(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、発明の実施の形態を説明する。
まず、本発明の一実施形態にかかる湿式製錬装置1の全体構成について
図1を用いて説明する。
湿式製錬装置1は、金属を含有する鉱石を粉砕してスラリーとして、前記スラリーに酸を散布して酸化した金属を浸出し、これにより得られる浸出液を溶媒抽出などによって処理して不純物を分離し、不純物を除いた金属酸化物を含む液体から不溶性電極を用いた電解採取によって金属を回収するための装置である。回収する金属は、希土類金属(レアアース)や銅、亜鉛、チタン、金等を含む。散布する酸は、硫酸、硝酸、または塩酸などである。
湿式製錬装置1は、金属を含有する鉱石に酸を散布して酸化した金属を浸出する浸出装置2と、これにより得られる浸出液を溶媒抽出などによって処理して不純物を分離する分離装置3と、不純物を除いた金属酸化物を含む液体から不溶性電極を用いた電解採取によって金属を回収する回収装置4と、を備える。なお本実施形態においては、浸出装置2、分離装置3、及び回収装置4を説明するために、別個形成しているが、一つの装置ユニットとして構成し、装置ユニット内に全ての装置を配置する構成としても良い。
【0020】
<第一実施形態>
次に、湿式製錬装置1を構成する浸出装置2について
図2から
図5を用いて詳細に説明する。
浸出装置2は、粉砕した鉱石を酸の中に入れ、鉱石に含まれる金属を酸化させることにより浸出させる反応槽11と、反応槽11の内部に気体を超微細気泡として供給する超微細気泡発生装置12とを備える。
【0021】
反応槽11は、円筒若しくは多角形筒状の容器であり、反応槽11の上方には、粉砕した鉱石を投入するための投入口11Aが形成されている。また、反応槽11の下方には、酸により酸化された金属(酸化金属)をスラグとして引き抜くための引き抜き口11Bが形成されている。反応槽11は、耐酸性の素材で形成されている。また、反応槽11は、数mから数十mの高さとなるように形成されている。
【0022】
超微細気泡発生装置12は、液体中において超微細気泡を発生させるための装置である。ここで超微細気泡とは、常温常圧化においてサイズ(直径)が100μm未満の気泡を意味する。超微細気泡発生装置12は、
図2及び
図3に示すように、反応槽11の内部に気体を超微細気泡として供給する装置であり、反応槽11の外部に設けた圧送手段であるコンプレッサ21と、中央部にコンプレッサ21と連通する回転軸内通路22を設けた回転軸23と、回転軸23と相対回転不能に設けられ、回転軸内通路22と連通する回転体内通路24を備える少なくとも一以上の回転体25と、回転体内通路24と連通し、回転体25に固定される気泡発生媒体26とを備える。超微細気泡発生装置12を使用する場合には、回転軸23の中途部から下の部分が反応槽11の液体中に配置される。
【0023】
圧送手段は、回転軸内通路22、回転体内通路24を介して気泡発生媒体26へ気体を圧送するための装置であり、本実施形態においてはコンプレッサ21で構成されている。圧送される気体は、酸化剤として用いられる気体であり、例えば、空気、酸素、オゾンまたは過酸化水素などである。
回転軸23は、駆動手段により回転される部材であり、駆動手段により回動可能に構成される外筒31と、外筒31の内部に形成される内筒32とから構成される。回転軸23の上端には駆動手段が連結されている。
駆動手段は、回転軸23を駆動させる手段であり、詳細には回転軸23の外筒31を回転させるロータリージョイント33により構成される。ロータリージョイント33は、内部に気体を通過させるための空間を有する駆動手段であり外筒31と連結されている。またロータリージョイント33の内部空間33Aは、上流側がコンプレッサ21と連結されており、下流側が回転軸内通路22と連結されている。
【0024】
回転軸23は、中空に構成されており、その中空となっている中心部には気体を通すための回転軸内通路22が設けられている。回転軸内通路22は、回転軸23の外筒31の内部に設けられ、管状に形成された内筒32によって構成されている。内筒32は、外筒31が回転しているときも回転不能に構成されており、内筒32の内部には回転軸内通路22が設けられている。回転軸23の下部には回転体25が外筒31と相対回転不能に設けられている。本実施形態においては、回転体25は、回転軸23の下端に設けられている。
【0025】
回転体25は、
