(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記工具本体の先端面近傍における中心軸線に直交する断面において、前記外周刃の外周すくい面には前記第一フルート溝と前記第二フルート溝との境界に交差突部が突出して形成されている請求項1または2に記載された切削工具。
前記交差突部は前記中心軸線と外周刃とを結ぶ仮想線に対して5°以下突出していると共に、前記中心軸線から外周刃までの半径長さD/2の65%以上の位置に形成されている請求項3に記載された切削工具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したエンドミルでは、特に先端面の底刃に近い外周面の領域において、後端部と比較して芯厚がかなり小さく、しかも切り屑排出溝における第1溝に続く第2溝の周方向範囲が広く形成されている。そのため、先端側の切刃部の強度が小さくなり、工具剛性が小さいために横送り加工及びドリリング加工時に工具を欠損し易くなり、工具寿命が短いという問題があった。
しかも、切り屑排出溝の第2溝の先端側中央部分に第1溝が形成されているため第1溝を走行する切り屑が詰まり易く排出性が悪いという問題もあった。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、切り屑詰まりを生じることがなく、工具剛性と切屑排出性を確保することができる切削工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による切削工具は、中心軸線回りに回転可能な工具本体の先端側外周面に所定間隔を開けて螺旋状に形成された複数の外周刃と、該外周刃の回転方向前側に形成された切り屑排出溝と、工具本体の先端面に形成されていて外周刃に連続する複数の底刃と、を有する切削工具であって、外周刃の外周すくい面を有する切り屑排出溝は、先端面から後端側まで延びる第一フルート溝と、第一フルート溝の先端側領域を切除して形成されていて第一フルート溝より短い長さとされ且つその後端が第一フルート溝に接続されている第二フルート溝と、を備え、第二フルート溝は第一フルート溝の外周すくい面側から外周逃げ面に到達するまで周方向に形成されていることを特徴とする。
本発明によれば、切り屑排出溝の第一フルート溝を切除して形成した第二フルート溝を有する部分の第一の芯厚は第二フルート溝を有さない後端側の第一フルート溝を有する部分の第二の芯厚より小さいため、先端側では後端側より工具剛性が小さいが切り屑排出溝の溝深さが大きい。しかも、第二フルート溝は第一フルート溝の外周すくい面側から外周逃げ面に到達するまで周方向に形成されているため、幅広で切り屑排出がスムーズであり、切り屑排出性が高い。
【0008】
また、工具本体の中心軸線に直交する断面視で中心軸線と外周刃を結ぶ半径長さをD/2として、第二フルート溝を有する外周刃の外周逃げ面方向に20°の角度では、外周面は中心軸線からの長さが半径長さD/2の88%〜97%の肉厚を有し、外周刃の外周逃げ面方向に30°の角度では、外周逃げ面は中心軸線からの長さが半径長さD/2の78%〜93%の肉厚を有していることが好ましい。
本発明によれば、先端側の第一の芯厚は後端側の第二の芯厚より小さいが外周刃の外周面の肉厚を大きく形成したことで刃先強度を補強することができる。
【0009】
また、工具本体の先端面近傍における中心軸線に直交する断面において、外周刃の外周すくい面には第一フルート溝と第二フルート溝との境界に交差突部が段差として形成されていてもよい。
外周刃の外周すくい面に第一フルート溝と第二フルート溝との境界をなす交差突部を形成したため、生成される切り屑が外周すくい面と接触する面積が少なくなり、よりスムーズに走行する。
【0010】
また、交差突部は中心軸線と外周刃とを結ぶ仮想線に対して5°以下突出していると共に、中心軸線から外周刃までの半径長さD/2の65%以上の位置に形成されていることが好ましい。
外周刃の外周すくい面に形成された交差突部の突出が5°以下で中心軸線から外周刃までの半径長さD/2の65%以上の位置に設けたことによって、切り屑の接触を小さくして走行負荷及び加工負荷を低減することができる。
