(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記不具合部位が亀裂である場合、前記描画情報として前記亀裂に沿った線の形状に関する情報を生成し、前記不具合部位情報として前記亀裂の長さに関する情報を生成することを特徴とする請求項1または2に記載の不具合情報取得システム。
前記制御部は、前記不具合部位が腐食である場合、前記描画情報として前記腐食の領域に関する情報を生成し、前記不具合部位情報として前記腐食の面積に関する情報を生成することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の不具合情報取得システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、欠陥等の不具合部位を取得する検査対象機械として、例えば、航空機がある。航空機に含まれる部品に不具合部位が生じた場合、不具合部位の情報である不具合情報を適切に取得することが所望されている。不具合情報としては、不具合部位の寸法等である。ここで、特許文献1では、ペンを用いて描いた欠陥の位置または寸法などのパラメータは、所定のソフトウェアにより自動的に挿入されることから、特許文献1では、不具合部位の寸法を精度よく取得することに改善の余地があった。
【0005】
そこで、本発明は、検査対象機械に生じた不具合部位の情報を精度よく適切に取得する不具合情報取得システム及び不具合情報取得方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の不具合情報取得システムは、検査対象機械に生じた不具合部位の情報を取得する不具合情報取得システムにおいて、前記検査対象機械の設計モデルを表示する表示部と、前記表示部に表示された前記設計モデルに対して、前記不具合部位を描画操作するための操作部と、前記操作部の描画操作に基づいて描画情報を生成し、生成した前記描画情報と前記設計モデルの寸法情報とに基づいて、前記不具合部位の形状を定量化し、定量化した前記不具合部位の形状に関する不具合部位情報を、不具合情報として生成する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の不具合情報取得方法は、携帯端末と、前記携帯端末と通信可能に接続されるサーバとを用いて、検査対象機械に生じた不具合部位の情報を取得する不具合情報取得方法において、前記携帯端末の表示部に、前記検査対象機械の設計モデルを表示するモデル表示工程と、前記携帯端末の操作部を操作して、前記表示部に表示された前記設計モデルに対して、前記不具合部位を描画する不具合部位描画工程と、前記操作部の描画操作に基づいて描画情報を生成し、生成した前記描画情報と前記設計モデルの寸法情報とに基づいて、前記不具合部位の形状を定量化し、定量化した前記不具合部位の形状に関する不具合部位情報を、不具合情報として生成する不具合情報生成工程と、を備えることを特徴とする。
【0008】
これらの構成によれば、携帯端末の表示部に表示された設計モデルに対して、不具合部位を描画することにより、設計モデルの寸法情報に基づいて、不具合部位の形状を精度よく定量化することができる。このため、定量化した不具合部位の形状を取得することができるため、検査対象機械に生じた不具合部位の情報を精度よく適切に取得することができる。
【0009】
また、前記検査対象機械を撮影する撮影部を、さらに備え、前記制御部は、前記撮影部により撮影した前記検査対象機械に生じた不具合部位の不具合撮影画像と、前記不具合部位における前記設計モデルとを重ね合わせて、前記表示部に表示することが好ましい。
【0010】
この構成によれば、不具合撮影画像と設計モデルとを重ね合わせた状態で、設計モデルに不具合部位を描画することができるため、不具合部位の描画を精度よく行うことが可能となる。
【0011】
また、前記制御部は、前記不具合部位が亀裂である場合、前記描画情報として前記亀裂に沿った線の形状に関する情報を生成し、前記不具合部位情報として前記亀裂の長さに関する情報を生成することが好ましい。
【0012】
この構成によれば、亀裂を描画することで、不具合部位情報として亀裂の長さを取得することができる。
【0013】
