバ回路40の詳細な構成は後述する。
【0109】
ステップモータ41、42は、それぞれコイルA、コイルBを有し、その構成は第1の実施形態のステップモータ20(
図2参照)と同様であるので詳細な説明は省略する。ここで、ステップモータ41は、一例として電子時計30の分時針(図示せず)を駆動するために配置され、ステップモータ42は、一例として電子時計30の秒針(図示せず)を駆動するために配置される。
【0110】
ステップモータ41のコイルAのコイル端子O1、O2は、ドライバ回路40からの駆動波形O1、O2にそれぞれ接続され、コイルBのコイル端子O3、O4は、ドライバ回路40の駆動波形O3、O4にそれぞれ接続される。また、もう一方のステップモータ42のコイルAのコイル端子O1、O2は、ドライバ回路40の駆動波形O5、O6にそれぞれ接続され、コイルBのコイル端子O3、O4は、ドライバ回路40の駆動波形O7、O8にそれぞれ接続される。このように、第2の実施形態の電子時計30は、分時針駆動用と秒針駆動用に二つのステップモータ41、42を有することが特徴である。
【0111】
[第2の実施形態のドライバ回路の回路構成の説明:
図9]
次に、ステップモータ41、42を駆動するためのドライバ回路40の回路構成の一例について
図9を用いて説明する。ドライバ回路40は、ステップモータ41、42のそれぞれのコイルA、コイルBに8つの駆動波形を供給する8個のバッファ回路によって構成される。
【0112】
ここで、ステップモータ41に対しては、低ON抵抗のPチャンネルMOSトランジスタであるトランジスタP1と、低ON抵抗のNチャンネルMOSトランジスタであるトランジスタN1と、のコンプリメンタリ接続でなるバッファ回路が、駆動波形O1を出力してコイルAのコイル端子O1に接続される。 また同様に、それぞれ低ON抵抗のトランジスタP2とトランジスタN2とでなるバッファ回路が、駆動波形O2を出力してコイルAのコイル端子O2に接続される。
【0113】
また同様に、それぞれ低ON抵抗のトランジスタP3とトランジスタN3とでなるバッファ回路が、駆動波形O3を出力してコイルBのコイル端子O3に接続される。
【0114】
また同様に、それぞれ低ON抵抗のトランジスタP4とトランジスタN4とでなるバッファ回路が、駆動波形O4を出力してコイルBのコイル端子O4に接続される。
【0115】
また、ステップモータ42に対しては、低ON抵抗のトランジスタP5と低ON抵抗のトランジスタN5とのコンプリメンタリ接続でなるバッファ回路が、駆動波形O5を出力してコイルAのコイル端子O1に接続される。
【0116】
また同様に、それぞれ低ON抵抗のトランジスタP6とトランジスタN6とでなるバッファ回路が、駆動波形O6を出力してコイルAのコイル端子O2に接続される。
【0117】
また同様に、それぞれ低ON抵抗のトランジスタP7とトランジスタN7とでなるバッファ回路が、駆動波形O7を出力してコイルBのコイル端子O3に接続される。
【0118】
また同様に、それぞれ低ON抵抗のトランジスタP8とトランジスタN8とでなるバッファ回路が、駆動波形O8を出力してコイルBのコイル端子O4に接続される。
【0119】
また、各トランジスタP1〜P8、N1〜N8の各ゲート端子Gは、図示しないが、前述したセレクタ37からの高速駆動パルス列SP10または通常駆動パルスSP00を入力し、各トランジスタは駆動パルスに基づいてON/OFF制御され、ステップモータ41、42の各コイルA、コイルBに駆動波形O1〜O8を供給する。
【0120】
[第2の実施形態の駆動パルスの生成と駆動波形の説明:
図10]
次に、第2の実施形態の駆動パルスの生成と駆動波形の一例について
図10を用いて説明する。
図10(a)は、高速駆動パルス発生回路34から出力される高速駆動パルス列SPと、高速駆動タイミング信号P2、通常駆動タイミング信号P3の一例である。
図10(b)は、高速駆動モードで分時針を駆動するための高速駆動パルス列SP10の駆動波形の一例である。
図10(c)は、通常駆動モードで秒針を駆動するための通常駆動パルスSP00の駆動波形の一例である。
図10(a)〜
図10(c)は、時間軸を揃えて記述している。なお、電子時計30の構成は、
図8の構成図を参照する。
【0121】
図10(a)において、高速駆動パルス発生回路34から出力される高速駆動パルス列SPは、一例として4ビットのSPa〜SPdでなり、時系列的に第1駆動パルスSP1、第2駆動パルスSP2、第3駆動パルスSP3の3個の駆動パルスで構成され、ドライバ回路40の各トランジスタをON/OFF制御するために論理“1”または論理“0”でなるパルス列である。
【0122】
第1駆動パルスSP1は、SPa、SPb、SPdが論理“1”であり、SPcが論理“0”である。また、第2駆動パルスSP2は、SPa、SPcが論理“1”であり、SPb、SPdが論理“0”である。また、第3駆動パルスSP3は、SPa、SPb、SPcが論理“1”であり、SPdが論理“0”である。この高速駆動パルス列SPは制御回路33の制御によって、任意の期間、所定の周期で繰り返し出力され、
図10(a)では、少なくとも2回繰り返し出力されたことを示している。
【0123】
また、高速駆動タイミング信号P2は、高速駆動パルス列SPの第1〜第3駆動パルスSP1〜SP3のタイミングで、一例として論理“0”となり、他のタイミングでは論理“1”となる信号である。セレクタ37は、高速駆動モードにおいて、この高速駆動タイミング信号P2の論理“0”のタイミングで高速駆動パルス列SPを通過させ、高速駆動パルス列SP10としてドライバ回路40に供給する。
【0124】
また、通常駆動タイミング信号P3は、二つのステップを有し、最初の第1ステップでは、高速駆動パルス列SPの第1駆動パルスSP1のタイミングに合わせて論理“0”となり、次の第2ステップでは、第3駆動パルスSP3のタイミングに合わせて論理“0”となる信号である。セレクタ37は、通常駆動モードにおいて、この通常駆動タイミング信号P3の論理“0”のタイミングで高速駆動パルス列SPの第1駆動パルスSP1(第1ステップ)と第3駆動パルスSP3(第2ステップ)を通過させ、通常駆動パルスSP00としてドライバ回路40に供給する。
【0125】
次に
図10(b)において、高速駆動モードでの駆動パルスを説明する。制御回路33が高速駆動モードに選択されると、制御信号CN2を出力し、分時針駆動タイミング回路35は、制御信号CN2によって高速駆動タイミング信号P2を出力する。セレクタ37は、高速駆動タイミング信号P2によって、4ビットの高速駆動パルス列SPが通過して出力するように動作する。
【0126】
これにより、高速駆動モードでは、前述したように、4ビットの高速駆動パルス列SPがそのままセレクタ37を通過し、高速駆動パルス列SP10としてドライバ回路40に供給される。なお、セレクタ37から出力される高速駆動パルス列SP10は、第1の実施形態の高速駆動パルス列SP10と同様であるので同一符号とし、構成する第1、第2、第3駆動パルスSP11、SP12、SP13も同一符号とする。
【0127】
ドライバ回路40は、入力する4ビットの高速駆動パルス列SP10の第1〜第3駆動パルスSP11〜SP13に基づいて、各トランジスタが順次ON/OFF動作し、
図10(b)に示す駆動波形O1〜O4を出力する。
【0128】
ステップモータ41のコイルA、コイルBは、この駆動波形O1〜O4を入力し、1ステップ360度単位で高速回転駆動される。なお、ステップモータ41による高速回転駆動は、前述した第1の実施形態の1ステップ360度単位の高速回転駆動(
図7参照)と同様であるので、ステップモータの動作説明は省略する。
【0129】
ここで、高速駆動パルス列SP10の繰り返し周期T1(
図10(b)参照)を60秒とし、ステップモータ41の1ステップ360度回転によって、分針が1分進むように輪列(図示せず)の歯車減速比を大きく設定(1/60)すれば、ステップモータ41は、60秒毎に360度回転し、分針を1分運針することができる。
【0130】
次に
図10(c)において、通常駆動モードでの駆動パルスを説明する。制御回路33が通常駆動モードに選択されると、制御信号CN3を出力し、秒針駆動タイミング回路36は、制御信号CN3によって、通常駆動タイミング信号P3を出力する。セレクタ37は、通常駆動タイミング信号P3が論理“0”の期間に、4ビットの高速駆動パルス列SPが通過して出力するように動作する。
【0131】
これにより、通常駆動モードでは、前述したように、セレクタ37によって選択された4ビットの通常駆動パルスSP00が出力し、ドライバ回路40に供給される。なお、通常駆動パルスSP00の第1ステップの駆動パルスを第1駆動パルスSP01と称し、第2ステップの駆動パルスを第2駆動パルスSP02と称する。
【0132】
ドライバ回路40は、入力する4ビットの通常駆動パルスSP00の第1駆動パルスSP01と第2駆動パルスSP02に基づいて、各トランジスタがON/OFF動作し、
図10(c)に示す駆動波形O5〜O8を出力する。
【0133】
ここで、通常駆動パルスSP00の第1ステップである第1駆動パルスSP01は、選択された高速駆動パルス列SPcが論理“0”であるので(
図10(a)参照)、駆動波形O7が電圧−Vとなるように制御され、他の駆動波形O5、O6、O8は電圧0Vとなる。また、通常駆動パルスSP00の第2ステップである第2駆動パルスSP02は、選択された高速駆動パルス列SPdが論理“0”であるので(
図10(a)参照)、駆動波形O8が電圧−Vとなるように制御され、他の駆動波形O5、O6、O7は電圧0Vとなる。ステップモータ42のコイルA、コイルBは、この駆動波形O5〜O8を入力し、通常駆動される。
【0134】
この通常駆動パルスSP00による駆動波形O5〜O8は、
図4と
図5で前述した従来の1ステップ180度回転の駆動波形と同様であり、従って、ステップモータ42の通常駆動動作は、
図4、
図5で示した従来の1ステップ180度回転駆動と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0135】
このように、通常駆動モードの通常駆動パルスSP00は、秒針を駆動するステップモータ42を1ステップ180度回転させることができる。そして、第1駆動パルスSP01と第2駆動パルスSP02の周期T2(
図10(c))を一例として1秒とするならば、ステップモータ42は、1秒毎に180度回転し、秒針を1秒運針することができる。すなわち、第2の実施形態は、高速駆動モードでは、高速駆動パルス列SP10によってステップモータ41を1ステップ360度回転駆動して分針を1分運針し、また、通常駆動モードでは、従来のように通常駆動パルスSP00によってステップモータ42を1ステップ180度回転駆動して秒針を1秒運針するのである。
【0136】
なお、
図10(b)に示す高速駆動モードでの高速駆動パルス列SP10による駆動波形O1〜O4は、この駆動波形に限定されず。2コイルステップモータを1ステップ360度回転駆動できるどのような駆動波形でもよい。
【0137】
[第2の実施形態のドライバ回路の動作説明:
図11]
次に、第2の実施形態のドライバ回路40の各トランジスタのON/OFF動作によって、高速駆動パルス列SP10と通常駆動パルスSP00の各駆動波形がどのように作られるかを
図11の各トランジスタの動作表を用いて説明する。
【0138】
第2の実施形態のドライバ回路40は、前述したように、8個のトランジスタP1〜P8と、8個のトランジスタN1〜N8と、によるコンプリメンタリ接続の8個のバッファ回路で構成され、各バッファ回路から駆動波形O1〜O8が出力される(
図9参照)。
【0139】
まず、
図11の動作表左側から高速駆動モードでの各トランジスタのON/OFF動作を説明する。高速駆動モードで駆動されるステップモータ41(分時針駆動)は、駆動波形O1〜O4によって駆動され、従って高速駆動モードでは、ドライバ回路40のトランジスタP1〜P4とトランジスタN1〜N4が動作することで駆動波形O1〜O4が出力される。
【0140】
ここで、
図11において、高速駆動パルス列SP10の第1駆動パルスSP11では、駆動波形O3が電圧−Vであり、他の駆動波形O1、O2、O4は電圧0Vであるので(
図10(b)参照)、トランジスタN3がON、トランジスタP3がOFFとなり、他のトランジスタP1、P2、P4はON、トランジスタN1、N2、N4はOFFとなるように制御される。
【0141】
また、第2駆動パルスSP12では、駆動波形O2、O4が電圧−Vであり、他の駆動波形O1、O3は電圧0Vであるので(
図10(b)参照)、トランジスタN2、N4がON、トランジスタP2、P4がOFFとなり、他のトランジスタP1、P3はON、トランジスタN1、N3はOFFとなるように制御される。
【0142】
また、第3駆動パルスSP13では、駆動波形O4が電圧−Vであり、他の駆動波形O1、O2、O3は電圧0Vであるので(
図10(b)参照)、トランジスタN4がON、トランジスタP4がOFFとなり、他のトランジスタP1、P2、P3はON、トランジスタN1、N2、N3はOFFとなるように制御される。
【0143】
また、後述する通常駆動モードでは、ステップモータ41は駆動されず、駆動波形O1〜O4は、すべて電圧V0となるので、トランジスタP1〜P4がすべてON、トランジスタN1〜N4がすべてOFFとなるように制御される。
【0144】
次に、
図11の動作表右側から通常駆動モードでの各トランジスタのON/OFF動作を説明する。通常駆動モードで駆動されるステップモータ42(秒針駆動)は、駆動波形O5〜O8によって駆動され、従って通常駆動モードでは、ドライバ回路40のトランジスタP5〜P8とトランジスタN5〜N8が動作することで駆動波形O5〜O8が出力される。
【0145】
ここで、