【0011】
また、中心軸線と外周刃を結ぶ半径長さをD/2として、第二フルート溝の領域における第一の芯厚は0.55D〜0.70Dの範囲に設定され、第二のフルート溝より後方で第一のフルート溝の領域における第二の芯厚は0.60D〜0.80Dの範囲に設定され且つ第一の芯厚より0.05D以上大きく設定することが好ましい。
これにより、切削工具の先端側での切り屑排出をスムーズにすると共に、後方側の第二の芯厚を先端側の第一の芯厚より大きくすることで工具本体の剛性を確保することができる。
【0012】
また、第二フルート溝の長さは先端面から0.5D〜1.5Dまでの範囲に設定されていることが好ましい。
切り屑排出溝の第二フルート溝の長さを中心軸線方向に先端面から0.5D〜1.5Dまでの範囲にすることで、切り屑排出性を向上できると共に工具剛性を確保することができる。
【0013】
また、外周逃げ面の周方向の幅は0.05D〜0.15Dの範囲に設定されていることが好ましい。
先端側の第一の芯厚が小さくても外周刃の外周逃げ面の幅を0.05D〜0.25Dの範囲に設定することで、工具剛性を補強することができる。
【0014】
また、複数の底刃は不等分割され、複数の外周刃は不等リードに設定されていてもよい。
複数の底刃は不等分割され、複数の外周刃は不等リードに設定されているため、切削時にビビり振動の発生を抑制できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る切削工具によれば、第二フルート溝によって先端側の芯厚を後端側より小さくすることで先端側の切り屑排出溝を深くして切り屑排出性を向上させると共に、後端側の芯厚を大きくすることで先端側の工具剛性を補強して全体の工具剛性を高くすることができる。
また、先端側の第二フルート溝は周方向に外周刃の外周すくい面側から外周刃の外周逃げ面まで到達することで、工具剛性を高めつつ切り屑をスムーズに排出できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態によるエンドミルについて添付図面に基づいて説明する。
図1乃至
図5は本発明の第一実施形態による切削工具としてのエンドミル1を示すものである。エンドミル1は例えば4枚刃のスクエアエンドミルである。
図1において、実施形態によるエンドミル1は、略円柱状に形成されていて中心軸線Oを中心に回転される工具本体2とその先端部に形成された刃部3とを備えている。本明細書では工具本体2の中心軸線Oに沿った刃部3側を先端側といい、主軸に連結する反対側を基端側、後方というものとする。
【0018】
このエンドミル1は刃部3の先端面4における底刃の最大外径Dが例えば1mm〜12mmの範囲、好ましくは1〜6mmの範囲に形成された小径のエンドミルであり、機械部品や金型等を切削加工する。或いは、このエンドミル1は外径Dが1mm未満でもよい。このエンドミル1はステンレス鋼やチタン合金や耐熱合金等の難削材の切削加工に好適である。
【0019】
刃部3の外周面には、先端側から基端側に向けて中心軸線O回りに所定角度で捩じれる切り屑排出溝5が周方向に所定間隔を開けて複数条、例えば4条螺旋状に形成されている。刃部3の側面に形成された各切り屑排出溝5において、回転方向を向く壁面とその回転方向後方に連なる外周面との交差稜線部に外周刃6が形成されている。切り屑排出溝5の回転方向を向く壁面が外周刃6の外周すくい面7とされ、外周刃6を介して回転方向後方を向く外周面が外周逃げ面8とされている。
4枚の外周刃6も周方向に所定間隔で配列されてそれぞれ螺旋状に形成されている。外周刃6の外周逃げ面8は外周刃6の回転軌跡に沿って凸曲面状とされ且つ正の逃げ角を形成して外周刃6の刃先強度を確保している。或いは、外周逃げ面8は平坦面状で正の逃げ角を有していてもよい。
【0020】
図2に示す刃部3の先端面4には、その回転中心をなす中心軸線Oに対して、対向する一対の外周刃6から中心軸線Oに向けて例えば直線状に延びる一対の長刃10が回転対称に形成されている。各長刃10の回転方向前方側には所定角度を以って一対の短刃11が回転対称に形成されている。短刃11も外周面の外周刃6に連続して径方向中心側に向けて例えば直線状に延びている。
