【文献】
Wang Xiuli et.al. ,Blood ,2014年,vol.124 No.21 1114
【文献】
Klebanoff et.al. ,J Immunother ,2012年,Vol.35 No.9 ,pp651-660
【文献】
Nicoletta Cieri et.al. ,Blood ,2013年,vol.121 No.4 ,pp573-584
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
T細胞を含む単離されたヒト細胞の集団であって、前記T細胞は、セントラルメモリーT細胞、幹細胞様メモリーT細胞及びナイーブT細胞を含み、前記T細胞のうち50%を超えるT細胞がCD45RA+であり、さらに、前記T細胞のうち70%を超えるT細胞がCD62L+であり、前記T細胞のうち15%未満がCD14+であり、さらに、前記T細胞のうち5%未満がCD25+であり、かつ、前記T細胞のうち25%を超えるT細胞が組換え核酸分子を宿す、単離されたヒト細胞の集団。
T細胞を含む単離されたヒト細胞の集団であって、前記T細胞は、セントラルメモリーT細胞及び幹細胞様メモリーT細胞を含み、前記T細胞のうち50%を超えるT細胞がCD45RA+であり、前記T細胞のうち70%を超えるT細胞がCD62L+であり、前記T細胞のうち85%を超えるT細胞がCD95+であり、さらに、前記T細胞のうち25%を超えるT細胞が組換え核酸分子を宿す、単離されたヒト細胞の集団。
T細胞を含むヒト細胞の集団を調製する方法であって、前記T細胞は、セントラルメモリーT細胞、幹細胞様メモリーT細胞及びナイーブT細胞を含み、前記細胞のうち50%を超える細胞がCD45RA+であり、さらに、前記細胞のうち70%を超える細胞がCD62L+であり、当該方法は、
(a)T細胞を含むヒト細胞の試料を提供するステップ、
(b)枯渇した細胞集団を調製するために、CD25を発現する細胞、及び、CD14を発現する細胞を枯渇させるように前記T細胞を含むヒト細胞の試料を処理するステップ、
及び、
(c)CD62Lを発現する細胞を濃縮するように前記枯渇した細胞集団を処理し、その結果、T細胞を含むヒト細胞の集団を調製するステップであり、前記T細胞は、セントラルメモリーT細胞、幹細胞様メモリーT細胞及びナイーブT細胞を含み、前記細胞のうち50%を超える細胞がCD45RA+であり、さらに、前記細胞のうち70%を超える細胞がCD62L+である、ステップ、
を含み、
CD45RAを発現する細胞を枯渇させるステップを含まない方法。
前記T細胞を含むヒト細胞の集団を活性化するステップ、及び、前記活性化された細胞に、組換え核酸分子を形質導入又は遺伝子導入して、組換え核酸分子を宿すT細胞を含むT細胞の集団を提供するステップをさらに含む、請求項19に記載の方法。
T細胞を含む単離されたヒト細胞の集団であって、前記T細胞は、セントラルメモリーT細胞、幹細胞様メモリーT細胞及びナイーブT細胞を含み、前記T細胞のうち50%を超えるT細胞がCD45RA+であり、さらに、前記T細胞のうち70%を超えるT細胞がCD62L+であり、前記集団は、T細胞を含むヒト細胞の試料を提供するステップ、
枯渇した細胞集団を調製するために、前記試料を抗CD14抗体及び抗CD25抗体に接触させることにより、CD25を発現する細胞を枯渇させ、かつ、CD14を発現する細胞を枯渇させるように前記T細胞を含むヒト細胞の試料を処理するステップ、及び、CD62Lを発現する細胞を濃縮するように前記枯渇した細胞集団を処理し、その結果、T細胞を含む単離されたヒト細胞の集団を調製するステップであり、前記T細胞は、セントラルメモリーT細胞、幹細胞様メモリーT細胞及びナイーブT細胞を含み、前記細胞のうち40%を超える細胞がCD45RO+であり、さらに、前記細胞のうち70%を超える細胞がCD62L+である、ステップを含み、CD45RAを発現する細胞を枯渇させるステップを含まない方法によって調製される、単離されたヒト細胞の集団。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】種々のT細胞のサブセットに対する特定のマーカーの発現パターン、特に、T
NからT
SCMを区別する発現パターンを描いた図である。
【
図2】種々のT細胞のサブセットに対する特定のマーカーの発現データを描いた図である。
【
図3】CD62L及びCD45ROの発現に基づき、特定のT細胞のサブセット間の関係を描いた図である。
【
図4】T
CM細胞又はT
CM/SCM/N細胞に対するCliniMACS(商標)による濃縮後の細胞の表面表現型分析の結果を描いた図である。示された生成物からの細胞を、T細胞マーカーCD3及びCD8、セントラルメモリーT細胞マーカーCD62L及びナイーブT細胞マーカーCD45RAだけでなく、単核球マーカーCD14及び制御性T細胞マーカーCD24に特異的な蛍光色素結合抗体を用いて染色した。アイソタイプ対照染色(黒線)を越える免疫反応性細胞の割合(陰影がつけられたヒストグラム)が、各ヒストグラムにおいて示されている。
【
図5】T
CM細胞集団及びT
CM/SCM/N細胞集団の増殖における研究の結果を描いた図である。レンチウイルス形質導入の日の開始時の生細胞数が、5人のドナーのうち4人から製造された細胞生成物について描かれており、T
CM由来の生成物は黒い丸で表され、さらに、T
CM/SCM/N由来の生成物は、白い四角で表されている。培養液中の細胞の倍加時間をよりよく描くために、Log2スケールをY軸に対して使用した。
【
図6】T
CM細胞集団及びT
CM/SCM/N細胞集団の表面表現型分析の結果を描いた図である。T
CMが濃縮された細胞又はT
CM/SCM/Nが濃縮された細胞をビーズで刺激し、CD19R(EQ)28Z−T2A−EGFRt_epHIV7又はIL13(EQ)BBZ−T2A−CD19t_epHIV7で形質導入し、さらに、ex vivoで増殖させた。次に、細胞を、EGFRt又はCD19t形質導入マーカーに特異的な、又は、T細胞マーカーCD3、CD4及びCD8、セントラルメモリーT細胞マーカーCD27、CD28及びCD62L、及び、ナイーブT細胞マーカーCD45RAに特異的な蛍光色素結合試薬で染色した後、フローサイトメトリーによって分析した(灰色のヒストグラム)。対照の染色(オープンヒストグラム)を超える免疫反応性細胞の割合が、代表的なT
CM/T
CM/SCM/Nの対の各ヒストグラムにおいて示されている(A)か、又は、(B)において各細胞株に対するデータポイントとして示されており、白い記号は、T
CM由来の生成物に対するものであり、灰色の記号は、T
CM/SCM/N由来の生成物に対するものである。赤い棒は各群に対する平均値を描いており、さらに、T
