特許第6902099号(P6902099)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6902099完全なままの個別注射バイアル解放ツールと共に使用するための液剤移動装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6902099
(24)【登録日】2021年6月22日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】完全なままの個別注射バイアル解放ツールと共に使用するための液剤移動装置
(51)【国際特許分類】
   A61J 1/20 20060101AFI20210701BHJP
【FI】
   A61J1/20 314C
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-524256(P2019-524256)
(86)(22)【出願日】2017年11月29日
(65)【公表番号】特表2020-500582(P2020-500582A)
(43)【公表日】2020年1月16日
(86)【国際出願番号】IL2017051299
(87)【国際公開番号】WO2018104930
(87)【国際公開日】20180614
【審査請求日】2020年6月2日
(31)【優先権主張番号】249408
(32)【優先日】2016年12月6日
(33)【優先権主張国】IL
(73)【特許権者】
【識別番号】506361719
【氏名又は名称】ウエスト・ファーマ.サービシーズ・イスラエル,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】デネンバーグ,イゴール
【審査官】 村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】 特表2015−526235(JP,A)
【文献】 特開2013−248122(JP,A)
【文献】 特表2018−500132(JP,A)
【文献】 特開2013−066748(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0112297(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/20
A61M 5/162
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液剤移動装置であって、薬剤を収容した、端部が閉じたバイアル管、無穿孔の注射バイアルストッパによって塞がれた頂部開口を有する管状のバイアル頂部、および最上部注射バイアル表面を有する、初めは無穿孔の完全なままの個別注射バイアル、ならびにハサミのような圧縮を加えて前記液剤移動装置から無穿孔の完全なままの個別注射バイアルを解放するための、対向する1対の内向き突出部を備えた完全なままの個別注射バイアル解放ツール、と共に使用するための液剤移動装置であって、
(a)長手方向のバイアルアダプタ中心線を有する一体型伸縮式バイアルアダプタであって、
i)最上部の横向き環状内側バイアルアダプタ本体壁部と、最下部のバイアル頂部スリーブリムを有する下方懸架バイアル頂部スリーブとを備えた、逆さまになったカップの形状を有する内側バイアルアダプタ本体であって、
前記内側バイアルアダプタ本体が、前記内側バイアルアダプタ本体を前記バイアル頂部に伸縮式にスナップフィットさせた際に前記バイアル頂部を受けるためのバイアル頂部空洞の境界を定め、
前記バイアル頂部スリーブが、バイアル頂部スリーブ主囲繞部と、前記バイアル頂部スリーブ主囲繞部に対して枢動可能な、対称な位置にある1対のバイアル頂部保持部材とを有し、したがって、それぞれの前記バイアル頂部保持部材が、バイアル頂部保持部材近位部分およびバイアル頂部保持部材遠位部分を有し、
それぞれの前記バイアル頂部保持部材遠位部分が、前記最下部のバイアル頂部スリーブリムのほうに、前記初めは無穿孔の完全なままの個別注射バイアルへの前記内側バイアルアダプタ本体の前記伸縮式スナップフィットの際に前記バイアル頂部の下にスナップフィットする、半径方向内向きのバイアル頂部保持突出部を有し、
