特許第6902098号(P6902098)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6902098
(24)【登録日】2021年6月22日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】遅延放出送達系及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/11 20060101AFI20210701BHJP
   A61K 8/894 20060101ALI20210701BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20210701BHJP
   A61Q 13/00 20060101ALI20210701BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20210701BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20210701BHJP
   A61K 9/50 20060101ALI20210701BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20210701BHJP
【FI】
   A61K8/11
   A61K8/894
   A61K8/25
   A61Q13/00 102
   A61Q5/00
   A61Q19/00
   A61K9/50
   A61K47/34
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-522502(P2019-522502)
(86)(22)【出願日】2017年9月22日
(65)【公表番号】特表2019-537579(P2019-537579A)
(43)【公表日】2019年12月26日
(86)【国際出願番号】US2017052933
(87)【国際公開番号】WO2018080679
(87)【国際公開日】20180503
【審査請求日】2019年5月17日
(31)【優先権主張番号】62/413,254
(32)【優先日】2016年10月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513161449
【氏名又は名称】イーエルシー マネージメント エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー,ウィルソン エー.
【審査官】 星 浩臣
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−528736(JP,A)
【文献】 特開2014−073971(JP,A)
【文献】 特開2009−084232(JP,A)
【文献】 特開2007−269690(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/005548(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
B01J 20/00−20/34
C11B 1/00−15/00
C11C 1/00−5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遅延放出送達系を調製する方法であって、
(a)表面細孔を有しており、かつその中に吸収された液体を有する、少なくとも1種の親水性コア粒子を用意する工程と、
(b)(a)の前記粒子と液状ポリマーとを、前記少なくとも1種の粒子が前記液状ポリマーによってカプセル封入されて、少なくとも1種のポリマーをコーティングした処理済み粒子が形成されるほど十分な条件下で、接触させる工程であって、前記液状ポリマーが、疎水性主鎖及び複数の親水性ペンダント基を有しており、前記親水性ペンダント基に隣接する前記親水性コア粒子上の表面細孔のうちの少なくとも一部が、水の存在下で閉塞され、水の非存在下で閉塞が解かれ、前記処理済み粒子上のポリマーコーティングの厚みが10nm〜30nmであり、前記接触させる工程が、混合、スプレーコーティング又は音波処理を含む工程と、
(c)化粧品として許容可能な水含有ビヒクル中に、前記少なくとも1種の処理済み粒子を分散させる工程と、
を含む、遅延放出送達系を調製する方法。
