(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記7つの評価領域の表裏撓み差から、前記7つの評価領域毎に表裏撓み差の平均値を算出した場合に、前記7つの評価領域の前記平均値の中での最大値と、前記7つの評価領域の前記平均値の中での最小値との差が、0.4mm以上であることを特徴とする請求項1に記載のガラス基板群。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
薄膜パターンの形成精度は、ガラス基板上に形成された薄膜パターン(例えば、ゲート電極のパターン)のトータルピッチで評価される場合がある。トータルピッチは、設計通りに薄膜パターンが形成されているかどうかの指標であり、例えば管理マーク等が付された、予め決められた2点間における設計距離と実測距離の差の値で管理される。
【0005】
トータルピッチの測定結果は、露光装置にフィードバックされ露光誤差が補正される場合がある。この場合、ガラス基板群に含まれるガラス基板毎にトータルピッチが大きく変動すると露光誤差の補正が困難になる。そして、露光誤差の補正ができない場合、画素の開口率低下や画素間の光漏れ等が生じてFPDの表示品質が著しく劣化するおそれがある。
【0006】
本発明は、複数のガラス基板を含むガラス基板群においてトータルピッチの変動を小さくすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者は、鋭意研究を重ねた結果、ガラス基板群に含まれるガラス基板毎に、表裏撓み差が局所的に変動することが、トータルピッチの変動原因の1つであることを知見するに至った。詳細には、ガラス基板は、一般的にオーバーフローダウンドロー法等のダウンドロー法やフロート法によって成形されるが、長時間に亘る成形過程の中で板引き方向と直交する方向の形状が変化しやすい。そのため、ガラス基板群に含まれるガラス基板を板引き方向と直交する方向で複数の領域に分割し、ガラス基板毎に各領域の表裏撓み差を比較すると、対応する同じ領域において表裏撓み差が変動しやすい。成膜工程では、ガラス基板を定盤(平面)に載置した状態で露光を行うため、このように表裏撓み差が変動すると、ガラス基板毎に定盤上での微視的な形状が不規則に変化し、トータルピッチの変動原因となる。従って、ガラス基板群のトータルピッチの変動を小さくする観点からは、ガラス基板群内でガラス基板毎の表裏撓み差の変動(ばらつき)を小さくすることが望ましい。
【0008】
すなわち、上記の課題を解決するために創案された本発明は、複数のガラス基板を含むガラス基板群であって、複数のガラス基板のそれぞれは、板引き方向に沿った第1の辺と、板引き方向と直交する方向に沿った第2の辺とを有する矩形状であり、かつ、第1の辺および第2の辺のそれぞれの長さが1000mm以上、板厚が2.0mm以下であり、複数のガラス基板について、第2の辺の方向の位置が等間隔で同じ大きさの7つの評価領域を設定し、7つの評価領域の表裏撓み差をそれぞれ測定した場合に、7つの評価領域のいずれでも、複数のガラス基板間での表裏撓み差の変化量が、0.4mm以下であることを特徴とする。このような構成によれば、第2の辺の方向の位置が等間隔である7つの評価領域のいずれでも、表裏撓み差の変化量(ガラス基板群内での表裏撓み差の最大値と最小値の差)が0.4mm以下となるため、ガラス基板毎の表裏撓み差の変動が小さく抑えられる。従って、複数のガラス基板を含むガラス基板群においてトータルピッチの変動を小さくできる。また、ガラス基板の撓み(表裏撓み差)を小さくすることによってガラス基板群でのトータルピッチの変動を小さくする場合、成形体といった製造設備の消耗による撓み差の悪化を改善するために設備を修理する頻度が増えることによって製造コストが増大する。本発明は、表裏撓み差の変化量を0.4mm以下とすることによってガラス基板群でのトータルピッチの変動を小さくするので、ガラス基での撓み(表裏撓み差)をある程度許容でき、製造コストの増大を抑制できる。ここで、「板引き方向」とは、ガラス基板を成形する際に板引きした方向を意味する。「板引き方向に沿った第1の辺」とは、板引き方向と幾何学的に平行な場合のみならず、実質的に平行とみなせる方向も含む意味である。「板引き方向と直交する方向に沿った第2の辺」とは、板引き方向と幾何学的に直交する方向のみならず、実質的に直交するとみなせる方向も含む意味である。「ガラス基板群」とは、狭義には、同一条件で製造された製品の集まりを意味するが、これに限定されず、広義には、同一の管理者により品質管理された同種の製品の集まりを意味する。