前記対称な位置にある1対のバイアル頂部保持部材が、前記バイアル頂部スリーブ主囲繞部に対して枢動可能であり、したがって、前記長手方向のバイアルアダプタ中心線に向かって、前記対称な位置にある1対のバイアル頂部保持部材近位部分に前記ハサミのような圧縮を加えることにより、前記対称な位置にある1対の半径方向内向きのバイアル頂部保持突出部が、前記長手方向のバイアルアダプタ中心線から遠ざかる、内側バイアルアダプタ本体、
ii)最上部の横向き外側バイアルアダプタ本体壁部と、下方懸架裾部とを備えた、逆さまになったカップの形状を有する外側バイアルアダプタ本体であって
前記外側バイアルアダプタ本体が、圧縮前高さH1を有する初期の圧縮前状態から圧縮高さH2を有する最終圧縮状態へと前記一体型伸縮式バイアルアダプタを圧縮した際に前記内側バイアルアダプタ本体を内部にぴったりと伸縮式に受けるための内側バイアルアダプタ本体空洞の境界を定め、H1>H2であり、
前記最上部の横向き外側バイアルアダプタ本体壁部が、近位穿孔カニューレ開口と、前記バイアル管と流体連通するように前記注射バイアルストッパを穿孔するための遠位穿孔カニューレ先端とを備えた下方懸架穿孔カニューレを有する、外側バイアルアダプタ本体、ならびに
iii)前記バイアルアダプタを不可逆的に前記最終圧縮状態でクランプするためのクランプ装置を含み、
前記バイアルアダプタは、前記圧縮前状態では、前記遠位穿孔カニューレ先端が前記無穿孔の注射バイアルストッパの上に重なり、前記対称な位置にある1対のバイアル頂部保持部材近位部分が、前記内側バイアルアダプタ本体から前記無穿孔の完全なままの個別注射バイアルを解放するための前記ハサミのような圧縮のためにアクセス可能であり、前記最終圧縮状態では、前記遠位穿孔カニューレ先端が、前記バイアル管と流体連通するように前記注射バイアルストッパを穿孔し、前記下方懸架裾部が、前記対称な位置にある1対のバイアル頂部保持部材近位部分へのアクセスを不可能にする、ように構成される、一体型伸縮式バイアルアダプタと、
b)前記近位穿孔カニューレ開口と流体連通した液体移動ポートと
を備える、液剤移動装置。
【請求項2】
前記下方懸架裾部が、対称な位置にある1対の個別注射バイアル解放貫通アパーチャを含み、前記対称な位置にある1対の個別注射バイアル解放貫通アパーチャは、前記バイアルアダプタの前記初期の圧縮前状態において前記対称な位置にある1対のバイアル頂部保持部材近位部分に前記ハサミのような圧縮を印加するために、前記完全なままの個別注射バイアル解放ツールにアクセスを提供するような形状および寸法にされる、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ハサミのような圧縮の前記印加に際して、前記対称な位置にある1対のバイアル頂部保持部材が、前記最上部の横向き環状内側バイアルアダプタ本体壁部を軸に枢動する、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記一体型伸縮式バイアルアダプタが、前記圧縮前状態から前記圧縮状態へと前記一体型伸縮式バイアルアダプタを圧縮するのを可能にするために解除動作を必要とする安全装置機構を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
バイアルアダプタとして構成され、前記液体移動ポートがコネクタである、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
1対の初めは無穿孔の完全なままの個別注射バイアル、およびニードルレスシリンジと共に使用するように構成された、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
注入液容器および注入セットと共に使用するように構成された、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記対向する1対の内向き突出部を備えた対向する1対の掴み具を有するハサミ状ハンドツールとして構成される、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置と共に使用するための前記対向する1対の内向き突出部を備えた前記完全なままの個別注射バイアル解放ツール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個別注射バイアルと共に使用するための液剤移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤を収容した個別注射バイアルと共に使用するための、一体型バイアルアダプタを有する液剤移動装置が、家庭用、外来診療所用、病院用などで利用可能である。一体型バイアルアダプタを有する例示的な液剤移動装置には、とりわけ、ニードルレスシリンジと共に使用するための、メスのルアーコネクタを有するメスバイアルアダプタ、オスのルアーコネクタを有するオスバイアルアダプタ、一体型投与装置とニードルレスシリンジをそこに取り付けるためのシリンジポートとを有する液剤移動装置、2つの注射バイアルの内容物を混合して、シリンジポートからニードルレスシリンジへと吸引される液剤を形成する液剤移動装置などが含まれる。