また、前記制御部は、前記不具合部位が腐食である場合、前記描画情報として前記腐食の領域に関する情報を生成し、前記不具合部位情報として前記腐食の面積に関する情報を生成することが好ましい。
【0014】
この構成によれば、腐食の領域を描画することで、不具合部位情報として腐食の面積を取得することができる。
【0015】
また、前記制御部は、前記不具合情報に基づいて、前記不具合部位の保守の要否を判定することが好ましい。
【0016】
この構成によれば、不具合部位に対する保守の要否を判定することで、保守が必要な不具合部位に対して、迅速かつ適切に保守を行うことができる。
【0017】
また、前記不具合情報は、前記不具合部位情報と、前記不具合部位情報と前記設計モデルの寸法情報とに基づいて導出される非不具合部位に関する情報である非不具合部位情報と、を含むことが好ましい。
【0018】
この構成によれば、例えば、不具合情報に基づいて、保守の要否を判定する場合、不具合部位情報の他、非不具合部位情報を考慮して、保守の要否を判定することができる。このため、不具合情報に基づく保守の判定精度を高めることができる。例えば、部品に形成された貫通孔から延びる亀裂の長さを不具合部位情報とすると、非不具合部位情報は、亀裂の先端と、部品の端面との間の距離である。また、例えば、部品に形成された腐食の面積を不具合部位情報とすると、非不具合部位情報は、腐食が形成された面の腐食していない領域を含む全面積である。
【0019】
また、前記不具合情報を記憶する記憶部を、さらに備え、前記制御部は、前記不具合情報と、前記不具合情報を生成した情報入力時刻とを関連付けて、前記記憶部に記憶させることが好ましい。
【0020】
この構成によれば、不具合情報を時系列順に記憶することができるため、過去の不具合情報を表示部に表示させることが可能となる。
【0021】
また、前記制御部は、前記表示部に、前記設計モデルと、前記記憶部に記憶された過去の前記不具合情報とを合わせて表示することが好ましい。
【0022】
この構成によれば、過去の不具合情報に新たな不具合情報を付加して描画することができる。このため、不具合部位の経時的な進展を取得することが可能となる。
【0023】
また、前記不具合情報を記憶する記憶部を、さらに備え、前記制御部は、前記不具合情報と、前記不具合部位の発見時期とを関連付けて、前記記憶部に記憶させることが好ましい。
【0024】
この構成によれば、不具合情報に関連付けて不具合部位の発見時期を記憶させることができる。なお、発見時期としては、例えば、保守点検時、または、検査対象機械の性能が発揮できない突発的な事象が発生したとき等がある。
【0025】
また、前記不具合情報を記憶する記憶部を、さらに備え、前記記憶部は、前記不具合部位に対する修繕処置後の情報である処置情報を、前記不具合情報と関連付けて記憶していることが好ましい。
【0026】
この構成によれば、携帯端末の表示部に表示された設計モデルと共に、処置情報を表示させることができる。
【0027】
また、携帯端末と、前記携帯端末と通信可能に接続されるサーバと、を備え、前記携帯端末は、前記表示部と、前記操作部と、を有し、前記サーバは、前記制御部を有することが好ましい。
【0028】
この構成によれば、携帯端末を用いて、不具合情報を取得することができるため、不具合情報の取得に関する作業性を高めることができる。
【0029】
また、前記携帯端末は、前記携帯端末の位置情報を取得する位置情報取得部を、さらに有し、前記制御部は、前記位置情報取得部により前記携帯端末の位置情報を取得すると、前記位置情報に対応する前記検査対象機械の前記設計モデルを、前記表示部に表示させることが好ましい。
【0030】
この構成によれば、携帯端末の位置情報に基づいて、携帯端末の表示部に、位置情報に基づく個所の設計モデルを表示することができる。このため、例えば、不具合情報の取得時において、表示部を視認することで、不具合部位が発生した部品を迅速に特定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能であり、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせることも可能である。
【0033】
