(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6902103
(24)【登録日】2021年6月22日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】光センサのバーンアウト保護
(51)【国際特許分類】
G01J 1/04 20060101AFI20210701BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20210701BHJP
【FI】
G01J1/04 B
G02B5/20
【請求項の数】20
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-539932(P2019-539932)
(86)(22)【出願日】2018年1月25日
(65)【公表番号】特表2020-509346(P2020-509346A)
(43)【公表日】2020年3月26日
(86)【国際出願番号】US2018015213
(87)【国際公開番号】WO2018144312
(87)【国際公開日】20180809
【審査請求日】2019年7月23日
(31)【優先権主張番号】15/420,438
(32)【優先日】2017年1月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503455363
【氏名又は名称】レイセオン カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】トレント,キャサリン
(72)【発明者】
【氏名】フレーザー,ゲイリー エ−.
【審査官】
田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第08754658(US,B1)
【文献】
特開2005−024827(JP,A)
【文献】
特開平07−131113(JP,A)
【文献】
米国特許第06785032(US,B1)
【文献】
米国特許第04947223(US,A)
【文献】
米国特許第05027178(US,A)
【文献】
特開2004−029243(JP,A)
【文献】
特開平02−190828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 1/00−1/60
G02B 5/20−5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光センサを保護する装置であって、
光透過に関して固定の通過帯域を有する固定フィルタと、
光透過に関して可変の通過帯域を有するプログラマブルフィルタであり、当該プログラマブルフィルタは、少なくとも2つの4分の1波長層を含み、第1の4分の1波長層は、第1の材料の交互のn型層及びp型層を含み、第2の4分の1波長層は、第2の材料の交互のn型層及びp型層を含む、プログラマブルフィルタと、
前記プログラマブルフィルタの前記通過帯域が前記固定フィルタの前記通過帯域と実質的に同じである第1状態と、前記プログラマブルフィルタの前記通過帯域が前記固定フィルタの前記通過帯域とは異なる第2状態との間で、前記プログラマブルフィルタの前記通過帯域をシフトさせる制御可能な電圧源と、
を有する装置。
【請求項2】
前記固定フィルタ及び前記プログラマブルフィルタは、前記光センサの開口の前に配置される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
光の測定強度に基づいて前記電圧源を制御する制御装置、を更に含む請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記測定強度が閾強度値よりも高いときに電圧バイアスを印加するように前記電圧源を制御する、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記制御装置は、広い領域から光を受ける制御センサを含む、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記光センサに向けられた光の一部を前記制御装置の方に向け直すビームスプリッタ、を更に有する請求項3に記載の装置。
【請求項7】
前記制御装置が前記光センサを含む、請求項3に記載の装置。
【請求項8】
前記プログラマブルフィルタは、n型半導体材料の層とp型半導体材料の層とを含む少なくとも1つの二重層を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記プログラマブルフィルタは2分の1波長中央層を含み、該中央層の上に複数の4分の1波長二重層が積層され、該中央層の下に複数の4分の1波長二重層が積層されている、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記プログラマブルフィルタはフォトニック結晶を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