【0003】
個別注射バイアルは、通常は高価な薬剤を収容した、端部が閉じたバイアル管と、頂部開口を有する管状のバイアル頂部と、バイアル管とバイアル頂部の間のバイアル狭窄部とを含む。個別注射バイアルは、頂部開口を気密封止するための注射バイアルストッパと、バイアル頂部を覆うためのバンドとを含む。個別注射バイアルは、通常、再び取り付けることができない形で使用直前に取り除かれて最上部注射バイアル表面を露出させるものである、フリップ・オフ式不正開封防止キャップを含み、最上部注射バイアル表面は、注射バイアルを利用する前に滅菌される。
【0004】
バイアルアダプタは、最上部の横向きバイアルアダプタ壁部と、下方懸架バイアル頂部スリーブとを含む、概して逆さまになったカップの形状を有して、個別注射バイアルにバイアルアダプタを伸縮式にマウントした際にバイアル頂部を受けるためのバイアル頂部空洞の境界を定める。最上部の横向きバイアルアダプタ壁部は、近位穿孔カニューレ開口および遠位穿孔カニューレ先端を備えた下方懸架穿孔カニューレを有して、個別注射バイアルにバイアルアダプタを伸縮式にマウントするのと同時に注射バイアルストッパを穿孔する。バイアル頂部スリーブは、任意選択で、よりしっかりとマウントするために、個別注射バイアルにバイアルアダプタを伸縮式にスナップフィットさせた際にバイアル頂部の下にスナップフィットする、1つまたは複数の半径方向内向きのバイアル頂部保持突出部を有することができる。
【0005】
個別注射バイアルにバイアルアダプタを伸縮式にマウントすることは、通常は、その薬剤を即座に投与する準備が整った患者の横で実施される。伸縮式にマウントするのは、いくつかの理由から、比較的問題が多い作業であると考えられている:第1に、手に手袋をはめた医療提供者が、バイアルアダプタおよび個別注射バイアルの取扱いを器用にこなさなければならない。第2に、医療提供者は、個別注射バイアルにバイアルアダプタを伸縮式にマウントすると同時にその注射バイアルストッパを穿孔するために、かなり強い力を加える必要がある。第3に、医療提供者は、個別注射バイアルに対してバイアルアダプタを不正確に位置決めしがちであり、その結果、その遠位穿孔カニューレ先端が注射バイアルストッパを穿孔せず、むしろ注射バイアルストッパの中に埋まる。そして第4に、いくつかの薬剤の場合、投与のスピードが最も重要であり、個別注射バイアルにバイアルアダプタを伸縮式にマウントすると同時にその注射バイアルストッパを穿孔することは、比較的長い時間を要する場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一体型バイアルアダプタを有する液剤移動装置を個別注射バイアルと共に使用することを容易にする必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、初めは無穿孔の完全なままの個別注射バイアルと共に使用するための、一体型伸縮式バイアルアダプタを備えた液剤移動装置を対象とする。その圧縮前状態では、バイアルアダプタは、その注射バイアルストッパを穿孔することなしに、初めは無穿孔の完全なままの個別注射バイアルに伸縮式にスナップフィットする。その圧縮状態では、バイアルアダプタは注射バイアルストッパを穿孔する。伸縮式にマウントすると同時に注射バイアルストッパを穿孔するというこれまでの単一ステップを、個別注射バイアルに一体型伸縮式バイアルアダプタを伸縮式にスナップフィットさせる最初のステップと、一体型伸縮式バイアルアダプタを圧縮してその注射バイアルストッパを穿孔する後続のステップとに分割することにより、2つのステップを同じ医療提供者によって、または任意選択で2人の医療提供者によって実施することが可能になる。後者の場合、第1の医療提供者は、患者の近くでない調剤部、無菌室などに配置されてもよく、第2の医療提供者のみが、投与の目的で患者の横にいる。
【0008】
