特許第6902316号(P6902316)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6902316
(24)【登録日】2021年6月23日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】微粉炭バーナ
(51)【国際特許分類】
   F23C 1/10 20060101AFI20210701BHJP
   F23D 1/00 20060101ALI20210701BHJP
   F23D 17/00 20060101ALI20210701BHJP
【FI】
   F23C1/10
   F23D1/00 Z
   F23D17/00 102
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-145988(P2017-145988)
(22)【出願日】2017年7月28日
(65)【公開番号】特開2019-27648(P2019-27648A)
(43)【公開日】2019年2月21日
【審査請求日】2020年5月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226482
【氏名又は名称】日工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】今田 雄司
(72)【発明者】
【氏名】姫路 佳孝
(72)【発明者】
【氏名】福田 格章
【審査官】 岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】 実公平01−044901(JP,Y2)
【文献】 特開2000−055308(JP,A)
【文献】 特開昭63−153306(JP,A)
【文献】 特開2014−122743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23C 1/10
F23D 1/00
F23D 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のバーナ本体の内部に火炎形成用の燃料油噴射ノズルと微粉炭噴射ノズルとを併設し、かつ前記バーナ本体の基端部に燃焼用空気供給ファンを接続すると共に、前記燃料油噴射ノズルに供給する燃料油量を調整する流量調整バルブを備える一方、切出量調整用のロータリーバルブを具備した微粉炭貯蔵ビンを配設し、該微粉炭貯蔵ビンより切り出す微粉炭を前記微粉炭噴射ノズルにエア圧送する圧送ファンを備えた微粉炭バーナであって、バーナ開度に応じて前記流量調整バルブとロータリーバルブの開度、並びに前記燃焼用空気供給ファンと圧送ファンの送風量を比例制御する燃焼制御器を備えると共に、該燃焼制御器は高燃焼領域に対応した高燃焼パターンと低燃焼領域に対応した低燃焼パターンとから燃焼領域に応じて何れかの燃焼パターンを選択する燃焼パターン選択部を有し、前記高燃焼パターンでは燃料油と微粉炭の噴射量をそれぞれ所定混焼率に維持しながら増減調整する一方、前記低燃焼パターンでは燃料油の噴射量を一定に維持しつつ、微粉炭の噴射量は燃料油の噴射量を減じずに一定に維持する分に相当する熱量分を減量調整する制御としたことを特徴とする微粉炭バーナ。
【請求項2】
前記燃料油噴射ノズルは前記バーナ本体の中心部に配置し、前記微粉炭噴射ノズルは燃料油噴射ノズルの周囲に所定間隔にて複数配置すると共に、該各微粉炭噴射ノズルには開閉バルブを介在させ、前記圧送ファンの送風量に基づいて前記各開閉バルブを開閉制御する開閉制御器を備え、該開閉制御器はバーナ開度が少なくとも低燃焼領域となれば前記各開閉バルブの一部を閉鎖し、微粉炭を噴射するノズル数を減少させて微粉炭の噴射流速を、少なくとも燃料油にて形成する火炎領域内に微粉炭を吹き込め、かつ吹き込んだ微粉炭が前記火炎領域を通過するまでに完全に着火燃焼しきれる速度範囲に高めるようにしたことを特徴とする請求項1記載の微粉炭バーナ。