しかも、底刃の外径長さをDとして、各短刃11は外周刃6に接続される外周端から先端面4の半径(D/2)の例えば1/2程度の長さで形成されている。そのため、短刃11は中心軸線Oの近傍に到達しておらず、途中で途切れている。長刃10と短刃11とで底刃を形成する。
【0021】
また、長刃10は短刃11よりも基端側に凹んでいる。これにより、エンドミル1を回転させながら被削材に対して中心軸線O方向に送るドリリング加工を行う、即ちドリリング加工を行う場合、先に短刃11で外周側領域を切削加工し、これに遅れて短刃11を設けない中心側領域(中心軸線O側)を長刃10で切削加工する。そのため、長刃10では、回転切削する短刃11に重複しない中心側領域の切刃部10aでのみ切削加工を行う。
短刃11の長さを長刃10の切刃部10aの長さと同程度に設定することで、長刃10と短刃11の切削負担をほぼ同程度に設定できるため、長刃10の切刃部10aと短刃11の振動を抑制できる。底刃は不等分割されているが、等分割に配設されていてもよい。
【0022】
長刃10と短刃11にそれぞれ接続される外周刃6は等リードまたは不等リードに配設されていてもよい。外周刃6を不等リードに配設することで、エンドミル1の回転切削加工時にビビり振動の発生を抑制できる。
先端面4における中心軸線Oの周囲には、長刃10と短刃11の回転方向前側に基端側に向けて凹状に切除されたギャッシュ溝12が所定間隔で4つ形成されている。ここで、長刃10の回転方向前方に形成されたギャッシュ溝12を符号12Aで表し、短刃11の回転方向前方に形成されたギャッシュ溝12を符号12Bで表すものとする。
【0023】
図1に示す刃部3において、外周刃6の回転方向前方側に形成された切り屑排出溝5は第一フルート溝13と第二フルート溝14とで形成されている。第一フルート溝13は刃部3の外周面を先端面4から中心軸線Oに沿って螺旋状に基端側に延びていて後端で外周側に切れ上がっている。第二フルート溝14は、
図3に示すように、第一フルート溝13の長手方向の先端側部分で第一フルート溝13を切除することでより深いフルート溝を形成している。各第二フルート溝14は先端面4で各ギャッシュ溝12A、12Bに滑らかに接続されている。
なお、
図3は刃部3の先端面4から長手方向に距離0.5Dの位置における中心軸線Oに直交する軸直交断面図であり、
図5は先端面から距離1.5Dの位置における中心軸線Oに直交する軸直交断面図である。
【0024】
第二フルート溝14は第一フルート溝13より長さが短く、工具本体2の先端面4から基端側に向けて0.5D〜1.5Dまでの範囲の長さに形成されている。第一フルート溝13は先端面4から1.5Dより長い長さに形成されている。第二フルート溝14の後端では徐々に径方向外側に切れ上がって滑らかに第一フルート溝13に接続されている。本実施形態では、
図1に示すように、第二フルート溝14は先端面4から1.5Dの長さに到達しない位置に終端が形成されている。
【0025】
図3の軸直交断面図において、第一フルート溝13は外周刃6から周方向に滑らかに凹曲線を描いて第一外周すくい面15を形成して更に凸曲線状に湾曲して前方の外周刃6の外周逃げ面8に接続されている。第一フルート溝13を更に切除して形成された第二フルート溝14は第一フルート溝13の第一外周すくい面15を一部切除して周方向に凹曲面を形成して第二外周すくい面17を形成し、更に凸曲線状に湾曲して外周逃げ面8に接続されている。
【0026】
そのため、外周刃6の先端側の第二フルート溝14の部分の外周すくい面7は第一外周すくい面15と第二外周すくい面17とで形成されている。第一外周すくい面15と第二外周すくい面17の交差部に段差として交差突部16が突出形成されている。
図4に示すように、交差突部16は中心軸線Oと外周刃6とを結ぶ仮想線L(半径)に対して5°以内、例えば2.22°突出している。しかも、交差突部16は中心軸線Oと外周刃6とを結ぶ半径長さD/2の65%以上の位置に形成されている。そのため、外周刃6の外周すくい面7は第一外周すくい面15と第二外周すくい面17とで二段に形成され、交差突部16によって切り屑との接触を小さくして走行負荷及び加工負荷を低減している。