図3に示すように、回転軸23の下端に設けられており、回転軸23の外筒31下端と回転体25とは相対回転不能に固定されている。また、回転軸内通路22と回転体25の上面に設けられた連結孔25Aとが連結するように設けられている。連通孔25Aはその下面が閉じられており、その側面に複数の連通孔25Bが穿設されている。連通孔25Bの数は、後述する回転体内通路の数と同じとなるように設けられており、本実施形態においては2個設けられている。
回転体内通路24は、回転体25の中心から半径方向外側へ突設されており、一端が連通孔25Aと連結されている。また、回転体内通路24の半径方向外側の他端は、気泡発生媒体26に設けられた気泡発生媒体内通路27と連結されている。
【0026】
気泡発生媒体26は炭素系の多孔質素材で構成されており、
図6(b)に示すように、直径数μm〜数十μmの細かな孔26Aを多数有している。また、気泡発生媒体26は導電体であり、気泡発生媒体26から発生する気泡は負の電荷が帯電される。言い換えれば、導電体である気泡発生媒体26を通過する際に超微細気泡に自由電子が付加されることにより、負の電荷が帯電するものである。この負の電荷により、気泡同士が互いに反発し、合体して大きな気泡になることを防ぐことができる。
炭素系の多孔質素材とは、炭素のみ若しくは炭素及びセラミックを含む複合素材であり、無機質の素材である。
【0027】
また、気泡発生媒体26は、回転方向(
図5の矢印方向)先頭部の肉厚が厚く、回転方向終端部の肉厚が薄くなるように板状(断面視略流線型)に形成されている。気泡発生媒体26は上下方向へ回転させて固定することができ、これにより、気泡発生媒体26の傾斜角を自由に変更することができるよう構成されている。
例えば、気泡発生媒体26を下方に傾斜させた場合には、気泡発生媒体26の下側においては、気泡発生媒体26の下面と接触した酸を含むスラリーが下側に流れることにより、下向きの液体流が起こり、気泡発生媒体26の上側においては、気泡発生媒体26の上面に沿って酸を含むスラリーが流れることにより、下向きの液体流が発生する。これにより、気泡発生媒体26を回転させることで下向きの液体流を起こし、酸を含むスラリーを攪拌することもできる。
下向きの液体流を起こした場合であっても、通常の気泡であれば一旦下方へ沈んだ後再び上方へ浮上するため、大きな圧力をかけて気泡を下方へ送る必要があった。しかし、本実施形態によれば、超微細気泡の浮力の小さい性質を利用して、下向きの液体流を起こすだけで超微細気泡を容易に下方まで送ることができる。
【0028】
気泡発生媒体26には気泡発生媒体内通路27が設けられている。気泡発生媒体内通路27は、気泡発生媒体26の内部に設けられ、気泡発生媒体26の短手方向中途部から屈曲して、気泡発生媒体26の長手方向の中途部まで設けられている。気泡発生媒体内通路27の一端は回転体内通路24と連結されている。回転軸内通路22、連通孔25A、連通孔25B、回転体内通路24、及び気泡発生媒体内通路27の各接続部分は密閉されており、液体の内部への侵入を防ぐ。
【0029】
次に、超微細気泡発生装置12による超微細気泡の発生方法について説明する。
まず、回転軸23を駆動させる。詳細には、図示せぬ動力源により駆動されたロータリージョイント33が回転することにより、外筒31を回動させることで回転軸23を回転させる。回転軸23が回動すると回転軸23の下端に設けられた回転体25が回転する。
次にコンプレッサ21により、気体を圧送する。コンプレッサ21により圧送された気体は回転軸内通路22へと送られる。
回転軸内通路22へと送られた気体は、連通孔25A及び連通孔25Bを介して回転体内通路24へと送られる。回転体内通路24へと送られた空気は、気泡発生媒体内通路27へと送られ、気泡発生媒体内通路27から気泡発生媒体26に設けられた直径数μm〜数十μmの細かな孔26Aを通って、超微細気泡となり液体中へ放出される。液体中へ放出される超微細気泡は、気泡発生媒体26表面に放出された瞬間に、回転する気泡発生媒体26と周りの液体との間に生まれた流れ(
図6(a)の矢印方向の流れ)によって、表面から離間される。このように構成することにより、後から発生する超微細気泡や周辺の孔26Aから発生する超微細気泡と合体することなく単独で液体中へ移動することとなる。
【0030】
超微細気泡として反応槽11内に供給された酸化剤により、鉱石に含まれた金属は酸化されて酸内に浸出する。また、不純物や微細な鉱石等がスラグとして反応槽11内に析出する。析出したスラグは引き抜き口11Bから引き抜かれて排出される。スラグを除去した浸出液は、溶媒抽出などによって処理してさらに不純物を分離し、不純物を除いた金属酸化物を含む液体から不溶性電極を用いた電解採取によって金属を回収することにより、所望する金属を製錬することが可能となる。