【請求項3】
前記開閉制御器は前記各開閉バルブを一つ置きまたは前記燃料油噴射ノズルを中心として対称位置のものを連動して閉鎖するようにしたことを特徴とする請求項2記載の微粉炭バーナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質系バイオマスを炭化処理して粉砕した微粉炭を主燃料とする微粉炭バーナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、廃木材、間伐材等の木質系バイオマスを炭化処理し、これらを粉砕処理して得られる微粉炭を重油等の燃料油と混焼させるようにした微粉炭バーナがある。前記微粉炭バーナは、燃料の一部を木質系バイオマス由来の比較的安価な微粉炭でまかなえて省エネを図れると共に、カーボンニュートラルの観点からすればCO2の削減も期待できる。
【0003】
例えば、特許文献1(実公平1−44901号公報)には、円筒状のバーナ本体の中心位置に火炎形成用の燃料油噴射ノズルを、該燃料油噴射ノズルの周囲には微粉炭を噴射する微粉炭噴射ノズルを所定間隔にて複数配置し、前記燃料油噴射ノズルの前方に形成する火炎に対して前記各微粉炭噴射ノズルより微粉炭を吹き込んで着火燃焼させるようにした微粉炭バーナが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平1−44901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の微粉炭バーナでは、燃料油噴射ノズル前方に形成する火炎サイズは低燃焼領域で燃料油噴射量が絞られると小さくなるが、特に微粉炭を主燃料として混焼率を高めた(燃料油の混焼率を下げた)場合や、高ターンダウン比(最大燃焼量に対する最低燃焼量の比)のバーナの場合には、低燃焼領域において燃料油噴射量がより大きく絞り込まれるために前記傾向は一層強くなると予想され、微粉炭を安定して着火燃焼させるには何らかの工夫を要する。
【0006】
本発明は上記の点に鑑み、低燃焼領域においても微粉炭を安定して着火燃焼可能な微粉炭バーナを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る請求項1記載の微粉炭バーナでは、円筒状のバーナ本体の内部に火炎形成用の燃料油噴射ノズルと微粉炭噴射ノズルとを併設し、かつ前記バーナ本体の基端部に燃焼用空気供給ファンを接続すると共に、前記燃料油噴射ノズルに供給する燃料油量を調整する流量調整バルブを備える一方、切出量調整用のロータリーバルブを具備した微粉炭貯蔵ビンを配設し、該微粉炭貯蔵ビンより切り出す微粉炭を前記微粉炭噴射ノズルにエア圧送する圧送ファンを備えた微粉炭バーナであって、バーナ開度に応じて前記流量調整バルブとロータリーバルブの開度、並びに前記燃焼用空気供給ファンと圧送ファンの送風量を比例制御する燃焼制御器を備えると共に、該燃焼制御器は高燃焼領域に対応した高燃焼パターンと低燃焼領域に対応した低燃焼パターンとから燃焼領域に応じて何れかの燃焼パターンを選択する燃焼パターン選択部を有し、前記高燃焼パターンでは燃料油と微粉炭の噴射量をそれぞれ所定混焼率に維持しながら増減調整する一方、前記低燃焼パターンでは燃料油の噴射量を一定に維持しつつ、微粉炭の噴射量は燃料油の噴射量を減じずに一定に維持する分に相当する熱量分を減量調整する制御としたことを特徴としている。
【0008】