[実施形態]
図1は、本実施形態に係る不具合情報取得システムの制御ブロックを示す説明図である。
図2は、本実施形態に係る不具合情報取得方法に関する制御動作の一例を示す説明図である。
図3は、本実施形態に係る不具合情報取得方法に関する制御動作の一例を示すフローチャートである。
図4は、携帯端末の表示部に表示される表示画面の一例を示す図である。
図5は、本実施形態に係る不具合情報取得方法に関する制御動作の一例を示すフローチャートである。
【0034】
本実施形態に係る不具合情報取得システム1は、検査対象機械に発生する不具合部位の情報を取得するためのシステムとなっている。検査対象機械としては、例えば、航空機、鉄道車両、発電プラントに設けられる各種装置等、いずれであってもよい。なお、本実施形態では、検査対象機械として、航空機に適用して説明する。ここで、不具合情報取得システム1は、部品点数の多い航空機に対して、特に有用であり、航空機の多数の部品の中から、不具合部位が発生した部品を特定し、特定した部品の不具合情報を取得する。
【0035】
図1及び
図2に示すように、不具合情報取得システム1は、携帯端末5と、サーバ6と、携帯端末5とサーバ6とを通信可能に接続する通信ネットワーク8とを備えている。通信ネットワーク8は、携帯端末5とサーバ6とを双方向に通信可能に接続しており、有線及び無線を含む情報網となっている。なお、本実施形態において、通信ネットワーク8は、携帯端末5とサーバ6とを無線により接続している。なお、
図1では、不具合情報取得システム1において、通信ネットワーク8に、1台の携帯端末5が接続されているが、通信ネットワーク8に、複数台の携帯端末5が接続されていてもよい。
【0036】
携帯端末5は、航空機を点検する点検作業員によって携帯される端末であり、この携帯端末を用いて、航空機の不具合部位が発生した部品の不具合情報を取得している。携帯端末5は、撮影部10と、表示部11と、操作部12と、位置取得センサ13と、制御部14と、記憶部15とを有しており、制御部14に、撮影部10、表示部11、操作部12、位置取得センサ13及び記憶部15が接続されている。
【0037】
撮影部10は、例えば、カメラであり、航空機の点検個所の部品を撮影したり、後述する航空機の固有情報を撮影したりする。撮影部10は、撮影した画像を撮影画像として生成し、生成した撮影画像を記憶部15に記憶させる。
【0038】
表示部11は、ディスプレイ等の表示装置を含み、制御部14により表示制御されることで、文字や図形等の各種情報を含む画像を表示する。なお、詳細は後述するが、表示部11には、航空機の設計モデルの画像(以下、モデル画像という)を含む部品情報画面30が表示される(
図4参照)。
【0039】
操作部12は、操作ボタン及びタッチパネル等の入力装置を含み、点検作業員が入力装置に対して行う操作に対応する信号を制御部14へ出力する。なお、本実施形態では、表示部11及び操作部12は、一体となるタッチパネルディスプレイが適用される。このため、操作部12は、表示部11に表示されたモデル画像を含む部品情報画面30に対して、タップ等の操作入力を行うことが可能となっている。
【0040】
位置取得センサ(位置情報取得部)13は、携帯端末5の位置情報を取得するセンサであり、例えば、自律航法用のセンサが適用されている。自律航法用のセンサとしては、例えば、角速度センサがある。位置取得センサ13を用いた携帯端末5の現在位置の特定は、初期位置に対して、位置取得センサ13が相対的に移動した相対位置から、現在位置を特定している。つまり、初期位置の位置座標に相対位置の位置座標を加算した位置座標を、現在位置の位置座標としている。このため、位置取得センサ13は、位置情報として、相対位置に関する情報を取得しており、取得した相対位置に関する情報を、サーバ6に出力する。
【0041】
なお、検査対象となる航空機に対する携帯端末5の現在位置を取得可能であれば、位置取得センサ13を用いた上記の自律航法による取得に限定されない。例えば、音波または無線通信等を用いることにより、航空機に対する携帯端末5の測位データを取得してもよい。
【0042】