【0031】
以上のように、金属を含有する鉱石を粉砕してスラリーとしたものに酸を散布して鉱石から金属酸化物を浸出させて、金属酸化物を含む液体から不溶性電極を用いた電解採取によって金属を回収する湿式製錬装置1において、粉砕した鉱石を酸の中に入れ、鉱石に含まれる金属を酸化させることにより浸出させる反応槽11と、反応槽11の内部に気体を超微細気泡として供給する超微細気泡発生装置12と、を備え、超微細気泡発生装置12は、炭素系の多孔質素材で形成された気泡発生媒体26を有し、気泡発生媒体26は、反応槽11内に配置されるものである。
このように構成することにより、超微細気泡となった気体は、その性質により反応槽11の上方へ移動することなく液体中に広く分布することとなり、鉱石に含有された金属と接触する機会が増加するので、含有される金属の酸化が促進される。また、反応槽11内の強酸性、高温の環境下においても、気泡発生媒体26が炭素系の多孔質で形成されていることにより劣化することがないためメンテナンス性が向上する。また、酸を含むスラリー内へ超微細気泡として酸化剤を供給することにより、気体の溶存効率が80%以上となり、鉱石に含有された金属と接触する機会が増加するので、含有される金属の酸化が促進される。
【0032】
また、超微細気泡発生装置12は、気体を圧送する圧送手段であるコンプレッサ21と、中央部にコンプレッサ21と連通する回転軸内通路22を設けた回転軸23と、回転軸23に回転軸23と相対回転不能に設けられ、回転軸内通路22と連通する回転体内通路24を備える少なくとも一以上の回転体25と、を備え、気泡発生媒体26は、回転体内通路24と連通し、回転体25に固定されるものである。
このように構成することにより、粘度の高い反応槽11の液体中においても、回転体25に固定される気泡発生媒体26を回転させることにより、効率よく超微細気泡を発生させることができる。また、回転体25及び気泡発生媒体26を回転させることにより、下向きの液体流を起こし、超微細気泡の浮力の小さい性質を利用して、超微細気泡を容易に下方まで送ることができる。したがって、簡易な方法で粒径の小さな超微細気泡を発生させることができる。
【0033】
<第二実施形態>
また、別の実施形態として、回転体125を上下に複数個有する超微細気泡発生装置112を設けることも可能である。
図7から
図9に示すように、第一実施形態と比較して、超微細気泡発生装置112は、回転軸23に複数個の回転体125を設けたものである。ここで、回転体125の構成は第一実施形態の回転体25の構成と同一であるので説明を省略する。また、第一実施形態と同一の番号を付した部分は第一実施形態と同様の構成であるので説明を省略する。
【0034】
回転軸内通路122は、
図9に示すように、回転軸23の外筒31及び内筒32の内部に設けられており、一つの回転体125に対して一つの通路141が設けられている。本実施形態においては、三つの回転体125が設けられており、対応する通路141が三つ設けられている。各通路141の中途部には、圧力調整弁142が設けられている。圧力調整弁142は電磁弁で構成されており、制御装置150に接続されている。
また、各通路141には、それぞれ流量センサ151が設けられている。流量センサ151は、通路141内を流れる気体の流量を計測する手段であり、制御装置150に接続されている。
【0035】
回転体125は、回転軸23の上部、中部、及び下部に設けられている。回転体125は、回転軸23の外筒31と相対回転不能に固定されている。また、回転軸内通路22と回転体125の平面中心に設けられた連通孔125Aとが連結するように設けられている。連通孔125Aはその下面が閉じられており、その側面に複数の連通孔125Bが設けられている。
回転体内通路124は、回転体125の中心から半径方向外側へ突設されており、一端が連通孔125Bと連結されている。また、回転体内通路124の半径方向外側の他端は、気泡発生媒体126に設けられた気泡発生媒体内通路127と連結されている。
【0036】
回転体内通路124は、回転体125の中心から半径方向外側へ連通孔突設されており、一端が連通孔125Bと連結されている。また、回転体内通路124の半径方向外側の他端は、気泡発生媒体126に設けられた気泡発生媒体内通路127と連結されている。
【0037】