【請求項2】
前記ポリマーがシリコーン主鎖を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリマーがポリグリセロールペンダント基により修飾されている、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1種の親水性コア粒子が、100nm〜50μmの平均粒子サイズを有するマイクロスフィアである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記マイクロスフィアに、前記粒子の前記表面から前記コアまで広がるマイクロ細孔のネットワークが設けられている、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記液体が、水系、油系、水中油型エマルション、水中シリコーン型エマルション、油中水型エマルション、シリコーン中水型エマルション又は複数のエマルションである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記液体が、フレグランスオイル、肌有益活性物、頭皮有益活性物、毛髪有益活性物、又はそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の成分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記液体及び前記少なくとも1種の親水性コア粒子が適合可能な表面張力を有する、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレグランス又は肌、頭皮及び毛髪の有益成分の持続送達系として作用することができる粒子、該粒子を調製する方法、及び該粒子を含有する組成物に関する。より詳細には、本粒子は、フレグランス又は活性物を吸収する、及び長期間をかけて、フレグランス又は活性物を徐々に放出する。
【背景技術】
【0002】
フレグランスは、さまざまな製品の使用に際し、消費者の楽しみを高めるために、そのような製品に使用される。肌、頭皮又は毛髪への施用後に、長期間、その香りを維持する製品を製造する望ましさが、長い間、認識されてきた。こうした方向に多数の努力がなされているにも関わらず、肌、頭皮及び毛髪用の大部分の市販製品は、最初は、強力な心地よい香りを有するが、残念なことに、施用後、数分以内にその芳香を失う傾向がある。この問題を解決するためになされた試みとしては、製品に取り込ませるためのフレグランスを含浸した無機担体を使用することが挙げられる。欧州特許第0332259(A)号は、シリカ上に香料を吸着させることによって作製された香料粒子を開示している。米国特許第5,336,665号は、特定の細孔体積及び細孔径を有しており、かつ粒子に吸着させた香料を有する、アルミノシリケートなどの、自由流動性の疎水性多孔性無機疎水性担体粒子(hydrophobic porous inorganic hydrophobic carrier particle)を開示している。塩化ナトリウム顆粒の凝集物からなり、かつ顆粒間の細孔中に吸収された芳香性オイルを有する、芳香性物質が、米国特許第5,246,919号に開示されている。
【0003】
コーティング剤及びマイクロカプセル封入システムの使用などにより、フレグランスの装填量を増加させることなく、身体のケラチン表面にフレグランスが残留する時間量を増大させる努力がなされてきた。フレグランスを含有する付着性表面コーティング剤を有する、複数の顆粒化尿素樹脂ビーズから作製される芳香性ビーズ組成物が、米国特許第4,020,156号に記載されている。コア粒子上の下層堆積物からの活性物の制御放出を可能にする粒子のための不連続表面コーティング剤が、米国特許出願公開第2006/0153889号に記載されている。
【0004】