制御部14は、CPU(Central Processing Unit)等の集積回路と、作業領域となるメモリとを含み、これらのハードウェア資源を用いて、部品の不具合情報の取得に関する処理を実行する。具体的に、制御部14は、記憶部15に記憶されている部品の不具合情報の取得に関するプログラムを読み出してメモリに展開し、メモリに展開されたプログラムに含まれる命令をCPUに実行させることで、部品の不具合情報の取得に関する処理を実行する。
【0043】
記憶部15は、磁気記憶装置や半導体記憶装置等の不揮発性を有する記憶装置からなり、各種のプログラムおよびデータを記憶する。記憶部15に記憶されるデータとしては、撮影部10により生成される撮影画像が含まれている。
【0044】
次に、サーバ6について説明する。サーバ6は、携帯端末5から通信ネットワーク8を介して入力されるデータに基づいて、航空機のモデル画像を生成して携帯端末5に提供したり、航空機の不具合情報を携帯端末5に提供したりしている。なお、携帯端末5から入力されるデータとしては、携帯端末5の初期位置に関する情報、携帯端末5の相対位置に関する情報、携帯端末5の操作部12により入力される不具合情報等がある。
【0045】
図1及び
図2に示すように、サーバ6は、記憶部20と、制御部21と、を有している。記憶部20は、磁気記憶装置や半導体記憶装置等の不揮発性を有する記憶装置からなり、各種のプログラムおよびデータを記憶する。記憶部20に記憶されるデータとしては、航空機の設計モデル25と、航空機に含まれる部品の不具合情報26と、部品の保守に関する保守情報27とが含まれている。
【0046】
設計モデル25は、航空機の設計時において生成される3次元モデルであり、この設計モデル25には、航空機に含まれる各部品の部品モデル、各部品モデルの寸法に関する寸法情報が含まれている。部品モデルの寸法情報は、後述する不具合部位を定量化するときに用いられる。
【0047】
この設計モデル25は、航空機の固有情報に関連付けられて、記憶部20に記憶されている。つまり、設計モデル25は、航空機の種類に応じて複数用意されており、点検作業時において、点検対象となる航空機の固有情報に対応する設計モデル25が用いられる。なお、設計モデル25は、3次元モデルに特に限定されず、例えば設計図面等の2次元モデルに適用してもよい。
【0048】
不具合情報26は、航空機の部品の不具合部位に関する不具合部位情報と、航空機の部品の非不具合部位に関する情報である非不具合部位情報と、を含んでいる。また、不具合情報は、例えば、不具合の種類、不具合情報を入力した情報入力時刻、不具合の発見時期等と関連付けて、記憶部20に記憶されている。
【0049】
保守情報27は、不具合部位に対する保守の要否を判定するしきい値に関する情報、及び不具合部位に対する修繕処置後の情報である処置情報等を含んでおり、不具合情報26に関連付けて記憶されている。このため、記憶部20は、不具合情報26と共に、不具合情報26に関連付けられる保守情報27を提供することができる。
【0050】
制御部21は、ハードウェアとしての構成が制御部14とほぼ同様の構成となっているため、説明を省略する。制御部21は、部品の不具合情報26の取得に関する処理を実行する。制御部21は、部品の不具合情報26の取得に関する処理として、携帯端末5の現在位置に対応する部位の設計モデル25のモデル画像の生成、操作された部品モデルの不具合情報の取得等に関する処理を実行している。
【0051】
次に、
図2及び
図3を参照して、上記のように構成される不具合情報取得システム1による不具合情報取得方法の一連の制御動作について説明する。
【0052】
図2及び
図3に示すように、先ず、点検作業員は、携帯端末5を携帯しており、この携帯端末5の撮影部10を用いて、航空機の固有情報を取得する(ステップS1)。航空機の固有情報は、例えば、航空機の機種または機体番号等であり、航空機の機体表面に記されている。このため、ステップS1では、携帯端末5の撮影部10により、航空機の機体表面に記された固有情報を、画像認識により読み取ることで、航空機の固有情報を取得する。制御部14は、撮影部10により取得した固有情報を、サーバ6へ向けて送信する。なお、本実施形態では、撮影部10を用いて固有情報を取得したが、携帯端末5の操作部12を用いて、点検作業員により固有情報が入力されることで、固有情報を取得してもよい。
