(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【0007】
特許文献4〜特許文献6に開示のペダル装置では、ペダルの傾斜角度を調整するとき、まず、リンク部材やチェーンに対しペダルの自由端を上下に摺動させて、ペダルの自由端の高さを変更する。次に、ペダルの自由端を調整後の高さに維持したまま、ボルトによって、ペダルの自由端をリンク部材やチェーンに固定する。このとき、ユーザは、片方の手でペダルの自由端を摺動させてペダルの傾斜角度を調整した後、片方の手でペダルを持ったまま別の片方の手でボルトを締め付けていた。このように、従来は、両手を使って上記の作業を行っていたため、ペダルの傾斜角度の調整が面倒であった。
【0008】
特に、特許文献4及び特許文献5の場合、ペダル装置をバスドラムやハイハットスタンドに取り付けた状態で、ボルトがペダルの自由端及びリンク部材に対して横方向から差し込まれている。このため、ユーザは、見え難い位置にあるボルトを操作しながら、ペダルの傾斜角度を調整しなければならない。特許文献6の場合、ペダル角度調整機構が、互いに噛み合う一対のブロック体から構成されている。このため、特許文献4及び特許文献5の場合よりも、チェーンにペダルの自由端を固定する固定力が高い。しかしながら、チェーンに対するペダルの固定位置、即ち、ペダルの自由端の高さ位置を段階的にしか調整することができない。このため、ペダルの傾斜角度を微調整することができない。
【0009】
また、特許文献4〜特許文献6に開示のペダル装置は、リンク部材やチェーンに対してペダルを上下に摺動させるため、ペダルの自由端から垂直に延びる突起部分を有している。このため、ペダルを操作して演奏している最中に、ペダルの突起部分が演奏者の足先やペダル装置の部品に接触することがある。これにより、ペダルの踏み込み操作に支障をきたすこともある。
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、ペダルの傾斜角度のみを容易に調整することができる楽器用ペダル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、楽器用ペダル装置であって、前端及び後端を有するベースと、ベースの前端で上方に引っ張られると共にベースの後端に回動可能に連結され、踏み込み操作によりベースの後端を中心に回動するペダルと、ペダルの踏み込み操作により作動する作動部材と、作動部材とペダルの自由端とを連結すると共に、ペダルの操作力を作動部材に伝達する連結部材と、連結部材とペダルの自由端とを連結すると共に、ペダルの傾斜角度を調整するペダル角度調整装置とを備える楽器用ペダル装置において、ペダル角度調整装置は、連結部材及びペダルの自由端に対して軸線周りにそれぞれ回動可能にかつ連結部材及びペダルの自由端の一方に対して固定可能に構成され
、連結部材に対するペダル角度調整装置の回動中心が第1の軸線であり、ペダルの自由端に対するペダル角度調整装置の回動中心が第2の軸線であり、連結部材又はペダルの自由端に対するペダル角度調整装置の回動により、第1の軸線に対する第2の軸線の高さを調整することで、ペダルの傾斜角度を調整するように構成されていることを要旨とする。
【0012】
この構成によれば、ペダル角度調整装置を連結部材及びペダルの自由端の一方に対して軸線周りに回動させながら、ペダルの傾斜角度を調整することができる。また、ペダルの傾斜角度を調整した後は、ペダル角度調整装置を連結部材及びペダルの自由端の一方に対して固定することにより、ペダルの傾斜角度を固定することができる。このように、ユーザは、連結部材及びペダルの自由端の一方に対するペダル角度調整装置の連結角度を変えるだけで、ペダルの傾斜角度を調整することができる。よって、ペダルの傾斜角度のみを容易に調整することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、ペダル角度調整装置は、ペダルの傾斜角度を調整する際に操作される操作部を備え、操作部は、上方を向いて配置されていることを要旨とする。
【0014】