光センサを保護する方法であって、
光透過に関して固定通過帯域を有する固定フィルタを前記光センサの前に配置することと、
光透過に関して可変の通過帯域を有するプログラマブルフィルタを前記固定フィルタの前に配置することであり、前記プログラマブルフィルタは、少なくとも2つの4分の1波長層を含み、第1の4分の1波長層は、第1の材料の交互のn型層及びp型層を含み、第2の4分の1波長層は、第2の材料の交互のn型層及びp型層を含む、配置することと、
前記プログラマブルフィルタにおける電圧を制御して、前記プログラマブルフィルタの前記可変の通過帯域を前記固定通過帯域に対してシフトさせることと、
を有する方法。
【請求項12】
前記電圧を制御することは、前記プログラマブルフィルタを、前記プログラマブルフィルタの前記通過帯域が前記固定通過帯域と実質的に同じである第1状態と、前記プログラマブルフィルタの前記通過帯域が前記固定通過帯域とは異なる第2状態との間でシフトさせる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
制御装置で受けた光の強度に基づいて前記電圧を制御すること、を更に含む請求項11に記載の方法。
【請求項14】
受けた光の強度レベルを強度閾値と比較する制御装置を用いて前記電圧を制御すること、を更に有する請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ビームスプリッタを用いて、前記光センサに向けられた光の一部を前記制御装置の方に向け直すこと、を更に有する請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記光センサで受けた光の強度を用いて前記プログラマブルフィルタを制御すること、を更に有する請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記固定フィルタの中心波長は約1.55マイクロメートルである、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記プログラマブルフィルタは、n型半導体材料の層とp型半導体材料の層とを含む少なくとも1つの二重層を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記プログラマブルフィルタは2分の1波長中央層を含み、該中央層の上に複数の4分の1波長二重層が積層され、該中央層の下に複数の4分の1波長二重層が積層されている、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記プログラマブルフィルタは、p型マトリックス内に配置された複数のn型半導体バーを含むフォトニック結晶を含み、当該方法は更に、前記n型半導体バーを電気的にバイアスして前記フォトニック結晶の光学バンドギャップを変化させることを有する、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光センサ技術に関し、特に、入射する高強度光によるバーンアウトから光センサを保護するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光センサは、例えば日光、レーザ妨害、閃光などの状況において発生するような高強度の光レベルにさらされると損傷され得る。特定の光センサのリフレッシュレートは毎秒10,000フレームを超え得る。非常に強い照明によるバーンアウト(熱焼損)を防ぐために、特定の検出器は、約1マイクロ秒未満の時間フレーム内で光レベルに反応する必要がある。
【発明の概要】
【0003】
一実施形態によれば、光センサを保護する装置は、光透過に関して固定の通過帯域を有する固定フィルタと、光透過に関して可変の通過帯域を有するプログラマブルフィルタと、プログラマブルフィルタの通過帯域が固定フィルタの通過帯域と実質的に同じである第1状態、及びプログラマブルフィルタの通過帯域が固定フィルタの通過帯域とは異なる第2状態から、プログラマブルフィルタの通過帯域をシフトさせる制御可能な電圧源とを含む。
【0004】
他の一実施形態によれば、光センサを保護する方法は、光透過に関して固定通過帯域を有する固定フィルタを光センサの前に配置することと、光透過に関して可変の通過帯域を有するプログラマブルフィルタを固定フィルタの前に配置することと、プログラマブルフィルタにおける電圧を制御して、プログラマブルフィルタの可変の通過帯域を固定通過帯域に対してシフトさせることとを含む。