また、請求項2記載の微粉炭バーナでは、前記燃料油噴射ノズルは前記バーナ本体の中心部に配置し、前記微粉炭噴射ノズルは燃料油噴射ノズルの周囲に所定間隔にて複数配置すると共に、該各微粉炭噴射ノズルには開閉バルブを介在させ、前記圧送ファンの送風量に基づいて前記各開閉バルブを開閉制御する開閉制御器を備え、該開閉制御器はバーナ開度が少なくとも低燃焼領域となれば前記各開閉バルブの一部を閉鎖し、微粉炭を噴射するノズル数を減少させて微粉炭の噴射流速を、少なくとも燃料油にて形成する火炎領域内に微粉炭を吹き込め、かつ吹き込んだ微粉炭が前記火炎領域を通過するまでに完全に着火燃焼しきれる速度範囲に高めるようにしたことを特徴としている。
【0009】
また、請求項3記載の微粉炭バーナでは、前記開閉制御器は前記各開閉バルブを一つ置きまたは前記燃料油噴射ノズルを中心として対称位置のものを連動して閉鎖するようにしたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る請求項1記載の微粉炭バーナによれば、バーナ開度に応じて燃料油供給量調整用の流量調整バルブと微粉炭切出量調整用のロータリーバルブの開度、並びに燃焼用空気供給ファンと微粉炭エア圧送用の圧送ファンの送風量を比例制御する燃焼制御器を備えると共に、該燃焼制御器は高燃焼領域に対応した高燃焼パターンと低燃焼領域に対応した低燃焼パターンとから燃焼領域に応じて何れかの燃焼パターンを選択する燃焼パターン選択部を有し、前記高燃焼パターンでは燃料油と微粉炭の噴射量をそれぞれ所定混焼率に維持しながら増減調整する一方、前記低燃焼パターンでは燃料油の噴射量を一定に維持しつつ、微粉炭の噴射量は燃料油の噴射量を減じずに一定に維持する分に相当する熱量分を減量調整する制御としたので、低燃焼領域で燃料油にて形成する火炎サイズが小さくなり過ぎるのを抑えられ、主燃料である微粉炭を安定して着火燃焼させることができると共に、燃料油量を一定に維持する低燃焼領域においてもバーナ開度に見合った適正な熱量供給が可能となる。
【0011】
また、請求項2記載の微粉炭バーナによれば、前記燃料油噴射ノズルの周囲に複数配置した微粉炭噴射ノズルにそれぞれ開閉バルブを介在させ、前記圧送ファンの送風量に基づいて前記各開閉バルブを開閉制御する開閉制御器を備えると共に、該開閉制御器はバーナ開度が少なくとも低燃焼領域となれば前記各開閉バルブの一部を閉鎖し、微粉炭を噴射するノズル数を減少させて微粉炭の噴射流速を、少なくとも燃料油にて形成する火炎領域内に微粉炭を吹き込め、かつ吹き込んだ微粉炭が前記火炎領域を通過するまでに完全に着火燃焼しきれる速度範囲に高めるようにしたので、低燃焼領域で微粉炭噴射量を大きく絞っても、燃料油による火炎内に微粉炭を適当に吹き込めて安定して着火燃焼できる。
【0012】
また、請求項3記載の微粉炭バーナによれば、前記開閉制御器は前記各開閉バルブを一つ置きまたは前記燃料油噴射ノズルを中心として対称位置のものを連動して閉鎖するようにしたので、低燃焼領域で微粉炭を噴射するノズル数を減らした場合に、その中心に位置する燃料油噴射ノズル前方の火炎に対して微粉炭を偏りなく吹き込めてより安定して着火燃焼できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る微粉炭バーナの一実施例を示す概略説明図である。
図2図1の一部を省略したA−A断面図である。
図3】バーナ開度に対する燃料油及び微粉炭の噴射量をそれぞれ熱量換算したもの、並びにその総発熱量の関係を示すグラフである。
図4】各微粉炭噴射ノズルを全て開放した状態を示す図1の一部を省略したB−B断面図である。
図5】各微粉炭噴射ノズルのうち一部(一つ置き)のノズルを閉鎖した状態を示す図4に該当する図である。
図6】各微粉炭噴射ノズルのうち一部(燃料油噴射ノズルを中心として対称位置)のノズルを閉鎖した状態を示す図4に該当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る微粉炭バーナにあっては、円筒状のバーナ本体の内部に火炎形成用の燃料油噴射ノズルと微粉炭噴射ノズルとを併設し、かつ前記バーナ本体の基端部に燃焼用空気供給ファンを接続する。また、前記燃料油噴射ノズルに供給する燃料油量を調整する流量調整バルブを備える一方、切出量調整用のロータリーバルブを具備した微粉炭貯蔵ビンを配設し、該微粉炭貯蔵ビンより切り出す微粉炭を前記微粉炭噴射ノズルにエア圧送する圧送ファンを備える。