図11において、通常駆動パルスSP00の第1ステップの第1駆動パルスSP01では、駆動波形O7が電圧−Vであり、他の駆動波形O5、O6、O8は電圧0Vであるので(
図10(c)参照)、トランジスタN7がON、トランジスタP7がOFFとなり、他のトランジスタP5、P6、P8はON、トランジスタN5、N6、N8はOFFとなるように制御される。
【0146】
また、通常駆動パルスSP00の第2ステップの第2駆動パルスSP02では、駆動波形O8が電圧−Vであり、他の駆動波形O5、O6、O7は電圧0Vであるので(
図10(c)参照)、トランジスタN8がON、トランジスタP8がOFFとなり、他のトランジスタP5、P6、P7はON、トランジスタN5、N6、N7はOFFとなるように制御される。
【0147】
また、前述した高速駆動モードでは、ステップモータ42は駆動されず、駆動波形O5〜O8は、すべて電圧V0となるので、トランジスタP5〜P8がすべてON、トランジスタN5〜N8がすべてOFFとなるように制御される。
【0148】
なお、
図11の動作表において、各駆動パルスで各トランジスタのON/OFF動作が切り替えられる位置を楕円で囲んで示している。たとえば、高速駆動モードにおいて、第1駆動パルスSP11では駆動波形O3が電圧−Vとなるので、トランジスタP3がONからOFFに切り替わり、トランジスタN3がOFFからONに切り替わるため、トランジスタP3のOFFとトランジスタN3のONを楕円で囲み、第1駆動パルスSP11によってトランジスタP3、N3の動作が切り替わることを表している。
【0149】
また、高速駆動パルス列SP10によるステップモータ41の1ステップ360度回転の動作は、前述した第1の実施形態のステップモータ20の動作(
図7参照)と同様であり、また、通常駆動パルスSP00によるステップモータ42の動作は、前述した従来のステップモータの動作(
図4、
図5参照)と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0150】
以上のように、第2の実施形態の電子時計によれば、分時針駆動用に1ステップ360度回転で高速駆動を行うステップモータ41と、秒針駆動用に1ステップ180度回転で通常駆動を行うステップモータ42と、の二つのステップモータを有している。また、秒針を動かすステップモータ42を駆動する通常駆動パルスSP00の駆動周波数(駆動パルスの出力間隔)は、分時針を動かすステップモータ41を駆動する高速駆動パルス列SP10の駆動周波数より低く設定される。これにより、二つのステップモータによって駆動周波数が異なる運針を実現できる。
【0151】
ここで、秒針は一般的に他の指針に比べて針形状が小さく軽いので、耐衝撃性はそれほど重視されないが、秒針は通常1秒運針であるために駆動頻度が高く、低消電駆動が重視される。また、分時針は一般的に秒針に比べて針形状が大きく重いので、耐衝撃性が重視されるが、駆動頻度は低いので低消電駆動は重視されない。
【0152】
従って、分時針駆動用に1ステップ360度回転のステップモータ41を配置することで、分針の歯車減速比を大きく(1/60)できるので、分時針のトルクアップを実現でき、分時針の耐衝撃性が向上し、分時針に求められる性能を満たすことができる。また、秒針駆動用に1ステップ180度回転の通常駆動のステップモータ42を配置することで、秒針の歯車減速比は従来通り1/30であるが、1ステップの駆動パルスを単発で実現でき(
図10(c)参照)、低消電駆動が可能となる。
【0153】
また、第2の実施形態では、高速駆動パルス発生回路34を配置し、一つの駆動パルス列から特定の駆動パルスを選択するタイミングを切り替えることで、高速駆動パルス列SP10と通常駆動パルスSP00を生成するので、駆動パルス発生回路を一つのみで構成でき、電子時計の回路規模を縮小できるメリットがある。
【0154】
[第3の実施形態]
[第3の実施形態の電子時計の構成説明:
図12]
次に、第3の実施形態の電子時計の概略構成について
図12を用いて説明する。符号50は第3の実施形態のアナログ表示方式の電子時計である。電子時計50は、水晶振動子(図示せず)によって所定の基準信号P1を出力する発振回路52、基準信号P1を入力して制御信号CN4、CN5、CN6を出力する制御回路53、高速駆動パルス発生回路54、通常駆動パルス発生回路55、切替制御回路56、セレクタ57、ドライバ回路60、および、2コイルステップモータ20(以下、「ステップモータ20」と略す)を有している。
【0155】
なお、電子時計50は、指針等による表示部、輪列、電源、操作部材等を含むが、本発明には直接係わらないので図示は省略する。
【0156】
高速駆動パルス発生回路54は、制御信号CN4を入力して、ステップモータ20を高速に駆動するための高速駆動パルス列SP20を生成し出力する。なお、高速駆動パルス列SP20は、前述した第1及び第2の実施形態の高速駆動パルス列SP10と駆動波形が異なる例を示すので別符号とした。また、高速駆動パルス列SP20は、高速駆動パルス列SP10と同様に3個の駆動パルスで構成されるが、詳細は後述する。
【0157】
通常駆動パルス発生回路55は、制御信号CN5を入力して、ステップモータ20を通常駆動するための通常駆動パルスSP00を生成し出力する。なお、第3の実施形態の通常駆動パルスSP00は、前述した第2の実施形態の通常駆動パルスSP00と駆動波形が同一なので同一符号とした。
【0158】
切替制御回路56は、制御信号CN6を入力して、駆動モードに応じて高速駆動パルス列SP20と通常駆動パルスSP00を切り替えるための切替信号P4を出力する。
【0159】
セレクタ57は、高速駆動パルス列SP20と通常駆動パルスSP00との2種類の駆動パルスを入力し、切替信号P4によって2種類の駆動パルスのいずれかを選択し出力する。
【0160】
ドライバ回路60は、セレクタ57からの高速駆動パルス列SP20または通常駆動パルスSP00のいずれかの駆動パルスを入力し、駆動パルスに基づいた駆動波形O1〜O4をステップモータ20のコイルA、コイルBに供給し、ステップモータ20を駆動する。なお、ドライバ回路60の回路構成は、前述した第1の実施形態のドライバ回路10(
図3参照)と同様であるので回路構成及び各トランジスタの動作説明は省略する。
【0161】
ステップモータ20は、第1のコイルとしてコイルA、第2のコイルとしてコイルBの二つのコイルを有しており、前述した第1の実施形態のステップモータ20(
図2参照)と同様であるので、同一符号として構成の詳細は省略する。
【0162】
[第3の実施形態の電子時計の動作説明:
図12]
次に、第3の実施形態の電子時計の概略動作について
図12を用いて説明する。電子時計50は前述したように、一つのステップモータ20を有し、高速駆動パルス発生回路54と通常駆動パルス発生回路55の二つの駆動パルス発生回路を有する構成である。
【0163】
電子時計50は、1秒運針等を行う通常駆動モードと、時刻修正などで高速運針を行う高速駆動モードと、を備えている。ここで、電子時計50が高速駆動モードである場合、制御回路53は制御信号CN4を出力して高速駆動パルス発生回路54を起動し、高速駆動パルス列SP20を出力する。また、電子時計50が通常駆動モードである場合、制御回路53は制御信号CN5を出力して通常駆動パルス発生回路55を起動し、通常駆動パルスSP00を出力する。
【0164】
また、電子時計50が高速駆動モードを選択すると、制御回路53は制御信号CN6を出力して切替制御回路56を動作させ、高速駆動モードの切替信号P4を出力してセレクタ57に伝達する。セレクタ57は切替信号P4を入力し、高速駆動パルス列SP20を選択してドライバ回路60に出力する。
【0165】
ドライバ回路60は、複数の駆動パルスでなる高速駆動パルス列SP20によって、内部のバッファ回路を動作させ、高速駆動に対応した駆動波形O1〜O4を順次出力して、ステップモータ20を1ステップ360度単位で高速回転駆動を行う。
【0166】
また、電子時計50が通常駆動モードを選択すると、制御回路53は制御信号CN6を出力して切替制御回路56を動作させ、通常駆動モードの切替信号P4を出力してセレクタ57に伝達する。セレクタ57は、切替信号P4を入力し、通常駆動パルスSP00を選択してドライバ回路60に出力する。
【0167】
ドライバ回路60は、通常駆動パルスSP00によって内部のバッファ回路を動作させ、通常駆動に対応した駆動波形O1〜O4を出力し、ステップモータ20を1ステップ180度単位で通常回転駆動(たとえば1秒運針)を行う。
【0168】
[従来の2コイルステップモータの2ステップ360度回転駆動の説明:
図13]
次に、第3の実施形態のステップモータの高速駆動動作を説明する前に、比較のために、2コイルステップモータによる従来の高速駆動動作の一例を
図13を用いて説明する。なお、2コイルステップモータとドライバ回路は、
図12に示した第3の実施形態の構成図を適用する。
【0169】
図13(a)は、ステップモータ20を従来の1ステップ180度回転を連続して2ステップで行い、ロータを高速に2ステップ360度回転駆動させる駆動波形の一例である。
図13(a)において、第1ステップの第1駆動パルスSP1−1は、駆動波形O3が電圧−Vであり、他の駆動波形O1、O2、O4は電圧0Vである。これにより、駆動波形O3とO4に接続されるステップモータ20のコイルBに駆動電流が流れて励磁される。
【0170】
次に、第1ステップの第2駆動パルスSP1−2は、駆動波形O2、O3が電圧−Vであり、駆動波形O1、O4が電圧0Vである。これにより、ステップモータ20のコイルA、コイルBの両方に駆動電流が流れて、両方のコイルA、コイルBが同じ方向に励磁される。
【0171】
次に、第2ステップの第1駆動パルスSP2−1は、駆動波形O4が電圧−Vであり、他の駆動波形O1、O2、O3は電圧0Vである。これにより、駆動波形O3とO4に接続されるステップモータ20のコイルBに駆動電流が流れて第1ステップと逆の方向に励磁される。
【0172】
次に、第2ステップの第2駆動パルスSP2−2は、駆動波形O1、O4が電圧−Vであり、駆動波形O2、O3が電圧0Vである。これにより、ステップモータ20のコイルA、コイルBに駆動電流が流れて、両方のコイルA、コイルBが第1ステップと逆の方向に励磁される。
【0173】
次に、従来の2ステップによる360度回転駆動のステップモータの動作を
図13(b)〜
図13(e)によって説明する。なお、ステップモータ20の各部材の符号は、
図13(b)にのみ記して他は省略する。
図13(b)は、ステップモータ20に第1ステップの第1駆動パルスSP1−1が供給された場合の動作である。ここで、第1駆動パルスSP1−1が供給されると、駆動電流(図示せず)がコイル端子O4からコイル端子O3に流れ、コイルBが矢印の方向に励磁される。
【0174】
これにより、第2磁極部22bがN極、第3磁極部22cがS極に磁化され、また、コイルAは励磁されないので、第1磁極部22aは第3磁極部22cと同じS極となる。その結果、ロータ21のN極と、第1磁極部22a及び第3磁極部22cのS極が引き合い、また、ロータ21のS極と第2磁極部22bのN極が引き合い、ロータ21は反時計回りに回転し、ロータ21のN極は静止位置0度から約135度の位置まで回転する。
【0175】
次に、
図13(c)において、第1ステップの第2駆動パルスSP1−2が供給されると、駆動電流がコイル端子O1からコイル端子O2に流れ、コイルAが矢印の方向に励磁される。また同様に駆動電流がコイル端子O4からコイル端子O3に流れ、コイルBが矢印の方向に励磁される。
【0176】
これにより、第1磁極部22aと第2磁極部22bがN極に磁化され、第3磁極部22cはS極に磁化される。その結果、ロータ21のN極と第3磁極部22cのS極が引き合い、また、ロータ21のS極は、第1磁極部22aと第2磁極部22bの両方のN極と引き合うので、ロータ21はさらに反時計回りに回転し、ロータ21のN極は180度の位置まで回転し静止する。すなわち、第1ステップでロータ21は180度回転する。
【0177】
次に、
図13(d)において、第2ステップの第1駆動パルスSP2−1が続けて供給されると、駆動電流がコイル端子O3からコイル端子O4に流れ、コイルBが矢印の方向に励磁される。これにより、第2磁極部22bがS極、第3磁極部22cがN極に磁化され、また、コイルAは励磁されないので、第1磁極部22aは第3磁極部22cと同じN極となる。
【0178】
その結果、ロータ21のN極と第2磁極部22bのS極が引き合い、また、ロータ21のS極と、第1磁極部22a及び第3磁極部22cのN極が引き合い、ロータ21は反時計回りに回転し、ロータ21のN極は約315度の位置まで回転する。
【0179】
次に、
図13(e)において、第2ステップの第2駆動パルスSP2−2が供給されると、駆動電流がコイル端子O2からコイル端子O1に流れ、コイルAが矢印の方向に励磁される。また同様に駆動電流がコイル端子O3からコイル端子O4に流れ、コイルBが矢印の方向に励磁される。
【0180】
これにより、第1磁極部22aと第2磁極部22bがS極に磁化され、第3磁極部22cはN極に磁化される。その結果、ロータ21のS極と第3磁極部22cのN極が引き合い、また、ロータ21のN極は、第1磁極部22aと第2磁極部22bの両方のS極と引き合うので、ロータ21はさらに反時計回りに回転し、ロータ21のN極は360度(0度)の位置まで回転し静止する。すなわち、第2ステップでロータ21は180度回転し、合計2ステップで360度回転駆動される。
【0181】
