(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6902322
(24)【登録日】2021年6月23日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】工事用シート
(51)【国際特許分類】
E04G 21/32 20060101AFI20210701BHJP
【FI】
E04G21/32 B
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-114933(P2015-114933)
(22)【出願日】2015年6月5日
(65)【公開番号】特開2017-2496(P2017-2496A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2018年4月19日
【審判番号】不服2019-17542(P2019-17542/J1)
【審判請求日】2019年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】392031572
【氏名又は名称】キョーワ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】特許業務法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神谷 邦雄
【合議体】
【審判長】
住田 秀弘
【審判官】
土屋 真理子
【審判官】
西田 秀彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開平3−119263(JP,A)
【文献】
特開2007−146342(JP,A)
【文献】
特開2001−303388(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3019726(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3127285(JP,U)
【文献】
特開2002−275761(JP,A)
【文献】
実開昭51−147579(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充実率が60%以上であり、且つ、写真、文字、および模様を印刷している、
工事用シートであって、
前記模様は、複数の模様体で構成される迷彩模様を少なくとも含み、
前記複数の模様体は、迷彩模様の、少なくとも、黒色、黒に近い中間色、白に近い中間色、および白色を含む複数の段階の濃淡の各色を表すものであって、白色を除く各色を表す前記模様体は、いずれも、同じ黒色および白色の縞模様であり、同一の段階の濃淡の色を表す模様体は、他の段階の濃淡の色を表す模様体とは異なる、所定の縞の角度を有した前記縞模様とされ、それにより、見る角度によって変化して見える、工事用シート。
【請求項2】
充実率が90%以下であり、それによって、前記工事用シートはメッシュ状の網目を有する、請求項1に記載の工事用シート。
【請求項3】
前記メッシュ状の網目の寸法が0.3〜5mmである、請求項2に記載の工事用シート。
【請求項4】
前記工事用シートの表面は樹脂で被覆されている、請求項1〜3のいずれかに記載の工事用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は工事用シートに関し、特に、町の景観に馴染んだ工事用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の建築作業に使用される仮設用の工事用のメッシュシートが例えば、特開2007−146342号公報(特許文献1)に記載されている。特許文献1によれば、仮設用の工事用のメッシュシートは、ハロゲン元素を含有しない難燃原着糸と低融点糸との複合糸を用いたリップル組織の編物または織物で構成され、かつ、該編物または織物の組織交点が低融点糸の融着により目止メされており、リップル組織のリップル糸構成繊度が生地ベース糸構成繊度の1.5〜5倍であり、かつリップル糸同士の間隔が0.5cm以上の範囲であることを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−146342号公報(要約)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の建築作業用の工事用のメッシュシートは上記のように構成されていた。しかしながら、従来の仮設工事用のメッシュシートは、灰色や青色、緑色など、単色で町の景観になじむことがなく、工事中のイメージが強く、近隣や生活する人などに不快感を与えるという問題や、1枚もしくは数枚の単独の写真や図柄だけであり、連続した柄をから成るシートの作成が困難であるという問題があった。
【0005】
この発明は上記のような問題点に鑑みてなされたもので、建築工事現場の景観に配慮した工事用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る工事用シートは、充実率が60%以上であり、且つ、写真、文字、模様を印刷している。
【0007】
好ましくは、工事用シートの充実率は90%以下であり、それによって、前記工事用シートはメッシュ状の網目を有する。
【0008】
メッシュ状の網目の寸法は0.3〜5mmであるのが好ましい。
【0009】
工事用シートの表面は樹脂で被覆されていてもよい。
【0010】
印刷された模様は迷彩色であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
この発明に係る工事用シートは、充実率が60%以上であり、且つ、写真、文字、模様を印刷しているため、景観に配慮した工事用シートである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】この発明の一実施の形態に係る工事用シートを示す平面図である。
【
図2】迷彩模様を構成する縞の具体例を示す図である。
【
図3】工事用シートを上下左右に複数配列した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の一実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1はこの発明の一実施の形態に係る工事用シートの平面図である。