CM由来の細胞生成物対T
CM/SCM/N由来の細胞生成物の対応スチューデントt検定比較に対するp値が、各表面のマーカーに対して示されている。*,P値は、少な過ぎる値のため、CD27に対して計算しなかった。重複のため、(B)においてCD3染色に対しては、細胞株特異的記号ではなく陰影のみが示されていることに留意されたい。
【
図7A】Sup−B15腫瘍細胞を投与した場合のCD19R T
CM又はCD19R T
CM/SCM/N前処置の治療効果を評価する研究の結果を描いた図である。NSGマウスに照射を行った1日後に、マウスを群に分け(n=4)、未処置のままにしたか、又は、2.5x10
6ニセの(mock)形質導入PBMC(CARなし)、CD19R T
CM又はCD19R T
CM/SCM/N(約0.5x10
6CAR+細胞)のいずれかを用いて静脈内処置した。2日目に、マウスに、ffLuc+Sup−B15腫瘍細胞0.7〜1.0×10
6M,millionを静脈内投与した。
【
図7B】Xenogen Living Imageを使用して、各郡からの代表的なマウスが、相対的な腫瘍の負荷量を示している。
【
図7C】Xenogenイメージングによってモニターされた時間の経過に伴うマウスの各郡における平均的なSup−B15腫瘍増殖及びffLux flux(光子/秒)の定量化が示されている。
【
図8A】CD19R T
CM又はCD19R T
CM/SCM/Nを用いた静脈内前処置の41日後の血液中のヒトT細胞の存在を調べる研究の結果を描いた図である。NSGマウスに照射を行った1日後に、マウスを群に分け(n=4)、未処置のままにしたか、又は、2.5x10
6ニセの形質導入PBMC(CARなし)、CD19R T
CM又はCD19R T
CM/SCM/N(約0.5x10
6CAR+細胞)のいずれかを用いて静脈内処置した。2日目に、マウスに、腫瘍GFP+Sup−B15腫瘍細胞0.7〜1.0×10
6を静脈内投与した。41日目に、各マウスの血液を、フローサイトメトリーによってヒトCD45+CD3+細胞(すなわちヒトT細胞)の存在について評価した。各マウスの代表的なフローサイトメトリーの分析が描かれている(マウス1及びマウス2)。ここでhuCD45依存性細胞を、CD3T細胞マーカー及びEGFRt形質導入マーカーの発現についてさらに分析した(右上象限(upper right quadrant)に基づく%CAR+)。金のボックスは、GFP+SupB15集団を強調するために使用されている。
【
図8B】CD19R T
CM又はCD19R T
CM/SCM/Nを用いた静脈内前処置の41日後の血液中のヒトT細胞の存在を調べる研究の結果を描いた図である。NSGマウスに照射を行った1日後に、マウスを群に分け(n=4)、未処置のままにしたか、又は、2.5x10
6ニセの形質導入PBMC(CARなし)、CD19R T
CM又はCD19R T
CM/SCM/N(約0.5x10
6CAR+細胞)のいずれかを用いて静脈内処置した。2日目に、マウスに、腫瘍GFP+Sup−B15腫瘍細胞0.7〜1.0×10
6を静脈内投与した。41日目に、各マウスの血液を、フローサイトメトリーによってヒトCD45+CD3+細胞(すなわちヒトT細胞)の存在について評価した。各マウスの代表的なフローサイトメトリーの分析が描かれている(マウス3及びマウス4)。ここでhuCD45依存性細胞を、CD3T細胞マーカー及びEGFRt形質導入マーカーの発現についてさらに分析した(右上象限(upper right quadrant)に基づく%CAR+)。金のボックスは、GFP+SupB15集団を強調するために使用されている。
【
図9】エフェクターとしてCD19R(EQ)28ZEGFRt_epH1V7、及び、標的としてCD19陰性K562細胞(白いバー)又はCD19+SupB15細胞(黒いバー)で形質導入又はニセの形質導入が行われたT
CM細胞又はT
CM/SCM/N細胞を用いて行われた長期の死滅アッセイの結果を描いた図である。100%に正規化された、ニセのエフェクター共培養と比較した場合の72時間後に残存する生存可能な標的細胞(CD45陰性、FSC高)の割合が描かれている。
【
図10】エフェクターとしてCD19R(EQ)28ZEGFRt_epH1V7、及び、刺激物質としてCD19陰性K562細胞(白いバー)又はCD19+SupB15細胞(黒いバー)で形質導入又はニセの形質導入が行われたT
CM細胞又はT
CM/SCM/N細胞を用いて行われた5時間の脱顆粒アッセイの結果を描いた図である。CD107aに対して免疫反応性であったCD45/CD8/EGFRt依存性細胞の割合が示されている。
【
図11】CD19R(EQ)28ZEGFRt_epH1V7で形質導入又はニセの形質導入が行われたT
CM細胞又はT
CM/SCM/N細胞によるIFNγ生成の分析の結果を描いた図である。エフェクターとしてCD19R(EQ)28ZEGFRt_epH1V7、及び、刺激物質としてCD19陰性K562細胞(白いバー)又はCD19+SupB15細胞(黒いバー)で形質導入又はニセの形質導入が行われたT
CM由来又はT
CM/SCM/N由来の細胞生成物を用いて5時間の共培養を行った。IFNγに対して免疫反応性であったCD45/CD8/EGFRt依存性細胞の割合が示されている。
【
図12】様々なT細胞集団によって発現されるIL13 CARの有効性の研究の結果を描いた図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
T細胞のコンパートメントは、異なる分化段階にあるT細胞のサブセットを含む。これらのサブセットは、CD45RA+、CD62L+、CD28+及びCD95−であるナイーブT細胞(T
N)の分化から生じる。幹細胞様サブセットの中には、CD45RA+、CD62L+、CD28+及びCD95+である幹細胞様メモリーT細胞(T
SCM)がある。これらの細胞は、CD45RO+、CD62L+、CD28+及びCD95+であるセントラルメモリー細胞(T
CM)に分化する。T
CMは、CD45RO+、CD62L−、CD28+/−及びCD95+であるエフェクターメモリー細胞(T
EM)に分化する。T
EMは、CD45RO+、CD62L+、CD28+及びCD95+であるエフェクターT細胞(T
E)に分化する。
【0017】
幹細胞様メモリーT細胞(T
SCM)は、T細胞のコンパートメント内に低レベルで存在するが、有意な自己再生及び増殖の潜在能力を有しているように思われる。幹細胞様メモリーT細胞(T
SCM)は、CD45RA+及びCD62L+を発現する点でナイーブT細胞(T
N)に似ているけれども、そのCD95の発現によってT
Nから区別され得る(
図1)。T
SCMは、IL−7及びIL−15の存在下でCD3/CD28ビーズを用いた刺激によってT