【0015】
また、バーナ開度に応じて前記流量調整バルブとロータリーバルブの開度、並びに前記燃焼用空気供給ファンと圧送ファンの送風量を比例制御する燃焼制御器を備える。前記燃焼制御器は、高燃焼領域に対応した高燃焼パターンと低燃焼領域に対応した低燃焼パターンの二つの燃焼パターンから現状の燃焼領域に応じた何れかの燃焼パターンを選択する燃焼パターン選択部を有する。
【0016】
前記高燃焼パターンでは燃料油と微粉炭の噴射量をそれぞれ予め設定した所定混焼率に維持しながら増減調整する一方、低燃焼パターンでは燃料油の噴射量を一定(少なくとも微粉炭を安定して着火可能な火炎サイズを形成するのに要する量)に維持しつつ、微粉炭の噴射量は燃料油の噴射量を減じずに一定に維持する分に相当する熱量分を減量調整する制御とし、これによって高燃焼領域から低燃焼領域に亘って微粉炭の安定した着火燃焼を図れると共に、バーナ開度に見合った適正な熱量供給を可能とする。
【0017】
また、好ましくは、前記燃料油噴射ノズルは前記バーナ本体の略中心部に配置し、前記微粉炭噴射ノズルは燃料油噴射ノズルの周囲に所定間隔にて複数配置すると共に、該各微粉炭噴射ノズルには開閉バルブを介在させ、前記圧送ファンの送風量(微粉炭供給量)に基づいて前記各開閉バルブを開閉制御する開閉制御器を備える。前記開閉制御器はバーナ開度が少なくとも低燃焼領域となれば前記各開閉バルブの一部を閉鎖し、微粉炭を噴射するノズル数を減少させて微粉炭の噴射流速を高めるようにすると良い。
【0018】
なお、前記燃料油と微粉炭の混焼率は微粉炭を着火燃焼可能な範囲で適宜設定することができるが、省エネ効果やCO2の削減効果を高めるのであればできるだけ微粉炭の混焼率を高めるのが好ましい。この場合、特に高ターンダウン比のバーナであれば、微粉炭の噴射量は高燃焼領域に比較して低燃焼領域では大きく絞り込まれることになり、加えて燃料油噴射量を一定に維持する分に相当する熱量分だけ減量調整する前記制御によってより一層絞り込まれることになるが、上記のように低燃焼領域で微粉炭を噴射するノズル数を減少させて噴射流速を高めることにより、燃料油による火炎内に微粉炭を適当に吹き込めて安定した着火燃焼を維持できる。
【0019】
更に、好ましくは、前記開閉制御器は前記各開閉バルブを一つ置きまたは前記燃料油噴射ノズルを中心として対称位置のものを連動して閉鎖するようにしても良く、それによって低燃焼領域で微粉炭噴射ノズルの一部を閉鎖した場合でも、火炎に対して微粉炭を偏りなくバランス良く吹き込めてより安定した着火燃焼を図れる。
【0020】
このように、本発明の微粉炭バーナによれば、低燃焼領域においても燃料油による火炎サイズを少なくとも微粉炭を安定して着火燃焼可能な大きさに保て、例え主燃料である微粉炭の混焼率を高く設定したり、高ターンダウン比のバーナにあっても適正な燃焼状態を維持できる。
【実施例】
【0021】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
【0022】
図中の1は微粉炭を主燃料とする微粉炭バーナであって、円筒状のバーナ本体2を備え、該バーナ本体2の先端部には略截頭円錐形状のスロート3を接続している一方、基端部には送風ダクト4を介して燃焼用空気供給ファン5を連結している。前記燃焼用空気供給ファン5の駆動モータ6には回転数調整用のインバータ7を具備しており、該インバータ7にて前記駆動モータ6の回転数を調整することにより、バーナ燃焼量に見合った燃焼用空気量を吸気口8より吸引して前記バーナ本体2に供給可能としている。