通路141内の圧力については、制御装置150により、下部の回転体125に連結された通路141の圧力が上部の回転体125に連結された通路141の圧力より大きくなるように制御されている。反応槽11において、液体圧は上部より下部の方が大きいため、下方に配置するにしたがって、気体を噴出する圧力を大きくする必要がある。そこで、下部の回転体125に連結された通路141の圧力が上部の回転体125に連結された通路141の圧力より大きくなるように形成することにより、回転体125を配置する深さによる超微細気泡の発生量の差をなくすことができる。
【0038】
次に、超微細気泡発生装置112による超微細気泡の発生方法について説明する。
まず、回転軸23を駆動させる。詳細には、図示せぬ動力源により駆動されたロータリージョイント33が回転することにより、外筒31を回動させることで回転軸23を回転させる。回転軸23が回動すると回転軸23の中途部及び下端に設けられた回転体125が回転する。
次にコンプレッサ21により、気体を圧送する。コンプレッサ21により圧送された気体は回転軸内通路22に設けられた各通路141へと送られる。ここで、制御装置150により、下部の回転体125に連結された通路141の圧力が上部の回転体125に連結された通路141の圧力より大きくなるように制御されている。
各通路141へと送られた気体は、連通孔125A及び連通孔125Bを介して回転体内通路124へと送られる。回転体内通路124へと送られた空気は、気泡発生媒体内通路127へと送られ、気泡発生媒体内通路127から気泡発生媒体126に設けられた直径数μm〜数十μmの細かな孔を通って、超微細気泡となり液体中へ放出される。液体中へ放出される超微細気泡は、気泡発生媒体126表面に放出された瞬間に、回転する気泡発生媒体126と周りの液体との間に生まれた流れによって、表面から離間される。このように構成することにより、後から発生する超微細気泡や周辺の孔から発生する超微細気泡と合体することなく単独で液体中へ移動することとなる。
【0039】
超微細気泡として反応槽11内に供給された酸化剤により、鉱石に含まれた金属は酸化されて酸内に浸出する。また、不純物や微細な鉱石等がスラグとして反応槽11内に析出する。析出したスラグは引き抜き口11Bから引き抜かれて排出される。スラグを除去した浸出液は、溶媒抽出などによって処理してさらに不純物を分離し、不純物を除いた金属酸化物を含む液体から不溶性電極を用いた電解採取によって金属を回収することにより、所望する金属を製錬することが可能となる。
【0040】
また、流量センサ151によって、各通路141内に流れる気体の流量を検知しており、気体の流量が所定値以下となると、制御装置150により、圧力調整弁142の開度を調整することで、各通路141内に流れる気体の流量を均一になるように制御する。
【0041】
以上のように、金属を含有する鉱石を粉砕してスラリーとしたものに酸を散布して鉱石から金属酸化物を浸出させて、金属酸化物を含む液体から不溶性電極を用いた電解採取によって金属を回収する湿式製錬装置1において、粉砕した鉱石を酸の中に入れ、鉱石に含まれる金属を酸化させることにより浸出させる反応槽11と、反応槽11の内部に気体を超微細気泡として供給する超微細気泡発生装置112と、を備え、超微細気泡発生装置112は、炭素系の多孔質素材で形成された気泡発生媒体126を有し、気泡発生媒体126は、反応槽11内に配置されるものである。
このように構成することにより、超微細気泡となった気体は、その性質により反応槽11の上方へ移動することなく液体中に広く分布することとなり、鉱石に含有された金属と接触する機会が増加するので、含有される金属の酸化が促進される。また、反応槽11内の強酸性、高温の環境下においても、気泡発生媒体126が炭素系の多孔質で形成されていることにより劣化することがないためメンテナンス性が向上する。また、酸を含むスラリー内へ超微細気泡として酸化剤を供給することにより、気体の溶存効率が80%以上となり、鉱石に含有された金属と接触する機会が増加するので、含有される金属の酸化が促進される。
【0042】
<第三実施形態>
また、別の実施形態として、
図10及び
図11に示すように、反応槽11の外部に超微細気泡発生装置312を設けることも可能である。超微細気泡発生装置312は、循環通路301と、循環通路301内に設けられた気泡発生媒体302と、を備える。ここで、第一実施形態と同一の番号を付した部分は第一実施形態と同様の構成であるので説明を省略する。
【0043】
循環通路301は、反応槽11内の液体を循環させる通路であり、中途部にポンプ303が設けられている。また、気泡発生媒体302は、循環通路301の内部に設けられている。気泡発生媒体302は、下流側の先端部が錐状となった紡錘形状となるように構成されており、