【0053】
サーバ6は、携帯端末5から送信された固有情報を取得すると、固有情報に関連付けられた設計モデル25を、記憶部20から取得する(ステップS2)。
【0054】
続いて、点検作業員は、携帯端末5の初期位置を設定する。ステップS3では、携帯端末5の初期位置を設定することにより、携帯端末5と航空機との位置関係を規定している。具体的に、ステップS3において、携帯端末5の初期位置を設定する場合、点検作業員は、予め規定された初期位置に携帯端末5を持って行き、携帯端末5の操作部12を用いて、携帯端末5が初期位置であることを入力する操作を行う。携帯端末5の制御部14は、操作入力に基づいて、初期位置に関する情報である初期位置情報を生成し、生成した初期位置情報をサーバ6に送信する。サーバ6は、初期位置情報を取得する(ステップS3)と、設計モデル25上において初期位置を設定する(ステップS4)。なお、検査対象機械が航空機の場合、初期位置は、点検作業員の安全が確保される安全エリア内に設定されている。
【0055】
この後、点検作業員は、携帯端末5を携帯しつつ、航空機の点検個所に移動する。移動する携帯端末5は、位置取得センサ13により位置情報として初期位置に対して移動した相対位置を取得し、取得した相対位置をサーバ6に送信する。また、携帯端末5は、取得した相対位置と共に、撮影部10により撮影している航空機の撮影画像をサーバ6に送信する。サーバ6は、相対位置及び撮影画像を取得すると、初期位置に対する相対位置から、設計モデル25上における携帯端末5の現在位置を特定することで、特定した現在位置を現在位置情報として取得する(ステップS5)。
【0056】
サーバ6は、現在位置情報を取得すると、現在位置情報及び撮影画像に基づいて、航空機の現在位置における部位の設計モデル25を、モデル画像として生成する(ステップS6)。このとき、サーバ6は、撮影画像に対して設計モデルが重なり合うように、モデル画像を生成する。なお、サーバ6は、撮影画像または設計モデルの一方を半透明化させて、撮影画像と設計モデルとが重なり合っていることが視認可能なように表示させている。そして、サーバ6は、生成したモデル画像を携帯端末5に送信する。
【0057】
携帯端末5の制御部14は、モデル画像を取得すると、取得したモデル画像を表示部11に表示する(ステップS7:モデル表示工程)。
【0058】
また、携帯端末5の制御部14は、モデル画像を表示している状態において、モデル画像の設計モデル25に含まれる部品モデルに対して、操作部12により不具合部位を描画する操作入力されたか否かを判定している(ステップS8)。制御部14は、不具合部位の描画に関する操作入力がないと判定すると(ステップS8:No)、ステップS5に進み、ステップS5からステップS7を再び実行する。一方で、制御部14は、不具合部位の描画に関する操作入力があると判定すると(ステップS8:Yes、不具合部位描画工程)、操作部12の描画操作入力に基づいて描画情報を生成し、生成した描画情報28(
図4参照)をサーバ6に送信する。
【0059】
サーバ6の制御部21は、描画情報を取得すると、描画操作入力された部品モデルの部品の寸法情報を取得する。そして、制御部21は、取得した描画情報と部品の寸法情報とに基づいて、不具合部位の形状を定量化し、定量化した不具合部位の形状に関する不具合部位情報を、不具合情報26として生成して取得する(ステップS9:不具合情報生成工程)。
【0060】
ここで、ステップS9では、不具合情報として、非不具合部位情報も合わせて生成してもよい。つまり、ステップS9では、不具合部位情報と設計モデル25の寸法情報とに基づいて、不具合が発生していない部位に関する情報も、不具合情報として合わせて生成する。
【0061】
一例として、不具合部位が、部品に形成された貫通孔から延びる亀裂である場合、描画情報としては、亀裂に沿った線の形状に関する情報が生成される。そして、サーバ6の制御部21は、描画情報と部品の寸法情報とに基づいて、不具合部位情報として、亀裂の長さに関する情報を生成する。また、サーバ6の制御部21は、描画情報と部品の寸法情報とに基づいて、非不具合部位情報として、亀裂の先端と部品の端面との間の距離に関する情報が生成される。
【0062】