この構成によれば、操作部は、ユーザにとって、ペダルの傾斜角度を調整する際に見易くかつ操作し易い位置に配置されている。このため、ペダルの傾斜角度を調整する作業が容易となる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、ペダルを踏み込む前の初期位置にペダルを保持するためのばねを備え、ばねは、連結部材及びペダル角度調整装置を介してペダルに連結されていることを要旨とする。
【0016】
この構成によれば、ペダル角度調整装置が連結部材及びペダルにそれぞれ回動可能に連結されている状態で、ばねは、ペダル角度調整装置及び連結部材を介して、ペダルの自由端を所定の高さに保持することができる。これにより、ユーザがペダルを手で持たなくても、ペダルは、ばねの弾性力によって、所定の角度で傾斜した姿勢に保持される。つまり、ペダルの傾斜角度を調整後も、ペダルは、調整後の角度で傾斜した姿勢に保持される。よって、ペダルを手で持ちながらペダルの傾斜角度を調整する従来の方法よりも、ペダルの傾斜角度を容易に調整することができる。
【0017】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の発明において、ペダル角度調整装置は、連結部材及びペダルの自由端の一方に設けられる軸部材と、連結部材及びペダルの自由端の他方に設けられる固定部材とを備え、固定部材は、軸部材に対して軸線周りに回動可能にかつ軸部材に対して固定可能に構成されていることを要旨とする。
【0018】
この構成によれば、ペダル角度調整装置を軸部材と固定部材とに分けて構成しかつそれらを連結部材とペダルの自由端とにそれぞれ設けたことで、固定部材を軸部材に対して軸線周りに回動させながら、ペダルの傾斜角度を調整することができる。つまり、ユーザは、固定部材を軸部材に対して屈曲させるように動かすだけで、ペダルの傾斜角度を調整することができる。
【0019】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、軸部材は、ペダルの自由端に設けられ、固定部材は、連結部材の下端に設けられていることを要旨とする。
この構成によれば、ペダルが踏み込まれたときに連結部材の上端を中心に回動する部分の長さをリンク長とした場合、軸部材をペダルの自由端に固定部材を連結部材の下端にそれぞれ設けたことで、軸部材と固定部材との屈曲角度に関係無く、リンク長を一定に保つことができる。このため、ペダルの傾斜角度を調整しても、ペダルを踏み込んだときの操作感が変化しない。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載の発明において、固定部材は、軸部材を上方から把持する第1クランプ部材と、第1クランプ部材の基端に回動可能に連結され、軸部材を下方から把持する第2クランプ部材と、第1及び第2クランプ部材をそれらの基端と反対側で固定するのに用いられる締め付け部材とを備えることを要旨とする。
【0021】
この構成によれば、固定部材は、軸部材を上下両方から把持するクランプ構造を有している。このため、締め付け部材を用いることにより、第1及び第2クランプ部材が軸部材を把持した状態で、両クランプ部材をそれらの基端と反対側で固定することができる。これにより、軸部材に対する固定部材の固定力を高めることができる。このため、軸部材と固定部材との屈曲角度が維持され易くなり、ペダルの傾斜角度を所望の角度に固定することが容易となる。また、リンク部材やチェーンに対しペダルを上下に摺動させてペダルの傾斜角度を調整する従来構成と異なり、ペダルの自由端付近の構成を簡素化することができる。
【0022】
請求項7に記載の発明は、請求項4〜6のうちいずれか一項に記載の発明において、軸部材は、固定部材と接触する第1接触面を有し、固定部材は、軸部材と接触する第2接触面を有し、第1及び第2接触面のうち少なくとも一方には、ローレット加工が施されていることを要旨とする。
【0023】
この構成によれば、軸部材と固定部材との接触面にローレット加工が施されているため、軸部材に対する固定部材の固定力をより一層高めることができる。