【0023】
前記バーナ本体2の略中心部(円筒軸芯部)には、重油等を燃料とする火炎形成用の燃料油噴射ノズル9を備えていると共に、該燃料油噴射ノズル9前方位置の前記スロート3内にはバーナ本体2の内径より若干大径で環状の保炎板10を備えている。また、前記燃料油噴射ノズル9の周囲には、図2に示すように、該燃料油噴射ノズル9を中心とした同心円状に所定間隔にて複数、例えば4〜8本程度(本実施例では6本)の微粉炭噴射ノズル11a〜11fを備えている。
【0024】
前記燃料油噴射ノズル9には、送り配管12及び戻り配管13とからなる燃料供給配管14を連結している。前記燃料供給配管14の送り配管12にはその途中に燃料供給ポンプ15を介在させて他端部を燃油タンク(図示せず)等に連結している一方、前記戻り配管13にはその途中に流量調整バルブ16を介在させて他端部を前記燃料供給ポンプ15上流側の送り配管12に連結しており、コントロールモータ17にて前記流量調整バルブ16の開度を調整して燃料油の戻り量を調整することにより、燃料油噴射ノズル9からの燃料油の噴射量を調整するようにしている。
【0025】
前記微粉炭噴射ノズル11a〜11fは、図1に示すように、略L時形状の曲管構造とし、その先端部は前記保炎板10を貫通させ、かつ前記燃料油噴射ノズル9の先端部よりも前方に延設し、微粉炭噴射ノズル11a〜11fより噴射する微粉炭を燃料油噴射ノズル9前方のスロート3内に形成する火炎領域に吹き込めるようにしている一方、基端部はバーナ本体2の中心部側に略直角に折曲して分配器18に連結している。
【0026】
前記分配器18は前記燃料油噴射ノズル9の後方に配置し、前記バーナ本体2と同じ軸芯を有する中空の円筒形状とし、該分配器18の後端部に圧送ファン19を有した微粉炭圧送管20を直結している一方、分配器18の円筒部外周面に対して所定間隔にて前記各微粉炭噴射ノズル11a〜11fの基端部を略放射状に連結しており、前記微粉炭圧送管20よりエア圧送する微粉炭を前記分配器18を介すことで各微粉炭噴射ノズル11a〜11fへ略均等に分配供給可能としている。
【0027】
図1中の21は、例えば、木質系バイオマスを炭化・粉砕処理して得られるバーナ燃料としての微粉炭を貯蔵する微粉炭貯蔵ビンであって、該微粉炭貯蔵ビン21の下端部にはバーナ開度(燃焼量)に応じた量の微粉炭を切り出し可能なロータリーバルブ22を具備していると共に、該ロータリーバルブ22下部の排出口23と前記微粉炭圧送管20とを接続しており、前記ロータリーバルブ22にて切り出す微粉炭を前記圧送ファン19からの送風にてエア圧送し、前記微粉炭圧送管20、分配器18を介して前記各微粉炭噴射ノズル11a〜11fへ供給可能としている。
【0028】
前記圧送ファン19には送風量調整手段であるインバータ24を備えており、バーナ開度(燃焼量)に応じて前記微粉炭貯蔵ビン21下端部のロータリーバルブ22にて切り出す微粉炭量が増減した場合に、前記インバータ24にて増減後の微粉炭切り出し量に見合った送風量に調整可能としている。
【0029】
また、図中の25はバーナ開度に応じて燃料油供給量調整用の前記流量調整バルブ16、及び微粉炭切出量調整用の前記ロータリーバルブ22の開度、並びに前記燃焼用空気供給ファン5と微粉炭圧送用の前記圧送ファン19の送風量を比例制御する燃焼制御器であって、該燃焼制御器25は高燃焼領域に対応した高燃焼パターンと低燃焼領域に対応した低燃焼パターンの二つの燃焼パターンから現状の燃焼領域に応じた何れかの燃焼パターンを選択する燃焼パターン選択部26を有している。
【0030】
