【実施例】
【0042】
実施例1 化合物NB001の合成
以下の合成経路により化合物NB001を合成する。
【0043】
式(4)
【0044】
(1)中間体2の合成および精製
化合物1(20.00 g, 111.62 mmol, 1.00 eq)をジオキサン (600.00 mL)に溶解してから、SOCl
2 (26.56 g, 223.24 mmol, 16.20 mL, 2.00 eq)を上記の反応液にゆっくりと添加し、100℃で、4時間撹拌を続けた。液体クロマトグラフィーー質量分析(LC/MS)により原料が完全に反応し、所望の生成物が生成したことが確認された。反応溶液中の溶媒は、ウォーターポンプにより減圧下で除去した。灰色の残渣を100mlのエタノール中に加え、10分間攪拌した。砂中隔漏斗(焼結ガラス漏斗)でろ過した。ろ過した固体に、100mlの飽和炭酸ナトリウム溶液を加え、20℃で攪拌した。その後、混合液を焼結ガラス漏斗でろ過した。
次いで、ろ過して得られた固体をウォーターポンプによる減圧下でスピンドライして、粗中間体2(19.60g、98.59mmol、収率88.32%、純度99.4%)を得、これをさらに精製することなく次の工程に用いた。
(2)NB001の合成および精製:
【0045】
化合物2(19.60g、99.18mmol、1.00 eq)をn−ブタノール(390.00mL)に溶解し、次いで化合物3(30.69g、297.54mmol、3.00 eq)を上記反応溶液に加え、混合物を110℃で18時間撹拌した。液体クロマトグラフィーー質量分析(LC/MS)によって原料が完全に反応し、所望の生成物が生成したことが確認された。ウォーターポンプで減圧して溶媒を除去し、残渣を濃縮して黄色の粗製物を得た。196mlのDMFを黄色の粗生成物に加え、混合物を−40℃で1時間撹拌した。その後、混合物を焼結ガラス漏斗で濾過し、得られた固体に、200mlの酢酸エチルを加え、混合物を再び濾過して、灰白色の固体NB001(19.74g、71.38mmol、収率71.97%、純度95.587%)を得た。
実施例2 新規NB001結晶の調製
【0046】
原料2.0 mgを秤量して、7mLのバイアルにそれぞれ入れた。その後、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、アセトニトリル、アセトン、酢酸エチル、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、n−アミルアルコール、トルエン、イソプロパノール+水(質量比3:1)、アセトニトリル+水(質量比3:1)、アセトン+水(質量比3:1)、エタノール+水(質量比3:1)を、適量それぞれのバイアルに加えて、溶液が透明になるまで速やかに振盪して溶解させた。得られた製薬用化学品(BPC)の有機溶媒又は混合溶媒に対する、溶解度の概算値(近似溶解)を表1に示す。
【0047】
表1 有機溶媒および混合溶媒におけるBPCの近似溶解度
【0048】
表2に示すように、50mgのBPCを秤量して、2mLのバイアルに入れた。適量のアセトニトリル、テトラヒドロフラン、アセトン、イソプロパノール、酢酸エチル、エタノールをそれぞれのバイアルに加えて懸濁液を得た。懸濁液をミキサーにより40℃で2日間混合し、遠心分離後、40℃で乾燥した。完全に溶解させた後、メタノール、エタノール+水(質量比3:1)、イソプロパノール+水(質量比3:1)およびアセトニトリル+水(質量比3:1)を、3日間自然蒸発させた。得られた固体について、それぞれ粉末X線回折を行い、BPCの粉末X線回折結果と比較した。
【0049】
X線回折装置は、パナリティカル社の粉末X線回折装置(XRPD)Empyreanを用いた。銅管球でKα線(λ=1.54179オングストローム)を用い、印加電圧は、40kV、印加電流は、40mA、スキャン範囲は、4〜40度、試料の回転速度は、15rpm、走査速度は、10度/ minの条件で測定した。結果は、