Nから生成され得る。T
SCMはまた、Wnt/β−カテニン経路活性化の存在下で増殖され得る。
【0018】
T
SCMよりもPBMCにおいてより豊富であるセントラルメモリーT細胞(T
CM)は、自己再生及び増殖の潜在能力が高い、詳細に明らかにされたメモリーT細胞のサブセットである。T
CMはエフェクターT細胞(T
E)よりも次の養子移入の間も持続するという証拠がある(非特許文献1;非特許文献2)。T
CMは、そのCD45RA−CD45RO+CD62L+の表現型に基づくT細胞治療薬製造のためにPBMCから濃縮することができる(
図2)(非特許文献3)。T
CMは成体幹細胞のように振る舞うという証拠がいくつかある。T
CMが、完全な免疫再構築を提供することができるということ、T
CMが増殖してさらなるTCMを生成するということ、及び、T
CMが、T
EM/T
Eに分化するということを三世代に渡るT
CMの単細胞伝達が実証したということがマウスにおける研究によって実証されている(非特許文献4;非特許文献5)。
【0019】
以下に記載されるT
CM/SCM/N細胞集団は、CAR−T治療における有効性を立証したT
CM、及び、T
CMよりも幹細胞様であるT
NだけでなくT
SCMも含む。
図3は、種々の細胞集団とPBMCとの関係を描く発現データを示している。
【0020】
本明細書において記載される細胞集団は、例えば、CAR又はT細胞受容体を発現するように遺伝子操作することができる。CARは、細胞外認識ドメイン、膜貫通領域及び1つ又は複数の細胞内シグナル伝達ドメインを含有する組換え生体分子である。従って、「抗原」という用語は、抗体に結合する分子に限定されないが、いかなる受容体にも特異的に結合することができるいかなる分子に限定される。従って、「抗原」は、CARの認識ドメインを意味する。細胞外認識ドメイン(細胞外ドメインとも呼ばれるか、又は、単に含有する認識要素によっても言及される)は、標的細胞の細胞表面上に存在する分子に特異的に結合する認識要素を含む。膜貫通領域は、膜内にCARを固定する。細胞内シグナル伝達ドメインは、ヒトCD3複合体のゼータ鎖由来のシグナル伝達ドメインを含み、任意的に、1つ又は複数の共刺激シグナル伝達ドメインを含む。CARは、MHC制限とは無関係に、抗原に結合することも、T細胞活性化を伝達することもできる。従って、CARは、そのHLA遺伝子型に無関係に、抗原陽性腫瘍を有する患者の集団を治療することができる「普遍的な」免疫受容体である。腫瘍特異的CARを発現するTリンパ球を使用した養子免疫療法は、癌の治療のための強力な治療戦略であり得る。
【0021】
CARは、当技術分野において既知のいかなる手段によっても生成することができるが、好ましくは、組換えDNA技術を使用して生成される。都合のよい当技術分野において既知の標準的な分子クローニングの技術(ゲノムライブラリースクリーニング、オーバーラップPCR、プライマー支援のライゲーション、部位特異的変異誘発等)によって、キメラ受容体のいくつかの領域をコードする核酸を調製することができ、さらに、完全なコード配列を構築することができる。結果として生じるコード領域は、好ましくは、発現ベクターに挿入され、適した発現宿主細胞株、好ましくはTリンパ球細胞株、最も好ましくは自己Tリンパ球細胞株を形質転換するために使用される。
【0022】
T
CM/SCM/N細胞による発現に適した種々のCARとして、例えば、特許文献1;特許文献2;特許文献3;及び特許文献4に記載されたものが含まれる。
【実施例1】
【0023】
T
CM/SCM/N細胞の調製
様々な方法を使用して、ヒトT
CM/SCM/N細胞の集団を生成することができる。例えば、T
CM/SCM/N細胞の集団を、混合Tリンパ球集団から調製することができる。Tリンパ球の集団は、細胞を使用して最終的に処置された対象に対して同種異系又は自己由来であり得、さらに、白血球フェレーシス又は採血によって対象から得ることができる。
【0024】
以下の方法は、白血球フェレーシス又は他の手段によって得られたTリンパ球からT
CM/SCM/N細胞の集団を得るために使用することができる方法の一例である。末梢血は、白血球フェレーシス又は末梢血の採血によって採取される。典型的な製造サイクルの1日目は、フィコール手順が行われる日である。対象の白血球フェレーシスの生成物がEDTA/PBSで希釈され、さらに、その生成物は、最大のブレーキ(maximum brake)をかけて室温で10分間、1200RPMで遠心分離される。遠心分離後、多血小板の上澄みが除去され、さらに、細胞ペレットが穏やかにボルテックスされる。EDTA/PBSは、各コニカルチューブにおいてボルテックスされた細胞ペレットを再懸濁するために使用される。次に、各チューブの下にフィコールが敷かれ、室温にてブレーキをかけずに20分間、2000RPMで遠心分離される。遠心分離後、各チューブからのPBMC層が別のコニカルチューブに移される。細胞は、4℃で最大のブレーキをかけて15分間、1800RPMで遠心分離される。
【0025】
遠心分離後、細胞のない上澄みが捨てられ、さらに、細胞ペレットが穏やかにボルテックスされる。細胞は、毎回EDTA/PBSを使用して2回、PBSを使用して3回洗浄される。細胞は、4℃にて最大ブレーキをかけて10分間、1200RPMで毎回遠心分離される。最後のPBS洗浄の後、ボルテックスされた細胞ペレットは、完全なX−VIVO15の培地(10%FBSを有するX−VIVO(商標)の培地)において再懸濁され、トランスファーバッグに移される。洗浄されたPBMCを有するバッグは、翌日の免疫磁気選択のためにベンチトップ上において室温にて回転子上で一晩維持される。
【0026】
次に、選択手順が、特定のマーカーを発現する細胞の細胞集団を枯渇させるためにも、特定の他のマーカーを発現する細胞に対する細胞集団を濃縮するためにも使用される。これらの選択ステップは、好ましくは、製造サイクルの2日目に生じる。細胞集団は、CD25及びCD14を発現する細胞について実質的に枯渇している。重要なことに、細胞集団は、CD45RAを発現する細胞について実質的に枯渇していない。簡潔には、細胞は、ラベルバッファ(LB;0.5%HSAを有するEDTA/PBS)において再懸濁され、且つ、CliniMACS(登録商標)による枯渇に対して抗CD14及び抗CD25 Miltenyi抗体と共にインキュベートされ、さらに、組成物は穏やかに混合され、次に、ベンチトップの上において室温にて回転子上で30分間インキュベートされる。
【0027】
枯渇ステップは、枯渇チューブセットを使用してCliniMACS(登録商標)装置上で行われる。枯渇ステップ後の回収された細胞は、チューブに移され、さらに、4℃にて最大ブレーキをかけて15分間1400 RPMで遠心分離される。