図1を参照してこの実施の形態に係る工事用シート10は、表面に迷彩模様が印刷されたシートである。
【0014】
ここでは、迷彩模様が印刷された場合を示しているが、これに限らず、任意の写真、文字、模様を印刷してもよい。
【0015】
また、工事用シート10の充実率は60%以上であるのが好ましく、より好ましくは、60%〜90%以下である。
【0016】
充実率が60%未満である場合、シート自体が透けてしまい、印刷したものが視認できないとともに、工事途中の建築物などが見えてしまう。一方、充実率が90%をこえる場合、目が殆ど詰まった状態となり、風がシートを通過できず、建築現場で働く人が夏場に熱中症になるなどの問題が発生する。
【0017】
なお、このような工事用シート10で建築工事現場を覆うことにより、現場におけるコンクリート躯体において建築物の足場外側構面に垂直に張り、ボルト等の飛来、落下物による災害の防止が可能になる。
【0018】
また、この場合、メッシュ状の網目の寸法が0.3〜5mmであるのが好ましい。
【0019】
さらに、工事用シート10の表面は、耐候性を考慮して樹脂で被覆されているのが好ましい。
【0020】
図2は
図1に示した迷彩模様(A)の一部を拡大した図(B)である。
図2(A)に示すように、ここでは、迷彩模様が黒色11、黒に近い中間色12、白に近い中間色13、白色14の4段階の濃淡で表されているものとする。
【0021】
一方で、それぞれの迷彩模様は、
図2(B)に示すように、縞模様11a,12a,13aで構成されている。なお、ここで、黒色11が縞模様11aに対応し、黒に近い中間色12が縞模様12aに対応し、白に近い中間色13が縞模様13aに対応する。すなわち、迷彩模様を構成する各色が所定の角度を有する縞模様で構成されている。
【0022】
その結果、同じ濃淡でありながら、見る角度によって、迷彩模様が変化して見える。
【0023】
なお、縞模様を構成する縞の角度は、一つの模様体(同一の濃度の中間色等を有する部分)のみを同一とし、個々の模様を様々な角度に変化させて構成してもよい。
【0024】
図3は、
図1に示した工事用シート10を上下左右方向に複数連続して配置した状態を示す図である。図示は省略しているが、工事用シート10の4辺の外周には、隣接する工事用シート10と接続するためのはとめが設けられており、このはとめを用いて、隣接する工事用シート10を接続する。
【0025】
通常の工事用のシートの寸法は、幅:1.8m、長さ5.1mである。これに対して、この実施の形態に係る工事用シート10の幅は1.8mであるが、長さは1.7mである。これを基準として、長さ方向を2倍体にすれば、幅:1.8m、長さ3.4m、長さ方向を3倍体にすれば幅:1.8m、長さ5.1mの工事用のシートを得ることができる。
【0026】
なお、工事用シート10自身の寸法を、通常の工事用のシートの寸法としてもよい。
【0027】
図3に示すように、工事用シート10が複数隣接して配置されたとき、
図3において矢印Aで示す隣接する工事用シート10間で、迷彩模様を構成する縞模様が連続するように印刷されている。これにより、継ぎ接ぎ感がなくなり、一つの大きなイメージ模様として周囲と溶け込んで工事現場の印象が薄れる。
【0028】
その結果、大型の、景観に配慮した工事用シートが提供できる。
【0029】
また、工事用シート10を構成する印刷された写真、文字、模様は立体画像であってもよい。この場合、ホログラムのように、見る角度、および、水平方向の角度によって濃淡がで、個々のシートが同一に見えない、という効果を奏する。
【0030】
次に、工事用シート10の具体的な構成について説明する。工事用シートの基布は、織物、もしくは編み物から構成される。一定の目合いと引張り強さ、引裂き強さを維持するには、一定の太さ×密度が必要である。経糸、緯糸の引張り強さ、引裂き強さは目標とする一定の値を保つ必要があるので、目標に応じて、厚さ×密度=ほぼ一定の値となる。従って、厚さ、すなわち、糸の繊度を増すと密度を下げることが出来る。
【0031】
工事用シート10の基布は経糸と緯糸とによって構成されているが、経糸と緯糸との太さの比率は3:1〜1:3であるのが好ましい。
【0032】
経緯の糸の太さの割合が1:1のとき、糸のバランスが均一で強さ、伸び共に最大のものが発揮される。しかし、糸の太さを細くしていくと、織物や編み物の厚さが薄くなり紙のようになる(ペーパーライク)状になり、引裂き強さが低下する。この対策として、経糸と緯糸の太さ比率を2:1もしくは、1:2とすることで織物や編み物の厚さを確保出来、必要とする引裂き強さを維持できる。経糸と緯糸の太さの割合を3:1、1:3とした場合、より多くの厚さを確保出来るが、一方で経緯の糸の太さ比率の差が大きくなり、引張り強さが出にくくなる。
【0033】
また、緯糸の打ち込み間隔を変え、目の大きさが小:大=1:2〜1:4であるのが好ましい。
【0034】
経糸と緯糸とを構成する原糸は、原糸となる合成繊維製造の段階で難燃性を付与した難燃ポリエステル、難燃ポリプロピレンのような、汎用の難燃素材であるのが好ましいが、難燃性を有する繊維であり、必要な強さを有しているのであれば、特に素材を問わない。難燃性の付与については、原糸製造後、織物や編み物にした後、難燃剤浸漬等により難燃性を付与する方法や、織物や編み物に塩ビやその他の難燃性の樹脂を被覆するのが好ましい。
【0035】
この実施の形態に係る工事用シート10で工事現場を覆うことにより、工事現場と町並みが同一化し、工事現場の印象が柔らかくなる。
【0036】
また、迷彩色を縞模様で印刷することにより、見る角度によって迷彩色の濃淡ができて、各模様の単色が多彩になる。
【0037】
図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、本発明は、図示した実施形態に限定されるものではない。本発明と同一の範囲内において、または均等の範囲内において、図示した実施形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
この発明によると、建築工事現場で落下物が工事現場の外側へ飛び出すことなく、通風性がよく、さらに景観に配慮できるため、工事用シートとして有利に利用される。
【符号の説明】
【0039】
10 工事用シート、11 黒色、12 黒に近い中間色、13 白に近い中間色、14 白色、11a,12a,13a 縞模様。