単独の、または第1の医療提供者は、個別注射バイアルに液剤移動装置の一体型伸縮式バイアルアダプタを伸縮式にスナップフィットさせて、事前に取り付けられた無穿孔の完全なままの個別注射バイアルを備えた、いわゆるすぐに使用できる(RTU:Ready−To−Use)液剤移動組立体を準備する責任を負う。注射バイアルストッパの穿孔には、個別注射バイアルにバイアルアダプタを伸縮式にスナップフィットさせるのよりもかなり強い力が必要とされ、それにより、本発明の一体型伸縮式バイアルアダプタの圧縮中、医療提供者は、完全なままの個別注射バイアルにスナップフィットさせた後に不注意ですぐに注射バイアルストッパの穿孔へと進まないように意識することができる。一体型伸縮式バイアルアダプタには、任意選択で、圧縮を可能にするように一体型伸縮式バイアルアダプタを準備するための解除動作を必要とする、安全装置機構が設けられてもよい。解除動作は、相対的な回転動作、相対的な直線的変位動作、安全装置の取外しなどを伴う場合がある。単独の、または第1の医療提供者は、RTU液剤移動組立体を準備するのを助けるための機器、たとえば治具などを利用可能でもよい。2人の医療提供者の場合、第2の医療提供者は、投与の目的のために、患者の横でRTU液剤移動組立体の一体型伸縮式バイアルアダプタを圧縮して、事前に取り付けられた無穿孔の完全なままの個別注射バイアルの注射バイアルストッパを穿孔するという、より簡単な作業を受け持つ。
【0009】
これまで伸縮式にマウントすると同時に注射バイアルストッパを穿孔していたのを2つの個別のステップに分割すると、たとえば患者の健康状態が変化したことによりもう必要とされていない可能性のある、特定の患者用のRTU液剤移動組立体が準備される恐れがある。本発明では、無穿孔の完全なままの個別注射バイアルを新しい液剤移動装置に移して、別の患者用の新しいRTU液剤移動組立体を準備することが想定されている。言い換えれば、個別注射バイアルは、その不正開封防止キャップが再取付け不能に取り外されているにもかかわらず、その注射バイアルストッパが穿孔されていない限り、依然として投与に適しているとみなされる。したがって、本発明の一体型伸縮式バイアルアダプタを備えた液剤移動装置を用いると、ハサミのような圧縮を加えるための、対向する1対の内向き突出部を備えた完全なままの個別注射バイアル解放ツールを用いて、事前に取り付けられた無穿孔の完全なままの個別注射バイアルをそこから取り外すことが可能になる。完全なままの個別注射バイアル解放ツールは、ハサミ状ハンドツールとして構成されてもよい。別法として、完全なままの個別注射バイアル解放ツールは、ユーザが操作する電気機械的機器として構成されてもよい。未使用のRTU液剤移動組立体から完全なままの個別注射バイアルを取り外すために完全なままの個別注射バイアル解放ツールを使用することにより、承認を受けた医療提供者のみが、新しい液剤移動装置と共に使用するために完全なままの個別注射バイアルを取り外して新しいRTU液剤移動組立体を準備できるようになる。
【0010】
本発明を理解し、それが実際にどのように実施され得るのかを確認するために、次に、単なる非限定的な例として、添付図面を参照して好ましい実施形態を説明する。各図面中、同様の部分には同様の番号を付けている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】伸縮式メスバイアルアダプタと、個別注射バイアルと、ニードルレスシリンジと、伸縮式メスバイアルアダプタから完全なままの個別注射バイアルを解放するためのハサミ状ハンドツールとを含む投与セットの絵画的な図である。
図2図1の断面線2〜2に沿った、個別注射バイアルの長手方向断面図である。
図3】その圧縮前状態の、伸縮式メスバイアルアダプタの正面斜視図である。
図4図4Aは、伸縮式メスバイアルアダプタの分解上面斜視図である。図4Bは、伸縮式メスバイアルアダプタの分解下面斜視図である。
図5】無穿孔の完全なままの個別注射バイアルに伸縮式にスナップフィットされた、その圧縮前状態の伸縮式メスバイアルアダプタの、図3の断面線A〜Aに沿った長手方向断面図である。
図6】無穿孔の完全なままの個別注射バイアルに伸縮式にスナップフィットされた、その圧縮前状態の伸縮式メスバイアルアダプタの、図3の断面線B〜Bに沿った長手方向断面図である。
図7】無穿孔の完全なままの個別注射バイアルを解放するための、圧縮前状態でのハサミ状ハンドツールの使用を示す正面図である。
図8】無穿孔の完全なままの個別注射バイアルを解放するためのハサミ状ハンドツールの使用を示す、図7の断面線C〜Cに沿った長手方向断面図である。