【0028】
細胞のない上澄みが除去され、細胞ペレットが穏やかにボルテックスされ、さらに、再懸濁される。CD62Lを発現する細胞を濃縮するために、細胞懸濁液は、抗CD62L−ビオチン(City of Hope Center for Biomedicine and Geneticsにて作製)で処理され、穏やかに混合され、さらに、ベンチトップ上において室温にて回転子上で30分間インキュベートされる。
【0029】
インキュベーション期間の後、LBがチューブに添加され、さらに、細胞は、4℃にて最大ブレーキをかけて15分間、1400RPMで遠心分離される。細胞のない上澄みが除去され、さらに、細胞ペレットが穏やかにボルテックスされる。LBが、チューブ内の細胞ペレットを再懸濁するために添加され、さらに、再懸濁された細胞は、新しいトランスファーバッグに移される。抗ビオチン(Miltenyi Biotec)試薬が添加され、混合物が穏やかに混合され、さらに、ベンチトップ上において室温にて回転子上で30分間インキュベートされる。
【0030】
CD62L濃縮ステップが、チューブセットを使用してCliniMACS(登録商標)装置上で行われる。この濃縮の生成物は、貯蔵のために凍結させることができ、その後、解凍し、活性化させることができる。
【0031】
製造における中間の保持ステップを提供するために、選択プロセスに続いて細胞を凍結させるオプションが存在する。細胞は、4℃にて最大ブレーキをかけて15分間1400RPMで遠心分離することによってペレット状にされる。細胞は、Cryostor(登録商標)において再懸濁され、クライオバイアルに等分される。バイアルは、約1℃/分で冷却することができる制御された冷却装置(例えば、Nalgene(登録商標)Mr.Frosty;Sigma−Aldrich)に移されることになり、冷却装置は直ちに−80℃の冷凍庫に移される。−80℃の冷凍庫で3日後、細胞は、貯蔵のためにGMP LN2フリーザーに移される。
【0032】
本発明者等は、凍結保存された細胞は良好な回復及び生存率を示し、凍結保存後8.5ヶ月まで解凍させられると適切な細胞表面表現型を維持し、解凍後にin vitroで首尾よく形質導入及び増殖することができるということがわかった。
【0033】
或いは、新たに濃縮されたTcm/scm/n細胞は、以下の実施例3に記載されているように、活性化、形質導入又は増殖させることができる。
【実施例2】
【0034】
T
CMとT
CM/SCM/Nの収率及び回収の比較
1)CD62L+セントラルメモリー(T
CM)細胞、及び、2)セントラルメモリー(T
CM)集団も幹細胞様メモリー(T
SCM)集団も、ナイーブT細胞(T
N)と共に含むCD62L+T
CM/SCM/N細胞のT細胞集団のCliniMACS/AutoMACS(商標)による濃縮を受けたヒト末梢血単核細胞(PBMC)の収率を評価するために研究を行った。生細胞数のGuava分析及び表現型のフローサイトメトリー分析を使用して評価を行った。
【0035】
<実験設計>:健康なヒトドナーから採取したPBMCからT
CM及びT
CM/SCM/Nの細胞株を濃縮した。簡潔には、T
CM/SCM/N細胞を、CD14+単球及びCD25+制御性T細胞のCliniMACS/AutoMACS(商標)による枯渇後に、CD62L+メモリー集団のAutoMACS(商標)による選択を行うことによって生成した。対照的に、T
CM細胞を、CD14+単球、CD25+制御性T細胞及びCD45RA+ナイーブ及び幹細胞様メモリーT細胞のCliniMACS/AutoMACS(商標)による枯渇後に、CD62L+集団のAutoMACS(商標)による選択を行うことによって生成した。選択プロセスの評価には、以下においてより詳細に記載される、生細胞数の列挙並びにフローサイトメトリー分析が含まれた。次に、細胞を将来の研究のために凍結保存した。
【0036】
<濃縮プロセスの概要>:血液製剤をフィコール処理し、結果として得られたPBMCにPBS/EDTAにおける一連の洗浄を受けさせた。次に、PBMCを完全なX−Vivo15の培地において再懸濁させ、場合によっては、300ccのトランスファーバッグに移し、次に、3−D回転子上に一晩置いた。次に、CD14
−/CD25
−/CD45RA
−/CD62L
+T
CM又はCD14
−/CD25
−/CD62L
+T
CM/SCM/Nの集団のいずれかを濃縮するために、PBMCに、CliniMACS/AutoMACS(商標)による枯渇及び選択の連続するラウンドを受けさせた。最初のステップは、CD14+単球、CD25+制御性T細胞、及び、T
CMのためにCD45RA+ナイーブT細胞を除去するために(CliniMACS(商標)又はAutoMACS(商標)を介した)磁気による枯渇を含んだ。次に、残りの細胞に、抗CD62L−ビオチン(Dreg 56)試薬を使用してCD62L+集団に対して(AutoMACS(商標)を介した)正の選択を受けさせた。濃縮の両方のラウンドの後の最終的な細胞数を記録した。最終的な選択された細胞集団の試料を、次に、フローサイトメトリーによって分析した。
【0037】
<フローサイトメトリーアッセイ及び分析の概要>:細胞集団のフローサイトメトリー分析を以下のように行った。試料を、テーブルトップ遠心分離機を使用してFACS染色液(FSS)において洗浄し、FSSにおいて再懸濁し、さらに、1つの試料あたり100μLを、予め標識した12×75mm FACSチューブ(1つの条件あたり1つのチューブ)に等分した。必要量の抗体をそれぞれのFACSチューブに添加し、次に、チューブを4℃の暗所で30分間インキュベートした。インキュベーションの終わりに、各チューブをFSSにおいて2回洗浄し、さらに、250μlのFSS又は生死判別色素としてDAPIを含有するFSSのいずれかにおいて再懸濁させた。次に、試料を、FACS Calibur(Becton Dickenson)又はMACSQuant(Miltenyi)機器に流して分析した。生存可能な免疫反応性細胞の割合を、FCS Expressソフトウェア(De Novo Software,Los Angeles,CA)を介して計算した。
【0038】
<濃縮後の収率>:細胞生成物のそれぞれからのCD3+T細胞の回収が以下の表1において示されている。全体的に見て、CD14
−/CD25
−/CD45RA
−/CD62L
+CD3
+T
CMの濃縮は2〜6%の回収をもたらし、CD14
−/CD25
−/CD62L
+CD3
+T
CM/SCM/Nの濃縮は、4〜30%の回収をもたらした。実際、各一致対を比較すると、T
CM/SCM/N細胞対T
CM細胞の1.6乃至15倍の高い回収率があった。
【0039】