また、他の一例として、不具合部位が、部品に形成された腐食である場合、描画情報28(
図4参照)としては、腐食の領域に関する情報が生成される。そして、サーバ6の制御部21は、描画情報28と部品の寸法情報とに基づいて、不具合部位情報として、腐食の面積に関する情報を生成する。また、サーバ6の制御部21は、描画情報28と部品の寸法情報とに基づいて、非不具合部位情報として、腐食が形成された面の腐食していない領域を含む全面積に関する情報が生成される。
【0063】
サーバ6は、不具合情報26を取得すると、取得した不具合情報26を記憶部20に記憶する(ステップS10)。なお、制御部21は、生成した不具合情報に、情報入力時刻を関連付けて記憶する。情報入力時刻は、例えば、ステップS8において、点検作業員により携帯端末5の操作部12を介して入力される。
【0064】
このように、不具合情報取得システム1は、携帯端末5の現在位置における航空機の部位の設計モデル25を、携帯端末5の表示部11に表示している。また、不具合情報取得システム1は、携帯端末5の操作部12によって、表示部11に表示されている設計モデル25に含まれる部品モデルが選択され、選択された部品モデルに対して、不具合部位の描画が行われると、不具合情報26を生成して、記憶部20に記憶する。なお、このように取得された不具合情報26は、統計的な分析のために用いられる。
【0065】
次に、
図5を参照して、不具合情報取得システム1による保守要否の判定に関する制御動作について説明する。
【0066】
図5に示すように、サーバ6の制御部21は、ステップS9において、不具合情報26を取得すると、記憶部20から不具合情報26に関連付けられる保守情報27を取得する(ステップS11)。制御部21は、保守情報に含まれる保守の要否を判定するしきい値に基づいて、所得した不具合情報26から、保守の要否を判定する(ステップS12)。ここで、制御部21は、不具合情報に含まれる不具合部位情報及び非不具合部位情報に基づいて、保守の要否を判定している。このため、制御部21は、保守の要否を、不具合部位情報の他、非不具合部位情報を考慮して、保守の要否を判定することができる。
【0067】
制御部21は、保守が必要であると判定すると(ステップS12:Yes)、保守が必要である旨の画像を生成し、生成した画像を携帯端末5へ送信し、携帯端末5の制御部14は、この画像を表示部11に表示する(ステップS13)。一方で、制御部21は、保守が必要でないと判定すると(ステップS12:No)、保守が不要である旨の画像を生成し、生成した画像を携帯端末5へ送信し、携帯端末5の制御部14は、この画像を表示部11に表示する(ステップS14)。
【0068】
このように、不具合情報取得システム1は、取得した不具合情報26に基づいて、不具合部位の保守の要否を判定し、保守が必要である場合、携帯端末5の表示部11にその旨を表示し、また、保守が不要である場合、携帯端末5の表示部11にその旨を表示する。
【0069】
次に、
図4を参照して、モデル画像を含む部品情報画面30について説明する。部品情報画面30は、ステップS7において、携帯端末5の表示部11に表示される画面となっている。部品情報画面30は、モデル画像の他、部品に関する部品情報、及び部品の不具合情報等を含む複数の入力項目を含んでいる。
【0070】
入力項目としては、検査対象機械(航空機)に関する情報を入力する項目31と、航空機の固有情報を入力する項目32と、不具合情報を生成した情報入力時刻の項目33と、不具合の種類を入力する項目34とを含んでいる。項目31及び項目32は、ステップS1において入力され、項目33及び項目34は、ステップS8において入力される。
【0071】
また、部品情報画面30には、部品モデルに不具合部位を描画することで取得される情報が表示される。具体的に、部品情報画面30には、発生した不具合部位に関する情報35が表示され、この情報35として、発生した不具合部位の位置に関する情報と、不具合部位が発生した部品番号とを含んでいる。また、部品情報画面30には、不具合部位情報36が表示され、不具合の種類の項目34が腐食である場合、腐食の面積が表示される。さらに、部品情報画面30には、不具合部位に対する修繕処置後の情報である処置情報37が表示されている。