図9】個別注射バイアルを穿孔するその圧縮状態の伸縮式メスバイアルアダプタの、図3の断面線A〜Aに沿った長手方向断面図である。
図10】個別注射バイアルを穿孔するその圧縮状態の伸縮式メスバイアルアダプタの、図3の断面線B〜Bに沿った長手方向断面図である。
図11】1対の初めは無穿孔の完全なままの個別注射バイアルおよびニードルレスシリンジと共に使用するように構成された、液剤移動装置の正面斜視図である。
図12図11の断面線D〜Dに沿った、図11の液剤移動装置の長手方向断面図である。
図13】注入液容器および注入セットと共に使用するための液剤移動装置の絵画的な図である。
図14図13の断面線E〜Eに沿った、図13の液剤移動装置の長手方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1には、ニードルレスシリンジ20と、初めは無穿孔の完全なままの個別注射バイアル30と、伸縮式メスバイアルアダプタとして構成された液剤移動装置100Aと、無穿孔の完全なままの個別注射バイアル30を液剤移動装置100Aから解放するための、完全なままの個別注射バイアル解放ツール200とを含む投与セット10が示してある。
【0013】
図1には、ニードルレスシリンジ20が、プランジャロッド22およびオスコネクタ23を備えたシリンジバレル21を含むことが示してある。オスコネクタ23は、好ましくは、オスのルアーロックコネクタである。ニードルレスシリンジ20は、液体内容物を収容する。液体内容物は、通常は単なる希釈剤である。液体内容物は、活性成分を含んでもよい。
【0014】
図1および図2には、注射バイアル30が長手方向の注射バイアル中心線31を有し、端部が閉じたバイアル管32、頂部開口34を有する管状のバイアル頂部33、およびバイアル管32とバイアル頂部33の間のバイアル狭窄部36を含むことが示してある。個別注射バイアル30は、頂部開口34を気密封止するための注射バイアルストッパ37を含む。バイアル頂部33は、バンド38によって覆われている。注射バイアル30は、粉末、液体などの形をとる薬剤39を収容する。薬剤39は、シリンジの液体内容物と共に、液剤を形成する。注射バイアル30は、液剤を形成するために注射バイアル30を利用する前に滅菌される、最上部注射バイアル表面41を有する。注射バイアル30は、使用直前に取り除かれて最上部注射バイアル表面41を露出させる、フリップ・オフ式不正開封防止キャップ42を含む。不正開封防止キャップ42は1回限りの使用を意図しており、したがって取り除いた後に再び取り付けることはできない。
【0015】
図1には、ハサミ状ハンドツールとして構成された、完全なままの個別注射バイアル解放ツール200が示してあり、このハサミ状ハンドツールは、内向き突出部203をそれぞれ末端とする対向する1対の掴み具202を備えた、ハサミ状本体201を含む。対向する掴み具202は、互いに向かって手動で押し進められ、それにより、本明細書において図7および図8を参照して以下に記載するように、ハサミのような圧縮を加えて、無穿孔の完全なままの個別注射バイアル30を解放するものである。
【0016】
図3図10には、液剤移動装置100Aが、長手方向のバイアルアダプタ中心線101Aを有する一体型伸縮式バイアルアダプタ101を含むことが示してある。一体型伸縮式バイアルアダプタ101は、内側バイアルアダプタ本体102と、外側バイアルアダプタ本体103と、バイアルアダプタ101を不可逆的に圧縮状態でクランプするためのクランプ装置104とを含む。
【0017】
内側バイアルアダプタ本体102は、最上部の横向き環状内側バイアルアダプタ本体壁部106と、最下部のバイアル頂部スリーブリム107Aを備えた下方懸架バイアル頂部スリーブ107とを備えた、逆さまになったカップの形状を有する。内側バイアルアダプタ本体102は、内側バイアルアダプタ本体102をバイアル頂部33に伸縮式にスナップフィットさせた際にバイアル頂部33を内部にぴったりと受けるための、バイアル頂部空洞108の境界を定める。最上部の横向き環状内側バイアルアダプタ本体壁部106は、個別注射バイアル30に伸縮式にスナップフィットさせた際に最上部注射バイアル表面41の上に重なる、最上部の横向き内側バイアルアダプタ本体壁部中心貫通アパーチャ106Aを、長手方向のバイアルアダプタ中心線101Aに沿って有する。
【0018】