【0005】
更なる特徴及び利点が、本発明の技術を通じて実現される。本発明の他の実施形態及び態様が、ここに詳細に記載され、特許請求される発明の一部と見なされる。本発明を利点及び特徴とともによりよく理解するため、以下の説明及び図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
より完全なる本開示の理解のため、ここで、同様の要素を似通った参照符号が表す添付図面及び詳細な説明とともに、以下の簡単な説明を参照する。
【
図1】一実施形態における、センサと、該センサを高強度の光から保護するシャッタとを含むセンサシステムを示している。
【
図2】シャッタのプログラマブルフィルタ及び固定フィルタの通過帯域スペクトルを示している。
【
図3】一実施形態におけるプログラマブルフィルタの構造を示している。
【
図4】2つの半導体層で構成される二重層の形態のプログラマブルフィルタを示している。
【
図5】一実施形態における、プログラマブルフィルタとしての使用に好適な、縦方向に積層された複数の二重層を含むフィルタを示している。
【
図6】100個の二重層で構成されたフィルタの非バイアス状態での光透過スペクトルを示している。
【
図7】フィルタの選択された層の屈折率をそれらの非バイアス状態での値の1%だけ増加させるように選択された電気バイアスでの、フィルタ500の光透過スペクトルを示している。
【
図8】本発明の一実施形態における、プログラマブルフィルタとしての使用に好適なフォトニック結晶の斜視図及び側面図を示している。
【
図9】一実施形態に従った光センサ用の制御システムを示している。
【
図10】他の一実施形態に従った光センサ用の制御システムを示している。
【
図11】更なる他の一実施形態に従った光センサ用の制御システムを示している。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1は、一実施形態における、センサ102と、センサ102を高強度の光から保護するシャッタ106とを含むセンサシステム100を示している。光センサ102は、例えばレーザなどの狭帯域光源からの光、又は狭帯域光と検査対象物との相互作用から生じる光とし得る光104を受ける。シャッタ106は、光104が光センサ102で検出されるためにシャッタ106を通り抜けるように、センサ102の開口(アパーチャ)の前に配置される。シャッタ106は、オン状態とオフ状態との間で切り換えられることができ、光はシャッタ106を通り抜けて光センサ102に入る(オン状態)か、又は光はシャッタ206を通り抜けるのを阻止される(オフ状態)かのいずれかとなる。シャッタ106のON状態は光透過状態であると見なすことができ、オフ状態は光遮断状態であると見なすことができる。
【0008】
シャッタ106は、固定フィルタ108及びプログラマブルフィルタ110(又は“チューナブルフィルタ”)を含んでいる。光104は、シャッタ106を通り抜けるために、プログラマブルフィルタ110及び固定フィルタ108の双方を通り抜ける。固定フィルタ108は、固定フィルタ108を通り抜けることを許される波長の範囲を指し示す通過帯域波長によって特徴付けられる。固定フィルタ108の通過帯域波長は、入射光104の中心波長を中心とする。例示的な一実施形態において、通過帯域波長は1.55μm(1550ナノメートル)を中心とするが、中心波長は、光源の波長に応じて、紫外光などを含めた光スペクトルのうちの任意の波長とすることができる。様々な実施形態において、入射光の帯域幅は約2ナノメートル(nm)である。固定フィルタ108の帯域幅は、入射光104の帯域幅と実質的に同じとすることができる。従って、様々な実施形態において、固定フィルタ108の帯域幅は約2nmである。
【0009】
プログラマブルフィルタ110は、可変の通過帯域波長を有するとともに、例えば約2nmといった、固定フィルタ108の帯域幅程度の狭い帯域幅を有する。プログラマブルフィルタ110は、電圧バイアスをプログラマブルフィルタ110に選択的に印加する電圧源112に電気的に結合されている。プログラマブルフィルタ110の通過帯域は、電圧バイアスを印加することによってシフトされる。電圧が印加されていないとき、プログラマブルフィルタ110の通過帯域は、固定フィルタ108の通過帯域と実質的に同じである。電圧バイアスが印加されているとき、
図2に関して後述するように、プログラマブルフィルタ110の通過帯域は、固定フィルタ108の通過帯域から外れてシフトする。
【0010】
図2は、プログラマブルフィルタ110及び固定フィルタ108の通過帯域スペクトルを示している。スペクトル200は、固定フィルタ108の通過帯域スペクトルである。強度がy軸に沿って示され、波長がx軸に沿って示されている。固定フィルタ108の透過ライン210は、λ