マイクロ封入化技術は、当分野で周知であり、使用時間まで、保護被覆して保護を必要とするコア物質を封入するよう一般に指向されている。一般に、高い粘度の流体は、フレグランス期間を延長する傾向がある担体から、よりゆっくりと分散される一方、より粘度の低い流体は、より高い蒸発速度のために、香りの強度を増強する。時間放出マイクロカプセル剤は、制御された速度で、そのコア物質を放出する。カプセル封入された物質は、保護性マイクロカプセル剤から直ちに放出されないので、上記の結果は、カプセル封入された物質が一層長い有効期間を有するということである。付着を改善するため、陽イオン性ポリマーにより更に処理された、ポリマーにカプセル封入された液状フレグランスが、米国特許第7,294,612号に記載されている。米国特許第6,245,733号に記載されているとおり、溶融マイクロスフィアのガラス前駆体凝集物は、微小毛細管作用を使用して、ガラス前駆体凝集物の重量の2倍超まで油系又はアルコール系液体を迅速に取り込む。室温では固体であるが、組成物を肌表面に塗ると破裂し、肌への施用時に融解する熱軟化性物質の脆弱なカプセルによってカプセル封入された化粧品用物質が、米国特許第7,622,132号に記載されている。
【0005】
上記にもかかわらず、長期間にわたり肌、頭皮及び毛髪へのフレグランスの長期間にわたる、連続放出期間の延長を実証する、フレグランスが付与された製品が継続的に依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本発明の一態様によれば、少なくとも1種の処理済み粒子を含む遅延放出送達系が提供される。
【0007】
本発明のこの態様の一実施形態では、処理済み粒子は、表面細孔及び内部に含まれている液体を有する親水性コア粒子を含む。親水性コア粒子は、疎水性主鎖及び複数の親水性ペンダント基を有するポリマーによって、更にカプセル封入されている。親水性ペンダント基に隣接する表面細孔の少なくとも一部は、水の存在下で閉塞されており、水の非存在下で、閉塞が解かれている。
【0008】
本発明のこの態様の更なる実施形態では、本処理済み粒子は、多孔性表面を有する多孔性コア粒子、及び内部に吸収されている液体を含む。液体と多孔性コア粒子との重量比は、約400:1〜約800:1などの少なくとも約400:1である。
【0009】
本発明の更なる態様によれば、遅延放出送達系を調製するための方法が提供される。
【0010】
本発明のこの態様の一実施形態では、遅延放出送達系を調製するための方法は、以下:
(a)表面細孔を有しており、かつその中に吸収された液体を有する、少なくとも1種の親水性コア粒子を用意する工程と、
(b)(a)の粒子と液状ポリマーとを、少なくともこの1種の粒子がこの液状ポリマーによってカプセル封入されて、少なくとも1種の処理済み粒子が形成されるに十分な時間、接触させる工程であって、液状ポリマーが、疎水性主鎖及び複数の親水性側鎖を有しており、親水性側鎖に隣接する親水性コア粒子上の表面細孔のうちの少なくとも一部が、水の存在下で閉塞され、水の非存在下で閉塞が解かれる工程と、
(c)化粧品として許容可能な水含有ビヒクル中に、少なくとも1種の処理済み粒子を分散させる工程と、を含む。
【0011】
本発明のこの態様の更なる実施形態によれば、遅延放出送達系を調製するための方法は、以下:
(a)多孔性コア粒子を用意する工程と、
(b)多孔性コア粒子と液体とを、液体と多孔性コア粒子との重量比が少なくとも約400:1で、液体がコア粒子内に吸収されるのに十分な条件下で接触させる工程と、
を含む。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(本発明の好ましい実施形態の詳細説明)
本発明の遅延放出送達系は、内部に吸収された液体を有する、多孔性粒子を含む。
【0013】
遅延放出送達系は、ポリマーによってカプセル封入されている表面細孔を有する親水性コア粒子を含む、少なくとも1種の処理済み粒子を含む。ポリマーは、疎水性主鎖及び複数の親水性ペンダント基を有する。このポリマーは、ポリマー上の親水性ペンダント基に隣接して位置している、粒子表面上の少なくとも一部の細孔が、水の存在下で閉塞され、水の非存在下で閉塞が解かれることを除いて、処理済み粒子の表面上の細孔を閉塞している。水含有環境の存在下では、水分子は、親水性ペンダント基に引きつけられて、該ペンダント基に隣接する表面細孔の少なくとも一部を閉塞するので、処理済み粒子内部に含まれている液体は、この粒子中に保持されている。
【0014】
処理済み粒子は、保管中、又は水含有製品中では、水含有基剤中に懸濁されているとき、完全性を維持する。肌に塗られると、例えば、製品中の水が蒸発するので、ポリマー上の親水性ペンダント基に隣接している細孔を閉塞している水分子は細孔から離れて、処理済み粒子中に含まれている液体が、ゆっくりと持続的に細孔から徐々に放出されるのが可能となる。
【0015】