【0072】
以上のように、本実施形態によれば、点検作業員が携帯する携帯端末5の表示部11に表示された設計モデル25に対して、不具合部位を描画することにより、設計モデル25の寸法情報に基づいて、不具合部位の形状を精度よく定量化することができる。このため、定量化した不具合部位の形状を取得することができるため、航空機に生じた不具合部位の情報を精度よく適切に取得することができる。
【0073】
また、本実施形態によれば、不具合部位の撮影画像と設計モデル25とを重ね合わせたモデル画像を、携帯端末5の表示部11に表示させた状態で、設計モデル25に不具合部位を描画することができるため、不具合部位の描画を精度よく行うことが可能となる。
【0074】
また、本実施形態によれば、不具合部位として、亀裂を描画することで、不具合部位情報として亀裂の長さを取得することができる。同様に、不具合部位として、腐食の領域を描画することで、不具合部位情報として腐食の面積を取得することができる。
【0075】
また、本実施形態によれば、不具合部位に対する保守の要否を判定することで、保守が必要な不具合部位に対して、適切に保守を行うことができる。なお、保守後の情報は、処置情報37として、不具合情報26に関連付けて、サーバ6の記憶部20に記憶する。
【0076】
また、本実施形態によれば、不具合部位情報及び非不具合部位情報に基づいて、保守の要否を判定することができる。このため、不具合情報に基づく保守の判定精度を高めることができる。
【0077】
また、本実施形態によれば、不具合情報26に情報入力時刻を関連付けて、サーバ6の記憶部20に記憶させることができるため、不具合情報を時系列順に記憶することができ、過去の不具合情報を携帯端末5の表示部11に表示させることが可能となる。
【0078】
また、本実施形態によれば、不具合情報26に処置情報37を関連付けて、サーバ6の記憶部20に記憶させることができるため、携帯端末5の表示部11に、処置情報37を含む部品情報画面30を表示させることができる。
【0079】
また、本実施形態によれば、携帯端末5を用いて、不具合情報26を取得することができるため、不具合情報26の取得に関する作業性を高めることができる。
【0080】
また、本実施形態によれば、携帯端末5の位置情報に基づいて、携帯端末5の表示部11に、位置情報に基づく個所の設計モデル25を表示することができる。このため、例えば、不具合情報26の取得時において、表示部11を視認することで、不具合部位が発生した部品を迅速に特定することができる。
【0081】
なお、本実施形態では、不具合部位として、亀裂及び腐食を例示したが、特に限定されず、例えば、部品表面のへこみ、及び部品の摩耗等であってもよい。
【0082】
なお、本実施形態では、不具合情報26に情報入力時刻を関連付けて、サーバ6の記憶部20に記憶させていることから、ステップS8における部品情報画面30の表示において、過去の不具合情報26を表示してもよい。つまり、部品情報画面30に含まれる部品モデルのモデル画像に、過去に入力した描画情報を表示させてもよい。この場合、過去の描画情報に新たな描画情報を付加して描画することができる。このため、不具合情報として、不具合部位の経時的な進展を取得することが可能となる。
【0083】
また、本実施形態では、不具合情報26に情報入力時刻等を関連付けたが、この他、不具合部位の発見時期を関連付けて、サーバ6の記憶部20に記憶させてもよい。この構成によれば、不具合情報26に関連付けて不具合部位の発見時期を記憶させることができる。なお、発見時期としては、例えば、保守点検時、または、航空機の性能が発揮できない突発的な事象が発生したとき等がある。
【0084】
また、本実施形態では、航空機の固有情報の取得と、携帯端末5の初期位置の取得とをそれぞれ行ったが、航空機の固有情報の取得と、携帯端末5の初期位置の取得とを同時に行ってもよい。例えば、予め規定された初期位置から、携帯端末5の撮影部(読取部)10により、航空機の固有情報を読み取ることで、固有情報及び初期位置を取得する。
【0085】
また、本実施形態では、モデル画像の生成を含む各種制御動作を、サーバ6の制御部21で行ったが、携帯端末5の制御部14で行ってもよい。