このように、従来の1ステップ180度回転駆動を連続で行えば、ロータ21は比較的高速に360度回転するが、2ステップによる駆動であって、第1ステップで第1駆動パルスSP1−1と第1駆動パルスSP1−2、第2ステップで第1駆動パルスSP1−1と第2駆動パルスSP2−2の合計4個の駆動パルスが必要であり、ステップモータの高速回転性能を最大限に引き出した駆動とは言えない。また、ドライバ回路は360度回転駆動で合計4個の駆動パルスをステップモータに供給するので、駆動消費電力が大きいという課題もある。
【0182】
[第3の実施形態の高速駆動の説明:
図14]
次に、第3の実施形態の高速駆動モードにおける1ステップ360度単位の高速回転駆動について
図14を用いて説明する。
図14(a)は、ステップモータ20を1ステップ360度単位で回転駆動させる高速駆動パルス列SP20の駆動波形の一例である。ここで、第3の実施形態の高速駆動パルス列SP20は、第1駆動パルスSP21、第2駆動パルスSP22、第3駆動パルスSP23の3個の駆動パルスで構成される。
【0183】
図14(a)において、第1駆動パルスSP21は、駆動波形O3が電圧−Vであり、他の駆動波形O1、O2、O4は電圧0Vである。これにより、駆動波形O3とO4に接続されるステップモータ20のコイルBに駆動電流が流れて励磁される。
【0184】
次に、第2駆動パルスSP22は、駆動波形O2、O4が電圧−Vであり、駆動波形O1、O3が電圧0Vである。これにより、ステップモータ20のコイルA、コイルBの両方に駆動電流が流れて、両方のコイルA、コイルBが向き合う方向に励磁される。
【0185】
次に、第3駆動パルスSP23は、駆動波形O1、O4が電圧−Vであり、駆動波形O2、O3が電圧0Vである。これにより、ステップモータ20のコイルA、コイルBの両方に駆動電流が流れて、両方のコイルA、コイルBが同じ方向に励磁される。
【0186】
次に、第3の実施形態の高速駆動モードにおける1ステップ360度回転のステップモータの高速駆動について
図14(b)〜
図14(e)を用いて説明する。なお、ステップモータ20の各部材の符号は、
図14(b)にのみ記して他は省略する。
図14(b)は、ステップモータ20の静止状態であり、ステップモータ20のロータ21のN極が、静止位置0度(図面上の上向き)に位置して保持されている状態を示している。
【0187】
次に、
図14(c)は、ステップモータ20の静止状態から第1駆動パルスSP21が供給された場合の動作である。ここで、第1駆動パルスSP21が供給されると、駆動電流(図示せず)がコイル端子O4からコイル端子O3に流れ、コイルBが矢印の方向に励磁される。
【0188】
これにより、第2磁極部22bがN極、第3磁極部22cがS極に磁化され、また、コイルAは励磁されないので、第1磁極部22aは第3磁極部22cと同じS極となる。その結果、ロータ21のN極と、第1磁極部22a及び第3磁極部22cのS極が引き合い、また、ロータ21のS極と第2磁極部22bのN極が引き合い、ロータ21は反時計回りに回転し、ロータ21のN極は静止位置0度から約135度の位置まで回転する。
【0189】
次に、
図14(d)において、ロータ21のN極が約135度付近の位置で次の第2駆動パルスSP22が供給されると、駆動電流がコイル端子O1からコイル端子O2に流れ、コイルAが矢印の方向に励磁される。また同様に駆動電流がコイル端子O3からコイル端子O4に流れ、コイルBが矢印の方向に励磁される。
【0190】
これにより、第1磁極部22aがN極に磁化され、第2磁極部22bがS極に磁化され、第3磁極部22cは磁化が打ち消し合って磁化されない。その結果、ロータ21のN極と第2磁極部22bのS極が引き合い、また、ロータ21のS極と第1磁極部22aのN極が引き合い、ロータ21はさらに反時計回りに回転し、ロータ21のN極は約270度の位置まで回転する。
【0191】
次に、
図14(e)において、ロータ21のN極が約270度付近の位置で次の第3駆動パルスSP23が供給されると、駆動電流がコイル端子O2からコイル端子O1に流れ、コイルAが矢印の方向に励磁される。また同様に駆動電流がコイル端子O3からコイル端子O4に流れ、コイルBが矢印の方向に励磁される。
【0192】
これにより、第1磁極部22aと第2磁極部22bがS極に磁化され、第3磁極部22cはN極に磁化される。その結果、ロータ21のS極と第3磁極部22cのN極が引き合い、また、ロータ21のN極は、第1磁極部22aと第2磁極部22bの両方のS極と引き合うので、ロータ21はさらに反時計回りに回転し、ロータ21のN極は約360度(0度)の位置まで回転する。このように、3個の駆動パルスで構成される高速駆動パルス列SP20によって、ステップモータ20は1ステップ360度単位で高速回転駆動を実現できる。
【0193】
ここで、
図14(e)に示すように、ロータ21が360度(0度)位置に戻った時点で、連続して高速駆動パルス列SP20が供給されると、先頭の第1駆動パルスSP21によって、
図14(c)に示すように、再び第2磁極部22bがN極、第3磁極部22cと第1磁極部22aがS極に磁化される。その結果、ロータ21のN極と、第1磁極部22a及び第3磁極部22cのS極が引き合い、また、ロータ21のS極と第2磁極部22bのN極が引き合い、ロータ21は反時計回りに回転を継続し、ロータ21のN極は静止位置0度から約135度の位置まで回転する。
【0194】
以降、高速駆動パルス列SP20の各駆動パルスが連続して供給されれば、ステップモータ20のロータ21は
図14(c)〜
図14(e)で示す回転動作を繰り返すことになる。すなわち、高速駆動パルス列SP20の連続出力によって、ステップモータ20は1ステップ360度単位の高速回転駆動が継続される。
【0195】
なお、第3の実施形態の通常駆動モードでの通常駆動は、
図4、
図5で示した従来の1ステップ180度回転駆動と同様であるので、ここでの説明は省略する。そして、通常駆動モードでの通常駆動パルスSP00を、たとえば、1秒周期で出力することで、秒針を1秒運針することができる。
【0196】
以上のように、第3の実施形態によれば、1ステップ360度の回転駆動をわずか3個の駆動パルスで実現できるので、従来の2ステップ駆動(
図13参照)と比較して、ステップモータの回転限界に迫る速さで高速駆動が可能となる。
【0197】
また、高速駆動パルス列SP20を連続して出力することで、ステップモータ20を連続して高速回転することが可能である。これにより、たとえば指針の早送り動作において、従来よりも高速に早送り動作が可能となり、指針の時刻修正等を素早く短時間で行うことができる。
【0198】
また、従来の2ステップ駆動では、4個の駆動パルスが必要であったが(
図13参照)、本実施形態では、わずか3個の駆動パルスによって1ステップ360度回転駆動を実現できるので、駆動パルス数が少ない分、低消電駆動が実現できる。
【0199】
また、駆動パルスは、ステップモータ20の個体差や電源変動等を考慮して駆動力に余裕を持たせる必要があり、そのため、ステップモータ20のロータ21は、駆動パルス毎に、電磁的安定点をオーバーラップして回転することが多い。このオーバーラップが存在すると、ロータ21は僅かに回転が戻ったり微振動したりすることがあるが、ロータ21のこのような動きは、ステップモータ20の損失となって駆動効率が低下する原因となる。しかし、本実施形態では、高速駆動パルス列SP20のわずか3個の駆動パルスによって360度回転駆動を実現しているので、ロータ21のオーバーラップ回数が減り、結果としてステップモータの駆動効率が向上する効果がある。
【0200】
このように、第3の実施形態では、高速駆動モードにおいて、高速駆動パルス列SP20を連続して出力することで、通常駆動モード(たとえば1秒運針)での通常駆動パルスSP00より速い駆動周波数でステップモータのロータが駆動され、指針を高速駆動できるのである。
【0201】
なお、第3の実施形態では、高速駆動パルス発生回路54と通常駆動パルス発生回路55の二つの駆動パルス発生回路を備えているが、この構成に限定されず、第2の実施形態のように、一つの駆動パルス発生回路からの高速駆動パルス列と通常駆動パルスをタイミングによって選択して切り替える構成でもよい。
【0202】
[第3の実施形態の変形例1による高速駆動の説明:
図15]
次に、第3の実施形態の変形例1による2コイルステップモータの高速駆動について
図15を用いて説明する。なお、後述する他の変形例を含めて各変形例は、高速駆動パルス列の駆動波形のみが異なるだけであるので、高速駆動モードでの駆動波形とステップモータの高速駆動動作についてのみ説明し、各変形例の構成図や通常駆動モードの説明は省略する。
【0203】
図15(a)は、第3の実施形態の変形例1による1ステップ360度回転駆動させる高速駆動パルス列SP30の駆動波形の一例である。
図15(a)において、高速駆動パルス列SP30は、第1駆動パルスSP31、第2駆動パルスSP32、第3駆動パルスSP33の3個の駆動パルスによって構成される。
【0204】
第1駆動パルスSP31は、駆動波形O3が電圧−Vであり、他の駆動波形O1、O2、O4は電圧0Vである。これにより、駆動波形O3とO4に接続されるステップモータ20のコイルBに駆動電流が流れて励磁される。
【0205】
次に、第2駆動パルスSP32は、駆動波形O2が電圧−Vであり、駆動波形O1、O3、O4が電圧0Vである。これにより、駆動波形O1とO2に接続されるステップモータ20のコイルAに駆動電流が流れて励磁される。
【0206】
次に、第3駆動パルスSP33は、駆動波形O1、O4が電圧−Vであり、駆動波形O2、O3が電圧0Vである。これにより、ステップモータ20のコイルA、コイルBの両方に駆動電流が流れて、両方のコイルA、コイルBが同じ方向に励磁される。
【0207】
次に、変形例1による1ステップ360度回転のステップモータの高速駆動について
図15(b)〜
図15(e)を用いて説明する。なお、ステップモータ20の各部材の符号は、
図15(b)にのみ記して他は省略する。
図15(b)は、ステップモータ20の静止状態であり、ステップモータ20のロータ21のN極が、静止位置0度(図面上の上向き)に位置して保持されている状態を示している。
【0208】
次に、
図15(c)は、ステップモータ20の静止状態から第1駆動パルスSP31が供給された場合の動作である。ここで、第1駆動パルスSP31が供給されると、駆動電流(図示せず)がコイル端子O4からコイル端子O3に流れ、コイルBが矢印の方向に励磁される。
【0209】
これにより、第2磁極部22bがN極、第3磁極部22cがS極に磁化され、また、コイルAは励磁されないので、第1磁極部22aは第3磁極部22cと同じS極となる。その結果、ロータ21のN極と、第1磁極部22a及び第3磁極部22cのS極が引き合い、また、ロータ21のS極と第2磁極部22bのN極が引き合い、ロータ21は反時計回りに回転し、ロータ21のN極は静止位置0度から約135度の位置まで回転する。
【0210】
次に、
図15(d)において、ロータ21のN極が約135度付近の位置で次の第2駆動パルスSP32が供給されると、駆動電流がコイル端子O1からコイル端子O2に流れ、コイルAが矢印の方向に励磁される。
【0211】
これにより、第1磁極部22aがN極、第3磁極部22cがS極に磁化され、また、コイルBは励磁されないので、第2磁極部22bは第3磁極部22cと同じS極となる。その結果、ロータ21のN極と、第2磁極部22b及び第3磁極部22cのS極が引き合い、また、ロータ21のS極と第1磁極部22aのN極が引き合い、ロータ21は反時計回りにさらに回転し、ロータ21のN極は約225度の位置まで回転する。
【0212】
次に、
図15(e)において、ロータ21のN極が約225度付近の位置で次の第3駆動パルスSP33が供給されると、駆動電流がコイル端子O2からコイル端子O1に流れ、コイルAが矢印の方向に励磁される。また同様に駆動電流がコイル端子O3からコイル端子O4に流れ、コイルBがコイルAと同じ方向に励磁される。
【0213】
これにより、第1磁極部22aと第2磁極部22bがS極に磁化され、第3磁極部22cはN極に磁化される。その結果、ロータ21のS極と第3磁極部22cのN極が引き合い、また、ロータ21のN極は、第1磁極部22aと第2磁極部22bの両方のS極と引き合うので、ロータ21はさらに反時計回りに回転し、ロータ21のN極は約360度(0度)の位置まで回転する。このように、変形例1においても、3個の駆動パルスで構成される高速駆動パルス列SP30によって、ステップモータ20は1ステップ360度単位で高速回転駆動を実現できる。
【0214】
以上のように、第3の実施形態の変形例1によれば、1ステップ360度の回転駆動をわずか3個の駆動パルスで実現できるので、第3の実施形態と同様の優れた効果を得ることができる。
【0215】
[第3の実施形態の変形例2による高速駆動の説明:
図16]
次に、第3の実施形態の変形例2による2コイルステップモータの高速駆動について
図16を用いて説明する。
図16(a)は、第3の実施形態の変形例2による1ステップ360度回転駆動させる高速駆動パルス列SP40の駆動波形の一例である。
【0216】
図16(a)において、高速駆動パルス列SP40は、第1駆動パルスSP41、第2駆動パルスSP42、第3駆動パルスSP43の3個の駆動パルスによって構成される。第1駆動パルスSP41は、駆動波形O3が電圧−Vであり、他の駆動波形O1、O2、O4は電圧0Vである。これにより、駆動波形O3とO4に接続されるステップモータ20のコイルBに駆動電流が流れて励磁される。
【0217】
次に、第2駆動パルスSP42は、駆動波形O2、O4が電圧−Vであり、駆動波形O1、O3が電圧0Vである。これにより、ステップモータ20のコイルAとコイルBの両方に駆動電流が流れて対向して励磁される。
【0218】
次に、第3駆動パルスSP43は、駆動波形O1が電圧−Vであり、駆動波形O2、O3、O4が電圧0Vである。これにより、ステップモータ20のコイルAに駆動電流が流れて励磁される。
【0219】