ここで、交差突部16の突出角度が5°を超えると切り屑の走行の障害になりスムーズに流れなくなる。また、交差突部16の位置が中心軸線Oから半径D/2の65%未満の長さ位置であると切り屑が外周すくい面7に接触する部分が増えて加工負荷を低減する効果がなくなる。交差突部16は第二フルート溝14に沿って先端側から後端側に延びていて第二フルート溝14の終端部で終了する。
【0027】
図3及び
図5において、第一フルート溝13と第二フルート溝14は外周面への切り上げ部を除いてその中心軸線Oに沿う方向に同一深さで形成されている。第二フルート溝14が形成された先端側領域での刃部3の第一の芯厚S1は、第二フルート溝14の内接円で0.55D〜0.70Dの範囲に形成されている。切り屑排出溝5において、第二フルート溝14が形成された先端側領域では、第一の芯厚S1が小さいため工具剛性は比較的小さいが、溝深さが大きく切り屑の排出性が高い。
第二フルート溝14が形成されておらず第一フルート溝13だけが形成された基端側領域では、刃部3の第二の芯厚S2は第一フルート溝13の内接円により0.60D〜0.80Dの範囲に形成されている。第一フルート溝13の第二の芯厚S2は第二フルート溝14の第一の芯厚S1より0.05D以上大きく設定され、工具剛性が高い。
【0028】
上述したように、刃部3において、第二フルート溝14を形成した先端側の第一の芯厚S1は基端側の第二の芯厚S2より小さく工具剛性が低い。そのため、工具剛性を補強するため、第二フルート溝14を備えた領域の外周刃6の外周逃げ面8に次の構成を付加している。
図3において、外周逃げ面8として外周刃6の回転方向後方側に接続された二番逃げ面を有しているが、更に後方に逃げ面が形成されていてもよい。しかも、外周刃6の外周逃げ面8の周方向の幅Mが0.05D〜0.25Dの範囲に設定されている。これにより、外周刃6の外周逃げ面8の部分の剛性を向上させている。外周逃げ面8の幅Mが0.05Dより小さいと剛性の補強効果が小さく0.25Dより大きいと外周刃6の回転方向後方側の第二フルート溝14の幅が狭くなり、切り屑排出性が低下する。
【0029】
図3に示すように、外周刃6の外周逃げ面8において、中心軸線Oと外周刃6を結ぶ仮想線Lの半径に対して回転方向後方側に20°の位置では半径D/2の88%〜97%の厚みを有して張り出している。仮想線Lの半径に対して回転方向後方側に30°の位置では、半径D/2の78%〜93%の厚みを持たせて張り出している。しかも、20°の位置から30°の位置までなだらかに傾斜が変化している。これら20°と30°の位置の肉厚は外周逃げ面8の回転方向後方に続く第二フルート溝14に形成されているが、外周逃げ面8に形成することも可能である。
外周逃げ面8の厚みがこの範囲であれば切り屑排出性を損なうことなく工具剛性を向上できる。外周逃げ面8の厚みが上記の範囲を超えると第二フルート溝14の周方向の幅が小さくなり切り屑排出性が低下し、上記の範囲より小さいと工具剛性の向上を達成できない。
【0030】
なお、
図5において、刃部3の第二フルート溝14が形成されない基端側の第一フルート溝13の領域では第二の芯厚S2が第一の芯厚S1より大きく工具剛性が高い。そのため、外周逃げ面8の幅M、外周刃6の回転方向後方側の20°、30°の位置の外周逃げ面8の肉厚は第二フルート溝14の領域より小さくてもよい。
【0031】
本実施形態によるエンドミル1は上述の構成を備えており、エンドミル1で被削材を切削加工する際、例えば最初に中心軸線O方向に送るドリリング加工を行い、その後に横送りして肩削り加工を行うものとする。
エンドミル1を中心軸線O周りに高速回転させながら中心軸線O方向に送ってドリリング加工を行う場合、最初に刃部3の先端面4の外周側に配設した一対の短刃11で切削加工を行う。短刃11で生成される切り屑は、長刃10の全長で切削加工する場合のほぼ半分程度の幅と体積になる。そのため、切り屑はギャッシュ溝12Bから切り屑排出溝5の第二フルート溝14をスムーズに走行して第一フルート溝13から排出される。また、短刃11による切削に遅れて、被削材の内側の部分を長刃10の切刃部10aで切削加工できる。