請求項8に記載の発明は、請求項4〜7のうちいずれか一項に記載の発明において、軸部材は、ペダルの下面に設けられていることを要旨とする。
【0024】
この構成によれば、軸部材をペダルの下面に設けたことで、ペダルの踏み込み面に障害物が無くなり、踏み込み面の形状を平坦することができる。よって、軸部材がペダルの踏み込み操作に支障をきたすこともない。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ペダルの傾斜角度のみを容易に調整することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る楽器用ペダル装置をバスドラムBDに適用したペダル装置10の一実施形態について、
図1〜
図5(b)を参照して説明する。
図1に示すように、ペダル装置10は、ベース11、ペダル12、連結部材としての金属製の一対の連結アーム13、ホイール14、作動部材としてのシャフト15、ビータ16、引張コイルばね17を備えている。ペダル装置10は、連結アーム13によってペダル12の踏み込み力をシャフト15に直接伝達するダイレクトドライブ方式を採用している。ペダル装置10は、ビータ16の打撃面をバスドラムBDに向けて配置し、かつベース11をバスドラムBDに連結した状態で使用される。ペダル装置10の構成を説明するに際し、バスドラムBDに連結される側(
図1で示す左側)を前方とし、バスドラムBDとは反対側(
図1で示す右側)を後方として、以下に記載する。
【0028】
ベース11は、前後方向に延びる板状に形成されている。ベース11の後端には、演奏者の足のかかとが載置されるヒール部11bが取付けられている。ペダル12は、ヒール部11bに連結される基端12aと、ベース11の前端で上方に引っ張られる自由端12bとを有している。ペダル12の基端12aは、ヒール部11bの前端に回動可能に連結されている。ペダル12は、踏み込まれていないときに操作し易い角度で傾斜すると共に、踏み込み操作によりベース11の後端を中心に回動するように支持されている。
【0029】
ベース11の前端には、両側部から上方に延びる一対の支柱11aが設けられている。シャフト15は、一対の支柱11aの上端部に回動可能に支持されている。また、ホイール14と連結アーム13とが、シャフト15とペダル12の自由端12bとを連結している。ホイール14は、ボルト14aによって、シャフト15に固定されたブロック体18に取り付けられている。ボルト14aを緩めると、ホイール14は、ブロック体18の上面に形成されたV溝18aに沿って前後方向に移動可能となる。
【0030】
連結アーム13は、ホイール14の前端に回動可能に連結される上端13aと、ペダル12の自由端12bに回動可能に連結される下端13bとを有している。連結アーム13は、ホイール14の前端とペダル12の自由端12bとを曲線的に連結するように、丸みを帯びた略L字状に形成されている。連結アーム13は、他方の連結アーム13と一定の距離を置いて重なるように配置されている。
【0031】
右側の支柱11aの外側には、引張コイルばね17が設けられている。引張コイルばね17の上端は、連結リング19を介して、シャフト15の端部に固定されたカム21に連結されている。引張コイルばね17の下端は、右側の支柱11aの下部に設けられた調節ネジ23の上端に連結されている。この状態で、引張コイルばね17は、上下方向に引っ張られると共に、カム21を下向きに付勢している。引張コイルばね17は、連結リング19、カム21、シャフト15、ホイール14及び連結アーム13を介して、ペダル12の自由端12bに連結されている。引張コイルばね17は、カム21を鉛直下向きに付勢することによって、ペダル12を踏み込む前の初期位置に、ペダル12を保持している。
【0032】
ペダル12が踏み込まれると、連結アーム13及びホイール14によりシャフト15及びカム21が回動すると共に、カム21の回動により引張コイルばね17が斜め上方に引っ張られる。このとき、カム21には、引張コイルばね17の弾性力によって、カム21の姿勢を鉛直下向きに復帰させる力が作用している。このため、ペダル12の踏み込みを解除すれば、ペダル12は、引張コイルばね17の弾性力によって、踏み込まれた位置から初期位置へと速やかに復帰する。尚、調節ネジ23を回して引張コイルばね17の引っ張り量を調節すれば、ペダル12を踏み込んだときの操作感や、踏み込みを解除したときのビータ16の戻り速度が調整される。