【0009】
上記の構成において、7つの評価領域の表裏撓み差から、7つの評価領域毎に表裏撓み差の平均値を算出した場合に、7つの評価領域の平均値の中での最大値と、7つの評価領域の平均値の中での最小値との差が、0.4mm以上であることが好ましい。このようにすれば、ガラス基板群に含まれる、個々のガラス基板が適度な撓みを有するので、成膜工程における定盤との密着状態が緩和される。従って、成膜工程が終了した後に、ガラス基板を定盤から分離する際に、薄膜パターンの破損原因となり得る剥離帯電が生じにくくなる。
【0010】
上記の構成において、最大値および最小値のそれぞれの絶対値が、0.4mm以下であることが好ましい。すなわち、表裏撓み差の値自体が大きくなりすぎても、成膜工程における露光時に定盤からガラス基板が乖離することにより露光誤差を補正するのが難しくなる場合がある。従って、7つの評価領域のいずれでも、表裏撓み差の絶対値が、上記数値範囲内であることが好ましい。
【0011】
上記の課題を解決するために創案された本発明は、複数のガラス基板を含むガラス基板群の製造方法であって、複数のガラス基板のそれぞれは、板引き方向に沿った第1の辺と、板引き方向と直交する方向に沿った第2の辺とを有する矩形状であり、かつ、第1の辺および第2の辺のそれぞれの長さが1000mm以上、板厚が2.0mm以下であり、複数のガラス基板について、第2の辺の方向の位置が異なる複数の評価領域を設定し、複数の評価領域の表裏撓み差をそれぞれ測定する工程と、複数の評価領域について、複数のガラス基板間での表裏撓み差の変化量をそれぞれ求める工程と、複数のガラス基板間での表裏撓み差の変化量に基づいて複数のガラス基板の合否を判定する工程とを備えることを特徴とする。このような構成によれば、複数のガラス基板間での表裏撓み差の変化量に基づいて複数のガラス基板の合否が判定されるため、合格と判定された複数のガラス基板については基板毎の表裏撓み差の変動は小さく抑えられる。従って、合格と判定された複数のガラス基板を含むガラス基板群においてトータルピッチの変動を小さくできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数のガラス基板を含むガラス基板群においてトータルピッチの変動を小さくできる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、ガラス基板群の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0015】
図1に示すように、第1の実施形態に係るガラス基板群Ggは、1つの縦置き用パレット1の上に、縦姿勢(水平方向に対して45°〜80°の傾斜姿勢が好ましく、60°〜75°がより好ましい)で積層された複数のガラス基板Gsからなる。
【0016】
パレット1は、縦姿勢のガラス基板Gsの積層体からなるガラス基板群Ggの底面を支持する底面支持部1aと、ガラス基板群Ggの背面を支持する背面支持部1bとを備えている。
【0017】
ガラス基板群Ggに含まれる各ガラス基板Gsのうち、背面支持部1b側の面(背面側の面)が、成膜工程で薄膜パターンが形成される保証面とされている。パレット1からガラス基板Gsを取り出す際に、吸着パッドが保証面と直接接触しないようにするためである。
【0018】
図示は省略するが、例えば、ガラス基板群Ggの最前面に押え板を配置すると共に、この押え板の上にガラス基板群Ggの幅方向(例えば、水平方向)の両側に食み出す押えバーを配置し、押えバーの両端部を締結部材によって背面支持部1b側に引き込むように締め付けることで、ガラス基板群Ggがパレット1に固定される。ガラス基板群Ggの幅方向の移動を規制するために、ガラス基板群Ggの側面を押圧する押え部材を配置してもよい。なお、ガラス基板群Ggとパレット1の固定方法は、特に限定されず、ベルト止め等の任意の固定方法を採用することができる。