【0032】
しかも、切り屑排出溝5を走行する切り屑は、第一フルート溝13及び第二フルート溝14を走行する際、外周すくい面7である第一外周すくい面15及び第二外周すくい面17の交差突部16に接触して走行する。そのため、第一外周すくい面15及び第二外周すくい面17に対する切り屑の接触面積が小さく走行時の抵抗と加工負荷を低減できる。
しかも、第一フルート溝13に重ねて第二フルート溝14を形成したため、溝深さが大きく切り屑排出性が高い。第二フルート溝14に形成された第二外周すくい面17は外周刃6の第一外周すくい面15の途中部分から回転方向前方の外周刃6の外周逃げ面8に向けて凹曲面と凸曲面とを連続して形成しているため幅広であり、切り屑をスムーズに基端側に排出できる。
【0033】
また、エンドミル1の刃部3は先端側の切り屑排出溝5に第一フルート溝13に重ねて第二フルート溝14を形成したため、先端側の第一の芯厚S1がその後方の第一フルート溝13だけ設けた領域の第二の芯厚S2と比較して小さく、工具剛性が小さい。しかしながら、第二フルート溝14の領域において、各外周刃6の外周逃げ面8は周方向の幅Mが0.05D〜0.25Dの範囲の肉厚に形成されている。
しかも、外周刃6の外周逃げ面8は中心軸線Oと外周刃6を結ぶ仮想線Lの回転方向後方側の20°の位置で半径D/2の88%〜97%の範囲、30°の位置で半径D/2の78%〜93%の範囲の肉厚に張り出し形成されている。そのため、第一の芯厚S1の比較的小さい工具剛性を外周逃げ面8の肉厚によって補強することができ、切り屑排出性と工具剛性を共に向上させることができる。また、切り屑排出溝5の基端側は第一フルート溝13だけが形成されているため、第二の芯厚S2が第一の芯厚S1より大きく工具剛性が高い。
【0034】
なお、ドリリング加工終了後にエンドミル1を横送りして被削材の加工面の肩削り切削を行うことができる。その際、先端側の外周刃6によって切削された切り屑は第一フルート溝13の第一外周すくい面15及び第二フルート溝14の第二外周すくい面17を走行するが、交差突部16に接触するため第一外周すくい面15及び第二外周すくい面17に接触する面積は小さい。そのため、切り屑は摩擦抵抗を抑えてスムーズに第二フルート溝14から第一フルート溝13を走行して基端側に排出される。
しかも、刃部3の先端側では第一フルート溝13に第二フルート溝14が形成されているために溝深さが深くて一層切り屑排出性を向上できる。
【0035】
上述したように本実施形態によるエンドミル1によれば、工具本体2の刃部3の先端側に第一フルート溝13に重ねて第二フルート溝14を形成したため、先端側の切り屑排出性が高い。また、第二フルート溝14を第一フルート溝13より短く形成することで基端側の工具剛性を大きくした。
しかも、切り屑排出溝5の第二フルート溝14は周方向に第一フルート溝13の第一外周すくい面15側から外周逃げ面8まで形成したため、幅広で切り屑排出性が高い。また、第一フルート溝13及び第二フルート溝14に形成した2段の第一外周すくい面15及び第二外周すくい面17の交差部に交差突部16を設けたため、切り屑の接触面積が少なくよりスムーズに走行して排出される。
【0036】
また、第二フルート溝14を第一フルート溝13より短く形成し、第二フルート溝14を形成した領域の第一の芯厚S1はその基端側の第一フルート溝13のみを形成した領域の第二の芯厚S2より小さいため工具剛性が小さい。しかし、外周刃6の外周逃げ面8に所定幅Mを設け、中心軸線Oから外周刃6までの仮想線Lの回転方向後方側に20°及び30°の位置での外周面(外周逃げ面または外周すくい面7)の肉厚を半径D/2の88〜97%、78%〜93%に張り出させることで工具剛性を補強することができる。
【0037】
以上、本発明の実施形態によるエンドミル1について説明したが、本発明はこのような実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の異なる形態や態様を採用できることはいうまでもない。これらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