【表1】
<濃縮後のフローサイトメトリー分析>:CliniMACS(商標)による濃縮の両方のラウンドの後、濃縮された細胞の表現型をFACS分析によって決定した。3人の代表的なドナーから得られた細胞生成物の結果が
図4において示されている。各ドナー由来のT
CM及びT
CM/SCM/Nの集団は、CD3+及びCD62L+細胞の濃縮レベルを示し、T
CMはCD45RAが枯渇し、T
CM/SCM/Nは、予想通りにCD45RAを発現した。CD14+及びCD25+の集団の枯渇も、どちらも選択戦略を用いて予想通りに観察された。興味深いことに、CD8+の細胞の割合は、そのドナーが一致したT
CMの集団と比較した場合に、T
CM/SCM/Nの集団においてより高いことが多くあった(
図4及び表1)。
【0040】
<結果>:この研究の結果は、臨床的に解釈可能なGMP製造方法を使用して、CD62L+T
CMの細胞集団もT
CM/SCM/Nの細胞集団も効率的に単離することができるということを実証している。PBMCから始まり、出発集団の2〜6%がCD3+T
CMとして回収される。CD45RA枯渇ステップを排除することにより、CD3+T
CM/SCM/N細胞として出発集団の4〜30%の回収が可能になる。T
CM細胞と比較して1.6乃至15倍多いT
CM/SCM/N細胞を回収する能力は、遺伝子操作の出発集団として使用することができるT細胞の数を増加させるであろう。さらに、本発明者等は、CD45RA枯渇ステップの排除も、濃縮された生成物中のCD8 T細胞の割合を増加させるようであるということを観察した。
【実施例3】
【0041】
T
CM/SCM/N細胞のレンチウイルス形質導入
T
CM/SCM/N細胞集団は、関心のある1つ又は複数のタンパク質を発現するように遺伝子操作することができる。例えば、細胞を、関心のある1つ又は複数のタンパク質を発現する能力を持つレンチウイルスで形質導入することができる。以下は、硫酸プロタミン/サイトカイン溶液を用いてレンチウイルスベクターでT細胞を形質導入するために使用することができる1つの方法の例である。
【0042】
細胞が選択プロセスに引き続いて凍結される場合、細胞は製造プロセスの継続時に解凍される必要がある。凍結保存したバイアルは、大部分は液体として残るまで37℃の水浴において解凍される。バイアルの内容物は、低温のX−Vivo15培地を含有するコニカルチューブ内に入れられる。細胞は、4℃にて最大ブレーキをかけて10分間1200 RPMで遠心分離される。遠心分離後、細胞のない上澄みがデカントされ、ペレットがボルテックスされ、さらに、ペレットが全て、X−Vivo15培地において1本のチューブに混合されてレンチウイルスで形質導入されることになる。細胞数が決定され、さらに、製造プロセスはDynalビーズの活性化と共に続く。
【0043】
細胞は、25℃で10分間、1400RPMで遠心分離される。遠心分離後、細胞のない上澄みが除去され、さらに、細胞ペレットは穏やかにボルテックスされ、完全なX Vivo15培地において再懸濁されて、レンチウイルスで形質導入されることになる。解凍された細胞が使用されている場合、遠心分離のステップは必要ではない。
【0044】
Tcm/scm/n細胞は、1:3の比(T細胞:ビーズ)でDynabeads(登録商標)ヒトTエキスパンダCD3/CD28(Invitrogen)で刺激され、次に、50U/mLのrhIL−2(Chiron)及び0.5ng/mlのrhIL−15(CellGenix)の存在下で培養される。
【0045】
1乃至3日間のインキュベーションの後、T細胞は、5μg/mLの硫酸プロタミン(APP Pharmaceutical)、50U/mLのrhIL−2及び0.5ng/mLのrhIL−15と共に10%FCSを含有するX Vivol5において典型的には0.1乃至1.5に及ぶMOIにてレンチウイルスベクターで形質導入される。レンチウイルスによる形質導入の翌日に、完全なX−VIVO 15培地及びサイトカインを含有する新たに調製された培地/サイトカインのマスターミックスの培地がある量添加される(10μLのrhuIL−2及び0.5μLのrhuIL−15)。
【0046】
次に、培養液は、細胞密度を3×10
5から2×10
6の生細胞/mLで保つために要求されるX−Vivo15 10%FCS中5%CO
2、37℃にて、培養の毎週月曜日、水曜日及び金曜日のサイトカイン補充を有して(50U/mLのrhIL−2及び0.5ng/mLのrhIL−15の最終濃度で)維持された。
【0047】
CD3/CD28のDynabeadビーズの除去は、ビーズ刺激後の7日目から9日目までに行われる。Dynalビーズは、DynaMag−50又はMPCマグネットを使用して除去される。ビーズ除去後、細胞懸濁液の試料が、計数のために得られる。その数に基づいて、濃度が約0.5×10
6/mLに調整される。
【0048】
培養液は、十分な数の細胞が達成されるまで増やされ、典型的には8から18日間行われる。この時間の間、サイトカインの完全な置換がT細胞培養液に加えられる。12日目から開始し、その後、毎週月曜日、水曜日及び金曜日に、約0.5×10
6細胞/mLの濃度を維持するように計数される。
【0049】
最終的な収集及び凍結保存は以下のように進む。増殖した細胞が、臨床的な投与又は研究目的に要求される必要な生細胞数に達すると、細胞生成物は凍結保存される。細胞が計数され、培養下の試料が、マイコプラズマ試験のために収集される。残りの細胞は、4℃にて最大ブレーキをかけて20分間、1800 RPMで遠心分離される。細胞のない上澄みが除去され、さらに、細胞ペレット全てが穏やかにボルテックスされ、再懸濁され、Isolyte緩衝液(Braun)に組み合わされる。チューブは、4℃にて最大ブレーキをかけて20分間、1800 RPMで遠心分離される。細胞は、第2の洗浄のためにIsolyteにおいて再懸濁される。
【0050】
第2のIsolyteでの洗浄後、細胞のない上澄みが除去され、さらに、細胞ペレットが穏やかにボルテックスされ、適切な量の凍結保存培地、CryoStor(登録商標)5(BioLife Solutions)において再懸濁されて、細胞を適切な濃度にする。細胞は、約1℃/分で冷却することができる制御された冷却装置(例えば、Nalgene(登録商標)Mr.Frosty;Sigma−Aldrich)又は制御速度フリーザーシステム(Custom Biogenics)内に置くことによって凍結保存される。凍結手順の完了時に、1つ又は複数のカセット/バッグ及びクライオバイアルは、貯蔵のためにLN2フリーザー内に直ちに移される。
【実施例4】
【0051】
ビーズ刺激され、レンチウイルスで形質導入され且つ増殖されたT
CM細胞及びT
CM/SCM/N細胞の比較