図3はバーナ開度に対する燃料油及び微粉炭の噴射量をそれぞれ熱量換算したもの、並びにその総発熱量の関係の一例を示すグラフであって、該グラフの右側(本実施例ではバーナ開度40%以上)の高燃焼領域にあっては、バーナ開度に応じ、前記流量調整バルブ16及び前記ロータリーバルブ22を開閉制御して燃料油と微粉炭の噴射量を発熱量換算(MJ:メガジュール)で所定混焼率(本実施例では、本発明者らの行った本微粉炭バーナ1の燃焼実験により得られた、微粉炭を安定して着火燃焼可能な最大混焼率である燃料油:微粉炭=1:4程度)に維持しながら増減調整する高燃焼パターンにて制御するようにしている。
【0031】
一方、前記グラフの左側(本実施例ではバーナ開度40%未満)の低燃焼領域にあっては、バーナ開度にかかわらず燃料油の噴射量を一定に維持(グラフ中、点線a1から実線a2に調整)しつつ、微粉炭の噴射量は燃料油の噴射量を減じずに一定に維持する分に相当する熱量分(グラフ中の網掛け部X)と同等の熱量分(グラフ中の網掛け部Y)を減量調整(グラフ中、点線b1から実線b2に調整)する低燃焼パターンにて制御するようにしている。上記制御により、グラフ中の総発熱量を示す太実線は全バーナ開度に亘って直線性を保持し、燃料油量を一定に維持する低燃焼領域においてもバーナ開度に見合った適正な熱量供給を可能としている。
【0032】
また、好ましくは、前記各微粉炭噴射ノズル11a〜11fの途中にそれぞれ開閉バルブ27a〜27fを介在させると共に、前記微粉炭圧送管20に備えた圧送ファン19の送風量、或いは前記ロータリーバルブ22にて切り出す微粉炭の切り出し量に基づいて前記各開閉バルブ27a〜27fを開閉制御する開閉制御器28を備える。
【0033】
前記開閉制御器28には、前記圧送ファン19の送風量等に応じて前記各微粉炭噴射ノズル11a〜11fのうち開放するノズル数(或いは閉鎖するノズル数)を予め設定しており、例えば、最大送風量(最大バーナ開度)付近では最多の6本とし、送風量が減っていくに従い開放ノズル数を漸減させ、最少送風量(最少バーナ開度)付近では1、2本程度を設定しておく。前記設定に従えば、送風量(バーナ開度)の増減にかかわらず、微粉炭の噴射流速を安定燃焼に見合った流速に維持でき、図3に示すように、例え微粉炭の混焼率が燃料油よりも相当に高く、かつ低燃焼領域において燃料油噴射量を一定に維持した分だけ微粉炭噴射量をより大きく絞ることになった場合でも、火炎内に微粉炭を適当に吹き込めて良好な混焼状態を保持できる。
【0034】
なお、ここで言う安定燃焼に見合った流速とは、少なくとも燃料油にて形成する火炎領域内に微粉炭を吹き込め、かつ吹き込んだ微粉炭が前記火炎領域を通過するまでに完全に着火燃焼しきれる程度の速度範囲を言うが、木質系バイオマスの炭化・粉砕処理によって得られる微粉炭の性状(着火性・燃焼性等)には多少バラツキがあることも予想されるため、燃焼試験等を通じて適宜調整すると良い。
【0035】
また、上記実施例では、圧送ファン19の送風量に応じて各微粉炭噴射ノズル11a〜11fを1本単位で開閉し、開放ノズル数を最大6段階にて増減調整可能として比較的きめ細かく微粉炭の噴射流速を調整できるようにしているが、何らこれに限定されるものではなく、例えば、あまりきめ細かく調整する必要のない比較的小型のバーナ等であれば、複数本単位で開閉して開放ノズル数を2〜3段階にて増減調整(例えば、送風量が最大送風量の半分程度以上では6本とし、半分程度以下では3本を設定)するようにしても良い。
【0036】
更に、好ましくは、微粉炭噴射ノズルの本数を4〜8本程度の偶数本とし、かつ各ノズルの間隔を等間隔にて配置する。そして、前記開閉制御器28では、前記各微粉炭噴射ノズル11a〜11fの開閉バルブ27a〜27fを開閉する場合、例えば図5に示すように一つ置き、または図6に示すように前記燃料油噴射ノズル9を中心として対称位置のものを連動して開閉するように制御すると良い。なお、図4図6中、ノズル開口部を白色で示した微粉炭噴射ノズルは開閉バルブを開放した状態を、黒色で示した微粉炭噴射ノズルは開閉バルブを閉鎖した状態をそれぞれ表している。前記制御とすることにより、低燃焼領域において微粉炭噴射ノズル11a〜11fの一部を閉鎖した場合でも、燃料油噴射ノズル9前方に形成する火炎に対してその周囲から微粉炭を偏りなくバランス良く吹き込める。