cとラベル付けた固定フィルタ108の通過帯域波長で発生する。λ
cにおける固定フィルタ108の帯域幅は約2nmである。この通過帯域波長は、光源又は入射光104の波長と実質的に同じであるように選択される。
【0011】
スペクトル202は、様々な電圧バイアス条件下でのプログラマブルフィルタ110の通過帯域スペクトルである。透過ライン212は、プログラマブルフィルタ110に電圧バイアスが印加されていないときの通過帯域波長を示している。透過ライン212は、固定フィルタ108の通過帯域波長と同じ通過帯域λ
cで発生している。電圧バイアスが印加されると、透過ライン214は、Δλとして示した波長シフトだけ通過帯域λ
cから外れてシフトされる。波長シフトの方向は、電圧バイアスの符号に依存する。波長シフトΔλは、一部の実施形態において10nmほどの大きさになり得る。従って、プログラマブルフィルタ110に電圧バイアスを印加することで、プログラマブルフィルタ110の通過帯域が固定フィルタ108の通過帯域のいずれの部分とも重ならないようにすることができる。
【0012】
プログラマブルフィルタ110に電圧バイアスが印加されていないとき、プログラマブルフィルタ110の通過帯域は固定フィルタ108の通過帯域と同じであり、光104は、シャッタ106を通り抜けて光センサ102で受けられることを許される。プログラマブルフィルタ110に電圧バイアスが印加されているとき、プログラマブルフィルタ110の通過帯域は固定フィルタ108の通過帯域から外れてシフトされており、光104は、シャッタ106を通り抜けて光センサに入るのを阻まれる。故に、シャッタが“オン”状態(同じ通過帯域を有する)にあるか、それとも“オフ”状態(通過帯域が互いにシフトされる)にあるかを制御するために、電圧源112が電圧バイアスを供給する。
【0013】
図3は、一実施形態におけるプログラマブルフィルタ300の構造を示している。プログラマブルフィルタ300は、互いに上下に積層された4つの4分の1波長スタック(302a、302b、302c、302d)を含む干渉フィルタである。プログラマブルフィルタ300の厚さは、電圧バイアスが印加されていないとき、入射光104の1光学波長分であり、それにより、入射光104がプログラマブルフィルタ300を通り抜けることを可能にする一方で、他の波長の光は通り抜けるのを阻まれる。
【0014】
従って、各4分の1波長スタック(302a、302b、302c、302d)は、電圧バイアスが印加されていないとき、入射光104の光学波長の1/4である。光学波長λは、4分の1波長スタックの厚さtと4分の1波長スタックの屈折率nとの積に関係付けられる。故に、各4分の1波長スタックについて、
λ/4=nt 式(1)
である。
【0015】
各4分の1波長スタック(302a、302b、302c、302d)は、n型材料とp型材料との交互層を含む。例示の目的で、4分の1波長スタック302aの拡大図が示されている。4分の1波長スタック302aは、n型ガリウム砒素(GaAs)材料とp型GaAs材料との複数の交互層(304a、…、304h)を含んでいる。4分の1波長スタック302aの平均屈折率(n
1)は、その材料組成の結果である。平均屈折率n1は印加される電圧バイアスの関数であり、故に、バイアス電圧を用いて変えられることができる。式(1)から明らかなことには、屈折率n
1を変化させることは、スタックの通過帯域波長に影響を及ぼす。
【0016】
4分の1波長スタック302bは、4分の1波長スタック302aと同じ構造を有するが、その光屈折率に関して4分の1波長スタック302aの材料とは異なる材料で作製される。スタック302a内の材料とスタック302b内の材料との間の相対的な屈折率の差が必要なのは、レイヤ間の界面における屈折率不連続が光の多重的な反射及び透過を生み出し、それらが、他の界面からの反射光及び透過光と組み合わさって建設的又は相殺的な光干渉を生み出すようにするためである。様々な実施形態において、4分の1波長スタック302bは、n型及びp型のインジウムガリウム砒素(InGaAs)の複数の交互層、又はn型及びp型のアルミニウムガリウム砒素(AlGaAs)の複数の交互層を含む。結果として、4分の1波長スタック302bの屈折率n
2は、4分の1波長スタック302aの屈折率n
1とは異なる。様々な実施形態において、4分の1波長スタック302cは4分の1波長スタック302aと同じ材料で作製され、4分の1波長スタック302dは4分の1波長スタック302bと同じ材料で作製される。フィルタ300に電圧バイアスを印加することは、4分の1波長スタック(302a、302b、302c、302d)の屈折率をシフトさせ、それによりプログラマブルフィルタ300の通過帯域波長をシフトさせる。2つのフィルタを含むシャッタの使用は、軸外光の通過帯域が異なるフィルタを選択することによって、軸外光を排斥することができる。