次に、変形例2による1ステップ360度回転のステップモータの高速駆動について
図16(b)〜
図16(e)を用いて説明する。なお、ステップモータ20の各部材の符号は、
図16(b)にのみ記して他は省略する。
図16(b)は、ステップモータ20の静止状態であり、ステップモータ20のロータ21のN極が、静止位置0度(図面上の上向き)に位置して保持されている状態を示している。
【0220】
次に、
図16(c)は、ステップモータ20の静止状態から第1駆動パルスSP41が供給された場合の動作である。ここで、第1駆動パルスSP41が供給されると、駆動電流がコイル端子O4からコイル端子O3に流れ、コイルBが矢印の方向に励磁される。
【0221】
これにより、第2磁極部22bがN極、第3磁極部22cがS極に磁化され、また、コイルAは励磁されないので、第1磁極部22aは第3磁極部22cと同じS極となる。その結果、ロータ21のN極と、第1磁極部22a及び第3磁極部22cのS極が引き合い、また、ロータ21のS極と第2磁極部22bのN極が引き合い、ロータ21は反時計回りに回転し、ロータ21のN極は静止位置0度から約135度の位置まで回転する。
【0222】
次に、
図16(d)において、ロータ21のN極が約135度付近の位置で次の第2駆動パルスSP42が供給されると、駆動電流がコイル端子O1からコイル端子O2に流れ、コイルAが矢印の方向に励磁される。また同様に駆動電流がコイル端子O3からコイル端子O4に流れ、コイルBが矢印の方向に励磁される。
【0223】
これにより、第1磁極部22aがN極に磁化され、第2磁極部22bがS極に磁化され、第3磁極部22cは磁化が打ち消し合って磁化されない。その結果、ロータ21のN極と第2磁極部22bのS極が引き合い、また、ロータ21のS極と第1磁極部22aのN極が引き合い、ロータ21はさらに反時計回りに回転し、ロータ21のN極は約270度の位置まで回転する。
【0224】
次に、
図16(e)において、ロータ21のN極が約270度付近の位置で次の第3駆動パルスSP43が供給されると、駆動電流がコイル端子O2からコイル端子O1に流れ、コイルAが矢印の方向に励磁される。
【0225】
これにより、第1磁極部22aがS極、第3磁極部22cがN極に磁化され、また、コイルBは励磁されないので、第2磁極部22bは第3磁極部22cと同じN極となる。その結果、ロータ21のN極と第1磁極部22aのS極が引き合い、また、ロータ21のS極と、第2磁極部22b及び第3磁極部22cのN極が引き合い、ロータ21は反時計回りにさらに回転し、ロータ21のN極は図示するように約360度(0度)を超える位置まで回転し、その後、第3駆動パルスSP43が終了すると、ロータ21のN極は静止位置360度(0度)の位置に戻って静止する。
【0226】
なお、高速駆動パルス列SP40が連続して出力されれば、ロータ21のN極は約360度(0度)を超える位置から戻ることなく、次の第1駆動パルスSP41によってロータ21のN極は約135度の位置まで回転し(
図16(c)参照)、以降、高速回転駆動が継続される。このように、変形例2においても、3個の駆動パルスで構成される高速駆動パルス列SP40によって、ステップモータ20は1ステップ360度単位で高速回転駆動を実現できる。
【0227】
以上のように、第3の実施形態の変形例2によれば、1ステップ360度の回転駆動をわずか3個の駆動パルスで実現できるので、第3の実施形態と同様の優れた効果を得ることができる。
【0228】
[第3の実施形態の変形例3による高速駆動の説明:
図17]
次に、第3の実施形態の変形例3による2コイルステップモータの高速駆動について
図17を用いて説明する。
図17(a)は、第3の実施形態の変形例3による1ステップ360度回転駆動させる高速駆動パルス列SP50の駆動波形の一例である。
【0229】
図17(a)において、高速駆動パルス列SP50は、第1駆動パルスSP51、第2駆動パルスSP52、第3駆動パルスSP53の3個の駆動パルスによって構成される。第1駆動パルスSP51は、駆動波形O1、O3が電圧−Vであり、駆動波形O2、O4は電圧0Vである。これにより、ステップモータ20のコイルAとコイルBの両方に駆動電流が流れて励磁される。
【0230】
次に、第2駆動パルスSP52は、駆動波形O2が電圧−Vであり、駆動波形O1、O3、O4が電圧0Vである。これにより、ステップモータ20のコイルAに駆動電流が流れて励磁される。
【0231】
次に、第3駆動パルスSP53は、駆動波形O1、O4が電圧−Vであり、駆動波形O2、O3が電圧0Vである。これにより、ステップモータ20のコイルA、コイルBの両方に駆動電流が流れて、コイルAとコイルBの両方が同じ向きに励磁される。
【0232】
次に、変形例3による1ステップ360度回転のステップモータの高速駆動を
図17(b)〜
図17(e)によって説明する。なお、ステップモータ20の各部材の符号は、
図17(b)にのみ記して他は省略する。
図17(b)は、ステップモータ20の静止状態であり、ステップモータ20のロータ21のN極が、静止位置0度(図面上の上向き)に位置して保持されている状態を示している。
【0233】
次に、
図17(c)は、ステップモータ20の静止状態から第1駆動パルスSP51が供給された場合の動作である。ここで、第1駆動パルスSP51が供給されると、駆動電流がコイル端子O2からコイル端子O1に流れ、コイルAが矢印の方向に励磁される。また同様に、駆動電流がコイル端子O4からコイル端子O3に流れ、コイルBが矢印の方向に励磁される。
【0234】
これにより、第1磁極部22aがS極に磁化され、第2磁極部22bがN極に磁化され、第3磁極部22cは磁化が打ち消し合って磁化されない。その結果、ロータ21のN極と第1磁極部22aのS極が引き合い、また、ロータ21のS極と第2磁極部22bのN極が引き合い、ロータ21は反時計回りに回転し、ロータ21のN極は静止位置0度から約90度の位置まで回転する。
【0235】
次に、
図17(d)において、ロータ21のN極が約90度付近の位置で次の第2駆動パルスSP52が供給されると、駆動電流がコイル端子O1からコイル端子O2に流れ、コイルAが矢印の方向に励磁される。
【0236】
これにより、第1磁極部22aがN極、第3磁極部22cがS極に磁化され、また、コイルBは励磁されないので、第2磁極部22bは第3磁極部22cと同じS極となる。その結果、ロータ21のN極と、第2磁極部22b及び第3磁極部22cのS極が引き合い、また、ロータ21のS極と第1磁極部22aのN極が引き合い、ロータ21は反時計回りにさらに回転し、ロータ21のN極は約225度の位置まで回転する。
【0237】
次に、
図17(e)において、ロータ21のN極が約225度付近の位置で次の第3駆動パルスSP53が供給されると、駆動電流がコイル端子O2からコイル端子O1に流れ、コイルAが矢印の方向に励磁される。また同様に駆動電流がコイル端子O3からコイル端子O4に流れ、コイルBがコイルAと同じ方向に励磁される。
【0238】
これにより、第1磁極部22aと第2磁極部22bが共にS極に磁化され、第3磁極部22cはN極に磁化される。その結果、ロータ21のS極と第3磁極部22cのN極が引き合い、また、ロータ21のN極は、第1磁極部22aと第2磁極部22bの両方のS極と引き合うので、ロータ21はさらに反時計回りに回転し、ロータ21のN極は360度(0度)の位置まで回転する。このように、変形例3においても、3個の駆動パルスで構成される高速駆動パルス列SP50によって、ステップモータ20は1ステップ360度単位で高速回転駆動を実現できる。
【0239】
以上のように、第3の実施形態の変形例3によれば、1ステップ360度の回転駆動をわずか3個の駆動パルスで実現できるので、第3の実施形態と同様の優れた効果を得ることができる。
【0240】
[第4の実施形態]
[第4の実施形態の電子時計の構成説明:
図18]
次に、第4の実施形態の電子時計の概略構成について
図18を用いて説明する。符号70は第4の実施形態のアナログ表示方式の電子時計である。電子時計70は基本的な構成として、基準信号P1を出力する発振回路72、基準信号P1を入力して制御信号CN1を出力する制御回路73、高速駆動パルス発生回路74、ドライバ回路80、および、ステップモータ20を有している点は先の第1の実施形態と同様である。
【0241】
本実施形態では、ステップモータ20の2つのコイルA及びコイルBとドライバ回路80とを接続する際に、第1の実施形態において
図1に示したコイル端子O2及びコイル端子O4に相当するコイル端子が短絡されるように接続されている。そのため、ドライバ回路80からは、駆動波形としてO1、O2’、O3の3つが供給される。駆動波形O1は、コイルAのコイル端子O1に、駆動波形O3は、コイルBのコイル端子O3にそれぞれ供給され、駆動波形O2’は、コイルAとコイルBのコイル端子O2’に共通に供給される。
【0242】
高速駆動パルス発生回路74は、制御信号CN1を入力して、ステップモータ20を高速に駆動するための高速駆動パルス列SP60を生成し出力する。なお、高速駆動パルス列SP60は、前述した各実施形態の高速駆動パルス列SP10、SP20と駆動波形が異なる例を示すので別符号とした。また、高速駆動パルス列SP60もまた、3個の駆動パルスで構成される。
【0243】
[ドライバ回路の回路構成の説明:
図19]
次に、ステップモータ20を駆動するためのドライバ回路80の回路構成の一例について
図19を用いて説明する。ドライバ回路80は、ステップモータ20のコイルA、コイルBに3つの駆動波形を供給する3つのバッファ回路によって構成される。
【0244】
コイルAのコイル端子O1に対しては、PチャンネルMOSトランジスタであるトランジスタP1と、NチャンネルMOSトランジスタであるトランジスタN1と、のコンプリメンタリ接続でなるバッファ回路が接続され、駆動波形O1が出力される。
【0245】
コイルBのコイル端子O3に対しては、PチャンネルMOSトランジスタであるトランジスタP3と、NチャンネルMOSトランジスタであるトランジスタN3と、のコンプリメンタリ接続でなるバッファ回路が接続され、駆動波形O3が出力される。
【0246】
そして、コイルA及びコイルBに共通に設けられるコイル端子O2’に対しては、PチャンネルMOSトランジスタであるトランジスタP2’と、NチャンネルMOSトランジスタであるトランジスタN2’と、のコンプリメンタリ接続でなるバッファ回路が接続され、コイルAとコイルBとに共通して駆動波形O2’が出力されるようになっている。
【0247】
[第4の実施形態の駆動パルスの生成と駆動波形の説明:
図20]
次に、第4の実施形態のステップモータを1ステップ360度単位で回転駆動する高速駆動パルスの駆動波形の一例とドライバ回路の各トランジスタの動作について
図20を用いて説明する。
【0248】
まず、高速駆動パルス列SP60は、
図18のステップモータ20のロータを静止位置0度から正転方向(反時計回り)に360度単位で回転駆動するものである。
図20(a)は、かかる高速駆動パルスSP60による駆動波形であり、ドライバ回路80から出力される3つの駆動波形O1、O2’、O3を示している。
【0249】
図20(a)において、高速駆動パルス発生回路74から出力される高速駆動パルス列SP60は、本例では3ビットのSP61〜SP63でなり、時系列的に第1駆動パルスSP61、第2駆動パルスSP62、第3駆動パルスSP63の3個の駆動パルスで構成され、ドライバ回路80の各トランジスタをON/OFFするために論理“1”または論理“0”でなるパルス列である。
【0250】
第1駆動パルスSP1は、駆動波形O3が電圧−Vであり、他の駆動波形O1、O2’は電圧0Vである。これにより、コイル端子O2’とO3に接続されるステップモータ20のコイルBに駆動電流が流れて励磁される。
【0251】
また、第2駆動パルスSP62は、駆動波形O2’が電圧−Vであり、駆動波形O1、O3が電圧0Vである。そして、駆動波形O2’はコイルAとコイルBの両方に印加されるため、これにより、ステップモータ20のコイルA、コイルBの両方に駆動電流が流れて、両方のコイルA、コイルBが励磁される。
【0252】
また、第3駆動パルスSP63は、駆動波形O1、O2’が電圧−Vであり、他の駆動波形O3は電圧0Vである。これにより、駆動波形O2’とO3に接続されるステップモータ20のコイルBに駆動電流が流れ、第1駆動パルスSP61の逆方向に励磁される。
【0253】
次に、高速駆動パルス列SP60によるドライバ回路80の各トランジスタの動作を
図20(b)の動作表を用いて説明する。なお、ドライバ回路は
図19を参照する。
図20(b)において、第1駆動パルスSP61は、駆動波形O3が電圧−V、他の駆動波形O1、O2’が電圧0Vとなるので、トランジスタP2’とN3がON、トランジスタN2’、P3がOFFし、駆動電流がコイルBのコイル端子O2’からコイル端子O3に流れ、コイルBが励磁される。
【0254】
また、トランジスタN1がOFF、トランジスタP1がONとなり、駆動波形O1及びO2’がともに電圧0Vとなるので、コイルAには駆動電流が流れず、コイルAは励磁されない。なお、トランジスタP1は、ここではONとしているが、これをOFFとしても差し支えない。
図20(b)では、このことを指して、括弧内にOFFと記載している。
【0255】
また、第2駆動パルスSP62は、駆動波形O2’が電圧−V、他の駆動波形O1、O3が電圧0Vとなるので、トランジスタP1、N2’及びP3がON、トランジスタN1、P2’、N3がOFFし、駆動電流がコイルAのコイル端子O1からコイル端子O2’に流れるとともに、コイルBのコイル端子O3からコイル端子O2’にも流れるので、コイルAとコイルBがともに励磁される。
【0256】