CD62L+T
CMの集団又はCD62L+T
CM/SCM/Nの集団(ナイーブ、セントラルメモリー及び幹細胞様メモリーのT細胞を含む)のいずれかについて、CliniMACS/AutoMACS(商標)による濃縮を受け、その後、臨床的使用のために提案された方法を使用してビーズ刺激、及び、CD19Rを標的とするCARを発現するレンチウイルスであるCD19R(EQ)28Z−T2A−EGFRt_epHIV7又はIL−13Ralplaを標的とするレンチウイルスベクターであるIL13(EQ)BBZ−T2A−CD19t_epHIV7でレンチウイルス形質導入を行ったヒト末梢血単核細胞(PBMC)のex vivoでの増殖及び細胞表面表現型を評価するために研究を行った(ベクター及び発現したCARの詳細については特許文献1及び特許文献3を参照)。生細胞数のモニタリングによって増殖を評価し、さらに、フローサイトメトリー分析によって細胞表面表現型を評価した。
【0052】
<実験設計>:3人の別々のヒトドナーのPBMCから生じるキメラ抗原受容体(CAR)のT細胞生成物を、臨床的使用に適していると予想される方法論を使用して作製した。簡潔には、(本質的には実施例2において先に記載したように)PBMCから濃縮したT
CM細胞及びT
CM/SCM/N細胞を、CD3/CD28のビーズ刺激によって活性化し、さらに、CD19R(EQ)28Z−EGFRt_epHIV7又はIL13(EQ)BBZ−T2A−CD19t_epHIV7のレンチウイルスのいずれかで形質導入した。CD3/CD28のビーズを7〜9日後に除去し、次に、細胞増殖に要求される完全なX−VIVO15培地を添加して、T細胞培養物を応じて増殖させ、さらに、29日間まで維持した(細胞密度を0.3x10
6から2×10
6生細胞/mLに維持した)。サイトカインを、培養の毎週月曜日、水曜日及び金曜日に補充した。生細胞数をこの増殖プロセス中にモニターした。次に、最終的な細胞生成物を、例えばCD3等の細胞生成物の放出のために伝統的に使用されている表面マーカー、及び、形質導入マーカーとしての切断型EGFR(EGFRt)又は切断型CD19(CD19t)、並びに、T細胞マーカーCD4、CD8、CD27、CD28、CD45RA及びCD62Lについて評価した。
【0053】
<刺激、形質導入及び増殖の概要>:濃縮したT
CM細胞又はT
CM/SCM/N細胞を、CD3/CD28のビーズにより活性化させ、さらに、0.3から3.0感染多重度(MOI)にて、GMPグレードのCD19R(EQ)28Z−T2A−EGFRt_epHIV7又はGMPグレード若しくはリサーチグレードのIL13(EQ)BBZ−T2A−CD19t_epHIV7を用いてレンチウイルスで形質導入した。細胞を、50U/mLのrhIL−2及び0.5ng/mLのrhIL−15を有する完全なX−Vivo15培地における培養液内に入れた。次に、培養液を、細胞密度を0.3x10
6から2x10
6生細胞/mLに保つのに要求される完全なX−Vivol5培地を添加し、さらに、培養の毎週月曜日、水曜日及び金曜日にサイトカイン補充(rhIL−2及びrhIL−15)を行って維持した。ビーズ刺激の7乃至9日後、CD3/CD28のDynabeadsを、DynaMag−50磁石を使用して培養液から除去した。生細胞数をこの増殖プロセス中にモニターし、さらに、培養中及び凍結保存の最終日に生細胞の計数を記録した。様々な生成物が表2において列挙されている。
【0054】
【表2】
<フローサイトメトリー>:試料を、テーブルトップ遠心分離機を使用してFACS染色溶液(FSS)において洗浄し、FSSにおいて再懸濁させ、さらに、1つのサンプルあたり100μLを、予め標識された12x75mmFACSチューブ(1つの条件あたり1つのチューブ)内に等分した。必要量の抗体をそれぞれのFACSチューブに添加し、次に、チューブを4℃の暗所で30分間インキュベートした。場合によっては、試料を洗浄し、次に、続発の試薬としての蛍光色素結合ストレプトアビジンで染色した。インキュベーションの終わりに、各チューブをFSSにおいて2回洗浄し、さらに、250μlのFSSにおいて、又は、(6.9μLの保存液を25mLのFSSと混ぜ合わせることによって作製された)140μLのFSS及び70μLの希釈液のDAPIにおいて再懸濁させた。次に、試料を、FACS Calibur(Becton Dickenson)又はMACSQuant(Miltenyi)機器に流して分析した。免疫反応性細胞の割合を、FCS Expressソフトウェア(De Novo Software,Los Angeles,CA)を介して計算した。
【0055】
<生細胞数分析の結果>:ビーズ刺激、及び、CD19R(EQ)28Z−EGFRt_epHIV7を用いたレンチウイルス形質導入の後で、細胞生成物を、T細胞増殖を支持する条件下で増殖させた。増殖曲線が
図5において描かれており、さらに、最終的な細胞数、及び、生成物のそれぞれの総生細胞数に基づく増殖倍率(fold expansion)が、表3において描かれている。全体として、T
CM/SCM/N由来の細胞生成物の増殖倍率は、そのT
CM由来の対応物に類似していた。
【0056】
【表3】
<最終生成物のフローサイトメトリー分析>:ex vivoでの増殖後の細胞生成物のそれぞれのフローサイトメトリー分析により、最終的な凍結保存された細胞生成物の全てが、同一性については≧80%CD3、及び、効力については≧10%EGFRt又はCD19tという本発明者等の伝統的な生成物規格を通過するであろう(
図6A)ということが明らかになった。実際、各ドナーからのT
CM/SCM/N由来の生成物は、CD3についてもEGFRt/CD19tについても免疫反応性において、その対応するT
CM由来の生成物と非常に類似していた。
【0057】
他のT細胞マーカーのフローサイトメトリー分析(
図6A)により、全ての細胞生成物がCD4及びCD8のT細胞サブセットを有するけれども、T
CM/SCM/N由来のCAR T細胞株は、そのT
CM由来の対応物と比較してCD8細胞の割合が比較的高いということが明らかになった。T
CM由来の細胞生成物もT
CM/SCM/N由来の細胞生成物も、メモリー関連マーカーCD27、CD28及びCD62Lを発現した。しかし、CD27の発現は、概してT
CM/SCM/N由来の生成物において高かった。さらに、CD45RA発現レベルも、T
CM/SCM/N由来の生成物において有意に高かった。
【0058】
<結論>:まとめると、得られたこれらのデータは、T
CM−濃縮集団もT
CM/SCM/N−濃縮集団も、CD3/CD28のビーズ刺激、レンチウイルスでの形質導入、及び、in vitroでの増殖を行うことができるということを示している。T