【0019】
また、
図2に示すように、第2の実施形態に係るガラス基板群Ggは、1つの横置き用パレット2の上に、横姿勢(0°(水平姿勢)〜30°が好ましく、0°〜15°がより好ましい)で積層された複数のガラス基板Gsからなる。
【0020】
パレット2は、横姿勢のガラス基板Gsの積層体からなるガラス基板群Ggの底面を支持する底面支持部2aを備えている。
【0021】
ガラス基板群Ggに含まれる各ガラス基板Gsのうち、底面支持部2a側の面(下面)が、成膜工程で薄膜パターンが形成される保証面とされている。パレット1からガラス基板Gsを取り出す際に、吸着パッドが保証面と直接接触しないようにするためである。
【0022】
図示は省略するが、例えば、ガラス基板群Ggの最前面(最上面)に押え板を配置すると共に、この押え板の上にガラス基板群Ggの両側に食み出す押えバーを配置し、押えバーの両端部を締結部材によって底面支持部2a側に引き込むように締め付けることで、ガラス基板群Ggがパレット2に固定される。ガラス基板群Ggの横ずれを規制するために、ガラス基板群Ggの側面を押圧する押え部材を配置してもよい。押え部材は、例えば、ガラス基板群Ggの四方を取り囲むように点在して複数配置される。なお、ガラス基板群Ggとパレット2の固定方法は、特に限定されず、ベルト止め等の任意の固定方法を採用することができる。
【0023】
ここで、第1及び第2の実施形態に係るガラス基板群Ggの場合、複数のガラス基板Gsが積層状態であるため、ガラス基板Gsの各相互間に紙(合紙)や発泡樹脂シートなどの保護シート(図示省略)を挟むことが好ましい。
【0024】
ガラス基板群Ggに含まれる複数のガラス基板Gsのそれぞれは、オーバーフローダウンドロー法、スロットダウンドロー法などのダウンドロー法や、フロート法などの公知の成形方法によって製造される。本実施形態では、オーバーフローダウンドロー法によって製造される。
【0025】
ガラス基板群Ggに含まれる複数のガラス基板Gsのそれぞれは、上記の成形方法に起因する板引き方向Xに沿った第1の辺Gaと、板引き方向Xと直交する方向Yに沿った第2の辺Gbとを有する矩形状であり、例えばFPD用のガラス基板として利用される。第1の辺Gaおよび第2の辺Gbの長さは1000mm以上であり、1500mm以上であることが好ましい。第1の辺Gaおよび第2の辺Gbの長さは4000mm以下であることが好ましい。板厚は2.0mm以下であり、0.7mm以下であることが好ましい。板厚は0.3mm以上であることが好ましい。
【0026】
図3に示すように、複数のガラス基板Gsのそれぞれにつき、第2の辺Gbの方向の位置が等間隔である7つの評価領域A,B,C,D,E,F,Gを設定した場合に、7つの評価領域A〜Gのいずれでも、複数のガラス基板Gs(ガラス基板群Gg)での表裏撓み差の変化量が、0.4mm以下となる。7つの評価領域A〜Gの中に、複数のガラス基板Gsの表裏撓み差の変化量が0.4mm超となる領域が含まれると、トータルピッチの変動が大きくなり、成膜工程で露光不良による成膜不良が生じやすくなる。これに対し、7つの評価領域A〜Gのいずれでも、複数のガラス基板Gsの表裏撓み差の変化量が0.4mm以下となると、トータルピッチの変動が小さくなり、成膜工程で露光不良が生じにくく、適正な薄膜パターンを形成することが可能となる。表裏撓み差の変化量は、0.3mm以下であることが好ましく、0.2mm以下であることがより好ましい。
【0027】
また、7つの評価領域毎に表裏撓み差の平均値を算出した場合に、7つの評価領域A〜Gの中で表裏撓み差の平均値が最大となる値と、7つの評価領域A〜Gの中で表裏撓み差の平均値が最小となる値との差が、0.4mm以上となることが好ましい。この最大値と最小値の差は、0.5mm以上であることがより好ましい。なお、最大値の絶対値と最小値の絶対値は、それぞれ0.3mm以下であることが好ましい。
【0028】
ここで、複数のガラス基板Gsの表裏撓み差の変化量は、次の手順で測定する。
【0029】
(1)まず、ガラス基板群Ggから任意の5枚のガラス基板Gsを採取する。