さらに、第3駆動パルスSP63は、駆動波形O1が電圧−V、他の駆動波形O2’、O3が電圧0Vとなるので、トランジスタN2’とP3がON、トランジスタP2’、N3がOFFし、駆動電流がコイルBのコイル端子O3からコイル端子O2’に流れ、コイルBが励磁される。
【0257】
また、トランジスタP1がOFF、トランジスタN1がONとなり、駆動波形O1及びO2’がともに電圧−Vとなるので、コイルAには駆動電流が流れず、コイルAは励磁されない。なお、トランジスタN1は、ここではONとしているが、これをOFFとしても差し支えない。
【0258】
このように、高速駆動パルス列SP60の3個の第1〜第3駆動パルスSP61〜63によって、ドライバ回路80の各トランジスタがON/OFF制御され、ステップモータ20のコイルA、Bを励磁する。
【0259】
[第4の実施形態の1ステップ360度回転駆動の説明:
図7]
第4の実施形態のステップモータ20の1ステップ360度単位の高速回転駆動は、第1の実施形態におけるものと同じであるから、
図7を参照して説明する。まず、
図7(a)に示すのは、高速駆動パルス列SP60の第1駆動パルスSP61がステップモータ20に供給された状態であり、コイルBが矢印の方向に励磁されるから、第2磁極部22bがN極、第3磁極部22cがS極に磁化され、またコイルAは磁化されないから、第1磁極部22aは第3磁極部22cと同じくS極となる。そのため、ロータ21は反時計回りに回転し、ロータ21のN極は反時計回りに回転し、静止位置0度から約135度の位置まで回転する。
【0260】
次に、
図7(b)に示すように、第2駆動パルスSP62が供給されると、コイルA及びコイルBの両方が矢印の方向に励磁されるから、第1磁極部22aがN極に、第2磁極部22bがS極に磁化され、第3磁極部22cは磁化されない。その結果、ロータ21はさらに反時計回りに回転し、ロータ21のN極は約270度の位置まで回転する。
【0261】
さらに、
図7(c)に示すように、第3駆動パルスSP63が供給されると、コイルBが矢印の方向に励磁されるから、第2磁極部22bがS極、第3磁極部22cがN極に磁化され、またコイルAは励磁されないから、第1磁極部22aは第3磁極部22cと同じくN極となる。その結果、ロータ21は停止することなく更に反時計回りに回転し、ロータ21のN極は約315度の位置まで回転する。
【0262】
その後、
図7(d)に示すように、高速駆動パルス列SP60の供給が終了すると、駆動波形O1、O2’、O3はすべて電圧0Vとなるので、コイルA及びコイルBの励磁はなくなり、第1〜第3磁極部の磁化が消え、ロータ21は、停止することなく360度(0度)の静的安定点まで回転を継続し、その位置で保持される。このようにして、3個の駆動パルスSP61〜SP63で構成される高速駆動パルス列60による、1ステップ駆動での360度回転駆動が実現できる。
【0263】
このように、第4の実施形態の電子時計によれば、コイルAとコイルBのコイル端子O2’を短絡し、共通とした場合においても、3個の駆動パルスSP61〜63で構成される高速駆動パルス列SP60を供給することで、1ステップで360度の回転駆動ができる。この場合、供給すべき駆動波形が3つで済み、またトランジスタの数も第1の実施形態のものに比して少なくて済むため、回路規模の小型化やコスト削減効果がある。
【0264】
もちろん、歯車減速比を1/60とすることによる、指針のトルクアップの効果、耐衝撃性の向上の効果が得られるとともに、指針の動きが滑らかで見栄えが良いものとなる点についても第1の実施形態のものと同様である。
【0265】
なお、第4の実施形態に係る1ステップ駆動での360度回転駆動を、第2の実施形態における高速駆動モードでの1ステップ360度回転駆動に用いてもよいことは、言うまでもない。
【0266】
[第5の実施形態]
[第5の実施形態の電子時計の構成及びドライバ回路の回路構成の説明:
図18、19]
次に、第5の実施形態の電子時計について説明する。第5の実施形態に係る電子時計70の概略構成は、先の第4の実施形態のものと同様であり、
図18に示した通りである。電子時計70の基本的な構成である、基準信号P1を出力する発振回路72、基準信号P1を入力して制御信号CN1を出力する制御回路73、高速駆動パルス発生回路74、ドライバ回路80、および、ステップモータ20を有している点についても同様であるが、高速駆動パルス発生回路74から出力される高速駆動パルスが相違するので、同図における符号SP60は、本実施形態では符号SP70として読み替えるものとする。
【0267】
また、第5の実施形態における、ステップモータ20を駆動するためのドライバ回路80の回路構成についても、先の第4の実施形態のものと同様であるから、
図19を参照するものとする。
【0268】
[第5の実施形態の駆動パルスの生成と駆動波形の説明:
図21]
次に、第5の実施形態のステップモータを1ステップ360度単位で回転駆動する高速駆動パルスの駆動波形の一例とドライバ回路の各トランジスタの動作について
図21を用いて説明する。
【0269】
まず、高速駆動パルス列SP70は、
図18のステップモータ20のロータを静止位置0度から正転方向(反時計回り)に360度単位で回転駆動するものである。
図21(a)は、かかる高速駆動パルスSP60による駆動波形であり、ドライバ回路80から出力される3つの駆動波形O1、O2’、O3を示している。
【0270】
図21(a)において、高速駆動パルス発生回路74から出力される高速駆動パルス列SP70は、本例では3ビットのSP71〜SP73でなり、事例列的に第1駆動パルスSP71、第2駆動パルスSP72、第3駆動パルスSP73の3個の駆動パルスで構成され、ドライバ回路80の各トランジスタをON/OFFするために論理“1”または論理“0”でなるパルス列である。
【0271】
第1駆動パルスSP1は、駆動波形O3が電圧−Vであり、他の駆動波形O1、O2’は電圧0Vである。これにより、駆動波形O2’とO3に接続されるステップモータ20のコイルBに駆動電流が流れて励磁される。
【0272】
また、第2駆動パルスSP72は、駆動波形O2’が電圧−Vであり、駆動波形O1、O3が電圧0Vである。そして、駆動波形O2’はコイルAとコイルBの両方に印加されるため、これにより、ステップモータ20のコイルA、コイルBの両方に駆動電流が流れて、両方のコイルA、コイルBが励磁される。
【0273】
第3駆動パルスSP73は、駆動波形O1が電圧−Vであり、駆動波形O2’が電圧0Vである駆動パルスSP73aと、駆動波形O1と駆動波形O2’がともに電圧−Vである駆動パルスSP73bとを含み、この駆動パルスSP73aと駆動パルス73bが一定のパターンで繰り返されて、全体として駆動パルスSP73を構成する。なお、他の駆動波形O3は電圧0Vである。これにより、駆動パルスSP73aが印加されている際は、コイル端子O2’とO1に接続されるステップモータ20のコイルAに駆動電流が流れ励磁され、駆動パルスSP73bが印加されている際は、コイル端子O2’とO3に接続されるステップモータ20のコイルBに駆動電流が流れ励磁される。
【0274】
次に、高速駆動パルス列SP70によるドライバ回路80の各トランジスタの動作を
図21(b)の動作表を用いて説明する。
図21(b)において、第1駆動パルスSP71は、駆動波形O3が電圧−V、他の駆動波形O1、O2’が電圧0Vとなるので、トランジスタP2’とN3がON、トランジスタN2’、P3がOFFし、駆動電流がコイルBのコイル端子O2’からコイル端子O3に流れ、コイルBが励磁される。
【0275】
また、トランジスタN1がOFF、トランジスタP1がONとなり、駆動波形O1及びO2’がともに電圧0Vとなるので、コイルAには駆動電流が流れず、コイルAは励磁されない。なお、トランジスタP1は、ここではONとしているが、これをOFFとしても差し支えない。
【0276】
また、第2駆動パルスSP72は、駆動波形O2’が電圧−V、他の駆動波形O1、O3が電圧0Vとなるので、トランジスタP1、N2’及びP3がON、トランジスタN1、P2’、N3がOFFし、駆動電流がコイルAのコイル端子O1からコイル端子O2’に流れるとともに、コイルBのコイル端子O3からコイル端子O2’にも流れるので、コイルAとコイルBがともに励磁される。
【0277】
さらに、第3駆動パルスSP73では、駆動波形O1が電圧−V、駆動波形O3が電圧0Vに維持され、駆動波形O2’の電圧が区間により異なる。第3駆動パルスSP73aの区間では、駆動波形O2’が電圧0Vとなるので、トランジスタP2’がON、トランジスタN2’がOFFとなる。そして、トランジスタP1、N3はOFFであり、トランジスタN1、P3はONであるから、駆動電流がコイルAのコイル端子O1からコイル端子O2’に流れ、コイルAが励磁される。一方、第3駆動パルスSP73bの区間では、駆動波形O2’が電圧−Vとなるので、トランジスタP2’がOFF、トランジスタN2’がONとなる。そして、やはりトランジスタP1、N3はOFFであり、トランジスタN1、P3はONであるから、駆動電流がコイルBのコイル端子O2’からコイル端子O3に流れ、コイルBが励磁される。
【0278】
なお、第3駆動パルスSP73aの区間では、コイル端子O3及びO2’がともに電圧0Vとなるので、コイルBには駆動電流が流れず、コイルBは励磁されない。このとき、トランジスタP3は、ここではONとしているが、これをOFFとしても差し支えない。
【0279】
また、第3駆動パルスSP73bの区間では、コイル端子O1及びO2’がともに電圧−Vとなるので、コイルAには駆動電流が流れず、コイルAは励磁されない。このとき、トランジスタN1は、ここではONとしているが、これをOFFとしても差し支えない。
【0280】
第3駆動パルスSP73において、第3駆動パルスSP73aと第3駆動パルス73bが繰り返される順番は特に限定されず、ここで示した例では、最初に第3駆動パルスSP73aが印加され、続いて第3駆動パルス73bが印加され、以下繰り返すものとしているが、この順を逆順としてもよい。さらに、第3駆動パルスSP73a、第3駆動パルスSP73b、第3駆動パルスSP73b、第3駆動パルスSP73aのような順として以下これを繰り返すようにしてもよい。コイルAとコイルBに励磁される磁力が均等となるよう、第3駆動パルスSP73の区間において、第3駆動パルスSP73aが占める合計期間と、第3駆動パルス73bが占める合計期間が等しくなるようにすることが望ましいが、コイルAとコイルBに励磁される磁力が実用上均等となる範囲で、この合計期間が異なっていてもよい。また、第3駆動パルスSP73aと第3駆動パルス73bの長さは等しい方が、第3駆動パルスSP73を構成しやすく望ましいが、必ずしも一致していなくともよい。
【0281】
このように、高速駆動パルス列SP70の3個の第1〜第3駆動パルスSP71〜73によって、ドライバ回路80の各トランジスタがON/OFF制御され、ステップモータ20のコイルA、Bを励磁する。
【0282】
[第5の実施形態の1ステップ360度回転駆動の説明:
図22]
第5の実施形態のステップモータ20の1ステップ360度単位の高速回転駆動を、
図22を参照して説明する。まず、
図22(a)に示すのは、高速駆動パルス列SP70の第1駆動パルスSP71がステップモータ20に供給された状態であり、コイルBが矢印の方向に励磁されるから、第2磁極部22bがN極、第3磁極部22cがS極に磁化され、またコイルAは磁化されないから、第1磁極部22aは第3磁極部22cと同じくS極となる。そのため、ロータ21は反時計回りに回転し、ロータ21のN極は反時計回りに回転し、静止位置0度から約135度の位置まで回転する。
【0283】
次に、
図22(b)に示すように、第2駆動パルスSP72が供給されると、コイルA及びコイルBの両方が矢印の方向に励磁されるから、第1磁極部22aがN極に、第2磁極部22bがS極に磁化され、第3磁極部22cは磁化されない。その結果、ロータ21はさらに反時計回りに回転し、ロータ21のN極は約270度の位置まで回転する。
【0284】
さらに、第3駆動パルスSP73が供給されるが、第3駆動パルスSP73は、第3駆動パルスSP73aと第3駆動パルスSP73bからなっている。
図22(c)は、第3駆動パルスSP73aが供給された状態であり、コイルAが矢印の方向に励磁されるから、第1磁極部22aがS極に、第2磁極部22b及び第3磁極部22cがN極に磁化される。また、
図22(d)は、第3駆動パルスSP73bが供給された状態であり、コイルBが矢印の方向に励磁されるから、第2磁極部22bがS極に、第1磁極部22a及び第3磁極部22cがN極に磁化される。
【0285】
そして、第3駆動パルスSP73の区間では、第3駆動パルスSP73aと第3駆動パルスSP73bが短い間隔で繰り返し印加印加されるから、
図22(c)に示した磁化状態と、
図22(d)に示した磁化状態が繰り返し現れることになり、ステップモータ20に現れる実効的な磁化状態は、この2つの磁化状態を合成したものとみなすことができる。その結果、第3磁極部22cは、
図22(c)と
図22(d)に示した磁化状態に共通してN極に磁化されるため、第3駆動パルスSP73の全区間にわたってN極となる。一方、第1磁極部22aと第2磁極部22bは、異なる極が交互に出現するため、磁化状態は見かけの上で相殺され、実効的に無磁化あるいは、弱い磁化状態となる。これにより、ロータ21はさらに反時計回りに回転し、ロータ21のN極は約360度の位置まで回転する。
【0286】
このようにして、3個の駆動パルスSP71〜SP73で構成される高速駆動パルス列70による、1ステップ駆動での360度回転駆動が実現できる。
【0287】
なお、この時の
図22(c)に示した磁化状態と、
図22(d)に示した磁化状態の合成による第3駆動パルスSP73の磁化状態は、第3の実施形態において、
図14(e)に示したものとおおむね等しいものとなる。しかしながら、