液体を吸収することができるいかなる親水性多孔性コア粒子も、遅延放出送達系の調製に使用されてもよい。通常、このような粒子は、以下に限定されないが、シリカ、シリル化シリカ、及びケイ酸カルシウムを含めた、無機物質から形成される。これらの無機物質から形成されたマイクロスフィア、特に親水性マイクロスフィアが、本発明の遅延放出送達系において使用するのに好ましい。本発明において有用な親水性マイクロスフィアは、天然品又は合成品であってもよく、約100nm〜約50μmの平均粒子サイズを有する。オイル吸収に高い親和力を有するマイクロスフィアが、特に好ましい。このようなマイクロスフィアの1つは、Tomita Pharmaceutical Co.,Ltd.からFlorite(登録商標)として入手可能な、約29μMの粒子サイズを有するケイ酸カルシウムから形成される。この合成物質は、著しく深い大きな細孔サイズ及び体積、並びに優れた液体吸収性を有する、花弁状の結晶構造を有する。他の無機物質と比較すると、このケイ酸カルシウムは、その重量の少なくとも5倍のオイル及び水を吸収する。100gのこのケイ酸カルシウム粉末によって、650gのオイルが吸収される。Silica shells Jr.などのシリカから形成されるマイクロスフィアも有用である。KOBOから入手可能なこれらのマイクロスフィアは、約3μMの粒子サイズを有しており、100gのシリカ粉末あたり400〜600gのオイルを吸収する。同様に、CabotからCAB−O−SIL TS−530として入手可能な、ヒュームドシリカである、シリル化シリカから形成されたマイクロスフィアも有用である。シリカは、ヘキサメチルジシラザンにより処理される。この処理は、表面ヒドロキシル基の多数を、シリカの疎水性を高めるトリメチルシリル基により置き換えるものである。
【0016】
本発明の遅延送達系において有用なポリマーは、疎水性主鎖及びペンダント親水性基又は側鎖を有する。ポリマーの主鎖は、液体が充填されている多孔性粒子の表面に良好に付着するほどに十分な疎水性である。親水性側鎖は、ブラシの剛毛のように挙動する。それらの親水性側鎖は、ポリマー主鎖に沿って長く好適に間隔が設けられて、これらの側鎖は、水を引きつけるだけでなく、水を捕捉して保持することが可能となる。特に、好ましいポリマーは、シリコーン主鎖を有するものである。シリコーンは、多孔性粒子に良好に付着し、親水性側鎖の添加により修飾され得る。このような好ましいポリマーの1つは、ポリグリセロール側鎖を有するシリコーン主鎖を有する。ポリマーのシリコーン主鎖又は疎水性側は、多孔性粒子表面に付着し、細孔中に固定される。このポリマーは、オイル含有液体が充填された親水性多孔性粒子に特に良好に付着する。細孔中のオイルにより、親水性粒子は疎水性粒子のように挙動するようになり、その結果、ポリマーは粒子表面に良好に付着することが可能となる。ポリグリセロール側鎖は、ポリマーの親水性側を形成し、マイクロスフィア表面に付着しない。本発明のポリマーをコーティングした処理済み粒子が水含有基剤中で分散されると、この基剤中の水分子は、側鎖に引きつけられる。水分子は上記の側鎖と水素結合し、各粒子を取り囲む。水分子は、側鎖がポリマー主鎖から延在する箇所において、このポリマー中の空間を閉塞する。側鎖の数が多くなるほど、より多量の水が処理済み粒子と会合する。処理済み粒子を含有した水含有製品が、肌に塗られると、水が処理済み粒子を含有する製品から蒸発する。処理済み粒子と会合している水は、蒸発しない。このような水分子が、一旦、シリコーン主鎖中の孔を閉塞させる上でもはや、利用不可能となると(側鎖が位置している場所において)、これらの領域の既に閉塞された細孔が露出されて、処理済み粒子からフレグランスが出始める。
【0017】
周囲湿度のレベルは、液体が充填されている処理済み粒子を含有する製品からの水の蒸発に影響を及ぼし得る。周囲湿度が高いほど、水の蒸発が遅いために、液体の放出が遅くなる。
【0018】
処理済み粒子中により多くの液体が捕捉されているほど、液体、例えばフレグランスオイル含有液体は、放出に時間がかかり、肌上での香りの期間が長くなる。液体の拡散係数もやはり、放出時間に影響を及ぼすであろう。
【0019】
非適合性ビヒクル中の処理済み粒子を懸濁させることにより、粒子細孔内に捕捉されている液体の放出を更に遅延させることができる。例えば、フレグランスオイルを含有している処理済み粒子は、保管用の水性基剤中、又は水含有製品中で分散されていてもよい。
【0020】