図11に示すように、その内部に内部空間302Aが設けられている。また、気泡発生媒体302は、炭素系の多孔質素材で形成されている。気泡発生媒体302は、直径数μm〜数十μmの細かな孔302Bを有している。気泡発生媒体302の内部空間302Aには、圧送手段であるコンプレッサ304が連結されている。
【0044】
気泡発生媒体302は、表面に沿って液体が流れるように形成されており、本実施形態においては、気泡発生媒体302の長手方向が循環通路301内の液体の流れと平行になるように設けられている。
【0045】
次に、超微細気泡発生装置312による超微細気泡の発生方法について説明する。
まず、ポンプ303を駆動して循環通路301内に液体流を発生させる。次にコンプレッサ304により、気体を圧送する。コンプレッサ304により圧送された気体は内部空間302Aへと送られる。
内部空間302Aへと送られた気体は、直径数μm〜数十μmの細かな孔302Bを通って、超微細気泡となり液体中へ放出される。液体中へ放出される超微細気泡は、気泡発生媒体302の表面に放出された瞬間に、循環通路301内の液体流によって、表面から離間される。このように構成することにより、後から発生する超微細気泡や周辺の孔302Bから発生する超微細気泡と合体することなく単独で液体中へ移動することとなる。
【0046】
超微細気泡として反応槽11内に供給された酸化剤により、鉱石に含まれた金属は酸化されて酸内に浸出する。また、不純物や微細な鉱石等がスラグとして反応槽11内に析出する。析出したスラグは引き抜き口11Bから引き抜かれて排出される。スラグを除去した浸出液は、溶媒抽出などによって処理してさらに不純物を分離し、不純物を除いた金属酸化物を含む液体から不溶性電極を用いた電解採取によって金属を回収することにより、所望する金属を製錬することが可能となる。
【0047】
以上のように、金属を含有する鉱石を粉砕してスラリーとしたものに酸を散布して鉱石から金属酸化物を浸出させて、金属酸化物を含む液体から不溶性電極を用いた電解採取によって金属を回収する湿式製錬装置1において、粉砕した鉱石を酸の中に入れ、鉱石に含まれる金属を酸化させることにより浸出させる反応槽11と、反応槽11の内部に気体を超微細気泡として供給する超微細気泡発生装置312と、を備え、超微細気泡発生装置312は、炭素系の多孔質素材で形成された気泡発生媒体302を有し、気泡発生媒体302は、反応槽11の外部に配置されるものである。
このように構成することにより、超微細気泡となった気体は、その性質により反応槽11の上方へ移動することなく液体中に広く分布することとなり、鉱石に含有された金属と接触する機会が増加するので、含有される金属の酸化が促進される。また、反応槽11内の強酸性、高温の環境下においても、気泡発生媒体302が炭素系の多孔質で形成されていることにより劣化することがないためメンテナンス性が向上する。また、酸を含むスラリー内へ超微細気泡として酸化剤を供給することにより、気体の溶存効率が80%以上となり、鉱石に含有された金属と接触する機会が増加するので、含有される金属の酸化が促進される。
【0048】
<第四実施形態>
また、別の実施形態として、回転体425とは別に気泡発生媒体426を設け、気泡発生媒体426を反応槽11内に固定した超微細気泡発生装置412を設けることも可能である。
超微細気泡発生装置412は、
図12に示すように、気体を圧送する圧送手段であるコンプレッサ21と、回転軸423と、回転軸423と相対回転不能に設けられる少なくとも一以上の回転体425と、回転体425の近傍であって、反応槽11内に固定される気泡発生媒体426と、を備える。ここで、第一実施形態と同一の番号を付した部分は第一実施形態と同様の構成であるので説明を省略する。
【0049】
圧送手段は、気泡発生媒体426へ気体を圧送するための装置であり、本実施形態においてはコンプレッサ21で構成されている。圧送される気体は、酸化剤として用いられる気体であり、例えば、空気、酸素、オゾンまたは過酸化水素などである。
回転軸423は、駆動手段により回転される部材であり、駆動手段により回動可能に構成される円柱形の部材である。
駆動手段は、回転軸423を駆動させる手段であり、詳細には回転軸23を駆動させるモータ433により構成される。本実施形態においてはモータ433と駆動軸423とを図示せぬギアボックス等の動力伝達手段を介して連結している。
【0050】