バイアル頂部スリーブ107は、隣り合う第1の対の長手方向スリット111Aと隣り合う第2の対の長手方向スリット111Bとを備えたバイアル頂部スリーブ主囲繞部109を有し、それに対応して、対称な位置にある1対のバイアル頂部保持部材112Aおよび112Bを形成する。対称な位置にある1対のバイアル頂部保持部材112は、バイアル頂部スリーブ主囲繞部109に対して枢動可能であり、したがって、各バイアル頂部保持部材112は、バイアル頂部保持部材近位部分113と、バイアル頂部保持部材遠位部分114とを有する。最上部の横向き環状内側バイアルアダプタ本体壁部106は、好ましくは、対称な位置にある1対のバイアル頂部保持部材112の内側に、対称な位置にある1対の貫通切欠き116を有し、それにより、対称な位置にある1対のバイアル頂部保持部材112は、最上部の横向き環状内側バイアルアダプタ本体壁部106を軸に枢動する。各バイアル頂部保持部材遠位部分114は、初めは無穿孔の完全なままの個別注射バイアル30に内側バイアルアダプタ本体102を伸縮式にスナップフィットさせた際にバイアル頂部33の下にスナップフィットする、半径方向内向きのバイアル頂部保持突出部117を、最下部のバイアル頂部スリーブリム107Aのほうにそれぞれ有する。
【0019】
最上部の横向き環状内側バイアルアダプタ本体壁部106は、対称な位置にある1対のバイアル頂部保持部材112Aおよび112Bに対して同様に直交する、対称な位置にある1対の直立止め具118Aおよび118Bを含む。バイアル頂部スリーブ107は、最下部のバイアル頂部スリーブリム107Aのほうに、対称な位置にある1対のバイアル頂部保持部材112Aおよび112Bに対して同様に直交する、対称な位置にある1対のクランプ部材119Aおよび119Bを含む。対称な位置にある1対のクランプ部材119は、クランプ装置104の構成要素をなす。
【0020】
外側バイアルアダプタ本体103は、最上部の横向き外側バイアルアダプタ本体壁部121と下方懸架裾部122とを備えた、逆さまになったカップの形状を有する。外側バイアルアダプタ本体103は、バイアルアダプタ101を圧縮前状態から圧縮状態へと圧縮した際に内側バイアルアダプタ本体102を内部にぴったりと伸縮式に受けるための、内側バイアルアダプタ本体空洞123の境界を定める。下方懸架裾部122は、最下部の裾部リム122Aを有する。
【0021】
最上部の横向き外側バイアルアダプタ本体壁部121は、バイアル管32と流体連通するように注射バイアルストッパ37を穿孔するための、近位穿孔カニューレ開口124Aおよび遠位穿孔カニューレ先端124Bを備えた下方懸架穿孔カニューレ124を有する。最上部の横向き外側バイアルアダプタ本体壁部121は、近位穿孔カニューレ開口124Aと流体連通した直立液体移動ポート125を有する。直立液体移動ポート125は、ニードルレスシリンジ20と共に使用するためのメスのコネクタとして構成される。メスのコネクタ125は、好ましくはメスのルアーコネクタとして構成される。
【0022】
下方懸架裾部122は、隣り合う第1の対の長手方向スリット126Aと、隣り合う第2の対の長手方向スリット126Bを含み、それに対応して、対称な位置にある1対の内側バイアルアダプタ本体保持部材127Aおよび127Bを形成する。対称な位置にある1対の内側バイアルアダプタ本体保持部材127Aおよび127Bは、同様に内側長手方向凹部128Aおよび128Bを含む。その内側長手方向凹部128を備えた対称な位置にある1対の内側バイアルアダプタ本体保持部材127は、クランプ装置104の構成要素をなす。対称な位置にある1対の内側長手方向凹部128Aおよび128Bは、同様に、対称な位置にある1対の最下部凹部リム129Aおよび129Bを含む。下方懸架裾部122は、対称な位置にある1対の内側バイアルアダプタ本体保持部材127Aおよび127Bに直交する、対称な位置にある1対の個別注射バイアル解放貫通アパーチャ131Aおよび131Bを含む。
【0023】
図5および図6には、初期の圧縮前状態において、内側バイアルアダプタ本体102が不注意で外側バイアルアダプタ本体103から取り外されることを防止するために、対称な位置にある1対の直立止め具118が対称な位置にある1対の最下部凹部リム129に配置されることが示してある。遠位穿孔カニューレ先端124Bは、無穿孔の注射バイアルストッパ37の上に重なる。対称な位置にある1対のバイアル頂部保持部材近位部分113は、対称な位置にある1対の個別注射バイアル解放貫通アパーチャ131に位置合わせされる。バイアルアダプタ101は、最上部の横向き外側バイアルアダプタ本体壁部121と最下部の下方懸架バイアル頂部スリーブリム107Aとの間の、圧縮前高さH1を有する。