(2)採取した各ガラス基板Gsに7つの評価領域A〜Gを設定する。各評価領域A〜Gは、成膜工程で薄膜パターンが形成される有効ゾーン内に設定される。各評価領域A〜Gは、板引き方向と直交する幅方向の長さが370mm、板引き方向長さが470mmの大きさの長方形とする。各評価領域A〜Gは、幅方向に等間隔(間隔ΔI)に設けられる。そして、各評価領域A〜Gで評価領域と同じ大きさのガラス片Gpを採取し、各ガラス基板Gsに対し7枚のガラス片Gpを用意する。なお、有効ゾーンの幅が小さく、7つの評価領域A〜Gを幅方向に沿って一列で設けられない場合は、
図3に示すように、幅方向に沿って二列になるように、7つの評価領域A〜Gをジグザグに設ける。
(3)各ガラス片(計35枚のガラス片)Gpの表裏撓み差を測定する。
図4に示すように、表裏撓み差は、ガラス片Gpの一方の主表面(例えば保証面)を上側にした場合の第1の撓みW1と、ガラス片Gpの他方の主表面(例えば保証面と反対側の非保証面)を上側にした場合の第2の撓みW2とを測定し、第1の撓みW1と第2の撓みW2の差(W1−W2)により求める。ガラス片Gpの撓みの測定では、ガラス片Gpの370mmをなす短辺方向両端部を350mmの支持スパンLで支持する。
(4)幅方向の各評価領域A〜Gで、表裏撓み差の最小値と最大値とを求め、その差を表裏撓み差の変化量とする。
【0030】
また、7つの評価領域A〜Gの平均値の中での最大値と、7つの評価領域A〜Gの平均値の中での最小値との差は、上記の(1)〜(3)の手順で測定した表裏撓み差から7つの評価領域A〜G毎に平均値を算出し、平均値の最大値と最小値とをそれぞれ求め、その差により算出される。
【0031】
ここで、ガラス基板Gsの板引き方向は、例えば、暗室でガラス基板Gsの角度を調整しながら光源(例えばキセノンライト)から光を照射し、その透過光をスクリーンに投影することで、筋状の縞模様として観測できる。従って、成形後のガラス基板Gsの状態であっても、成形時の板引き方向を特定できる。
【0032】
次に、以上の構成を備えたガラス基板群Ggの製造方法を説明する。
【0033】
図5に示すように、本製造方法では、ガラス基板群の製造装置10が用いられる。製造装置10は、ガラスリボンGrを連続成形する装置であって、ガラスリボンGrを成形する成形炉11と、ガラスリボンGrを徐冷(アニール処理)する徐冷炉12と、ガラスリボンGrを室温付近まで冷却する冷却ゾーン13と、成形炉11、徐冷炉12及び冷却ゾーン13のそれぞれに上下複数段に設けられたローラ対14とを備えている。
【0034】
成形炉11の内部空間には、オーバーフローダウンドロー法により溶融ガラスGmからガラスリボンGrを成形する成形体15が配置されている。成形体15に供給された溶融ガラスGmは成形体15の頂部15aに形成された溝部から溢れ出るようになっており、その溢れ出た溶融ガラスGmが成形体15の断面楔状を呈する両側面15bを伝って下端で合流することで、板状のガラスリボンGrが連続成形される。成形されるガラスリボンGrは、縦姿勢(好ましくは鉛直姿勢)であり、X方向が板引き方向となる。
【0035】
徐冷炉12の内部空間は、下方に向かって所定の温度勾配を有している。縦姿勢のガラスリボンGrは、徐冷炉12の内部空間を下方に向かって移動するに連れて、温度が低くなるように徐冷される。徐冷により、ガラスリボンGrの内部歪を低減する。徐冷炉12の内部空間の温度勾配は、例えば、徐冷炉12の内面に設けた加熱装置などの温度調整装置により調整することができる。
【0036】
複数のローラ対14は、縦姿勢のガラスリボンGrの両側の側端部を表裏両側から挟持するようになっている。なお、徐冷炉12の内部空間などでは、複数のローラ対14の中に、ガラスリボンGrの側端部を挟持しないものが含まれていてもよい。換言すれば、ローラ対14の対向間隔をガラスリボンGrの側端部の厚みよりも大きくし、ローラ対14の間をガラスリボンGrが通過するようにしてもよい。本実施形態では、ガラスリボンGrを挟んで対向するローラ対14を構成する個々のローラは、炉外に延びた回転軸を有する両持ちローラによって構成されている。
【0037】