図1に示す。
【0050】
表2 BPC試薬が結晶に使用される各溶液の使用量
【0051】
表3 粉末X線回折データ
【0052】
実施例3 新規NB001結晶の他の物性
偏光顕微鏡(PLM)、熱重量分析(TGA)、示差走査熱量測定(DSC)、動的水蒸気吸着測定(DVS)によりBPCの物性を評価した。結果を、
図1〜
図5に示す。
【0053】
(1)偏光顕微鏡(PLM)
固体サンプルをシリコーン油中に分散させ、10倍接眼レンズと20/50対物レンズを使用して偏光顕微鏡で観察した。使用した顕微鏡はNikon製Polarized Light Microscope−Nikon Eclipse LV 100POLであり、20倍対物レンズを用いて観察し撮影した画像を
図2に示す。
(2)熱重量分析(TGA)
試料皿に試料2〜5mgを入れ、昇温速度10℃/分で室温から300℃まで加熱した。結果を
図3に示す。
(3)示差走査熱量測定(DSC)
適切な量の試料を特定のアルミニウムパンに入れ、25℃から300℃まで昇温速度10℃/分で加熱して、DSC測定を行った。結果を
図4に示す。
【0054】
(4)動的水蒸気吸着測定(DVS)
約20 mgのサンプルをトレイに入れ、トレイを測定装置にセットして分析を行った。
パラメータは以下のとおりである。
温度:25℃
バランス:dm / dt:0.01%/分(最短:10min、最長:180min)
【0055】
乾燥:0%RHで120分間乾燥
RH(%)テストラング:10%
RH(%)テストラング範囲:0%−90%−0%
動的水蒸気吸着測定の結果は、
図5および
図6に示す。
実施例4 NB001結晶の安定性
化合物の結晶形に影響を及ぼす要因試験(ストレステスト)、長期および加速安定性試験:
【0056】
「原薬及び製剤の安定性試験ガイドライン」(中国薬局方2015版第四部通則9001)に従い、以下の条件で化合物の結晶の安定性を評価した。すなわち、高温(60℃)、高湿度(92.5%RH)、強光(5Klx)、40°C/75%RH(加速試験)および25°C/60%RH(長期試験)の条件とした。
【0057】
本発明の実施形態による結晶質試料10mgを精密に秤量し、ガラスバイアルの底部に置き、広げて薄層にした。高温、高湿度条件および長期試験の試料は、アルミホイルによりボトル口を密封したバイアルに入れた。ここで、試料が外部環境と十分接触するためアルミニウムホイルに複数の穴をあけた。一方、強光と加速試験の試料は、スクリューキャップにより密封したバイアルに入れた。試料の放置条件及び時間を、表4に示す。異なる条件下に置かれた試料を5、10、30日後に採取し、分析し、分析結果を、当初(0日)の分析結果と比較した。表5に、安定性試験の結果を示す。
【0058】
表4 本発明の実施例による結晶の安定性試験の条件及び時間
*テスト項目X:性状、含有量及び関連物質
【0059】
表5 本発明の実施例による結晶の安定性試験の結果
上記の結果により、種々の試験条件下において化合物の結晶形の安定性が良好であることが示された。
【0060】
実施例5:ラットの癌疼痛に対するNB001結晶の鎮痛剤としての治療効果
(A)方法:
1.動物:SDラット(180〜220g)50匹を静かで温かい環境(22℃)で、強い光を避けて、自由に飲水、摂食させる。
【0061】
2.細胞培養:SDラット同系癌細胞株Walker 256は、中国第4軍医学大学動物センターにより保存されており、市販品も使用することができる。
RPMI 1640培地(米国Gibco社製、10%ウシ胎仔血清、ペニシリン、ストレプトマイシン100U/ lを含む)を用いて、37℃、5%CO
2の条件下のインキュベーターで、腫瘍細胞を細胞浮遊培養した。ここで、培地は1日おきに交換し、2日ごとに継代した。第3代目の細胞を収集し、細胞濃度を2×10
5/10μlにした。
【0062】