【0037】
そして、上記構成の微粉炭バーナ1を運転するときには、前記燃焼制御器25では燃焼パターン選択部26にてバーナ開度(燃焼領域)に応じた燃焼パターンを選択する。例えば、バーナ開度40%以上の高燃焼領域であれば高燃焼パターンを選択し、燃焼用空気供給ファン5及び圧送ファン19の送風量を調整しつつ、燃料供給配管14の流量調整バルブ16、微粉炭貯蔵ビン21のロータリーバルブ22の開度を制御し、燃料油と微粉炭の噴射量をそれぞれ所定混焼率に維持しながら増減調整して混焼させ、バーナ開度に見合った熱量供給を行う。
【0038】
また、バーナ開度が40%未満の低燃焼領域となれば低燃焼パターンに切り替え、燃料油の噴射量はバーナ開度にかかわらず微粉炭の着火燃焼にとって必要最低限の火炎サイズを形成するのに要する一定量に維持しつつ、微粉炭の噴射量は燃料油を減じずに一定に維持した分に相当する熱量分を減量調整した状態で混焼させ、高燃焼パターンと同様にバーナ開度に見合った熱量供給を行う。
【0039】
このとき、前記開閉制御器28では、前記微粉炭貯蔵ビン21より切り出す微粉炭をその切出量に見合った送風量にてエア圧送する前記圧送ファン19の送風量を逐次取り込んでおり、該送風量に応じて予め設定した前記開放ノズル数となるように、前記各微粉炭噴射ノズル11a〜11fの開閉バルブ27a〜27fの一部を閉鎖し、微粉炭を噴射するノズル数を減少させて微粉炭の噴射流速を安定燃焼に適した流速まで高めるように調整する。
【0040】
なお、本実施例のように、全ての微粉炭噴射ノズル11a〜11fに開閉バルブ27a〜27fを介在させても良いが、例えば、6本のノズルを2〜3段階(例えば、高燃焼時には6本共開放、低燃焼時には3本のみ開放など)で開閉制御するような場合であれば、開閉操作を必要とするノズルを限定することができるため(対象外のノズルは常時開放状態に維持)、該当する微粉炭噴射ノズルに対してだけ開閉バルブを介在させるようにしても良い。
【0041】
また、前記開閉制御器28において、前記圧送ファン19の送風量に代えて、前記ロータリーバルブ22にて切り出す微粉炭の切り出し量に基づいて前記各微粉炭噴射ノズル11a〜11fの各開閉バルブ27a〜27fを開閉操作し、微粉炭を噴射するノズル数を増減させるようにしても良い。
【0042】
また、微粉炭の燃焼によって発生する熱風を被加熱物に対して供給して加熱処理する場合、微粉炭の燃焼時には少なからず燃焼灰が生じるため、前記被加熱物の表面等に燃焼灰が付着するなどの不具合を来す懸念があるものの、例えば、道路舗装材であるアスファルト混合物の素材である骨材あれば、前記燃焼灰が多少付着・混入してもあまり問題なく使用できるため、アスファルトプラントの骨材加熱処理用のドライヤのバーナとして好適に採用できる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、木質系バイオマスを炭化・粉砕処理して得られる微粉炭に限らず、食品廃棄物、家畜糞尿等を含めた各種バイオマスを炭化・粉砕処理して得られる微粉炭を燃料とする微粉炭バーナに対して広く利用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1…微粉炭バーナ 2…バーナ本体
5…燃焼用空気供給ファン 7、24…インバータ
9…燃料油噴射ノズル 11a〜11f…微粉炭噴射ノズル
14…燃料供給配管 16…流量調整バルブ
18…分配器 19…圧送ファン
20…微粉炭圧送管 21…微粉炭貯蔵ビン
22…ロータリーバルブ 25…燃焼制御器
26…燃焼パターン選択部 27a〜27f…開閉バルブ
28…開閉制御器
図1
図2
図3
図4
図5
図6