【0033】
ペダル装置10は、ペダル12の傾斜角度を調整するペダル角度調整装置30と、ビータ16の初期角度を調整するビータ角度調整装置40とを備えている。ビータ角度調整装置40は、ビータ16が固定されたシャフト15と、シャフト15の端部に固定されたカム21と、カム21に設けられたボルト21aとを備えている。カム21は、ボルト21aによって、シャフト15の端部に固定されている。ボルト21aを緩めれば、シャフト15がカム21に対して回動可能となる。このとき、カム21は、引張コイルばね17によって、鉛直下向きの姿勢に保持されている。このため、カム21に対してビータ16をシャフト15と共に回動させることで、ビータ16の初期角度が調整される。ビータ16の初期角度を調整後は、ボルト21aを締め付けることにより、ビータ16の初期角度が固定される。
【0034】
図2及び
図3に示すように、ペダル角度調整装置30は、連結アーム13とペダル12の自由端12bとを連結すると共に連結アーム13に対する軸線L1に対する軸線L2の高さを調整可能に構成されている。具体的には、ペダル角度調整装置30は、連結アーム13に対して軸線
(第1の軸線)L1周りに回動可能に連結されている。また、ペダル角度調整装置30は、ペダル12の自由端12bに対して軸線
(第2の軸線)L2周りに回動可能に連結されると共に、ペダル12の自由端12bに対して固定可能に構成されている。ペダル角度調整装置30は、ペダル12の自由端12bに設けられた軸部材31と、連結アーム13の下端13bに設けられた固定部材32とを組み付けて構成されている。
【0035】
図3及び
図4に示すように、ペダル12の裏側には、軸部材31が固定される一対の固定凹部12cと、固定部材32が収納される一つの収納凹部12dとが形成されている。軸部材31は、軸部材31の両端部を一対の固定凹部12cに配置した状態で、ペダル12の下面に固定されている。軸部材31は、ペダル12の下面に対して、軸部材31の両端部に挿通される一対のボルト33により下方から固定されている。軸部材31は、両端部を除く中央部に、固定部材32と接触する第1接触面としての外周面31aを有している。軸部材31の外周面31aには、綾目ローレット加工が施されている。
【0036】
固定部材32は、軸部材31を上方から把持する第1クランプ部材35と、軸部材31を下方から把持する第2クランプ部材36と、締め付け部材としてのボルト37及びナット38とを備えている。第1クランプ部材35は、連結アーム13に連結される連結部35aを有している。連結部35aには、軸受39が配置される円形状の凹部35bや、支持ピン42が挿通される挿通孔35cが形成されている。
【0037】
第1クランプ部材35は、支持ピン42、ナット43、ワッシャ44等によって、両連結アーム13の下端13bに回動可能に連結されている。第1クランプ部材35は、連結部35a付近に上縦孔35dを有している。第1クランプ部材35の基端35eは、二股状に形成されている。第2クランプ部材36は、第1クランプ部材35の上縦孔35dと対応する位置に下縦孔36dを有している。第2クランプ部材36の基端36eは、第1クランプ部材35の基端35eの内側に配置される。
【0038】
第1及び第2クランプ部材35,36は、それらの基端35e,36eが支持ピン45により連結されることによって、軸部材31を把持可能に構成されている。また、第1及び第2クランプ部材35,36は、上縦孔35d及び下縦孔36dに挿通されたボルト37をナット38に締め付けることによって、軸部材31の外周面31aに固定される。ボルト37を緩めれば、第1及び第2クランプ部材35,36が軸部材31に対して軸線L2周りに回動可能となり、ペダル12の傾斜角度が調整可能となる。
【0039】
