特許第6902218号(P6902218)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6902218
(24)【登録日】2021年6月23日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】車体前部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/08 20060101AFI20210701BHJP
【FI】
   B62D25/08 H
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-245531(P2016-245531)
(22)【出願日】2016年12月19日
(65)【公開番号】特開2018-99930(P2018-99930A)
(43)【公開日】2018年6月28日
【審査請求日】2019年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(72)【発明者】
【氏名】松永 憲尚
【審査官】 久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−184583(JP,A)
【文献】 特開平02−175473(JP,A)
【文献】 特開2006−281922(JP,A)
【文献】 特開2015−104995(JP,A)
【文献】 特開2015−157527(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00−25/08,
B62D 25/14−29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体カウル部の上方開放部分に配置される樹脂部材と、この樹脂部材の裏面側に配置されるクリップと、ウインドシールド下部側の車体カウル部に組み付けられたブラケットと、このブラケットの板面に設けられた係止部と、前記クリップに設けられ、且つ前記ブラケットの係止部に係合する係合部とを備え、前記係合部が係止部に係合した状態で前記クリップが前記ブラケットに組み付けられており、
前記ブラケットの組付け面には、前記係止部としての開口穴が形成されており、この開口穴に係合する係合部としての突起部を裏面に設けた前記クリップが前記樹脂部材の裏面に装着され、
前記開口穴が形成されたブラケットの前端部は上部後方に傾斜して折り曲げられ、
前記ブラケットの前端傾斜面と、前記車体カウル部に組み付けられた固定面との角部には両側側縁部に切欠き部が形成されていることを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記ブラケットの組付け面に設けた開口穴は前記突起部よりも組み付け部分の面積が大きいことを特徴とする請求項1に記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記クリップの後面には、前記突起部の左右両側に縦方向のスリットが設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車体前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の前部車体構造には、特許文献1に示すように、エンジンルームと車室を仕切るダッシュパネルと、ダッシュパネルに連結され、且つその上側近傍において車幅方向に延設されたカウル部と、カウル部の上側近傍においてルーフまで延びるフロントガラスであるウインドシールドが設けられている。カウル部は、カウルフロントと、合成樹脂製のカウルトップガーニッシュと、カウルパネルとを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−13144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の技術では、合成樹脂製のカウルグリル(カウルトップガーニッシュ)の上方から荷重を加えると、カウルグリルの後端部がウインドシールドから外れる虞がある。
【0005】
本発明は、車体カウル部の上方開放部分に配置される樹脂部材の外れを防ぎ、かつ過大な荷重が上方から作用した場合には、車体の折れを阻害しないように樹脂部材の固定部を支持した車体前部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、車体カウル部の上方開放部分に配置される樹脂部材と、この樹脂部材の裏面側に配置されるクリップと、ウインドシールド下部側の車体カウル部に組み付けられたブラケットと、このブラケットの板面に設けられた係止部と、前記クリップに設けられ、且つ前記ブラケットの係止部に係合する係合部とを備え、前記係合部が係止部に係合した状態で前記クリップが前記ブラケットに組み付けられており、前記ブラケットの組付け面には、前記係止部としての開口穴が形成されており、この開口穴に係合する係合部としての突起部を裏面に設けた前記クリップが前記樹脂部材の裏面に装着され、前記開口穴が形成されたブラケットの前端部は上部後方に傾斜して折り曲げられ、前記ブラケットの前端傾斜面と、前記車体カウル部に組み付けられた固定面との角部には両側側縁部に切欠き部が形成されていることにある。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車体カウル部の上方開放部分に配置される樹脂部材の外れを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明による車体前部構造の実施の形態を示す斜視図である。