図22より明らかなように、コイルAとコイルBを同時に励磁するものではないため、ロータ21に十分な回転力を与えるため、第3駆動パルスSP73の長さは、先の第1駆動パルスSP71及び第2駆動パルスSP72よりも長いものとしてよい。
【0288】
このように、第5の実施形態の電子時計によれば、コイルAとコイルBのコイル端子O2’を短絡し、共通とした場合においても、3個の駆動パルスSP71〜73で構成される高速駆動パルス列SP70を供給することで、1ステップで360度の回転駆動ができる。この場合、供給すべき駆動波形が3つで済み、またトランジスタの数も第1の実施形態のものに比して少なくて済むため、回路規模の小型化やコスト削減効果がある。
【0289】
また、第5の実施形態に係る1ステップ駆動での360度回転駆動を、第3の実施形態における高速駆動モードでの1ステップ360度回転駆動に用いてもよい。このようにすることにより、通常駆動モードでの1ステップ180度回転駆動に加えて、高速駆動モードでの1ステップ360度回転駆動を実現できる。さらに、第5の実施形態に係る1ステップ駆動での360度回転駆動では、コイルAとコイルBを同時に励磁することがなく、消費電流の最大値を低く抑えることができるため、外気温が低い場合や、電源電圧が低下している状態など、電源条件が厳しい場合でも1ステップ360度回転駆動による高速駆動が可能である。
【0290】
[第6の実施形態]
[第6の実施形態の電子時計の構成説明:
図23]
次に、第6の実施形態の電子時計の概略構成について
図23を用いて説明する。符号90は第6の実施形態のアナログ表示方式の電子時計である。電子時計90は基本的な構成として、基準信号P1を出力する発振回路92、基準信号P1を入力して制御信号CN7、CN8、CN9及びCN10を出力する制御回路93、高速駆動パルス発生回路(可変部)94及び高速駆動パルス発生回路(固定部)95の2つの高速駆動パルス発生回路、補正パルス発生回路96、検出パルス発生回路97、パルス選択回路16、ドライバ回路100、及び、ステップモータ20を有している他、回転検出判定回路91を有している。
【0291】
高速駆動パルス発生回路(可変部)94及び高速駆動パルス発生回路(固定部)95は、制御信号CN7及びCN8をそれぞれ入力され、ステップモータ20を駆動するための複数の駆動パルスで構成される高速駆動パルス列の一部分であるSP30及びSP40を生成し出力する。
【0292】
補正パルス発生回路96は、制御信号CN9を入力され、ステップモータ20を駆動するための補正パルスFPを生成し出力する。
【0293】
検出パルス発生回路97は、制御信号CN10を入力され、ステップモータ20のロータ21が正常に回転したことを検出するための検出パルスCPを生成し出力する。
【0294】
パルス選択回路16は、高速駆動パルス発生回路(可変部)94及び高速駆動パルス発生回路(固定部)95、補正パルス発生回路96及び検出パルス発生回路97により生成され出力されたパルスSP30、SP40、FP及びCPを選択し、適切なタイミングでドライバ回路100へと出力する。
【0295】
ドライバ回路100は、パルス選択回路16から入力されたパルスに基づき、ステップモータ20のコイルA、コイルBに駆動波形O1〜O4を供給し、ステップモータ20を駆動する。
【0296】
回転検出判定回路91は、ステップモータ20のコイルA、コイルBに検出パルスCPが供給されることにより検出される検出信号CSにより、ステップモータ20のロータ21の自由回転による誘起電流を検出し、ロータ21の回転の有無を判定し、判定結果CKを出力する。出力された判定結果CKは、パルス選択回路16に入力され、パルスの切り替え制御に使用される。
【0297】
[第6の実施形態のドライバ回路の回路構成の説明:
図24]
次に、ステップモータ20を駆動するためのドライバ回路100の回路構成の一例について
図24を用いて説明する。ドライバ回路100は、ステップモータ20のコイルA、コイルBに4つの駆動波形を供給する4つのバッファ回路によって構成される。
【0298】
コイルA及びコイルBのコイル端子O1〜O4に対しては、
図24に示すように、PチャンネルMOSトランジスタであるトランジスタP1〜4と、NチャンネルMOSトランジスタであるトランジスタN1〜4と、のコンプリメンタリ接続でなるバッファ回路がそれぞれ接続され、駆動波形O1〜O4が出力される。
【0299】
さらにコイルAのコイル端子O1、O2に対しては、それぞれ検出抵抗を介してPチャンネルMOSトランジスタであるトランジスタTP1及びTP2がそれぞれ接続され、コイルBのコイル端子O3、O4に対しては、それぞれ検出抵抗を介してPチャンネルMOSトランジスタであるトランジスタTP3及びTP4がそれぞれ接続される。トランジスタTP1〜TP4に対しては、検出パルスCPが出力され、それにより得られた検出信号CSは回転検出判定回路91に入力される。
【0300】
[第6の実施形態の回転検出の説明:
図25、
図26]
ここで、検出パルスCP及び回転検出判定回路91によるステップモータ20のロータ21の回転検出について
図25、
図26を参照して説明する。
【0301】
図25は、ステップモータ20の構造を示す図である。ステップモータ20のステータには、ロータ21をはさんで対向する第1磁極部22aと第2磁極部22b、さらに第1磁極部22aと第2磁極部22bの間にロータ21に対抗するように第3磁極部22cが設けられ、第1磁極部22aと第3磁極部22cとの間に磁気回路を形成するようにコイルAが、第2磁極部22bと第3磁極部22cとの間に磁気回路を形成するようにコイルBがそれぞれ設けられる。
【0302】
ロータ21をはさんで第3磁極部22cの反対側となる、第1磁極部22aと第2磁極部22bの間には、ステータの幅が狭くなる狭窄部23が設けられる。また、ロータ21の中心から見て、第3磁極部22cの方向を0度とし、左右おおむね75度の位置にスリット24が設けられ、第1磁極部22aと第3磁極部22c、第2磁極部22bと第3磁極部22cが直接磁気的に接続されないよう、スリット24が設けられる。なお、このスリット24は、ここで示したように間隙であってもよいし、細幅の非磁性材料をスリット24の位置に挿入し、ステータと結合させたものであってもよい。
【0303】
このように、狭窄部23及びスリット24を設けることにより、ロータ21に駆動パルスが与えられ回転している間および、ロータ21の慣性により自由回転している間に、電磁誘導によりステータに発生する磁気は、磁気抵抗の大きい狭窄部23及びスリット24を通過しにくくなるため、その大部分がコイルA又はコイルBを通過する経路をとることになる。これにより、コイルA又はコイルBを用いて、ロータ21の回転により誘起される誘起電流をコイルA、Bを用いて検出する際の検出感度が高まる。
【0304】
すなわち、検出パルスCPにより、所定のタイミングで
図24に示したトランジスタTP1〜TP4をONとすることで、各トランジスタに対応するコイル端子O1〜O4に発生する誘起電流の大きさを電圧信号である検出信号CSとして取り出すことができる。回転検出判定回路91は、検出信号CSに基づいて、ロータ21の回転及び非回転の判定を行い、判定結果CKを出力する。
【0305】
ここで、ロータ21の回転と非回転について説明する。
図26は、ステップモータ20のロータ21の回転と非回転を説明する図である。
図26(a)は、ロータ21が非回転、すなわち、駆動パルスが印加されたにもかかわらず、ロータ21が所望の角度回転せず、回転に失敗した場合を示している。この場合、駆動パルスが出力され、ロータ21が反時計回りにいったん回転するが、駆動力が不足しているためロータ21が保持トルクにより時計回りに逆回転して初期位置である0度に戻されてしまう。この場合は最終的にロータ21はなんら回転しなかったこととなるので、これを非回転と称する。同図中、駆動パルスが出力されている期間におけるロータ21の回転は破線で示している。
【0306】
図26(b)はロータ21が回転、すなわち、印加された駆動パルスによりロータ21が所望の角度回転して、回転に成功した場合である。この場合、駆動パルスが出力され、ロータ21が反時計回りにある一定角度以上回転することにより、駆動パルスの出力停止後も、さらに保持トルクにより反時計回りに回転し、1ステップの回転目標位置である180度まで回転する。この場合は、最終的にロータ21は1ステップ分の目標回転位置まで回転したこととなるので、これを回転と称する。
【0307】
このように、ロータ21が回転の場合と非回転の場合とでは、駆動パルス出力後のロータ21の挙動が異なり、そのため、コイルA、コイルBに発生する誘起電流の波形も異なる。この波形の違いを検出パルスCPにより、検出信号CSとして取り出し、回転検出判定回路91はロータの回転/非回転を判定している。
【0308】
[第6の実施形態の駆動パルスの生成と駆動波形の説明:
図27]
第6の実施形態のステップモータを1ステップ360度単位で回転駆動する高速駆動パルスの駆動波形の一例を
図27を用いて説明する。なお、ここで説明する駆動波形それ自体は、第1の実施形態において、
図6を参照して説明したものと同じである。
【0309】
ただし、本実施形態では、高速駆動パルス列を前半の可変駆動パルスSP30と、後半の固定駆動パルスSP40とに分けて取り扱う。
図27に示した高速駆動パルス列全体は
図6に示したものと同じであり、また、高速駆動パルス列を構成する3個の駆動パルスSP11、SP12及びSP13は第1の実施形態のものと同じであるから、同符号を付して示した。
【0310】
ここで、可変駆動パルスSP30は、駆動パルス11に相当している。そして、可変駆動パルスSP30は、後述するように、条件によってその長さ(期間)が変更される。これに対し、固定駆動パルスSP40は、駆動パルス12及び駆動パルスSP13に相当している。固定駆動パルスSP40の長さは固定であり、あらかじめ定められている。
【0311】
なお、可変駆動パルスSP30及び固定駆動パルスSP40を構成する駆動パルスSP11〜13を出力するためのドライバ回路80の各トランジスタの動作は、第1の実施形態において
図6を参照して説明したものと同様であるから、ここでは重複する説明は省略する。
【0312】
[第6の実施形態のパルス波形の説明:
図28]
図28は、第6の実施形態のパルス波形を説明する図である。同図中、(1)〜(3)で示したパルス波形は、ロータ21が回転と判定された時にステップモータ20に印加される駆動パルス、すなわち、可変駆動パルスSP30と固定駆動パルスSP40の例を示している。(1)〜(3)に示したものの他、どのパルス波形が選択されるかは、回転検出の結果に依存して変化する。また、(4)は、ロータ21が非回転と判定されたときにステップモータ20に印加される補正パルスFPを示している。(5)は、回転検出を行うための検出パルスCPを印加するタイミングを示している。
【0313】
本実施形態では、可変駆動パルスSP30の長さを、1ms刻みで1ms〜5msの5つより選択できるようにしており、固定駆動パルスSP40は、可変駆動パルスSP30の直後に3.5msの間出力されるようになっている。どの長さの可変駆動パルスが選択されるかは、回転検出を行い、その結果に基づいて選択される。より詳しくはこの後説明するが、基本的な考え方は、回転と判断されるまで可変駆動パルスSP30を出力し続けるというものである。
【0314】
そして、最長の長さ(5ms)の可変駆動パルスSP30を出力しても回転との判断が得られない場合、(4)に示す補正パルスFPを出力し、ロータ21を確実に回転させる。なお、補正パルスFPは、ロータ21が非回転と判断された場合に、ロータ21を確実に回転させるために出力されるものであり、強い駆動力を持つようにその波形が設定される。ここでは、5msの間の連続出力に続き、デューティ8/16による、0.25ms毎のパルス出力を4msの間継続する波形となっている。
【0315】
検出パルスCPは、可変駆動パルスSP30の出力開始後、0.25ms経過後から4.75ms経過するまで0.5ms毎に出力される、16μs幅のパルスとしている。
【0316】
なお、以上の説明での可変駆動パルスSP30、固定駆動パルスSP40、補正パルスFPの長さや形状、検出パルスCPの出力タイミングなどは一例であり、ステップモータ20の形状や大きさ、ステップモータ20に取り付けられる付加など種々の構成に応じて変更されてよい。
【0317】
[第6の実施形態の高速駆動パルス列出力のフローの説明:
図29]
図29は、第6の実施形態の高速駆動パルス列出力の動作を説明するフロー図である。以下、このフロー図に従って、制御回路93により制御される本実施形態に係る電子時計90の動作を説明する。
【0318】
まず、運針のタイミングで、可変駆動パルスSP30を高速駆動パルス発生回路(可変部)より出力される可変駆動パルスSP30をパルス選択回路16により選択し、ドライバ回路100に出力する(ST1)。これにより、ステップモータ20のロータ21が回転を開始する。そして、0.25ms経過後より5ms毎に、検出パルス発生回路から出力される検出パルスCPがパルス選択回路16により選択され、ドライバ回路100に出力され、回転検出を開始する(ST2)。この結果得られる検出信号CSに基づいて、回転検出判定回路91は、判定結果CKを出力する。
【0319】
ここで、回転検出判定回路91による回転/非回転の判定について
図30を参照して説明する。
図30は、可変駆動パルスSP30が印加された際の、コイルA及びコイルBに発生する誘起電流の波形と、コイル端子O1〜O4に印加されるパルス及び検出信号を示す図である。
【0320】
時刻0msより、可変駆動パルスSP30がコイル端子O3に印加され、コイルBのコイル端子O3−O4間に電圧が印加され、コイルBが励磁される。これによりロータ21が回転を始め、コイルA及びBには、正の向きの誘導電流が発生する。