【0017】
広帯域光源の場合、シャッタ106を閉じるために大きい電圧バイアスが干渉フィルタに印加される。吸収信号損失は電圧バイアスの大きさに関係するので、広帯域光源ではシャッタ106でかなりの吸収信号損失を被り得る。しかしながら、光104が例えばレーザなどからの狭帯域光である場合には、シャッタをオン状態とオフ状態との間で切り換える波長シフトを提供するために、小さい電圧バイアスのみが必要とされる。シャッタを作動させるために小量の電圧バイアスのみが必要とされるので、狭帯域光源では実際上、信号損失は発生しない。シャッタ106はまた電気キャパシタを形成するので、より小さい変化のみが印加電圧に必要とされることは、それに比例して、シャッタに伝送されたりシャッタから除去されたりする必要がある電荷の量を少なくする。同じ電気駆動回路の場合、より少量の電荷は、より多量の電荷よりも、シャッタに伝送されるのに短い時間のみを必要とする。従って、必要とされる電圧変化が低減されるとき、シャッタ106を開閉することをいっそう高速に達成することができる。
【0018】
図4は、2つの半導体層410及び420で構成される二重層(バイレイヤ)400の形態のプログラマブルフィルタ110を例示している。斜視図及び側面図が示されている。光430が二重層400を照らしている。二重層400の内部での光430の多重反射による光干渉が、二重層400の通過帯域波長を変える。通過帯域波長を変えることができる程度は、半導体層410及び420の光学特性の関数である。一実施形態において、層410はn型Al
xGa
1−xAs(x=0.0)半導体材料からなり、層420はp型Al
xGa
1−xAs(x=0.3)半導体材料からなる。二重層400を横切って印加される電圧が、半導体層410と420とのジャンクションにおける空乏領域の幅を変化させ、それが、n型半導体材料の伝導帯における電子の占有具合(ポピュレーション)及びp型半導体材料の価電子帯における正孔の占有具合を変化させる。このようにして占有具合を変化させることは、二重層400のバンドギャップエネルギーよりも低いエネルギーを持つ光430に対する屈折率を、それらの波長での光吸収を導入することなく、変化させる。
【0019】
一実施形態において、層410のn型材料は低濃度にドープされ、層420のp型材料は高濃度にドープされる。このドーピング分布では、空乏領域は主にn型材料内にある。電気バイアスへの変化は、主にn型材料の屈折率を変化させる。他の一実施形態において、層420のp型材料は低濃度にドープされ、層410のn型材料は高濃度にドープされる。このドーピング分布では、空乏領域は主にp型材料内にあり、電気バイアスへの変化は主にp型材料の屈折率を変化させる。
【0020】
図5は、一実施形態における、プログラマブルフィルタとしての使用に好適な、縦方向に積層された複数の二重層400を含むフィルタ500を示している。斜視図及び側面図が示されている。フィルタ500は、中央層506を含んでおり、中央層506の上に複数の二重層が積層され、中央層506の下に複数の二重層が積層されている。例示のフィルタ500では、上記複数の二重層は50個の二重層である。しかしながら、異なる実施形態では任意の数の二重層を使用することができる。各二重層が、
図4に関して説明した層410及び420を含む。中央層506は、排斥されるべき光の真空波長の1/2に等しい光学厚さを有するように選択される。他の全ての層410及び420は、排斥されるべき光の真空波長の1/4に等しい光学厚さを有するように選択される。例示の目的で、通過帯域波長は1550nmであるように選択される。フィルタ500の層410、420、及び506を構成する材料は、アルミニウムガリウム砒素(Al
xGa
1−xAs)の合金とし得る。表1は、光スペクトルのミッドギャップ領域におけるこれらの合金の屈折率を示している。
【表1】
材料の屈折率は、一般に、屈折率として参照される実数部nと、光吸収係数として参照される虚数部kとからなる複素値である。低吸収材料は、非常に低い値の“k”を有する。ここで使用される材料では、ゼロ又は実質的にゼロの“k”値を有し、スペクトルのこの領域において光損失が極めて低い。
【0021】
フィルタ500の一説明例において、半導体層410及び中央層506は、x=0.0としたn型Al
xGa
1−xAs(すなわち、n型GaAs)からなる。半導体層410の厚さは117.42nmであり、その屈折率は3.30である。中央層506の厚さは、半導体層410の厚さの2倍である。半導体層420は、x=0.3としたp型Al
xGa
1−xAs(すなわち、Al
0.3Ga
0.7As)からなり、123.45nmの厚さ及び3.1491の屈折率を持つ。式(1)を用いて、半導体層410の光学厚さは、