図2図1のブラケット取付部Xを示す拡大斜視図である。
図3】カウルトップガーニッシュの組付け部を示し、(a)は組み付け時のクリップの変形を示す図1のA−A線断面図、(b)はカウルトップガーニッシュを組み付けた状態を示す図1のA−A線断面図である。
図4図3のブラケットとカウルトップガーニッシュ取付部を示す斜視図である。
図5図4のクリップ取付部を示す斜視図である。
図6】クリップを示す斜視図である。
図7】クリップ取付部に組み付けられたクリップを示す斜視図である。
図8】カウルトップパネルに取り付けられたブラケットを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下図示の実施の形態を、図1ないし図8の図面を参照しながら詳細に説明する。
図1ないし図3(a)(b)は、車両としての自動車の前部車体を示したもので、この車体1の前面には、フロントガラスとなるウインドシールド2が設けられている。このウインドシールド2の下部側には、カウル部3が車幅方向に設けられ、カウル部3の下方には、エンジンルーム4と車室5内とを区画するダッシュパネル6が設けられている。前記カウル部3は、ウインドシールド2下部側のカウルトップパネル7と、エンジンルーム4の上方側で、カウルトップパネル7の前方側を一定幅で区画する図示しないカウルフロントパネルと、樹脂部材としてカウルトップガーニッシュ8とで、閉じ断面構造に形成されている。
【0010】
前記カウルトップガーニッシュ8は、図示しないカウルフロントパネルとカウルトップパネル7とで形成された断面U字状の溝部を、塞ぐように設けられており、カウルトップガーニッシュ8の後端部を上方に立ち上げて車幅方向の壁部8aが形成されており、その壁部8aの先端部8bにウインドシールド2に当接するシール部材9が装着されている。カウルトップガーニッシュ8の後端部立ち上がり部の壁部8aの後面にはウインドシールド2の下端部を保持するL字形の保持部10が設けられている。この保持部10の下面には、車幅方向にスリット11aを形成したクリップ支持部材11が一体成形されている。
【0011】
前記クリップ支持部材11には、後面側に係合部となる突起部12aを形成したクリップ12が装着されている。このクリップ12は、図4ないし図7に示すように突起部12aを形成した後面12bの中央部分12cが両側部12dと分離されて、図3に示すように、縦断面略逆V字状の可動部に形成されている。前記クリップ12の前面12eには前方に延びる脚部12fが形成され、脚部12fの先に側面視で略T字状のストッパ片12gが設けられている。また前記突起部12aの下方には中央部分12cの下端を延出した係止片12hが設けられている。12iは後面12bの中央部分12cと両側部12dを分離するスリットである。
【0012】
一方、前記カウルトップパネル7の前部には、図4図5および図8に示すように、L字形のブラケット13が車幅方向に一定間隔で所定数装着されている。前記カウルトップパネル7は、ウインドシールド2の下端を接着したウインドシールド2の下部後方から下方に向けて設けられた第1の縦壁面部7aと、この第1の縦壁面部7aの下端から車体後方に向けて延設された連結面部7bと、連結面部7bの後端から下方に向けて延設された第2の縦壁面部7cとを備えている。前記L字形のブラケット13は、前記カウルトップパネル7の連結面部7bに1か所または複数個所のスポット溶接w等により取り付けられている。前記L字形のブラケット13は、帯状のプレートをL字形に折り曲げて構成されており、前記連結面部7bに固定する基端部13aと、前端部に立ち上げられて設けられ、車体後方に傾斜するように折り曲げて形成された組付け面13bとからなっている。前記L字形のブラケット13の両側部には、それぞれフランジ部13cが設けられており、両側フランジ部13cの折り曲げ部分の縁部には、切欠き部13dがそれぞれ設けられている。また、ブラケット13の組付け面13bには、クリップ12の突起部12aに係合する係止部となる開口部13eが所定の大きさで形成されている。ブラケット13の開口穴13eは、前記クリップ12の突起部12aよりも組み付け部分の面積が大きいので、通常時には、外れにくく、過大な衝撃が加わった場合には外れ易くなっている。
【0013】
前記構成による車体前部構造の組付け手順を説明する。