なお、本実施形態では、成形炉11、徐冷炉12及び冷却ゾーン13を区画する壁部X1の外側が、外包囲体(例えば、特許文献2に開示の建屋)X2で取り囲まれている。外包囲体X2と壁部X1との間の空間には、冷却ゾーン13の上端部に対応する位置と、冷却ゾーン13の下端部に対応する位置とに、それぞれ仕切り部(例えば、建屋の各階のフロア面)X3,X4が設けられている。これら仕切り部X3,X4によって、外包囲体X2と壁部X1との間の空間は、徐冷炉12を囲む部屋R1と、冷却ゾーン13を囲む部屋R2とに分割されている。
【0038】
図5に示すように、製造装置10は、冷却ゾーン13の下方位置に、切断装置16を備えている。切断装置16は、縦姿勢のガラスリボンGrを所定の長さ毎に幅方向に切断することにより、ガラスリボンGrからガラス基板Gsを順次切り出すように構成されている。ここで、幅方向は、ガラスリボンGrの長手方向(板引き方向)と直交する方向であり、本実施形態では実質的に水平方向と一致する。
【0039】
切断装置16は、冷却ゾーン13から降下してきた縦姿勢のガラスリボンGrの一方の主表面上を走行することで、ガラスリボンGrの幅方向に沿ってスクライブ線Sを形成するホイールカッター(図示省略)と、スクライブ線Sが形成された領域に他方の主表面側から支持する接触部17と、切り出し対象のガラス基板Gsに対応する部分のガラスリボンGrを保持した状態で、スクライブ線S及びその近傍に曲げ応力を作用させるための動作(A方向の動作)を行う保持部18とを備えている。
【0040】
ホイールカッターは、降下中のガラスリボンGrに追従降下しつつ、ガラスリボンGrの幅方向の全域又は一部にスクライブ線Sを形成する構成となっている。本実施形態では、相対的に厚みが大きい耳部を含む側端部にもスクライブ線Sが形成されるが、側端部にスクライブ線Sを形成しなくてもよい。なお、スクライブ線Sはレーザーの照射等によって形成してもよい。また、耳部を含む側端部は後工程で切断除去されるため、ガラス基板Gsの状態では耳部はない。
【0041】
接触部17は、降下中のガラスリボンGrに追従降下しつつ、ガラスリボンGrの幅方向の全域又は一部と接触する平面を有する板状体(定盤)から構成されている。接触部17の接触面は、幅方向に湾曲した曲面であってもよい。
【0042】
保持部18は、ガラスリボンGrの幅方向両側の側端部を表裏両側から挟持するチャックにより構成されている。保持部18は、ガラスリボンGrの幅方向両側の側端部のそれぞれにおいて、ガラスリボンGrの長手方向に間隔を置いて複数設けられている。一方側の側端部に設けられた複数の保持部18は、これら全てが同一のアーム(図示省略)によって保持されている。また同様に、他方側の側端部に設けられた複数の保持部18も、これら全てが同一のアーム(図示省略)によって保持されている。各々のアームの動作により、複数の保持部18が降下中のガラスリボンGrに追従降下しつつ、接触部17を支点としてガラスリボンGrを湾曲させるための動作(A方向の動作)を行う。これにより、スクライブ線S及びその近傍に曲げ応力を付与し、ガラスリボンGrをスクライブ線Sに沿って幅方向に割断する。この割断の結果、ガラスリボンGrからガラス基板Gsに対応する部分が切り出される。そして、このような割断(切断)動作を繰り返すことで、ガラス基板群Ggに含まれる複数のガラス基板Gsが製造される。なお、保持部18は、挟持する保持形態に限定されるものではなく、例えば、ガラスリボンGrのいずれか一方の主表面を吸着保持するものであってもよい。
【0043】
製造されたガラス基板Gsは、1枚又は複数枚の製品ガラス基板が採取されるガラス原板(マザーガラス)であり、露光工程を含む成膜工程にて、各製品ガラス基板に対応する位置に薄膜パターンを一括形成することで、一枚のガラス原板から複数のFPDが製造される。
【0044】
ここで、上記の徐冷炉12で実施される徐冷工程でガラスリボンGrを適切に徐冷することで、ガラスリボンGr及びこのガラスリボンGrから採取されるガラス基板Gsにおいて、所定の形状品位を得ることができる。このとき、徐冷工程の温度域内でガラスリボンGrの周囲温度が経時変化すると、ガラスリボンGr(ガラス基板Gs)の形状品位に影響を与える。従って、徐冷炉12を囲む部屋R1と冷却ゾーン13(壁部X1で区画される冷却ゾーン13の内部空間)の差圧変動を抑制することで、徐冷炉12内の温度を一定に保った。その結果、ガラス基板群Ggの表裏撓み差の変化量を大幅に低減することが可能となった。