上縦孔35d及び下縦孔36dの位置は、両縦孔35d,36dにボルト37が挿通されている状態で、軸線L1と軸線L2との間の中間位置に設定されている。尚、軸線L1は、連結アーム13に対するペダル角度調整装置30の回動中心である。軸線L2は、ペダル12の自由端12bに対するペダル角度調整装置30の回動中心である。
【0040】
図1及び
図4に示すように、ボルト37は、第1及び第2クランプ部材35,36の上縦孔35d及び下縦孔36dに挿通されるネジ部37aと、ペダル12の傾斜角度を調整する際に操作される操作部としての頭部37bとを有している。ボルト37の頭部37bは、第1クランプ部材35の上縦孔35d内で上方を向いて配置されている。第1クランプ部材35の上面には、目盛り46が設けられている。ペダル12の自由端12b付近において、目盛り46と対応する位置には、目印47が形成されている。左側の支柱11aの外側には、ペダル12の傾斜角度を調整する際に用いられる工具49が備えられている。
【0041】
次に、上記のペダル装置10の作用について
図1,
図5(a)及び
図5(b)を参照して説明する。ここでは、ビータ16の初期角度を調整した後にペダル12の傾斜角度を調整するときの一連の操作について説明する。
【0042】
始めに、ビータ16の初期角度を調整する。
図1に示すように、まず、カム21のボルト21aを緩めて、カム21に対するシャフト15の固定を解除する。次に、ビータ16が所望の角度になるまで、シャフト15をカム21に対して回動させる。そして、ボルト21aを締め付けて、シャフト15をカム21に固定し、ビータ16を調整後の角度に固定する。
【0043】
続いて、ペダル12の傾斜角度を調整する。まず、
図5(a)及び
図5(b)に示すように、工具49の先端を、ユーザから正面に見えるボルト37の頭部37bに上方から嵌め込む。そして、工具49を回してボルト37を緩めることにより、軸部材31に対する固定部材32の固定を解除する。これにより、固定部材32が軸部材31に対して軸線L2周りに回動可能となる。このとき、
図1に示す引張コイルばね17は、カム21を鉛直下向きの姿勢に保持している。このため、ペダル角度調整装置30のボルト37を緩めても、カム21は、ボルト37を緩める前と同じく、鉛直下向きの姿勢に保持されている。よって、ビータ16も、調整後の角度に維持されている。また、ホイール14やシャフト15も、ビータ16の角度に対応する角度位置にそれぞれ維持されている。このため、ホイール14に連結された連結アーム13の上端13aの高さ位置も維持されている。
【0044】
これに対し、ボルト37を緩めると、ペダル12の自由端12bは、ペダル12の自重によって下方へと移動する。即ち、ペダル12は、ヒール部11bに連結されたペダル12の基端12aを中心に、
図5(a)に示す反時計回りに回動する。このとき、ホイール14と連結アーム13との第1連結箇所、連結アーム13とペダル角度調整装置30との第2連結箇所、ペダル角度調整装置30とペダル12との第3連結箇所はいずれも回動可能な状態となっている。このため、ボルト37を緩めると、ペダル12の自由端12bは、第1〜第3連結箇所での連結角を変化させながら、第1〜第3連結箇所が同一直線上に配置されるまで、下方へと移動する。つまり、ペダル12は、第1〜第3連結箇所を同一直線上に配置した角度で傾斜した姿勢となり、その傾斜した姿勢に保持される。
【0045】
次に、ボルト37の頭部37bに嵌め込まれた工具49を用いて、ペダル12の傾斜角度を調整する。具体的には、
図5(a)及び
図5(b)の矢印に示すように、ボルト37の頭部37bに嵌め込まれた工具49自体を前方又は後方に傾けることで、固定部材32を軸部材31に対して軸線L2周りに回動させる。このとき、ペダル12は、引張コイルばね17の弾性力によって、第1〜第3連結箇所を同一直線上に配置した姿勢に保持されている。この状態から、ユーザは、ペダル12を手で持たずに、工具49自体を前方又は後方に傾けることによって、固定部材32を軸部材31に対し軸線L2周りに回動させる。こうして、ユーザは、工具49を用いてペダル角度調整装置30を操作することで、軸線L1に対する軸線L2の高さを調整しながら、ペダル12の傾斜角度を調整する。
