【実施例】
【0021】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
【0022】
図中の1は微粉炭を主燃料とする微粉炭バーナであって、円筒状のバーナ本体2を備え、該バーナ本体2の先端部には略截頭円錐形状のスロート3を接続している一方、基端部には送風ダクト4を介して燃焼用空気供給ファン5を連結している。前記燃焼用空気供給ファン5の駆動モータ6には回転数調整用のインバータ7を具備しており、該インバータ7にて前記駆動モータ6の回転数を調整することにより、バーナ燃焼量に見合った燃焼用空気量を吸気口8より吸引して前記バーナ本体2に供給可能としている。
【0023】
前記バーナ本体2の略中心部(円筒軸芯部)には、重油等を燃料とする火炎形成用の燃料油噴射ノズル9を備えていると共に、該燃料油噴射ノズル9前方位置の前記スロート3内にはバーナ本体2の内径より若干大径で環状の保炎板10を備えている。また、前記燃料油噴射ノズル9の周囲には、
図2に示すように、該燃料油噴射ノズル9を中心とした同心円状に所定間隔にて複数、例えば4〜8本程度(本実施例では6本)の微粉炭噴射ノズル11a〜11fを備えている。
【0024】
前記燃料油噴射ノズル9には、送り配管12及び戻り配管13とからなる燃料供給配管14を連結している。前記燃料供給配管14の送り配管12にはその途中に燃料供給ポンプ15を介在させて他端部を燃油タンク(図示せず)等に連結している一方、前記戻り配管13にはその途中に流量調整バルブ16を介在させて他端部を前記燃料供給ポンプ15上流側の送り配管12に連結しており、コントロールモータ17にて前記流量調整バルブ16の開度を調整して燃料油の戻り量を調整することにより、燃料油噴射ノズル9からの燃料油の噴射量を調整するようにしている。
【0025】
前記微粉炭噴射ノズル11a〜11fは、
図1に示すように、略L時形状の曲管構造とし、その先端部は前記保炎板10を貫通させ、かつ前記燃料油噴射ノズル9の先端部よりも前方に延設し、微粉炭噴射ノズル11a〜11fより噴射する微粉炭を燃料油噴射ノズル9前方のスロート3内に形成する火炎領域に吹き込めるようにしている一方、基端部はバーナ本体2の中心部側に略直角に折曲して分配器18に連結している。
【0026】
前記分配器18は前記燃料油噴射ノズル9の後方に配置し、前記バーナ本体2と同じ軸芯を有する中空の円筒形状とし、該分配器18の後端部に圧送ファン19を有した微粉炭圧送管20を直結している一方、分配器18の円筒部外周面に対して所定間隔にて前記各微粉炭噴射ノズル11a〜11fの基端部を略放射状に連結しており、前記微粉炭圧送管20よりエア圧送する微粉炭を前記分配器18を介すことで各微粉炭噴射ノズル11a〜11fへ略均等に分配供給可能としている。
【0027】
図1中の21は、例えば、木質系バイオマスを炭化・粉砕処理して得られるバーナ燃料としての微粉炭を貯蔵する微粉炭貯蔵ビンであって、該微粉炭貯蔵ビン21の下端部にはバーナ開度(燃焼量)に応じた量の微粉炭を切り出し可能なロータリーバルブ22を具備していると共に、該ロータリーバルブ22下部の排出口23と前記微粉炭圧送管20とを接続しており、前記ロータリーバルブ22にて切り出す微粉炭を前記圧送ファン19からの送風にてエア圧送し、前記微粉炭圧送管20、分配器18を介して前記各微粉炭噴射ノズル11a〜11fへ供給可能としている。
【0028】
前記圧送ファン19には送風量調整手段であるインバータ24を備えており、バーナ開度(燃焼量)に応じて前記微粉炭貯蔵ビン21下端部のロータリーバルブ22にて切り出す微粉炭量が増減した場合に、前記インバータ24にて増減後の微粉炭切り出し量に見合った送風量に調整可能としている。
【0029】