【0045】
詳細には、徐冷炉12内の温度制御が不十分であった比較例では、
図6に示すように、7つの領域A〜Gにおいて、ガラス基板群Ggの表裏撓み差の変化量が0.4mm超となる領域が含まれた。この際、徐冷炉12を囲む部屋R1と冷却ゾーン13の差圧の変動幅は、3Pa〜5Paで変化した。これに対し、上述のように、徐冷炉12を囲む部屋R1と冷却ゾーン13の差圧変動を抑制して徐冷炉12内の温度制御を十分に行った実施例では、
図7に示すように、7つの評価領域A〜Gのいずれにおいても、ガラス基板群Ggの表裏撓み差の変化量が0.4mm以下まで低減した。この際、徐冷炉12を囲む部屋R1と冷却ゾーン13の差圧の変動幅は、0.5Pa〜2Paで変化した。なお、差圧の変動幅とは、ガラス基板群Ggを生産する期間における徐冷炉12を囲む部屋R1と冷却ゾーン13の差圧の最大値と最小値の差を意味する。
【0046】
図7の例の場合、7つの評価領域A〜Gのいずれにおいても、ガラス基板群Ggの表裏撓み差の変化量は0.1mm以下(領域A:0.1mm,領域B:0.1mm,領域C:0.1mm,領域D:0.1mm,領域E:0.0mm,領域F:0.0mm,領域G:0.1mm)である。また、7つの評価領域A〜Gの表裏撓み差の平均値の中で最大値は0.23mmであり、7つの評価領域A〜Gの表裏撓み差の平均値の中で最小値は−0.2mmであり、これら最大値と最小値の差は0.43mmである。もちろん、
図7の結果はあくまで一例であり、この結果に限定されるものではない。
【0047】
本実施形態の製造方法は、複数のガラス基板について、第2の辺の方向の位置が異なる複数の評価領域を設定し、複数の評価領域の表裏撓み差をそれぞれ測定する工程と、複数の評価領域について、複数のガラス基板間での表裏撓み差の変化量をそれぞれ求める工程と、複数のガラス基板間での表裏撓み差の変化量に基づいて複数のガラス基板(ガラス基板群)の合否を判定する工程とを備えることが好ましい。前述の(1)〜(5)の手順により、複数の評価領域の表裏撓み差をそれぞれ測定し、複数のガラス基板間での表裏撓み差の変化量を求めることができる。この場合、前述の(1)でガラス基板群Ggから任意のガラス基板Gsを採取する枚数は、例えば3〜10枚とすればよい。その際、割断によって切り出されたガラス基板Gsを一定の時間間隔(例えば0.5〜12時間毎)で採取してもよい。また、評価領域A〜Gは、7つに限らず、例えば3〜10つとしてもよい。各評価領域の幅方向の長さは370mmに限らず、例えば300〜600mmとしてもよく、板引き方向長さは470mmに限らず、例えば300〜700mmとしてもよい。さらに、支持スパンLは350mmに限らず、例えば200〜500mmとしてもよい。
【0048】
合否の判定は、表裏撓み差の変化量が0.4mm以下である場合に合格とすることが好ましく、0.3mm以下である場合に合格とすることがさらにより好ましく、0.2mm以下である場合に合格とすることが最も好ましい。ただし、支持スパンLが長くなるのに従って第1の撓みW1及び第2の撓みW2が増加する。このため、支持スパンLが350mmでない場合は、支持スパンLが350mmである表裏撓み差((W1−W2)×350/L)に基づいて合否を判定すればよい。あるいは、支持スパンLが350mmでない場合は、表裏撓み差の変化量が(0.4×L/350)mm以下である場合に合格とすることが好ましく、(0.3×L/350)mm以下である場合に合格とすることがさらにより好ましく、(0.2×L/350)mm以下である場合に合格とすることが最も好ましい。
【0049】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0050】
上記の実施形態では、ガラスリボンGrをスクライブ割断する場合を説明したが、ガラスリボンGr及び/又はガラス基板Gsの切断には、レーザー割断やレーザー溶断等の他の切断方法を用いてもよい。