3.ラット骨がん疼痛モデルの構築
無菌手術操作手順に従って、ペントバルビタール(40mg/kg)で麻酔した後、ラットの脛骨上の皮膚を切開した。周囲の血管、筋肉などの組織を傷つけないように脛骨近位骨端部を露出させる。1mmのシリンジ針で顆間窩から垂直に骨髄腔に挿入し、貫通を防ぐため、挿入距離は、5mm以下にした。20μlのマイクロインジェクターを用いてWalker 256細胞の懸濁液(10μlあたり2×10
5個の癌細胞含有)10μlを骨髄腔にゆっくり注入した。注射後、数分間静置後、すぐに滅菌した骨ワックスで針のピンホールを密封した。骨髄腔から漏出した腫瘍細胞を75%のエチルアルコールで殺菌処理した。その後、ラットを層ごとに消毒して縫合した。同量の滅菌生理食塩水のみを注入した他は、同様の操作を行い、対照群とした。
4.画像検査(X線)
手術後7日目、14日目および21日目に、SDラットに麻酔した後、腫瘍の骨破壊および過形成の程度を評価するために左下肢をX線撮影した。
【0063】
5.病理検査(HE染色)
ラットモデル構築後21日目に、ラットに麻酔した後に屠殺した。左大腿骨を、4%パラホルムアルデヒドで1週間固定した。その後、蟻酸−塩酸複合体脱灰溶液で1週間脱灰し、従来どおり脱水し、パラフィン切片(Leica)に含ませ、複数部にスライスし、従来のHE染色を行い、顕微鏡(Olympus BX53)で骨組織の破壊を観察した。
【0064】
6.薬物介入
手術後18日目に手術したSDラットを、ランダムに6組を分けた。すなわち、対照グループ、NB001非結晶(20 mg/kg, i.g.)グループ、本発明のNB001結晶(20 mg/kg, i.g.)グループ、Morphine(2mg/kg, i.p.)グループ、Gabapentin組(100 mg/kg,i.g.)グループである。AC1阻害剤としてのNB001非結晶及び本発明のNB001結晶は、滅菌生理食塩水で処方した。MorphineグループとGabapentinグループは、陽性対照薬として使用した。すべての薬物を、1日2回3日間投与し、最後の投与から4日後の2時間以内に疼痛閾値を決定した。
【0065】
7.ラット疼痛行動評価
熱刺激に対する疼痛反応(PWL)
反応潜時は、PL−200熱痛刺激装置(8V、50W、100%強度)を用いて測定した。ラットの手術側の足底の中央部に光を照射してから、ラットが脚を持ち上げて光が出なくなるまでの時間をTWLとした。組織の損傷を防ぐために、カットオフ時間を80秒に設定し、各ラットについて5分間隔で3回測定し、平均値を計算した。
【0066】
7回投与(21日)の2時間後にPWLを対照グループと比較すると、NB001非結晶(20 mg/kg, i.g.)グループ;本発明のNB001結晶(20 mg/kg, i.g.)グループ、Morphine(2mg/kg, i.p.)グループ、Gabapentin(100 mg/kg,i.g.)グループのいずれにおいても、良好な鎮痛効果を示すことが分かった。
図7から明らかなように、本発明のNB001結晶(20 mg/kg, i.g.)グループでは、非常に有意な鎮痛効果を示した(P <0.01)。
【0067】
実施例6 慢性疼痛および不安の抑制におけるNB001結晶の効果 慢性内臓痛モデル
【0068】
マウス結腸内臓痛は、ザイモサン注射によって誘導した。ザイモサンはサッカロミセス・セレビシエ(Sigma)由来であり、1つのデキストランは酵母の細胞壁に付着し、タンパク質−炭水化物複合体として同定される。具体的には、1〜3%イソフルランで、マウスを吸入麻酔し、22号の長さ24mmのプラスチック供給針で、0.1mlのザイモサン懸濁液(生理食塩水で溶解した30 mg/mlの溶液)を、2分以内にマウスの結腸に注入した。対照グループには、0.1mlの生理食塩水を注入した。ザイモサン懸濁液または、生理食塩水を3日間連続で注入した。Lairdの方法により内臓痛の行動試験を行った。10分間に腹部を舐める回数を記録した。ここで、カーディング(グルーミング)の動き、身体のストレッチ、床に腹部を押し付ける行動、1−2秒間のアーチ姿勢などの行動は除いた。オープンフィールド試験は、二重盲検試験を用いて、結腸内注射後1日目、7日目および14日目の午前9時から午後12時の間に実施した。行動試験の前に、マウスを観察室で30分間馴化した。わずかな光(<50 lux))とファンを備えた新しい空き領域(43.2×43.2×30.5 cm