【0024】
薬剤を投与せず、無穿孔の完全なままの個別注射バイアル30を再使用することが決定された場合、医療提供者は、図7および図8に示す以下のステップを踏む:医療提供者は、ハサミ状ハンドツール200をバイアルアダプタ101に位置合わせして、対称な位置にある1対の個別注射バイアル解放貫通アパーチャ131に、その対向する1対の内向き突出部203を挿入する。医療提供者は、対称な位置にある1対のバイアル頂部保持部材近位部分113にハサミのような圧縮を加えて、矢印Aで示すように、長手方向のバイアルアダプタ中心線101Aに向かってバイアル頂部保持部材近位部分113を押し進める。対称な位置にある1対のバイアル頂部保持部材112は、バイアル頂部スリーブ主囲繞部109に対して枢動し、それにより、矢印Bで示すように、対称な位置にある1対の半径方向内向きのバイアル頂部保持突出部117を、長手方向のバイアルアダプタ中心線101Aから遠ざけて、無穿孔の完全なままの個別注射バイアル30を解放する。医療提供者は、矢印Cで示すように、内側バイアルアダプタ本体102から無穿孔の完全なままの個別注射バイアル30を引き抜く。
【0025】
図9および図10には、最終圧縮状態では、伸縮式バイアルアダプタ101がその圧縮前状態へと戻ることを防止するために、対称な位置にある1対のクランプ部材119が対称な位置にある1対の最下部凹部リム129に配置されることが示してある。遠位穿孔カニューレ先端124Bは注射バイアルストッパ37を穿孔し、それにより、直立したメスのルアーコネクタ125とバイアル管32との間に流体連通をもたらす。対称な位置にある1対のバイアル頂部保持部材近位部分113は、最上部の横向き外側バイアルアダプタ本体壁部121と、対称な位置にある1対の個別注射バイアル解放貫通アパーチャ131との間に配置され、それにより、バイアル頂部保持部材近位部分113にアクセスしてハサミのような圧縮を加えることが不可能になる。バイアルアダプタ101は、外側バイアルアダプタ本体103の内側に内側バイアルアダプタ本体102を完全に伸縮式に挿入した際、外側バイアルアダプタ本体103の高さに等しい圧縮高さH2を有し、H2<H1である。
【0026】
最終圧縮状態では、医療提供者は、メスのルアーコネクタ125にニードルレスシリンジ20をねじ式に取り付けてその液体内容物を個別注射バイアル30に添加し、それにより、個別注射バイアル30の中に液剤を形成することができる。その後、医療提供者は、投与の目的で個別注射バイアル30から液剤を吸引することができる。
【0027】
図11および図12には、これ以降Zingerの装置と呼ばれる、本明細書と同一所有者のZingerらの米国特許第6,379,340号と構造が同様の、液剤移動装置100Bが示してある。Zingerの装置は、1対の注射バイアルおよび最初は空のニードルレスシリンジと共に使用される。一方の注射バイアルは液体内容物を含み(これ以降液体バイアルと呼ばれる)、他方の注射バイアルは負圧下で薬剤を含む(これ以降薬バイアルと呼ばれる)。Zingerの装置は、中心フロー制御部材ポートと1対の側方バイアルアダプタとを備えた、長手方向ハウジングを有する。フロー制御部材ポートは、ニードルレスシリンジをねじ式に取り付けるためのシリンジポートを有するフロー制御部材を含む。フロー制御部材は、シリンジポートにより、バイアルアダプタ間の流体連通を可能にする第1の動作位置からバイアルアダプタとシリンジポートの間の流体連通を可能にする第2の動作位置へと回転させることができる。
【0028】
Zingerの取扱い説明(IFU:Instructions For Use)は以下の通りである:最初に一方のバイアルアダプタに液体バイアルを挿入し、続いて他方のバイアルアダプタに薬バイアルを挿入する。薬バイアルが液体バイアルから液体内容物を引き込み、液剤を形成する。最初は空のニードルレスシリンジをシリンジポートに連結し、シリンジポートを4分の1回転させて、薬バイアルからニードルレスシリンジへと液剤を吸引できるようにする。ニードルレスシリンジをZingerの装置から取り外して、液剤を投与する。
【0029】