以下に本発明の他の実施形態や変形例について説明するが、上述した実施形態の部分や部品と同一または同様なものについては同一の符号を用いて説明を行うものとする。
【0038】
次に本発明の第二実施形態によるエンドミル1Aについて
図6及び
図7により説明する。
第二実施形態によるエンドミル1Aは、第一実施形態によるエンドミル1と基本構成を共通にしており、外周刃6の逃げ面の形状において相違する。
図6は工具本体2の刃部3における先端面4から0.5Dの距離の中心軸線Oに直交する断面図、
図7は先端面4から1.5Dの距離の中心軸線Oに直交する断面図である。
本第二実施形態によるエンドミル1Aの刃部3において、各長刃10及び短刃11の外周側端部には刃部3の外周面に形成された螺旋状の外周刃6が連結されている。外周刃6の回転方向前方側には外周すくい面7を有する切り屑排出溝5が形成され、外周刃6の回転方向後方側には外周逃げ面20が形成されている。外周逃げ面20は、
図6に示す第二フルート溝14を設けた領域では、外周すくい面7の傾斜角度が大きくなっている。
図7に示す第一フルート溝13のみを設けた領域では、外周逃げ面20とその回転方向後方の外周すくい面7の間に段差が形成されている。
【0039】
刃部3の先端側領域において、
図6に示す先端面4から0.5Dの位置には、第一フルート溝13の底部を更に深く切除して第二フルート溝14が形成されている。4つの第二フルート溝14の内接円として第一の芯厚S1(=0.55D〜0.70D)が形成されている。
図7に示す先端面から1.5Dの位置には、外周面の周方向に所定間隔で4つの第一フルート溝13が形成され、その内接円として第二の芯厚S2(=0.60D〜0.80D)が形成されている。しかも、第二の芯厚S2は第一の芯厚S1より0.05D以上大きい。
本第二実施形態によるエンドミル1Aでは、先端側の刃部3の工具剛性を補強するために第一実施形態と同様に外周逃げ面20の形状を工夫している。
【0040】
即ち、
図6において、外周刃6の外周逃げ面20の周方向の幅Mが0.05D〜0.25Dの範囲に設定されている。これにより、外周刃6の外周逃げ面8の部分の剛性を向上させている。
また、外周刃6の外周逃げ面20において、中心軸線Oと外周刃6を結ぶ仮想線Lの半径D/2に対して第二フルート溝14を有する外周刃6の外周逃げ面方向に20°の角度では、外周面は中心軸線Oからの長さが半径長さD/2の88%〜97%の肉厚を有している。また、外周刃6の外周逃げ面方向に30°の角度では、外周逃げ面20は中心軸線Oからの長さが半径長さD/2の78%〜93%の肉厚を有している。
外周逃げ面20の厚みが上記の範囲を超えて延びると第二フルート溝14の周方向の幅が小さくなり切り屑排出性が低下し、上記の範囲より小さいと工具剛性の向上に寄与できないという欠点が生じる。
なお、第二フルート溝14が形成されていない第一フルート溝13の領域では第二の芯厚S2が第一の芯厚S1より大きく工具剛性が高いため、外周逃げ面20の幅M、外周刃6の回転方向後方側の20°から30°の範囲での外周逃げ面20の肉厚は第二フルート溝14を設けた領域より小さくてもよい。
【0041】
上述した各実施形態によるエンドミル1、1Aでは、先端面4に2枚の長刃10と2枚の短刃11を交互に配列させ、外周刃6を4枚刃としたが、本発明は4枚刃による底刃や外周刃6の構成に限定されない。例えば底刃や外周刃6の合計が3枚または2枚、或いは5枚以上に配列されて構成してもよい。これらの場合、底刃は長刃10と短刃11に限定されることなく、適宜の長さの底刃を採用できる。
上述の各実施形態において、外周刃6のすくい面には第一フルート溝13と第二フルート溝14との境界に交差突部16が段差として形成されている。しかしながら、必ずしも交差突部16は必要なく、第一フルート溝13と第二フルート溝14との周方向の境界を滑らかな凹曲線状に形成してもよい。
【0042】
また、刃部3の外周面に配列させた複数の外周刃6の配設間隔は適宜に設定できる。
上述した各実施形態や変形例では、エンドミル1としてスクエアエンドミルについて説明したが、これに代えてラジアスエンドミルやボールエンドミルやドリル等の各種の切削工具にも本発明を適用できる。