光学厚さ
410=n
410厚さ
410=387.5nm 式(2)
によって与えられる。層420の光学厚さは、
光学厚さ
420=n
420厚さ
420=387.5nm 式(3)
によって与えられる。これらの厚さは、1550nmの光波長の1/4に等しい。中央層506の光学厚さは、
光学厚さ
506=n
506厚さ
506=775.0nm 式(4)
によって与えられる。様々なバイアス下でのフィルタ500の性能を、
図6及び7に関して説明する。
【0022】
図6は、100個の二重層で構成されたフィルタ500の非バイアス状態での光透過スペクトルを示している。通過帯域波長は1550nmに位置している。
図7は、層410及び中央層506の屈折率をそれらの非バイアス状態での値の1%だけ増加させるように選択された電気バイアスでの、フィルタ500の光透過スペクトルを示している。通過帯域波長は1557.9nmにシフトされており、これは、非バイアス状態での通過帯域波長における0.5%のシフトに等価である。
【0023】
図8は、本発明の一実施形態における、プログラマブルフィルタ110としての使用に好適なフォトニック結晶800の斜視図及び側面図を示している。フォトニック結晶800は、格子構造を形成するようにp型材料のマトリックス804に埋め込まれた、交互の行をなすn型半導体バー802を含んでいる。バー802は、1つの次元に沿って細長くされた矩形の直方体の形態とすることができる。バー802の屈折率は、マトリックス804の屈折率とは異なる。これらのバー802は、バー802間の間隔が固定フィルタ108の通過帯域波長よりも短くなるように離間されている。バー802とマトリックス804との間に電気接触が作り出されて、pnダイオードのアレイをもたらす。pnダイオードのアレイの逆バイアスは、バー802の屈折率、及びバー802を取り囲むマトリックス804内の小領域の屈折率を変調する。この屈折率の変調、及びバー802とマトリックス804との間で変化する空乏幅が、フォトニック結晶800のバンドギャップを変化させる。フォトニック結晶800の光学バンドギャップを変調することは、フォトニック結晶800の帯域阻止動作を妨げる。その結果は、フォトニック結晶800の波長排斥特性及びフォトニック結晶800中の光の透過のチューニング(調整)である。固定フィルタ108と組み合わされるとき、全体的な結果は、システムを通じての光伝送の通過又は遮断のいずれかをプログラムすることができるということである。
【0024】
フォトニック結晶800は、ゼロの電気バイアスであるときに固定フィルタ108の通過帯域波長の通過をもたらすように設計され得る。フォトニック結晶800に電気バイアスが印加されると、フォトニック結晶800の光学バンドギャップが、固定フィルタ108の通過帯域波長を中心とするように移動され、それにより、フォトニック結晶800と固定フィルタ108との組み合わせを通る光の全体的な遮断を提供する。
【0025】
シャッタ(106、
図1)は電圧バイアスを調節することによって連続的にチューニング可能であるので、シャッタを可変減衰器として使用することが可能である。不所望の光源がセンサの損傷閾値を少し上回る場合、フィルタを、問題の信号強度を減衰させるが排除しないように、通過帯域から僅かに外してチューニングすることができる。これは、センサが、所望のソース信号に対する全体的な感度を低下させて、動作を継続することを可能にする。
【0026】
図9は、一実施形態に従った光センサ102用の制御システム900を示している。光センサ102の開口の前に固定フィルタ108及びプログラマブルフィルタ110が配置される。光がプログラマブルフィルタ110で受けられる。光はまた制御装置902でも受けられる。制御装置902は、大きい面積で光学開口に入る光を検知するフルフィールドセンサ904を含み得る。フルフィールドセンサ904は、光センサ102よりもバーンアウトを受けにくいとし得る。制御装置902のセンサに入った光によって生成された信号は、制御装置902で受けられた光104の強度を指し示す。センサ904で受けられた光の強度を閾強度値と比較することができる。受けられた光の強度が閾強度値を上回るとき、制御装置902は、プログラマブルフィルタ110の中心波長を固定フィルタ108の中心波長から外してシフトさせる電圧バイアスを提供するよう、信号を電圧源112に送信し、それにより、光が光センサ102に入ることを防ぐ。受けられた光の強度が閾強度値よりも低いとき、制御装置902は、プログラマブルフィルタ110の中心波長を固定フィルタ108の中心波長に揃える電圧バイアス(すなわち、ゼロ電圧)を提供するように電圧源112を制御し、それにより、光が光センサ102に入ることを可能にする。斯くして、制御装置902は、光センサ102をバーンアウト又は破壊させ得る光強度から光センサ102を保護する。