例えばフレグランスオイルや、したがって肌上でのフレグランスの持続時間など、液体の制御放出に影響を及ぼすと予期される別の要因には、多孔性粒子上のポリマーコーティング剤の厚みが挙げられる。ポリマーコーティング剤は疎水性であるため、水が一旦、肌用製品から蒸発すると、肌上のオイルは、処理済み粒子上のコーティング剤をゆっくりと溶解し、これにより、液体が抜け出すのが可能となる。ポリマーの厚みが厚いほど、捕捉されている液体の放出期間は長くなるであろう。
【0021】
同様に、処理済み粒子が配合される製品中のオイル相の量は、含有された液体の放出期間の調節にやはり影響を及ぼすであろう。水が、一旦、製品から蒸発すると、製品中のオイルは、疎水性ポリマーコーティング剤を徐々に溶解し始め、粒子からの液体の持続放出をもたらす。製品中のオイル相の量が少ないほど、液体の放出は遅くなる。
【0022】
粒子を含有している製品中の液体含有処理済み粒子の量もまた、この製品が施用される肌上のフレグランスの期間に影響を及ぼすであろう。
【0023】
親水性コア粒子に吸収されることが可能ないずれの液体も、本遅延放出送達系の調製に使用され得る。液体は、水系、油系、水中油型エマルション、水中シリコーン型エマルション、油中水型エマルション、シリコーン中水型エマルション又は複数のエマルションであってもよい。好ましくは、液体は、フレグランスオイル、肌、頭皮又は毛髪の有益活性物、及びそれらの組合せを含有するものから選択されよう。
【0024】
本遅延放出送達系は、以下:
(a)表面細孔及び内部に吸収された液体を有する、少なくとも1種の親水性コア粒子を用意する工程と、
(b)(a)の粒子と液状ポリマーとを、この少なくとも1種の粒子がこの液状ポリマーによってカプセル封入されて、少なくとも1種の処理済み粒子が形成されるほど十分な条件下で、接触させる工程であって、液状ポリマーが、疎水性主鎖及び複数の親水性側鎖を有しており、親水性側鎖に隣接する親水性コア粒子上の表面細孔のうちの少なくとも一部が、水の存在下で閉塞され、水の非存在下で閉塞が解かれる工程と、
(c)化粧品として許容可能な水含有ビヒクル中に、少なくとも1種の処理済み粒子を分散させる工程と、
によって調製することができる。
【0025】
親水性コア粒子は、上記で議論されているとおり、内部に液体を吸収することができる、任意の親水性多孔性粒子であってもよい。
【0026】
親水性コア粒子に吸収されることが可能ないずれの液体も、上記で議論されているとおり、本遅延放出送達系の調製に使用され得る。液体は、任意の好適な当分野において公知の方法によって、少なくとも1種の親水性コア粒子に吸収され得る。
【0027】
液体充填された処理済み粒子とポリマーとを接触させる工程は、以下に限定されないが、混合、スプレーコーティング及び音波処理のうちの少なくとも1つを含めた、コーティング剤を粒子に施すための、当業者に公知の任意の好適な方法を使用して実施することができる。
【0028】
ポリマーによって液体充填コア粒子をカプセル封入する好ましい方法は、音波処理の使用によるものである。液体充填粒子の平均サイズ(例えば、フレグランスオイル含有液体を充填した3μmシリカ粒子)は、透過型電子顕微鏡(Transmission Electronic Microscopy、TEM)によって測定される。70%の水、28%の液体充填粒子及び2%の液状ポリマーを、容器中で混合してスラリーを形成する。次に、Sonicor Instrument Co.から入手可能なものなどの、超音波プローブを使用して、このスラリーを、25℃、20kHzとなる中程度の強度で、30分間、音波処理して、濃厚なコロイド状懸濁液にする。粒子を沈殿させて、未結合ポリマー物質を除去するため、1000rpmで15分間、この懸濁液を遠心分離にかける。得られた混合物を脱イオン水で洗浄し、この洗浄手順を3回、繰り返す。音波処理後に再度、TEMを使用して、処理済み粒子上のポリマーコーティングの均質性及び厚みを測定する。ポリマーコーティングの厚みは、ポリマーを細孔に固定すると同時に、液体の放出に悪影響を及ぼすことが予期され得るほどの厚すぎるコーティングを回避することを可能にする量となろう。ポリマーの厚みは、好ましくは、約10nm〜約30nmの範囲になろう。約10nm未満のコーティングでは、多孔性粒子は均一にコーティングされないと予期される一方、約30nmを超える厚みは、処理済み多孔性粒子からの液体の放出が、実質的に阻止されることが予期され得る。液体の放出を活性化すると思われる、処理済み粒子の脱水を防止するため、処理済み粒子を、次に、約70重量%の水に浸漬する。