回転軸423には、複数個の回転体425が設けられている。本実施形態においては、三つの回転体425が設けられている。回転体425は、回転軸423の上部、中部、及び下部に設けられている。回転体425は、回転軸423と相対回転不能に固定されている。
回転体425の半径方向外側には回転羽根431が設けられている。回転羽根431は、反応槽11内の液体を撹拌するための部材であり、本実施形態においてはプロペラ状に形成されている。回転体425及び回転羽根431は、炭素系の多孔質素材で形成されている。炭素系の多孔質素材とは、炭素のみ若しくは炭素及びセラミックを含む複合素材であり、無機質の素材であり、直径数μm〜数十μmの細かな孔を有している。
【0051】
回転体425と回転体425との上下方向略中間の位置であって、反応槽11の壁面に気泡発生媒体426が固定されている。気泡発生媒体426は上下方向に二つ設けられている。
気泡発生媒体426はリング状に形成されており、その内部に内部空間426Aが設けられている。また、気泡発生媒体426は、炭素系の多孔質素材で形成されている。気泡発生媒体426は、直径数μm〜数十μmの細かな孔426Bを有している。気泡発生媒体426の内部空間426Aには、圧送手段であるコンプレッサ21が連結されている。
【0052】
次に、超微細気泡発生装置412による超微細気泡の発生方法について説明する。
まず、回転軸423を駆動させて液体流を発生させる。詳細には、モータ433が駆動することにより回転軸423を回転させる。回転軸423が回動すると回転軸423の中途部及び下端に設けられた複数の回転体425が回転する。回転体425が回転することにより、回転体425の円周方向外側に設けられた回転羽根431が回転する。回転羽根431が回転することにより液体が撹拌され液体流が発生する。本実施形態においては、回転羽根431の下側に向かって撹拌された液体流が発生する。次に、コンプレッサ21により、気体を圧送する。コンプレッサ21により圧送された気体は内部空間426Aへと送られる。
内部空間426Aへと送られた気体は、直径数μm〜数十μmの細かな孔426Bを通って、超微細気泡となり液体中へ放出される。液体中へ放出される超微細気泡は、気泡発生媒体426の表面に放出された瞬間に、反応槽11内の液体流によって、表面から離間される。詳細には、上側の回転羽根431の回転によって発生した液体流は、
図13に示すように、上側から下側へ向かって流れ、さらに気泡発生媒体426の表面に沿うように流れる。このように構成することにより、後から発生する超微細気泡や周辺の孔426Bから発生する超微細気泡と合体することなく単独で液体中へ移動することとなる。
【0053】
超微細気泡として反応槽11内に供給された酸化剤により、鉱石に含まれた金属は酸化されて酸内に浸出する。また、不純物や微細な鉱石等がスラグとして反応槽11内に析出する。析出したスラグは引き抜き口11Bから引き抜かれて排出される。スラグを除去した浸出液は、溶媒抽出などによって処理してさらに不純物を分離し、不純物を除いた金属酸化物を含む液体から不溶性電極を用いた電解採取によって金属を回収することにより、所望する金属を製錬することが可能となる。
【0054】
以上のように、金属を含有する鉱石を粉砕してスラリーとしたものに酸を散布して鉱石から金属酸化物を浸出させて、金属酸化物を含む液体から不溶性電極を用いた電解採取によって金属を回収する湿式製錬装置1において、粉砕した鉱石を酸の中に入れ、鉱石に含まれる金属を酸化させることにより浸出させる反応槽11と、反応槽11の内部に気体を超微細気泡として供給する超微細気泡発生装置412と、を備え、超微細気泡発生装置412は、気体を圧送する圧送手段であるコンプレッサ21と、回転軸423と、回転軸423と相対回転不能に設けられる少なくとも一以上の回転体425と、回転体425の近傍であって、反応槽11内に固定される気泡発生媒体426と、を備えるものである。
このように構成することにより、超微細気泡となった気体は、その性質により反応槽11の上方へ移動することなく液体中に広く分布することとなり、鉱石に含有された金属と接触する機会が増加するので、含有される金属の酸化が促進される。また、反応槽11内の強酸性、高温の環境下においても、気泡発生媒体426、回転体425及び回転羽根431が炭素系の多孔質で形成されていることにより、劣化することがないためメンテナンス性が向上する。また、酸を含むスラリー内へ超微細気泡として酸化剤を供給することにより、気体の溶存効率が80%以上となり、鉱石に含有された金属と接触する機会が増加するので、含有される金属の酸化が促進される。