【0321】
検出パルスCPは、可変駆動パルスSP30が印加されたコイルとは異なるコイルである、コイルAに印加される。具体的には、コイル端子O1に開始後0.25ms後から0.5ms毎に印加され、これにより各検出パルスCPに応じた検出信号CSが得られる。
【0322】
図30のコイルAに生じる誘導電流の波形より明らかなように、ロータ21の回転当初は、コイルAに生じる誘導電流は正の符号をもつあまり大きくない値となる。条件にもよるが、ここで示した例では、回転開始からおおよそ2.5ms経過した時点でこの誘導電流の符号が反転し、負の符号となり、ある一定以上の値を示す波形の山が生じる。
【0323】
この負の値を持つ波形の山は、ロータ21がポテンシャルの山を乗り越え、目標となる静的安定点に向かって回転していることを示しており、
図30でハッチングで示したこの負の符号を持つ波形の山を検出することにより、回転の検出ができる。
【0324】
コイル端子O1から検出される検出信号CSは、負の所定の閾値thと比較される。そして、
図30に示すように、この例では回転開始から2.75ms経過後のCP2.75までは、この閾値thを下回ることがなく、検出信号CSは得られないが、3.25ms経過後の検出パルスCP3.25により、閾値thを下回る検出信号CSが得られる。
【0325】
そして、本実施形態では、連続して2回の検出信号CSが得られることにより回転と判断するようにしているので、さらに続けて回転開始から3.75ms経過後の検出パルスCP3.75による検出信号CSが検出された時点で、回転検出判定回路91は回転と判定し、判定結果CKを出力するようにしている。また、回転開始から4.75ms経過しても連続する2回の検出信号CSが得られなかった場合は、非回転と判定し、判定結果CKを出力する。
【0326】
なお、連続する検出信号CSが得られるタイミングは、電源電圧や負荷の大きさ、電子時計90の姿勢など種々の条件により異なる。また、判定の条件は2回の連続する信号には限定されず、1回とするか、3回以上とするか、また、連続して得られた場合とするか、所定期間内で得られた信号の数を加算するかなど、その設定は任意である。
【0327】
図29に戻り、回転検出開始後、回転判定が得られたタイミングを監視する。すなわち、まず、回転開始より0.75ms経過までに検出信号CSが2回得られたかを判定する(ST31)。検出信号CSが2回得られた場合(ST31:Y)、回転検出を終了し(ST41)検出パルスCPの出力を停止し、可変駆動パルスSP30の幅を1msに設定する(ST51)。これにより、可変駆動パルスSP30の出力は1msで終了し、続けて固定駆動パルスSP40が出力され(ST7)、ロータ21の1ステップの回転は終了する。
【0328】
回転開始より0.75ms経過までに検出信号CSが2回得らなかった場合(ST31:N)、次は1.75ms経過までに検出信号CSが2回得られたかを判定する(ST32)。得られた場合(ST32:Y)、回転検出を終了し(ST42)、可変駆動パルスSP30の幅を2msに設定し(ST53)、可変駆動パルスSP30の出力終了後、続けて固定駆動パルスSP40を出力する(ST7)。
【0329】
同様に、回転開始より1.75ms経過までに検出信号CSが2回得らなかった場合(ST32:N)、次は2.75ms経過までに検出信号CSが2回得られたかを判定する(ST33)。得られた場合(ST33:Y)、回転検出を終了し(ST43)、可変駆動パルスSP30の幅を3msに設定し(ST53)、可変駆動パルスSP30の出力終了後、続けて固定駆動パルスSP40を出力する(ST7)。
【0330】
同様に、回転開始より2.75ms経過までに検出信号CSが2回得らなかった場合(ST33:N)、次は3.75ms経過までに検出信号CSが2回得られたかを判定する(ST34)。得られた場合(ST34:Y)、回転検出を終了し(ST44)、可変駆動パルスSP30の幅を4msに設定し(ST54)、可変駆動パルスSP30の出力終了後、続けて固定駆動パルスSP40を出力する(ST7)。
【0331】
同様に、回転開始より3.75ms経過までに検出信号CSが2回得らなかった場合(ST34:N)、次は4.75ms経過までに検出信号CSが2回得られたかを判定する(ST35)。得られた場合(ST35:Y)、回転検出を終了し(ST45)、可変駆動パルスSP30の幅を5msに設定し(ST55)、可変駆動パルスSP30の出力終了後、続けて固定駆動パルスSP40を出力する(ST7)。
【0332】
そして、回転開始より4.75ms経過までに検出信号CSが2回得らなかった場合(ST54:N)は、非回転と判定されたことになるため、補正パルスFPを出力し(ST6)、ロータ21を確実に回転させる。
【0333】
なお、ここで示した例では可変駆動パルスSP30の幅は1ms〜5msの間で、1ms刻みの5段階で設定したが、これをより細かく(または粗く)設定してもよいし、回転判定がなされれば直ちに可変駆動パルスSP30の出力を停止して固定駆動パルスSP40を出力するようにしてもよい。また、固定駆動パルスSP40の出力後直ちに又は一定期間(例えば1ms)経過後に再度可変駆動パルスSP30を出力するようにして、無駄時間を排除して高速にロータ21を回転させるようにしてもよい。
【0334】
このように、第6の実施形態の電子時計によれば、1ステップで360度の回転駆動をさせる場合において、ロータ21の回転/非回転の検出ができ、非回転の場合に補正パルスFPを出力することで、ロータ21を確実に回転させることができる。また、出力される高速駆動パルス列の長さは、ロータ21の回転に必要な分のみで済むため、消費電力が削減されるとともに、無駄時間が排除されて高速駆動が可能である。
【0335】
[第6の実施形態の変形例1:
図31]
第6の実施形態において、可変駆動パルスSP30と固定駆動パルス40の出力波形は、
図28に示した通りであるが、さらに、電源電圧に応じて、この波形のパルス形状を変形してもよい。
図31は変形後のパルス波形を示しており、(1)〜(3)に示す可変駆動パルスSP30と固定駆動パルス40が、連続出力によるもの(フルパルス)ではなく、一定周期でON/OFFを切り替えるもの(チョッパーパルス)となっている。
図31に示した例では、このチョッパーパルスのデューティは8/16となっており、0.25ms周期で出力のON/OFFが繰り返し切り替わるようになっている。
【0336】
このチョッパーパルスによるパルス波形は、出力が抑えられる分電力消費が少なくなる。一方で、出力が低下するため非回転となりやすい。そこで、電源電圧が高い、すなわち、所定値以上である場合に(例えば、2.5V以上)は駆動力に余裕があるため、
図31で示したチョッパーパルスを用いて消費電力の削減を図り、電源電圧が所定地未満の場合に(例えば、2.5V未満)、
図28で示したフルパルスを用いて安定的にロータ21を回転させるとよい。
【0337】
このようにすることで、ドライバ回路へのパルスを出力する最終段において、信号のON/OFFを所定の周期で行うだけで、電力消費及び出力の異なる複数種類の駆動パルスをステップモータ20に印加することができ、可変駆動パルスSP30と固定駆動パルスSP40を個別に用意する必要がない。なお、チョッパーパルスのデューティは任意であるし、電源電圧に応じて3種類以上のパルス波形を用意してもよい。また、可変駆動パルスSP30と固定駆動パルスSP40のデューティ及び周期を異なるものとしてもよい。
【0338】
なお、補正パルスFPは、ロータ21を確実に回転させるため強い駆動力が必要となるため、チョッパーパルスとすることによる出力の制限は望ましくないが、電源電圧等の条件により、確実にロータ21の回転が見込める場合には、その範囲内において、可変駆動パルスSP30と固定駆動パルスSP40と同様にチョッパーパルスとしてもよい。
【0339】
[第6の実施形態の変形例2:
図32]
第6の実施形態の変形例1において、さらに、電源電圧に応じて変形されたパルス波形であるチョッパーパルスのデューティを、時間経過に応じて変更してもよい。
図32は第6の実施形態の変形例2のパルス波形の一部を示しており、(1)が可変駆動パルスSP30の長さが1msのもの、(2)が可変駆動パルスSP30の長さが2msのもの、(3)が可変駆動パルスSP30の長さが3msのものとなっている。可変駆動パルスSP30の長さが4msのものと5msのものは、図示を省略している。
【0340】
ここでの基本的な考え方は、回転判定が得られるまでの時間が長くなるほど、より強い駆動力を生じる駆動パルスを与えるというものである。すなわち、電源電圧が高く、駆動力に余裕がある場合には早いタイミングで回転判定がえられ、不要な電力消費を避けるため、デューティを低くして消費電力を削減しても差し支えないと考えられるのに対し、電源電圧が低下して駆動力の余裕がなくなってくると、回転判定が得られるまでの時間が長くなり、また非回転とならないよう、十分な駆動力をもつ駆動パルスを与える必要があると考えられる。
【0341】
そこで、本変形例では、まず、回転開始から最初の1msの間は、低いデューティである8/16のチョッパーパルスによる可変駆動パルスSP30をステップモータ20に印加する。これにより回転判定が得られれば(1)の波形となり、駆動力に余裕があることがわかるので、固定駆動パルスSP40のデューティも2/16と低いものとなる。また、固定駆動パルスSP40の期間自体も、第2駆動パルス12が0.75ms、第3駆動パルスが0.25msの合計1msと短いものとしてよい。
【0342】
回転開始から1msで回転判定が得られなければ、可変駆動パルスSP30のデューティを上げ、駆動力を増加する。具体的には、チョッパーパルスのデューティを10/16とする。これにより回転判定が得られれば(2)の波形となる。この場合は、駆動力を考慮して、固定駆動パルスSP40のデューティを4/16と(1)の場合より強いものとする。また、固定駆動パルスSP40の期間は、第2駆動パルス12が1ms、第3駆動パルスが0.5msの合計1.5msと(1)の場合より長いものとしてよい。
【0343】
さらに回転開始から2msで回転判定が得られなければ、さらに可変駆動パルスSP30のデューティを上げ、駆動力を増加する。具体的には、チョッパーパルスのデューティを12/16とする。これにより回転判定が得られれば(3)の波形となる。そして、駆動力を考慮して、固定駆動パルスSP40のデューティは6/16と(2)の場合よりさらに強いものとする。さらに、固定駆動パルスSP40の期間は、第2駆動パルス12が1.25ms、第3駆動パルスが0.75msの合計2msと(2)の場合よりさらに長いものとしてよい。
【0344】
以下同様に、回転開始より3ms、4ms経過するごとに可変駆動パルスSP30のデューティを上げ同時に固定駆動パルスSP40のデューティも上げていく。このとき、固定駆動パルスSP40の長さも同時に上げていくようにしてもよい。このようにすることで、駆動力に余裕がある場合には、無駄な消費電力を削減し、電源電圧の低下などに伴い駆動力の余裕がなくなるにしたがって、回転開始から回転判定が得られるまでに時間がかかるようになるので、回転開始からの時間の経過に伴って印加する駆動パルスのデューティを増加させて駆動力を増すことで、非回転となるリスクを低減する。すなわち、チョッパーパルス化による駆動力低下による回転の失敗により、補正パルスFPが頻繁に出力され、かえって消費電力が増加するといった事態を防止できる。これにより、消費電力の低減と、ロータ21の安定した回転とをバランスよく実現できる。
【0345】
なお、
図32で示した例では、固定駆動パルスSP40のデューティと長さの両方を変化させていたが、これをいずれか片方のみ、例えば長さは一定でデューティのみ変化させたり、デューティは一定で長さのみ変化させるようにしてもよい。
【0346】
[第7の実施形態]
第7の実施形態に係る電子時計は、第1の実施形態に係る電子時計1と基本的に構造、制御は共通である。そのため、
図1〜7を参照して説明された事項は本実施形態に係る電子時計にも共通である。
【0347】
第7の実施形態では、電源電圧や電子時計の温度に応じて、1ステップ360度駆動時の駆動パルスを切り替える。すなわち、
図7を参照すると、1ステップ360度駆動による高速駆動において、
図7(b)の状態は、コイルAとコイルBの両方を励磁していることになる。この場合、コイルA又はコイルBを単独で励磁する場合に比べ、おおよそ2倍程度の電流が必要となる。
【0348】
一方で、
図4及び5に示されるように、1ステップ180度駆動による通常駆動では、コイルAとコイルBが同時に励磁されることはない。
【0349】
ここで、瞬間的に大きな電量を消費すると、電源電圧の一時的な低下を招来する。条件が良く、電源電圧に十分な余裕があれば問題はないが、蓄電量が減少し、電源電圧自体が低下している場合や、温度が低く、電源電圧の一時的な低下が生じやすい条件では、
図7に示した1ステップ360度駆動による高速駆動時における一時的な電源電圧の低下が問題となる可能性がある。
【0350】
そこで、第7の実施形態では、1ステップ360度駆動による高速駆動時の波形を、
図7に示したものと、電源電圧が一定値以下あるいは電子時計の温度が一定以下など、電源電圧の一時的な低下が懸念される場合に使用すべき、低電流用駆動波形との2通りを用意し、電源電圧又は電子時計の温度に応じて両者を切り替えるように構成している。
【0351】
[第7の実施形態の駆動パルスの低電流用駆動波形の説明:
図33]
図33は、第7の実施形態の駆動パルスの駆動波形の一例である、高速駆動パルス列SP80を説明する図である。まず、高速駆動パルス列SP80は、
図2のステップモータ20のロータを静止位置0度から正転方向(反時計回り)に360度単位で回転駆動するものである。