また、図中の25はバーナ開度に応じて燃料油供給量調整用の前記流量調整バルブ16、及び微粉炭切出量調整用の前記ロータリーバルブ22の開度、並びに前記燃焼用空気供給ファン5と微粉炭圧送用の前記圧送ファン19の送風量を比例制御する燃焼制御器であって、該燃焼制御器25は高燃焼領域に対応した高燃焼パターンと低燃焼領域に対応した低燃焼パターンの二つの燃焼パターンから現状の燃焼領域に応じた何れかの燃焼パターンを選択する燃焼パターン選択部26を有している。
【0030】
図3はバーナ開度に対する燃料油及び微粉炭の噴射量をそれぞれ熱量換算したもの、並びにその総発熱量の関係の一例を示すグラフであって、該グラフの右側(本実施例ではバーナ開度40%以上)の高燃焼領域にあっては、バーナ開度に応じ、前記流量調整バルブ16及び前記ロータリーバルブ22を開閉制御して燃料油と微粉炭の噴射量を発熱量換算(MJ:メガジュール)で所定混焼率(本実施例では、本発明者らの行った本微粉炭バーナ1の燃焼実験により得られた、微粉炭を安定して着火燃焼可能な最大混焼率である燃料油:微粉炭=1:4程度)に維持しながら増減調整する高燃焼パターンにて制御するようにしている。
【0031】
一方、前記グラフの左側(本実施例ではバーナ開度40%未満)の低燃焼領域にあっては、バーナ開度にかかわらず燃料油の噴射量を一定に維持(グラフ中、点線a1から実線a2に調整)しつつ、微粉炭の噴射量は燃料油の噴射量を減じずに一定に維持する分に相当する熱量分(グラフ中の網掛け部X)と同等の熱量分(グラフ中の網掛け部Y)を減量調整(グラフ中、点線b1から実線b2に調整)する低燃焼パターンにて制御するようにしている。上記制御により、グラフ中の総発熱量を示す太実線は全バーナ開度に亘って直線性を保持し、燃料油量を一定に維持する低燃焼領域においてもバーナ開度に見合った適正な熱量供給を可能としている。
【0032】
また、好ましくは、前記各微粉炭噴射ノズル11a〜11fの途中にそれぞれ開閉バルブ27a〜27fを介在させると共に、前記微粉炭圧送管20に備えた圧送ファン19の送風量、或いは前記ロータリーバルブ22にて切り出す微粉炭の切り出し量に基づいて前記各開閉バルブ27a〜27fを開閉制御する開閉制御器28を備える。
【0033】
前記開閉制御器28には、前記圧送ファン19の送風量等に応じて前記各微粉炭噴射ノズル11a〜11fのうち開放するノズル数(或いは閉鎖するノズル数)を予め設定しており、例えば、最大送風量(最大バーナ開度)付近では最多の6本とし、送風量が減っていくに従い開放ノズル数を漸減させ、最少送風量(最少バーナ開度)付近では1、2本程度を設定しておく。前記設定に従えば、送風量(バーナ開度)の増減にかかわらず、微粉炭の噴射流速を安定燃焼に見合った流速に維持でき、
図3に示すように、例え微粉炭の混焼率が燃料油よりも相当に高く、かつ低燃焼領域において燃料油噴射量を一定に維持した分だけ微粉炭噴射量をより大きく絞ることになった場合でも、火炎内に微粉炭を適当に吹き込めて良好な混焼状態を保持できる。
【0034】
なお、ここで言う安定燃焼に見合った流速とは、少なくとも燃料油にて形成する火炎領域内に微粉炭を吹き込め、かつ吹き込んだ微粉炭が前記火炎領域を通過するまでに完全に着火燃焼しきれる程度の速度範囲を言うが、木質系バイオマスの炭化・粉砕処理によって得られる微粉炭の性状(着火性・燃焼性等)には多少バラツキがあることも予想されるため、燃焼試験等を通じて適宜調整すると良い。
【0035】
また、上記実施例では、圧送ファン19の送風量に応じて各微粉炭噴射ノズル11a〜11fを1本単位で開閉し、開放ノズル数を最大6段階にて増減調整可能として比較的きめ細かく微粉炭の噴射流速を調整できるようにしているが、何らこれに限定されるものではなく、例えば、あまりきめ細かく調整する必要のない比較的小型のバーナ等であれば、複数本単位で開閉して開放ノズル数を2〜3段階にて増減調整(例えば、送風量が最大送風量の半分程度以上では6本とし、半分程度以下では3本を設定)するようにしても良い。