CM及びT
CM/SCM/N由来の対応物間で増殖倍率は類似していたため、より多くのT
CM/SCM/Nの細胞数で開始する能力は、臨床的な使用に対して十分な細胞数に到達するためのより短い増殖時間を可能にし得るということに留意することが重要である。
【0059】
フローサイトメトリー分析により、T
CMの細胞集団もT
CM/SCM/Nの細胞集団も、類似の効率で形質導入され、EGFRt又はCD19t導入遺伝子を発現したということが明らかになった。フローサイトメトリー分析は、T
CMの細胞集団もT
CM/SCM/Nの細胞集団も、T細胞マーカーCD3、CD4、CD8だけでなく、T細胞メモリーマーカーCD27、CD28及びCD62Lを発現するということも確認した。T
CM/SCM/Nの集団において観察されたCD45RA+細胞のより高い割合は、選択プロセスにおいてT
CM細胞はCD45RAを枯渇したため、予想通りであった。
【実施例5】
【0060】
CD19R(EQ)28Z−T2A−EGFRt_epHIV7で形質導入した静脈内送達されたT
CMの細胞集団及びT
CM/SCM/Nの細胞集団におけるIn Vivoでの有効性
臨床的使用に適した方法を使用して、CD19を標的としたCARを発現するレンチウイルスベクター(CD19R(EQ)28Z−T2A−EGFRt_epHIV7レンチウイルスベクター)で形質導入し且つ増殖させた選択されていないPBMC、CD62L+T
CM細胞及びCD62L+T
CM/SCM/N細胞のin vivoでの有効性を評価するために、研究を行った。静脈内(iv)投与されたこれらの細胞のin vivoでの抗腫瘍の有効性を、緑色蛍光タンパク質(GFP)及びホタルルシフェラーゼ(ffLuc)レポーター遺伝子を発現するように操作されたCD19発現SUP−B15ヒト急性リンパ球性白血病の細胞株を使用して、免疫不全のNSGマウスにおいて調べた(PMID:22407828)。
【0061】
<実験設計>:CD19R(EQ)28Z−T2A−EGFRt_epHIV7を用いてレンチウイルスで形質導入され且つ21日間増殖させたT
CM由来又はT
CM/SCM/N由来のT細胞株を、この研究において使用した(上記の実施例2及び4を参照)。次に、静脈内投与される新たに解凍したCAR T細胞を、静脈内移植されるSup−B15細胞のin vivoでの増殖を制御するその能力について評価した。Xenogenイメージングによって測定した腫瘍負荷量も、末梢血のフローサイトメトリー分析によって測定したT細胞の残留性も調べた。
【0062】
<In Vivoでの異種移植研究の概要>:0日目に300ラドで雌のNSGマウス(10〜12週齢)に照射を行った。1日目にマウスをグループ(n=4)に分け、未処置のままにしたか、又は、2.5x10
6HD270由来のニセ形質導入されたPBMC(CARなし)、HD270 CD19R T
PBMC、HD270 CD19R T
CM又はHD270 CD19R T
CM/SCM/Nのいずれかを用いて静脈内(すなわち、尾静脈を介して)処置した。これは、0.5x10
6CAR+細胞のCD19R/EGFRt+T
PBMC、CD19R/EGFRt+T
CM又は0.625x10
6のCD19R/EGFRt+T
CM/SCM/Nの平均が各マウスに投与されていると解釈され、HD270 CD19R T
CM及びT
CM/SCM/N由来の細胞株の表現型分析によって定められる。2日目に、1つのCAR+T細胞GFPあたり2つの腫瘍細胞:ffLuc+Sup−B15腫瘍細胞を用いて、マウスに静脈内投与を挑戦させた。次に、このヒト急性リンパ球性白血病の細胞株の増殖を、Xenogenイメージング及びホタルルシフェラーゼ(ffLuc)フラックスの定量化(光子/秒)によって、時間の経過に伴いモニターした。41日目に、後眼窩出血を行い、さらに、MACSQuant機器及びFCS Expressソフトウェア(De Novo Software,Los Angeles,CA)を使用して、フローサイトメトリー分析によってヒトCD3発現T細胞の存在について血液を評価した。
【0063】
<In Vivoでの抗腫瘍の有効性の評価>:この研究の結果を描いている
図7A及び
図7Bにおいて、CD19R T
CM/SCM/N細胞は、ffLuc+Sup−Bl5腫瘍に対してより強い抗腫瘍活性を示したが、CD19R T
CM細胞の静脈内投与は一過性の治療効果しか示さなかったということが分かる。
【0064】
<末梢血におけるT細胞の分析>:これらのマウスにおける末梢血におけるT細胞の残留性を評価するために、フローサイトメトリー分析を、静脈内T細胞投与の40日後に採取した後眼窩出血に対して行った。
図8において描かれているように、CAR+T細胞は、T
CM/SCM/N細胞を受けたマウスにおいてこの時点でのみ検出可能であった。このCAR+ヒトT細胞の存在は、GFP発現SupB15腫瘍細胞の非存在と相関していた。
【0065】
これらの研究によって、in vivoでの抗腫瘍の有効性を、CD19R T
CM由来の細胞株でもCD19R T
CM/SCM/N由来の細胞株でも観察することができ、CD19R T
CM/SCM/N細胞処置マウスの抗腫瘍応答が、CD19R T
CM処置マウスの抗腫瘍応答より大きいということが実証されている。この有効性は、CD19R T
CM/SCM/N処置マウスの血液中のCAR+T細胞を検出する能力と部分的に相関した。
【実施例6】
【0066】
CD19R(EQ)28Z−T2A−EGFRt_epHIV7で形質導入されたT
CM細胞及びT
CM/SCM/N細胞のエフェクター活性
臨床的使用に適していると予想される方法を使用して、CD19R(EQ)28Z−T2A−EGFRt_epHIV7レンチウイルスベクターで形質導入し且つ増殖させたCD62L+セントラルメモリー(T
CM)細胞又はCD62L+T
CM/SCM/N細胞のCD19特異的な細胞溶解活性、脱顆粒及びサイトカイン生成を評価するために、研究を行った。細胞溶解活性を、フローサイトメトリーに基づく長期の死滅アッセイ及び5時間の脱顆粒アッセイを使用して評価した。サイトカイン生成を、刺激細胞との5時間の共培養後に、T細胞の細胞内染色によって評価した。
【0067】
<実験設計>:T
CM細胞及びT
CM/SCM/N細胞を、CD19R(EQ)28Z−T2A−EGFRt_epHIV7を用いてレンチウイルスで形質導入し、さらに、21日間まで増殖させた(実施例2及び4を参照)。これらの細胞生成物のCD19特異的エフェクター機能を、エフェクターT細胞との共インキュベーションの72時間後の標的細胞の減少を評価する長期の死滅アッセイ、及び、T細胞の細胞傷害活性のマーカーとしての細胞表面CD107a動員を評価する5時間の脱顆粒アッセイによって評価した。次に、5時間のin vitroでの刺激後の新たに解凍した最終細胞生成物によるサイトカイン生成の評価を、IFN−γについての細胞内染色のフローサイトメトリー分析によって行った。