【0046】
ペダル12を所望の角度に調整した後は、工具49を回してボルト37を締め付けることにより、軸部材31に対して固定部材32を固定する。このときも、ペダル12は、引張コイルばね17の弾性力によって、調整後の角度で傾斜した姿勢に保持されている。このため、ユーザは、ペダル12を手で持たずに、工具49を用いてペダル角度調整装置30を操作することで、軸線L1に対する軸線L2の高さを固定し、ペダル12を調整後の角度に固定する。
【0047】
上記一連の操作を通じて、ビータ16の調整後の角度に影響を及ぼすことなく、ペダル12の傾斜角度のみが調整される。また、
図5(a)及び
図5(b)に示すように、ペダル12が踏み込まれたときに連結アーム13の上端を中心に回動する部分の長さであるリンク長D1は、ペダル12の傾斜角度を調整する前と後で変化せず、一定である。よって、ペダル12の傾斜角度を調整したことでペダル12の操作感が変化することもない。
【0048】
従って、本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)ペダル角度調整装置30は、連結アーム13に対して軸線L1周りに回動可能に連結されている。また、ペダル角度調整装置30は、ペダル12の自由端12bに対して軸線L2周りに回動可能に連結されると共に、ペダル12の自由端12bに対して固定可能に構成されている。この構成によれば、ペダル角度調整装置30をペダル12の自由端12bに対して軸線L2周りに回動させることで、軸線L1に対する軸線L2の高さを調整しながら、ペダル12の傾斜角度を調整することができる。また、ペダル12の傾斜角度を調整した後は、ペダル角度調整装置30をペダル12の自由端12bに固定することにより、ペダル12の傾斜角度を固定することができる。このように、ユーザは、ペダル12に対するペダル角度調整装置30の連結角度を変えるだけで、ペダル12の傾斜角度を調整することができる。よって、ペダル12の傾斜角度のみを容易に調整することができる。
【0049】
(2)ボルト37は、ペダル12の傾斜角度を調整する際に操作される操作部としての頭部37bとを有している。ボルト37の頭部37bは、第1クランプ部材35の上縦孔35d内で上方を向いて配置されている。この構成によれば、ボルト37の頭部37bは、ユーザにとって、ペダル12の傾斜角度を調整する際に見易くかつ操作し易い位置に配置されている。このため、ペダル12の傾斜角度を調整する作業が容易となる。
【0050】
(3)引張コイルばね17は、連結リング19、カム21、シャフト15、ホイール14、連結アーム13及びペダル角度調整装置30を介して、ペダル12に連結されている。この構成によれば、ペダル角度調整装置30が連結アーム13とペダル12とにそれぞれ回動可能に連結されている状態で、引張コイルばね17は、ペダル角度調整装置30及び連結アーム13を介して、ペダル12の自由端12bを所定の高さに保持することができる。
【0051】
この場合、ペダル角度調整装置30のボルト37を緩めると、ペダル12の自由端12bは、ペダル12の自重によって、第1〜第3連結箇所が同一直線上に配置されるまで、下方へと移動する。つまり、ペダル12は、第1〜第3連結箇所を同一直線上に配置した角度で傾斜した姿勢になった後は、引張コイルばね17の弾性力によって、その角度で傾斜した姿勢に保持される。このため、ペダル12の傾斜角度を調整後も、ペダル12は、調整後の角度で傾斜した姿勢に保持される。
【0052】
また、ユーザは、工具49を用いてボルト37を緩めたり締め付けたりする操作と、ペダル12の傾斜角度を調整するために工具49自体を前後に傾ける操作とを連続して行うことができる。よって、ペダル12を手で持ちながらペダル12の傾斜角度を調整する従来の方法よりも、ペダル12の傾斜角度を容易に調整することができる。
【0053】