【0036】
更に、好ましくは、微粉炭噴射ノズルの本数を4〜8本程度の偶数本とし、かつ各ノズルの間隔を等間隔にて配置する。そして、前記開閉制御器28では、前記各微粉炭噴射ノズル11a〜11fの開閉バルブ27a〜27fを開閉する場合、例えば
図5に示すように一つ置き、または
図6に示すように前記燃料油噴射ノズル9を中心として対称位置のものを連動して開閉するように制御すると良い。なお、
図4〜
図6中、ノズル開口部を白色で示した微粉炭噴射ノズルは開閉バルブを開放した状態を、黒色で示した微粉炭噴射ノズルは開閉バルブを閉鎖した状態をそれぞれ表している。前記制御とすることにより、低燃焼領域において微粉炭噴射ノズル11a〜11fの一部を閉鎖した場合でも、燃料油噴射ノズル9前方に形成する火炎に対してその周囲から微粉炭を偏りなくバランス良く吹き込める。
【0037】
そして、上記構成の微粉炭バーナ1を運転するときには、前記燃焼制御器25では燃焼パターン選択部26にてバーナ開度(燃焼領域)に応じた燃焼パターンを選択する。例えば、バーナ開度40%以上の高燃焼領域であれば高燃焼パターンを選択し、燃焼用空気供給ファン5及び圧送ファン19の送風量を調整しつつ、燃料供給配管14の流量調整バルブ16、微粉炭貯蔵ビン21のロータリーバルブ22の開度を制御し、燃料油と微粉炭の噴射量をそれぞれ所定混焼率に維持しながら増減調整して混焼させ、バーナ開度に見合った熱量供給を行う。
【0038】
また、バーナ開度が40%未満の低燃焼領域となれば低燃焼パターンに切り替え、燃料油の噴射量はバーナ開度にかかわらず微粉炭の着火燃焼にとって必要最低限の火炎サイズを形成するのに要する一定量に維持しつつ、微粉炭の噴射量は燃料油を減じずに一定に維持した分に相当する熱量分を減量調整した状態で混焼させ、高燃焼パターンと同様にバーナ開度に見合った熱量供給を行う。
【0039】
このとき、前記開閉制御器28では、前記微粉炭貯蔵ビン21より切り出す微粉炭をその切出量に見合った送風量にてエア圧送する前記圧送ファン19の送風量を逐次取り込んでおり、該送風量に応じて予め設定した前記開放ノズル数となるように、前記各微粉炭噴射ノズル11a〜11fの開閉バルブ27a〜27fの一部を閉鎖し、微粉炭を噴射するノズル数を減少させて微粉炭の噴射流速を安定燃焼に適した流速まで高めるように調整する。
【0040】
なお、本実施例のように、全ての微粉炭噴射ノズル11a〜11fに開閉バルブ27a〜27fを介在させても良いが、例えば、6本のノズルを2〜3段階(例えば、高燃焼時には6本共開放、低燃焼時には3本のみ開放など)で開閉制御するような場合であれば、開閉操作を必要とするノズルを限定することができるため(対象外のノズルは常時開放状態に維持)、該当する微粉炭噴射ノズルに対してだけ開閉バルブを介在させるようにしても良い。
【0041】
また、前記開閉制御器28において、前記圧送ファン19の送風量に代えて、前記ロータリーバルブ22にて切り出す微粉炭の切り出し量に基づいて前記各微粉炭噴射ノズル11a〜11fの各開閉バルブ27a〜27fを開閉操作し、微粉炭を噴射するノズル数を増減させるようにしても良い。
【0042】
また、微粉炭の燃焼によって発生する熱風を被加熱物に対して供給して加熱処理する場合、微粉炭の燃焼時には少なからず燃焼灰が生じるため、前記被加熱物の表面等に燃焼灰が付着するなどの不具合を来す懸念があるものの、例えば、道路舗装材であるアスファルト混合物の素材である骨材あれば、前記燃焼灰が多少付着・混入してもあまり問題なく使用できるため、アスファルトプラントの骨材加熱処理用のドライヤのバーナとして好適に採用できる。