【0068】
<長期の死滅アッセイの概要>:各T細胞生成物の試料を、アッセイの前日に解凍し、50U/mLのrhIL−2及び0.5ng/mLのrhIL−15の存在下で一晩休ませ、次に、72時間の死滅アッセイを行った。簡潔には、各T細胞株及び標的細胞株を計数し、さらに、1:1のCAR+T細胞対標的細胞の比で、96ウェルの組織培養処理した丸底プレート内に、具体的には、1つのウェルあたり10%FBSを有するX−VIVO15培地200μLにおいて25,000:25,000で播種した。72時間の培養後、細胞をトリプシン処理で回収し、低温のFACS緩衝液において洗浄し、次に、抗ヒトCD45で染色して、生死判別色素としてDAPIを用いてT細胞を検出した。試料をMACSQuant(Miltenyi)機器に流して分析し、生存可能な免疫反応性細胞の数を、FlowJoソフトウェア(FlowJo,LLC,Ashland,OR)を介して計算した。次に、100%に正規化された、ニセの形質導入されたエフェクター細胞共培養物と比較した場合の培養液中に残っているCD45陰性の前方散乱高腫瘍細胞の割合として、最終結果をグラフ化した。
【0069】
<脱顆粒アッセイ及び細胞内サイトカイン分析の概要>:各T細胞生成物の試料を新たに解凍し、次に、5時間の脱顆粒アッセイを行った。T細胞を計数し、さらに、細胞表面からのCD107aの再吸収を阻止するタンパク質輸送阻害剤であるGolgi Stopを含有する培地において再懸濁した。次に、T細胞を、96ウェルプレートにおいて(Golgi Stopと共に)腫瘍細胞と1:1の比で播種した。各ウェルに、CD107aに対する抗体を添加し、次に、プレートを37℃にて5時間インキュベートした。次に、各条件にさらなる抗体を添加して、CD45、CD4、CD8及びEGFRt導入遺伝子を染色した。次に、細胞を固定し、さらに、IFN−γ又はアイソタイプ対照抗体に特異的な抗体で染色するために透過処理した。試料を、MACSQuant(Miltenyi)機器に流して分析し、さらに、免疫反応性細胞の割合を、FlowJoソフトウェア(FlowJo,LLC,Ashland、OR)を介して計算した。
【0070】
<長期の死滅アッセイによる細胞溶解活性の決定>:CD19R(EQ)28Z−T2A−EGFRt_epHIV7で形質導入又はニセの形質導入されたT
CM細胞及びT
CM/SCM/N細胞をそれぞれ、72時間CD19陰性K562細胞又はCD19+SupB15細胞と共に蒔いた。結果が
図9において示されており、CD19R T
CM細胞ともCD19R T
CM/SCM/N細胞とも培養液における検出可能なSupB15標的の類似の減少を、そのそれぞれのニセの形質導入された対照と比較して示している。実際、このSupB15標的の減少は、K562標的で観察されたものよりも有意に大きく、この細胞溶解活性のCD19特異性をさらに支持している。
【0071】
<脱顆粒アッセイによるエフェクター活性の決定>:CD19R(EQ)28Z−T2A−EGFRt_epHIV7で形質導入又はニセの形質導入されたT
CM細胞及びT
CM/SCM/N細胞をそれぞれ、CD19陰性K562細胞又はCD19+SupB15細胞と共に蒔いた。結果が以下(
図10)に示されており、CD8+CD19R T
CM及びCD8+CD19R T
CM/SCM/N細胞は、SupB15細胞での刺激後に類似のCD19特異的脱顆粒(すなわち、CD107a発現)を示すということを実証している。この活性の抗原特異性は、CD19発現SupB15細胞によって脱顆粒するように刺激されていないニセの形質導入された細胞を調べることによってさらに証明されている(
図10)。
【0072】
<細胞内サイトカインアッセイによるエフェクター活性の決定>:CD19R(EQ)28Z−T2A−EGFRt_epHIV7で形質導入又はニセの形質導入されたT
CM細胞及びT
CM/SCM/N細胞をそれぞれ、CD19陰性K562細胞又はCD19+SupB15細胞と共に蒔いた。結果が
図11において示されており、CD8+CD19R T
CM及びCD8+CD19R T
CM/SCM/Nは、類似のCD19特異的細胞内IFN−γ特性を示すということを実証している。この活性の抗原特異性は、CD19発現SupB15細胞によってIFN−γを発現するように刺激されていないニセの形質導入された細胞を調べることによってさらに証明されている。
【0073】
これらのデータは、CD19R(EQ)C28Z−T2A−EGFRt_epHIV7で形質導入されたT
CM細胞もT
CM/SCM/N細胞も、CD19−発現標的細胞との共培養の後に細胞溶解活性、脱顆粒及びサイトカイン(すなわちIFN−γ)生成を示すということを確認した。
【実施例7】
【0074】
<IL13(EQ)BBZ−T2A−CD19t_epHlV7で形質導入したT
CM細胞及びT
CM/SCM/N細胞のエフェクター活性>
IL13Rα2を標的とするCARを発現するレンチウイルスベクターで形質導入したCD62L+T
CM細胞及びCD62L+T
CM/SCM/N細胞のin vivoでの有効性を評価するために、研究を行った。CARは、ヒトIL−13変異体を含み、レンチウイルスベクター(IL13(EQ)BBZ−T2A−CD19t_epHIV7)によって発現される。このベクターを発現する細胞集団を実施例4において先に記載したように調製し、ホタルルシフェラーゼ(ffLuc)レポーター遺伝子を発現するように操作されたIL13Rα2+初代低継代GBM腫瘍様塊の株PBT030−2を使用した免疫不全NSGマウスにおける神経膠芽腫のマウスモデルにおいて評価した。
【0075】
簡潔には、0日目に、雄NSGマウス(10〜12週齢)に、1×10
5ffLuc+PBT030−2細胞を左右両側の半球において定位的に注射し、6日間生着させた。次に、マウスの群を未処置のままにしたか、又は、1×10
6CAR+IL13(EQ)BBζ/CD19t+T
CM/SCM/N、CAR+IL13(EQ)BBζ/CD19t+T
CM、ニセの形質導入されたT
CM/SCM/N又はニセの形質導入されたT
CMで処置した。PBT030−2腫瘍増殖を、Xenogenイメージング及びffLucフラックス(光子/秒)の定量化によって時間の経過に伴いモニターした。
【0076】
図12において示されているように、IL−IL13Rα2に対して作られたCARで形質導入されたT
CM/SCM/Nは、マウスの腫瘍内神経膠芽腫モデルにおける腫瘍増殖の抑制に関して及び生存に関して、同様に形質導入されたT
CMよりも優れていた。