(4)ペダル角度調整装置30は、ペダル12の自由端12bに設けられた軸部材31と、連結アーム13の下端13bに設けられた固定部材32とからなる。本実施形態では、ペダル角度調整装置30を軸部材31と固定部材32とに分けて構成し、かつそれらを連結アーム13とペダル12の自由端12bとにそれぞれ設けている。このようにすることで、固定部材32を軸部材31に対して軸線L2周りに回動させながら、軸線L1に対する軸線L2の高さを調整することができる。つまり、ユーザは、固定部材32を軸部材31に対して屈曲させるように動かすだけで、ペダル12の傾斜角度を調整することができる。
【0054】
また、この構成によれば、軸部材31をペダル12の自由端12bに固定部材32を連結アーム13の下端13bにそれぞれ設けたことで、リンク長D1は、ペダル12の傾斜角度を調整する前と後で変化しない。つまり、ペダル12の傾斜角度を調整した場合、リンク長D1は、軸部材31と固定部材32との屈曲角度に関係無く、一定である。よって、ペダル12の傾斜角度を調整しても、ペダル12を踏み込んだときの操作感が変化しない。従って、ペダルの操作感を変化させずに、ペダル12の傾斜角度のみを調整することができる。
【0055】
(5)固定部材32は、軸部材31を上方から把持する第1クランプ部材35と、軸部材31を下方から把持する第2クランプ部材36と、締め付け部材としてのボルト37及びナット38とを備えている。この構成によれば、固定部材32は、軸部材31を上下両方から把持するクランプ構造を有している。このため、ボルト37をナット38に締め付けることにより、第1及び第2クランプ部材35,36が軸部材31を把持した状態で、第1及び第2クランプ部材35,36をそれらの基端35e,36eと反対側で固定することができる。これにより、軸部材31に対する固定部材32の固定力を高めることができる。このため、軸部材31と固定部材32との屈曲角度が維持され易くなり、ペダル12の傾斜角度を所望の角度に固定することが容易となる。また、リンク部材やチェーンに対しペダルを上下に摺動させてペダルの傾斜角度を調整する従来構成と異なり、ペダル12の自由端12b付近の構成を簡素化することもできる。
【0056】
(6)軸部材31の外周面31aには、綾目ローレット加工が施されている。この構成によれば、軸部材31と固定部材32との接触面にローレット加工が施されているため、軸部材31に対する固定部材32の固定力をより一層高めることができる。
【0057】
(7)軸部材31は、ペダル12の下面に固定されている。この構成によれば、ペダル12の踏み込み面に障害物が無くなり、踏み込み面の形状を平坦することができる。よって、軸部材31がペダル12の踏み込み操作に支障をきたすこともない。
【0058】
本実施形態は、以下のように変更してもよい。
・ペダル装置10に代えて、例えば、
図6に示すペダル装置60を採用してもよい。
図6に示すように、ペダル装置60は、ペダル角度調整装置61と、ビータ角度調整装置62とを備えている。このペダル装置60では、スプロケットホイール63が、引張コイルばね64に連結されるロッカーカム65や、ビータ固定部材66が固定される円柱体67等と共に、シャフト68に固定されている。また、ビータ69aは、ビータ固定部材66に設けられたボルト66aによって、円柱体67の外周面に回動可能に取り付けられている。
【0059】
ビータ69aの初期角度を調整する場合、まず、ビータ固定部材66のボルト66aを緩める。次に、ビータ69aが所望の角度になるまで、ビータ固定部材66を円柱体67の外周面に沿って周方向に摺動させる。そして、ボルト66aを締め付けて、ビータ固定部材66を円柱体67に固定し、ビータ69aの初期角度を固定する。この場合、ペダル角度調整装置61には、本実施形態のペダル角度調整装置30が採用されている。この構成によっても、ペダル69bの傾斜角度とビータ69aの初期角度とを別々に調整できると共に、ペダル69bの傾斜角度のみを容易に調整することができる。
【0060】
・本実施形態において、本発明に係る楽器用ペダル装置を、
図1に示すバスドラムBDに適用した。これに代えて、本発明に係る楽器用ペダル装置を、
図7に示すハイハットスタンド71に適用してもよい。