【0027】
図10は、他の一実施形態に従った光センサ102用の制御システム1000を示している。光センサ102の開口の前に固定フィルタ108及びプログラマブルフィルタ110が配置される。プログラマブルフィルタ110の前にビームスプリッタ1002が配置される。光104は、ビームスプリッタ1002、プログラマブルフィルタ110及び固定フィルタ108を通り抜けて光センサ102に入る。ビームスプリッタ1002は、光104を第1のビーム1004と第2のビーム1006とに分割する。第1のビーム1004は、引き続き、光センサ102で検出されるようにプログラマブルフィルタ110及び固定フィルタ108を通り抜ける方向にある。第2のビーム1006は、制御装置1008のセンサ1010で検出されるように、制御装置1008の方に向けられる。制御装置1008のセンサ1010は、光センサ102よりも感度が低いとし得る。一実施形態において、センサ1010の感度は、光センサ102の感度の約1/25である。センサ1010に入った光は、制御信号を生成するために制御装置1008で使用される光強度信号を生成する。第2のビーム1006の光強度が閾強度値と比較される。センサ1010での光強度が閾強度値を上回るとき、制御装置1008は、プログラマブルフィルタ110の中心波長を固定フィルタ108の中心波長から外してシフトさせる電圧バイアスを提供するよう、信号を電圧源112に送信し、それにより、光が光センサ102に入ることを防ぐ。センサ1010で受けられた光の強度が閾強度値よりも低いとき、制御装置1008は、プログラマブルフィルタ110の中心波長を固定フィルタ108の中心波長に揃える電圧バイアス(すなわち、ゼロ電圧)を提供するように電圧源112を制御し、それにより、光が光センサ102に入ることを可能にする。
【0028】
図11は、更なる他の一実施形態に従った光センサ102用の制御システム1100を示している。光センサ102の開口の前に固定フィルタ108及びプログラマブルフィルタ110が配置される。オン状態において、プログラマブルフィルタ110の中心波長は、固定フィルタ108の中心波長と揃えられている。光センサ102が光104を受ける。プロセッサ1102が、光センサ102で受けられた光の強度を指し示す信号を受信する。プロセッサ1102は、受信した光強度を閾強度値と比較する。受けられた光の強度が閾強度値を上回るとき、プロセッサ1102は、プログラマブルフィルタ110の中心波長を固定フィルタ108の中心波長から外してシフトさせる電圧バイアスを提供するよう、信号を電圧源112に送信し、それにより、光が光センサ102に入ることを防ぐ。受けられた光の強度が閾強度値よりも低いとき、プロセッサ1102は、プログラマブルフィルタ110の中心波長を固定フィルタ108の中心波長に揃える電圧バイアスを提供するように電圧源112を制御し、それにより、光が光センサ102に入ることを可能にする。オフ状態にあるとき、すなわち、プログラマブルフィルタ110の中心波長が固定フィルタ108の中心波長から外してシフトされているとき、プロセッサ1102は周期的に、プログラマブルフィルタ110の中心波長を固定フィルタ108の中心波長と揃え直すように、信号を電圧源112に提供することができ、それにより、光強度が光センサ102に有害でないレベルに戻ったかを光センサ102が検査することを可能にする。
図11には、プロセッサ1102が光センサ102とは別個であるものとして示されているが、プロセッサ1102は、他の実施形態において、光センサ102の集積コンポーネントとすることができる。
【0029】
以下の請求項中の全てのミーンズ・プラス・ファンクション要素又はステップ・プラス・ファンクション要素の対応する構造、材料、動作、及び均等物は、具体的にクレーム記載される他のクレーム要素と組み合わさってその機能を実行する如何なる構造、材料、又は動作をも含むことが意図される。本発明の記述は、例示及び説明の目的で提示されており、網羅的であること又は開示された形態での発明に限定されることは意図されていない。本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、数多くの変更及び変形が当業者に明らかになる。実施形態は、本発明の原理及び実際の適用を最もよく説明するために、及び当業者が、企図される特定の用途に適した様々な変更とともに様々な実施形態に関して本発明を理解することを可能にするために、選択されて記述されている。
【0030】
本発明の好適実施形態について記述したが、理解されるように、当業者は、現時及び将来の双方において、以下に続く請求項の範囲に入る様々な改善及び改良を為し得る。これらの請求項は、最初に記載された発明に対する適正な保護を維持するように解釈されるべきである。