カウルトップパネル7の連結面部7bの所定位置に、L字形のブラケット13の基端部13aをスポット溶接wで固定する(図8参照)。一方、カウルトップガーニッシュ8の後端部立ち上がり部の壁部8aの後面に設けられたL字形の保持部10の下面に設けられたクリップ支持部材11のスリット11aに、脚部12fを通して組み付け、クリップ12を装着する。
次に、クリップ12の突起部12aを、ブラケット13の立ち上げられた組付け面13bの開口部13eに係合させる。クリップ12は中央部分12cが図3(a)の二点鎖線で示すように撓むので、撓ませた状態で突起部12aを開口部13eに係合させる。
クリップ12は両側部12dと係止片12hが開口部13eの縁部に係止されるので、突起部12aが開口部13eに係合した状態で保持される。
こうして、カウルトップガーニッシュ8の後端部の壁部8aがクリップ支持部材11とクリップ12とブラケット13を介してカウルトップパネル7に連結されるので、カウルトップガーニッシュ8を上方から押し付けてもカウルトップパネル7との係合が保持される。
【0014】
上記実施の形態によれば、カウルトップガーニッシュ8を上方から押し付けてもカウルトップパネル7との係合が保持されるので、カウルトップガーニッシュ8が変形する虞が阻止される。また、カウルトップガーニッシュ8に過大な荷重が加わった場合には、ブラケット13が両側フランジ部13cの折り曲げ部分に形成された切欠き部13dから容易に折れ曲がる。こうして、カウルトップガーニッシュ8の離脱を助け、カウルトップガーニッシュ8の後方への移動を妨げないことから、過大な荷重が加わった場合には衝撃を吸収することができる。
【0015】
本発明によれば、車体カウル部の上方開放部分に配置される樹脂部材としてのカウルトップガーニッシュ8の外れを防ぐことができる。
また、ブラケット13の組付け面13bには、前記係止部としての開口穴13eが形成されており、この開口穴13eに係合する係合部としての突起部12aを裏面に設けた前記クリップ12が前記カウルトップガーニッシュ8の裏面に装着されている。その結果、ある程度の荷重に対しては、カウルトップガーニッシュ8の外れを防ぎ、それ以上の荷重に対しては、ブラケット13が折れ曲がり、カウルトップガーニッシュ8との係合を解除してカウルトップガーニッシュ8の変形を助けることができる。
さらに、前記開口穴13eが形成されたブラケット13の前端部は上部後方に傾斜して折り曲げられているので、組付け面13bの上方が後方に倒れることで組み付けが外れ易くなっている。また、ブラケット13は片持ち支持なので、変形しやすくなっている。
またさらに、ブラケット13の前端傾斜面と、前記車体カウル部3に組み付けられた固定面との角部には両側側縁部に切欠き部13dが形成されているので、切欠き部13dを介して折り曲げやすくなっている。その結果、過大な衝撃が加わった場合には、容易に折れ曲ることで、損傷を最小限に抑えることができる。
また、ブラケット13の組付け面13bに設けた開口穴13eは前記突起部12aよりも組み付け部分の面積が大きいので、通常時には、外れにくく、過大な衝撃が加わった場合には外れ易くなっていることから、損傷を最小限に抑えることができる。
さらに、クリップ12の後面12bには、前記突起部12aの左右両側に縦方向のスリット12iが設けられているので、クリップ12のブラケット13への組付け時に突起部12aを含む後面12bが前方に撓んで組み付けが容易にできる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
なお、本発明は、上記実施の形態のみに限定されるものではなく、例えば、ブラケット13の幅、厚み、長さ、スポット溶接の数などは、任意に変更して実施することができる。また、クリップ12の突起部12aの大きさもブラケット13に合わせて任意に設定することができる。クリップ支持部材11の形状についてもクリップ12を支持できるものであれば、スリット11aに限らず、どのような構造のものを採用することも可能である。その他、本発明の技術的範囲を変更しない範囲内で適宜、変更して実施し得ることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0017】
1 車体
2 ウインドシールド
3 カウル部
4 エンジンルーム
5 車室
6 ダッシュパネル
7 カウルトップパネル
7a 第1の縦壁面部
7b 連結面部
7c 第2の縦壁面部
8 カウルトップガーニッシュ(樹脂部材)
8a 壁部
8b 先端部
9 シール部材
10 保持部
11 クリップ支持部材
12 クリップ
12a 突起部(係合部)
12b 後面
12c 中央部分
12d 側部
12e 前面
12f 脚部
12g ストッパ片
12h 係止片
12i スリット
13 ブラケット
13a 基端部
13b 組付け面
13c フランジ部
13d 切欠き部
13e 開口部(係止部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8