【0029】
本発明の遅延放出送達系において使用するのに好適なポリマーとしては、以下に限定されないが、上記で議論されているもののいずれかが挙げられる。
【0030】
本発明の更なる実施形態では、遅延送達系は、多孔性表面を有するコア粒子及びこのコア粒子に吸収されている液体を含む少なくとも1種の処理済み粒子を含む。液体の重量とコア粒子の重量との比は、少なくとも約400:1である。より好ましくは、この比は、401:1〜799:1、及びその中の任意の範囲を含み、その間の任意の比を含む、約400:1〜約800:1の間である。
【0031】
液体を吸収することができるいかなる多孔性粒子も、上記で議論したとおり、本遅延放出送達系の調製に使用されてもよい。
【0032】
本遅延放出送達系は、以下:
(a)多孔性コア粒子を用意する工程と、
(b)多孔性コア粒子と液体とを、液体と多孔性コア粒子との重量比が少なくとも約400:1で、液体が多孔性コア粒子内に吸収されるのに十分な条件下で接触させる工程と、
によって調製することができる。
【0033】
遅延放出送達系を調製するためのこの方法において有用な多孔性コア粒子としては、内部に液体を吸収することができる、任意の多孔性粒子を挙げることができる。有用な多孔性粒子としては、以下に限定されないが、上記で議論されている親水性粒子を挙げることができる。
【0034】
液体は、コア粒子と液体とを、少なくとも100psiの圧力で少なくとも30分間、接触させることにより、コア粒子に吸収される。より好ましくは、使用される圧力は、101〜999psi、及びその範囲内の任意の整数(300psi、500psi、700psiなど)を含めた、100psiより高く約1000psiまでの範囲にあり、その間の任意の値を含む。接触時間は、約1時間など、約30分間から最大約2時間までの任意の時間であってもよい。接触工程は、少なくとも1回、例えば、1〜3回、繰り返されてもよい。圧力が高いと、粒子中の細孔が拡張し、これにより、粒子はより多量の液体を保持し、やはりまた細孔内に液体を押し込むことが可能となる。所望量の液体吸収を達成するために必要な圧力及び時間は、液体の密度に比例して増大する。一般に、多孔性粒子及び吸収されることになる液体は、多孔性粒子対液体の比が約1:5〜約1:10で混合され、得られたスラリーは、高圧槽に移送される。次に、このスラリーに、少なくとも30分間、及び最大で約2時間、高圧が施される。
【0035】
この方法は、上記に記載されているポリマーコーティング剤中に処理済み粒子をカプセル封入する工程を更に含むことができる。
【0036】
多孔性コア粒子(例えば、マイクロスフィア)による液体の吸収は、液体の表面張力と多孔性粒子の表面張力との適合により促進されることがある。液体の表面張力は、約30〜72ダイン/cmの範囲にあることができる。例えば、フレグランスオイルを含有している液体などの疎水性液体は、約30〜45ダイン/cmの範囲の表面張力を有することができる。フレグランスオイルの表面張力を改変するために、希釈剤が混合されてもよい。フレグランスオイルなどの疎水性液体を含有している多孔性粒子は、約40〜70ダイン/cmの範囲の表面張力を通常、有するであろう。疎水性主鎖、及び親水性側鎖又はペンダント基を有するポリマーが、液体含有多孔性粒子上にコーティングされているある種の実施形態では、表面張力が改変される。その場合、コーティングされた粒子の表面張力は、製品の水相に処理済み粒子が分散するのを確実とするため、約60〜72ダイン/cmの範囲になろう。上で議論したとおり、水が水含有製品から蒸発すると、多孔性粒子中に含まれている液体の放出が活性化されよう。表面張力は、この目的のため、当分野において公知の任意の方法によって測定され得る。液体の表面張力の測定に有用な機器の一例は、Krussから入手可能なForce Tensiometer−K100である。
【0037】
特定の液体、例えば多孔性粒子に吸収されることになるフレグランスオイルを含有する液体に必要な圧力及び時間を決定する方法の1つは、共焦点レーザ走査型顕微鏡(confocal laser scanning microscopy、CLSM)を使用することである。試料は、フレグランスオイルと蛍光色素、例えばナイルレッドとを混合すること、希釈剤に色素含有オイルを配合すること、及びさまざまな圧力及び時間の条件下で、この液体とコア粒子とを混合することによって調製される。液体含有マイクロスフィアの各調製済み試料をマイクロスライド上に置いて、共焦点顕微鏡で検査する。発光/反射光が、光電子増倍管によって電気信号に伝送され、コンピュータのモニタスクリーン上に表示される。この方法により、フレグランスオイルによって占有された表面積の測定、及びその体積の数学的算出が可能となる。