3)の中心にマウスを置き、複数の光ビームセットを備えた活動モニタリングシステムにより、30分間の移動距離、垂直カウント、移動カウント、ステレオタイプ行動カウントおよびジャンプカウントを記録した。
【0069】
行動不安テスト
従来の不安動物モデル−−高架式十字迷路試験(The elevated plus maze test ,EPM)により不安水準を評価した。行動観察の前に30分間、マウスを馴化した。EPMは、互いに対向して配置された2つのオープンアーム(250ルクス)と2つのクローズドアーム(350ルクス)で構成される。各試験では、個々の動物をテスト位置の中心に置き、自由に動かせる。試験は、5分間実施され、各アームの試験位置に入る回数とそこにいる時間を記録した。
【0070】
明/暗箱試験
試験は、従来技術を改良した方法に従って実施した。装置は、扉で区切られた同じ大きさの明るい区画と暗い区画に分割された長方形のプレキシガラスボックス(44 × 8.5 × 25 cm
3)からなる。点灯状態の60ワットランプ(400ルクス)をボックスの30cm上に設置し、明るい区画を照射した。各動物は、まず暗い区画に20秒間置かれ、その後、明るい区画に通じる扉を開けた。10分間で、暗い区画に各動物がいた時間と明るい部屋に入った時間を記録した。
【0071】
結果
ザイモサン処理後のマウスに対して、それぞれ、生理食塩水、NB001非結晶(3 mg/kg)、本発明のNB001結晶 (3 mg/kg)、及び陽性対照としてのGabapentin 30 mg/kgを腹腔内注射した(IP)。ザイモサン処理後の28日間のマウスの行動を観察した。表6に示すように、NB001非結晶(3 mg/kg)、本発明のNB001結晶 (3 mg/kg)では、陽性対照に比べて有意な効果があることが分かった。特に、本発明のNB001結晶 (3 mg/kg)では、非常に有意な効果が示された。
【0072】
表6 慢性疼痛に対する本発明NB001結晶の治療効果
他の2つの試験は、本発明の結晶の慢性疼痛および神経因性疼痛に起因する不安の抑制効果を評価するために行った。
【0073】
EPM試験によりマウスの不安水準の測定を行った。ザイモサン処理後のマウスに対して、生理食塩水、NB001非結晶(3 mg/kg)、本発明のNB001結晶 (3 mg/kg)、及び陽性対照としてのGabapentin 30 mg/kgをそれぞれ、腹腔内注射した(IP)。ザイモサン処理後の28日間マウスの行動を観察した。表7に示すように、NB001非結晶(3 mg/kg)、本発明のNB001結晶 (3 mg/kg)では、陽性対照より有意な効果を有することが分かった。特に、本発明のNB001結晶 (3 mg/kg)では、非常に有意な効果が示された。
【0074】
表7 EPM試験の結果
【0075】
本発明のNB001結晶体のマウスの不安抑制効果を確認するために、明/暗箱試験を行った。
ザイモサン処理後のマウスに対して、生理食塩水、NB001非結晶(3 mg/kg)、本発明のNB001結晶(3 mg/kg)、及び陽性対照としてのGabapentin 30 mg/kgを腹腔内注射した(IP)。ザイモサン処理後の28日間マウスの行動を観察した。
NB001非結晶(3 mg/kg)、本発明のNB001結晶 (3 mg/kg)では、陽性対照より有意な効果を有することが分かった。特に、本発明のNB001結晶 (3 mg/kg)では、非常に有意な効果が示された。