図33は、かかる高速駆動パルスSP80による駆動波形であり、ドライバ回路10から出力される4つの駆動波形O1、O2、O3及びO4を示している。
【0352】
図33において、高速駆動パルス発生回路4から出力される高速駆動パルス列SP80は、本例では3ビットのSP81〜SP83でなり、時系列的に第1駆動パルスSP81、第2駆動パルスSP82、第3駆動パルスSP83の3個の駆動パルスで構成され、ドライバ回路80の各トランジスタをON/OFFするために論理“1”または論理“0”でなるパルス列である。
【0353】
第1駆動パルスSP81は、駆動波形O3が電圧−Vであり、他の駆動波形O1〜O3は電圧0Vである。これにより、コイル端子O3とO4に接続されるステップモータ20のコイルBに駆動電流が流れて励磁される。
【0354】
また、第2駆動パルスSP82は、駆動波形O2が電圧−Vであり、駆動波形O1、O3及びO4が電圧0Vである。これにより、コイル端子O1とO2に接続されるステップモータ20のコイルAに駆動電流が流れて励磁される。
【0355】
また、第3駆動パルスSP83は、駆動波形O4が電圧−Vであり、他の駆動波形O1〜O3は電圧0Vである。これにより、コイル端子O3とO4に接続されるステップモータ20のコイルBに駆動電流が流れて励磁される。
【0356】
[第7の実施形態の低電流用駆動波形による1ステップ360度回転駆動の説明:
図34]
第7の実施形態のステップモータ20の低電流用駆動波形による1ステップ360度単位の高速回転駆動を、
図34を参照して説明する。まず、
図34(a)に示すのは、高速駆動パルス列SP80の第1駆動パルスSP81がステップモータ20に供給された状態であり、コイルBが矢印の方向に励磁されるから、第2磁極部22bがN極、第3磁極部22cがS極に磁化され、またコイルAは磁化されないから、第1磁極部22aは第3磁極部22cと同じくS極となる。そのため、ロータ21は反時計回りに回転し、ロータ21のN極は反時計回りに回転し、静止位置0度から約135度の位置まで回転する。
【0357】
次に、
図34(b)に示すように、第2駆動パルスSP62が供給されると、コイルAが矢印の方向に励磁されるから、第1磁極部22aがN極に、第2磁極部22bと第3磁極部22cがS極に磁化される。その結果、ロータ21はさらに反時計回りに回転し、ロータ21のN極は約225度の位置まで回転する。
【0358】
さらに、
図34(c)に示すように、第3駆動パルスSP83が供給されると、コイルBが矢印の方向に励磁されるから、第2磁極部22bがS極、第1磁極部22aと第3磁極部22cがN極に磁化される。その結果、ロータ21は停止することなく更に反時計回りに回転し、ロータ21のN極は約315度の位置まで回転する。
【0359】
その後、
図34(d)に示すように、高速駆動パルス列SP80の供給が終了すると、コイル端子O1〜O4はすべて電圧0Vとなるので、コイルA及びコイルBの励磁はなくなり、第1〜第3磁極部の磁化が消え、ロータ21は、停止することなく360度(0度)の静的安定点まで回転を継続し、その位置で保持される。このようにして、3個の駆動パルスSP81〜SP83で構成される高速駆動パルス列80による、1ステップ駆動での360度回転駆動が実現できる。
【0360】
この第7の実施形態の低電流用駆動波形である高速駆動パルス列SP80による駆動では、
図34の(b)から(c)にかけて、ロータ21を225度の位置から315度の位置まで90度回転させる必要があるが、この回転を単独のコイルの励磁により行うため、
図6に示した高速駆動用の高速駆動パルス列SP10に比して、駆動力がやや劣る。そのため、高速駆動パルス列SP80によるロータ21の回転にはやや時間を要する傾向がある。
【0361】
一方で、
図34より明らかなように、低電流用駆動波形である高速駆動パルス列SP80では、2つのコイルを同時に励磁することがないため、電流の最大値は
図6に示した高速駆動パルス列SP10に比して約1/2である。そのため、大電流の消費による一時的な電圧低下が懸念される条件における高速駆動においては、低電流用駆動波形である高速駆動パルス列SP80を使用し、そうでない場合には、
図6に示した高速駆動パルス列SP10を使用するとよい。
【0362】
なお、この高速駆動パルス列SP80は、第1の実施形態のみならず、第3の実施形態に適用してもよい。その場合、例えば、
図14に示した高速駆動パルス列SP20を、条件に応じて本実施形態の低電流用駆動波形である高速駆動パルス列SP80と切り替えて用いればよい。
【0363】
[第8の実施形態]
第8の実施形態に係る電子時計は、第6の実施形態と、第7の実施形態との組み合わせにより、低消費電力と、電源電圧低下や低温などの電源条件が悪い場合の回転の安定性を、さらに高い信頼性で両立させた例である。
【0364】
図27に示す第6の実施形態に係る高速駆動パルス列SPと、
図33に示す第7の実施形態に係る低電流用駆動波形による高速駆動パルス列SP80とを比較すると、第1駆動パルスSP11及びSP81は共通である。すなわち、第7の実施形態に係る低電流用駆動波形による高速駆動パルス列SP80を第1駆動パルスSP81からなる可変駆動パルスSP30と第2、第3駆動パルスSP82、SP83からなる固定駆動パルスSP90とに分けると、可変駆動パルスSP30は第6の実施形態と、第7の実施形態とで共通である。
【0365】
一方、第6の実施形態の固定駆動パルスSP40と第7の実施形態の固定駆動パルスSP90とは異なる駆動パルスとなっている。
【0366】
そこで、本実施形態は、第6の実施形態のように、回転判定がなされるまでの時間に応じて可変駆動パルスSP30の長さを変更するとともに、回転判定がなされるまでの時間が長く、電源条件が良くないと判断される場合に、固定駆動パルスを低電流用駆動波形による固定駆動パルスSP90に切り替えるようにするものである。
【0367】
[第8の実施形態の高速駆動パルス列出力のフローの説明:
図35]
図35は、第8の実施形態の高速駆動パルス列出力のフローを説明するフロー図である。以下、このフロー図に従って、制御回路により制御される本実施形態に係る電子時計の動作を説明する。
【0368】
この動作フローでは、ST1、ST2、ST31〜ST35、ST41〜ST45、ST51〜ST55、ST6及びST7で行われる動作は
図29に示した第6の実施形態に係るフローと同じである。そして、ST55ののち、
図29に示したフローでは、ST7へと進んでいたところ、これに変えてST71へと進むようになっている点のみが異なっている。
【0369】
すなわち、運針のタイミングで、可変駆動パルスSP30をドライバ回路100に出力し(ST1)ステップモータ20のロータ21を回転開始させ、続いて回転検出を開始する(ST2)。そしてST31〜ST35により、回転判定が得られると、ST41〜45にて回転検出を終了し、ST51〜ST55にて、回転判定が得られるまでの時間に応じて可変駆動パルスSP30の長さを設定する。ST51〜ST54の実行後は、ST7にて固定駆動パルスSP40を出力する。また、ST35にて非回転との判定となった場合(ST35:N)は、ST6にて補正パルスFPを出力し、これにより1ステップ360度回転駆動が実現される。
【0370】
ここで、ST35にて回転開始から4.75ms経過するまでに回転判定が得られた場合は、電源電圧が低いなどの理由により、駆動力が低下している条件であることが推測される。このような条件下では、大電流の消費による一時的な電源電圧の低下によりなんらかの問題が生じることが懸念される。
【0371】
そこで、ST55による5msの可変駆動パルスSP30の出力後は、ST71へと進み、
図33に示した低電流用駆動波形による固定駆動パルスSP90に切り替え出力する。固定駆動パルスSP90による駆動では、2つのコイルを同時に励磁することがなく、一時的な電圧低下を生じにくい。
【0372】
[第8の実施形態のパルス波形の説明:
図36]
図36は、第8の実施形態のパルス波形を説明する図である。同図中、(1)〜(3)で示したパルス波形は、ロータ21が回転と判定された時にステップモータ20に印加される駆動パルスを示している。また、(4)は補正パルスFP、(5)は検出パルスCPを印加するタイミングを示している。
【0373】
ここで、(1)、(2)に示すように、回転判定が回転開始から3.75msまでに得られ、可変駆動パルスSP30の長さが4ms以下の場合は、可変駆動パルスSP30の出力後直ちに固定駆動パルスSP40が出力され、2つのコイルを同時に励磁することによる1ステップ360度駆動がなされる。
【0374】
これに対し、(3)に示すように、回転判定が回転開始から3.75ms以降に得られ、可変駆動パルスSP30の長さが5msと長い場合には、可変駆動パルスSP30の後出力される固定駆動パルスは低電流用駆動波形による固定駆動パルスSP90となり、2つのコイルを同時に励磁することなく1ステップ360度駆動がなされるようになっている。この場合、(1)、(2)に示す固定駆動パルスSP40はその長さが3.5msであるのに対し、(3)に示す固定駆動パルスSP90はその長さが7.0msと長くなっており、低電流であっても確実にロータ21を回転させることができるようになっている。
【0375】
こうすることにより、回転検出のタイミングを検出するのみで、電源電圧の値や、電子時計の温度を直接検出することなく、一時的な電源電圧の低下が問題となりうる条件を判別し、大電流の消費による一時的な電源電圧の低下の問題を回避しつつ、1ステップ360度回転による高速回転を安定して実現できる。これにより、電源電圧の検出回路や温度の判定回路などの回路規模を小さくし、小型化・低コスト化を図ることができる。
【0376】
なお、固定駆動パルスとして、固定駆動パルスSP40に切り替えて低電流用駆動波形による固定駆動パルスSP90を用いる条件は、ここで示したように、回転開始から3.75msまでに回転判定が得られなかった場合に限定されるものではなく、これを適宜変更してもよい。例えば、回転開始から2.75msまでに回転判定が得られなかった場合に(
図35のST34:Y)、ST71へと進み固定駆動パルスSP90を用いるようにしてもよい。
【0377】
[第8の実施形態の変形例:
図36]
以上説明した第8の実施形態では、一時的な電源電圧の低下が問題となりうる条件であると推定された場合に、低電流用駆動波形による固定駆動パルスSP90を用いるようにしているが、これに変えて、印加する端子を反転させた可変駆動パルスSP30’を出力するようにしてもよい。
【0378】
[第8の実施形態の変形例の高速駆動パルス列出力のフローの説明:
図37]
図37は、第8の実施形態の変形例の高速駆動パルス列出力のフローを説明するフロー図である。このフローは、第8の実施形態のものとして示した
図35のものに対し、ST71に変えて、ST72が使用されている点のみ異なっており、他の点は同一である。
【0379】
すなわち、ST35にて回転開始から4.75ms経過するまでに回転判定が得られた場合に(ST35:Y)、回転検出を終了し(ST45)、可変駆動パルスSPの幅を5msに設定して出力したのち、印加するコイルを切り替えた可変駆動パルスSP30’を出力する。
【0380】
ここで、印加するコイルを切り替えた可変駆動パルスSP30’とは、通常の可変駆動パルスがコイルA又はコイルBのいずれかに印加されるものであることから、(この場合はコイルB)、これを他方のコイル(この場合はコイルA)に印加するものとなるように印加するコイル端子を入れ替えたものである。
【0381】
より具体的には、可変駆動パルスSP30の駆動波形O1及びO2を駆動波形O3及びO4にそれぞれ入れ替え、また駆動波形O3及び4を駆動波形O1及びO2にそれぞれ入れ替えたものが可変駆動パルスSP30’である。そして、可変駆動パルスSP30’は、ロータ21が180度の位置にある場合に、さらに180度ロータ21を反時計回りに360度(0度)の位置まで回転させる駆動パルスである。
【0382】
すなわち、ST55にて幅5msの通常の可変駆動パルスSP30が出力された状態で、ロータ21は135度まで回転しており、その後保持トルクにより静的安定点である180度の位置まで回転すると考えられるから、その状態からさらに可変駆動パルスSP30’を印加することにより、ロータ21を315度の位置まで回転させ、さらにその後保持トルクにより静的安定点である360度(0度)の位置まで回転させることができるのである。
【0383】
[第8の実施形態の変形例のパルス波形の説明:
図38]
図38は、第8の実施形態の変形例のパルス波形を説明する図である。このフローは、第8の実施形態のものとして示した
図37のものに対し、(3)の波形のみ異なっており、他の点は同一である。
【0384】
すなわち、(3)に示した、回転判定が回転開始から3.75ms以降に得られた場合では、幅5msの可変駆動パルスSP30に続き、ロータ21が静的安定位置に到達するまでの期間として、パルスを印加しない期間を8ms設け、その後可変駆動パルスSP30’を出力するようにしている。そして、可変駆動パルスSP30及び、可変駆動パルスSP30’は2つのコイルを同時に励磁するものではないため、この変形例においても、先の第8の実施形態で説明した場合と同様に、回転検出のタイミングを検出するのみで、電源電圧の値や、電子時計の温度を直接検出することなく、一時的な電源電圧の低下が問題となりうる条件を判別し、大電流の消費による一時的な電源電圧の低下の問題を回避しつつ、1ステップ360度回転による高速回転を安定して実現できる。
【0385】
なお、本発明の各実施形態で示した構成図、回路図、波形図等は、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を満たすものであれば、任意に変更することができる。