【0038】
コア粒子に吸収されることが可能ないずれの液体も、上記で議論されているとおり、本遅延放出送達系の調製に使用され得る。希釈剤中に、コア粒子によって吸収されることになるフレグランス又は活性物を含有している液体は、親水性であってもよく、又は疎水性であってもよい。多孔性粒子中の液体の最適装填量に関して上記で議論したとおり、液体及びコア粒子の表面張力が適合するべきである。例えば、フレグランスオイルの表面張力を改変してコア粒子の表面張力に一層適合させるためには、フレグランスオイルは、1種以上の希釈剤と混合されてもよい。
【0039】
本発明中の使用に好適なフレグランスとしては、非限定的に、芳香性オイル、植物抽出物、合成フレグランス又はそれらの混合物を含めた、フレグランスの組合せ物のうちの任意のフレグランスが挙げられ、これらは、本発明の遅延放出送達系と適合可能であり、かつこの系にカプセル封入可能であり、更にまた使用されるカプセル封入過程と適合可能である。好適なフレグランスとしては、以下に限定されないが、果実、花及びハーブ、並びにエッセンシャルオイルを含むオイルに由来するものが挙げられる。好適なフレグランス源は、Poucher’s Perfumes Cosmetics and Soaps,Tenth Edition,Hilda Butler,2000に見出される。
【0040】
処理済み粒子は、ポリマー中に封入されているか否かにかかわらず、化粧品として許容可能なビヒクル中で懸濁され得る。このような化粧品として許容可能なビヒクルは、水系、油系、水中油型エマルション、水中シリコーン型エマルション、油中水型エマルション、シリコーン中水型エマルション又は複数のエマルションとすることができる。ポリマー中でカプセル封入された処理済み粒子の場合、ビヒクルは水を含有しているであろう。ビヒクルは、化粧品として、更に化粧品として許容可能な肌、頭皮又は毛髪の有益成分を含んでもよい。
以下は、本発明の実施形態の一つである。
(1)遅延放出送達系を調製する方法であって、
(a)表面細孔を有しており、かつその中に吸収された液体を有する、少なくとも1種の親水性コア粒子を用意する工程と、
(b)(a)の前記粒子と液状ポリマーとを、前記少なくとも1種の粒子が前記液状ポリマーによってカプセル封入されて、少なくとも1種の処理済み粒子が形成されるほど十分な条件下で、接触させる工程であって、前記液状ポリマーが、疎水性主鎖及び複数のペンダント基を有しており、前記親水性ペンダント基に隣接する前記親水性コア粒子上の表面細孔のうちの少なくとも一部が、水の存在下で閉塞され、水の非存在下で閉塞が解かれる工程と、
(c)化粧品として許容可能な水含有ビヒクル中に、前記少なくとも1種の処理済み粒子を分散させる工程と、
を含む、遅延放出送達系を調製する方法。
(2)前記接触させる工程が、混合、スプレーコーティング又は音波処理を含む、(1)に記載の方法。
(3)前記ポリマーがシリコーン主鎖を含む、(1)に記載の方法。
(4)前記ポリマーがポリグリセロールペンダント基により修飾されている、(3)に記載の方法。
(5)前記少なくとも1種の親水性コア粒子が、約100nm〜約50μmの平均粒子サイズを有するマイクロスフィアである、(1)に記載の方法。
(6)前記マイクロスフィアに、前記粒子の前記表面から前記コアまで広がるマイクロ細孔のネットワークが設けられている、(5)に記載の方法。
(7)前記液体が、水系、油系、水中油型エマルション、水中シリコーン型エマルション、油中水型エマルション、シリコーン中水型エマルション又は複数のエマルションである、(1)に記載の方法。
(8)前記液体が、フレグランスオイル、肌有益活性物、頭皮有益活性物、毛髪有益活性物、又はそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の成分を含む、(1)に記載の方法。
(9)前記液体及び前記少なくとも1種の親水性コア粒子が適合可能な表面張力を有する、(1)に記載の方法。
(10)(1)に記載の方法により調製された遅延放出送達系。
(11)(1)に記載の方法により調製された遅延放出送達系を含む、水含有組成物。