液剤移動装置100Bは、中心フロー制御部材ポート142と1対の側方一体型伸縮式バイアルアダプタ101とを有する細長いハウジング141を含む。液剤移動装置100Bは、フロー制御部材ポート142に回転可能にマウントされたシリンジポート144を有する、フロー制御部材143を含む。一体型伸縮式バイアルアダプタ101は、中心フロー制御部材ポート142に流体連結した液体移動ポート125をそれぞれ有する。後者の100Bを用いるとRTU液剤組立体の準備および無穿孔の完全なままの個別注射バイアルの解放が可能になることを除き、液剤移動装置100Bの使用法は、Zingerの装置と同じである。
【0030】
図13および図14には、注入液容器および注入セットと共に使用するための液剤移動装置100Cが示してある。注入液容器50は、IVポートまたは投与ポート51、および注射ポート52を有し、また注入液53を収容した静脈内(IV)バッグによって構成される。IVポート51は、投与の目的でIVスパイクを挿入するために、ツイスト・オフ式キャップ54によって封止されている。注射ポート52は、シリンジの内容物をIVバッグ50へとニードル挿入するための封止シーリングプラグ57を備えた注射ポート先端56を末端とする。注入セット60はIVスパイク61を含み、追加的に、第1の管路62、クランプ63、ドリップチャンバ64、第2の管路66、ローラークランプ67、およびオスのルアーコネクタ68を含む。
【0031】
液剤移動装置100Cは、これ以降Levの装置と呼ばれる、Levらの、本明細書と同一所有者の米国特許出願公開第US2016/0166824号の図4および図5に開示された液体移動装置と構造が同様である。Levの装置は、IVポート51に封止式に挿入するためのIVスパイクと、バイアルアダプタポートと、ツイスト・オフ式代替IVポートとを有する、三つ叉に分かれたY字形状のコネクタ本体を含む。バイアルアダプタポートは、穿孔カニューレを備えた一体型バイアルアダプタを有する。コネクタ本体は、IVスパイクを末端とする内部空洞と、穿孔カニューレと流体連通した内部空洞と、代替IVポートを末端とする内部空洞とを有する。3つの内部空洞は、3方向に途切れることなく直接流体連結している。代替IVポートは、適した可撓性プラスチック材料、たとえばPVCなどから形成されて、IVスパイク61を封止式に受ける。代替IVポートは、IVスパイク61の挿入に際して穿孔されるものである隔壁を含む。代替IVポートは、近位部分および遠位部分を含む。使用に際して、遠位部分をねじり折って近位部分から外し、それにより、注入セットのIVスパイク61で穿孔するために隔壁を露出させる。
【0032】
液剤移動装置100Cは、IVポート51に封止式に挿入するためのIVスパイク152と、バイアルアダプタポート153と、ツイスト・オフ式代替IVポート154とを有する、三つ叉に分かれたY字形状のコネクタ本体151を含む。バイアルアダプタポート153は、一体型伸縮式バイアルアダプタ101を有する。コネクタ本体151は、IVスパイク152を末端とする内部空洞156と、一体型伸縮式バイアルアダプタ101と流体連通した内部空洞157と、代替IVポート154を末端とする内部空洞158とを有する。3つの内部空洞156、157、および158は、3方向に途切れることなく直接流体連結している。
【0033】
一体型伸縮式バイアルアダプタ101は、バイアルアダプタポート153と流体連結した液体移動ポート125を有する。一体型伸縮式バイアルアダプタ101は、好ましくは、穿孔カニューレ124にマウントされる封止部材159を含んで、遠位穿孔カニューレ先端124Bの無菌性を保ち、RTU液剤移動組立体を使用することができる期間を延長する。一体型伸縮式バイアルアダプタ101は、好ましくは安全装置機構161も含んで、不注意で圧縮前状態から圧縮状態へと圧縮されること防止する。安全装置機構161は、一体型伸縮式バイアルアダプタ101を圧縮の準備が整った状態にするために、外側バイアルアダプタ本体103に対して内側バイアルアダプタ本体102を回転させる、回転操作を必要とする。
【0034】
液剤移動装置100Cの使用法は、後者の100Cを用いると、RTU液剤組立体の準備および無穿孔の完全なままの個別注射バイアル30の解放が可能になることを除き、Levの装置と同じである。
【0035】
本発明の特定の実施形態を図示および説明したが、本発明の趣旨および範囲から逸脱しない限り、種々の他の変更および修正を加えてもよいことは、当業者には明らかであろう。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14