図7に示すように、ハイハットスタンド71は、二脚72aやゲートフレーム72bを有するスタンド本体72と、ゲートフレーム72bに取り付けられたペダル装置70とを備えている。また、ハイハットスタンド71は、ペダル73の踏み込み操作により上下動する作動部材としてのロッド74と、ペダル73の操作力をロッド74に伝達する連結部材としてのチェーン75と、ペダル73が踏み込まれたときに圧縮される圧縮コイルばね76とを備えている。
【0061】
更に、ハイハットスタンド71は、チェーン75とペダル73の自由端73bとを連結すると共にペダル73の傾斜角度を調整するペダル角度調整装置77を備えている。このハイハットスタンド71においても、ボルト78の頭部78bに嵌め込まれた工具を前後に傾けるだけで、ペダル73の角度を調整することができる。この場合、ロッド74の高さは変更されないため、ロッド74による圧縮コイルばね76の圧縮量は変化しない。よって、ペダル73の操作感を変化させずに、ペダル73の傾斜角度のみを容易に調整することができる。
【0062】
・ペダル装置10には、ダイレクトドライブ方式を採用したが、連結アーム13に代えてチェーンを用いたチェーンドライブ方式を採用したり、連結アーム13に代えてベルトを用いたベルトドライブ方式を採用したりしてもよい。
【0063】
・ペダル角度調整装置30は、軸部材31と固定部材32との二つの部品を組み付けて構成した。これに代えて、軸部材31を連結アーム13又はペダル12の自由端12bに予め形成することで、ペダル角度調整装置30を一つの部品から構成してもよい。
【0064】
・操作部としてのボルト37の頭部37bは、第1クランプ部材35の上縦孔35d内で上方を向いて配置されていた。これに代えて、ボルト37の頭部37bは、下方を向いて配置されてもよい。この場合、ボルト37は、第1及び第2クランプ部材35,36の両縦孔35d,36dに下方から挿入されると共に、ナット38が、ボルト37の先端に上方から締め付けられる。
【0065】
・本実施形態において、軸部材31をペダル12の自由端12bに設け、固定部材32を連結アーム13の下端13bに設けたが、ペダル12及び連結アーム13に対する軸部材31及び固定部材32の位置関係を逆にしてもよい。
図8及び
図9に示すように、固定部材80をペダル12の自由端12bに設け、軸部材81を連結アーム13の下端13bに設けてもよい。この場合、固定部材80を構成する第1及び第2クランプ部材85,86の両縦孔85d,86dに挿通されるボルト87の位置は、
図8に示すように、軸部材81の後方であってもよく、
図9に示すように、軸部材81の前方であってもよい。
【0066】
・本実施形態において、ボルト37により第1及び第2クランプ部材35,36を締め付ける箇所は、軸部材31の前方であったが、
図10に示すペダル角度調整装置100のように、軸部材31の後方であってもよい。
【0067】
・固定部材32は、軸部材31を上下両方向から把持する第1及び第2クランプ部材35,36からなるクランプ構造を有していた。これに代えて、
図11に示すように、ペダル角度調整装置110を、ボルト111を用いて固定部材112を軸部材31に直接固定するように構成してもよい。
図11に示す例では、軸部材31がペダル12の自由端12bに設けられ、固定部材112が連結アーム13の下端13bに設けられている。固定部材112は、円柱状の軸部材31を摺動可能に支持する内部空間を備えた筒状に形成されている。固定部材112の周壁112aには、ボルト111が螺合されるネジ挿通孔112bが形成されている。
【0068】
・
図12に示すように、ペダル角度調整装置120を、断面U字状のクリップ部材121と、クリップ部材121の一対の先端部を締め付けるボルト37及びナット38とから構成してもよい。
【0069】
・軸部材31において、固定部材32と接触する外周面31aにのみ綾目ローレット加工を施した。これに代えて、
図4に示すように、固定部材32において、軸部材31と接触する第2接触面としての内周面32aにも綾目ローレット加工を施してもよい。
【0070】
・軸部材31の外周面31aには、綾目ローレット加工に代えて、平目ローレット加工を施してもよい。